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明細書 :センシングポンプ及びこれを用いたセンサシステム。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4387123号 (P4387123)
公開番号 特開2004-350512 (P2004-350512A)
登録日 平成21年10月9日(2009.10.9)
発行日 平成21年12月16日(2009.12.16)
公開日 平成16年12月16日(2004.12.16)
発明の名称または考案の名称 センシングポンプ及びこれを用いたセンサシステム。
国際特許分類 C12M   1/34        (2006.01)
C12M   1/40        (2006.01)
FI C12M 1/34 B
C12M 1/34 E
C12M 1/40 B
請求項の数または発明の数 12
全頁数 12
出願番号 特願2003-148776 (P2003-148776)
出願日 平成15年5月27日(2003.5.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年3月20日早稲田大学において開催された社団法人日本化学会第83春季年会で発表
特許法第30条第1項適用 東海大学2002年度卒業論文内容梗概集(平成15年2月14日)工学部電気工学科発行第118-119ページに発表
審査請求日 平成18年5月16日(2006.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】三林 浩二
【氏名】若林 慶彦
【氏名】岡本 敏明
個別代理人の代理人 【識別番号】100104684、【弁理士】、【氏名又は名称】関根 武
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 特開平07-248306(JP,A)
特開平06-186194(JP,A)
特開平04-028343(JP,A)
特開平11-174018(JP,A)
特開平07-167824(JP,A)
Biosensors and Bioelectronics,2003年 2月,Vol.18,p.797-804
調査した分野 C12M1/00-3/10
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
Pubmed
特許請求の範囲 【請求項1】
特定の物質の存在下で、その特定の物質の濃度に応じた圧力エネルギーが得られるセンシングポンプであって、
特定の物質と反応して気体を発生する感応膜で被覆された開口部と、
圧力口とを備える中空体からなり、
該感応膜が、反応後に気体を発生させる1種以上の触媒を含有する樹脂層を、該樹脂層が該中空体側となるようにして、該触媒が外部へ漏出するのを防ぐ膜上に積層させてなることを特徴とするセンシングポンプ。
【請求項2】
前記樹脂層が、種以上の触媒を含有する水溶性感光性樹脂硬化させて形成されたものである、請求項1記載のセンシングポンプ。
【請求項3】
前記触媒が生体触媒である、請求項1又は記載のセンシングポンプ。
【請求項4】
前記触媒が酵素である、請求項又は2に記載のセンシングポンプ。
【請求項5】
前記触媒がカタラーゼである、請求項又はに記載のセンシングポンプ。
【請求項6】
前記触媒がカタラーゼと、グルコースオキシダーゼとの混合物である、請求項又はに記載のセンシングポンプ。
【請求項7】
前記樹脂層カタラーゼを含有する樹脂層グルコースオキシダーゼを含有する樹脂層を積層させてなる、請求項に記載のセンシングポンプ。
【請求項8】
前記触媒微生物を含む、請求項1又は2に記載のセンシングポンプ。
【請求項9】
前記微生物酵母である、請求項8に記載のセンシングポンプ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のセンシングポンプと、
該センシングポンプの圧力口に接続された圧力計と、
該圧力計から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
該デジタル信号を処理して結果を表示するコンピュータとからなることを特徴とする特定の物質を検出・定量するセンサシステム
【請求項11】
請求項に記載のセンシングポンプと、
該センシングポンプの圧力口に接続された圧力計と、
該圧力計から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
該デジタル信号を処理して結果を表示するコンピュータとからなることを特徴とする過酸化水素を検出・定量するセンサシステム。
【請求項12】
請求項6又は7に記載のセンシングポンプと、
該センシングポンプの圧力口に接続された圧力計と、
該圧力計から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
該デジタル信号を処理して結果を表示するコンピュータとからなることを特徴とするグルコースを検出・定量するセンサシステム。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の物質と反応して圧力を発生するセンシングポンプに関する。更に詳細には、生体内の特定物質濃度に応じて駆動することにより、ドラッグデリバリーシステム(DDS)等の医療用途に用いることができるポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
エネルギーを機械的仕事に変換して動作するポンプは、産業用機械、上水道、灌漑等の幅広い分野で利用されてきた。例えば、往復ポンプや回転ポンプは、電気エネルギーや圧力エネルギー等を往復運動や回転運動の機械的仕事に変換している。このようなポンプのエネルギー供給源としては、通常、電源や蒸気圧を発生させる加熱源等が利用されている。
【0003】
一方、医療分野においては、生体に使用する小型分析装置や小型医療器具の開発が盛んに行われている。例えば、ドラッグデリバリーシステムに関しては、上記のようなポンプも薬剤等の流体を輸送するのに用いられる部品である。しかしながら、ポンプ以外にも供給量を制御する部品や電源等が必要である。また、診断情報を反映させながら薬剤等を供給するためには分析装置等も必要となり、システムが複雑化する。特に、生体内で使用する場合には、電源の供給や装置の大きさ等の制約が多くなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、特定物質の存在下で、その特定物質の濃度に応じた機械的駆動力が得られるセンシングポンプを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の物質と反応して気体を発生する、体積変化を伴う触媒反応を利用することにより、特定物質の濃度に応じた圧力エネルギーが得られるポンプを作製し、このポンプが上記目的を達成し得るという知見を得た。
【0006】
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、特定の物質反応して気体を発生する感応膜で被覆された開口部と、圧力口とを備える中空体からなることを特徴とするセンシングポンプを提供するものである。
上記官能膜は、透析膜上に、1種以上の触媒を含有する樹脂層を積層させてなる触媒固定化膜であることが好ましい。
また、上記触媒固定化膜は、1種以上の触媒を含有する水溶性感光性樹脂を硬化させて形成されたものであってもよい。
上記触媒は生体触媒であることが好ましく、生体触媒としては、例えば酵素、微生物等が挙げられる。酵素としては、カタラーゼ、カタラーゼとグルコースオキシダーゼとの混合物、カルボニックアンヒドラーゼが挙げられる。
また、本発明は、上記センシングポンプと、該センシングポンプの圧力口に接続された圧力計と、該圧力計から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、該デジタル信号を処理して結果を表示するコンピュータとからなることを特徴とする特定の物質を検出・定量するセンサシステムを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。
図1に、本発明の一実施の形態に係るセンシングポンプの構成を示す。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るセンシングポンプの構成を示すものである。図1(a)に示すように、本実施形態に係るセンシングポンプは、ファンネル型の中空体1と、感応膜2と、リング状の止め輪3とから構成されている。中空体1は圧力口21と開口部22とを有しており、開口部22は感応膜2で被覆され、感応膜2は止め輪3によって固定されセンシングポンプが構築される。図1(b)は、図1(a)の構成から構築されたセンシングポンプの断面図である。
【0008】
本発明のセンシングポンプは、感応膜2が特定物質と反応して気体を発生し、発生した気体が中空体1の内部の圧力を上昇させるという作用によってエネルギーを得るものである。
本発明に用いられる感応膜2としては、透析膜上に、1種以上の触媒を含有する樹脂層が積層されてなる触媒固定化膜が挙げられる。触媒反応には体積変化を伴うものがあり、特に、触媒反応によって反応後に気体を発生させる触媒を用いることができる。
触媒としては生体触媒が好ましく用いられる。生体触媒は、立体選択性等の高選択性を有する、反応条件が常温・常圧・中性であるため特別な環境を必要とせず周りに負荷をかけない、生体反応なので水や空気に強いこと等の利点があり、特に本発明のセンシングポンプを生体内で用いる場合には好適である。具体的には、酵素、微生物が挙げられる。
【0009】
本発明において用いられる酵素としては、具体的には、カタラーゼ(EC1.11.1.6)が挙げられる。下記式に示すようにカタラーゼは、過酸化水素が存在すると触媒反応により過酸化水素を水及び酸素に分解する。
2H → 2HO + O
カタラーゼ
上記反応で発生する酸素によって、図1に示す中空体1内部の圧力を増加させることができる。触媒としてカタラーゼを用いたセンシングポンプは、過酸化水素をセンシングするポンプである。
なお、本発明において用いられるカタラーゼとしては、上記触媒反応によって過酸化水素を水及び酸素に分解することのできるものであればいずれでもよく、例えば天然物(人やその他の動植物の生体試料等)から抽出、分離、生成したもの、遺伝子組換えによって得られた、カタラーゼをコードする遺伝子を組み込んだDNAによって、大腸菌、酵母、動物細胞等の宿主を形質転換して得た形質転換体から産生せしめ単離精製したものであってもよい。
【0010】
具体的には、図1に示すセンシングポンプを、過酸化水素を含む液体を含む容器中に、少なくとも感応膜2が浸漬するように接触させ、容器中の液体に含まれる過酸化水素と、感応膜中のカタラーゼとが反応し、酸素を発生し、中空体1内部の圧力が増加するようになっている。
【0011】
本発明のセンシングポンプにおいては、感応膜2は触媒を固定化した膜のみから構成されていてもよいが、例えば透析膜に触媒を固定化した層を積層した構成であってもよい。図2に、透析膜に触媒を固定化した層を積層した構成の感応膜の構成を示す。図2に示す感応膜2においては、透析膜4に触媒を固定化した層5が積層されている。このような構成とすることで、透析膜4によって、触媒を固定化した層5から触媒が外部へ漏出するのを防ぐことができる。図2に示す感応膜の作製方法としては、例えば、触媒と光架橋性樹脂との混合液を透析膜上に塗布した後、光照射を行って光架橋性樹脂を硬化させることにより2層構成の感応膜を作製する方法が挙げられる。光架橋性樹脂としては、スチルバゾリウム化ポリビニルアルコール(PVA-SbQ)、ポリケイ皮酸ビニル、キトサンゲル等の水溶性感光性樹脂が好ましい。
【0012】
本発明においては、用いられる触媒の種類は1種であっても複数であってもよい。例えば、2種類の触媒を用いる場合は、触媒を混合して1つの層内に固定してもよく、あるいはそれぞれの触媒を固定した層を積層して2層構成にしてもよい。例えば、触媒としてカタラーゼ及びグルコースオキシダーゼの混合物を用いる場合、透析膜上に、カタラーゼを含有する樹脂層と、グルコースオキシダーゼを含有する樹脂層とを積層させて構成してもよい。また、カタラーゼとグルコースオキシダーゼとの混合物を含有する樹脂層を透析膜上に積層させて構成してもよい。
【0013】
本発明で用いる中空体の形状としては、特に限定されるものではなく、図1(a)に示すようなファンネル型であってもよく、それ以外にも、筒型、箱型、円錐型等の用途に合わせて変更することができる。ただし、圧力増加の効果を高めるために、感応膜で被覆される開口部の面積が適度に大きい形状であることが好ましい。
また、中空体の材質については、有機材料、無機材料、あるいは複合材料であってもよく、特に限定されない。例えば、ガラス、金属、プラスチック、セラミックス等用途に合わせて選択することが好ましい。ただし、温度等による容積の変化率が少ない材質であることが好ましい。
【0014】
止め輪については、感応膜を中空体の開口部に隙間が生じないよう固定できるものであれば、形状、材質は特に限定されない。例えば、ビニールチューブ、バネを使った止め具、シリコーン製のリング、ゴムリング等が挙げられる。また、止め輪の替わりに、接着剤等を用いて感応膜を固定してもよい。
【0015】
本発明のセンシングポンプは、用いる感応膜及び中空体を適宜設計することにより、特定物質の濃度に応じて圧力エネルギーを得ることができる。
【0016】
具体例として、カタラーゼを用いた過酸化水素のセンシングポンプについて説明する。感応膜の作製は、上述の如く、透析膜上にカタラーゼと光架橋性樹脂との混合液を塗布して乾燥させた後、光照射を行い光架橋性樹脂を硬化させる方法を用いることができる。透析膜の膜厚は特に限定されないが、透過性、強度等を考慮して10~30μmの範囲内が好ましい。また、透析膜のポアサイズについても特に限定されないが、2×10-3~5×10-3μmの範囲が好ましい。カタラーゼと光架橋性樹脂との混合割合については、用いられるカタラーゼの比活性や光架橋性樹脂の種類によって適宜変更されるが、例えば、光架橋性樹脂としてPVA-SbQを用いる場合には、カタラーゼとPVA-SbQとの混合割合は、質量比で1:50~1:1000の範囲内であることが好ましい。カタラーゼの量が少ないと感応膜の過酸化水素に対する反応性が低くすぎて、充分な圧力増加が得られない場合がある。逆に、カタラーゼの量が多すぎると、透析膜の表面上から酵素と光架橋性樹脂との混合物が剥離しやすくなる場合がある。
【0017】
中空体については、例えば図1(a)に示すようなファンネル型の中空体を用いることができ、本発明においてはガラス製であることが好ましい。感応膜で被覆される開口部の形状や大きさは特に限定されないが、開口部面積が4cmに対して0.01~1000cmの範囲内であることが好ましい。また、圧力口の形状や大きさも用途に合わせて変更されるものであり、例えば、大圧力発生の用途に用いる場合は、0.1~10mの範囲が挙げられる。
中空体の内部は、リン酸緩衝液等の緩衝液で満たすことが好ましい。この場合の緩衝液のpHはカタラーゼの至適pHに近いことが好ましい。
【0018】
上記のセンシングポンプは、過酸化水素の存在下で、過酸化水素と感応膜中に固定化されているカタラーゼとの反応により圧力口に圧力エネルギーを得ることができる。また、過酸化水素濃度と圧力増加速度とが比例する条件においては、過酸化水素の定量も行うことができる。
【0019】
また、本発明において、2種類の触媒を用いる例としては、カタラーゼとグルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4)を用いるセンシングポンプが挙げられる。
【0020】
この場合、センシングポンプの感応膜として、カタラーゼとグルコースオキシダーゼとを含有する感応膜を用いることができる。具体的には、第一の触媒としてグルコースオキシダーゼと光架橋性樹脂とリン酸緩衝液とを混合した液を透析膜上に塗布し、乾燥させた後、光照射を行うことで第一の触媒固定化層を形成させ、次に、第二の触媒としてカタラーゼと光架橋性樹脂とリン酸緩衝液等の緩衝液(この緩衝液のpHはカタラーゼ及びグルコースオキシダーゼの至適pHに近いものを用いることが好ましい)とを混合した液を、先に形成した第一の触媒固定化層の上に塗布し、乾燥させた後、光照射を行うことで第二の触媒固定化層を形成させ、透析膜/第一触媒固定化層/第二触媒固定化層の構成を有する感応膜が挙げられる。また、上述したように、第一の触媒固定化層を形成させた後に第二の触媒層を形成することは必ずしも必要ではなく、カタラーゼ及びグルコースオキシダーゼを混合して触媒固定化層を形成させてもよい。
【0021】
この感応膜を用いたセンシングポンプは、下記式に示すような2段階の反応により、グルコース存在下で圧力エネルギーを得ることができる。
グルコース + O → H + グルクロン酸
グルコースオキシダーゼ
2H → HO + O
カタラーゼ
【0022】
本発明のセンシングポンプを製造する際に用いられる生体触媒としては、上述した酵素の他に、微生物を用いることができる。このような微生物としては、例えば酵母(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、エンテロバクター、プロテウス等の細菌等が挙げられる。
生体触媒として微生物を用いるセンシングポンプの製造方法についても、上述した、酵素を用いてセンシングポンプを製造する場合と同様に実施することができる。
【0023】
なお、酵素としてカルボニックアンヒドラーゼを用いた場合、上述したような過酸化水素に代えて炭酸水素イオンを用いることにより、二酸化炭素を生成させることが可能となる。
【0024】
本発明のセンシングポンプは、発生した圧力エネルギーを機械的仕事に変換する部品を圧力口に接続することができる。この部品は、ポンプが行う仕事によって適宜選択することができるが、例えば、往復運動であればピストン、プランジャ、ダイアフラム等の機能を有するものが挙げられ、また回転運動であれば歯車、スクリュー、ベーン等の機能を有するものが挙げられる。その他、圧力エネルギーを仕事に変換するものであれば特に限定されない。
【0025】
本発明のセンシングポンプは、特定物質の濃度に応じて圧力を発生させることができるので、特定物質の認識と制御に用いることができる。例えば、アクチュエーターとして用いた場合、特定物質の濃度に応じて弁の開閉等の制御動作を行うことができる。また、圧力口に圧力計を接続することにより、濃度測定器のセンサとして用いることもできる。
【0026】
また、本発明のセンシングポンプは、特定物質を電気や熱などに変換することなく直接運動エネルギーに変換することができるので、電気を供給できない場合や熱の発生が問題となる場合にも問題がなく動力源として利用できる。また圧力エネルギーを発生する機構が極めて簡単であることから、小型分析装置(マイクロトータルアナライシスシステム、μTAS)や医療用運動体への応用が可能である。例えば、生体内の化学物質(グルコース等)を直接エネルギー源として駆動する運動体や、疾病患部(腫瘍)に存在する物質を認識して駆動する医療用運動体に利用できる。
【0027】
その他、クロマトグラフィー用微量ポンプ、マイクロダイヤリシス用微量ポンプ等に利用可能である。また、化学物質を認識し、その濃度に応じて機械スイッチを押すことのできる化学スイッチ;金魚飼育用水槽への酸素供給装置、登山、運動時等に酸素ガスを供給する酸素供給装置;燃料電池の高出力化を図るための高濃度の酸素を供給するための燃料電池用酸素供給装置;液柱等のエアーレーションによる美術効果ディスプレイのガス供給源に使用する体積増加による形状変形するエアーディスプレー、例えば、人口ハンドによる把持、樹脂性の中空レンズにおける曲率変化、エアーリフト、プレス機器、エアーバック;ランタンやフィゴに用いる、エネルギーとしての酸素供給;飲料中の外部からのガス注入等に用いることができる。
【0028】
次に、本発明のセンサシステムについて説明する。
本発明のセンサシステムは、上述した本発明のセンシングポンプと、該センシングポンプの圧力口に接続された圧力計と、該圧力計から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、該デジタル信号を処理して結果を表示するコンピュータとからなる。
圧力計、A/Dコンバータ、及びコンピュータは、従来より用いられているものを特に制限なく用いることができる。触媒としてカタラーゼを用いた場合には、本発明のセンサシステムによって過酸化水素を検出・定量することができる。また、触媒としてカタラーゼとグルコースオキシダーゼとの混合物を用いた場合には、本発明のセンサシステムによってグルコースを検出・定量することができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0030】
(実施例1)
図1に示すセンシングポンプを作製した。センシングポンプは、図1(a)に示すように、内径が7mmの圧力口(上端口)と内径23mmの開口部(下端口)を有するファンネル型のガラス製中空体と、感応膜と、ビニールチューブとから構成した。
感応膜は、以下の方法で作製した。触媒としてカタラーゼ(EC1.11.1.6、比活性:65000U/mg)を用い、このカタラーゼと光架橋性樹脂であるスチルバゾリウム化ポリビニルアルコール(PVA-SbQ)とを質量比1:1で混合した液を透析膜(膜厚:15μm、ポアサイズ:3×10-3μm)上に塗布し、暗室で1時間乾燥させた。その後、2時間の蛍光照射を行うことで触媒固定化層を形成させ、透析膜と触媒固定化層とからなる感応膜を作製した。触媒固定化層の膜厚は3.0μmであった。この感応膜を中空体の開口部に触媒固定化層が中空体側となるようにしてビニールチューブで固定し、センシングポンプを作製した。
【0031】
このセンシングポンプを用いて、図3に示すような実験装置を組みたてた。センシングポンプ内部にリン酸緩衝液6ml(pH7.0)を添加した後、センシングポンプの圧力口に静電容量型の圧力計6(豊田工機株式会社製、商品名「静電容量型圧力センサモジュール」)を接続し、さらに圧力計6から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ7と、デジタル信号を処理して結果を表示するコンピュータ8を接続した。更に、圧力計6には電源9を接続した。センシングポンプは、感応膜がビーカー10内の試料11に浸漬するよう設置した。
【0032】
試料は、リン酸緩衝液18ml(pH7.0)に過酸化水素を0.5ml滴下し緩やかに攪拌することにより調製した。ここで、滴下する過酸化水素の濃度を変えることにより、試料中の過酸化水素濃度は変更した。これらの過酸化水素濃度が異なる一連の試料を用いて、センシングポンプ内部に発生した圧力を過酸化水素の滴下時を時間0として一定期間測定した。得られた時間-圧力データから各過酸化水素濃度での圧力増加速度(Pa/秒)を求めた。図4は、圧力増加速度を求めた結果を示すグラフである。図4(a)は、種々の過酸化水素濃度における、時間と圧力増加速度との関係を示すグラフである。図4(a)に示すように、圧力増加速度は時間とともに増加し、8分程度で安定することがわかった。次に、過酸化水素を滴下してから8分経過後の圧力増加速度と、過酸化水素濃度との関係を示すグラフを図4(b)に示す。
【0033】
図4(b)に示されるように、試料中の過酸化水素濃度が10mmol/L前後においてセンシングポンプ内部の圧力増加が確認され、さらに過酸化水素の濃度が上昇するにしたがってセンシングポンプ内部の圧力増加速度も大きくなり、過酸化水素濃度が30mmol/L前後では1.0Pa/秒の圧力増加速度が得られることが分かった。また、本システムによる流量特性(過酸化水素濃度:120mmol/l)の条件において、得られる仕事量を計算すると、4×10-7ワットであった。これらにより、センシングポンプが過酸化水素の存在下で圧力エネルギーの発生源となることが確認できた。
また、過酸化水素濃度が28.73~54.58mmol/Lの範囲で、過酸化水素濃度と圧力増加速度との間に高い相関関係が得られ、センシングポンプが過酸化水素の定量に利用できることも確認できた。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、センシングポンプの感応膜を、下記に示す感応膜に変更した以外は実施例1と同様にして実験装置を組みたてた。
第一の触媒としてグルコースオキシダーゼ(EC1.1.3.4、比活性:100U/mg)を用い、このグルコースオキシダーゼと光架橋性樹脂であるスチルバゾリウム化ポリビニルアルコール(PVA-SbQ)とリン酸緩衝液(pH7.0)とを質量比3:100:50で混合した液を透析膜(膜厚:15μm、ポアサイズ:3×10-3μm)上に塗布し、暗室で1時間乾燥させた。
【0035】
次いで、2時間の蛍光照射を行うことで第一の触媒固定化層を形成させ、さらに暗室で7時間乾燥させた。次に、第二の触媒としてカタラーゼ(EC1.11.1.6、比活性:11400U/mg)を用い、このカタラーゼと光架橋性樹脂であるスチルバゾリウム化ポリビニルアルコール(PVA-SbQ)とリン酸緩衝液(pH7.0)とを質量比2:30:15で混合した液を、先に形成した第一の触媒固定化層の上に塗布し、暗室で1時間乾燥させた。次いで、2時間の蛍光照射を行うことで第二の触媒固定化層を形成させ、透析膜/第一触媒固定化層/第二触媒固定化層の構成を有する感応膜を作製した。
【0036】
試料は、リン酸緩衝液18ml(pH7.0)にグルコース溶液(1000mmol/L)を0.5ml滴下し緩やかに攪拌することにより調製した。この試料を用いて、センシングポンプ内部に発生した圧力をグルコースの滴下時を時間0として一定期間測定したところ、20分間で40Paの圧力上昇が確認された。
【0037】
(実施例3)
実施例1において、センシングポンプの感応膜を、下記に示す感応膜に変更した以外は実施例1と同様にして実験装置を組みたてた。
触媒として酵母であるSaccharomyces cerevisiaeを用いた。Saccharomyces cerevisiaeを、YPD培地(水1000ml、酵母エキス10g、ポリペプトン20g、グルコース20g、寒天20g)で培養した。酵母の培養は、液体培地で培養した酵母を上記YPD培地培地に植菌し、30℃で24時間培養を行い、集菌して感応膜の作製に用いた。
酵母のコロニー、リン酸緩衝液(pH7.0)、光架橋性樹脂(PVA-SbQ)とを質量比1:25:50で混合した液を透析膜(膜厚:15μm、ポアサイズ:3×10-3μm)上に塗布し、暗室で1時間乾燥させた後、2時間の蛍光灯照射によって光架橋を行い、固定化して感応膜を作製した。得られた感応膜を用いて、実施例1と同様にセンシングポンプを作製した。
【0038】
試料は、リン酸緩衝液18ml(pH7.0)に過酸化水素を0.5ml滴下し緩やかに攪拌することにより調製した。ここで、滴下する過酸化水素の濃度を変えることにより、試料中の過酸化水素濃度は変更した。これらの過酸化水素濃度が異なる一連の試料を用いて、センシングポンプ内部に発生した圧力を過酸化水素の滴下時を時間0として一定期間測定した。得られた時間-圧力データから各過酸化水素濃度での圧力増加速度(Pa/秒)を求めた。図5は、圧力増加速度を求めた結果を示すグラフである。図5(a)は、種々の過酸化水素濃度における、時間と圧力増加速度との関係を示すグラフである。図5(a)に示すように、圧力増加速度は時間とともに増加することがわかった。次に、過酸化水素を滴下してから8分経過後の圧力増加速度と、過酸化水素濃度との関係を示すグラフを図5(b)に示す。
【0039】
図5(b)に示されるように、試料中の過酸化水素濃度が50mmol/L前後においてセンシングポンプ内部の圧力増加が確認され、さらに過酸化水素の濃度が上昇するにしたがってセンシングポンプ内部の圧力増加速度も大きくなり、過酸化水素濃度が100mmol/L前後では0.3Pa/秒の圧力増加速度が得られることが分かった。また、過酸化水素濃度が50~220mmol/Lの範囲で、過酸化水素濃度と圧力増加速度との間に高い相関関係が得られ、センシングポンプが過酸化水素の定量に利用できることも確認できた。
【0040】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、特定物質の存在下で、その特定物質の濃度に応じた機械的駆動力が得られるセンシングポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンシングポンプを説明するための図であり、(a)はセンシングポンプの構成を示す斜視図であり、(b)はセンシングポンプの断面図である。
【図2】本発明のセンシングポンプに使用される感応膜の層構成を示す図である。
【図3】実施例のセンシングポンプを使用した実験装置の構成図である。
【図4】過酸化水素濃度に対するセンシングポンプ内部の圧力増加速度を示すグラフである。
【図5】過酸化水素濃度に対するセンシングポンプ内部の圧力増加速度を示すグラフである。
【符号の説明】
A センシングポンプ
1 中空体
2 感応膜
3 止め輪
4 透析膜
5 触媒を固定化した層
6 圧力計
7 A/Dコンバータ
8 コンピュータ
9 電源
10 ビーカー
11 試料
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4