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明細書 :鉄道車両用渦電流減速装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3955687号 (P3955687)
公開番号 特開2000-092607 (P2000-092607A)
登録日 平成19年5月11日(2007.5.11)
発行日 平成19年8月8日(2007.8.8)
公開日 平成12年3月31日(2000.3.31)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両用渦電流減速装置
国際特許分類 B60L   7/28        (2006.01)
B61H   5/00        (2006.01)
FI B60L 7/28
B61H 5/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願平10-264472 (P1998-264472)
出願日 平成10年9月18日(1998.9.18)
審査請求日 平成17年2月3日(2005.2.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】熊谷 則道
【氏名】保田 秀行
【氏名】内田 清五
【氏名】荒木 健詞
個別代理人の代理人 【識別番号】100060829、【弁理士】、【氏名又は名称】溝上 満好
【識別番号】100089462、【弁理士】、【氏名又は名称】溝上 哲也
審査官 【審査官】竹下 晋司
参考文献・文献 特開昭64-016202(JP,A)
特開平04-088864(JP,A)
特開平05-064306(JP,A)
特開平04-244705(JP,A)
特開昭60-046762(JP,A)
実開平02-110987(JP,U)
特開平10-084664(JP,A)
調査した分野 B60L 7/28
B61H 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道車両用の渦電流減速装置であって、
駆動軸にボスを介して取付けられるディスクと、
前記ボスを挟んで駆動軸に取付けられた1対の軸受ユニットと、
前記ディスクの一部を包囲すべくこれらの軸受ユニットに脱着可能に取付けられた半円形状のステータアッセンブリとからなり、
ステータアッセンブリは、
前記ディスクを挟む両側における同一円周上に所定の間隔を存して固定配置されるポールピースと、
前記ディスクの反対側におけるポールピースの内周部と対向する位置にN極とS極を交互に固定配置された内側永久磁石列と、
同じく前記ディスクの反対側におけるポールピースの外周部と対向する位置に、ポールピース1ピッチ分が旋回可能なようにN極とS極を交互に配置した外側永久磁石列と、
この外側永久磁石列を旋回させるアクチュエータを備えると共に、
外側永久磁石列を1ピッチ分旋回させた際における、外側永久磁石列の先端の磁石の位置に、この磁石のみと対向するように、他のポールピースの半分の大きさとしたポールピースを配置したことを特徴とする鉄道車両用渦電流減速装置。
【請求項2】
ステータアッセンブリを、1対の軸受ユニットに代えてフレームに脱着可能に取付け、1対の軸受ユニットを省略したことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用渦電流減速装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両用の渦電流減速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば新幹線では、輸送コストを低減するために、各種の動力機械を設けない付随車両を組込んでいる。この付随車両は、動力機器を搭載していないので、動力機器(電動機)を発電機として使用するエネルギー回生ブレーキが使用できず、電磁式の渦電流減速装置(以下、「ECBブレーキ」と言う。)を取付けている。
【0003】
このECBブレーキは、図8に示すように、車軸1に嵌め込んだディスク2に対してコイル3を対向配置し、これらのコイル3に電流を流すことにより、ディスク2中に渦電流を発生させ、磁界との作用により制動力を得るものである。なお、図8中の4は車輪を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したようなECBブレーキでは、以下に列挙するような問題がある。
▲1▼ 大きな電力が必要であるので、近年の省エネルギの観点からは好ましくない。
▲2▼ 車両への通電系にトラブルが発生すると、使用できなくなる。
【0005】
▲3▼ 装置重量が大きく、制御回路が高価である。
▲4▼ ディスクから車軸への熱伝導量が多い。
▲5▼ ディスクに発生する熱応力が大きく、ディスクの変形、熱亀裂などを招く虞がある。
【0006】
本発明は、上記した従来のECBブレーキが有していた問題を解決できる鉄道車両用渦電流減速装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明の鉄道車両用渦電流減速装置は、永久磁石式の渦電流減速装置を採用すると共に、ディスクを挟んで半円形状のステータアッセンブリを脱着可能に取付けたこととしている。そして、このようにすることで、大きな電力を必要とすることなく、駆動軸に対する着脱が容易に行なえ、しかも、ディスクの放熱性が良くなると共に、駆動軸に対するディスクの倒れを防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の鉄道車両用渦電流減速装置は、鉄道車両用の渦電流減速装置であって、駆動軸にボスを介して取付けられるディスクと、前記ボスを挟んで駆動軸に取付けられた1対の軸受ユニットと、前記ディスクの一部を包囲すべくこれらの軸受ユニットに脱着可能に取付けられた半円形状のステータアッセンブリとからなり、ステータアッセンブリは、前記ディスクを挟む両側における同一円周上に所定の間隔を存して固定配置されるポールピースと、前記ディスクの反対側におけるポールピースの内周部と対向する位置にN極とS極を交互に固定配置された内側永久磁石列と、同じく前記ディスクの反対側におけるポールピースの外周部と対向する位置に、ポールピース1ピッチ分が旋回可能なようにN極とS極を交互に配置した外側永久磁石列と、この外側永久磁石列を旋回させるアクチュエータを備えると共に、外側永久磁石列を1ピッチ分旋回させた際における、外側永久磁石列の先端の磁石の位置に、この磁石のみと対向するように、他のポールピースの半分の大きさとしたポールピースを配置したものである。
【0009】
本発明の鉄道車両用渦電流減速装置では、アクチュエータを駆動させて外側永久磁石列のN極、S極と内側永久磁石列のN極、S極を一致させれば、磁束はポールピースを通過してディスクに入り、ディスクの回転に伴い渦電流が発生して、駆動軸に制動力を作用させる。この時、駆動された外側永久磁石列の駆動方向先端の磁石の位置に、他のポールピースの半分の大きさのポールピースを配置しているので、内側永久磁石が存在しない外側永久磁石列の駆動方向先端の永久磁石も、駆動軸に制動力を作用させられるようになる。一方、外側永久磁石列のN極、S極と内側永久磁石列のN極、S極を異ならせた場合には、磁束はポールピース内で閉回路を構成して、ディスクには入らず、駆動軸に制動力を作用させない。
【0010】
上記した本発明の鉄道車両用渦電流減速装置では、永久磁石式の渦電流減速装置を採用しているので、大きな電力を必要とすることがない。加えて、ステータアッセンブリを半円形状としているので、駆動軸に対する着脱が容易に行なえる。また、ディスクの両側に永久磁石列を配置しているので、永久磁石の放熱性が良くなって温度上昇が少なくなる。さらに、ディスクは両側から同じ状態で加熱されるので、駆動軸に対する倒れ現象がなくなってポールピースとの隙間が変化せず、フェード現象が軽減する。
【0011】
本発明の鉄道車両用渦電流減速装置を構成するステータアッセンブリは、上記したように、ボスを挟んで駆動軸に取付けられた1対の軸受ユニットに脱着可能に取付けたものに限らず、例えば台車フレームに脱着可能に取付け、1対の軸受ユニットを省略したものでも良い。但し、この場合は、走行時の振動で台車フレームが振れるので、ポールピースとディスクの間隔を若干大きくしておく必要がある。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の鉄道車両用渦電流減速装置を図1~図7に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明の鉄道車両用渦電流減速装置の要部を断面して示す正面図、図2は図1の側面図、図3は図1のA断面図、図4は図1のB断面図、図5は本発明の鉄道車両用渦電流減速装置を車軸に取付けた場合のレイアウト例を示した図、図6は本発明の鉄道車両用渦電流減速装置の他の実施例の要部を断面して示す正面図、図7は図6の側面図である。
【0013】
図1~図5において、11は例えば車軸1に例えば焼嵌めされたボスであり、このボス11にディスク12が取付けられている。このディスク12のボス11に対する取付けは、図1及び図4に示すように、例えばボス11の円周上8等分位置で、支点ピン13を介してスライドピン14を枢支し、このスライドピン14に微少隙間を有してディスク12を嵌合し、スライドピン14により半径方向の同芯を確保しながらブレーキトルクを伝達するものを採用する。
【0014】
ディスク12のボス11に対する取付けは、例えば上記したように支点ピン13とスライドピン14を介して行われるが、本実施例では、スライドピン14に対する支点ピン13の嵌合は微少隙間を有し、ボス11に対する支点ピン13の嵌合は隙間を有さない状態となされている。また、ディスク12とボス11の嵌合部(図1のa,b部)も微少隙間を有した状態で嵌合されている。このようにすることで、ディスク12とボス11との接触面積が小さくなり、ディスク12からボス11への熱伝導が大幅に抑制できる。
【0015】
また、本実施例では、ディスク12とボス11の間の8個所に、図4に示すように、窓15を設けると共に、ディスク12にはこの窓15に連通する貫通孔12aを半径方向に開設し、窓15からの冷却空気の取入れにより、ディスク12の放熱性を良くするものを開示している。また、窓15の効果として、さらに、ディスク12とボス11との接触面積が小さくなり、ディスク12からボス11への熱伝導が大幅に抑制できる。
【0016】
16a、16bは前記ボス11を挟んで車軸1に取付けられた1対の軸受ユニットであり、これらの対をなす軸受ユニット16a、16bに、前記ディスク12の一部を包囲すべく半円形状のステータアッセンブリ17が脱着可能に取付けられている。このステータアッセンブリ17は、図2に示すように、トルク・アーム18を介して台車フレーム19に連結され、制動力の反力を受けるようになっている。
【0017】
次に、ステータアッセンブリ17の構成について説明する。
17aは、図1に示すように、前記ディスク12を挟む両側に配置されると共に、図3に示すように、同一円周上に所定の間隔を存して固定配置されるポールピースであり、強磁性体で製作されている。
【0018】
17bは、図1及び図3に示すように、前記ディスク12の反対側におけるポールピース17aの内周部と対向する位置にN極とS極を交互に配置された内側永久磁石列であり、固定ヨーク17d、バックプレート17mを介してケース17fに固定されている。なお、バックプレート17m及びケース17fは、アルミニウム等の非磁性体で製作されている。
【0019】
17cは、前記した内側永久磁石列17bと同じように、前記ディスク12の反対側におけるポールピース17aの外周部と対向する位置にN極とS極を交互に配置された外側永久磁石列である。この外側永久磁石列17cは、図1に示すように、ケース17f及び固定ヨーク17dに固定配置されたメタル17gによって、可動ヨーク17eを介して旋回が自在なように支持されており、図1~図3に示すスタンド17h、ローラフォロア17i、先端金物17jを介して、例えばピストンの位置検出装置を備えて任意の位置に停止が可能な油圧シリンダ17kに接続され、ポールピース17aの1ピッチ分が旋回できるようになされている。
【0020】
発明では、前記したように、ポールピース17aの1ピッチ分が旋回した外側永久磁石列17cの回転方向先端の磁石の位置に、図3に想像線で示すように、他のポールピース17aの半分の大きさのポールピース17aaを配置している。
【0021】
本発明の鉄道車両用渦電流減速装置は上記した構成であり、次にこの鉄道車両用渦電流減速装置の作用について説明する。
本発明の鉄道車両用渦電流減速装置では、図3に示すように、外側永久磁石列17cのN極、S極と、内側永久磁石列17bのN極、S極が異なった状態では、磁束はポールピース17a内で閉回路を構成して、ディスク12には侵入せず、車軸1には制動力は作用しない。
【0022】
図3に示した状態から、油圧シリンダ17kのロッドを突出移動させて図3の想像線で示すように、ポールピース17aの1ピッチ分、外側永久磁石列17cを旋回移動させ、外側永久磁石列17cのN極、S極と、内側永久磁石列17bのN極、S極を一致させれば、磁束はポールピース17aを通過してディスク12に入り、ディスク12の回転に伴い渦電流が発生して、車軸1に制動力が作用する。この時、ポールピース17aaの作用によって、内側永久磁石が存在しない外側永久磁石列17cの先端の永久磁石も、車軸1に制動力を作用させられるようになる。
【0023】
この状態は、100%制動力が作用した状態であるが、外側永久磁石列17cの位置を、先に説明した制動力がOFFの状態と、100%制動力が作用した状態の中間の任意の位置に位置させた場合には、制動力は0~100%の間で変化する。
【0024】
上記した本発明の鉄道車両用渦電流減速装置では、永久磁石式の渦電流減速装置を採用しているので、大きな電力を必要とすることがない。加えて、ステータアッセンブリ17を半円形状としているので、車軸1に対する着脱を容易に行なうことができ、メンテナンス性が良くなる。また、ディスク12の両側に永久磁石列17b,17cを配置しているので、永久磁石の放熱性が良くなって温度上昇が少なくなる。さらに、制動時、ディスク12は両側から同じ状態で加熱されるので、車軸1に対する倒れ現象がなくなってポールピース17aとの隙間が変化せず、フェード現象が軽減する。
【0025】
ところで、制動時には、ディスク12におけるポールピース17aと対向する面が発熱して温度上昇し、熱膨張する。ディスク12とボス11が一体構造或いはボルト等で強固に連結されている場合、ディスク12が前記したように発熱した場合には、内部に大きな熱応力が発生し、素材の強度限界を超えて使用した場合には、亀裂などの欠陥を生じることになる。
【0026】
そこで、本実施例では、ディスク12とボス11との連結を、複数個のスライドピン14を介して行なうことで、ディスク12の熱膨張変形をスライドピン14のスライド運動によって逃がし、上記した熱応力を緩和するものを示している。加えて、このスライドピン14を介したディスク12とボス11との連結により、ディスク12回転時における質量移動が、回転中心に対して発生せず、円滑な回転運動を確保できることになる。
【0027】
本発明の鉄道車両用渦電流減速装置は上記した実施例に限るものではない。例えば図6及び図7に示すように、ボス11を挟んで車軸1に取付ける1対の軸受ユニット16a,16bを省略し、例えば台車フレーム19にステータアッセンブリ17を脱着可能に取付けたものでも良い。但し、この図6及び図7に示すような構成の場合は、走行時の振動で台車フレーム19が振れるので、図1~図5に示した構成の場合よりも、ポールピース17aとディスク12の間隔を若干大きくしておく必要がある。
【0028】
また、本実施例では車軸1に本発明の鉄道車両用渦電流減速装置を取付けたものを示したが、モータの電動軸に取付けても良い。さらに、本発明の鉄道車両用渦電流減速装置は、大型の建設車両や産業車両にも適用可能であることは言うまでもない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鉄道車両用渦電流減速装置は、永久磁石式の渦電流減速装置であるので、コンパクトで、大きな電力を必要とせず、また、車両への通電系にトラブルが発生しても使用が可能である。
【0030】
加えて、本発明の鉄道車両用渦電流減速装置では、ステータアッセンブリを半円形状としているので、車軸に対する着脱を容易に行なうことができる。また、ディスクの両側に永久磁石列を配置しているので、永久磁石の放熱性が良くなって温度上昇が少なくなる。さらに、ディスクは両側から同じ状態で加熱されるので、車軸に対する倒れ現象がなくなってポールピースとの隙間が変化しないので、フェード現象が軽減する。
【0031】
また、駆動された外側永久磁石列の駆動方向先端の磁石の位置に、他のポールピースの半分の大きさのポールピースを配置しているので、内側永久磁石が存在しない外側永久磁石列の駆動方向先端の永久磁石も、駆動軸に制動力を作用させられるようになり、より効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄道車両用渦電流減速装置の要部を断面して示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のA断面図である。
【図4】図1のB断面図である。
【図5】本発明の鉄道車両用渦電流減速装置を車軸に取付けた場合のレイアウト例を示した図である。
【図6】本発明の鉄道車両用渦電流減速装置の他の実施例の要部を断面して示す正面図である。
【図7】図6の側面図である。
【図8】電磁式の渦電流減速装置の原理を説明する図である。
【符号の説明】
1 車軸
11 ボス
12 ディスク
16a 軸受ユニット
16b 軸受ユニット
17 ステータアッセンブリ
17a ポールピース
17aa ポールピース
17b 内側永久磁石列
17c 外側永久磁石列
17k 油圧シリンダ
19 台車フレーム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7