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明細書 :ナノゲル工学によるハイブリッドゲルの調製とバイオマテリアル応用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4599550号 (P4599550)
公開番号 特開2005-298644 (P2005-298644A)
登録日 平成22年10月8日(2010.10.8)
発行日 平成22年12月15日(2010.12.15)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 ナノゲル工学によるハイブリッドゲルの調製とバイオマテリアル応用
国際特許分類 C08F 290/10        (2006.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K  38/28        (2006.01)
A61K  47/36        (2006.01)
A61K  47/48        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P   5/50        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI C08F 290/10
A61K 9/127
A61K 37/26
A61K 47/36
A61K 47/48
A61P 3/10
A61P 5/50
B01J 13/00 D
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2004-115613 (P2004-115613)
出願日 平成16年4月9日(2004.4.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成15年12月16日 日本バイオマテリアル学会発行の「第25回日本バイオマテリアル学会大会予稿集(2003年)」に発表
審査請求日 平成19年2月15日(2007.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】秋吉 一成
【氏名】森本 展行
【氏名】岩崎 泰彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
審査官 【審査官】村上 騎見高
参考文献・文献 特開昭52-072784(JP,A)
特開昭60-147423(JP,A)
調査した分野 C08F290/00-290/14
C08F299/00-299/08
特許請求の範囲 【請求項1】
プルランに100単糖あたり1~5個のコレステロール基を導入して得られた分子量20,000~200,000のコレステロール置換プルラン(CHP)に、さらに100単糖あたり2~20個のメタクリロイル基またはアクリロイル基を導入し得られた化合物を基盤物質とし、これ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)またはN-イソプロピルアクリルアミドと共重合反応をおこさせることを特徴とする、プルラン2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)またはN-イソプロピルアクリルアミドとのハイブリッドゲルの調製方法。
【請求項2】
多糖類によるナノゲル間の架橋反応を抑えるために、メタクリロイル化CHP(CHPMA)のメタクリロイル基に対して、10~100倍モル比の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)で共重合反応をおこさせることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドゲルの調製方法。
【請求項3】
マクロゲルを調製するために、CHPMAナノゲルのメタクリロイル基に対して6倍モル濃度以上のMPCで重合反応をおこさせることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドゲルの調製方法。
【請求項4】
プルランに100単糖あたり1~5個のコレステロール基を導入して得られた分子量20,000~200,000のコレステロール置換プルラン(CHP)に、さらに100単糖あたり2~20個のメタクリロイル基またはアクリロイル基を導入し得られた化合物を基盤物質とし、この物質でリポソームの表面を被覆した後に、さらに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)またはN-イソプロピルアクリルアミド共重合反応をおこさせることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッドゲルの調製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ微粒子とゲルの特性を合わせ持つナノメーターサイズ(特に100nm以下)の高分子ゲル微粒子(ナノゲル)の改良に関し、さらに詳しくは多層構造化によってより高度な制御が可能となったハイブリッドゲルに関するものである。加えて本発明は、ハイブリッドゲルの調製法、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーゲルは、薬学・医療分野から分子テクノロジーや化粧品、食品の分野まで幅広く利用されている。近年、デンドリマー、微粒子(microsphere)を架橋点とする化学ゲル、抗体、人工タンパク質モチーフを架橋点とする物理架橋ゲル、さらに架橋点が移動するトポロジカルゲルなど様々な架橋点を有する新しいゲルが報告されている。しかし、架橋点の構造やゲルの網目の構造制御は依然として大きな課題である。一方で、ナノ微粒子とゲルの特性を合わせ持つナノメーターサイズ(特に100nm以下)の高分子ゲル微粒子(ナノゲル)は、特にドラッグデリバリーシステムやナノテクノロジー分野で注目されるようになってきた。一般に化学架橋ナノゲルは、マイクロエマルション重合法や高分子分子内での架橋反応により合成されてきた。我々は、疎水化高分子の自己組織化により物理架橋ナノゲルの新規な調製法を報告した(非特許文献1)。すなわち、比較的疎水性の高い疎水基(コレステロール基)を部分的に導入した水溶性多糖類が、希薄水溶液中で自己組織的に会合し、疎水基の会合領域を架橋点とする単分散なナノゲルを形成することを見出した。我々の知る限り、物理架橋点を有する50nm以下のサイズの揃ったナノゲルとしては、初めての報告であった。通常のナノ微粒子は、その表面の特性を利用した研究がほとんどであるが、ナノゲルはさらにその内部にも物質を取り込めるスペースを有することが最大の特色である。コレステロール置換プルラン(CHP)のナノゲルは、タンパク質と選択的に相互作用するホストとして機能し、ドラッグデリバリーシステムのキャリアーとして有効であることを報告している。また、第2の利点は、物理架橋点であるために、架橋構造の動的構造制御が可能であることである。疎水基の構造を変えることでゲルネットワークの動的特性を制御しえることやシクロデキストリンとのホストーゲスト相互作用を利用することで、ナノゲルの生成と崩壊を動的に制御しえる。この性質を利用して、変性タンパク質の取り込みと放出を制御した人工分子シャペロンの開発に成功している。

【非特許文献1】Akiyoshi, K.; Deguchi, S.; Moriguchi, N.; Yamaguchi, S.; Sunamoto, J. Macromolecules 1993, 26, 3062. 2) Kuroda, K.; Fujimoto, K.; Sunamoto, J.; and Akiyoshi, K. Langmuir 2002, 10, 3780.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、自己組織化ナノゲルをビルディングブロックとした構造制御された新規ハイブリッドゲルの合成と利用(ナノゲルエンジニアリング)達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、重合性自己組織化ナノゲル(ナノゲルマクロマー)の合成と新規ハイブリッドナノゲルの合成およびナノゲルを架橋点とする階層的ゲルの合成と生理活性物質リザーバーシステムとしての機能、さらにナノゲルーリポソーム複合体を架橋点とするリポソームネットワークゲルの合成を主要な特徴とする。
つまり本発明は以下よりなる;
1.プルランに100単糖あたり1~5個のコレステロール基を導入して得られた分子量20,000~200,000のコレステロール置換プルラン(CHP)に、さらに100単糖あたり2~20個のメタクリロイル基またはアクリロイル基を導入し得られた化合物を基盤物質とし、これ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)またはN-イソプロピルアクリルアミドと共重合反応をおこさせることを特徴とする、プルラン2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)またはN-イソプロピルアクリルアミドとのハイブリッドゲルの調製方法。
2.多糖類によるナノゲル間の架橋反応を抑えるために、メタクリロイル化CHP(CHPMA)のメタクリロイル基に対して、10~100倍モル比の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)で共重合反応をおこさせることを特徴とする前項1に記載のハイブリッドゲルの調製方法。
3.マクロゲルを調製するために、CHPMAナノゲルのメタクリロイル基に対して6倍モル濃度以上のMPCで重合反応をおこさせることを特徴とする前項1に記載のハイブリッドゲルの調製方法。
4.プルランに100単糖あたり1~5個のコレステロール基を導入して得られた分子量20,000~200,000のコレステロール置換プルラン(CHP)に、さらに100単糖あたり2~20個のメタクリロイル基またはアクリロイル基を導入し得られた化合物を基盤物質とし、この物質でリポソームの表面を被覆した後に、さらに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)またはN-イソプロピルアクリルアミド共重合反応をおこさせることを特徴とする前項3に記載のハイブリッドゲルの調製方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明のハイブリッドゲルは、生理活性物質のリザーバーシステム、制御システム、DDSシステムへの応用において大きな利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のハイブリッドゲルは、複合構造をもつ。
その基盤物質は、親水性多糖類に100単糖あたり1~5個の疎水性基を導入して得られた分子量20,000~200,000の水溶性多糖類に、さらに100単糖あたり2~20個の重合性基を導入し得られた化合物として調製される。親水性多糖類は、分子量20,000~200,000の水溶性多糖類である。具体的な多糖類は、プルラン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルデキストラン、マンナン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカンおよび水溶性セルロースからなる群より選択される1種以上である。導入される疎水性基は、炭素数12~50の炭化水素基、ステリル基等が好適に例示される。この疎水性基は、親水性多糖類における100単糖あたり整数値に限定されない1~5個より好ましくは1~3個の疎水性基が導入されている。この疎水性基含有多糖類の調製法は、例えばWO00/12564に開示がある。それによると、第1段階反応は、炭素数12~50の水酸基含有炭化水素またはステロールと、OCN-R1-NCO(式中、R1は炭素数1~50の炭化水素基である。)で表されるジイソシアナート化合物とを反応させて、炭素数12~50の水酸基含有炭化水素またはステロールが1分子反応したイソシアナート基含有疎水性化合物を製造する。第2段階反応は、前記第1段階反応で得られたイソシアナート基含有疎水性化合物と多糖類とをさらに反応させて、疎水性基として炭素数12~50の炭化水素基またはステリル基を含有する疎水性基含有多糖類を製造する。この第2段階反応の反応生成物をケトン系溶媒で精製して高純度疎水性基含有多糖類の製造が可能である。
疎水性基含有多糖類は、ついでその100単糖あたり整数値に限定されない2~20個より好ましくは5~8個の重合性基を導入される。重合性基とは、メタクリロイル基やアクリロイル基が好適に例示される。この重合性基の導入方法は、実施例1にその詳細な例示を説明した。このようにして調製された重合性多糖類は、水に分散させ、膨潤させた後に、超音波処理を行うと、疎水性基含有多糖類によって調製されるものと同様のナノゲル(実施例によると会合数3.9、慣性半径17.2nmが例示)が形成される。そして、実施例では、このナノゲル一つは、重合性基を約160個有することが確認された。
このように調製された基盤物質は、これを利用して機能性モノマーとの共重合反応をおこさせる。機能性モノマーとは、水溶性モノマーであって、たんぱく質等の吸着が極めて少ない等の生体適合性に優れた特性を有する化合物が選択される。この機能性モノマーの導入は、その導入条件によって最終製剤の性質に様々の効果をもたらし、特に重合化物の硬さ、柔らかさ等の物理的な効果をもたらす。この機能性モノマーとしては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、N-イソプロピルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、アクリアミド、2-アミノエチルメタクリレート等が好適に例示される。この機能性モノマーとの共重合反応をおこすことで、前記重合性多糖類は、多糖類と合成高分子とのハイブリッドゲルとして調製される。このハイブリッドゲルは、以下に説明する調製条件による多様な性質をもち、目的に合わせた性質の生体対応物質の調製を可能とする。
【0007】
具体的な調製方法の1は、共重合反応を、多糖類によるナノゲル間の架橋反応を抑えることが可能な重合反応物の条件特に重合反応物の希薄条件下で行うことである。例えば、重合性多糖類によって調製されたナノゲルを0.5~3mg/mLより好ましくは0.5~1.5mg/mLというような希薄条件に調整し、これに前記機能性モノマーと重合開始剤を添加して共重合反応をおこし、多糖類と合成高分子とのハイブリッドゲルとして調製する。これは、重合性基の存在に対して、機能性モノマーを10~100倍モル過剰な条件で共重合反応をおこし、未反応の重合性基を全て消失させるような条件である。この結果、ナノゲル中の重合性基あたり機能性モノマーは平均6.1(例えば機能性モノマーを10倍モル過剰添加の場合、実施例ではCM6と表示)及び平均14.3(例えば機能性モノマーを100倍モル過剰添加の場合、実施例ではCM14と表示)というようなハイブリッドゲルが調製された。得られたゲルを凍結乾燥し、水に分散、超音波処理後、その物性を評価すると、単分散性で非常に狭い分布幅をもつ会合体を形成しており、ナノゲル間で架橋することなく重合し、サイズの揃ったナノゲルの形成が確認された。このナノゲルは、その調製条件におうじて、架橋構造が調整可能であり、例えばナノゲル中の重合性基あたり機能性モノマーが平均6.1のナノゲルはs-シクロデキストリン(以下sCD)の存在下で崩壊する。一方、機能性モノマーが平均14.3のナノゲルはsCDの添加で、その分子量及び慣性半径に大きな変化はあらわれなかったが、具体例では熱変性たんぱく質をナノゲル内部に取り込むことが可能であり、sCDの添加でこのたんぱく質を放出し、正常たんぱく質としての機能を回復させた。分子量とサイズから見積もったナノゲルの密度は、CM6よりもCM14の方が2倍ほど大きくなっており、CM14ナノゲルは内部でMPCポリマー鎖により架橋がなされていることが考えられる。CM14ナノゲルにおいても熱変性タンパク質を内部に取り込み、sCD添加により正常タンパク質を放出した。つまり、このようにして調製されたナノゲルは、疎水性基の会合による物理的架橋と化学架橋の2種類の架橋を有したdual-crosslinking構造を有するナノゲルであると考えられる。
【0008】
具体的な調製方法の2は、全体がゲル化可能な重合反応物濃度、特に重合反応物の比較的濃い条件でマクロゲルを調製する方法である。ナノゲルを準希薄水溶液中(例えば5~50mg/ml)で重合を行うことで、ナノゲルが機能性モノマーのポリマーでつながったネットワーク構造が形成することが予想される。
例えば、重合性多糖類によって調製されたナノゲルを6mg/ml以上の濃度で、重合性基に対して機能性モノマーを6倍モル濃度以上〔例えば、MPC 32mg/ml(メタクロイル基に対してMPC6倍のモル濃度以上)〕の存在下で重合を行うとマクロなゲルが形成した。ナノゲルが架橋剤(nanogel macro cross-linker)として機能している事を示している。機能性モノマー例えばMPCを一定(例えば32mg/ml)として、重合性多糖類によって調製されたナノゲル濃度を増加させるとゲルの膨潤度が低下して堅いゲルが形成した(実施例参照)。ゲル密度の高いナノゲルの架橋ドメインの増加を反映している。このゲルは電子顕微鏡観察からナノゲル構造が機能性モノマー鎖例えばMPC鎖で架橋されたような構造を有していることが分かった。ナノゲル間の平均の距離は、例えばナノゲル:機能性モノマーの配合量が30mg/ml:32mg/mlであるCM30-32(実施例参照)では83nm、同10mg/ml:32mg/mlであるCM10-32(実施例参照)では289nm、同6mg/ml:32mg/mlであるCM6-32(実施例参照)では552nmと計算された。架橋点構造の明確な、ナノゲルドメインを有する新規なゲルが調製できた。このゲルは、ナノゲル内の10nm以下のネットワークとナノゲル間の数100mのネットワークという二つの階層を有するゲルである。また、それぞれの階層の特性を疎水化多糖の構造および重合性モノマーの選択により、独立に自在に制御可能である。
【0009】
具体的な調製方法の3は、基盤物質を使いリポソームを修飾し、その後共重合を行い、マクロゲルを調製する方法である。つまり、親水性多糖類に100単糖あたり1~5個の疎水性基を導入して得られた分子量20,000~200,000の水溶性多糖類に、さらに100単糖あたり4~10個の重合性基を導入し得られた化合物を基盤物質とし、この物質でリポソームの表面を被覆した後に、さらに機能性モノマーと共重合をおこす工程を含むハイブリッドマクロゲルの調製方法である。リポソームは脂質人工膜で構成される粒子でリン脂質、グリセロ糖脂質、コレステロール等から脂質二重層としてつくられる。その調製には、界面活性剤除去法、水和法、超音波法、逆相蒸留法、凍結融解法、エタノール注入法、押し出し法、及び高圧乳化法等広く公知方法が適用される。リポソームの調製の詳細は特開平9-208599号公報及びBiochim. Biophys. Res. Commun., 224, 242-245, 1996に詳しく記載されている。リポソームは、本発明の実施例及び実験例で使用されたが、適宜生体適合性を有するものが選択して使用される。リポソームを基盤物質であるナノゲルで被覆した後に重合を行うことで、リポソーム-ナノゲル複合体を架橋領域とする新しいハイブリイドゲルが調製しえる。例えば120nmのリポソーム(DPPC-cholesterol=7:3mol/mol)(mg/ml)にナノゲル(6~30mg/ml)を添加して多糖被覆リポソームを調製後、機能性モノマー例えばMPCを10~30mg/mL添加して同様に共重合を行うことでリポソームを含むゲルが調製できた。電子顕微鏡観察から、リポソームの表面はナノゲルで覆われて安定化されており、リポソーム構造を保ったままゲル化が進行し、リポソーム-ナノゲル複合体が架橋点となったゲルが形成していることが確認された。本条件下では、リポソーム間の平均距離は600nmであり、先の二つの階層的なネットワークに加えて、リポソーム領域を有する三つの階層を有するゲルの調製に成功した。ナノゲルのリザーバーに加えて、リポソームに種々の薬物やタンパク質を保持させることが可能であり、多次元のリザーバーとして機能しえると考えられ、様々な応用が期待出来る。
【0010】
以上のような基盤物質をもとに調製された3種類のハイブリッドゲルは、これを利用して生理活性物質の以下の少なくとも1の機能的制御方法が可能である。
1〕生理活性物質の生体内運搬、
2〕生理活性物質の保存・安定化、
3〕生理活性物質の精製、
4〕生理活性物質の反応性の抑制。
ハイブリッドゲルへの生理活性物質の取り込みは、リポソームを使う系の場合は、予めリポソーム中に目的生理活性物質を包埋しておくが、それ以外の場合は、天然蛋白質あるいは変性状態の蛋白質とハイブリッドゲルを接触させ行う。例えば、無細胞蛋白質合成系を利用した系においては、mRNAの存在する相にハイブリッドゲルを共存させる。例えば、mRNAの約1~1000μgに対して0.01~1mgのハイブリッドゲルを添加する。但し、この添加量は、蛋白産生量との比率、取込み効率を考慮し、随時変更可能である。細胞蛋白質合成系においては、分泌型であればそのまま或は化学的変性剤との共存下でナハイブリッドゲルと接触させる。また、非分泌型或は細胞内での凝集体化がおこるものであれば、細胞を破壊し、凝集体等を化学的変性剤で可溶化した後、ハイブリッドゲルと接触させる。その使用適量は、対象蛋白質等の量・分子量によって適宜実験的繰り返しにより決定されるが、一般的には、対象蛋白質等の重量:ハイブリッドゲル重量=1:0.1~10の比率で、好適には1:1~5である。
【0011】
本発明の蛋白質合成系とは、広く遺伝子工学技術を応用した蛋白質合成手段及び天然の蛋白質合成手段をも対象とし、合成される蛋白質等が凝集等により変性してしまう、或は細胞内に封入された状態にあるものなど、蛋白質等の変性-リフォールデイングが可能な全てを意味する。
【0012】
本発明の典型的な系は、大腸菌、酵母、枯草菌、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞等の自体公知の宿主を利用し遺伝子組換え技術によって形質転換した系による蛋白質等の合成である。
【0013】
形質転換は、自体公知の手段が広く応用され、例えばレプリコンとして、プラスミド、染色体、ウイルス等を利用して宿主の形質転換が行われる。より好ましい系としては、遺伝子の安定性を考慮するならば、染色体内へのインテグレート法であるが、簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系の利用である。ベクターは、選択した宿主の種類により選別され、発現目的の遺伝子配列と複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列とを構成要素とする。
【0014】
適当な宿主の代表的なものには、細菌細胞、例えば連鎖球菌属(streptococci)、ブドウ球菌属(staphylococci)、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス属菌(Streptomyces)および枯草菌(Bacillussubtilis)細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞およびアスペルギルス属(Aspergillus)細胞;昆虫細胞、例えばドロソフィラS2(DrosophilaS2)およびスポドプテラSf9(SpodopteraSf9)細胞;動物細胞例えばCHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293およびボウズ(Bows)メラノーマ細胞;ならびに植物細胞等がある。
【0015】
ベクターには、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、例えばバキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス等のウイルス由来のベクター、ならびにそれらを組み合わせたベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝学的エレメント由来のベクター、例えばコスミドおよびファージミド等がある。
【0016】
形質転換体は、自体公知の各々の宿主の培養条件に最適な条件を選択して培養される。かくして、培養により目的とする蛋白質等が形質転換体の培養培地中に分泌される場合は、該培地中に本発明のナノ粒子を存在させナノ粒子中に蛋白質等を取込む。蛋白質等が形質転換体の細胞内に生成される場合(分泌されない状態)、細胞内に封入された状態(凝集体化した状態)、或は既にフォールディングされた状態では、まず細胞を溶解し及び/若しくは蛋白質等を化学変性剤で可溶化し、次いで、ハイブリッドゲルと接触させてハイブリッドゲル中に蛋白質等を取込ませた後、これを回収する。
【0017】
以上のようにして、ハイブリッドゲルに取り込まれた蛋白質等は、ハイブリッドゲルを分離し、蛋白質個々の性状におうじた安定化及び生理的条件下で、その使用目的に応じて調製される。つまり包埋された蛋白質等が、ハイブリッドゲルの性状・構造が変化することで、遊離され、リフォールディングにより生理活性を取り戻す。この制御手段は、例えば以下のような蛋白質等の制御に利用される。好適な蛋白質としては、公知のTPA、IFN、CSF(M-、GM-等)、血液凝固因子(例えば、第VIII、IX、XIII因子等)が例示されるが、これに限定されない。
【0018】
1)生理活性物質、蛋白質(ペプチドを含む)の生体内運搬
これは、所謂、ターゲティング治療に関する。目的生理活性物質を、ハイブリッドゲル内に包埋し、経口或は注射によって生体内に生理活性物質等包埋ハイブリッドゲルを投与し、粒子を目標組織、目標細胞、癌細胞等に移動させ、目標部位に到着後、粒子構造を変化させ、包埋生理活性物質等を遊離させ、蛋白質であればリフォールディング後に生物活性を発揮させるというものである。この方法で、生理活性物質或いは活性蛋白質の生体内移動中の失活或は副作用が制御可能である。簡便には、腸内の特別の部位での生理活性物質或いは蛋白質等の活性化のために経口投与し、そしてそれに続く腸内のターゲット部位での活性化を達成する。注射薬としては、ハイブリッドゲルの表面を目標組織・細胞との親和性を考慮した修飾を施し、例えばモノクローナル抗体等、その親和性により目標部位に生理活性物質或いは蛋白質等包埋ハイブリッドゲルを集積させ、その後ハイブリッドゲル構造を変化させ、包埋生理活性物質或いは蛋白質等を遊離させ、蛋白質であればリフォールディング後に、生物活性を発揮させるというものである。この方法で、生理活性物質或いは活性蛋白質の生体内移動中の失活或は副作用が制御可能である。
【0019】
2)生理活性物質、蛋白質(ペプチドを含む)の保存・安定化
安定性に乏しい生理活性物質の安定化、たんぱく質の場合フォールディングされた状態で、安定性に乏しい蛋白質等の安定化のための手段としても好ましい結果を導く。生理活性物質或いは蛋白質等を主成分とする製剤には、医薬品、化粧品、食品等様々のものがある。目的とする生理活性物質或いは蛋白質等が、放置すれば不可逆的に変性・凝集を起こす場合、本ハイブリッドゲルの中に目的蛋白質等を閉じ込め、用事、目的生理活性物質或いは蛋白質等を遊離させ、目的の生理学的機能を発揮させる。
【0020】
3)生理活性物質、蛋白質(ペプチドを含む)の精製
目的の蛋白質等が遺伝子工学的に生産される場合、蛋白質等の合成後、細胞外分泌されずインクリュージョンボディーの状態になる場合に有効である。細胞を溶解し変性剤で目的蛋白質等を変性させ、ハイブリッドゲル中に取込み、回収し、その後、適当な生理的条件下でハイブリッドゲルの構造を変化させ、目的蛋白質等をリフォールディングさせて回収することができる。無細胞タンパク質合成手段或は分泌系の細胞内蛋白質合成手段にあっては、合成系にハイブリッドゲルを共存させ、合成されてくる蛋白質等をハイブリッドゲル内に連続的に取込み、その後、ハイブリッドゲルを分離回収して、適当な生理的条件下でハイブリッドゲルの構造を変化させ、目的蛋白質等をリフォールディングさせて回収することができる。
【0021】
4)生理活性物質の反応性の制御(酵素・基質反応性の制御)
酵素又は基質を、ハイブリッドゲル内に包埋させておけば、酵素反応の制御が要時まで可能である。ハイブリッドゲル内に包埋された酵素又は基質は、不活性状態として、相手側との交差が制御される。例えば、試薬として一体化製剤として製品化した場合に、ハイブリッドゲルが構造を変化させ、包埋目的酵素又は基質を遊離させ、その結果、酵素反応が初めて開始できる系にしておけば、製剤の効率化・簡略化が達成できる。また、酵素の保存安定性の確保のためにハイブリッドゲル内に酵素を包埋しておき、要時目的酵素をハイブリッドゲルから遊離させて反応系におくことも可能である。
【0022】
5)生理活性物質の反応性の制御(抗原・抗体反応の制御)
抗原又は抗体を、ハイブリッドゲル内に包埋しておけば、抗原・抗体反応の制御が可能である。抗原抗体反応を利用した試薬、医薬において、要時目的抗体又は抗原をハイブリッドゲルから遊離させて反応系におくことも可能である。
【実施例】
【0023】
以下本発明を実施例で説明するが、実施例は本発明の一例を示すものであって、その技術的範囲を限定するものではない。
【0024】
実施例1
重合性ナノゲルの合成
【0025】
実験1.1 メタクリロイル化CHP(CHPMA)の合成
CHP(分子量108,000、コレステロール基置換度;1.2個/100単糖)(WO00/12564)(Akiyoshi, K.; Deguchi, S.; Moriguchi, N.; Yamaguchi, S.; Sunamoto, J. Macromolecules 1993, 26, 3062. 2) Kuroda, K.; Fujimoto, K.; Sunamoto, J.; and Akiyoshi, K. Langmuir 2002, 10, 3780)に重合性基としてメタクリロイル基の導入を行った。CHPを30mLのDMSOに溶解後、グリシジルメタクリレート(GMA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)を加え、24時間室温にて撹拌し、反応させた。反応は無水系にて行った。 HCl添加により反応停止後、大過剰の水に対して7日間透析を行い、凍結乾燥することでCHPメタクリレート(CHPMA)を得た。1H-NMRによる構造解析から導入されたメタクリロイル基量を決定した。以下CHPMAの100単糖あたりに導入されたメタクリロイル基をXとしてCHPMAXと呼ぶ。
【表1】
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重合性基を導入したCHPMAはCHPと同様ナノゲルを形成することが確認された。このCHPMAナノゲルを希薄溶液下にて調製し、種々の水溶性モノマー重合を行うことで共重合モノマーの特性と共に、ナノゲルの密度や崩壊性を変化させることが可能となる。高い生体適合性を有する2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)や温度応答性を示すN-イソプロピルアクリルアミドと水溶液中にて、フリーラジカル共重合を行うことでハイブリッド化を試みた。以下MPCとの共重合体の調製、キャラクタリゼーションについて示す。
【0026】
実験1.2 MPC グラフト化CHPMA (CM)の合成
実験1の手法で得られたCHPMAと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とラジカル共重合を行うことで多糖-合成高分子ハイブリッドポリマーを合成した。CHPMA6.2を 200mgを蒸留水に対し1.0mg/mLとなるように溶解し、超音波処理(40W、15分:以後の超音波処理はこの条件下で行った)することでナノゲルを形成させ、0.45μmフィルターにて濾過した後、CHPMA6.2のメタクリロイル基に対してモル比で100倍ないし10倍のMPCを加え、水系の重合開始剤である2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-044)をモノマーに対して0.5mol%の割合で加え50℃にて5hr重合した。反応停止後、水に対してMWCO3,500の透析膜を用いて1週間透析して未反応モノマーを除去した後、凍結乾燥した。これを水に対して再溶解させ、MPCホモポリマー除去の目的でエタノールに対して再沈殿、減圧乾燥することで回収した。1H-NMRの結果から100倍量仕込みの場合、1メタクリロイルあたり14.3個のMPC導入量(CM14、収率23.9%)、10倍量仕込みの場合、1メタクリロイル基あたり6.1個のMPCが導入(CM6、収率58.0%)されていると算出された。これらの結果から分子量はCM14;297,000、CM6;188,000と算出した。
【化1】
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【0027】
実験1.3 CMナノゲルのTEM観察
0.2 mg/mLに調整した各水溶液をフィルター濾過し、うち10μLをとりコロジオン支持膜を張り、親水化処理を行ったグリッド上に滴下、風乾後、2%酢酸ウラニル溶液にて30分ネガティブ染色を行った後、洗浄、カーボン蒸着してTEM観察を行った。その結果、CM6及びCM14共にナノサイズの微粒子が形成されていることが確認された。
【0028】
実験1.4 サイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱(SEC- MALS)測定
それぞれの試料を2mg/mLに調整、超音波処理を行い、0.45μmに続いて0.22μmのフィルターを2度通した後測定を行った。測定はCHP、CHPMA、CM6はTOSOH TSKgel G4000SWXLのカラムにより、CM14はSHODEXSB-806 HQ を用い、NaClの50mM水溶液を溶離液として流速0.5mL/minの条件下で行った。また、この溶離液にCDの10mM加えることでナノゲルの崩壊性について検討を行った。なおサンプルはCD添加後3時間放置してから測定を行った。表2にSEC-MALS 測定結果を示した。
【表2】
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【0029】
実験1.6 人工分子シャペロンの検討
酵素(Carbonic anhydrase II;CAB)溶液(0.015mg/mL)をナノゲル溶液(4.8mg/mL)と混合した後、熱変性させ、この混合溶液に10 mMのsCDを3時間作用させた場合と作用させなかった場合において、p-Nitrophenyl acetateを基質として用い、これから遊離するパラニトロフェノールの濃度増加を400nmの吸光度の時間変化を追跡することで酵素の活性回復率を見積もった。表3に熱変性させたCABの活性回復率を示した。
【表3】
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この結果からCM6、CM14ナノゲル共にsCD添加により人工分子シャペロン活性を示すことが明らかになった。CM14においては非崩壊性ナノゲルであるにもかかわらず、活性を示すことから物理架橋点が存在し、これが動的に変化することがシャペロン活性に必要であることを示している。
【0030】
実施例2
重合性ナノゲルを架橋点としたマクロゲルの調製とキャラクタリゼーション
CHPMAとMPCによるマクロゲルの調製について示す。
【0031】
実験2.1 CHPMA-MPCマクロゲル(CMマクロゲル)の調製
CHPMAおよび2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を所定量(表4参照)加え、水系の重合開始剤である2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](VA-044)をモノマー(系中の全メタクリロイル基)に対して0.5mol%の割合で加え、アルゴン脱気後、50℃、5hrの条件下で重合を行った。反応停止後、水中に1週間膨潤させることでモノマーを除去、凍結乾燥することで試料を得た。なおゲル化の確認はTilt法により行い、各組成におけるゲル化の可否から相関図を作製した。これよりCHPMA濃度が高くなることで粘度が上昇しマクロなゲル化が進行したと考えられる。この粘度上昇はCHPナノゲルが疎水性基を会合点とした物理架橋ゲルを形成しているためであり、CHPMAのコレステロール基が無い構造(つまりプルランメタクリレート:PULMA、メタクリロイル基置換度100単糖当たり5.1個)にてMPCとPULMA-MPC30-32の条件では粘度上昇が見られず、マクロなゲルは調製できない。その一方でCHPMAのみでは50mg/mLの条件においてもマクロなゲル化は確認されない。このためMPCが存在することでスペーサーとして機能し、マクロゲルを調製可能にしていると考えられた。
【0032】
実験2.2 膨潤率測定
得られたCMマクロゲルを凍結乾燥後、また純水に対する平衡膨潤時(24h、室温)においてそれぞれ重量測定を行い下記の式から算出した。
(膨潤率)= (膨潤時重量)/(乾燥時重量)

この結果からマクロゲル中のCHPMA含量が多いほど膨潤率が低く、逆にスペーサーとしての役割を果たすMPC含量が多いほど膨潤率が高いことが明らかとなった。このことはCHPMAナノゲルが架橋点となっていることを示している(表4)。
【表4】
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【0033】
実験2.3 CMマクロゲルのTEM観察
純水にて膨潤させたCMマクロゲルに30%グリセリン溶液となるようにグリセリンを加え、液体窒素下で凍結割断法によりゲル断面を露出させた後、カーボン、白金を蒸着することでシャドーイングしてレプリカを作成し、TEM観察を行った。この結果CMマクロゲル中にCHPMAナノゲルが崩壊せずに形態を保持したまま、分散された構造を有していることが明らかとなり、CM30-32の場合そのナノゲル間距離は86.1nmであった。
【0034】
実験2.4 CMマクロゲル中へのインスリン(Ins)の取り込み
各マクロゲルを10mgとり、PD-10カラム内で0.1M PBSにより室温で24h膨潤させた後、50μg/mLのFITC-Ins/0.1M PBS溶液をカラムに加えることでFITC-InsのCMマクロゲル中への取り込みを行った。各時間における取り込み量をカラム内の溶液を分取し、UV492nmにおける吸光度の減少とFITC-Insから作製した検量線を用いて算出した。この結果、CMマクロゲルの膨潤率が高いほどInsの取り込みが早く、またナノゲル1個あたりに取り込むInsの量も多いことが明らかとなった。また乾燥状態から膨潤させながらのFITC-Insの取り込みを試みたところ、平衡膨潤時からの場合と同様の取り込み挙動および量を示した。
【0035】
実験2.5 CMマクロゲルからのInsの放出
取り込み実験で吸光度が平衡に達したマクロゲルをFITC-Ins/PBS溶液除去後、マクロゲルを含むカラムに0.1M PBS 5mLを加え、カラムを通すことで洗浄した。なおこの操作は2度行った。このマクロゲルから1) 0.1M PBS、2) 10mM sCDを含む0.1M PBS、3) 10 mg/mLのBSAを含む0.1M PBS、4) 10mM sCD 、10 mg/mLのBSAを含む0.1M PBS、5) 10%FBSを含む0.1M PBS、6) 10mM sCD 、10%FBSを含む0.1M PBSに対してのFITC-Insの放出挙動を各時間におけるUV492nmにおける吸光度から算出した。
この結果よりいずれのマクロゲルにおいてもsCDを作用させることでFITC-Insの放出量を大きく増大させた。また添加後30min以内で(480min時点での)全体量の50%以上を放出していることからナノゲルの応答性の早さが現れている。その放出量はマクロゲル内部に取り込んだFITC-Ins量が多いほど増加した。24hr後での放出量(%)はそれぞれCM6-32; 61%、 CM10-32; 53%、 CM30-32;69%、 CM-20-20; 70%であった。またCM20-20においてはさらに5日後に80%以上の放出を確認している。一方でsCD未添加の場合、3時間までの初期放出段階ではゲル型のリリース曲線を、その後リザーバー型の放出を示すことが明らかとなった。これはCMマクロゲル中のMPCマトリックス内、もしくはCHPMAナノゲル表面に存在するInsの放出(~3時間)と、CHPMAナノゲル内に取り込まれたInsの放出であると考えられた。sCD添加により急激な放出が見られたことからもCHPMAナノゲル内部にInsが取り込まれていたことが確認された。またBSA、FBS存在下においても同様の曲線が得られたことから、MPCが存在することでタンパク質の吸着を抑制し、放出を持続させられると考えられた。まとめるとこのCMマクロゲルはsCD応答性でかつタンパク質存在下においても持続放出可能なゲルであるといえる。
また分子量約6,000のInsに対し、約60,000の牛血清アルブミンについてもマクロゲル内に取り込み、sCD添加による放出制御が可能であった。
【0036】
実施例3
リン脂質リポソーム-重合性ナノゲル複合体を架橋点としたマクロゲルの調製とキャラクタリゼーション
実施例2において重合性ナノゲルがその形状、性質を保持したまま架橋点となったマクロゲルが調製できた。リン脂質リポソームを重合性ナノゲルにて被覆することで重合性ナノゲル被覆リポソームを架橋点に有した、つまりリポソームーナノゲルーマトリックスの3層を有したゲルを調製した。これはリポソームのサイズのみならず種類も選択できることから、3層おのおのの部分が独立に選択でき、それぞれの特徴を生かすことが期待できる新規なマテリアルの創製である。以下にCHPMA-MPC-ジパルミトイルホスファチジルコリン/コレステロール(DPPC:cholesterol)リポソームからなるマクロゲルの調製法を示す。
【0037】
実験3.1 マクロゲルの調製
直径120nmに調製したリン脂質リポソーム(DPPC:Cholesterol = 3:1(mol:mol))水溶液2mg/mLにCHPMAナノゲルを3-30 mg/mLの濃度において添加し、リポソームを被覆後、MPC32mg/mLとなるように添加し、VA-044を開始剤として全メタクリロイル基に対して0.5mol%加え、アルゴン脱気後、50℃、5hrの条件下で重合を行った。ゲル化の確認はTilt法により行った。この結果CHPMAナノゲルが10mg/mL以上の条件でゲル化が進行することが確認された。
【0038】
実験3.2 TEM観察
実験2.3と同様の手法にてサンプルを調製し、TEM観察を行った。この結果マクロゲル中にリポソームを単層に被覆したCHPMAナノゲル分散されており、リポソームは構造を保持したまま重合が進行したことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のハイブリッドゲルは、生理活性物質の保存、精製、運搬、DDS等の医療、生命工学領域において極めて大きな利用可能性を達成した。