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明細書 :酸化物超電導体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3144675号 (P3144675)
公開番号 特開2000-178025 (P2000-178025A)
登録日 平成13年1月5日(2001.1.5)
発行日 平成13年3月12日(2001.3.12)
公開日 平成12年6月27日(2000.6.27)
発明の名称または考案の名称 酸化物超電導体及びその製造方法
国際特許分類 C01G  3/00      
C01G  1/00      
C04B 41/83      
H01F  7/00      
FI C01G 3/00 ZAA
C01G 1/00
C04B 41/83
H01F 7/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願平10-361722 (P1998-361722)
出願日 平成10年12月18日(1998.12.18)
審査請求日 平成11年12月24日(1999.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391004481
【氏名又は名称】財団法人国際超電導産業技術研究センター
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】富田 優
【氏名】村上 雅人
個別代理人の代理人 【識別番号】100088270、【弁理士】、【氏名又は名称】今井 毅
審査官 【審査官】米田 健志
参考文献・文献 特開 昭63-260882(JP,A)
特開 平1-261286(JP,A)
特開 平1-282176(JP,A)
特開 平5-78183(JP,A)
調査した分野 C01G 1/00 ZAA
C04B 41/82 - 41/84
特許請求の範囲 【請求項1】
樹脂含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体から成ることを特徴とする、酸化物超電導体。

【請求項2】
酸化物超電導バルク体が希土類元素(Y,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)を含む銅酸化物超電導体である、請求項1記載の酸化物超電導体。

【請求項3】
酸化物超電導バルク体が、REBa2Cu3y (REはY,Dy,Ho,Er,Tm又はYbのうちの1種以上)を母相とすると共に、該母層中に50体積%以下のRE2 BaCuO5 (REはY,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)相を含む銅酸化物超電導体である、請求項1又は2記載の酸化物超電導体。

【請求項4】
酸化物超電導バルク体が、RE1+x Ba2-x Cu3 y (REはLa,Nd,Sm,Eu及びGdのうちの1種以上)を母相とすると共に、該母層中に50体積%以下のRE4-2x Ba2+2x Cu2-x 10-2x (REはLa及びNdのうちの1種以上)相又はRE2 BaCuO5 (REはSm,Eu及びGdの1種以上)相を含む銅酸化物超電導体である、請求項1又は2記載の酸化物超電導体。

【請求項5】
酸化物超電導バルク体が40重量%以下のAgを含んで成る、請求項3又は4記載の酸化物超電導体。

【請求項6】
含浸させた樹脂がエポキシ系樹脂である、請求項1乃至5の何れかに記載の酸化物超電導体。

【請求項7】
減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と液状樹脂とを接触させて酸化物超電導バルク体に樹脂を含浸させることを特徴とする、請求項1乃至6の何れかに記載の酸化物超電導体の製造方法。

【請求項8】
酸化物超電導バルク体の外表面から樹脂を含浸させる、請求項7記載の酸化物超電導体の製造方法。

【請求項9】
予め酸化物超電導バルク体に孔を設けておくことにより、酸化物超電導バルク体の外表面と内部の両方から樹脂を含浸させる、請求項7記載の酸化物超電導体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】この発明は、電磁力や熱歪等の内外力や腐食環境に影響されずに高い捕捉磁場の確保や長期にわたる性能維持が可能な酸化物超電導体、並びにその製造方法に関するものである。常電導材料に比べて臨界電流密度が高く、大電流を損失なく流すことが可能である超電導材料は、マグネットやエレクトロニクス応用において画期的性格を持つものとして注目を浴びており、近年、核融合実験装置,医療診断用超電導MRI,磁気浮上列車,発電機,エネルギ-貯蔵装置,脳磁計等への応用研究が盛んに行われるようになっている。

【0002】

【従来技術とその課題】今世紀の初頭に膜が開けられた超電導技術の目覚ましい研究によって様々な超電導材料が知られるようになったが、1970年の中ほどから始まった金属酸化物超電導材料の研究により LiTi23, Ba(Bi,Pb)O3 ,(Ba,K) BiO3 等の比較的臨界温度(Tc)の高い酸化物超電導材料が見出され、更に1980年代から今日までの間にそれまで予想もされなかったほどの高い臨界温度(Tc)を持つ(La,Sr)2CuO4 ,REBa2Cu37 (REは希土類元素),Bi2Sr2Ca2Cu310,Ti2Ba2Ca2Cu310,HgBa2Ca2 Cu38 等といった銅酸化物超電導材料が次々と生み出されるに至っている。

【0003】
ところで、前述したように、超電導材料は常電導材料に比べて臨界電流密度が高いために大電流を損失なく流すことが可能であるが、このように大電流を流した場合には超電導体に大きな電磁力が働くので材料強度によっては材料が破壊する場合が知られている。また、最近、溶融法によるバルク高温超電導体(特に銅酸化物超電導体)の特性向上と大型化に伴ってバルク体に捕捉できる磁場の大きさが飛躍的に向上し、5テスラを超える磁場が捕捉されるようにまでなっているが{「SuperconductorScience andTechnology」11 (1998), 第1345~1347頁}、このように捕捉磁場が増加するとそれに伴って材料にかかる電磁力も増大するため、最近では材料強度によって捕捉磁場が制限されてしまうといった事態に至っている。そのため、捕捉磁場を利用したバルク超電導磁石の性能向上のためには、捕捉磁場の更なる向上よりもむしろ材料の機械的特性向上が重要となってなっている{「PhysicaC」 Vol.7, No.9(1991), 第4989~4994頁}。

【0004】
そこで、溶融法によるバルク酸化物超電導体の強化方法として、次の2つの方法が提案されている。1つは「材料へのAg添加」という手法であり、この方法を講じることによりバルク酸化物超電導体の機械的強度が著しく改善されるとされている{「JapaneseJournal of Applied Physics」Vol.70, No.9 (1991) の第4989~4994頁<HAN>、</HAN> 並びに「Superconductor Science and Technology 」11(1998), 第1345~1347頁}。他の1つは「バルク超電導材料の回りを金属リングで囲むことによって材料に予め“圧縮の歪”を付加しておく」という手法である{「Extened Abstract ofISTEC International Workshop」(1998),第 115~ 118頁}。なお、この方法によると、予付加の圧縮歪により磁場を捕捉させた時に生じる引張応力が緩和されるので材料の破壊が抑えられ、捕捉磁場が向上するとされている。

【0005】
しかしながら、上記「Ag添加による強化」や「金属リングによる補強」といった方法は作業性やコストの面での更なる改善が望まれるものであり、また腐食性環境での長期使用によって強化性能が劣化するという問題も認識された。

【0006】
このようなことから、本発明が目的としたのは、大きな電磁力や使用時の急激な昇温・冷却に伴う熱歪といった外力や内部応力に十分に耐えると共に、腐食性環境にも悪影響を受けることがなく、長期にわたって高い捕捉磁場を発揮できる酸化物超電導体の容易かつ安価を提供手段を確立することであった。

【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、次のような新規知見を得ることができた。
a) 溶融法による酸化物超電導バルク体は疑似単結晶状態のセラミックスであるが、実際にはその製造過程において微小なクラックや気孔が内在されるのを防止することが困難である。特に、その表層部に微小クラックや気孔が内在されがちである。
b) そして、このような酸化物超電導バルク体に“大きな機械的衝撃力",“急激な温度変化による熱衝撃力",“大きな電磁気力”等が加わると、前記クラックや気孔に応力集中が起こり、このクラックや気孔を起点として比較的大きな割れに進展する。
c) また、長時間、湿気や炭酸ガスの多い腐食性雰囲気に曝されるような場合には、腐食によって酸化物超電導バルク体材料が劣化したり反応相が生成したりして新たな割れが生じ、これが比較的大きな割れに進展する。

【0008】
d) 酸化物超電導体においては、上述のような比較的大きな割れが生じると、これが超電導電流の妨げとなるため捕捉磁場の大きな低下をもたらす。
e) ところが、一般に溶融法によって製造されるために材料密度が非常に高くて塗料等の内部浸透などが起こり得る筈がないと考えられがちであった“酸化物超電導バルク体”であっても、真空中における樹脂含浸等の手法を適用すると、表面に開口した微小クラック部だけでなく、これらを通して表層部全体に、更にはバルク内部にまでも樹脂が浸透し、表面の耐食性が著しく改善される上にバルク超電導材料そのものの機械的強度が飛躍的に向上するので使用時の外力,内部応力あるいは腐食による割れの進展が極力抑えられ、長期にわたって十分に高い捕捉磁場を維持することが可能になる。
f) しかも、樹脂含浸による酸化物超電導バルク体マトリックスの超電導特性の劣化は全く認められないため、この方法は、溶融法による酸化物超電導体の優れた超電導特性を維持したままで機械的特性,耐食性を向上するという極めて有利な手段である。

【0009】
g) なお、酸化物超電導バルク体に樹脂を含浸させるに際して、予め該酸化物超電導バルク体に孔を設けておけばこの孔を通じてもバルク体内部に速やかに樹脂を含浸させることができるので、酸化物超電導体の使用形態によってはより有利な材料が得られることになる。

【0010】
本発明は、上記知見事項等を基にして完成されたものであり、下記の酸化物超電導体並びに該酸化物超電導体の製造方法を提供するものである。
1) 樹脂含浸層を有した溶融法による酸化物超電導バルク体から成ることを特徴とする、酸化物超電導体。
2) 酸化物超電導バルク体が希土類元素(Y,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)を含む銅酸化物超電導体である、前記1)項記載の酸化物超電導体。
3) 酸化物超電導バルク体が、REBa2Cu3y (REはY,Dy,Ho,Er,Tm又はYbのうちの1種以上)を母相とすると共に、該母層中に50体積%以下のRE2 BaCuO5 (REはY,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)相を含む銅酸化物超電導体である、前記1)項又は2)項記載の酸化物超電導体。
4) 酸化物超電導バルク体が、RE1+x Ba2-x Cu3y (REはLa,Nd,Sm,Eu及びGdのうちの1種以上)を母相とすると共に、該母層中に50体積%以下のRE4-2x Ba2+2x Cu2-x 10-2x (REはLa及びNdのうちの1種以上)相又はRE2 BaCuO5 (REはSm,Eu及びGdの1種以上)相を含む銅酸化物超電導体である、前記1)項又は2)項記載の酸化物超電導体。
5) 酸化物超電導バルク体が40重量%以下のAgを含んで成る、前記3)項又は4)項記載の酸化物超電導体。
6) 含浸させた樹脂がエポキシ系樹脂である、前記1)乃至5)項の何れかに記載の酸化物超電導体。
7) 減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と液状樹脂とを接触させて酸化物超電導バルク体に樹脂を含浸させることを特徴とする、前記1)乃至6)項の何れかに記載の酸化物超電導体の製造方法。
8) 酸化物超電導バルク体の外表面から樹脂を含浸させる、前記7)項記載の酸化物超電導体の製造方法。
9) 予め酸化物超電導バルク体に孔を設けておくことにより、酸化物超電導バルク体の外表面と内部の両方から樹脂を含浸させる、前記7)項記載の酸化物超電導体の製造方法。

【0011】
ここで、本発明に適用される溶融法により製造された酸化物超電導バルク体としてはこれまで知られていた何れの種類のものでも良いが、捕捉磁場の高い高温超電導体として知られるRE-Ba-Cu-O系超電導体(REは希土類元素であってY,La,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上を意味する)として知られる銅酸化物超電導バルク体が好適であると言える。中でも、酸化物超電導バルク体が、捕捉磁場のより高い材料として知られているREBa2Cu3y (REはY,Dy,Ho,Er,Tm又はYbのうちの1種以上)を母相とすると共に該母層中に50体積%以下のRE2 BaCuO5(REはY,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm及びYbのうちの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体や、RE1+x Ba2-x Cu3y ( REはLa,Nd,Sm,Eu及びGdのうちの1種以上であって<HAN>、</HAN> 好ましくは-0.1 <x<0.2, 6.5<y<7.2 の範囲のもの)を母相とすると共に該母層中に50体積%以下のRE4-2x Ba2+2x Cu2-x 10-2x (REはLa及びNdのうちの1種以上であって<HAN>、</HAN> 好ましくは-0.2 <x<0.3 の範囲のもの)相又はRE2 BaCuO5 ( REはSm,Eu及びGdの1種以上)相を分散相として含む酸化物超電導体がより好適であると言える。なお、これら酸化物超電導体において分散相の含有割合を50体積%以下と定めたのは、分散相の含有割合が50体積%を超えると超電導特性が劣化傾向を見せるからである。

【0012】
また、酸化物超電導バルク体に含浸させる樹脂としては、エポキシ系樹脂,尿素樹脂,フェノ-ル樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ポリウレタン,アルキド樹脂,メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が適当である。

【0013】
更に、必要に応じて酸化物超電導バルク体にAgを含有させることは更なる強度向上に有利であり、高い捕捉磁場を維持する上で効果的であるが、その含有割合が40重量%を超えると超電導特性が劣化傾向を見せる。従って、Agを含有させる場合には、その含有割合は40重量%以下に抑えるのが好ましい。

【0014】
なお、溶融法による酸化物超電導バルク体に樹脂を含浸させる手法としては、真空等の減圧雰囲気下に保持した酸化物超電導バルク体と液状樹脂とを接触させる方法が工程であるが、樹脂含浸が可能であれば“加圧含浸法”等といったその他の方法によっても差し支えはない。ただ、単に溶融法による酸化物超電導バルク体表面に樹脂コ-ティングを施すだけの手法では樹脂の含浸は起きず、腐食性雰囲気からの保護は可能かも知れないが、高い捕捉磁場を長期にわたって維持する効果は得られない。

【0015】
上述のように、本発明は、加熱・冷却による大きな熱歪や大きな電磁力等に十分に耐え得る機械的特性と十分な耐食性を備えていて高い捕捉磁場特性を長期にわたって維持できる“酸化物超電導体”を容易かつ安価に提供するもので、例えば酸化物超電導バルク体を高電磁力下で応用する場合や、酸化物超電導バルク体に磁場を捕捉させて高温超電導磁石として利用する場合に極めて有用な技術となり得る。また、酸化物超電導バルク体に樹脂含浸層を有せしめることは、バルク体製造時に発生した微小クラックや気孔を起点とする割れの発生及び進展や腐食の抑制効果だけでなく、外部から受ける直接的な機械的衝撃を緩和する効果にもつながる。中でも、樹脂を酸化物超電導バルク体の表面深く浸透させると、冷却の際の温度差による熱歪による応力発生緩和にも顕著な効果が発揮される。

【0016】
以下、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】〔実施例1〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、常法通りにYBa2Cu3y 素材を1100℃に20分加熱した後、1050℃まで30分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0017】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて下記「条件1」及び「条件2」の含浸法により樹脂を浸透させた組とを用意した。
条件1…ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンをそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32で混合させ、真空下で脱気を行った。次に、バルク超電導体を70℃まで予熱し、真空槽の中で減圧した。バルク体を覆うように樹脂を注ぎ込み、大気圧以上に加圧させ、80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。
条件2…ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂と芳香族ポリアミンをそれぞれ30℃まで予熱した状態で、配合組成(重量比)100:32で混合させた。次に、バルク超電導体を70℃まで予熱し、バルク体を覆うように樹脂を注ぎ込み、真空槽の中で減圧し脱気を行った。十分脱泡した後、大気圧中で80℃下において6時間、120℃下において2時間、加熱することにより硬化させた。

【0018】
このようにして製造された何れの組の酸化物超電導体も図1に示す形状を有していた。次いで、これら各超電導体を100Kまで冷却し、この温度で10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、真空含浸しなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、真空含浸した試料の捕捉磁場は、Y211相の含有量が0,10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 2.5T,3T,4T,4T及び3Tという値が得られた。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0019】
そして、樹脂含浸処理したものについてその断面の組織観察を行ったところ、表面から内部に向かってバルク材料の微小なクラックや気孔を中心に樹脂が浸透していて、表層が樹脂含浸層となっていることが確認された。なお、図2で示すのは前記図1のA-A断面の観察状態を模式図化したものであり、図3で示すのは前記図1のB-B断面の観察状態を模式図化したものである。

【0020】
以上のように、樹脂の真空含浸を施さなかった試料は全て割れが観察されたのに対し、真空含浸した試料では割れが観察されず、全てにおいて比較的大きな捕捉磁場が得られた。なお、Y211相の含有量による捕捉磁場の違いは、Y211含有量による臨界電流密度の差を反映しているものであることは言うまでもない。

【0021】
〔実施例2〕
Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有するバルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1200℃に20分加熱した後、1050℃まで20分で冷却し、その後NdBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。この時、結晶成長させた段階で、Sm211相が0及び10体積%の試料では大きなクラックが観察された。また、肉眼では観察されなかったものの、Sm211相が20体積%の試料でもクラックが認められた。

【0022】
次に、割れの認められなかったSm211相をそれぞれ30及び40体積%含有するバルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0023】
次に、これら各超電導体を100Kまで冷却し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、真空含浸しなかった試料は何れも破壊していることが確認された。一方、真空含浸した試料の捕捉磁場は、Sm211相の含有量が30及び40体積%の試料においてそれぞれ8T及び 6.5Tという値が得られた。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0024】
以上のように、樹脂の真空含浸を施さなかった試料は全て割れが観察されたのに対し、真空含浸した試料では割れが観察されず、比較的大きな捕捉磁場が得られた。なお、Sm211相の含有量による捕捉磁場の違いは、Sm211相の含有量による臨界電流密度の差を反映したものであり、また実施例1の試料に比べて捕捉磁場が大きく向上しているのはSm系の優れた臨界電流特性を反映したものである。

【0025】
〔実施例3〕Nd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Nd3.6Ba2.4Cu1.8z ( Nd422相)を0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、“酸素分圧を 0.1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1040℃に20分加熱した後、1010℃まで20分で冷却し、その後MgO単結晶を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。この時、結晶成長させた段階で、Nd422相が0及び10体積%の試料では大きなクラックが観察された。

【0026】
次に、割れの認められなかったNd422相をそれぞれ20,30及び40体積%含有するバルク超電導体に対し、1気圧の酸素気流中で300℃において300時間の酸素アニ-ルを施した。次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0027】
次に、これら各超電導体を100Kまで冷却し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、真空含浸しなかった試料は全て破壊していることが確認された。一方、真空含浸した試料の捕捉磁場は、Nd422相の含有量が20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ3T, 6.5T及び5Tという値が得られた。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0028】
以上のように、樹脂の真空含浸を施さなかった試料では割れが観察されたのに対し、真空含浸した試料では割れが観察されず、比較的大きな捕捉磁場が得られた。

【0029】
〔実施例4〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有する各バルク材料のそれぞれに対し、更にAgを10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1050℃に20分加熱した後、1000℃まで30分で冷却し、その後YBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0030】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0031】
次に、これら各超電導体を100Kまで冷却し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、真空含浸しなかった試料のうち、Y211相の含有量が0及び10体積%の試料は破壊していることが確認された。また、破壊していないY211相の含有量が20,30及び40体積%の試料の捕捉磁場は、それぞれ 1.5T,3T及び2Tであった。一方、真空含浸した試料は全て破壊しておらず、捕捉磁場は、Y211相の含有量が0,10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ 2.5T,3T, 4.5T,5T及び3Tという値が得られ、破壊していない試料で比較した場合、真空含浸した試料の方が全てにおいて高い捕捉磁場を記録した。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0032】
以上のように、Agを添加したY系試料においても樹脂の真空含浸により捕捉磁場が向上することが分かる。

【0033】
〔実施例5〕Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)をそれぞれ0,10,20,30及び40体積%分散して含有するバルク材料のそれぞれに対し、更にAgを15重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1010℃に20分加熱した後、990℃まで20分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。この時、結晶成長させた段階で、肉眼では観察されなかったものの、Sm211相を含まない試料ではクラックの存在が確認された。

【0034】
次に、クラックの認められなかったSm211相をそれぞれ10,20,30及び40体積%含有するバルク超電導体に対して、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを施した。

【0035】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0036】
次に、これら各超電導体を100Kまで冷却し、10Tの磁場を印加した後、温度を50Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。その結果、真空含浸しなかった試料の捕捉磁場はSm211相の量が10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ5T,6T,6T及び4Tであった。一方、真空含浸した試料の捕捉磁場はSm211相の量が10,20,30及び40体積%の試料においてそれぞれ6T,9T,9T及び7Tであった。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0037】
以上のように、Sm系酸化物超電導体においても、Ag添加した試料に樹脂の真空含浸を施すと捕捉磁場が向上することが確認された。

【0038】
〔実施例6〕Sm0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Sm2BaCuO5(Sm211相)を30体積%分散して含有するバルク材料に更に酸化銀を10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Sm0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1010℃に20分加熱した後、990℃まで20分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを行った。

【0039】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0040】
次に、これら各超電導体を100Kまで冷却し、10Tの磁場を印加した後、液体窒素に浸漬して温度を77Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。そして、その後更にこの過程を繰り返し、一回毎に捕捉磁場の測定を行った。

【0041】
図4は、一回目に測定された捕捉磁場を「1」と規定し、これを基準にして繰り返しによる捕捉磁場の変化を示したグラフである。この図4から明らかなように、真空含浸しなかった試料では測定回数と共に捕捉磁場は低下して行くのに対し、真空含浸した試料では捕捉磁場は全く低下しないことが分かる。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0042】
以上のように、真空含浸した試料では、繰り返しの冷却及び電磁力印加に対しても捕捉磁場の劣化を防ぐ効果のあることが確認された。

【0043】
〔実施例7〕Gd0.9Ba2.1Cu3y 超電導体内に Gd2BaCuO5(Gd211相)を30体積%分散して含有するバルク材料に更に酸化銀を10重量%含有させた試料を、溶融法により作製した。溶融条件は、 Gd0.9Ba2.1Cu3y 素材を“酸素分圧を1%に保ったアルゴンとの混合ガスを流した雰囲気”中で1000℃に20分加熱した後、980℃まで20分で冷却し、その後GdBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、850℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で350℃において200時間の酸素アニ-ルを行った。

【0044】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0045】
次に、これら各超電導体を100Kまで冷却し、10Tの磁場を印加した後、液体窒素に浸漬して温度を77Kとし、その後磁場をゆっくり低下させていって磁場を除去した後、ホ-ル素子を用いて超電導体表面の磁場分布を測定した。そして、その後更にこの過程を繰り返し、一回毎に捕捉磁場の測定を行った。

【0046】
図5は、一回目に測定された捕捉磁場を「1」と規定し、これを基準にして繰り返しによる捕捉磁場の変化を示したグラフである。この図5から明らかなように、真空含浸しなかった試料では測定回数と共に捕捉磁場は低下して行くのに対し、真空含浸した試料では捕捉磁場は全く低下しないことが分かる。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0047】
以上のように、Gd系酸化物超電導体においても、真空含浸した試料では繰り返しの冷却及び電磁力印加に対しても捕捉磁場の劣化を防ぐ効果のあることが確認された。

【0048】
〔実施例8〕YBa2Cu3y 超電導体内にY2 BaCuO5 相を30体積%分散して含有するバルク材料を、溶融法により作製した。溶融条件は、YBa2Cu3y 素材を1100℃に20分加熱した後、1050℃まで30分で冷却し、その後SmBa2Cu3y 相を種結晶として設置してから、更に900℃まで 0.5℃/hの速度で冷却する条件を採用した。そして、結晶成長後、1気圧の酸素気流中で400℃において250時間の酸素アニ-ルを行った。

【0049】
次いで、このようにして得られた各バルク超電導体につき、そのまま樹脂含浸処理をしない組と、これらを真空容器に入れて実施例1に示した「条件1」及び「条件2」の含浸法で樹脂を浸透させた組とを用意した。

【0050】
次に、これら各超電導体を液体窒素に直接浸漬して77Kまで冷却し、また室温まで昇温する作業を繰り返した。その結果、樹脂の真空含浸を施さなかった試料では3回の冷却・昇温で肉眼で割れが観察されたのに対し、真空含浸した試料では20回冷却・昇温を繰り返しても割れが観察されなかった。また、「条件1」及び「条件2」の何れで樹脂含浸処理したものも捕捉磁場は同様の結果となった。

【0051】
これら結果は、含浸された樹脂が試料強度を向上させるだけでなく、試料を液体窒素で冷却した際に試料表面と内部で生じる大きな温度差が樹脂含浸により樹脂が熱絶縁材の働きをし、熱歪の緩和にも貢献することを示すものである。

【0052】
なお、ここでは樹脂含浸させたY系,Sm系,Nd系及びGd系の銅酸化物超電導体についての実施例を示すに止めたが、その他のLa系,Eu系,Dy系,Ho系,Er系,Tm系及びYb系あるいはこれら希土類元素を複合で含む系の酸化物超電導バルク体に樹脂含浸させたものも、上記実施例の場合と同様に優れた効果を発揮することも確認済である。

【0053】

【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれば、高い捕捉磁場の確保といった超電導特性の向上だけでなく、冷却及び昇温の温度履歴や電磁力印加を繰り返し行った電磁的履歴あるいは腐食性雰囲気中での長期使用等の場合においても捕捉磁場の劣化がない溶融法によ酸化物超電導体を容易かつ安価に提供することができるなど、産業上極めて有用な効果がもたらされる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4