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明細書 :特性維持性能に優れた酸化物超電導体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3100375号 (P3100375)
登録日 平成12年8月18日(2000.8.18)
発行日 平成12年10月16日(2000.10.16)
発明の名称または考案の名称 特性維持性能に優れた酸化物超電導体及びその製造方法
国際特許分類 C04B 41/89      
C01G  1/00      
C04B 41/83      
FI C04B 41/89 ZAAC
C01G 1/00
C04B 41/83
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願平11-175290 (P1999-175290)
出願日 平成11年6月22日(1999.6.22)
審査請求日 平成11年12月24日(1999.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391004481
【氏名又は名称】財団法人国際超電導産業技術研究センター
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】富田 優
【氏名】村上 雅人
個別代理人の代理人 【識別番号】100088270、【弁理士】、【氏名又は名称】今井 毅
審査官 【審査官】米田 健志
参考文献・文献 特開 昭61-222193(JP,A)
特開 昭61-287190(JP,A)
特開 昭63-260882(JP,A)
特開 平1-261286(JP,A)
特開 平1-282176(JP,A)
特開 平5-78183(JP,A)
特開 平3-245558(JP,A)
特開 平6-299087(JP,A)
調査した分野 C01G 1/00 ZAA
C04B 41/80 - 41/91
要約 【課題】 熱歪等の内外力や腐食環境に影響されずに高い捕捉磁場の確保や長期にわたる性能維持が可能を酸化物超電導体及びその製造法を提供する。
【解決手段】 酸化物超電導体を、「その外表面に“樹脂含浸された布の密着被覆層”を有した酸化物超電導バルク体から成る構成」とするか、あるいはこれに加えて「酸化物超電導バルク体の表層部に樹脂又は線膨張係数の小さいフィラ-材を分散して含有する樹脂の含浸層を設けた構成」とする。この酸化物超電導体は、酸化物超電導バルク体の表面を布で包んで覆った後、これを減圧雰囲気下に保持して液状樹脂やフィラ-入り液状樹脂と接触させる方法等により作成することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
外表面に“樹脂含浸された布の密着被覆層”を有すると共に、バルク体の表層部に樹脂の含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体から成ることを特徴とする、酸化物超電導体。

【請求項2】
密着被覆層を構成する布が、ガラス繊維,炭素繊維,セラミック繊維,金属繊維又はポリアミド系合成高分子繊維である、請求項1に記載の酸化物超電導体。

【請求項3】
樹脂がエポキシ系樹脂である、請求項1又は2に記載の酸化物超電導体。

【請求項4】
樹脂が線膨張係数の小さいフィラ-材を分散させたものである、請求項1乃至の何れかに記載の酸化物超電導体。

【請求項5】
溶融法による酸化物超電導バルク体の表面を布で包んで覆った後、これを減圧雰囲気下に保持して液状樹脂と接触させることを特徴とする、請求項1乃至4の何れかに記載の酸化物超電導体を製造する方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】この発明は、電磁力や熱歪等の内外力や腐食環境に影響されずに高い捕捉磁場を確保すると共に長期にわたってその性能の維持を可能とした酸化物超電導体に関し、更にはその製造方法をも提供するものである。

【0002】

【従来技術とその課題】常電導材料に比べて臨界電流密度が高く、大電流を損失なく流すことが可能な超電導材料については、従来から核融合実験装置,医療診断用超電導MRI,磁気浮上列車,発電機,エネルギ-貯蔵装置,脳磁計等への応用研究が盛んに行われているが、近年、 LiTi23, Ba(Bi,Pb)O3 ,(Ba,K) BiO3 等といった比較的臨界温度(Tc)の高い酸化物超電導材料が見出され、更に従来の予想を超える高い臨界温度(Tc)を持った(La,Sr)2CuO4 ,REBa2Cu37 (REは希土類元素),Bi2Sr2Ca2Cu310,Ti2Ba2Ca2Cu310,HgBa2Ca2 Cu38 等の銅酸化物超電導材料が次々と生み出されるに至ってからは、その研究には一段と拍車がかかっている。

【0003】
ところで、上述のように超電導材料は常電導材料に比べて臨界電流密度が高いために大電流を損失なく流すことが可能であるが、このように大電流を流した場合には、超電導体に大きな電磁力が働くので材料強度によっては材料が破壊してしまうおそれのあることが知られている。また、最近、バルク高温超電導体(特に銅酸化物超電導体)の特性向上と大型化に伴ってバルク体に捕捉できる磁場の大きさが飛躍的に向上し、5テスラを超える磁場が捕捉されるようにまでなっているが{「Superconductor Science andTechnology」11 (1998), 第1345~1347頁}、このように捕捉磁場が増加するとそれに伴って材料にかかる電磁力も増大するため、最近では材料強度によって捕捉磁場が制限されざるを得ないという問題が持ち上がっている。そのため、捕捉磁場を利用したバルク超電導磁石の性能向上のためには、捕捉磁場の更なる向上よりもむしろ材料の機械的特性向上が重要となってなっている{「Physica C」Vol.7, No.9(1991), 第4989~4994頁}。

【0004】
そこで、バルク酸化物超電導体の強化方法として、次の2つの方法が提案されている。1つは「材料へのAg添加」という手法であり、この方法を講じることによりバルク酸化物超電導体の機械的強度が著しく改善されるとされている{「JapaneseJournal of Applied Physics」Vol.70, No.9 (1991) の第4989~4994頁<HAN>、</HAN> 並びに「Superconductor Science and Technology 」11(1998), 第1345~1347頁}。他の1つは「バルク超電導材料の回りを金属リングで囲むことによって材料に予め“圧縮の歪”を付加しておく」という手法である{「Extened Abstract ofISTEC International Workshop」(1998),第 115~ 118頁}。なお、この方法によると、予付加の圧縮歪により磁場を捕捉させた時に生じる引張応力が緩和されるので材料の破壊が抑えられ、捕捉磁場が向上するとされている。

【0005】
しかしながら、上記「Ag添加による強化」や「金属リングによる補強」といった方法は作業性やコストの面での更なる改善が望まれるものであり、また腐食性環境での長期使用によって強化性能が劣化するという問題も認められた。

【0006】
このようなことから、本発明が目的としたのは、大きな電磁力に起因した機械的歪や使用時の急激な昇温・冷却に伴う熱歪等による割れを生じることがなく、長期にわたって高い捕捉磁場を発揮できる酸化物超電導体の容易かつ安価な提供手段を確立することであった。

【0007】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成すべく数多くの実験を繰り返しながら研究を行ったが、その過程でまず次のような現象を確認した。即ち、酸化物超電導バルク体は疑似単結晶状態のセラミックスであるが、実際にはその製造過程において微小なクラックや気孔が内在されるのを防止することは非常に困難である。特に、その表層部に微小クラックや気孔が内在されがちである。そして、このような微小クラックや気孔を内在した酸化物超電導バルク体に“大きな機械的衝撃力",“急激な温度変化による熱衝撃力”あるいは“大きな電磁気力(ロ-レンツ力)”等が加わると、前記クラックや気孔に応力集中が起こり、このクラックや気孔を起点とした比較的大きな割れが進展する。また、長時間にわたって湿気や炭酸ガスの多い腐食性雰囲気に曝されるような場合には、腐食によって酸化物超電導バルク体材料が劣化したり反応相が生成したりして新たな割れが生じ、これが比較的大きな割れに進展する。そして、酸化物超電導体においては、上述のような比較的大きな割れが生じると、これが超電導電流の妨げとなるため捕捉磁場の大きな低下をもたらす。

【0008】
このため、経時現象として発生しがちな“酸化物超電導バルク体の比較的大きな割れ”を安定して阻止する簡易で安価な手段を求めて更に研究を重ねた結果、「前述のような酸化物超電導バルク体材料の割れは、その外表面を繊維(ガラス繊維,炭素繊維,セラミック繊維,金属繊維,ポリアミド系合成高分子繊維,木綿繊維,絹繊維,羊毛繊維等)の織布あるいは不織布で包み込んで覆った後、これに樹脂を含浸させて“樹脂含浸された布の被覆層”を形成することにより効果的に防止することができる上、このような“樹脂含浸された布の被覆層”を設けても超電導特性の劣化は全く生じない」との新しい知見を得ることができた。

【0009】
また、本発明者等は次の事項も知ることができた。
a) 一般に溶融法によって製造されるために材料密度が非常に高くて塗料等の内部浸透などが起こり得る筈がないと考えられがちであった“酸化物超電導バルク体”であっても、減圧雰囲気下において液状樹脂と接触させた場合には、表面に開口した微小クラック部だけでなく、これら開口微小クラック部を通して表層部全体に、更にはバルク内奥部にまでも樹脂が浸透して樹脂含浸層が形成され、バルク超電導材料そのものの機械的強度が飛躍的に向上するので、この“バルク体への樹脂含浸”と前記“樹脂含浸された布の被覆層形成”の手段を併用することによって使用時の外力,内部応力あるいは腐食による割れの進展がより一層安定して抑えられる。

【0010】
b) また、酸化物超電導バルク体内部に浸透させる樹脂材料に石英,炭酸カルシウム,アルミナ,ガラス等といった線膨張係数の小さいフィラ-材を分散させて含有させることで該樹脂材料の線膨張係数を低くすることができ、フィラ-材の種類と配合量の組み合わせを選べば酸化物超電導バルク体とほぼ同様の線膨張係数を有する樹脂材料が実現されるが、酸化物超電導バルク体内部に形成する樹脂含浸層をこのような“線膨張係数の小さいフィラ-材を分散して含有する樹脂の含浸層”とすれば、酸化物超電導バルク体と樹脂含浸層との熱膨張率(熱収縮率)の差に起因して発生することを完全に否定できない“樹脂含浸層の割れ”に対する懸念も払拭することができ、酸化物超電導体の特性安定性・信頼性が一段と向上する。

【0011】
本発明は、上記知見事項等を基にしてなされたものであり、下記の酸化物超電導体並びに該酸化物超電導体の製造方法を提供するものである。
1) 外表面に“樹脂含浸された布の密着被覆層”を有ると共に、バルク体の表層部に樹脂の含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体から成ることを特徴とする、酸化物超電導体。
2) 密着被覆層を構成する布が、ガラス繊維,炭素繊維,セラミック繊維,金属繊維又はポリアミド系合成高分子繊維である、前記1)項に記載の酸化物超電導体。
3) 樹脂がエポキシ系樹脂である、前記1)項又は2)項に記載の酸化物超電導体。
4) 樹脂が線膨張係数の小さいフィラ-材を分散させた樹脂である、前記1)項乃至3)項の何れかに記載の酸化物超電導体。
5) 溶融法による酸化物超電導バルク体の表面を布で包んで覆った後、これを減圧雰囲気下に保持して液状樹脂と接触させることを特徴とする、前記1)項乃至4)項の何れかに記載の酸化物超電導体を製造する方法。

【0012】
ここで、本発明に適用される酸化物超電導バルク体としてはこれまで知られていた何れの種類のものでも良いが、捕捉磁場の高い高温超電導体として知られるRE-Ba-Cu-O系超電導体(REは希土類元素であってY,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上を意味する)として知られる銅酸化物超電導バルク体が好適であると言える。中でも、酸化物超電導バルク体が、捕捉磁場のより高い材料として知られているREBa2Cu3y (REはY,Dy,Ho,Er,Tm又はYbのうちの1種以上)を母相とすると共に該母層中に50体積%以下のRE2 BaCuO5(REはY,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体や、RE1+x Ba2-x Cu3y ( REはLa,Nd,Sm,Eu及びGdのうちの1種以上であって<HAN>、</HAN> 好ましくは-0.1 <x<0.2, 6.5<y<7.2 の範囲のもの)を母相とすると共に該母層中に50体積%以下のRE4-2x Ba2+2x Cu2-x 10-2x (REはLa及びNdのうちの1種以上であって<HAN>、</HAN> 好ましくは-0.2 <x<0.3 の範囲のもの)相又はRE2 BaCuO5 ( REはSm,Eu及びGdの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体がより好適であると言える。なお、これら酸化物超電導体において分散相の含有割合を50体積%以下と定めたのは、分散相の含有割合が50体積%を超えると超電導特性が劣化傾向を見せるからである。

【0013】
また、必要に応じて酸化物超電導バルク体にAgを含有させることは更なる強度向上に有利であり、高い捕捉磁場を維持する上で効果的であるが、その含有割合が40重量%を超えると超電導特性が劣化傾向を見せるほか、価格面でも不利となる。従って、Agを含有させる場合には、その含有割合は40重量%以下に抑えるのが好ましい。

【0014】
更に、被覆層を構成する布としては織布及び不織布(繊維の方向を揃えて単に積層しただけのものをも含む)の何れでも良く、その材質も格別に制限されるものではない(和紙も不織布の範疇に入るものとする)。ただ、強度面や耐薬品性等の面からするとガラス繊維,炭素繊維,セラミック繊維(Al23 繊維,SiC繊維,Si-C-O繊維,SiO2 繊維,Si-Ti-C-N-O繊維等),金属繊維(チタン繊維,アルミニウム繊維等)あるいはポリアミド系合成高分子繊維を素材とする布が好ましいと言える。特に、ポリアミド系合成高分子繊維の場合は、低温に冷却された時の収縮率が比較的大きく、従ってその収縮力により酸化物超電導バルク体に生じる電磁気的な拡がり力(ロレンツ力)が抑えられて微小クラックの進展がより効果的に阻止されるので、この点からは非常に好ましい材料であると考えらる。因みに、図1は、ガラス,炭素並びにポリアミドに関する線膨張率(低温での収縮率)を対比して示したグラフである。ここで、特にガラス繊維の線膨張率はY-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体のc軸方向の線膨張率と殆ど同じであり、また特に炭素繊維の線膨張率はY-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体のab面方向の線膨張率と殆ど同じであることも確認している。

【0015】
なお、“布の被覆層”や“酸化物超電導バルク体自身”に含浸させる樹脂としては、エポキシ系樹脂,尿素樹脂,フェノ-ル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ポリウレタン,アルキド樹脂,メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が適当である。

【0016】
溶融法による酸化物超電導バルク体や布の被覆層に樹脂を含浸させる手法としては、真空等の減圧雰囲気下に保持した“酸化物超電導バルク体”あるいは“布で包んで覆った酸化物超電導バルク体”と液状樹脂とを接触させる方法が好適であるが、樹脂含浸が可能であれば“加圧含浸法”等といったその他の方法によっても差し支えはない。ただ、溶融法による酸化物超電導バルク体に樹脂を含浸させる場合は、単に表面に樹脂コ-ティングを施すだけの手法では樹脂の含浸は起きない。

【0017】
ところで、本発明に係る「外表面に“樹脂含浸された布の被覆層”を有し、かつその表層部に樹脂の含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体から成る酸化物超電導体」を作成するには、「まず酸化物超電導バルク体を減圧雰囲気下あるいは加圧雰囲気下で液状樹脂と接触させることによってその表層部に樹脂を含浸させる処理を行ってから<HAN>、</HAN> これを布で緊張して包み込み<HAN>、</HAN> 次に布で包んだ該酸化物超電導バルク体の布層に樹脂を含浸させる方法」によっても良いが、「酸化物超電導バルク体の表面を布で包んで覆った後<HAN>、</HAN> これを減圧雰囲気下に保持して液状樹脂と接触させることによって一工程で布被覆層と酸化物超電導バルク体表層部の双方に樹脂を含浸させる方法」を採用するのが製造能率からして有利である。この場合、液状樹脂と接触させる時間を調整することで、布被覆層と酸化物超電導バルク体内部の双方に樹脂を含浸させることが可能である。

【0018】
樹脂材料の線膨張係数を低くするために分散・含有せしめられるフィラ-材としては、線膨張係数が小さいことに加え、望ましくは熱伝導性が大で、樹脂を硬化させる際の発熱が小さく、かつ機械的強度の高いものが良い。このようなフィラ-材の具体例として、石英,炭酸カルシウム,アルミナ,水和アルミナ,ガラス,タルク及び焼石膏等が挙げられる。このようなフィラ-材が樹脂中に分散・含有せしめられて使用されるが、均一分散させるためにはフィラ-材は微粉状のものを用いるのが良い。ここで、樹脂中に分散・含有させるフィラ-材の含有割合は、対象とする酸化物超電導バルク体の線膨張係数に応じて調整するのが良い。この場合、樹脂材料の線膨張係数がわずかに低下するだけでもそれなりの効果が得られるが、好ましくは樹脂材料の線膨張係数が酸化物超電導バルク体のそれと同程度となるように混合すれば良い。

【0019】
なお、図2は、溶融法によるSmBa2Cu3y 系酸化物超電導バルク材におけるab方向及びc軸方向の各種温度での線膨張係数と、エポキシ系樹脂(主剤たるビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂100重量部に硬化剤として芳香族ポリアミンを32重量部配合した樹脂)に種々重量比(ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂に対する重量比)でフィラ-材たる石英ガラス微粉末を配合したものの各種温度での線膨張係数との調査結果を対比して示すグラフであるが、この図2からも、フィラ-材の配合比が増すに従って“樹脂材料の線膨張係数”が“酸化物超電導バルク材の線膨張係数”に近づいて行き、フィラ-材の配合比が200(重量比)程度になると線膨張係数は酸化物超電導バルク材のそれとほぼ同等になることが分かる。

【0020】
溶融法による酸化物超電導バルク体に“フィラ-材を分散して含有する樹脂”を含浸させる場合も、前述した“真空等の減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体とフィラ-材含有液状樹脂とを接触させる方法”や“加圧含浸法”等を採用することができる。勿論、外表面の“樹脂含浸された布の被覆層”に前記フィラ-材が分散された場合でも、酸化物超電導体としての性能には何らの不都合も生じない。

【0021】
上述のように、本発明は、加熱・冷却による大きな熱歪や大きな電磁力等に十分に耐え得る機械的特性と十分な耐食性を備えていて高い捕捉磁場特性を長期にわたって維持できる“酸化物超電導体”を容易かつ安価に提供するもので、例えば酸化物超電導バルク体を高電磁力下で応用する場合や、酸化物超電導バルク体に磁場を捕捉させて高温超電導磁石として利用する場合に極めて有用な技術となり得る。

【0022】
また、溶融法による酸化物超電導バルク体の外表面に“樹脂含浸された布の被覆層”を有せしめると共に、これに加えて更に酸化物超電導バルク体表層部にも樹脂の含浸層を有せしめることは、バルク体製造時に発生した微小クラックや気孔を起点とする割れの発生及び進展や腐食の抑制効果だけでなく、外部から受ける直接的な機械的衝撃を緩和する効果にもつながる。特に、本発明では、樹脂含浸された溶融法による酸化物超電導バルク体の外表面を“樹脂含浸された布の層”で密着性良く緊密に覆うので、酸化物超電導体使用時等の急冷による割れの発生(熱衝撃による割れの発生)を防止する効果は著しく向上し、超電導特性の劣化を招くような事態が長期にわたって抑えられる。

【0023】
以下、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】〔実施例1〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、常法通りにYBa2Cu3y 素材を1100℃に20分加熱した後、1050℃まで30分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0024】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて下記「条件1」及び「条件2」の含浸法により樹脂を浸透させた組とを用意した。
条件1…ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と石英ガラス粉末(平均粒径が15μの無定形粉末)と硬化剤としての芳香族ポリアミンをそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:125:32で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、バルク超電導体を70℃まで予熱し、真空槽の中で減圧した。バルク体を覆うように樹脂を注ぎ込み、大気圧以上に加圧させ、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
条件2…ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と石英ガラス粉末(平均粒径が15μの無定形粉末)と硬化剤としての芳香族ポリアミンをそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:125:32で混合した。次に、バルク超電導体を70℃まで予熱し、バルク体を覆うように樹脂を注ぎ込み、真空槽の中で減圧し脱気を行った。十分脱泡した後、大気圧中で80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
ここで、「条件1」及び「条件2」で使用した石英ガラス粉末は、高純度石英を1900℃で完全に溶融してガラス化(アモルファス化)した溶融石英ガラスを微粉砕したものである。

【0025】
次に、上記「条件1」及び「条件2」の含浸法により樹脂を浸透させた組のバルク超電導体の全てを対象として、これらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、これを70℃に予熱してからビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と硬化剤としての芳香族ポリアミンを配合組成(重量比)100:32で混合したものを布被覆バルク体を覆うように注ぎ込み、真空槽の中で減圧し脱気を行った。そして、大気圧中で80℃下において6時間加熱することにより硬化させ、外表面に樹脂含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0026】
このようにして製造された何れの組の酸化物超電導体(樹脂含浸処理や樹脂含浸布の被覆処理を施さなかったものも含む)も図3に示す形状を有していた。次いで、これら各超電導体を100Kまで急冷し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、バルク体の樹脂含浸処理及び樹脂含浸布の被覆処理を施さなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、バルク体の樹脂含浸処理に続いて樹脂含浸布の被覆処理を施した試料の捕捉磁場は、Y211相の含有量が0,10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 2.5T,3T,4T,4T及び3Tという値が得られた

【0027】
そして、バルク体に樹脂含浸処理したものにつきその断面の組織観察を行ったところ、表面から内部に向かってバルク材料の微小なクラックや気孔を中心にフィラ-材を添加した樹脂が浸透していて、表層が樹脂含浸層となっていることが確認された。

【0028】
以上のように、樹脂含浸と樹脂含浸布の被覆処理を施さなかった試料は全て割れが観察されたのに対し、樹脂含浸と樹脂含浸布の被覆処理を施した試料では割れが観察されず、全てにおいて比較的大きな捕捉磁場が得られた。なお、Y211相の含有量による捕捉磁場の違いは、Y211含有量による臨界電流密度の差を反映しているものであることは言うまでもない。

【0029】
〔実施例2〕
Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導結晶内に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有するバルク材料を、溶融法によって作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1200℃に20分加熱した後、1050℃まで20分で冷却し、その後NdBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。この時、結晶成長させた段階で、Sm211相が0及び10体積%の試料では大きなクラックが観察された。また、肉眼では観察されなかったものの、Sm211相が20体積%の試料でもクラックが認められた。

【0030】
次に、割れの認められなかったSm211相をそれぞれ30及び40体積%含有するバルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いてこれらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、これらを真空容器に入れて下記「条件3」及び「条件4」の含浸法により樹脂を浸透させ、バルク体表層部に樹脂含浸層を有し、かつその外表面に樹脂が含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0031】
条件3…ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と硬化剤としての芳香族ポリアミンをそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、布被覆バルク超電導体を70℃まで予熱し、真空槽の中で減圧した。バルク体を覆うように樹脂を注ぎ込み、大気圧以上に加圧させ、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
条件4…ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と硬化剤としての芳香族ポリアミンをそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32で混合した。次に、バルク超電導体を70℃まで予熱し、布被覆バルク体を覆うように樹脂を注ぎ込み、真空槽の中で減圧し脱気を行った。十分脱泡した後、大気圧中で80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。

【0032】
次に、これら布被覆樹脂含浸処理しなかった酸化物超電導体と布被覆樹脂含浸処理を施した酸化物超電導体を何れも100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料は何れも破壊していることが確認された。一方、布被覆樹脂含浸処理を施して“バルク体表層部に樹脂含浸層を有すると共に外表面に樹脂含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体”となされた試料の捕捉磁場は、Sm211相の含有量が30及び40体積%の試料においてそれぞれ8T及び 6.5Tという高い値が得られた。また、「条件3」及び「条件4」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0033】
そして、布被覆樹脂含浸処理したものについてその断面の組織観察を行ったところ、酸化物超電導バルク体部の表面から内部に向かってバルク材料の微小なクラックや気孔を中心に樹脂が浸透して樹脂含浸表層が形成され、更にその外表面が樹脂含浸された布の密着層で緊密に被覆された構造となっていることが確認された。なお、図4で示すのは本実施例で得られた酸化物超電導体の縦断面図(前記図3のA-A断面図に相当する)の観察状態を模式図化したものであり、図5で示すのは本実施例で得られた酸化物超電導体の横断面図(前記図3のB-B断面図に相当する)の観察状態を模式図化したものである。

【0034】
以上のように、布被覆樹脂含浸処理を施さなかった試料は全て割れが観察されたのに対し、布被覆樹脂含浸処理した試料では割れが観察されず、比較的大きな捕捉磁場が得られた。なお、Sm211相の含有量による捕捉磁場の違いは、Sm211相の含有量による臨界電流密度の差を反映したものであり、また実施例1の試料に比べて捕捉磁場が大きく向上しているのはSm系の優れた臨界電流特性を反映したものである。

【0035】
〔実施例3〕Nd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Nd3.6Ba2.4Cu1.8z ( Nd422相)を0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、“酸素分圧を 0.1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1040℃に20分加熱した後、1010℃まで20分で冷却し、その後MgO単結晶を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。この時、結晶成長させた段階で、Nd422相が0及び10体積%の試料では大きなクラックが観察された。

【0036】
次に、割れの認められなかったNd422相をそれぞれ20,30及び40体積%含有するバルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で300℃において300時間の酸素アニ-ルを施した。次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いてこれらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法によりフィラ-入り樹脂を浸透させ、バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有し、かつその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0037】
次に、これら各超電導体を100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、布被覆樹脂含浸処理した試料の捕捉磁場は、Nd422相の含有量が20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ3T, 6.5T及び5Tという値が得られた。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0038】
以上のように、布被覆樹脂含浸処理を施さなかった試料では割れが観察されたのに対し、布被覆樹脂含浸処理した試料では割れが観察されず、比較的大きな捕捉磁場が得られた。

【0039】
〔実施例4〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料のそれぞれに対し、更にAgを10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1050℃に20分加熱した後、1000℃まで30分で冷却し、その後YBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0040】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いてこれらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法によりフィラ-入り樹脂を浸透させ、バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有し、かつその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0041】
次に、これら布被覆樹脂含浸処理しなかったバルク超電導体と布被覆樹脂含浸処理を施したバルク超電導体の何れもを100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料のうち、Y211相の含有量が0及び10体積%の試料は破壊していることが確認された。また、破壊していなかった“Y211相の含有量が20,30及び40体積%の試料”の捕捉磁場は、それぞれ 1.5T,3T及び2Tであった。一方、布被覆樹脂含浸処理を施した試料は全て破壊しておらず、捕捉磁場は、Y211相の含有量が0,10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 2.5T,3T, 4.5T,5T及び3Tという値が得られ、破壊していない試料で比較した場合、真空含浸した試料の方が全てにおいて高い捕捉磁場を記録した。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0042】
以上のように、Agを添加したY系試料においても、バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有し、かつその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸された布の密着被覆層を有する構成とすることにより捕捉磁場が向上することが分かる。

【0043】
〔実施例5〕Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内部に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有するバルク材料のそれぞれに対し、更にAgを15重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1010℃に20分加熱した後、990℃まで20分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。この時、結晶成長させた段階で、肉眼では観察されなかったものの、Sm211相を含まない試料ではクラックの存在が確認された。

【0044】
次に、クラックの認められなかったSm211相をそれぞれ10,20,30及び40体積%含有するバルク超電導体に対して、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。

【0045】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いてこれらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法によりフィラ-入り樹脂を浸透させ、バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有し、かつその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0046】
次に、これら各超電導体を100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料の捕捉磁場はSm211相の量が10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ5T,6T,6T及び4Tであった。一方、布被覆樹脂含浸処理した試料の捕捉磁場はSm211相の量が10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ6T,9T,9T及び7Tであった。また、「条件1」及び「条件2」の何れでフィラ-入り樹脂の含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0047】
以上のように、Sm系酸化物超電導体においても、Ag添加した試料に樹脂の真空含浸を施すと捕捉磁場が向上することが確認された。

【0048】
〔実施例6〕Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)を30体積%分散して含有するバルク材料に更に酸化銀を10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1010℃に20分加熱した後、990℃まで20分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを行った。

【0049】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いて、これらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法によりフィラ-入り樹脂を浸透させ、バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有しかつその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0050】
次に、これら各超電導体(布被覆樹脂含浸処理しなかったものも含む)を100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、液体窒素に浸漬して温度を77Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。そして、その後更にこの過程を繰り返し、一回毎に捕捉磁場の測定を行った。

【0051】
図6は、一回目に測定された捕捉磁場を「1」と規定し、これを基準にして繰り返しによる捕捉磁場の変化を示したグラフである。この図6から明らかなように、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料では数回の測定であっても測定回数と共に捕捉磁場は低下して行くのに対し、布被覆樹脂含浸処理した試料の場合はこの程度の測定回数では捕捉磁場は低下しないことが分かる。また、「条件1」及び「条件2」の何れでフィラ-入り樹脂の含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0052】
以上のように、布被覆樹脂含浸処理した試料では、繰り返しの冷却及び電磁力印加に対しても捕捉磁場の劣化を防ぐ効果のあることが確認された。

【0053】
〔実施例7〕Gd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Gd2BaCuO5(Gd211相)を30体積%分散して含有するバルク材料の試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Gd0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1000℃に20分加熱した後、980℃まで20分で冷却し、その後GdBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを行った。

【0054】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いて、これらをそれぞれガラス繊維製の織布で固く包み込んだ後、真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法によりフィラ-入り樹脂を浸透させ、バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有し、かつその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸された布の密着被覆層を有した酸化物超電導体を作成した。

【0055】
次に、これら各超電導体(布被覆樹脂含浸処理しなかったものも含む)を100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、液体窒素に浸漬して温度を77Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。そして、その後更にこの過程を繰り返し、一回毎に捕捉磁場の測定を行った。

【0056】
図7は、一回目に測定された捕捉磁場を「1」と規定し、これを基準にして繰り返しによる捕捉磁場の変化を示したグラフである。この図7から明らかなように、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料では数回の測定であっても測定回数と共に捕捉磁場は低下して行くのに対し、布被覆樹脂含浸処理した試料の場合はこの程度の測定回数では捕捉磁場は低下しないことが分かる。また、「条件1」及び「条件2」の何れでフィラ-入り樹脂の含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0057】
以上のように、Gd系酸化物超電導体においても、真空含浸した試料では繰り返しの冷却及び電磁力印加に対しても捕捉磁場の劣化を防ぐ効果のあることが確認された。

【0058】
〔実施例8〕Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)を30体積%分散して含有するバルク材料の試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1010℃に20分加熱した後、990℃まで20分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを行った。

【0059】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、一部を除いて、これらをガラス繊維製の織布で固く包み込んだものと、ポリアミド系合成高分子繊維であるナイロン(商品名)繊維の織布で固く包み込んだものとを準備した。続いて、これら(布被覆を施さない資料も含む)を真空容器に入れて実施例1に示した「条件2」の含浸法によりフィラ-入り樹脂を浸透させ、「バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有した酸化物超電導体」と「バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有すると共にその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸されたガラス繊維製布の密着被覆層を有した酸化物超電導体」と「バルク体表層部にフィラ-分散樹脂含浸層を有すると共にその外表面にフィラ-分散樹脂が含浸されたポリアミド系合成高分子繊維製布の密着被覆層を有した酸化物超電導体」とを作成した。

【0060】
次に、これら各超電導体を100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、液体窒素に浸漬して温度を77Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。そして、その後更にこの過程を繰り返し、一回毎に捕捉磁場の測定を行った。

【0061】
図8は、一回目に測定された捕捉磁場を「1」と規定し、これを基準にして繰り返しによる捕捉磁場の変化を示したグラフである。この図8から明らかなように、布被覆樹脂含浸処理しなかった試料では、フィラ-分散樹脂含浸層を有していても測定回数が多くなると捕捉磁場が目立って低下して行くのに対し、布被覆樹脂含浸処理した試料の場合は測定回数が多くなっても捕捉磁場は殆ど低下しないことが分かる。特に、ポリアミド系合成高分子繊維製布の密着被覆層を有した酸化物超電導体では、測定回数が多くなっても捕捉磁場は全く低下傾向を見せていない。以上のように、酸化物超電導バルク体の外表面に“樹脂含浸された布の密着被覆層”を有してなる酸化物超電導体では繰り返しの冷却及び電磁力印加に対しても捕捉磁場の劣化は殆どなく、優れた特性安定性を備えていることが明らかである。

【0062】
なお、上述の結果は、“樹脂含浸された布の密着被覆層”がその緊縛力でもって試料に高い破壊強度を付与しているだけでなく、試料を液体窒素で冷却した際に試料表面と内部で生じる大きな温度差を緩和して熱歪を和らげるようにも作用することを示していると考えられる。

【0063】
〔実施例9〕まず、実施例1に示す方法で得た「YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相を30体積%分散して含有するY-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体」と、実施例6に示す方法で得た「 Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Sm2BaCuO5 相を30体積%分散して含有するSm-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体」と、実施例7に示す方法で得た「 Gd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Gd2BaCuO5 相を30体積%分散して含有するGd-Ba-Cu-O系酸化物超電導バルク体」とを準備した。

【0064】
次いで、これら各バルク体につき、一部はそのまま無処理のものとして残し、その他のものについては表1に示す各処理を適宜組み合わせて施した。ここで、「布被覆層無しでのエポキシ樹脂含浸」の処理は、実施例2で示した「条件4」の処理においてバルク体に布被覆を行わないで含浸処理する方法を採用した。また、「布被覆層無しでのフィラ-入りエポキシ樹脂含浸」の処理は、実施例1で示した「条件2」の方法を採用した(フィラ-には石英ガラス粉を使用)。更に、布被覆層を施す場合は、バルク体を各材質の布で固く包み込んだ後、前記「条件4」の方法か、あるいは前記「条件2」の方法(この場合には布で包んだバルク体を覆うように樹脂を注ぎ込む)によって樹脂含浸を行った。

【0065】

【表1】
JP0003100375B1_000002t.gif【0066】次に、前記無処理のバルク超電導体及び上記各処理を施したバルク超電導体をそれぞれ100Kまで急冷し、10Tの磁場を印加した後、液体窒素に浸漬して温度を77Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。そして、その後更にこの過程を20回繰り返し(1回の過程中で5回の熱衝撃が加わる)、捕捉磁場の測定を行った。

【0067】
この捕捉磁場の測定結果を前記表1に示した。なお、表1中の「捕捉磁場の測定結果を表す数値」は、1回目に測定された捕捉磁場を「1」と規定し、この基準値に対する20回目の測定値の割合である。表1に示される結果からも、本発明に係る酸化物超電導体の有為性は明らかである。

【0068】
ところで、ここでは樹脂含浸布被覆したY系,Sm系,Nd系及びGd系の銅酸化物超電導体についての実施例を示すに止めたが、これらの他にLa系,Eu系,Dy系,Ho系,Er系,Tm系及びYb系あるいはこれら希土類元素を複合で含む系の酸化物超電導バルク体を適用した場合でも、その他の材質の布を適用した場合でも同様に優れた効果を発揮することは確認済である。

【0069】

【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれば、高い捕捉磁場の確保といった超電導特性の向上だけでなく、冷却及び昇温の温度履歴や電磁力印加を繰り返し行った電磁的履歴あるいは腐食性雰囲気中での長期使用等の場合においても捕捉磁場の劣化がない酸化物超電導体を容易かつ安価に提供することができるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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