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明細書 :磁気浮上列車用超電導磁石

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3732344号 (P3732344)
公開番号 特開2000-102112 (P2000-102112A)
登録日 平成17年10月21日(2005.10.21)
発行日 平成18年1月5日(2006.1.5)
公開日 平成12年4月7日(2000.4.7)
発明の名称または考案の名称 磁気浮上列車用超電導磁石
国際特許分類 B60L  13/03        (2006.01)
H01L  39/04        (2006.01)
H01F   6/00        (2006.01)
B61B  13/08        (2006.01)
FI B60L 13/02 A
H01L 39/04 ZAA
H01F 7/22 ZAAA
B61B 13/08 ZAAB
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願平10-268328 (P1998-268328)
出願日 平成10年9月22日(1998.9.22)
審査請求日 平成14年12月11日(2002.12.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】古川 陽子
【氏名】福本 英士
【氏名】柴田 将之
【氏名】滝沢 照広
【氏名】寺井 元昭
【氏名】稲玉 哲
【氏名】水谷 隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
審査官 【審査官】長馬 望
参考文献・文献 特開平08-222427(JP,A)
特開平06-077050(JP,A)
特開平08-162317(JP,A)
特開平08-162316(JP,A)
特開平10-083916(JP,A)
調査した分野 B60L 13/03
H01F 6/00
H01L 39/04
B61B 13/08
特許請求の範囲 【請求項1】
超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する超電導コイル収納容器と、該超電導コイル収納容器表面に被覆又はメッキされた低電気抵抗材料層とを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、前記低電気抵抗材料層の厚さを部分的に変えたことを特徴とする磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項2】
真空断熱容器と、該真空断熱容器内に配置された輻射熱シールドと、該輻射熱シールド内に配置された超電導コイル収納容器と、該超電導コイル収納容器内に配置された超電導コイルとを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、前記輻射熱シールドと前記真空断熱容器の一方もしくは両方を部分的に厚さの異なる低電気抵抗材料で構成したことを特徴とする磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項3】
前記低電気抵抗材料の厚さを浮上方向上下で非対称にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項4】
浮上方向上部の少なくとも一部分の低電気抵抗材料の厚さを浮上方向下部の低電気抵抗材料の厚さより厚くしたことを特徴とする請求項1又は2記載の磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項5】
超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する超電導コイル収納容器とを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、前記超電導コイル収納容器の表面に部分的に電気抵抗率の異なる低電気抵抗材料を設置し、前記低電気抵抗材料の電気抵抗率を浮上方向上下で非対称にしたことを特徴とする磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項6】
超電導線を巻回した超電導コイルと、該超電導コイルを冷却し所定位置に固定する超電導コイル収納容器とを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、前記超電導コイル収納容器の表面に部分的に電気抵抗率の異なる低電気抵抗材料を設置し、浮上方向上部の少なくとも一部分の低電気抵抗材料の電気抵抗率を浮上方向下部の低電気抵抗材料の電気抵抗率よりも低くしたことを特徴とする磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項7】
真空断熱容器と、該真空断熱容器内に配置された輻射熱シールドと、該輻射熱シールド内に配置された超電導コイル収納容器と、該超電導コイル収納容器内に配置された超電導コイルとを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、前記輻射シールドと真空断熱容器の一方もしくは両方を部分的に電気抵抗率の異なる低電気抵抗材料で構成し、前記低電気抵抗材料の電気抵抗率を浮上方向上下で非対称にしたことを特徴とする磁気浮上列車用超電導磁石。
【請求項8】
真空断熱容器と、該真空断熱容器内に配置された輻射熱シールドと、該輻射熱シールド内に配置された超電導コイル収納容器と、該超電導コイル収納容器内に配置された超電導コイルとを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、前記輻射シールドと真空断熱容器の一方もしくは両方を部分的に電気抵抗率の異なる低電気抵抗材料で構成し、浮上方向上部の少なくとも一部分の低電気抵抗材料の電気抵抗率を浮上方向下部の低電気抵抗材料の電気抵抗率よりも低くしたことを特徴とする磁気浮上列車用超電導磁石。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地上軌道側に設置された浮上コイル及び推進コイルと、車両に搭載された超電導磁石からなる磁気浮上列車システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気浮上列車は、車両に超電導コイルを利用した超電導磁石を搭載し、地上に並べた常電導コイルとの間に吸引力及び反発力を作用させて浮上力及び推進力を得るものである。図7により、側壁浮上方式の磁気浮上列車の車載コイルと地上コイルの配置を説明する。図7(a)は車両、及び車両を両側から挟み込んで案内するガイドウエイの模式的断面図、図7(b)はガイドウエイに固定されたコイルの模式図である。車両10には、その両側面に複数の超電導コイル11a,11bが並べて固定されている。また、ガイドウエイ13には、常電導コイルからなる浮上コイル14a,15a,14b,15b及び推進コイル16a,16bが車載超電導コイル11a,11bと各々対向するようにして固定配置されている。浮上コイル14a,15a,14b,15bは短絡コイルであって電源には接続されていない。一方、推進コイル16a,16bには、変電所から極性が周期的に変わるような電流が流され、車載超電導コイル11a,11bに吸引力及び反発力を交互に及ぼして車両10に推進力を与える。
【0003】
従来の磁気浮上列車用超電導磁石を図8に示す。図8(a)は超電導磁石の一部破断正面図、図8(b)はそのA-A’断面図である。超電導コイル1は、超電導コイル収納容器(以下、単に収納容器という)2内に配置され、収納容器2は輻射熱シールド3内に配置され、輻射熱シールド3は更に真空断熱容器4内に配置されている。収納容器2には支持部材5が固定され、収納容器2の表面には銅メッキ層6が形成されている。収納容器2は超電導コイル1を保持し固定する必要があるため、剛性及び強度の高いステンレス製であり、内部に液体ヘリウムの流路を設けて超電導コイル1を冷却している。
【0004】
磁気浮上列車を実用化する上での課題の一つは、超電導磁石のクエンチ(超電導破壊)をいかに防ぐかという点にある。クエンチの原因には、熱負荷、磁場変動等が考えられるが、特に熱負荷は、液体ヘリウム冷凍機の能力とも絡み、解決を最も急がれている課題である。
熱負荷としては、伝導、輻射等による外部からの熱侵入の他、地上コイルの磁場変動を受けて生じる渦電流発熱や、渦電流と磁場が作用して生じる電磁力が引き起こす振動による摩擦発熱等が考えられ、従来もさまざまな対策がなされてきた。例えば、外部からの熱侵入に対しては、輻射熱シールド3や真空断熱容器4を設けることで、輻射熱や対流による熱侵入を防いでいる。渦電流発熱に対しては、超電導コイル収納容器2の表面に高純度の銅メッキ層6を形成したり、電気抵抗率の低いアルミニウムを被覆する等の対策が取られている。
【0005】
この低電気抵抗材料による収納容器のメッキあるいは被覆は、高速走行時の地上コイル磁場変動に対する渦電流発熱の低減策として特に有効であると考えられてきた。磁気浮上システムでは、列車の走行時には浮上コイル14a,15a,14b,15bを通過するのに伴う脈動磁場が常に超電導磁石に加わる。現在の設計によると、時速500kmでの走行時にはこの磁場変動の周波数は309Hzになる。この周波数では、磁場変動によって超電導磁石各部に生じる渦電流の大きさは、電気抵抗によらずインダクタンスで決まるため、磁石各部を構成する材料の電気抵抗値を変えても渦電流の値は変化しない。従って、電気抵抗値を低くするほど渦電流発熱を小さくできる。この知見をもとに液体ヘリウム冷却系での渦電流発熱を抑えるために取られた対策が、収納容器2に電気抵抗率の低い高純度の銅やアルミニウムをメッキ、あるいは被覆するという方法である。
【0006】
渦電流発熱低減策としては、このように低電気抵抗材料6を収納容器2に被覆する方法のほか、電磁力による振動に起因して2次的に生じる渦電流を低減するため、支持構造を工夫して振動を抑制する方法が取られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、これまで考えられてきた渦電流発熱の原因は、走行周波数で生じる磁場変動であった。しかし、超電導磁石に加わる磁場変動は、走行周波数でのみ生じるとは限らない。例えば、空気抵抗や、左右推力のアンバランス、あるいは浮上コイルの設置誤差などが原因で生じる車両動揺は、1~10Hzの低周波領域で生じ、この車両動揺に伴う非常に周波数の低い磁場変動も超電導磁石に加わる。しかし、従来はこのような低周波域での渦電流発熱の低減策は検討されておらず、従来磁石では発熱が過大になるという問題があった。これを回避するため低抵抗材の電気抵抗値を十分小さくすることが考えられるが、励磁時に生じるリバース電流が大きくなるため超電導コイルを励磁できなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、走行周波数で生じる磁場変動による渦電流発熱と共に車両動揺による低周波数域の磁場変動が引き起こす超電導磁石の渦電流発熱を低減して、クエンチの生じにくい信頼性の高い超電導磁石を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、超電導線を巻回した超電導コイルと、超電導コイルを冷却し所定位置に固定する超電導コイル収納容器と、収納容器表面に被覆又はメッキされた低電気抵抗材料層とを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、低電気抵抗材料層の厚さを部分的に変えることによって達成することができる。また、収納容器を取り囲む輻射熱シールドあるいは真空断熱容器の一方もしくは両方を部分的に厚さの異なる低電気抵抗材料で構成することによって達成することができる。
特に、超電導磁石の浮上方向上側の構成材料の厚さを浮上方向下側の構成材料の厚さよりも厚くすることにより、発熱低減効果を高くすることができる。
【0010】
上記目的は、また、超電導線を巻回した超電導コイルと、超電導コイルを冷却し所定位置に固定する収納容器とを含む磁気浮上列車用超電導磁石において、収納容器の表面に部分的に電気抵抗率の異なる低電気抵抗材料を設置することによって達成することができる。また、収納容器を取り囲む輻射熱シールドあるいは真空断熱容器の一方もしくは両方を部分的に電気抵抗率の異なる低電気抵抗材料で構成することによって達成することができる。
特に、超電導磁石の浮上方向上側の構成材料の電気抵抗率を浮上方向下側の構成材料の電気抵抗率よりも低く設定することによって高い効果をあげることができる。
【0011】
低周波数域で収納容器に生じる渦電流発熱が問題となる背景には、周波数が低いため真空断熱容器や輻射熱シールドに磁場遮蔽に十分な渦電流が生じにくく、外部の磁場が筒抜けに収納容器に加わるという現象がある。一方、超電導コイル収納容器表面の低電気抵抗層では、低抵抗化しているため、渦電流はインダクタンスで制限される最大値で流れる。そのため、真空断熱容器、輻射熱シールドによる遮蔽効果が効かないような低周波数域の車両動揺による磁場変動によって引き起こされる低電気抵抗層の発熱は無視できない。
【0012】
図2は、外部磁場変動によって収納容器に生じる渦電流発熱と収納容器の電気抵抗との関係を、外部磁場変動の周波数をパラメータとして図示したものである。曲線18は外部磁場変動の周波数が309Hzの場合の関係を示し、曲線19は2Hzの場合の関係を示す。図示されているように、ある周波数の磁場変動に対しては、渦電流発熱は特定の電気抵抗値の時に最大になり、電気抵抗値がそれより大きくても小さくても減少する山形の曲線を描く。また、外部磁場変動の周波数が高くなるに従って、この山形の曲線は図に矢印で示すように全体として高抵抗側に移動する。
【0013】
この渦電流発熱を低減する方法としては、(1)車両動揺による外部磁場変動を低減すること、(2)低電気抵抗層の抵抗値を高くし、車両動揺の周波数域では電気抵抗に制限されて渦電流が流れず、走行周波数域でもある程度発熱の小さくなるような最適な電気抵抗値を探すこと、すなわち低電気抵抗層の抵抗値を図2のR2 以上にすること、あるいは(3)従来以上に低電気抵抗層の抵抗値を下げること、すなわち低電気抵抗層の抵抗値を図2のR1 以下にすることが考えられる。
【0014】
車両動揺による磁場変動の原因は地上軌道側の浮上コイル電流の変化である。浮上コイルは、車両動揺をダンピングするような電磁力を働かせるため、ヌル・フラックス線と呼ばれる導線により、対面する8の字コイルどうしが結ばれ、電流は向かいあった浮上コイルを行き来する。この電流変化がもたらす磁場変動に起因する渦電流が超電導磁石の側に生じる。従って、前記(1)に関しては、動揺のダンピングが必要な限り磁場変動は許容するしかない。(2)に関しては、ある許容発熱量を見込む必要があり冷凍機容量を増大させる可能性が大きい。また、低周波でも高周波でも、現在の液体ヘリウム冷凍機の能力の許容範囲におさまるような発熱に押さえられる電気抵抗率の選択は極めて困難である。(3)に関しては、電気抵抗を下げると、励消磁時のリバース電流による発熱が増大するという問題が新たに生じる。また、電気抵抗を下げるため低電気抵抗層の厚みを厚くする場合、重量やサイズなど構造上厳しい制限を受ける。
【0015】
また、液体ヘリウム系の熱負荷を低減する方法としては、超電導コイル収納容器の渦電流発熱そのものを低減する方法以外に、真空断熱容器、輻射熱シールドによる外部磁場の遮蔽効果を上げ、収納容器の低電気抵抗層で受ける磁場変動を小さくするという方法もある。磁場遮蔽効果を高めるためには、それぞれの構成材の電気抵抗を下げ、低周波数でも電流が流れやすくすればよい。しかし、電気抵抗を下げるためには、材料の電気抵抗率を下げるか、板厚を増すしか方法はない。電気抵抗率は、構成材料が求められる剛性や強度で決まることがほとんどであり、選択の余地は少ない。また、板厚に関しては、厚さを増すことは重量を増すことに直結するため、なるべく避けたい選択である。これらの問題は、低電気抵抗層の発熱を低減するために低電気抵抗層の電気抵抗をさらに下げようと考える場合にも直面する問題である。
【0016】
しかし、渦電流分布さえわかれば、構成材全体の電気抵抗率や板厚を変える必要はなく、渦電流が流れる部分の電気抵抗のみを下げればよい。図3は、こうした観点から車両動揺による真空断熱容器上の渦電流分布をシミュレーションしたものであり、図において閉曲線として描かれている渦電流流線の混み合っているところほど渦電流密度が高い。
【0017】
図3から、電流密度の高い部分は、真空断熱容器の地上コイルに面する側の上半分に存在することがわかる。これは、浮上コイル電流の起電力が、浮上力起因と案内力起因の2種類あるためである。浮上力起因の電流は浮上コイルの上下で逆向きに流れようとするのに対し、案内力起因の電流は上下で同じ向きに流れようとする。このため浮上コイルの電流は2つの起電力の向きの一致する上側で大きくなり、2つの起電力が逆向きになる下側で小さくなる。上下の差分の電流はヌル・フラックス線をわたって対面するコイルに流れ込む。上下の浮上コイル電流の差は、対面する真空断熱容器に及ぼす磁場変動量の差となり、渦電流分布が上下で異なる原因となる。
【0018】
このような渦電流の分布についての知見は、車両動揺に関する3次元の渦電流解析を行って初めて得られたものである。渦電流発熱を低減するには、図3で渦電流流路に相当し、電流密度の高い部分の電気抵抗を下げてやればよい。同様に輻射熱シールドや収納容器上の、渦電流流路に相当する部分の電気抵抗率を下げる、又は厚さを増すことによって、渦電流流路の電気抵抗は下がり、従って電流は流れやすくなり、その結果低電気抵抗層あるいは収納容器への磁場侵入が抑制され、低電気抵抗層で発生する渦電流が減少するため発熱が低減し、クエンチを生じにくい超電導磁石が得られる。
【0019】
低電気抵抗層に関しても、例えば上半分の電気抵抗率を1/2にし、かつ厚さを2倍にすると、発熱を従来の約1/4まで低減することが可能である。また、この場合の低電気抵抗層の重量の増加は従来の1.5倍程度で、励消磁時のリバース電流による発熱も従来の2倍程度と考えられ、十分許容できる。特にリバース電流による発熱に関しては、励消磁速度の調節で低減できる可能性もある。これらの発熱低減策により、従来よりも低発熱で、クエンチしにくい、高信頼性の超電導磁石が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)はそのA-A’断面図である。超電導コイル1は、収納容器2内に保持されている。収納容器2は、超電導コイル1を保持し固定する必要があるため剛性及び強度の高いステンレス製であり、内部に液体ヘリウムの流路を設けて超電導コイル1を冷却している。収納容器2の表面には全面に厚さ約0.3mmの銅メッキ20が施されているが、コイルの腹の一部分でメッキを厚くしている。このメッキを厚くした部分21は、地上コイルに面する側の上部に位置し、車両動揺による渦電流が最も多量に流れる部分である(図3参照)。メッキを1.0mm程度に厚くすることによって、その部分の電気抵抗を図2に示すR1 以下、例えば1×10-6Ωに低下させている。メッキを厚くした部分21の中でも特に渦電流の流れやすい部分22は更にリング状にメッキを厚く形成して電気抵抗を十分に低下させてある。
【0021】
本実施の形態によると、渦電流流路の電気抵抗が低いため、渦電流による発熱が低減し、クエンチしにくく信頼性の高い超電導磁石を得ることができる。
図4は本発明の他の実施の形態を示す図であり、(a)は正面図、(b)はそのA-A’断面図である。超電導コイル収納容器2は、超電導コイル1を保持し固定する必要があるため、剛性及び強度の高いステンレス製であり、内部に液体ヘリウムの流路を設けて超電導コイル1を冷却している。収納容器2の表面全体には電気抵抗率の低いアルミニウム(電気抵抗率約2×10-7Ωm)23が被覆されているが、車両動揺に起因する低周波の磁場変動によって渦電流が流れやすい地上コイル側に面した上部側面には、他の部分に被覆されているアルミニウム材料よりも純度を上げて電気抵抗率を1×10-7Ωm程度に低くしたアルミニウム材料24が被覆されている。従って、電気抵抗率を低くした分、この部分での発熱は低減され、クエンチしにくく、信頼性の高い超電導磁石が得られる。
【0022】
図5は本発明の他の実施の形態を示し、(a)は正面図、(b)はそのA-A’断面図である。輻射熱シールド25は支持部材5が取り付けられた収納容器2を取り囲んでおり、表面に銅メッキ6が施された収納容器2は内部に超電導コイル1を収納している。本実施の形態の輻射熱シールド25は、液体窒素温度に冷却して用いるため厚さ約3mmの熱伝導率の高いアルミニウムで作られており、一部に板厚が約5mmと厚くなっている部分26を有する。この板厚が厚い部分26は、地上コイルに面する側で浮上方向上側部分に位置し、車両動揺による渦電流が輻射熱シールドで最も多量に流れる部分である。
【0023】
本実施の形態では、図1に示した実施の形態のように、完全に渦電流分布に沿って板厚を厚くするのではなく、渦電流密度の高い部分に帯状に板厚の厚い部分を設けている。図1のように渦電流分布に沿って板厚を変えると、発熱をできる限り抑制し、同時に重量もできる限り軽量にするといった最適設計ができる。しかし製作の容易さの点からすると、本実施の形態のような単純な形状の方が加工しやすく、加工のコストも小さい。
【0024】
このように、渦電流の流路に相当する部分の板厚を厚くして電気抵抗を下げ、電流を多量に流すことにより、内部の低電気抵抗層へ到達する磁場変動を遮蔽する効果を上げることができる。従って、超電導コイル収納容器2の銅メッキ層6で生じる渦電流は低減し、その結果発熱は減少するので、クエンチしにくく信頼性の高い超電導磁石を得ることができる。
【0025】
図6は本発明の他の実施の形態を示し、(a)は正面図、(b)はそのA-A’断面図である。超電導コイル1は、支持部材5が取り付けられ、表面に銅メッキ層6が形成された収納容器2内に配置されている。収納容器2は輻射熱シールド3内に配置され、輻射熱シールド3は更に真空断熱容器27中に配置されている。真空断熱容器27は約6×10-8Ωmの電気抵抗率を有するアルミニウム材料で作られており、その一部分28は約3×10-8Ωmと他の部分よりも電気抵抗率の低い純アルミニウム材料で構成されている。電気抵抗率の低い材料で構成された部分28は、地上コイルに面する側の上部に位置し、車両動揺による渦電流密度が高い部分である。従って、本実施の形態によると、渦電流流路の電気抵抗を下げて電流を多量に流すことにより、内部の低電気抵抗層へ到達する磁場変動を遮蔽する効果を上げることができる。
【0026】
従来、真空断熱容器は、軽量で強度、剛性を有するアルミニウム合金で構成されており、電気抵抗を下げるために全体を電気抵抗の低い純アルミニウムで構成することは、強度上問題があったが、本実施の形態のように、部分的に純アルミニウムを用いれば、強度も確保できる上に発熱低減効果も大きい。また、本実施の形態では、図4で示した実施の形態と異なって、完全に渦電流分布に沿って低電気抵抗材を配置するのではなく、渦電流が分布する領域を覆う部分に、長方形の低電気抵抗材を配している。真空断熱容器の低電気抵抗部分28と他の部分27とは、それぞれの形状に切削されたのち、溶接などの方法によって接合するが、切削も溶接も複雑な曲線状であるよりは直線であるほうが加工が容易であるため、製作コストを下げることができる。
【0027】
なお以上の実施の形態では、電気抵抗値を部分的に低減する方法として構成材の厚さを厚くする方法及び電気抵抗率の小さな材料を使用する方法を説明したが、この2つの方法を併用して、電気抵抗率の小さな材料を板厚を厚くして用いると更に高い電気抵抗値低減効果が得られるのはもちろんである。
【0028】
【発明の効果】
本発明によると、構成材の厚さや電気抵抗率を部分的に変えることにより、渦電流が生じる部分の電気抵抗値を選択的に下げることができるので、強度や剛性を損なわず、しかも重量を極端に増加することなしに、液体ヘリウム系にある低電気抵抗材における渦電流発熱を低減できる。また、輻射熱シールド、真空断熱容器においては、渦電流の流れる部分の電気抵抗値を低減することにより、低電気抵抗層への磁場侵入の遮蔽効果を上げることができ、その結果低電気抵抗層の渦電流発熱を低減できる。従って、クエンチの原因となる発熱が抑制できるので、信頼性の高い超電導磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】部分的に低電気抵抗層の厚さを変えることで発熱低減を図る実施の形態の説明図。
【図2】抵抗と発熱量の関係を説明する図。
【図3】車両動揺による真空断熱容器上の渦電流分布を示す解析図。
【図4】部分的に低電気抵抗層の構成材の電気抵抗率を変えた実施の形態の説明図。
【図5】部分的に輻射熱シールドの厚さを変えた実施の形態の説明図。
【図6】部分的に真空断熱容器の構成材の電気抵抗率を変えた実施の形態の説明図。
【図7】磁気浮上列車の車載超電導コイルと地上コイルの説明図。
【図8】従来の超電導磁石の説明図。
【符号の説明】
1…超電導コイル、2…超電導コイル収納容器、3…輻射熱シールド、4…真空断熱容器、5…支持部材、6…銅メッキ層、10…車両、11a,11b…車載超電導コイル、13…ガイドウェイ、14a,15a…浮上コイル、14b,15b…浮上コイル、16a,16b…推進コイル、20…銅メッキ層、21,22…厚い銅メッキ層、23,24…アルミニウム被覆、25…輻射熱シールド、27…真空断熱容器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7