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明細書 :高速走行ですぐれた耐摩耗性を発揮する銅含浸炭素焼成体製集電すり板材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4479014号 (P4479014)
公開番号 特開2000-302578 (P2000-302578A)
登録日 平成22年3月26日(2010.3.26)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
公開日 平成12年10月31日(2000.10.31)
発明の名称または考案の名称 高速走行ですぐれた耐摩耗性を発揮する銅含浸炭素焼成体製集電すり板材
国際特許分類 B60L   5/08        (2006.01)
C22C   1/10        (2006.01)
C04B  41/88        (2006.01)
FI B60L 5/08 A
C22C 1/10 E
C22C 1/10 G
C04B 41/88 V
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願平11-111906 (P1999-111906)
出願日 平成11年4月20日(1999.4.20)
審査請求日 平成18年1月17日(2006.1.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000222842
【氏名又は名称】東洋炭素株式会社
発明者または考案者 【氏名】久保 俊一
【氏名】池内 実治
【氏名】土屋 広志
【氏名】清水 輝夫
【氏名】秋山 新一
【氏名】寺岡 利雄
【氏名】大西 吉久
【氏名】馬場 史朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100076679、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 和夫
審査官 【審査官】武石 卓
参考文献・文献 特開平06-263571(JP,A)
特公昭52-000822(JP,B1)
特開平04-207902(JP,A)
特開平07-126713(JP,A)
特開昭62-030680(JP,A)
調査した分野 B60L 5/00- 5/42
C22C 1/10
C04B 41/88
特許請求の範囲 【請求項1】
ピッチコークス粉末と、人造黒鉛粉末と、タールピッチの混練圧粉体を焼成したものからなり、かつ、
(a)焼成コークスの素地に7.3~14.6重量%の人造黒鉛が分散分布した組織、
(b)並びに18.4~26.7%の気孔率、
を有する炭素焼成体に、無酸素銅を含浸してなる銅含浸炭素焼成体で構成したことを特徴とする高速走行ですぐれた耐摩耗性を発揮する銅含浸炭素焼成体製集電すり板材。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、JR在来線や私鉄などの電気車(以下、普通電気車と云う)の集電すり板材として用いた場合に、特に高速走行ですぐれた耐摩耗性を発揮する銅含浸炭素焼成体製集電すり板材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、普通電気車の集電すり板材として、例えば18~27%の気孔率を有し、かつ焼成コークスからなる炭素焼成体に、純銅を含浸してなる銅含浸炭素焼成体が広く実用に供されている。
また、この集電すり板材は、原料としてのピッチコークス粉末に、気孔率の調整とバインダー作用の付与を目的として所定割合のタールピッチを加え、200~300℃に加熱した状態で混練し、室温に冷却してから粉砕混合した後、1~1.5ton/cm2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1200~1500℃で焼成することにより焼成コークス、すなわち原料の前記ピッチコークス粉末とタールピッチの焼成により形成された焼成コークスからなり、かつ18~27%の気孔率をもった炭素焼成体を形成し、ついでこの炭素焼成体に、減圧雰囲気にて純銅溶湯に浸漬した後、雰囲気を100~150気圧の加圧雰囲気とする銅含浸処理を施すことにより製造されることも良く知られるところである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年、普通電気車もJR新幹線と同様に高速走行化の傾向にあるが、通常の走行速度である約100km/hrが150km/hr以上に高速化すると、上記の従来集電すり板材では摩耗進行がきわめて速くなり、実用に供し得ないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来集電すり板材に着目し、これの高速走行での耐摩耗性向上をはかるべく研究を行なった結果、集電すり板材を、焼成コークスの素地に7.3~14.6重量%の人造黒鉛が分散分布した組織、並びに18.4~26.7%の気孔率を有する炭素焼成体に、無酸素銅を含浸してなる銅含浸炭素焼成体で構成すると、この結果の集電すり板材は、炭素焼成体の素地を構成する焼成コークス中に分散分布した人造黒鉛によって高速走行下での摩耗が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになるという研究結果を得たのである。
【0005】
この発明は、上記の研究結果にもとづいてなされたものであって、
ピッチコークス粉末と、人造黒鉛粉末と、タールピッチの混練圧粉体を焼成したものからなり、かつ、
(a)焼成コークスの素地に7.3~14.6重量%の人造黒鉛が分散分布した組織、
(b)並びに18.4~26.7%の気孔率、
を有する炭素焼成体に、無酸素銅を含浸してなる銅含浸炭素焼成体で構成してなる、高速走行ですぐれた耐摩耗性を発揮する銅含浸炭素焼成体製集電すり板材に特徴を有するものである。
【0006】
なお、この発明の集電すり板材を構成する炭素焼成体において、人造黒鉛の含有割合を7.3~14.6重量%としたのは、その含有割合が7.3重量%未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その含有割合が14.6重量%を越えると強度が急激に低下するようになるという理由からであり、また、その気孔率を18.4~26.7%と定めたのは、その気孔率が18.4%未満では含浸される無酸素銅の割合が少なくなりすぎて所望の導電性、すなわち1μΩ・m以下の抵抗率を確保することができず、一方その気孔率が26.7%を越えると、強度が急激に低下するようになるという理由によるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の集電すり板材を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、10~20μmの範囲内の所定の平均粒径を有するピッチコークス粉末、並びに10~30μmの範囲内の所定の平均直径を有する人造黒鉛粉末を用い、これら両原料粉末を所定の割合に配合し、これに炭素焼成体の気孔率を調整すると共に、結合作用を発揮させる目的で所定割合のタールピッチを加え、200~300℃の範囲内の所定温度に加熱した状態で2時間混練し、室温に冷却してから粉砕混合を加えた後、0.1~1ton /cm2 の範囲内の所定の圧力で圧粉体にプレス成形し、1200℃に1時間保持の条件で焼成して表1に示される人造黒鉛含有量および気孔率の炭素焼成体を形成し、寸法調整した状態で、これを減圧含浸炉に装入し、含浸炉内を圧力:2torrに減圧し、いずれも1200℃の温度に加熱した無酸素銅(純銅)の溶湯に浸漬し、130気圧の圧力を付加する条件で銅含浸処理を行なうことにより、いずれも厚さ:12mm×幅:55mm×長さ:135mmの寸法をもった本発明集電すり板材1~を製造した。また、比較の目的で、人造黒鉛の含有がなく、気孔率を表1に示される通りとした炭素焼成体を用いる以外は同一の条件で従来集電すり板材1~3を製造した。
【0008】
この結果得られた各種の集電すり板材から10mm×10mm×60mmの寸法をもった試験片を切出し、強度を評価する目的でシャルピ衝撃値をそれぞれ5本の試験片について測定し、また導電性を評価する目的で抵抗率を10本の試験片について測定した。これらの測定結果を表1に平均値で示した。
【0009】
さらに、上記の集電すり板材から、厚さ:10mm×幅:25mm×長さ:60mmの寸法をもった試験片を切出し、この試験片を用い、普通電気車にとって高速走行条件である以下に示す条件で通電摩耗試験を行なった。
通電摩耗試験は、モータの水平回転軸に中心を固定することにより直立支持された外径:2.2mの円板の前記固定側とは反対側面に、模擬トロリ線として外径:2m×幅:5mm×厚さ:15mmの硬銅リング(JIS・C1100・BB-H)を50mm偏心して取付けた装置を用い、上記硬銅リングの直径線上の一方側に、まず、同じく厚さ:10mm×幅:25mm×長さ:60mmの寸法を有し、硬質のFe-Cr合金:6%およびFe-Mo合金:15%を分散含有し、かつ15%の気孔率をもったFe基合金焼結体に純Pbを含浸してなるPb含浸Fe基合金焼結体を、 押付力:5kgf 、
通電電流:100A、
円板の回転速度:25km/h、
時間:10分、
の条件で面接触させて、上記硬銅リングの表面を実用状態のトロリ線と同等の表面状態とした上で、上記硬銅リングの直径線上の他方側に、上記試験片を、
押付力:5kgf 、
通電電流:200A、
円板の回転速度:160km/h、
時間:10分、
の条件で面接触させ、さらに上記条件でのPb含浸Fe基合金焼結体および試験片の交互面接触をそれぞれ2回づつ、計3回づつ繰り返すことにより行ない、この通電摩耗試験をそれぞれ5本の試験片について行ない、試験後比摩耗量を測定し、この測定結果を平均値として表1に示した。
【0010】
【表1】
JP0004479014B2_000002t.gif
【0011】
【発明の効果】
表1に示される結果から、本発明集電すり板材1~は、いずれも従来集電すり板材1~3と同等の強度および導電性を示した上で、高速走行で、これより一段とすぐれた耐摩耗性示すことが明らかである。
上述のように、この発明の集電すり板材は、高速走行で、すぐれた耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた性能を発揮するものであり、普通電気車の高速化に十分満足に適合するものである。