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明細書 :地下水に海水を含む漏水の流量測定方法および流量測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3647695号 (P3647695)
公開番号 特開2001-141545 (P2001-141545A)
登録日 平成17年2月18日(2005.2.18)
発行日 平成17年5月18日(2005.5.18)
公開日 平成13年5月25日(2001.5.25)
発明の名称または考案の名称 地下水に海水を含む漏水の流量測定方法および流量測定装置
国際特許分類 G01F 22/00      
G01M  3/20      
FI G01F 22/00
G01M 3/20 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願平11-319780 (P1999-319780)
出願日 平成11年11月10日(1999.11.10)
審査請求日 平成15年3月12日(2003.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】坂井 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】白石 光男
参考文献・文献 特開昭58-176518(JP,A)
特開昭63-103995(JP,A)
特開昭59-120814(JP,A)
特開平07-260988(JP,A)
特許請求の範囲 【請求項1】
地下水に海水を含んだ漏水の漏出流量を測定するにあたり、漏水の流量測定値と該漏水中の海水成分の濃度測定値とから漏水流量と測定成分濃度との関係を関数化し、前記関数化されたものに漏水中の海水成分の濃度測定値を代入して漏水流量の値を算出するものとしたことを特徴とする地下水に海水を含む漏水の流量測定方法。
【請求項2】
地下水に海水を含んだ漏水の漏出流量を測定するにあたり、漏水の流量測定値と該漏水中の海水成分の濃度測定値との関係を関数化する手段と、漏水中の海水成分の濃度測定値を前記関数化されたものに代入して算出されたものを漏水流量とする流量算出手段とを備えたことを特徴とする地下水に海水を含む漏水の流量測定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、漏水流量と海水成分の濃度との関係は一次関数であることを特徴とする地下水に海水を含んだ漏水の流量測定方法および流量測定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海底トンネル等の地下構造物のように海底や海岸近傍にあって、地下水に海水を含む漏水がある場合における漏水の流量測定方法および流量測定装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来技術】
こんにち、地下水面や海面より低い位置にトンネルやボックスカルバート等の地下構造物を築造することが頻繁に行われ、このような地下構造物では、漏出した水の自然排水ができない場合があり、このときには地下構造物の水没を避けるため漏出した水を動力を使って地上に排出することが要求される。この様な地下構造物における漏水の要因には地下水の存在があげられるが、当該地下水の供給量は、梅雨や台風による集中的な大雨や逆に渇水等の自然環境(特に雨量)に左右されることもあって、緩慢ではあるが変化する。ところが、構造物の内部に漏出したこのような水の排出能力については漏水流量に対応させることが効率上好ましいだけでなく、漏水状態を把握することもメンテナンスの管理上、また、構造物の保安上の理由から要求される。そのためには、漏水流量を定期的に測定することが必要になり、このようなことは海水が漏水中に混入する海底や海岸に近い位置に築造した地下構造物についても同じことがいえる。
そしてこのような漏水流量の測定には、例えば三角ぜき(または四角ぜき)法というものが採用されている。この測定方法は、一般的に広く用いられる流量測定法であって、図9に示すように、必要において流水をせき止めできる三角ぜきSを形成し、該三角ぜきにせき止められ、これを乗り越えてくる流水の深さDから単位時間当たり(例えば1時間とか1日当たり)の漏水流量を算出するという直接的な測定手法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが前記三角ぜき法は、せき止め部位からの漏水がないよう粘土等のシール材を用いてしっかりとした目止めを素早く形成する必要がある一方で、測定後においては、排水のため設けられた貯留そうに前記シール材が流れ込まないよう使用ずみのシール材を完全に除去する必要に迫られ、測定作業が面倒かつ煩雑になり、しかも長時間を要するという問題がある。さらに三角ぜき法は、測定者個人が微妙な貯留水量を実測するものであるため、測定値に公正を期すため複数の測定者が必要で、作業能率が悪いという問題もあり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記のような実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、第1の発明は、地下水に海水を含んだ漏水の漏出流量を測定するにあたり、漏水の流量測定値と該漏水中の海水成分の濃度測定値とから漏水流量と測定成分濃度との関係を関数化し、前記関数化されたものに漏水中の海水成分の濃度測定値を代入して漏水流量の値を算出するものとしたことを特徴とする地下水に海水を含む漏水の流量測定方法である。
第2の発明は、地下水に海水を含んだ漏水の漏出流量を測定するにあたり、漏水の流量測定値と該漏水中の海水成分の濃度測定値との関係を関数化する手段と、漏水の海水成分の濃度測定値を前記関数化されたものに代入して算出されたものを漏水流量とする流量算出手段とを備えたことを特徴とする地下水に海水を含む漏水の流量測定装置である。
これらの発明において、漏水流量と海水成分の濃度との関係は一次関数であることを特徴とすることができる。
そして本発明は、このようにすることによって、一度、漏水流量と海水成分の濃度との関係を関数化しておけば、以降は海水成分の濃度を測定するだけで簡単に漏水流量の測定(算出)ができることになり、測定作業の簡略化および効率化が図れることになる。
【0005】
【発明の実施の形態】
海底や海岸近傍に築造された地下構造物には、地下水に海水を含む漏水が流入する。そして漏水中の地下水分の流量については前述したように天候等、自然環境による変動があるのに対して、海水分の流量については、海底や海岸から地下構造物に至るまでの海水流入経路が形成される地盤等は、地震等、格別のことがない限りは変化がないか変化があってもわずかであると認められるから、自然環境に左右されず一年を通してほとんど一定であるものと推定され、かつ、海水中の成分の濃度も一定である。そこで本発明は、地下水に海水を含む漏水については、前記流入量および成分濃度が一定であると推定される海水が、前述した変化があると認められる地下水によって希釈(地下水が混合)されたものが地下構造物内に漏出するものと推定したもので、この推定が正しければ、漏水流量と海水成分との関係は、例えば一次関数のように関数化されたものとして数式化され、そこでこの関数についてあらかじめ求めておき、この関数に、漏水中の海水成分の測定濃度を代入することで、地下水に海水を含む場合の漏水流量を容易に算出できるようにしたものである。
そして本発明では、後述するように、関門海峡の海底トンネルの漏水について実際に計測実験を繰り返し行った結果、漏水流量と海水成分であるナトリウムイオンの濃度との関係が一次関数として関数化できることを見出し、これによって前記推定が正しいものと確信するに至り、ここに本発明を完成したものである。
【0006】
ところで本発明を実施するにあたり、漏水中の地下水分の流量はもちろんであるが、海水分の流量についても、海底や海岸と測定場所とのあいだの地盤や漏水経路等に影響されるため各測定位置に固有なものとなり、この結果、一つの位置の漏水流量の測定をし、これに基づいて求めた関数について、これを他の全ての位置の関数として用いることができるというものではなく、個々の測定位置においてあらかじめ漏水流量と海水成分の濃度とを測定し、そしてこれらの関係についてそれぞれ関数化しておくことが必要となる。そしてその関数化のためには、例えば従来の三角ぜき法等の方法を用いて実際の漏水流量を測定する一方で、該漏水中の海水成分の濃度についても併せて測定し、これに基づいて該測定位置での漏水流量と海水成分の濃度との関係を関数化することが要求される。この関数化のためには、測定値について統計学上の処理をすることが精度向上のためには好ましく、その場合に、例えば通常知られた最小二乗法等の計算法を用いることができる。
流入した海水成分の濃度測定に用いられるものとしては、例えばナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)等の陽イオン、塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO2-)等の陰イオンの1種類または複数種類の濃度を選択的に測定することで行われる。濃度測定するにあたって好ましい海水成分としては、海水に多量に含まれ、かつ化学的に安定な成分であり、その好適な例としてはナトリウムイオンまたは塩化物イオンがこれに該当する。つまり、これら海水成分は地下水中にも含まれているが、その含有量の差が大きいほど測定誤差を減少させることになるからである。
そして、地下水に含まれる成分が多いもの(例えば、カルシウムイオン)を用いる場合には、地下水に由来する含有量の補正が必要になり、この結果、その補正分を考慮すると、関係式も一次関数とはならないが、ナトリウムイオンやカリウムイオンのように海水と地下水とで含有量の差が大きいものについては、測定結果からも直線の関係式が成立し、その補正は必要ないといえる。
さらにまた、本発明を実施するにあたり、精度をより向上させるためには、ナトリウムイオン1種類について関数化するのではなく、複数種類の含有成分について関数化し、これら複数の関数式からそれぞれ漏水流量を算出したものを平均化することで実行できることはいうまでもない。
【0007】
【実施例】
次ぎに、本発明の実施例について図面を用いて説明する。図1(A)は下関と門司とを結ぶ在来線鉄道の海底トンネル(関門トンネル)の概略縦断面図、同(B)は概略横断面図であって、該海底トンネルは、上り線本坑1、下り線本坑2、そして作業坑3の3本から構成されている。そのうちの上下線の本坑1、2は左右に並行状態でかつ線路方向の中間に向かうほど深くなるこう配変更点を有する略V字形の傾斜状態で築造されている。これに対して作業抗3は、前記本坑1、2の線路方向中間位置では該本坑1、2よりも深く位置するこう配変更点を有し、坑口はさらに深くなるよう傾斜した略逆V字形に築造され、そして下関方、門司方の各地上位置においてたて坑4、5が築造されている。そして上り線系統の漏水は、下関、門司方の各坑口から本坑f、j、本坑g、hを経て上り線本坑1のこう配変更点に達し、ここから下関方に向けた作業坑mを流れて該方のたて坑底nに達し、下関方たて坑4の坑口にくみ上げられ(下関方ポンプ室による揚水)て排水工流末(図示せず)にて下関方海岸に排出されるようになっている。これに対し、下り線系統の漏水は、下関、門司方の坑口から本坑a、e、本坑b、cを経て下り線本坑2のこう配変更点に達し、ここから門司方に向けた作業坑kを流れて該方のたて坑底lに達し、門司方たて坑5の坑口にくみ上げられ(門司方ポンプ室による揚水)て排水工流末(図示せず)にて門司方海岸に排出されるようになっている。
【0008】
ここで参考として地下水の含有成分と海水の含有成分の濃度について測定した結果を表1に表す。
【0009】
表1:地下水および海水の含有成分濃度/μg mL-1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
含有成分 Na Mg2+ Ca2+
───────────────────────────────
地下水注1 13 0.53 2.9 18
海 水注2 11,000 330 15 38
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
注1:門司の海岸から遠く離れた場所で採取した地下水
注2:日本海で採取した海水
【0010】
さて、関門海峡の海底トンネルにおいて、前記a~nの各位置についての漏水流量とナトリウムイオン濃度との測定をしたが、いま、その代表例として場所a、b、kの各位置について、漏水の流量(m-1)を三角ぜき法にて測定すると共に、その漏水中のナトリウムイオン濃度(μg mL-1)を測定し、これら測定されたデータをプロットしたものを図2、図3、図4に示す。これらプロットされたグラフ図を観察すると、何れの測定位置a、b、kにおいても、測定されたナトリウムイオン濃度と漏水流量との関係が直線的に変化していることが観測され、このことから、海水分の漏水流量は一定で、地下水分の流量には変化が認められるとの推論が正しいことが確認され、斯かる各データを各対応観測位置での基本データとし、このデータから漏水流量とナトリウムイオン濃度との関係を最小二乗法を用いて一次関数に関数化する。この関数が各グラフ図に示した直線である。そして以降については、各測定位置においてナトリウムイオン濃度を測定し、その測定値を前記関数に代入して漏水流量の算出をすることができる。
尚、残りの測定位置について、同様にして漏水流量とナトリウムイオン濃度とを測定したものをプロットした結果、同様に一次関数として関数化されるグラフの状態を呈したが、これらについては省略するものとする。
【0011】
次ぎに、図7には漏水流量測定装置が示されるが、該測定装置6は、前記海水成分であるナトリウムイオン濃度を測定することで漏水流量を表示するものであるが、このものは、書換え可能な記憶部を備えたマイクロコンピューターを制御部7として備えて構成されている。記憶部には、前記a~nの各測定位置での漏水流量とナトリウムイオン濃度との関係の関数が入力されている。さらに制御部7には、前記a~nの各測定位置を選択すべく切換えセットできる切換え操作具8と、ナトリウムイオン濃度を測定するためのセンサー(例えばイオン選択性電極)9が入力インターフェース側に接続され、そして前記a~nの測定位置を選択し、センサー9で漏水のナトリウムイオン濃度を測定すると、この値が該測定結果と選択位置とに対応する関数に代入され、漏水流量を表示部10に表示するよう構成されている。そしてこのものでは、測定現場に行って測定位置の選択と漏水中のナトリウムイオン濃度を測定するだけで該測定位置での漏水流量が表示されるが、このものでは、さらに各測定現場の漏水流量のデータを登録し、必要において該登録した漏水流量を表示部10に表示させることができると共に、パーソナルコンピューターに接続してこれら記憶したデータの送信ができるようになっている。つまり、遠隔的に漏水流量の監視ができる機能を有している。
【0012】
また、本発明を実施した場合、測定したナトリウムイオン濃度を、前記表1で示した関数から換算して海水流量を算出することができる。この結果を図5、図6に示す。このものは、上り線、下り線の各測定位置a~nにおける漏水流量と海水分の流量とをプロットしたもので、さらにその差が地下水分の流量となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は関門海峡の海底トンネル(関門トンネル)の縦断面図、(B)は同横断面図である。
【図2】測定位置aにおいての漏水流量と該漏水中のナトリウムイオン濃度とをプロットしたグラフ図である。
【図3】測定位置bにおいての漏水流量と該漏水中のナトリウムイオン濃度とをプロットしたグラフ図である。
【図4】測定位置kにおいての漏水流量と該漏水中のナトリウムイオン濃度とをプロットしたグラフ図である。
【図5】上り線においての各測定位置での漏水中の海水の割合を示すグラフ図である。
【図6】下り線においての各測定位置での漏水中の海水の割合を示すグラフ図である。
【図7】漏水流量の測定装置の斜視図である。
【図8】漏水量測定装置のブロック回路図である。
【図9】三角ぜき法の概略図である。
【符号の説明】
1、2 海底トンネルの本坑
3 海底トンネルの作業坑
4、5 たて坑
6 測定装置
7 制御部
8 切換え操作具
9 センサー
10 表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8