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明細書 :バイオセンサ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3733408号 (P3733408)
公開番号 特開2003-250516 (P2003-250516A)
登録日 平成17年10月28日(2005.10.28)
発行日 平成18年1月11日(2006.1.11)
公開日 平成15年9月9日(2003.9.9)
発明の名称または考案の名称 バイオセンサ及びその製造方法
国際特許分類 C12M   1/34        (2006.01)
G01N  21/77        (2006.01)
G01N  33/497       (2006.01)
FI C12M 1/34 E
G01N 21/77 A
G01N 33/497 D
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2002-057130 (P2002-057130)
出願日 平成14年3月4日(2002.3.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年9月5~7日幕張メッセ国際会議場及び幕張プリンスホテル内プリンスホールにおいて開催された第5回分析化学東京シンポジウム 2001 機器分析東京討論会において発表
特許法第30条第1項適用 2001年9月20~23日千葉大学西千葉キャンパスにおいて開催された日本化学会第80秋季年回(2001)化学関係学協会連合協議会研究発表会 連合討論会において発表
審査請求日 平成14年5月24日(2002.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
【識別番号】502078712
【氏名又は名称】三林 浩二
発明者または考案者 【氏名】三林 浩二
【氏名】青柳 勝栄
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
【識別番号】100104684、【弁理士】、【氏名又は名称】関根 武
審査官 【審査官】森井 隆信
参考文献・文献 特開平09-262097(JP,A)
今拓生,橋本祐樹,三林浩二,酸素感応型光ファイバーを用いた光匂いセンサ,平成13年度 神奈川県産学公交流研究発表会要旨集,日本,神奈川県産業技術総合研究所,2001年
今拓生,橋本祐樹,三林浩二,酸素感応型光ファイバーを用いたバイオセンシングに関する研究,日本化学会講演予稿集,日本,日本化学会,2001年 3月15日,第79巻,第2号,第908頁
調査した分野 C12M 1/34
G01N 21/77
G01N 33/497
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
光ファイバーが筒状体中に挿入されてなる匂いセンサであって、該筒状体中に液体が循環させることができるようになされており、かつ該匂いセンサの先端に酵素固定化膜が密着されていることを特徴とする匂いセンサ
【請求項2】
前記酵素が、酸化還元酵素、脱水素酵素又は発光酵素である、請求項1に記載の匂いセンサ
【請求項3】
前記光ファイバーが、酸素感応型光ファイバー、pH感応型光ファイバー又は発光感応型光ファイバーである、請求項1又は2に記載の匂いセンサ
【請求項4】
前記光ファイバーが、酸素感応型光ファイバーであり、その先端部にルテニウム有機錯体が固定されたものである、請求項1又は2に記載の匂いセンサ
【請求項5】
前記酸化還元酵素が、基質と反応して酸素を消費又は発生する酵素である、請求項2~4のいずれか1項に記載の匂いセンサ
【請求項6】
前記膜が透析膜である、請求項1~5のいずれか1項に記載の匂いセンサ
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の匂いセンサを、少なくとも1個有する、匂い測定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオセンサに関するものであり、更に詳細には、光ファイバーと酵素とを組み合わせて用いた、感度が高く選択性に優れた高いバイオセンサに関するものである。本発明のバイオセンサは、特に匂い成分を検出、計測するのに用いられる。
【0002】
【従来の技術】
近年、発光や蛍光、消光等の光学的反応を利用したバイオセンサが多数報告されている。バイオセンサとは、微生物、酵素、抗体等の生物材料の分子認識能を利用し、生物材料を分子識別素子として応用したセンサのことをいう。言い換えると、バイオセンサは、固定化された生物材料が、目的の基質を認識したときに起こる反応、微生物の呼吸による酵素の消費、酵素反応、発光等を物理化学デバイスにより電気信号に変換して測定を行うものである。
【0003】
バイオセンサの中でも、特に酵素センサの実用化に向けた開発が進められており、例えばグルコース、乳酸、コレステロール等の酵素センサが開発され、医療や食品工業等の分野において利用されている。酵素センサは、検体である試料液に含まれる基質と酵素との反応により生成される電子受容体を還元し、測定装置がその電子受容体の還元量を電気化学的に計測することにより、検体の定量分析を行う。
【0004】
一方、光ファイバーセンサの実用化に向けた開発が進んでおり、種々の用途に用いられ始めている。また、ルテニウム錯体の蛍光反応が周囲の酸素濃度により消光する現象を利用し、ルテニウム錯体を光ファイバーに固定することで酸素濃度を測定する酸素感応型光ファイバーが開発されている。
【0005】
上述したように、バイオセンサ、光ファイバーセンサは種々の分野において応用されているが、匂いを計測することに用いられた報告はなく、このような用途に用いることが期待されている。
また、従来より、種々の匂いセンサが開発され用いられているが、その感度と選択性は十分なものでなく、感度と選択性に優れた匂いセンサが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、光ファイバーと酸化還元酵素(酸化還元酵素固定化膜)とを組み合わせて用いることにより、感度と選択性に優れたバイオセンサ(匂いセンサ)を提供することにある。
【0007】
【発明が解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、酵素を膜に固定化した膜を、光ファイバーの先端に密着させることにより、上記目的を達成し得るという知見を得た。
すなわち、本発明は、酵素固定化膜を、光ファイバーの先端に密着させたことを特徴とするバイオセンサを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記バイオセンサを、少なくとも1個有する、匂い測定装置を提供するものである。
また、本発明は、酸化還元酵素及び光架橋性樹脂を透析膜に塗布、含浸させた後、上記光架橋性樹脂を架橋させることにより、上記酸化還元酵素を透析膜に固定化して酸化還元酵素固定化膜を得る工程、及び得られた酸化還元酵素固定化膜を、酸素感応型光ファイバーの先端に密着させる工程を含む、バイオセンサ製造方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のバイオセンサについて説明する。
本発明のバイオセンサは、酵素固定化膜を、光ファイバーの先端に密着させたことを特徴とする。
【0010】
本発明のバイオセンサにおいて用いられる光ファイバーとしては、例えば酸素感応型光ファイバー、pH感応型光ファイバー及び発光感応型光ファイバーが挙げられる。酸素感応型光ファイバーは、蛍光反応が周囲の酸素濃度により消光する現象を利用して酸素濃度を検出することのできる光ファイバーであり、pH感応型光ファイバー、発光感応型光ファイバーは、それぞれpH及び発光を測定することのできる光ファイバーである。
【0011】
また、本発明のバイオセンサにおいて用いられる酸素感応型光ファイバーとしては、ルテニウム有機錯体の蛍光反応が周囲の酸素濃度により消光する現象を利用してルテニウム有機錯体を光ファイバーに固定化したものを用いることができる。酸素感応型光ファイバーとしては、上述したルテニウム有機錯体を光ファイバーに固定したものに限定されず、例えばオスミウム、イリジウム、ロジウム、レニウム及びクロム等の有機錯体を光ファイバーに固定化したものも使用可能である。
【0012】
本発明において有機錯体とは、上記ルテニウム等と2,2'-ビピリジン、1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジスルホン化ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,2'-ビ-2-チアゾリン、2,2'-ビチアゾール、5-ブロモ-1,10-フェナントロリン、および5-クロロ-1,10-フェナントロリン等との錯体等が用いられる。
【0013】
ルテニウム錯体等を光ファイバーの先端に固定する方法に特に制限はないが、例えばゾル・ゲル法により固定化することができる。ルテニウム錯体の蛍光反応(励起光:470nm、蛍光:600nm)が酸素存在下にて、気相系、液相において、それぞれ酸素や溶存酸素濃度に応じた消光現象を示すことから、酸素濃度の測定が可能となる。
【0014】
なお、本発明において用いられる酸素感応型光ファイバーは市販されているものを用いることができ、例えばオーシャン・オプティスク社製の光ファイバーを用いることができる。また、用いる光ファイバーの直径は、用途に応じて選択することができ、1.5mm程度のものが通常に用いられるが、光ファイバーの直径はこれに限定されず、0.01mm~5.0mm程度の範囲のものを用いることができる。
【0015】
本発明のバイオセンサにおいて用いられる酵素としては、酸化還元酵素、脱水素酵素又は発光酵素が挙げられる。
本発明のバイオセンサにおいて用いられる酸化還元酵素は、基質と反応して酸素を消費又は発生する酵素である。このような酸化還元酵素は、測定対象とする基質に応じて選択することができる。エタノールの濃度を測定するにはアルコール酸化酵素が用いられ、トリメチルアミン、メチルメルカプタンやアンモニアの濃度を測定するにはフラビン含有モノオキシゲナーゼが用いられる。本発明のバイオセンサにおいて用いられる他の酸化還元酵素としては、例えばカタラーゼ、モノアミンオキシダーゼ、乳酸酸化酵素等が挙げられる。
その他、本発明のバイオセンサにおいて用いられる酵素と光ファイバーとの組み合わせを挙げると以下の通りである。
本発明のバイオセンサにおいては、例えばアルデヒド脱水素酵素とpH感応型光ファイバーとの組み合わせで用いられる。アルデヒド脱水素酵素により、アルデヒドから水素が脱離し、それにより溶液中のpHが変化し、そのpH変化をpH感応型光ファイバーにより検出することにより、アセトアルデヒド等のアルデヒドの計測が可能である。また、ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いることにより、ホルムアルデヒドの計測が可能である。
また、アルコール脱水素酵素とpH感応型光ファイバーを組み合わせて用いることにより、アルコール脱水素酵素によりアルコールから水素が脱離し、溶液中のpHが変化し、そのpH変化をpH感応型光ファイバーにより検出することにより、アルコールの検出が可能である。
また、本発明のバイオセンサにおいては、アルコール酸化酵素と発光ルシフェラーゼ、発光検出型光ファイバーの組み合わせで用いることも可能である。発光ルシフェラーゼは、発光するのに過酸化水素を消費し、アルコール酸化酵素が酸素の消費により、生成される過酸化水素をルシフェラーゼの発光の強度で検出することにより、アルコールを検出することが可能である。
【0016】
本発明のバイオセンサにおいて用いられる酵素固定化膜を作成する方法としては、例えば光架橋性樹脂による包括法、架橋法、吸着法等が挙げられる。その中でも、光架橋性樹脂による包括法が一般的に用いられる。以下、光架橋製樹脂による包括法について説明する。
本発明のバイオセンサにおいて酵素固定化膜を作成するのに用いられる光架橋性樹脂としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール 等が挙げられ、ポリビニルアルコールにSbQの光感応基を組み合わせた、PVA-SbQ, SPP-H-13(Bio), 東洋合成工業(株)製等を用いることができる。
【0017】
本発明のバイオセンサにおいて用いられる膜としては、通常は透析膜が用いられる。透析膜としては、通常に市販されているものが何ら制限なく用いられるが、通常は膜厚が15μm程度のものが用いられるが、膜厚が15μm程度のものに限定されない。
本発明において用いられる、酸化還元酵素と光架橋性樹脂とを含む膜、すなわちは、以下のようにして製造することができる。
【0018】
酸化還元酵素及び光架橋性樹脂を透析膜に塗布、含浸させた後、上記光架橋性樹脂を架橋させることにより、上記酸化還元酵素を透析膜に固定化して酸化還元酵素固定化膜とする。なお、この方法については、後述する本発明のバイオセンサ製造方法の説明において詳述する。
【0019】
本発明のバイオセンサの一実施の形態の先端部分の拡大図を図1に示す。図1に示すように、光ファイバー11の先端に、酸化還元酵素固定化膜12が密着されており、シリコンチューブリング13により、酸化還元酵素固定化膜12が光りファイバー11の先端部に固定されている。図1に示すバイオセンサは、その先端部分が約45°の角度に形成されているが、本発明のバイオセンサにおいては、先端部が約45°の角度に形成されているものに限らず、例えば先端が平坦なものであってもよい。約45°の角度に成型されたものは、試料に刺すことにより基質を測定することが可能である。なお、本発明のバイオセンサにおいて用いられる酸化還元酵素固定化膜12の厚みは特に制限はないが、15μm程度でよい。
【0020】
本発明のバイオセンサの第二の実施の形態について図2を参照して説明する。図2は、本発明の第二の実施形態のバイオセンサの先端部の拡大断面図である。図2に示すバイオセンサは、光ファイバー22が筒状体21中に挿入されており、該筒状体21中に液体を循環させることができるようになされている。
【0021】
図2に示すバイオセンサは、光ファイバー22が筒状体21中に挿入されている。筒状体21の側面には排出管24が接続されており、また筒状体21の側面と光ファイバー22との間に仕切筒23が設けられている。バイオセンサの先端には酵素固定化膜25が密着している。図2に示すバイオセンサにおいては、矢印に示すような流で液体が循環するようになっており、液体は排出管24を通り排出される。なお、循環する液体は、図示しない液体流入口より筒状体21内に流入し、循環するようになっている。
【0022】
ここで液体とは、例えば緩衝液のことであり、酵素固定化膜25に固定された酸化還元酵素の至適pH付近のpHの緩衝液が用いられる。この緩衝液が筒状体21内を循環することにより、光ファイバー22の先端部が洗浄されるという効果がある。この洗浄効果により、光ファイバー22の先端に、測定対象となるガス成分が残留することがなく、連続的な測定が可能となる。
【0023】
また、緩衝液には、酵素固定化膜25に固定された酸化還元酵素の酵素反応に必要な物質を含有させることができる。例えば酸化還元酵素としてフラビン含有モノオキシゲナーゼを用いる場合、このフラビン含有モノオキシゲナーゼは補酵素としてβ-NADPHを、還元剤としてアスコルビン酸を必要とするので、β-NADPH及びアスコルビン酸を緩衝液中に含有させてもよい。
【0024】
本発明のバイオセンサを用いて匂い成分を測定するには、蛍光強度の変化を、分光器とA/Dコンバーターを介してコンピュータにてモニタリングすることにより行う。なお、特に暗室や暗箱を用いることなく、通常の光環境下(蛍光灯下の実験室)において計測を行うことができる。
また、図1に示すバイオセンサは、先端が約45°の角度になるように形成されており、例えば試料を充填したサンプルバックにバイオセンサの先端を刺すことにより、サンプルバック中の試料中の匂い成分を測定することができる。
【0025】
本発明の匂い測定装置は、本発明のバイオセンサを少なくとも1個有するものである。例えば、酸化還元酵素としてアルコール酸化酵素を用いたバイオセンサと、酸化還元酵素としてフラビン含有モノオキシゲナーゼを用いたバイオセンサを組み合わせて使用することにより、エタノールとトリメチルアミンとを同時に計測することのできる匂い測定装置を製造することができる。異なる酸化還元型酵素を用いたバイオセンサを複数組み合わせて用いることにより、複数の匂いが混合された試料の匂いの計測をすることが可能である。
【0026】
近年、情報通信が発達したことに伴い、画像などの視覚情報や音声等の聴覚情報の通信が急速に発達している。一方で、視覚や聴覚情報を利用した通信だけでなく、嗅覚、触覚や味覚情報を加えた五感の情報を統合的に利用することのできる通信の実現が期待されている。
【0027】
本発明の化学センサを用いた匂い測定装置は、複数の匂い成分の測定を行うことが可能であり、複数の匂い成分の測定を行った結果を情報通信により通信し、受信した側で、分析結果に応じて匂い成分の配合を行い、特定の匂いの再現を行うことが可能である。例えば、本発明の匂い測定装置で測定した匂い成分の分析結果を基に、それぞれの匂い成分を、それぞれの分析結果に応じて混合し、発生させる匂い発生装置等の構築が可能である。
【0028】
次に、本発明のバイオセンサ製造方法について説明する。
本発明のバイオセンサ製造方法は、酵素及び光架橋性樹脂を透析膜に塗布、含浸させた後、上記光架橋性樹脂を架橋させることにより、上記酵素を透析膜に固定化して酸化還元酵素固定化膜を得る工程、及び得られた酵素固定化膜を、光ファイバーの先端に密着させる工程を含む。
【0029】
本発明のバイオセンサ製造方法においては、先ず、酵素及び光架橋性樹脂を透析膜に塗布、含浸させる。ここで、酵素及び光架橋性樹脂については上述した本発明のバイオセンサにおいて説明したものを用いることができる。本発明のバイオセンサ製造方法においては、酵素及び光架橋性樹脂を混合してペーストとする。ペーストを製造する際に用いられる溶媒としては、緩衝液、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。本発明のバイオセンサ製造方法においては、酵素と光架橋性樹脂との混合割合は、両者をほぼ同量用いることが好ましい。酵素と光架橋性樹脂との混合物を溶媒に懸濁してペーストとするが、用いる溶媒の量は、酵素と光架橋性樹脂の質量に対し1:1程度である。
【0030】
次いで、上述のようにして得られたペーストを透析膜に塗布する。この時用いられる透析膜としては、厚みが1~1000μm程度のものを用いることが好ましい。透析膜は15μm程度の厚みのものが通常は用いられる。ペーストの塗布量は、0.01~1mg/mm2が好ましい。次いで、ペーストを塗布した透析膜を冷暗所(0~10℃程度の温度)に静置して乾燥させる。乾燥時間は特に制限はないが、30分~2時間程度でよい。次いで、透析膜に蛍光灯照射を行い、光架橋を行わせ、酵素を包括固定化することにより、酵素固定化膜が得られる。この時の蛍光灯照射は、15分~1時間程度行う。
【0031】
次いで、得られた酵素固定化膜を、光ファイバーの先端に密着させる。この工程について図1を参照して説明する。図1は、本発明のバイオセンサを製造する際の工程図を示す図であり、図1において、11は光ファイバーであり、12は酵素固定化膜であり、13はリングである。
【0032】
図2(a)において、光ファイバー11、酵素固定化膜12及びリング13を準備する。本発明のバイオセンサの製造方法においては、酵素固定化膜12を光ファイバー11の先端に密着させる。すなわち、図2(b)に示すように、上述のようにして得られた酵素固定化膜12を光ファイバー11の先端にかぶせ、次いでリング13を用いて、酵素固定化膜12がはずれないように固定し、本発明のバイオセンサを得る。リング13の材質については特に制限はなく、酵素固定化膜12を光ファイバー11に固定できるものであればどのような材質のものを用いてもよい。リング13としては、例えばシリコン製のものを用いることができる。
【0033】
図2においては、先端が約45°に形成されている、すなわち先端が鋭利な形状をしている光ファイバーを用いたが、本発明は、光ファイバーとしてこのような形態のものを用いることに限定されず、先端が平坦なものであってもよい。また、45°の角度よりも鋭利な角度のものを用いることも可能である。
【0034】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
アルコール酸化酵素(AOD:アルコールオキシダーゼ、EC 1.1.3.13 A2404, 10-40 units/mg シグマ-アルドリッチ社製)と光架橋製樹脂としてのPVA-SbQ(SPP-H-1(Bio), 東洋合成工業(株)製)の混合液(重量比1:1)をペーストとし、このペーストを透析膜(孔径24オングストローム、膜厚:15μm、テクニコン社製)に塗布、含浸させた。ペーストの塗布量は、10mg/cm2とした。
【0035】
次いで、ペースト塗布した透析膜を冷暗所にて1時間乾燥させた後、30分間蛍光灯を照射し、光架橋法によりAODを包括固定化し、酵素固定化膜を得た。得られた酵素固定化膜を酸素感応型光ファイバーの先端部に密着するようにシリコンチューブリングを用いて装着し、本発明のバイオセンサを得た。用いた酸素感応型光ファイバーは、オーシャン・オプティクス社製、FOXY-R, o.d,:1.5mmである。
【0036】
標準ガス発生器(Permeater, TYPE PD-1B-2,(株)ガステック製)を用いてエタノールガスを発生させ、発生したエタノールガスをサンプルバック(G-4、200×140×0.04mm、伊藤忠サンプラス(株)製)に充填し、上述のようにして製造されたバイオセンサの先端部をサンプルバック内へ挿入し負荷した。エタノールガスの存在下におけるアルコール酸化酵素の酸化触媒反応による酸素濃度の減少を、分光器(MODEL S2000-FL,オーシャンオプティクス社製)及びA/D変換器(DAQ Card-700, PCMCIA-type A/D card,ナショナルインスルメンツ社製)を介してコンピュータにて計測した。なお、サンプルバック内のエタノールガス濃度を20、50及び100ppmとして測定を行った。結果を図3に示す。
【0037】
図3は、エタノールガスに対するバイオセンサの応答性を示したグラフである。図3において、横軸はバイオセンサの先端をサンプルバックに挿入してからの経過時間を示し、縦軸はバイオセンサの出力応答を示す。図3に示すように、本発明のバイオセンサは、アルコール酸化酵素の酸化触媒反応に伴うセンサ近傍の酸素の減少により、光ファイバー先端部に固定化されたルテニウム有機錯体の蛍光の回復(出力の増加)が観察され、エタノールガスの濃度に応じた出力応答が得られた。なお、出力応答が最大の90%に到達するまでの時間は約90秒であった。
【0038】
本発明のバイオセンサが検量特性を有するか否かについて検討した。図4は、エタノールガス負荷時におけるバイオセンサの出力定常値をプロットしたグラフである。
図4から明らかなように、エタノールガス濃度に応じた出力増加が観察され、本発明のバイオセンサにより、エタノールガスの定量が可能であることがわかった。なお、データは示さないが、エタノール濃度は0.7~51.5ppmまでは定量が可能であった。
【0039】
実施例2
酸化還元酵素としては実施例1と同様のものを用い、光ファイバーとして先端が平坦なものを用い、図2に示す形態のバイオセンサを製造した。すなわち、ステンレス製の筒状体中に光ファイバーを挿入し、光ファイバーと筒状体との間に仕切筒を形成した以外は実施例1と同様にしてバイオセンサを製造した。すなわち、用いた光架橋性樹脂の種類や架橋方法等についても実施例1と同様である。
【0040】
このバイオセンサを用い、筒状体中を緩衝液(0.15mmol/lリン酸緩衝液、pH7.0)を循環させながら、実施例1で用いたガス発生器により200ml/分-流量でセンサ先端部にガス成分を負荷させ、エタノールガス濃度を変化させながら測定を行った。結果を図5に示す。図5は、エタノールガスに対するバイオセンサの応答性を示したグラフである。図5において、横軸はバイオセンサの先端をサンプルバックに挿入してからの経過時間を示し、縦軸はバイオセンサの出力応答を示す。また、グラフの上部には、バイオセンサの先端部に負荷したアルコールガスの濃度を示す。
【0041】
図5から明らかなように、バイオセンサの先端部に負荷するアルコールガス濃度を変化させると、バイオセンサの出力応答がそれに対応して変化することがわかる。この結果より、本発明のバイオセンサを用いることにより、ガス成分濃度を連続的に計測することが可能であることがわかった。
【0042】
実施例3
アルコール酸化酵素に代え、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(以下、FMOという)を用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、バイオセンサを得た。なお、フラビン含有モノオキシゲナーゼには複数の異性体が存在しており、基質特異性が異なることが知られており、3種のFMO(FMO1、3及び5)を用いた。FMO1、FMO3及びFMO5により、それぞれトリメチルアミン、メチルメルカプタン及び硫化ジメチルの出力比較を行った。結果は、それぞれのFMOは、それぞれの基質に特徴的な出力パターンを示し、トリメチルアミンについては0.31~125ppm、メチルメルカプタンについては0.37~2.23ppm、硫化ジメチルについては2.1~126ppmの濃度範囲で定量が可能であった。
【0043】
実施例4
実施例1で得られたバイオセンサ、及び実施例3で得られたバイオセンサを用い、計4本のバイオセンサを有する4チャンネルバイオノーズである、匂い測定装置を作成した。この匂い測定装置を用い、エタノール、トリメチルアミン、メチルメルカプタン及び硫化ジメチルを、それぞれ主要な臭気成分とする、焼酎、海産魚、大根及び海苔を用い、それぞれの匂いの計測を行った。
焼酎、海産魚、大根及び海苔を、実施例1で用いたサンプルバックに採取した後、匂い測定装置の測定部(4本のバイオセンサの先端部)をサンプルバック内に挿入し、匂い成分の計測を行った。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
JP0003733408B2_000002t.gif【0045】
表1中、NDは検出されなかったことを意味し、数字の単位はppmである。表1に示すように、焼酎においてはエタノールが、海産魚においてはトリメチルアミンが、海苔においては硫化ジメチルが主要な匂い成分であることが確認され、大根においてはエタノール及びメチルメルカプタンが含まれることが確認された。この結果は、既報値と矛盾していなかった。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のバイオセンサは、光ファイバーと酸化還元酵素とを組み合わせて用いることにより、感度が高く、選択性に優れたバイオセンサとなる。
また、本発明の匂い測定装置は、本発明のバイオセンサを少なくとも1個有しており、本発明のバイオセンサを複数有するものは複数の匂い成分を計測することが可能である。
【0047】
本発明のバイオセンサ製造方法によれば、光ファイバーと酸化還元酵素とを組み合わせて用いることにより、感度が高く、選択性に優れたバイオセンサを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバイオセンサの一実施の形態の先端部分の拡大図である。
【図2】本発明の第二の実施形態のバイオセンサの先端部の拡大断面図である。
【図3】エタノールガスに対するバイオセンサの応答性を示したグラフである。
【図4】エタノールガス負荷時におけるバイオセンサの出力定常値をプロットしたグラフである。
【図5】エタノールガスに対するバイオセンサの応答性を示したグラフである。
【符号の説明】
11 光ファイバー
12 酵素固定化膜
13 リング
21 筒状体
22 光ファイバー
23 仕切筒
24 排出管
25 酵素固定化膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4