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明細書 :ハイブリッド型直動案内装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4235734号 (P4235734)
公開番号 特開2006-266404 (P2006-266404A)
登録日 平成20年12月26日(2008.12.26)
発行日 平成21年3月11日(2009.3.11)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
発明の名称または考案の名称 ハイブリッド型直動案内装置
国際特許分類 F16C  21/00        (2006.01)
F16C  23/04        (2006.01)
F16C  23/08        (2006.01)
F16C  29/02        (2006.01)
F16C  29/06        (2006.01)
F16C  33/40        (2006.01)
F16C  33/58        (2006.01)
FI F16C 21/00
F16C 23/04 B
F16C 23/08
F16C 29/02
F16C 29/06
F16C 33/40
F16C 33/58
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2005-085721 (P2005-085721)
出願日 平成17年3月24日(2005.3.24)
審査請求日 平成17年8月23日(2005.8.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
発明者または考案者 【氏名】小幡 文雄
【氏名】上原 一剛
個別代理人の代理人 【識別番号】100078204、【弁理士】、【氏名又は名称】滝本 智之
審査官 【審査官】谿花 正由輝
参考文献・文献 特開平05-060129(JP,A)
特開平03-181617(JP,A)
特開平06-198500(JP,A)
実開昭58-028129(JP,U)
実公昭46-001683(JP,Y1)
特開平02-051619(JP,A)
特開2004-357372(JP,A)
調査した分野 F16C 21/00
F16C 23/04
F16C 23/08
F16C 29/02
F16C 29/06
F16C 33/40
F16C 33/58
特許請求の範囲 【請求項1】
鏡面仕上げした摺動面を有するすべり案内方式直動案内と転動体を利用した転がり案内方式直動案内との組み合わせからなる直動案内装置であって、転動体を保持するための軌道および高硬度に仕上げた鏡面の摺動面を有する保持器と、前記保持器を装着する移動体と、摺動面を高硬度に仕上げた基台と、前記保持器の摺動面と前記基台の摺動面の間に供給する潤滑油とを備え、前記保持器に前記転動体を当該転動体の運動面を摺動面と同一面となるように配置するとともに前記転動体の一部を前記保持器の摺動面から突出させることによって前記保持器の摺動面と前記基台の摺動面間に隙間を保持するようになして、前記保持器の摺動時に摺動面間に供給される潤滑液による潤滑油膜圧力の作用によって摺動面と転動体に作用する荷重の負荷分担率を変更できるようになすとともに、転動体を保持するための前記軌道は前記転動体が循環移動する無限軌道であり、更に前記基台の一部に当該基台と前記転動体との接触を防ぐための溝が設けられていることを特徴とするハイブリッド型直動案内装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、往復摺動する直動案内装置に関するものであり、工作機械のテーブルや主軸ユニットの案内機構として用いられる。
【背景技術】
【0002】
基台と移動体から構成される直動案内は、移動体が基台に対して往復運動することによって移動体に設置した対象物の位置決めを行う装置であり、機械加工を行う工作機械の案内装置として用いられている。工作機械に用いられる直動案内には主として転がり案内方式とすべり案内方式があり、工作機械の仕様によっていずれかが選択される。
【0003】
転がり案内方式の直動案内は、移動体に設けた無限軌道に挿入した転動体が基台および移動体と接触した状態で転動し、移動体を相対運動させる。この転がり案内方式の直動案内は、基台と移動体の間に発生する摩擦力が小さいという利点を有しているため、被削材や切削工具を高速で位置決めする工作機械に広く用いられる。しかし、転がり案内方式の直動案内は、転動体を無限軌道内で循環させるため、その構造が複雑になり、特に、直動案内のサイズが大きくなるといった問題があった。また、転動体同士の干渉や転動体と基台および移動体の接触によって発生する音が高速運転時に顕著になるといった問題や、基台または移動体と転動体の接触が点または線接触であることに起因して移動体の振動減衰性が悪いといった問題もあるため、重切削対応の工作機械に用いる案内としては適していない。
【0004】
一方、すべり案内方式の直動案内は、図1に示すように、移動体22と基台24の双方に設けた摺動面23、25が対向して面接触し、移動体22に作用する荷重を基台24の摺動面で支持して摺動する案内方式であるため、転がり方式直動案内に比べて剛性および振動減衰性が高く、難削材料の切削に用いられる工作機械の案内として好適である。尚、図1中、21は工作物、26は送りねじを示す。
【0005】
高精度なすべり案内方式直動案内を提供するため、一般に基台の摺動面に数ミクロン程度の油溜まりを設けるキサゲ加工が行われている。このキサゲ加工の目的は、摺動面の平面度を確保することと、摺動時に摺動面に潤滑油膜を確保することであるが、熟練工によって手仕上げ加工されているため、生産効率が悪く、工作機械の製造コストを増大させる一因となっている。さらに、キサゲ加工した摺動面を有するすべり案内方式直動案内の摺動摩擦係数は、転がり案内方式の直動案内に比べて高く、かつ摺動速度によっても変化する。
【0006】
図2は、すべり案内方式直動案内の摺動摩擦係数と摺動速度の関係を示すが、摺動面同士が直接金属接触し境界潤滑状態となる極低摺動速度域では摺動摩擦係数は高く、摺動速度の増大によって摺動面間に潤滑油膜が形成されるようになれば摺動摩擦係数は小さくなり、さらに摺動速度が増大すれば潤滑油膜の粘性抵抗の増大によって摺動摩擦係数は大きくなる。こういった摺動摩擦係数の摺動速度依存性は、摺動時にスティック-スリップによる振動が発生する原因となり、工作機械の高精度化の妨げとなっている。
【0007】
金型加工の高能率化、高精度化への要求が近年益々厳しくなり、難削材料を高能率に切削できる工作機械の開発への期待が高まるとともに、重切削に対応できる高速送り可能なすべり案内方式直動案内の開発が望まれるようになってきた。
【0008】
重切削対応の工作機械を高精度、高能率化するには、高性能な直動案内を開発すること
が必要不可欠である。一般に重切削に対応した工作機械に搭載されるすべり案内方式直動案内は、摺動摩擦係数が高く、かつ摺動速度に対して摺動摩擦係数が変化するため、工作機械の送り系の高速化に対応できないという問題があった。また、転動体を利用した転がり方式直動案内は、送り速度によらず低摺動摩擦係数であるが、剛性が低く振動減衰性が悪いため、重切削やびびり振動が発生しやすい難削材料の切削に対応できないという問題があった。
【0009】
このように、従来のいずれの直動案内方式でも解決すべき技術的課題があったが、一方で、最近、直動案内のこういった欠点を補完するため、転がり案内方式とすべり案内方式を併用したハイブリッド型直動案内が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
特許文献1のハイブリッド案内装置は転がり案内を主体とし、振動減衰性を付与するためにすべり案内を併用するものであるが、転動体と案内面は金属同士の点接触または線接触する案内機構であるためウェービングなどの振動の問題がある。一方、特許文献2の移動体の案内機構はすべり案内を主たる構成とした案内で、転がり案内とすべり案内の荷重分担を調整することによってすべり案内の高速化を図ることを目的としたものであり、転がり案内部に設けたアクチュエータによって、摺動速度や加工条件に応じてその押し付け力を変化させて、すべり案内方式直動案内と転がり案内方式直動案内のそれぞれに作用する負荷の分担を調整することを特徴としている。しかし、このハイブリッド型直動案内では、すべり案内およびころがり案内に作用する荷重の負荷分担率を調整するために油圧源やアクチュエータなどの外部機器を必要とするため、装置の機構や送り系の制御が複雑になるといった問題があった。また、工作機械の摺動速度に対するアクチュエータなどの外部機器の追従性については明らかにされておらず、急激な速度変化や負荷変動に対応できるか否かは不明である。

【特許文献1】特開2004-204917号公報
【特許文献2】特開平9-131634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、難削材料などの高速切削に対応できる直動案内装置に関するものであって、摺動摩擦係数が小さく、かつ摺動摩擦係数が摺動速度に依存しない直動案内装置を簡便な方法で提供する。そのため、すべり案内を主体としたハイブリッド型直動案内装置において、すべり案内の摺動面ところがり案内の転動体に作用する負荷のそれぞれの分担率を簡便に調整できる直動案内装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の直動案内装置は、鏡面仕上げした摺動面を有するすべり案内方式直動案内と転動体を利用した転がり案内方式直動案内との組み合わせからなる直動案内装置であって、転動体を保持するための軌道および高硬度に仕上げた鏡面の摺動面を有する保持器と、前記保持器を装着する移動体と、摺動面を高硬度に仕上げた基台と、前記保持器の摺動面と前記基台の摺動面の間に供給する潤滑油とを備え、前記保持器に前記転動体を当該転動体の運動面を摺動面と同一面となるように配置するとともに前記転動体の一部を前記保持器の摺動面から突出させることによって前記保持器の摺動面と前記基台の摺動面間に隙間を保持するようになして、前記保持器の摺動時に摺動面間に供給される潤滑液による潤滑油膜圧力の作用によって摺動面と転動体に作用する荷重の負荷分担率を変更できるようになすとともに、転動体を保持するための前記軌道は前記転動体が循環移動する無限軌道であり、更に前記基台の一部に当該基台と前記転動体との接触を防ぐための溝が設けられていることを特徴としたものである。
【0014】
又、前記保持器及び前記基台のそれぞれの摺動面の鏡面度を表面粗さの最大高さが0.1μm以下とすることにより、従来のキサゲ加工したすべり案内方式直動案内に比べて連続した油膜が容易に形成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハイブリッド型直動案内装置は、基台の摺動面と移動体は転動体と点接触するだけであり、摺動面同士の直接接触が問題となる極低摺動速度域でもその摺動摩擦係数は小さい。基台と移動体に発生する摩擦力は小さく、従来のすべり案内方式直動案内のように低摺動速度域で摺動摩擦係数が上昇することはない。高摺動速度域では、基台に対向する保持器の摺動面と基台の間に潤滑油膜が形成されるため、摺動面間に介在する潤滑油によって振動減衰性が確保できるという利点がある。
【0016】
また、高摺動速度域では、摺動面間に形成される油膜の圧力によって摺動面に荷重が分担されるために転動体に作用する荷重が軽減されて、基台や移動体と転動体の接触音は低減する。さらに、保持器の摺動面および基台の摺動面はいずれも表面粗さの最大高さが0.1μm以下の鏡面であるため、従来のキサゲ加工したすべり案内方式直動案内に比べて連続した油膜が容易に形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明によるハイブリッド型直動案内装置の実施形態について図面を参照して説明する。図3および図4は、本発明によるハイブリッド型直動案内装置の一実施形態を示す図であり、それぞれ正面図および側面図を示す。移動体2に装着された保持器9と基台4は転動体7を介して接触し、移動体2に装着された保持器9と基台4は面で直接接触することはない。移動体2が摺動方向に移動することによって、基台4と接触している転動体7は保持器9の無限軌道11(図5参照)内を循環するが、転動体7が摺動方向と反対方向に移動する場合に基台4と転動体7の接触を防ぐため、基台4の中央部に溝8を設ける。 また、保持器の摺動面3と基台の摺動面5の間に潤滑油膜の形成を容易にならしめるため、いずれの摺動面(3と5)も表面粗さの最大高さが0.1μm以下の鏡面加工した面とする。
【0018】
図5は、図3中に示す断面B-Bにおいて保持器9と移動体2を保持器9の摺動面3側から見た概略図を示す。無限軌道11は、基台4の溝8に対して対称となるように配置し、保持器9の摺動面が基台4の溝8に対して均等に相対するように配置する。無限軌道内での転動体7の運動を円滑にならしめるため、無限軌道11の平面形状は角部に曲率を設けた矩形とすることがよい。なお、保持器9は、ねじ10によって移動体2に固着されている。
【0019】
図6は、図4中に示す断面A-Aの断面図を示す。保持器9の無限軌道11は、転動体7が無限軌道11を循環する場合に転動体7がその側面と常時接触しないように、無限軌道11の幅は転動体7の外径より大きい貫通溝である。ただし、転動体7が基台4と接触しない場合に転動体7を保持するため、基台4に対向する部分の溝幅は転動体7の外径より小さい。また、転動体7の転がり抵抗を低減するため、移動体2の面2’は高硬度で鏡面加工した面とする。なお、保持器9の無限軌道11はボールエンドミル加工して製作するが、その加工面は研磨して表面粗さを小さくすることが望ましい。
【0020】
本発明の実施例によれば、相対運動する摺動面間の潤滑油膜の負荷容量が十分でない低摺動速度域では転がり要素である転動体が作用し、潤滑油の負荷容量が十分に大きい高摺動速度域では摺動面間に供給される潤滑液の潤滑油圧の作用によってすべり案内部の摺動面に荷重の負荷分担率が上昇するため、アクチュエータなどの外部機器を利用することな
く、摺動速度によって転動体と摺動面の荷重分担を切り替えることができる。
【0021】
上記発明において、保持器9の摺動面3と基台4の摺動面5の隙間は、移動体2に作用する荷重に応じて調整できることが望ましく、理想的には、負荷荷重に耐えうる最大の潤滑油膜厚とすればよい。
【0022】
図7は、潤滑油として住鉱潤滑剤株式会社の摺動油S32(40℃における動粘度が31.68mm2/s、粘度指数が193)を使用した場合の摺動摩擦係数の測定結果を示す。本実施例で使用した基台および移動体は冷間金型用合金工具鋼SKD11であり、熱処理(焼き入れと焼き戻し)によって表面硬さHRC61に仕上げた。保持器は機械構造用炭素鋼S55C製であり、無限軌道は2.5mmのボールエンドミルを用いて加工した。移動体の案内面の大きさは30mm×30mm、基台の摺動面の大きさは220mm×46mmとし、いずれの摺動面(3と5)も#2000のペーパーで研磨した。転動体には高炭素軸受鋼SUJ2製の直径2mmの鋼球を用い、保持器に配置したときの摺動面3からの転動体の突出量が約10μmとなるように保持器の厚さを調整した。測定は21℃の雰囲気温度下で行った。尚、垂直荷重は4kgである。測定した摺動摩擦係数の値にばらつきがあるため、一つの摺動速度に対して実験を3~5回繰り返した。各測定で得られた摺動摩擦係数の値を図7中の白丸印で示す。図7中の線は、各摺動速度におけるそれらの摺動摩擦係数の測定値の平均値を滑らかな曲線で結んだものである。
【0023】
図7からいえることは、本発明の案内の摺動摩擦係数は摺動速度によらず0.01mm/min程度の低い値を示している。
【0024】
以上説明したとおり、本発明によれは摺動摩擦係数に及ぼす摺動速度の影響が小さく、摺動摩擦係数が小さいすべり案内を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の工作機械のすべり案内方式直動案内の一例を示す図である。
【図2】すべり案内方式直動案内の摺動摩擦係数と摺動速度の関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による直動案内装置の正面図である。
【図4】本発明の一実施形態による直動案内装置の側面図である。
【図5】図3中の断面B-Bにおいて保持器の摺動面から見た概略図である。
【図6】図4中の断面A-Aの断面図である。
【図7】本発明の実施例における直動案内装置において、移動体の摺動速度に対する摺動摩擦係数の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
2 移動体
3 保持器の摺動面
4 基台
5 基台の摺動面
7 転動体
8 溝
9 保持器
10 ねじ
11 無限軌道
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6