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明細書 :鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4234249号 (P4234249)
公開番号 特開2000-233744 (P2000-233744A)
登録日 平成20年12月19日(2008.12.19)
発行日 平成21年3月4日(2009.3.4)
公開日 平成12年8月29日(2000.8.29)
発明の名称または考案の名称 鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法
国際特許分類 B61C  15/12        (2006.01)
FI B61C 15/12
請求項の数または発明の数 4
全頁数 16
出願番号 特願平11-035185 (P1999-035185)
出願日 平成11年2月15日(1999.2.15)
審査請求日 平成17年8月22日(2005.8.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】中村 英男
【氏名】村上 浩一
個別代理人の代理人 【識別番号】100083839、【弁理士】、【氏名又は名称】石川 泰男
審査官 【審査官】西中村 健一
参考文献・文献 特開平09-324667(JP,A)
特開平03-199635(JP,A)
特開平03-107306(JP,A)
特開平06-066171(JP,A)
特開平06-002578(JP,A)
特開平07-269389(JP,A)
調査した分野 B61C 15/08-15/12
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-15/42
F02D 29/00-29/06
特許請求の範囲 【請求項1】
運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令(MC)を出力し原動機を所定出力状態に設定することによって鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行する鉄車輪系移動体の駆動車輪の速度である駆動車輪速度(VD)と従動車輪の速度である従動車輪速度(VT)との差である速度差(VS)と、前記駆動車輪の加速度である駆動車輪加速度(VDD)とに基づいて前記駆動車輪の空転を検知し、前記主幹制御器駆動力指令(MC)を帰還駆動力指令(FC)だけ低減させた第1制御駆動力指令(NC1=MC-FC)に変更して前記原動機の出力制御を行うことにより前記駆動車輪の空転を抑制する鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記空転を検知した時点である空転検知時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内における、前記速度差(VS)が前記駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間(TMi)の総和値(T2)の前記所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、前記帰還駆動力指令(FC)の値に対して1より小さい値である減算係数(GK)を乗じた減算駆動力指令(GC=GK×FC)だけ前記主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に前記主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記所定対象時間(T1)の間に前記主幹制御器駆動力指令(MC)が新たな主幹制御器駆動力指令(MC′)に変化した場合には、変化後制御駆動力指令(NC′=MC′)により前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記減算係数(GK)は、下式
GK=1-(T2/T1)
により演算されることを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置。
【請求項4】
運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令(MC)を出力し原動機を所定出力状態に設定することによって鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行する鉄車輪系移動体の駆動車輪の速度である駆動車輪速度(VD)と従動車輪の速度である従動車輪速度(VT)との差である速度差(VS)と、前記駆動車輪の加速度である駆動車輪加速度(VDD)とに基づいて前記駆動車輪の空転を検知し、前記主幹制御器駆動力指令(MC)を帰還駆動力指令(FC)だけ低減させた第1制御駆動力指令(NC1=MC-FC)に変更して前記原動機の出力制御を行うことにより前記駆動車輪の空転を抑制する鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法において、前記空転を検知した時点である空転検知時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内における、前記速度差(VS)が前記駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間(TMi)の総和値(T2)の前記所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、前記帰還駆動力指令(FC)の値を減算係数(GK)の分だけ低減させた減算駆動力指令(GC=GK×FC)だけ前記主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に前記主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両等の鉄車輪系移動体の加減速時に駆動車輪に発生する空転を抑制するように制御する鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両は、レール上において、起動(発進)、加速、減速、制動等を行いながら走行するが、鉄道車両の走行が可能なのは、駆動源からの力をレールに伝達し駆動機能を発揮する車輪(以下、「駆動車輪」という。)がレールに接触する面(以下、「踏面」という。)と、レールの頭部上表面(以下、「レール頭頂面」という。)との間に摩擦が働いているからである。
【0003】
図3に示すように、鉄道車両の駆動車輪DとレールRとの間の作用力のうち、駆動車輪DとレールRの接触点においてレールRに平行に作用する力(以下、「駆動車輪周方向力」という。)をF。とし、レールRに垂直に作用する力(以下、「軸重」又は「輪重」という。)をW。とし、駆動車輪Dの踏面とレールRの頭頂面との間の摩擦係数をμ。とすると、下式
F。≦μ。×W。 ………(1)
の関係が成立する場合には、駆動車輪周方向力F。はレールRに確実に伝達され、駆動車輪DはレールR上をころがり、鉄道車両は円滑に走行することができる。上記した駆動車輪周方向力F。は、加速時には「駆動力」と呼ばれ、制動時には「制動力」と呼ばれる。
【0004】
しかし、下式
F。>μ。×W。 ………(2)
で示されるような関係となる場合には、駆動車輪DはレールR上でころがらずにすべるようになる。以下、このようなすべりを、「巨視すべり」という。
【0005】
この「巨視すべり」が生じると、車両の起動時又は加速時には、空転(スリップ)となり、レールRのほぼ同一の箇所で駆動車輪Dが高速回転することになるため、レールRの側に局部的に凹部状の著大な摩耗が生じる。また、車両の制動時に上記の「すべり」が生じると、滑走(スキッド)となり、走行中に駆動車輪Dが停止した状態でレールR上をすべることになるため、駆動車輪Dの踏面が局部的に平らにすりへり「フラット」と呼ばれる摩耗となる。これらの摩耗は、車両の乗り心地を悪くし、甚だしい場合には車両及び軌道の双方に悪影響を与える。
【0006】
鉄道車両全体、あるいは複数の鉄道車両からなる列車においては、図3に示すような単純な物理モデルよりも複雑であり、ある駆動車輪の軸重(輪重)値(上式(1),(2)におけるW。に相当する値)と、レールに有効に伝達し得る駆動車輪周方向力(上式(1),(2)におけるF。に相当する値)の間の係数(上式(1),(2)におけるμ。に相当する値)も、実際のレールや駆動車輪の表面状態、例えば駆動車輪踏面やレール頭頂面における水、油性物、ゴミ、サビ等の付着の有無又はそれらの程度などによって変化する。
【0007】
鉄道においては、駆動車輪踏面とレール頭頂面との間で摩擦が有効に作用し、駆動車輪周方向力がレールに確実に伝達されており、両者間で「巨視すべり」が発生していない状態を「粘着状態」という。また、駆動車輪周方向力(上式(1),(2)におけるF。に相当する値)を「接線力」という。また、この接線力の最大値(上式(1),(2)におけるμ。×W。に相当する値)を「粘着力」といい、粘着力を軸重値(上式(1),(2)におけるW。に相当する値)で除算して得られる値(上式(1),(2)におけるμ。に相当する値)を「粘着係数」という。
【0008】
上記のことから、鉄道においては、粘着係数を向上させるための対策、空転や滑走を早期に検出する方法、空転や滑走を抑制するための制御方法、いったん空転等を生じた場合に再び粘着状態に戻す(以下、「再粘着」という。)ための対策等について種々の研究や開発がなされている。
【0009】
以下に、図を参照しつつ、鉄道における空転の実際の例について説明する。以下の説明において、VDは駆動車輪の速度(以下、「駆動車輪速度」という。)を、VTは駆動されない車輪であって車両の走行に伴って回転する車輪(以下、「従動車輪」という。)の速度(以下、「従動車輪速度」という。)を、VSはこれら両速度の速度差(VD-VT)を、F1,F2は駆動車輪の駆動力(上式(1),(2)におけるF。に相当する値)を、μ1,μ2,μ3,μ4は期待接線力係数(上式(1),(2)におけるμに相当する値)を、Wは軸重(上式(1),(2)におけるW。に相当する値)を、μ1×W,μ2×W,μ3×W,μ4×Wは期待粘着力(上式(1),(2)におけるμ。×W。に相当する値)を、それぞれ表すものとする。
【0010】
図4は、駆動車輪の駆動力が、駆動車輪とレールの間の粘着力を大きく上回っている場合における車輪速度の経時変化を示したグラフであり、横軸は時間経過を、縦軸は車輪の速度を、それぞれ示している。
【0011】
駆動車輪の駆動力が粘着力を大きく上回ったままとなっていると、図4において曲線C11(従動車輪速度:VT)及び曲線C12(駆動車輪速度:VD)で示すように、ある時点t11から駆動車輪速度VDは従動車輪速度VTから外れて増大を始める。これは空転状態が始まったことを意味しており、曲線C11に示すように、駆動車輪速度VDはそれ以後増加する一方となる。すなわち、図4に示す場合は、空転が発散し、大規模な空転(以下、「大空転」という。)に発展している状況を示している。
【0012】
空転が上記のような大空転に発展する原因を、図5に基づいて説明する。図5において、横軸は駆動車輪速度VD又は速度差VSを、縦軸は駆動力F及び期待接線力μ1×W,μ2×Wを、それぞれ示している。図5においては、駆動車輪速度VDと駆動力Fとの関係、及び速度差VSと期待接線力μ1×W,μ2×Wとの関係を重ねて描いてある。
【0013】
まず、最初は、期待接線力(μ1×W)が曲線C13で示されるように、速度差VSに応じて変化する関数で、点P11で最大値すなわち粘着力となるような特性であり、駆動力F1が、C14で示されるように、速度VD,VSの増加に応じて減少する傾斜直線であるとすると、両者は点P12の状態で釣り合う。点P12では、下式
F1=μ1×W ………(3)
が成立している。
【0014】
この場合、最大点P11における速度差をVS11(=VD11-VT11)とし、交点P12における速度差をVS12とすると、下式
VS11>VS12 ………(4)
の関係となっている。この点P12における状態は、「粘着状態」である。一般に、鉄道のような鉄レールと鉄車輪との摩擦を利用する鉄車輪系移動体の場合のVS11は、自動車のようなゴムタイヤ系移動体の場合のVS11に比べ非常に小さい。
【0015】
次に、図5において、レールと車輪の間の状況が変化し、期待接線力係数がμ1からμ2に低下したとすると、期待接線力(μ2×W)はC15で示されるような曲線となる。しかし、この場合には、つねに下式
F1>μ2×W ………(5)
の関係となる。このような状態は「空転状態」であり、駆動力F1と期待接線力(μ2×W)が釣り合うことがないため、駆動車輪速度VDは上昇する一方となり、図4に示すような大空転に発展する。
【0016】
次に、上記の大空転とは異なる空転について説明する。図6は、駆動車輪の駆動力が、駆動車輪とレールの間の期待接線力をわずかに上回っている場合における車輪速度の経時変化を示したグラフであり、横軸は時間経過を、縦軸は車輪の速度を、それぞれ示している。
【0017】
このように駆動車輪の駆動力が期待接線力をわずかに上回っている状態では、図6において曲線C11(従動車輪速度:VT)及び曲線C16(駆動車輪速度:VD)で示すように、ある時点t12から駆動車輪速度VDは従動車輪速度VTから外れ、空転状態が始まるが、駆動車輪速度VDと従動車輪速度VTとが大きく乖離することなく、微小な空転(以下、「微小空転」という。)を連続的に繰り返す。
【0018】
上記のような微小空転が発生する原因を、図7に基づいて説明する。図7において、横軸は駆動車輪速度VD又は速度差VSを、縦軸は駆動力F及び期待接線力μ3×W,μ4×Wを、それぞれ示している。図7においても、図5と同様に、駆動車輪速度VDと駆動力Fとの関係、及び速度差VSと期待接線力μ3×W,μ4×Wとの関係を重ねて描いてある。
【0019】
まず、最初は、期待接線力(μ3×W)が曲線C17で示されるように、速度差VSに応じて変化する関数で、点P13で最大となるような特性であり、駆動力F2が、C18で示されるように、速度VD,VSの増加に応じて減少する傾斜直線であるとすると、両者は点P14の状態で釣り合う。点P14では、下式
F2=μ3×W ………(6)
が成立している。
【0020】
この場合、最大点P13における速度差をVS13とし、交点P14における速度差をVS14とすると、下式
VS13<VS14 ………(7)
の関係となっている。したがって、点P14における状態は、「空転状態」である。しかし、この空転状態は、大空転に発散することはなく、微小空転が維持される。
【0021】
このような微小空転がしばらくの間続く場合には、空転が収束し、再び粘着状態に戻り「再粘着状態」となる可能性がある。これは、微小空転状態が続くことにより、車輪踏面が荒れてきて、期待接線力係数が図7のμ3からμ4に増大し、期待接線力(μ4×W)がC19で示されるような曲線となると考えられるからである。このような変化が起こると、駆動力F2と期待接線力(μ4×W)は点P15の状態で釣り合う。点P15では、下式
F2=μ4×W ………(8)
が成立している。
【0022】
この点P15の状態における速度差をVS15とすると、下式
VS15<VS13 ………(9)
の関係となっており、図5における点P12における状態と同様の「粘着状態」である。このようなメカニズムにより、図6に示すように、微小空転と再粘着が繰り返される。
【0023】
以上説明したように、鉄道においては、「大空転」と「微小空転」の2種類の空転状態が起こり得る。次に、従来、鉄道車両において、上記の空転を抑制するために行っていた制御方法の例について説明する。
【0024】
この例は、原動機にディーゼル機関(図示せず)を用い、駆動車輪への動力伝達手段として液体変速機(図示せず)を用いた鉄道車両における空転抑制制御方法である。
【0025】
上記のディーゼル機関には、燃料制御装置(図示せず)が接続されており、燃料制御装置には主幹制御器(図示せず)が接続されている。このような構成により、鉄道車両の運転操作者が主幹制御器を取り扱い運転操作を行うと、主幹制御器は駆動力指令(自動車のアクセル操作に相当する)を燃料制御装置に出力する。燃料制御装置は、駆動力指令に応じた燃料噴射量制御指令をディーゼル機関に出力する。ディーゼル機関は、この燃料噴射量制御指令により所定の出力で回転し駆動車輪を駆動する。
【0026】
この場合、駆動車輪(図示せず)と従動車輪(図示せず)にはそれぞれ速度センサ(図示せず)が取り付けられており、これらが検出した駆動車輪速度VDと従動車輪速度VTは空転抑制制御装置(図示せず)に送られる。
【0027】
空転抑制制御装置は、上記の主幹制御器と燃料制御装置の間に介在し、例えば速度差VS(=VD-VT)を算出してこれを監視し、速度差VSが所定のしきい値を越えた場合に、「駆動車輪が空転した」と判別し、このときの速度差VSの値等に基づいて上記の駆動力指令を低減させた制御駆動力指令を燃料制御装置に出力する。これにより、ディーゼル機関の出力を低下させ、駆動車輪の速度を減速させて速度差VSを減少させ空転を抑制しようとするものである。
【0028】
図8は、上記の空転抑制制御の実例を示したものである。すなわち、図8(A)に示すように時刻t21に速度差VSのしきい値超過を検知し、図8(B)に示すように回転力を低減させるような指令を燃料制御装置(図示せず)に出力すると、ディーゼル機関(図示せず)の出力は低下し、図8(A)に示すように空転が抑制される。空転開始から再粘着までの接線力は、図8(C)に示すように、速度差VSに対応して低下の後、上昇する。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の空転抑制制御方法においては、図8(A)の時刻t23に速度差VSのしきい値内復帰を検知し、図8(B)に示すように回転力を回復させるような指令を燃料制御装置(図示せず)に出力することになる。この場合、図8(A)の時刻t23以降に示すように、速度差VSはしきい値内に復帰し、再粘着しているのだが、液体変速機(図示せず)の時定数が大きいため、図8(C)に示すように、駆動力の回復は遅くなる、という問題があった。空転抑制制御に伴って発生する接線力の低下は、空転中の接線力の低下(図8(C)における(ア))と、再粘着後の接線力(この場合は駆動力)の低下(図8(C)における(イ))の合計となる。
【0030】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、微小空転が連続している場合は空転抑制の程度を小さくし、再粘着後に早期に駆動力を回復し得る鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置、及び鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置は、運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令(MC)を出力し原動機を所定出力状態に設定することによって鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行する鉄車輪系移動体の駆動車輪の速度である駆動車輪速度(VD)と従動車輪の速度である従動車輪速度(VT)との差である速度差(VS)と、前記駆動車輪の加速度である駆動車輪加速度(VDD)とに基づいて前記駆動車輪の空転を検知し、前記主幹制御器駆動力指令(MC)を帰還駆動力指令(FC)だけ低減させた第1制御駆動力指令(NC1=MC-FC)に変更して前記原動機の出力制御を行うことにより前記駆動車輪の空転を抑制する鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、前記空転を検知した時点である空転検知時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内における、前記速度差(VS)が前記駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間(TMi)の総和値(T2)の前記所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、前記帰還駆動力指令(FC)の値に対して1より小さい値である減算係数(GK)を乗じた減算駆動力指令(GC=GK×FC)だけ前記主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に前記主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする。
【0032】
上記の鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、好ましくは、前記所定対象時間(T1)の間に前記主幹制御器駆動力指令(MC)が新たな主幹制御器駆動力指令(MC′)に変化した場合には、変化後制御駆動力指令(NC′=MC′)により前記原動機の出力制御を行う。
【0033】
また、上記の鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置において、好ましくは、前記減算係数(GK)は、下式
GK=1-(T2/T1)
により演算される。
【0034】
また、本発明に係る鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法は、運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令(MC)を出力し原動機を所定出力状態に設定することによって鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行する鉄車輪系移動体の駆動車輪の速度である駆動車輪速度(VD)と従動車輪の速度である従動車輪速度(VT)との差である速度差(VS)と、前記駆動車輪の加速度である駆動車輪加速度(VDD)とに基づいて前記駆動車輪の空転を検知し、前記主幹制御器駆動力指令(MC)を帰還駆動力指令(FC)だけ低減させた第1制御駆動力指令(NC1=MC-FC)に変更して前記原動機の出力制御を行うことにより前記駆動車輪の空転を抑制する鉄車輪系移動体の空転抑制制御方法において、前記空転を検知した時点である空転検知時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内における、前記速度差(VS)が前記駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間(TMi)の総和値(T2)の前記所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、前記帰還駆動力指令(FC)の値を減算係数(GK)の分だけ低減させた減算駆動力指令(GC=GK×FC)だけ前記主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に前記主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して前記原動機の出力制御を行うことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鉄車輪系移動体の空転抑制制御装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態である鉄道用ディーゼル車両の構成を示す概念ブロック図である。
【0037】
図1に示すように、この鉄道用ディーゼル車両100は、主幹制御器1と、空転抑制制御装置2と、燃料制御装置3と、ディーゼル機関4と、液体変速機5と、推進軸6と、駆動車輪7と、従動車輪8と、駆動車輪速度センサ9と、従動車輪速度センサ10を備えて構成されている。
【0038】
上記の鉄道用ディーゼル車両100においては、主幹制御器1の出力側に燃料制御装置3が接続され、燃料制御装置3の出力側にディーゼル機関4が接続されている。また、主幹制御器1と燃料制御装置3の中間には、空転抑制制御装置2が接続されている。また、ディーゼル機関4の駆動出力側には液体変速機5が設けられて回転力変換を行い、液体変速機5の出力は推進軸6により駆動車輪7に伝達される。従動車輪8は、駆動されない車輪であって車両の走行に伴って回転する車輪である。また、上記の駆動車輪速度センサ9と従動車輪速度センサ10の出力は、空転抑制制御装置2に送られるように構成されている。
【0039】
空転抑制制御装置2は、コンピュータによって構成され、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit :中央演算処理装置)と、図示しないROM(Read Only Memory:読出し専用メモリ)と、図示しないRAM(Random Access Memory:随時書込み読出しメモリ)等を有している。
【0040】
このうち、CPUは、各要素を統括し、各種演算やプログラム実行等の処理を実行する部分である。ROMは、CPUの実行するプログラムや予め設定された情報等を格納した記憶装置である。RAMは、CPUにより演算された中間結果データ等を一時記憶する記憶装置である。このような構成により、CPUは、ROMに格納された演算プログラムを読み出し、ROMやRAM又は外部から与えられるデータ値に基づいて前記演算プログラムを実行して演算結果を得た後、この演算結果をRAMに一次記憶させ、外部に出力したり、RAMの一次記憶値に基づき、さらに他の演算プログラムを実行する。図1に示す空転抑制制御装置2は、これらのCPUやROM、RAM等が実行する機能(ソフトウェア)の前後関係又は組合わせ等の構成を図示したものである。
【0041】
まず、空転抑制制御装置2の基本的な動作について説明する。
【0042】
運転操作者(図示せず)が主幹制御器1を取り扱って運転操作を行うと、主幹制御器1は、主幹制御器駆動力指令(自動車のアクセル操作に相当する)MCを空転抑制制御装置2に出力する。空転抑制制御装置2は、駆動車輪速度センサ9の検出出力である駆動車輪速度VDと、従動車輪速度センサ10の出力である従動車輪速度VTを監視する。
【0043】
この結果、空転抑制制御装置2は、駆動車輪速度センサ9等の値に基づいて、後述する手順等により、空転抑制制御を行うべき状態ではないと判断した場合には、NC=MCとなる制御駆動力指令NCを燃料制御装置3に出力する。
【0044】
一方、空転抑制制御装置2は、駆動車輪速度センサ9等の値に基づいて、後述する手順等により、空転抑制制御を行うべき状態であると判断した場合には、主幹制御器駆動力指令MCを制御駆動力指令NC(例えば、MCを低減させた指令)に変更して燃料制御装置3に出力する。
【0045】
燃料制御装置3は、入力される駆動力指令に基づいた燃料噴射量指令(図示せず)をディーゼル機関4に出力する。ディーゼル機関4は、入力された燃料噴射量指令に基づき、所定の回転力を発生し、この回転力は液体変速機5と推進軸6を介して駆動車輪7に伝達される。駆動車輪7は、伝達された回転力により車両を走行させる。
【0046】
図2は、本実施形態の鉄道用ディーゼル車両100における空転抑制制御の状況を説明する概念図である。
【0047】
以下、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態の鉄道用ディーゼル車両100における空転抑制制御装置2のさらに詳細な構成と作用について説明を行う。
【0048】
まず、駆動車輪速度センサ9は、所定のサイクルタイムΔt(例えば、0.01秒)ごとに駆動車輪7の速度である駆動車輪速度VDを検出し、空転抑制制御装置2に出力する。また、従動車輪速度センサ10は、所定のサイクルタイムΔt(例えば、0.01秒)ごとに従動車輪8の速度である従動車輪速度VTを検出し、空転抑制制御装置2に出力する。
【0049】
空転抑制制御装置2は、所定のサイクルタイムΔt(例えば、0.01秒)ごとに、その時点のVD値とVT値から、下式
VS=VD-VT ………(10)
により速度差VSを演算する。
【0050】
また、空転抑制制御装置2は、所定のサイクルタイムΔt(例えば、0.01秒)ごとに、前回のVDの値VD1と、今回のVDの値VD2と、既知のサイクルタイム値Δtとから、下式
VDD=(VD2-VD1)/Δt ………(11)
により駆動車輪加速度VDDを演算する。
【0051】
空転抑制制御装置2は、速度差VSと、ROM(図示せず)等に予め格納されているしきい値である第2速度差VS2の値を比較し、VSがVS2以上である場合には「Y」を出力し、VSがVS2未満の場合には「N」を出力する。ここに、VS2は、VS2>VS1となる値である。
【0052】
また、空転抑制制御装置2は、駆動車輪加速度VDDと、ROM(図示せず)等に予め格納されているしきい値である第1加速度VDD1の値を比較し、VDDがVDD1以上である場合には「Y」を出力し、VDDがVDD1未満の場合には「N」を出力する。
【0053】
上記の比較の結果、
VS≧VS2
であるか、又は、
VDD≧VDD1
の場合には、空転抑制制御装置2は、「空転が発生した」と判断する。図2の場合には、時刻t1において、
VDD≧VDD1
であることが判別され、空転抑制制御装置2は「空転が発生した」と判断したものとする。
【0054】
また、空転抑制制御装置2は、つねに速度差VSと、ROM(図示せず)等に予め格納されているしきい値である第1速度差VS1の値を比較し、VSがVS1以上である場合(VS≧VS1)には、「Y」を出力し、VSがVS1未満の場合には「N」を出力している。また、VS≧VS1であった時間を計時し記録している。
【0055】
図2において、速度差VSが第1速度差VS1以上であるという期間は、例えばTM1,TM2,TM3等の各期間が該当する。これらTM1等の各期間は、上述した「微小空転」の状態の期間に相当している。以下、期間TM1等を「微小空転時間」という。したがって、速度差VSが第1速度差VS1以上である間は、駆動車輪7が微小空転していることを示している。
【0056】
空転抑制制御装置2は、「空転が発生した」と判断された時点から所定対象時間T1だけ過去にさかのぼった時間内での上記微小空転時間TM1等の総和値T2を演算する。「空転が発生した」と判断された時点が図2における時刻t1の場合には、微小空転時間総和値T2(=TM1+TM2+TM3)を出力する。なお、過去にさかのぼる所定対象時間T1は、ROM(図示せず)等に予め格納されている。
【0057】
空転抑制制御装置2は、微小空転時間総和値T2と、あらかじめROM(図示せず)等に格納されている所定対象時間T1の値から、除算(T2/T1)を演算し、その除算の商である微小空転時間比率を、しきい値である特定時間比TAと比較する。この比較の結果、(T2/T1)≧TAの場合には、SC1として「Y」を出力し、(T2/T1)<TAの場合には「N」を出力する。なお、特定時間比TAは、ROM(図示せず)等に予め格納されている。
【0058】
微小空転時間比率(T2/T1)と特定時間比TAとの大小関係の意味を図2によって説明する。図2において、微小空転時間総和値T2は、時刻t1から過去のさかのぼった時間T1内の微小空転時間TM1,TM2,TM3の総和値であり、(T2/T1)は、時間T1内における時間T2の比率となる。上述した「微小空転」と「大空転」について、この比率(T2/T1)の経験値を見ると、一般に、大空転の場合には、微小空転時間が非常に短く早期に大空転に移行する。このため、(T2/T1)の値はかなり小さいことが多い。
【0059】
一方、微小空転が続く場合には、微小空転時間が長い。このため、(T2/T1)の値は比較的大きな値となることが多い。したがって、特定時間比TAを、適切な値、例えば0.2~0.5程度の値に設定しておけば、(T2/T1)が特定時間比TA以上の場合には微小空転が続くと判断してよく、(T2/T1)がTA未満の場合には大空転となると判断してよい。
【0060】
一方、空転抑制制御装置2は、入力された速度差VSと駆動車輪加速度VDDから、例えばαとβを係数として、下式
FC=α×VDD+β×VS ………(12)
により帰還駆動力指令FCを演算する。
【0061】
上記した帰還駆動力指令FCの意味について説明する。例えば、主幹制御器駆動力指令MCの単位がノッチの目盛数の場合、係数αの単位を、〔(ノッチ目盛数×秒2 )/メートル〕とし、係数βの単位を、〔(ノッチ目盛数×秒)/メートル〕としておけば、駆動車輪加速度VDDの単位は(メートル/秒2 )であり速度差VSの単位は(メートル/秒)であるため、帰還駆動力指令FCの単位を(ノッチ目盛数)とすることができる。また、係数α、βの値を適切な値に設定しておけば、例えばFC=0.3MC程度の値とすることができる。
【0062】
空転抑制制御装置2は、「Y」の信号SC1と、帰還駆動力指令FCから、下式
GC=FC×{1-(T2/T1)} ………(13)
により、減算駆動力指令GCを演算する。
【0063】
上式(13)の意味について説明する。この空転抑制制御装置2は、後述する大空転の場合には、空転抑制制御を行うべき状態であると判断した場合には、主幹制御器駆動力指令MCを、それよりも低い値である第1制御駆動力指令NC1(=MC-FC)に変更して燃料制御装置3に出力する。しかし、微小空転時においては、上記の第1制御駆動力指令NC1の値までノッチを低下させると、速度低下が大きすぎ、駆動力の回復が遅くなる。
【0064】
このため、本実施形態の空転抑制制御装置2では、微小空転の場合には、燃料制御装置3に出力する制御駆動力指令を、上記の第1制御駆動力指令NC1(=MC-FC)よりもやや大きな第2制御駆動力指令NC2とし、速度低下を緩和し、駆動力の回復を速めようとするものである。すなわち、第1制御駆動力指令NC1の場合には、主幹制御器駆動力指令MCから帰還駆動力指令FCを減算しているが、この第2制御駆動力指令NC2の場合には、主幹制御器駆動力指令MCから減算駆動力指令GCを減算することとし、GC<FCとなるように設定することとした。
【0065】
このようにするには、0<GK<1となる減算係数GKを設定し、下式
GC=GK×FC ………(14)
とすればよい。上式(13)においては、{1-(T2/T1)}が減算係数GKに相当する。0<(T2/T1)<1であるから、0<{1-(T2/T1)}<1となる。
【0066】
上式(14)のようにして減算駆動力指令GCを決定する場合には、帰還駆動力指令FCが決定されれば、GCはFCに単純に比例した値となる。しかし、上式(13)のようにして減算駆動力指令GCを決定すれば、微小空転時間の割合が多い場合(ほぼ確実に微小空転が続く場合)には、(T2/T1)は0<(T2/T1)<1の範囲内で大きな値となるため、{1-(T2/T1)}は0<{1-(T2/T1)}<1の範囲内で小さな値となる。したがって、GCは0<GC<FCの範囲内で小さな値となる。
【0067】
逆に、微小空転時間の割合が少ない場合(微小空転が続くかどうか不確実な場合)には、(T2/T1)は0<(T2/T1)<1の範囲内で小さな値となるため、{1-(T2/T1)}は0<{1-(T2/T1)}<1の範囲内で大きな値となる。したがって、GCは0<GC<FCの範囲内で大きな値となる。
【0068】
すなわち、ほぼ確実に微小空転が続くと考えられる場合には、第2制御駆動力指令NC2(=MC-GC)は、MCに比べてわずかに低い値となり、これによりディーゼル機関4の出力はMCによる出力よりもわずかに低くなるだけである。一方、微小空転が続くかどうか不確実と考えられる場合(大空転に移行する可能性もある場合)には、第2制御駆動力指令NC2(=MC-GC)は、MCに比べてかなり低い値となり、これによりディーゼル機関4の出力はMCによる出力よりもかなり低くなる。このような制御は、現実の車両における状況に非常に適しており、最適な空転抑制制御となる。
【0069】
空転抑制制御装置2は、減算駆動力指令GCが入力された場合には、主幹制御器駆動力指令MCのかわりに、MCよりも低減された第2制御駆動力指令NC2(=MC-GC)を燃料制御装置3に出力する。
【0070】
燃料制御装置3は、入力された第2制御駆動力指令NC2に基づいた燃料噴射量指令(図示せず)をディーゼル機関4に出力する。ディーゼル機関4は、入力された燃料噴射量指令に基づき、MCの場合よりもGCだけ低減された回転力を発生し、この低減された回転力は液体変速機5と推進軸6を介して駆動車輪7に伝達される。駆動車輪7は、伝達された回転力により車両を走行させる。したがって、駆動車輪速度VDは、MCの場合よりもGCだけ低減され、空転が抑制されることになる。
【0071】
上記した制御において、図2における時刻t2のように、VS≧VS2となった場合には、空転抑制制御装置2は、その時刻t2において「空転が発生した」と判断する。このため、この場合には、時刻t2から所定対象時間T1だけ過去にさかのぼって上記と同様の処理を行う。
【0072】
次に、上記の空転抑制制御を行っている途中で、運転操作者(図示せず)が、主幹制御器1を操作した場合を考える。この場合には、主幹制御器1から新たな主幹制御器駆動力指令MC′が空転抑制制御装置2に出力されることになる。このような場合には、空転抑制制御装置2は、上記の制御を無効とし、変化後制御駆動力指令NC′(=MC′)を燃料制御装置3に出力する
【0073】
これは、主幹制御器1のノッチアップにより、駆動力が増加するが、トルクコンバータの影響のため、時間遅れが生じ、ゆっくりと増加する可能性がある。このため、空転と判断した時点以降も駆動力が増加する可能性があることから、すみやかに駆動力を低減させる必要があるためである。
【0074】
上記のようにして、空転抑制制御装置2により空転抑制制御が行われる。本実施形態の空転抑制装置2は、従来の空転抑制制御装置に比べて、早期に駆動力を回復することができる、という利点を有している。
【0075】
なお、図1に示した空転抑制制御装置2は、上記したように、図示しないCPUやROM、RAM等が実行するソフトウェアによって実現されるほか、各演算を行う手段を、加算器(加算回路)、減算器(減算回路)、乗算器(乗算回路)、除算器(除算回路)等の組合わせによって構成し、比較を行う手段を比較器(比較回路)で構成するなどして、ハードウェアとして実現してもよい。
【0076】
上記した実施形態において、鉄道用ディーゼル車両100は鉄車輪系移動体に相当している。また、燃料制御装置3とディーゼル機関4は、原動機を構成している。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0078】
例えば、上記した実施形態の鉄道車両の空転抑制制御装置においては、制御対象の鉄車輪系移動体として鉄道用ディーゼル車両100を例に挙げて説明したが、本発明はこれには限定されず、制御対象の鉄車輪系移動体は他の構成のものであってもよく、例えば、鉄道車両であれば、ディーゼル車両だけでなく電車や電気機関車等の鉄道用電動車両、鉄道以外では、走行クレーン、エレベーター等であってもよい。要は、鉄車輪を駆動し鉄製走行路を走行するものであって、運転操作者の操作により主幹制御器が主幹制御器駆動力指令を出力して原動機を所定出力状態に設定することによって駆動されるものであれば、どのようなものであってもよいのである。
【0079】
また、上記した実施形態においては、各演算手段や比較手段における出力「Y」や「N」は逆のものを用いてもよい。また、「Y」信号、「N」信号以外に、「H(高レベル)」信号と「L(低レベル)」信号、「1」信号と「0」信号などであってもよい。また、ある「しきい値」以上の場合と未満の場合とで比較するのではなく、ある「しきい値」より大きな場合とそれ以下の場合とで比較するようにしてもよい。また、ある「しきい値」以下の場合とそれよりも大きな場合とで比較するのではなく、ある「しきい値」未満の場合とそれ以上の場合とで比較するようにしてもよい。
【0080】
また、上記した実施形態においては、GC=FC×{1-(T2/T1)}なる式により減算駆動力指令GCを演算する例について説明したが、本発明はこれには限定されず、他の方法、例えば、下式
GC=FC×{1-(T2/T1)}2 ………(15)
によってGCを演算するようにしてもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、速度差(VS)が駆動車輪の微小空転の場合のしきい値である第1速度差(VS1)以上となる時間である微小空転時間の、判断時点から所定対象時間(T1)だけ過去にさかのぼった時間内での総和値(T2)の所定対象時間(T1)に対する比率である微小空転時間比率(T2/T1)がしきい値である特定時間比(TA)以上である場合には、帰還駆動力指令(FC)の値を低減させた減算駆動力指令(GC)だけ主幹制御器駆動力指令(MC)を低減させた第2制御駆動力指令(NC2=MC-GC)に主幹制御器駆動力指令(MC)を変更して原動機の出力制御を行うことにより駆動車輪の微小空転を抑制するようにしたので、早期に駆動力を回復することができる、という利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である鉄道用ディーゼル車両の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す鉄道用ディーゼル車両における空転抑制制御の状況を説明する図である。
【図3】鉄道車両における駆動車輪とレールとの間の摩擦作用(粘着作用)を説明する概念モデル図である。
【図4】鉄道車両の駆動車輪における大空転の状態を示す図である。
【図5】図4に示す駆動車輪の大空転の発生原因を説明する図である。
【図6】鉄道車両の駆動車輪における微小空転の状態を示す図である。
【図7】図6に示す駆動車輪の微小空転の発生原因を説明する図である。
【図8】従来の鉄道車両における空転抑制制御方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 主幹制御器
2 空転抑制制御装置
3 燃料制御装置
4 ディーゼル機関
5 液体変速機
6 推進軸
7 駆動車輪
8 従動車輪
9 駆動車輪速度センサ
10 従動車輪速度センサ
100 鉄道用ディーゼル車両
D 駆動車輪
F,F。,F1,F2 駆動車輪周方向力
FC 帰還駆動力指令
MC 主幹制御器駆動力指令
MC′ 変化後主幹制御器駆動力指令
NC 制御駆動力指令
NC′ 変化後制御駆動力指令
NC1 第1制御駆動力指令
NC2 第2制御駆動力指令
GC 減算駆動力指令
GK 減算係数
R レール
T1 所定対象時間
T2 微小空転時間総和値
TA 特定時間比
VD 駆動車輪速度
VDD 駆動車輪加速度
VDD1 第1加速度
VS 速度差
VS1 第1速度差
VS2 第2速度差
VT 従動車輪速度
W,W。 軸重
μ,μ1~μ4 接線力係数
μ。 摩擦係数
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7