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明細書 :耐割れ性に優れた酸化物超電導体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3090658号 (P3090658)
登録日 平成12年7月21日(2000.7.21)
発行日 平成12年9月25日(2000.9.25)
発明の名称または考案の名称 耐割れ性に優れた酸化物超電導体及びその製造方法
国際特許分類 C01G  3/00      
C01G  1/00      
FI C01G 3/00 ZAA
C01G 1/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願平11-238477 (P1999-238477)
出願日 平成11年8月25日(1999.8.25)
審査請求日 平成11年12月24日(1999.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391004481
【氏名又は名称】財団法人国際超電導産業技術研究センター
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】富田 優
【氏名】村上 雅人
個別代理人の代理人 【識別番号】100088270、【弁理士】、【氏名又は名称】今井 毅
審査官 【審査官】五十棲 毅
参考文献・文献 特開 平2-129812(JP,A)
特開 昭64-709(JP,A)
特開 平2-158013(JP,A)
調査した分野 C01G 1/00
要約 【課題】 大きな電磁力や使用時の急激な昇温・冷却に伴う熱歪といった外力や内部応力に十分に耐え、長期にわたって高い捕捉磁場を安定して発揮できる酸化物超電導体を提供する。
【解決手段】 例えば“希土類元素を含む銅酸化物超電導体”等の酸化物超電導体を、低融点金属が含浸した酸化物超電導バルク体、あるいは低融点金属が含浸しかつ外表面に低融点金属の薄層を有した酸化物超電導バルク体からなる構成とする。これら酸化物超電導体は、減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と溶融状態の低融点金属とを接触させることによって製造することができる。なお、予め酸化物超電導バルク体に孔を設けておくことによって溶融状態の低融点金属との接触面を酸化物超電導バルク体の外表面と前記孔の内表面の両方とすれば、製造能率や製品性能の更なる向上が期待できる。
特許請求の範囲 【請求項1】
低融点金属が含浸した溶融法による酸化物超電導バルク体からなることを特徴とする、耐割れ性に優れた酸化物超電導体。

【請求項2】
低融点金属が含浸し、かつ外表面に低融点金属の薄層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体からなることを特徴とする、耐割れ性に優れた酸化物超電導体。

【請求項3】
酸化物超電導バルク体が希土類元素(Y,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)を含む銅酸化物超電導体である、請求項1又は2記載の耐割れ性に優れた酸化物超電導体。

【請求項4】
減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と溶融状態の低融点金属とを接触させることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の耐割れ性に優れた酸化物超電導体の製造方法。

【請求項5】
予め酸化物超電導バルク体に孔を設けておくことにより、溶融状態の低融点金属との接触面を酸化物超電導バルク体の外表面と前記孔の内表面の両方とすることを特徴とする、請求項4記載の耐割れ性に優れた酸化物超電導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】この発明は、電磁力や熱歪等の内外力による割れの発生が抑えられ、長期にわたって高い捕捉磁場を維持することが可能な耐割れ性に優れた酸化物超電導体、並びにその製造方法に関するものである。そして、本発明により提供される酸化物超電導体は、磁気浮上列車,エネルギ-貯蔵装置等の広範囲な用途に供することができ、それらの性能向上に大きな役割を果たすことが期待される。

【0002】

【従来技術とその課題】近年、 LiTi23, Ba(Bi,Pb)O3 ,(Ba,K) BiO3 等の比較的臨界温度(Tc)の高い酸化物超電導材料が見出されて以来、酸化物超電導材料の研究に拍車がかかり、それまで予想もされなかったほどの高い臨界温度(Tc)を持つ(La,Sr)2CuO4 ,REBa2Cu37 (REは希土類元素),Bi2Sr2Ca2Cu310,Ti2Ba2Ca2Cu310,HgBa2Ca2 Cu38 等といった銅酸化物超電導材料が次々と生み出されている。

【0003】
ところで、超電導材料は常電導材料に比べて臨界電流密度が高いために大電流を損失なく流すことが可能であるが、このように大電流を流した場合には超電導体に大きな電磁力が働くので材料強度によっては材料が破壊する場合が知られている。特に、最近では溶融法によるバルク高温超電導体(特に銅酸化物超電導体)の特性向上と大型化が進んでバルク体に捕捉できる磁場の大きさが飛躍的に向上し、5テスラを超える磁場が捕捉されるようにまでなっているが、このように捕捉磁場が増加するとそれに伴って材料にかかる電磁力も増大するため、最近では材料強度によって捕捉磁場が制限されてしまうといった事態に至っている。そのため、捕捉磁場を利用したバルク超電導磁石の性能向上のためには、捕捉磁場の更なる向上よりもむしろ材料の機械的特性向上が重要となっている。

【0004】
更に、上述のような超電導体に所望する特性を発現させるためには超電導体を極低温度(少なくとも液体窒素温度以下の温度)に冷却する必要があるが、バルク酸化物超電導材の場合にはその際の熱衝撃も割れ発生の大きな原因となっている。

【0005】
そこで、溶融法によるバルク酸化物超電導体の強化方法として、次の2つの方法が提案されている。1つは「Agを添加した原材料からバルク酸化物超電導体を育成する手法」であり、この方法によって得られたバルク酸化物超電導体は優れた機械的強度を示すとされている{例えば「Japanese Journal of Applied Physics 」Vol.70, No.9(1991) の第4989~4994頁や<HAN>、</HAN> 「Superconductor Science and Technology 」11(1998), 第1345~1347頁等を参照}。また、他の1つは、「バルク超電導材料の外周に金属リングを嵌め込み<HAN>、</HAN> 該バルク材料に予め“圧縮の歪”を付加しておく方法」であり{「Extened Abstractof ISTEC International Workshop」(1998),第 115~ 118頁}、この方法によると、予付加の圧縮歪により磁場を捕捉させた時に生じる引張応力が緩和されるので材料の破壊が抑えられ、捕捉磁場が向上するとされている。

【0006】
しかしながら、前記「Ag添加による強化法」では、コスト面の不利を余儀なくされるだけでなく、材料に加わる力がより大きい使用状態に置かれた場合の割れ防止効果が十分でないと懸念が拭えない上、長期にわたって使用した際の割れ発生を抑えるのは非常に難しかった。一方、「外周に金属リングを嵌め込む方法」では、金属リングの嵌め込み作業に意外な手間を要するほか、材料の全面を金属リングで覆うことが困難であるなど金属リングの嵌め込み面にも制限を受けるので、やはり意図する十分な割れ防止効果を得るのは難しかった。

【0007】
このようなことから、本発明が目的としたのは、大きな電磁力や使用時の急激な昇温・冷却に伴う熱歪といった外力や内部応力に十分に耐え、長期にわたって高い捕捉磁場を安定して発揮できる溶融法により製造された酸化物超電導体の容易かつ安価な提供手段を確立することであった。

【0008】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、次のような新規知見を得ることができた。
a) 溶融法による酸化物超電導バルク体は疑似単結晶状態のセラミックスであるが、実際にはその製造過程において微小なクラックや気孔が内在されるのを防止することが困難である。特に、その表層部に微小クラックや気孔が内在されがちである。
b) そして、このような酸化物超電導バルク体に“大きな機械的衝撃力",“急激な温度変化による熱衝撃力",“大きな電磁気力”等が加わると、前記クラックや気孔に応力集中が起こり、このクラックや気孔を起点として比較的大きな割れに進展する。
c) 酸化物超電導体においては、上述のような比較的大きな割れが生じると、これが超電導電流の妨げとなるため捕捉磁場の大きな低下をもたらす。

【0009】
d) ところが、酸化物超電導バルク体を減圧雰囲気下において溶融状態の低融点金属(融点が200℃程度以下乃至は300℃程度以下の低融点金属)と接触させると、溶融法により製造された材料密度の高い酸化物超電導バルク体であっても前記低融点金属は該バルク体の表面に開口した微小クラックや気孔を通じてバルク体内部に円滑に浸透し、バルク体内の微小クラックや気孔を低融点金属で埋めてしまう現象が起きる。そして、このように内部の微小クラックや気孔が低融点金属で埋められた酸化物超電導バルク体では、その微小クラックや気孔の部位に応力集中が起きるのが緩和され、これらを起点とした割れの進展が抑えられるので、“大きな機械的衝撃力",“急激な温度変化による熱衝撃力",“大きな電磁気力”等が加わった場合でも捕捉磁場が大きく低下するといった事態が生じなくなる。
e) この場合、低融点金属の含浸がバルク体の中心部にまで達せずに極く表層部(十分の数mm程度)に止まっていたとしても、割れ進展の抑制効果は大きく、長期にわたって十分に高い捕捉磁場を維持することが可能になる。

【0010】
f) なお、酸化物超電導バルク体は湿気や炭酸ガスの多い腐食性雰囲気に長時間曝されると、腐食によって材料劣化を生じたり反応相が生じたりして新たな割れが生じてこれが進展するおそれがあるが、低融点金属の含浸処理を行う際に酸化物超電導バルク体の外表面に低融点金属の薄層が付着した状態でこれを凝固させ、酸化物超電導バルク体の表面が低融点金属の薄層で覆われた状態とした場合には、バルク体内に含浸した低融点金属とバルク体表面を覆った低融点金属薄層の作用が相まって割れ進展の抑制効果が一段と向上するだけでなく、表面の耐食性も著しく改善され、酸化物超電導バルク体の使用時における外力,内部応力あるいは腐食による割れの進展が極力抑えられ、より長期にわたって十分に高い捕捉磁場の維持が可能となる。

【0011】
g) また、予め酸化物超電導バルク体に孔を設けておいてから低融点金属の含浸処理を行うと、低融点金属の含浸がバルク体の外表面と前記孔の内表面の両方からなされるので、含浸処理の時間を短縮できるだけでなく、低融点金属をバルク体の内部深くまで含浸させることが容易となって性能維持効果の持続性をより向上させることができる。

【0012】
h) しかも、低融点金属の含浸や表面薄膜層の形成による酸化物超電導バルク体マトリックスの超電導特性の劣化は全く認められないため、これらの方法は酸化物超電導体の優れた超電導特性を維持したままで機械的特性,耐食性を向上するという極めて有利な手段となる。

【0013】
本発明は、上記知見事項等を基にして完成されたものであり、下記の酸化物超電導体並びに該酸化物超電導体の製造方法を提供するものである。
1) 低融点金属が含浸した溶融法による酸化物超電導バルク体からなることを特徴とする、耐割れ性に優れた酸化物超電導体。
2) 低融点金属が含浸し、かつ外表面に低融点金属の薄層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体からなることを特徴とする、耐割れ性に優れた酸化物超電導体。
3) 酸化物超電導バルク体が希土類元素(Y,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)を含む銅酸化物超電導体である、前記1)項又は2)項記載の耐割れ性に優れた酸化物超電導体。
4) 減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と溶融状態の低融点金属とを接触させることを特徴とする、前記1)項乃至3)項の何れかに記載の耐割れ性に優れた酸化物超電導体の製造方法。
5) 予め酸化物超電導バルク体に孔を設けておくことにより、溶融状態の低融点金属との接触面を酸化物超電導バルク体の外表面と前記孔の内表面の両方とすることを特徴とする、前記4)項に記載の耐割れ性に優れた酸化物超電導体の製造方法。

【0014】
ここで、本発明に適用される溶融法による酸化物超電導バルク体としてはこれまで知られていた何れの種類のものでも良いが、捕捉磁場の高い高温超電導体として知られるRE-Ba-Cu-O系超電導体(REは希土類元素であってY,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上を意味する)として知られる銅酸化物超電導バルク体が好適であると言える。中でも、酸化物超電導バルク体が、捕捉磁場のより高い材料として知られているREBa2Cu3y (REはY,Dy,Ho,Er,Tm又はYbのうちの1種以上)を母相とすると共に該母層中に50体積%以下のRE2 BaCuO5(REはY,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体や、RE1+x Ba2-x Cu3y ( REはLa,Nd,Sm,Eu及びGdのうちの1種以上であって<HAN>、</HAN> 好ましくは-0.1 <x<0.2, 6.5<y<7.2 の範囲のもの)を母相とすると共に該母層中に50体積%以下のRE4-2x Ba2+2x Cu2-x 10-2x (REはLa及びNdのうちの1種以上であって<HAN>、</HAN> 好ましくは-0.2 <x<0.3 の範囲のもの)相又はRE2 BaCuO5 ( REはSm,Eu及びGdの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体がより好適であると言える。

【0015】
また、酸化物超電導バルク体に含浸させる「低融点金属」としては、酸化物超電導バルク体は空気中である温度以上に加熱されると結合酸素が逸散してしまって超電導特性を示さなくなることから、前記“酸素逸散を生じる温度”よりも低い融点を有した金属あるいは合金を用いる必要がある。なお、この“酸素逸散を生じる温度”はY-Ba-Cu-O超電導バルク体では約300℃程度、Gd-Ba-Cu-O超電導バルク体で約250℃程度、Sm-Ba-Cu-O超電導バルク体やNd-Ba-Cu-O超電導バルク体で約200℃程度である。従って、融点が200℃以下の低融点金属であれば何れの種類の酸化物超電導バルク体にも適用することができる。

【0016】
因みに、本発明に適用できる低融点金属の具体例とその溶融開始温度を以下に示す。
(a) 44.7wt%Bi-22.6wt%Pb-8.3wt%Sn-5.3wt%Cd-19.1wt%In合金
(溶融開始温度:46.7℃),
(b) 42.34wt%Bi-22.86wt%Pb-11.0wt%Sn-8.46wt%Cd-15.34wt%In 合金
(溶融開始温度:47.0℃),
(c) 49.4wt%Bi-18.0wt%Pb-11.6wt%Sn-21.0wt%In合金
(溶融開始温度:58.0℃),
(d) 48.0wt%Bi-25.6wt%Pb-12.8wt%Sn-9.6wt%Cd-4.0wt%In合金
(溶融開始温度:61.0℃),
(e) 50.0wt%Bi-25.0wt%Pb-12.5wt%Sn-12.5wt%Cd合金
(溶融開始温度:60.0℃),
(f) 50.0wt%Bi-26.7wt%Pb-13.3wt%Sn-10.0wt%Cd合金
(溶融開始温度:70.0℃),
(g) 40.0wt%Bi-40.0wt%Pb-11.5wt%Sn-10.0wt%Cd合金
(溶融開始温度:70.0℃),
(h) 57.0wt%Bi-17.0wt%Sn-26.0wt%In合金 (溶融開始温度:78.8℃),
(i) 51.65wt%Bi-40.2wt%Pb-8.15wt%Cd 合金(溶融開始温度:91.5℃),
(j) 52.5wt%Bi-32.0wt%Pb-15.5wt%Sn合金 (溶融開始温度:95.0℃),
(k) 52.5wt%Bi-32.0wt%Pb-15.5wt%Sn合金 (溶融開始温度:95.0℃),
(l) 50.0wt%Bi-28.0wt%Pb-22.0wt%Sn合金 (溶融開始温度:100 ℃),
(m) 53.9wt%Bi-25.9wt%Sn-20.2wt%Cd合金 (溶融開始温度:102.5 ℃),
(n) 55.5wt%Bi-44.5wt%Pb合金 (溶融開始温度:124 ℃),
(o) 58.0wt%Bi-42.0wt%Sn合金 (溶融開始温度:138 ℃),
(p) 40.0wt%Bi-60.0wt%Sn合金 (溶融開始温度:138 ℃),
(q) 50.0wt%Bi-27.5wt%Pb-13.5wt%Sn-9.0wt%Sb 合金
(溶融開始温度:148 ℃),
(r) Bi (溶融開始温度:271.3 ℃),
(s) In (溶融開始温度:156.2 ℃),
(t) Sn (溶融開始温度:231.9 ℃)。

【0017】
ところで、先に説明した従来知見に基づき必要に応じて酸化物超電導バルク体にAgを含有させることは更なる強度向上に有利であって、高い捕捉磁場を維持する上で効果的であるが、その含有割合が40重量%を超えると超電導特性が劣化傾向を見せる。従って、Agを含有させる場合には、その含有割合は40重量%以下に抑えるのが好ましい。

【0018】
溶融法による酸化物超電導バルク体に低融点金属を含浸させる手法としては、真空等の減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と溶融させた液状の低融点金属とを接触させる方法が好適であるが、“加圧含浸法”等といったその他の方法によっても差し支えはない。溶融法による酸化物超電導バルク体を減圧雰囲気下あるいは加圧雰囲気下において溶融状態の低融点金属と接触させると、バルク体の表面に開口した微小クラックや気孔を通じて低融点金属はバルク体内部に浸透し、バルク体内(特に表層部内)の微小クラックや気孔を埋めつくす。そのため、微小クラックや気孔の部位に応力集中が起きるのが緩和され、これらを起点として酸化物超電導バルク体に割れが進展するのが抑えられる。従って、酸化物超電導バルク体に“大きな機械的衝撃力",“急激な温度変化による熱衝撃力",“大きな電磁気力”等が加わった場合でも捕捉磁場が大きく低下することが無くなる。

【0019】
なお、減圧雰囲気下含浸や加圧含浸の手法ではなく、単に酸化物超電導バルク体と溶融させた液状の低融点金属とを接触させるだけの手法では低融点金属の含浸は起きず、高い捕捉磁場を長期にわたって維持する効果は得られない。

【0020】
また、低融点金属の含浸処理を行う際に酸化物超電導バルク体の外表面に低融点金属の薄層が付着した状態でこれを凝固させれば、内部に低融点金属が含浸され、かつ表面が低融点金属の薄層(例えば十分の数mm以上程度)で覆われた状態の酸化物超電導バルク体が得られるが、このような超電導バルク体では、バルク体内に含浸した低融点金属とバルク体表面を覆った低融点金属薄膜層の作用が相まって割れ進展の抑制効果が一段と向上するだけでなく、表面の耐食性も著しく改善され、酸化物超電導バルク体の使用時における外力,内部応力あるいは腐食による割れの進展が極力抑えられ、より長期にわたって十分に高い捕捉磁場の維持が可能となる。

【0021】
上述のように、本発明は、加熱・冷却による大きな熱歪や大きな電磁力等に十分に耐え得る機械的特性と十分な耐食性を備えていて高い捕捉磁場特性を長期にわたって維持できる“酸化物超電導体”を容易かつ安価に提供するもので、例えば酸化物超電導バルク体を高電磁力下で応用する場合や、酸化物超電導バルク体に磁場を捕捉させて高温超電導磁石として利用する場合に極めて有用な技術となり得る。

【0022】
以下、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】〔実施例1〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、常法通りにYBa2Cu3y 素材を1100℃に20分加熱した後、1050℃まで30分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0023】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき“低融点金属の含浸処理を行わない組”と“これらを真空容器に入れて表層部に低融点金属を含浸させた組”とを準備した。なお、低融点金属の含浸処理では、まず真空容器中で超電導バルク体を130℃まで加熱すると共に、真空容器内を1Torrまで減圧した後、130℃に加熱して溶融させた 55.5wt%Bi-44.5wt%Pb合金(融点:124℃)を減圧下でバルク体に注いて浸透させた。そして、その後、真空容器内を大気圧にまで加圧すると共に、バルク体の温度を室温にまで低下させた。

【0024】
次いで、これら各超電導体を77Kまで冷却し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去してからホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、低融点金属の含浸処理を行わなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、低融点金属の含浸処理を実施した試料(低融点金属の含浸が外表面から約1mmの厚さに及んでいることを確認済)の捕捉磁場は、Y211相の含有量が0,10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 2.5T,3T,4T,4T及び3Tという値が得られた。

【0025】
また、低融点金属の含浸処理を実施した試料については、「これらのバルク体に10Tの磁場を印加して77Kまで急冷した後<HAN>、</HAN> 磁場を除去する」という処理を10回繰り返したが、各処理過程での捕捉磁場は全く同じ値を示していて性能劣化は認められなかった。なお、Y211相の含有量による捕捉磁場の違いは、Y211含有量による臨界電流密度の差を反映しているものであることは言うまでもない。

【0026】
〔実施例2〕
Sm0.9Ba2.1Cu3y 酸化物超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ30及び40体積%分散して含有するバルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1200℃に20分加熱した後、1050℃まで20分で冷却し、その後NdBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。次に、上記各バルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。

【0027】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、“低融点金属の含浸処理を行わない組”と“これらを真空容器に入れて表層部に低融点金属を含浸させた組”とを準備した。なお、低融点金属の含浸処理では、まず真空容器中で超電導バルク体を130℃まで加熱すると共に、真空容器内を1Torrまで減圧した後、130℃に加熱して溶融させた 55.5wt%Bi-44.5wt%Pb合金(融点:124℃)を減圧下でバルク体に注いて浸透させた。そして、その後、真空容器内を大気圧にまで加圧すると共に、バルク体の温度を室温にまで低下させた。

【0028】
次いで、これら各超電導体を77Kまで冷却し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去してからホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、低融点金属の含浸処理を行わなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、低融点金属の含浸処理を実施した試料(低融点金属の含浸が外表面から約1mmの厚さに及んでいることを確認済)の捕捉磁場は、Sm211相の含有量が30及び40体積%の試料においてそれぞれ8T及び 6.5Tという値が得られた。

【0029】
また、低融点金属の含浸処理を実施した試料については、「これらのバルク体に10Tの磁場を印加して77Kまで急冷した後<HAN>、</HAN> 磁場を除去する」という処理を10回繰り返したが、各処理過程での捕捉磁場は全く同じ値を示していて性能劣化は認められなかった。

【0030】
〔実施例3〕Nd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Nd3.6Ba2.4Cu1.8z ( Nd422相)を20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、“酸素分圧を 0.1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1040℃に20分加熱した後、1010℃まで20分で冷却し、その後MgO単結晶を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。次に、上記各バルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で300℃において300時間の酸素アニ-ルを施した。

【0031】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、“低融点金属の含浸処理を行わない組”と“これらを真空容器に入れて表層部に低融点金属を含浸させた組”とを準備した。なお、低融点金属の含浸処理では、まず真空容器中で超電導バルク体を130℃まで加熱すると共に、真空容器内を1×10-1Torrまで減圧した後、130℃に加熱して溶融させた 55.5wt%Bi-44.5wt%Pb合金(融点:124℃)を減圧下でバルク体に注いて浸透させた。そして、その後、真空容器内を大気圧にまで加圧すると共に、バルク体の温度を室温にまで低下させた。

【0032】
次いで、これら各超電導体を77Kまで冷却し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去してからホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、低融点金属の含浸処理を行わなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、低融点金属の含浸処理を実施した試料(低融点金属の含浸が外表面から約1mmの厚さに及んでいることを確認済)の捕捉磁場は、Nd422相の含有量が20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ3T, 6.5T及び5Tという値が得られた。

【0033】
また、低融点金属の含浸処理を実施した試料については、「これらのバルク体に10Tの磁場を印加して77Kまで急冷した後<HAN>、</HAN> 磁場を除去する」という処理を10回繰り返したが、各処理過程での捕捉磁場は全く同じ値を示していて性能劣化は認められなかった。

【0034】
〔実施例4〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料のそれぞれに対し、更にAgを10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1050℃に20分加熱した後、1000℃まで30分で冷却し、その後YBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0035】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき“低融点金属の含浸処理を行わない組”と“これらを真空容器に入れて表層部に低融点金属を含浸させた組”とを準備した。なお、低融点金属の含浸処理では、まず真空容器中で超電導バルク体を240℃まで加熱すると共に、真空容器内を5×10-1Torrまで減圧した後、240℃に加熱して溶融させた金属Sn(融点:231.9℃)を減圧下でバルク体に注いて浸透させた。そして、その後、真空容器内を大気圧にまで加圧すると共に、バルク体の温度を室温にまで低下させた。

【0036】
次いで、これら各超電導体を77Kまで冷却し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去してからホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、低融点金属の含浸処理を行わなかった試料の捕捉磁場は、Y211相の含有量が20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 1.5T,3T及び2Tであった。これに対して、低融点金属の含浸処理を実施した試料(低融点金属の含浸が外表面から約1mmの厚さに及んでいることを確認済)の捕捉磁場は、Y211相の含有量が20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 4.5T,5T及び3Tという値が得られた。

【0037】
また、低融点金属の含浸処理を実施した試料については、「これらのバルク体に10Tの磁場を印加して77Kまで急冷した後<HAN>、</HAN> 磁場を除去する」という処理を10回繰り返したが、各処理過程での捕捉磁場は全く同じ値を示していて性能劣化は認められなかった。

【0038】
〔実施例5〕Nd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Nd3.6Ba2.4Cu1.8z ( Nd422相)を20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、“酸素分圧を 0.1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1040℃に20分加熱した後、1010℃まで20分で冷却し、その後MgO単結晶を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。次に、上記各バルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で300℃において300時間の酸素アニ-ルを施した。

【0039】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、低融点金属の含浸並びに表面被覆を施した。なお、低融点金属の含浸並びに表面被覆処理では、まず真空容器中で超電導バルク体を130℃に加熱すると共に真空容器内を1×10-1Torrまで減圧し、この状態で130℃に加熱して溶融させた 55.5wt%Bi-44.5wt%Pb合金(融点:124℃)を減圧下でバルク体に注いて浸透させると共に表面に付着させた。そして、その状態で真空容器内を大気圧にまで加圧すると共に、バルク体の温度を室温にまで低下させた。

【0040】
次いで、これら各超電導体を77Kまで冷却し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去してからホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。低融点金属の含浸並びに表面被覆処理を実施した試料(低融点金属の含浸が外表面から約1mmの厚さに及んでおり<HAN>、</HAN> かつ表面が約 0.5mm厚の低融点金属薄層で被覆されていることを確認済)の捕捉磁場は、Nd422相の含有量が20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ3T, 6.5T及び5Tであった。

【0041】
また、これら低融点金属の含浸並びに表面被覆処理を実施した試料に関し「バルク体に10Tの磁場を印加して77Kまで急冷した後<HAN>、</HAN> 磁場を除去する」という処理を10回繰り返したが、各処理過程での捕捉磁場は全く同じ値を示していて性能劣化は認められなかった。しかも、超電導バルク体の使用がなされる雰囲気中で長期間にわたって腐食を生じることがなく、腐食による性能劣化も生じないことが確認された。

【0042】
なお、ここでは、低融点金属を含浸させたY系,Sm系及びNd系の銅酸化物超電導体についての実施例を示すに止めたが、その他のLa系,Eu系,Gd系,Dy系,Ho系,Er系,Tm系及びYb系あるいはこれら希土類元素を複合で含む系の酸化物超電導バルク体に低融点金属を含浸させたものも、上記実施例の場合と同様に優れた効果を発揮することも確認済である。

【0043】

【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれば、高い捕捉磁場の確保といった超電導特性の向上だけでなく、冷却及び昇温の温度履歴や電磁力印加を繰り返し行った電磁的履歴あるいは腐食性雰囲気中での長期使用等の場合においても捕捉磁場の劣化がない酸化物超電導体を容易かつ安価に提供することができるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。