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明細書 :熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法および健全性診断システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3968443号 (P3968443)
公開番号 特開2007-010619 (P2007-010619A)
登録日 平成19年6月15日(2007.6.15)
発行日 平成19年8月29日(2007.8.29)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
発明の名称または考案の名称 熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法および健全性診断システム
国際特許分類 G01N   3/60        (2006.01)
G01N  29/00        (2006.01)
G01N  29/04        (2006.01)
FI G01N 3/60 C
G01N 29/00 501
G01N 29/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2005-195079 (P2005-195079)
出願日 平成17年7月4日(2005.7.4)
審査請求日 平成17年7月4日(2005.7.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】牧村 俊助
【氏名】下村 浩一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】森 竜介
参考文献・文献 特開昭63-159752(JP,A)
特開2005-315800(JP,A)
特開2004-309380(JP,A)
特開2005-148064(JP,A)
特開平5-288721(JP,A)
特開平4-273048(JP,A)
調査した分野 G01N 3/60
G01N 29/00
特許請求の範囲 【請求項1】
熱衝撃を受ける機器の熱衝撃を受ける位置の周囲の複数位置に圧力波検知素子をそれぞれ固着し、
前記機器の稼動によってその機器に熱衝撃を与えるとともに、前記複数位置の圧力波検知素子の出力信号を信号計測装置でそれぞれ計測し、
前記熱衝撃による応力波に対応する出力信号を前記圧力波検知素子が出力しなかった位置がある場合に、前記機器のその圧力波検知素子を固着した位置と前記熱衝撃を与えた位置との間に亀裂があって前記機器の健全性が損なわれていると判断することを特徴とする、熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法。
【請求項2】
前記圧力波検知素子は、圧電素子であることを特徴とする、請求項1記載の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法。
【請求項3】
前記機器は、パルス粒子ビームを受ける標的であることを特徴とする、請求項1または2記載の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法。
【請求項4】
前記機器は、パルスレーザー装置の光学部品であることを特徴とする、請求項1または2記載の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法。
【請求項5】
熱衝撃を受ける機器の熱衝撃を受ける位置の周囲の複数位置にそれぞれ固着された圧力波検知素子と、
前記機器の稼動中前記複数位置の圧力波検知素子の出力信号をそれぞれ計測する信号計測装置と、
を具えてなる、請求項1記載の健全性診断方法用の熱衝撃を受ける機器の健全性診断システム。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、熱衝撃を受ける機器の健全性を診断する方法およびシステムに関するものである。
【0002】
この発明は、例えば、パルス状陽子ビームをミュオン標的で受けてそこで発生するミュオンを用いるミュオン科学実験機器や常温核融合機器等に利用でき、さらには、パルスレーザービームを用いるレーザー加工機器等にも利用することができる。
【背景技術】
【0003】
ミュオン標的は、パルス状陽子ビームを受けてミュオンを発生させるが、パルス状の粒子ビームを受け続けていると、材料の疲労や収縮によって内部亀裂による破損が生じ、健全性が損なわれる可能性がある。
【0004】
このような健全性を診断する従来の方法としては、例えば、図3に示すように構造材等の診断対象物1に超音波発信機2と超音波受信機3とを取り付けて超音波SSWにより内部の亀裂を発見する超音波探傷法や、図4に示すようにパルス状レーザー光PLを結晶やミラー等の診断対象物1に照射して内部の亀裂で反射させてその反射光RLをフォトダイオード4等を持つ検出装置で検出する方法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波探傷法は、超音波発信機2を使用しなければならないためコスト高になるという問題がある。
【0006】
またパルス状レーザー光4を内部の亀裂で反射させて検出する方法は、安全性に欠け、検出装置も大型化するという問題がある。
【0007】
しかもこれらの方法では、熱衝撃を受ける機器の稼動中にはその健全性を診断することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、請求項1記載のこの発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法は、熱衝撃を受ける機器の熱衝撃を受ける位置の周囲の複数位置に圧力波検知素子をそれぞれ固着し、前記機器の稼動によってその機器に熱衝撃を与えるとともに、前記複数位置の圧力波検知素子の出力信号を信号計測装置でそれぞれ計測し、前記熱衝撃による応力波に対応する出力信号を前記圧力波検知素子が出力しなかった位置がある場合に、前記機器のその圧力波検知素子を固着した位置と前記熱衝撃を与えた位置との間に亀裂があって前記機器の健全性が損なわれていると判断することを特徴とするものである。
【0009】
また請求項5記載のこの発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断システムは、請求項1記載の健全性診断方法用のシステムであって、熱衝撃を受ける機器の熱衝撃を受ける位置の周囲の複数位置にそれぞれ固着された圧力波検知素子と、前記機器の稼動中前記複数位置の圧力波検知素子の出力信号をそれぞれ計測する信号計測装置と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法およびその方法を用いた健全性診断システムによれば、熱衝撃を受ける機器の稼動中に受ける熱衝撃を利用し、その熱衝撃で生ずる熱応力による応力波を圧力波検知素子で検出して信号計測装置で計測し、その熱衝撃による応力波に対応する出力信号を圧力波検知素子が出力しなかった位置がある場合に、前記機器のその圧力波検知素子を固着した位置と前記熱衝撃を与えた位置との間に亀裂があって前記機器の健全性が損なわれていると判断するので、熱衝撃を受ける機器の稼動中に、安価にかつ安全に、その機器の健全性を診断することができる。
【0011】
なお、この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法においては、前記圧力波検知素子は、圧電素子であっても良く、また前記機器は、例えばパルス状陽子ビームを受けるミュオン標的の如き、パルス粒子ビームを受ける標的であっても良く、さらに前記機器は、例えばパルス状のレーザー光を受ける結晶や反射鏡等の光学系の如き、パルスレーザー装置の光学部品であっても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法および健全性診断システムの一実施例を示す説明図であり、図中符号1は診断対象物を示し、この診断対象物は具体的には、熱衝撃を受ける機器としてのミュオン標的であり、このミュオン標的は、円盤状等方性グラファイト1aをチタン製の筒1bを介して冷却水パイプ内蔵の銅製リング状フレーム1cで囲んで構成したもので、稼動時にはその中央にパルス状陽子ビームを受けてミュオンを発生させる。ミュオン標的である診断対象物1は、このパルス状陽子ビームを受けた時に同時にパルス状の熱衝撃を受けることになる。
【0013】
この実施例の健全性診断方法では、図1に示すように、上記診断対象物1の銅製リング状フレーム1c上の周方向に等間隔な四箇所に、圧力波検知素子としての比較的安価な通常の圧電素子5A~5Dを、接着剤あるいはロー付け等によって固着し、それらの圧電素子5A~5Dをそれぞれ、100ns(ナノ秒)以下の極めて高い時間分解能を持つ、信号計測装置としての図示しない電圧計測装置に接続して、それらの圧電素子5A~5Dの出力電圧をそれぞれ計測可能とすることで、この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断システムの一実施例としての健全性診断システムを構成する。
【0014】
上記のように圧電素子5A~5Dを固着した診断対象物1を、例えば陽子加速器中の所定の標的位置にセットして稼動させ、その診断対象物1の中央に例えば、1バンチ100ns(ナノ秒)で600ns間隔の2バンチを40ms(ミリ秒)間隔(25Hz)で繰り返す2バンチ構造のパルス状陽子ビームを当てて、その診断対象物1からミュオンを発生させる。
【0015】
パルス状陽子ビームが診断対象物1の中央に当たると、図1に示すように、診断対象物1の中央にパルス状の熱衝撃が加わってそこにその熱衝撃と同程度の時間幅の応力波PWが発生し、その応力波PWは周囲に放射状に伝播してゆく。例えば熱衝撃が100ns程度の場合、応力波PWは5MHz程度の振動数を持つ超音波と同程度の波長のものとなる。
【0016】
この応力波PWが圧電素子5A~5Dに到達すると、圧電素子5A~5Dはその応力波PWによる振動を受け、それを電圧に変換して出力信号として上記電圧計測装置に出力するので、電圧測定装置はそれらの出力信号を測定することができる。
【0017】
ここで、図1に示すように、例えば圧電素子5Dを固着した位置と熱衝撃を与えた診断対象物1の中央との間に亀裂CRがあると、その亀裂CRで遮られて圧電素子5Dには応力波PWが到達せず、それゆえ他の圧電素子5A~5Cがパルス状の出力信号を出力したときに圧電素子5Dだけは出力信号を出力しないことになる。
【0018】
従って、この実施例の方法およびシステムによれば、診断対象物1の稼動中、圧電素子5A~5Dの出力信号を電圧計測装置で監視していることで、診断対象物1に亀裂が発生した場合にその亀裂の発生を検知して、診断対象物1の健全性が損なわれていると判断することができるので、診断対象物1としてのミュオン標的の稼動中に、安価にかつ安全に、そのミュオン標的の健全性を診断することができる。
【0019】
図2は、この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法および健全性診断システムの他の一実施例を示す説明図であり、図中符号1は診断対象物を示し、この診断対象物は具体的には、熱衝撃を受ける機器としての、パルスレーザー装置の一種であるパルスレーザー加工機のミラーであり、このパルスレーザー加工機のミラーは、稼動時にはレーザー光路上でその中央にパルス状のレーザー光を受けてそれを反射させ、所定の方向に導く。ミラーである診断対象物1は、このパルス状のレーザー光を受けた時に同時にパルス状の熱衝撃を受けることになる。
【0020】
この実施例の健全性診断方法では、図2に示すように、上記診断対象物1の周囲の四箇所に、圧力波検知素子としての比較的安価な通常の圧電素子5A~5Dを、接着剤あるいはロー付け等によって固着し、それらの圧電素子5A~5Dをそれぞれ、極めて高い時間分解能を持つ、信号計測装置としての図示しない電圧計測装置に接続して、それらの圧電素子5A~5Dの出力電圧をそれぞれ計測可能とすることで、この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断システムの他の一実施例としての健全性診断システムを構成する。
【0021】
上記のように圧電素子5A~5Dを固着した診断対象物1を、パルスレーザー加工機のレーザー光路上の所定位置にセットして稼動させ、その診断対象物1の中央に例えば100ns(ナノ秒)のパルス状のレーザー光を当てて、その診断対象物1で所定の方向に反射させ、加工対象ワークに導いて溶接等を行う。
【0022】
パルス状のレーザー光が診断対象物1の中央に当たると、図2に示すように、診断対象物1の中央にパルス状の熱衝撃が加わってそこにその熱衝撃と同程度の時間幅の応力波PWが発生し、その応力波PWは周囲に放射状に伝播してゆく。
【0023】
この応力波PWが圧電素子5A~5Dに到達すると、圧電素子5A~5Dはその応力波PWによる振動を受け、それを電圧に変換して出力信号として上記電圧計測装置に出力するので、電圧測定装置はそれらの出力信号を測定することができる。
【0024】
ここで、図2に示すように、例えば圧電素子5Dを固着した位置と熱衝撃を与えた診断対象物1の中央との間に亀裂CRがあると、その亀裂CRで遮られて圧電素子5Dには応力波PWが到達せず、それゆえ他の圧電素子5A~5Cがパルス状の出力信号を出力したときに圧電素子5Dだけは出力信号を出力しないことになる。
【0025】
従って、この実施例の方法およびシステムによっても、診断対象物1の稼動中、圧電素子5A~5Dの出力信号を電圧計測装置で監視していることで、診断対象物1に亀裂が発生した場合にその亀裂の発生を検知して、診断対象物1の健全性が損なわれていると判断することができるので、診断対象物1としてのミラーの稼動中に、安価にかつ安全に、そのミラーの健全性を診断することができる。
【0026】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、圧電素子の数や配置は適宜変更しても良く、また圧力波検知素子は圧電素子以外のものでも良く、さらに診断対象物である熱衝撃を受ける機器はミュオン標的やレーザー光用ミラー以外のものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
かくしてこの発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法およびその方法を用いた健全性診断システムによれば、熱衝撃を受ける機器の稼動中に、安価にかつ安全に、その機器の健全性を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法および健全性診断システムの一実施例を示す説明図である。
【図2】この発明の熱衝撃を受ける機器の健全性診断方法および健全性診断システムの他の一実施例を示す説明図である。
【図3】従来の超音波を用いた非破壊検査方法を示す説明図である。
【図4】従来のレーザー光の反射を用いた検査方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 診断対象物(熱衝撃を受ける機器)
2 超音波発信機
3 超音波受信機
4 フォトダイオード
5A~5D 圧電素子

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3