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明細書 :機能性酵素重合アミロース誘導体合成のための新規プライマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4774506号 (P4774506)
公開番号 特開2005-306748 (P2005-306748A)
登録日 平成23年7月8日(2011.7.8)
発行日 平成23年9月14日(2011.9.14)
公開日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発明の名称または考案の名称 機能性酵素重合アミロース誘導体合成のための新規プライマー
国際特許分類 C07H  15/04        (2006.01)
C08F 220/36        (2006.01)
C12P  19/04        (2006.01)
FI C07H 15/04 F
C08F 220/36
C12P 19/04 Z
請求項の数または発明の数 10
全頁数 14
出願番号 特願2004-123063 (P2004-123063)
出願日 平成16年4月19日(2004.4.19)
審査請求日 平成19年2月15日(2007.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】秋吉 一成
【氏名】森本 展行
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
審査官 【審査官】早川 裕之
参考文献・文献 Biochemical J.,1954年,58,560-569
Makromol. Chem.,1984年,185,1855-1866
日本化学会講演予稿集,1995年,69/2,649,1B312
Anal. Chem.,1996年,68,2798-2804
Mech. Saccharide Polym. Depolym.,1980年,413-420
Carbohydrate Res.,1986年,157,c4-c7
調査した分野 C07H 15/04
C08F 220/36
C12P 19/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
式2で表されるアミロース合成用プライマー;
式2
【化2】
JP0004774506B2_000025t.gif
(式中Rは、炭素数5~30のアルキル基)
【請求項2】
アルキル基がヘキサデシル基、ドデシル基、又はオクチル基である請求項1に記載のアミロース合成用プライマー。
【請求項3】
式3で表されるアミロース合成用プライマー;
式3
【化21】
JP0004774506B2_000026t.gif
(式中C(=O)R2、C(=O)R3は、炭素数10~30の脂肪酸残基)
【請求項4】
C(=O)R2及びC(=O)R3がパルミトイル基である請求項3に記載のアミロース合成用プライマー。
【請求項5】
式4で表される化合物;
式4
【化22】
JP0004774506B2_000027t.gif
(式中Aは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基)
【請求項6】
Aがエチレン基である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
請求項5または6の化合物と、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、N-イソプロピルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、及び2-アミノエチルメタクリレートから選ばれるメタクロイル型モノマーとの共重合体。
【請求項8】
メタクロイル型モノマーが2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)である請求項7に記載の共重合体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の共重合体からなるアミロース合成用プライマー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一に記載のアミロース合成用プライマー、化合物、又は共重合体を用いた機能性酵素重合アミロースの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロース合成用プライマーに関するものである。さらに詳しくは、マルトペンタオースの還元末端を末端アミノ基又はヒドラジド基を有する化合物で修飾してえられるアミロース合成用プライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
多糖には螺旋形成が可能なものがあり、その一つがアミロースである。アミロースはグルコース残基がα-1,4結合で結びついた直鎖状のものである。結晶状態では主にヘリックス構造を有しているA, B, Vなど種々の形態が知られている(非特許文献1、2)。水溶液中においては通常、アミロースは局所的に不規則な螺旋性を持つ可能性があるがほぼランダムコイル状であると言われている(非特許文献3~5)。しかし、アミロースの周りに疎水性分子が存在するとコンフォメーションが大きく変わり、アミロース主鎖はゲストの大きさに応じて6~8グルコース残基で一周の螺旋を巻きその疎水性分子を包接する。
このようにアミロースは高分子ホストとして期待される物質であるが、溶液中では老化と呼ばれる凝集や沈殿しやすい性質があり、これはアミロース分子間での二重螺旋形成によって螺旋表面の親水性領域が減少するためである(非特許文献6)。このときアミロース主鎖も歪みを伴って引き延ばされ、分子全体としてコンパクトな状態となり、螺旋内部に物質を取り込めるような空間がなくなってしまう。また、アミロースの包接複合体も沈殿しやすい性質がある。
ホスホリラーゼ (EC 2. 4. 1. 1) はα-1, 4-グルカン鎖を非還元末端から順次加リン酸分解してa-D-グルコース-1-リン酸 (G-1-P) をつくる酵素であるが(非特許文献7)、反応が可逆的であり、糖鎖中のグリコシド結合と分解生成物中のリン酸エステル結合が同程度のポテンシャルを有しているため、平衡の著しいかたよりはなく、G-1-Pから高分子量のα-1,4-グルカン鎖を合成することも可能である。動物臓器の中でホスホリラーゼの含量が高い筋肉と肝臓の細胞内ではG-1-Pの濃度に比べて無機オルトリン酸 (Pi) の濃度が高いので、この酵素は生理的にはグリコーゲン分解の方向に働いている。
動物ホスホリラーゼは二重の活性調節性(アロステリック調節とリン酸化・脱リン酸化による調節)を持つことで知られるが、ジャガイモやトウモロコシのような高等植物組織から精製されたホスホリラーゼは常に活性型として存在することから酵素合成に適していると言える。
一方、基質グルカンに対する特異性もホスホリラーゼの起源によって大きく異なる。ウサギ筋肉ホスホリラーゼはグリコーゲンやアミロペクチンのような枝分かれを持つα-グルカンを良い基質とするが、直鎖のアミロースにはうまく働かない。それに対してジャガイモのホスホリラーゼはアミロペクチン、アミロースなどをほぼ同程度の良い基質とするが、グリコーゲンに対する親和性は非常に低い。
ジャガイモホスホリラーゼを用いた酵素合成によってアミロースを得る手法は古くから用いられてきた。1954年、Whelanらはこの反応ですべてのプライマーで反応が同じ速度で進行することや、マルトテトラオースより長いプライマーを用いることによって反応が効果的に進行することを明らかにした(非特許文献8)。その後、得られるアミロースの分子量分布が非常に狭いことや、反応条件をうまく合わせることによって重合度を制御できるということも分かった。更にこの反応がアミロースの非還元末端側から合成が進行することから、1987年、Ziegastらはアミロースオリゴマーの還元末端側を修飾したものをプライマーに用いて種々のアミロース誘導体を合成した(非特許文献9)。その後、酵素合成の手法を用いた様々なアミロース誘導体が合成されている(非特許文献10~15)。
本発明者はアミロースの高分子ホストとしての機能を利用することを目的とし、ポリエチレンオキシド (PEO) とアミロースがA-B型に結合したPEO-アミロース の合成に成功した(非特許文献17、18)。PEOは両親媒性の高分子で、水及び種々の有機溶媒に可溶である。このため種々の合成高分子の基盤材料として用いられているほか、タンパク質の機能化にも用いられている。このPEO-アミロースは水溶液中での溶解性が向上し、クロロホルムなどの有機溶媒にも溶解することが明らかとなっている。PEGは両親媒性の高分子で、水および有機溶媒に可溶である。このPEGを有するPEG-アミロースは水溶液中での溶解性が向上し、クロロホルムなどの有機溶媒にも溶解することが明らかとなっている。またクロロホルム中にてアミロースを内核とするミセルを形成し、特異な包接挙動を示すことを明らかにしてきた(非特許文献16、17)。

【非特許文献1】Wu, H.-C. H.; Sarko, A. Carbohydr. Res. 1978, 61, 7-25.
【非特許文献2】Wu, H.-C. H.; Sarko, A. Carbohydr. Res. 1978, 61, 27-40.
【非特許文献3】Kitamura, S.; Yunokawa, H.; Kuge, T. Polym. J. (Tokyo) 1982, 14, 85-91.
【非特許文献4】Kitamura, S.; Yunokawa, H.; Mitsuie, S.; Kuge, T. Polym. J. (Tokyo) 1982, 14, 93-99.
【非特許文献5】Ebert, B.; Elmgren, H. Biopolymers 1984, 23, 2543-2557.
【非特許文献6】Immel, S.; Lichtenthaler, F. W. Starch/Staerke 2000, 52, 1-8.
【非特許文献7】福井俊郎; 中野憲一 化学と生物 1985, 23, 357-365.
【非特許文献8】Whelan, W. J.; Bailey, J. M. Biochem. J. 1954, 58, 560.
【非特許文献9】Ziegast, G.; Pfannemueller, B. Carbohydr. Res. 1987, 160, 185-204.
【非特許文献10】Braumuhl, V. v.; Jonas, G.; Stadler, R. Macromolecules 1995, 28, 17-24.
【非特許文献11】Enomoto, N.; Furukawa, S.; Ogasawara, Y.; Akano, H.; Kawamura, Y.; Yashima, E.; Okamoto, Y. Anal Chem. 1996, 68, 2798-2804.
【非特許文献12】Kobayashi, K.; Kamiya, S. Macromolecules 1996, 29, 8670-8676.
【非特許文献13】Loos, K.; Stadler, R. Macromolecules 1997, 30, 7641-7643.
【非特許文献14】Loos, K.; Braumuhl, V. v.; Stadler, R. Macromol. Rapid Commun 1997, 18, 927-938.
【非特許文献15】Kamiya, S.; Kobayashi, K. Macromol. Chem. Phys 1998, 199, 1589-1596.
【非特許文献16】Akiyoshi, K.; Kohara, M.; Ito, K.; Kitamura, S.; Sunamoto, J. Macromol. Rapid Commun. 1999, 20, 112-115.
【非特許文献17】K. Akiyoshi, N. Maruichi, M. Kohara, Shinichi Kitamura, Biomacromolecules, 3,280-83 (2002).
【非特許文献18】稲田祐二ほか タンパク質ハイブリッド 共立出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新規なアミロース合成用プライマーを提供することを課題とする。特に、マルトペンタオースの還元末端を末端アミノ基又はヒドラジド基を有する化合物で修飾してえられる新規アミロース合成用プライマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、そのラセン形成により疎水性分子を選択的に取り込む高分子ホストとして興味あるアミロースの合成プライマーとして、疎水性長鎖アルキル基やリン脂質にマルトペンタオース基を導入した両親媒性プライマーを合成した。また、両親媒性合成高分子-アミロースハイブリッドを得るための新規重合性プライマーの合成を行った。
つまり本発明は以下よりなる;
1.式2で表されるアミロース合成用プライマー;
式2
【化2】
JP0004774506B2_000002t.gif
(式中Rは、炭素数5~30のアルキル基)
2.アルキル基がヘキサデシル基、ドデシル基、又はオクチル基である前項1に記載のアミロース合成用プライマー。
3.式3で表されるアミロース合成用プライマー;
式3
【化21】
JP0004774506B2_000003t.gif
(式中C(=O)R2、C(=O)R3は、炭素数10~30の脂肪酸残基)
4.C(=O)R2及びC(=O)R3がパルミトイル基である前項3に記載のアミロース合成用プライマー。
5.式4で表される化合物;
式4
【化22】
JP0004774506B2_000004t.gif
(式中Aは炭素数1~10の脂肪族炭化水素基)
6.Aがエチレン基である前項5に記載の化合物。
7.前項5または6の化合物と、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、N-イソプロピルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、及び2-アミノエチルメタクリレートから選ばれるメタクロイル型モノマーとの共重合体。
8.メタクロイル型モノマーが2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)である前項7に記載の共重合体。
9.前項7または8に記載の共重合体からなるアミロース合成用プライマー。
10.前項1~9のいずれか一に記載のアミロース合成用プライマー、化合物、又は共重合体を用いた機能性酵素重合アミロースの製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明のプライマーは新規であり、アミロース合成用プライマーとして調製されるアミロースにあらたな有用性をもたらす技術的拡張を可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一は、式1のマルトペンタオースの還元末端を末端アミノ基又はヒドラジド基を有する化合物で修飾してえられるアミロース合成用プライマーである。
式1
【化1】
JP0004774506B2_000005t.gif
このような還元末端修飾プライマーの合成は、例えば、一段階にて反応可能な還元アミノ化法、又はマルトペンタオースの還元末端をラクトン化してから反応させる方法を選択し利用できる。その反応式は、例えば、以下のようである。
還元アミノ化法:
【化3】
JP0004774506B2_000006t.gif
ラクトン化法:
【化4】
JP0004774506B2_000007t.gif

【0007】
ここでR-NH2の好適な例としては以下が例示される。
リン脂質の好適な例としては、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンが例示される。
【化5】
JP0004774506B2_000008t.gif
しかし、リン脂質は、これに限らず、広くグリセロリン脂質タイプ或いはスフィンゴリン脂質タイプのものが利用できる。親水基部分はエタノールアミンが好適であるが、これ以外にもマルトペンタオースの還元末端との反応性が確保できる限りは特に限定されない。脂肪酸残基は炭素数10~30が一般的に使用でき、目的によって調整される。好適な炭素数は、12~20である。
【0008】
メタクロイル型化合物の一般的な例としては、2-アミノエチルメタクリレートが好適に例示される。
【化6】
JP0004774506B2_000009t.gif
メタクロイル型化合物は、メタクロイル基(CH2=C(CH3)C(=O)O-)を有する限りは特に限定されないが、少なくともマルトペンタオースの還元末端との反応性が確保できるアミノ基末端をもつことが必要である。カルボキシル基末端のO-と結合する脂肪族炭化水素基は側鎖を有していてもよく、炭素数は1~10、好ましくは1~5である。
【0009】
チオール反応性化合物はタンパク質アミロースハイブリッド体合成に有用であり、以下の化合物が例示される。
N-(κ-マレイミドウンデカノイック酸)ヒドラジド
【化7】
JP0004774506B2_000010t.gif
N-(ε-マレイミドカプロイック酸)ヒドラジド
【化8】
JP0004774506B2_000011t.gif
4-(N-マレイミドフェニル)ブチリック酸ヒドラジド
【化9】
JP0004774506B2_000012t.gif
4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン 1-カルボキシルヒドラジド
【化10】
JP0004774506B2_000013t.gif
3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド
【化11】
JP0004774506B2_000014t.gif
これらは、酸ヒドラジドとして、ヒドラジン類のアミノ基とカルボン酸のカルボキシル基との間の脱水縮合生成物でRCONHNH2であらわされ、Rは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいはチオ基を含んでいてもよく、少なくともその末端基は複素環基特に窒素原子による複素環基であることが好適である。複素環は、5員環又は6員環が好適であり、その一部がオクソ基で置換されていてもよい。
【0010】
塩基性高分子は核酸とのハイブリッド体合成用に有用であり、以下が例示される。
ポリアルギニン
【化12】
JP0004774506B2_000015t.gif

ポリリジン
【化13】
JP0004774506B2_000016t.gif
塩基性高分子とは、ジアミノモノカルボン酸(塩基性アミノ酸)のポリマーをいい、分子量は1,000~300,000である。
【0011】
インターカレータ型化合物は、核酸とのハイブリッド体合成用に有用であり、6-クロロ-2-メトキシ-9-アクリジニル (N, N-ビス(アミノプロピル)メチルアミンが例示される。
【化14】
JP0004774506B2_000017t.gif
インターカレータ型化合物とは、インターカレーションを起こす物質の意味でインターカレーテイング剤ともいい、臭化エチジウム、アクチノマイシンD、アクリジン色素等であって、少なくともマルトペンタオースの還元末端との反応性が確保できる末端基(アミノ基等)をもつことが必要である。
【0012】
疎水性長鎖アルキルアミンとしては以下が例示される。
ヘキサデシルアミン
【化15】
JP0004774506B2_000018t.gif

ドデシルアミン
【化16】
JP0004774506B2_000019t.gif
オクチルアミン
【化17】
JP0004774506B2_000020t.gif
1,6-ヘキサンジアミン
【化18】
JP0004774506B2_000021t.gif

疎水性長鎖アルキルアミンとは、少なくとも末端基の一にアミノ基を持ち、側鎖を有していてもよく、炭素数5~30、好ましくは5~20の長鎖アルキル鎖からなる。
【0013】
本発明では、マルトペンタオースに重合性基としてメタクロイル基を導入した重合性プライマーが好適な一つである。この重合性プライマーと機能性モノマーとしてメタクロイル型モノマーを共重合させたものは、好適なアミロースプライマーとしての利用可能性を広げるものである。この機能性モノマーとしては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、N-イソプロピルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、アクリアミド、2-アミノエチルメタクリレート等が好適に例示される。例えば、水溶性のMPCとの共重合で、少量(0.5~5mol%)のマルトペンタオースプライマー部位を有するMPCポリマーが得られる。このポリマーに対して酵素重合を行うことでアミロース-MPCハイブリッドポリマーが得られた。このアミロース誘導体は、ドラッグデリバリーシステムにおける新規リザーバーシステムなどバイオマテリアルとして利用しえる。
【0014】
本発明では、両親媒性プライマーが好適な一つである。この両親媒性プライマーは、マルトペンタオースにリン脂質或は疎水性長鎖アルキル基の導入により達成できる。この両親媒性プライマーは、水中でミセルやリポソームなどの分子集合体を形成し、酵素重合により調製されるアミロースの会合状態の制御が可能であることを見出した。酵素反応の条件を変えることで、重合と解重合(加水分解)が制御しえ、その結果ミセルの形成、崩壊や二分子膜の形態制御が可能となる極めて実用性の高いものである。
【0015】
以上のように調製されたプライマーは、従前の方法に準じて酵素重合を行うことで全く新規な性質を確保したアミロースの調製を可能とする。
【実施例】
【0016】
以下で本発明の内容を実施例をもって説明するが、これらは代表的な一例を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0017】
実施例1
メタクリロイル化マルトペンタオースの合成
マルトペンタオース (124.2mg,0.15mmol)、アミノエチルメタクリレート(249.9mg、1.5mmol)を含む50mM リン酸バッファー (pH6.2、2.5mL)溶液にシアノトリヒドロほう酸ナトリウム(94.2mg、1.5mmol)/50mM リン酸バッファー 0.5mL溶液を滴下し室温で14日間攪拌下にて反応した。反応液をそのままLH-20カラム(展開溶媒:H2O)を用いて精製し、凍結乾燥後、メタクリロイル化プライマー 125mg (収率83.8%)を白色の紛末として得た。構造解析は1H-NMR、MSより行った。
【化19】
JP0004774506B2_000022t.gif
D2O中での1H-NMRより、δ値として、6.12、5.69および1.85ppmにメタクリロイル基中の2重結合およびα-メチル由来の一重線ピークが、また5.31と5.05ppmにマルトペンタオースの1位由来の2本の二重線ピーク、さらに4.42ppmにメタクリロイル基のメチレン鎖由来の、4.11ppmにマルトペンタオースの還元末端側のグルコースの2位由来の三重線ピークがそれぞれ確認された。またMS(-)よりm/z=942.1(water/methanol=1/1)にピークを確認し、予想分子量 (Mw=942.3)と近似した値の物質が確認された。
【0018】
実施例2
リン脂質化マルトペンタオースの合成
マルトペンタオース (100mg,0.12mmol)を含む水溶液0.5mLにジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(41.5mg、0.06mmol)を含むクロロホルム/メタノール=1/1溶液9.5mLを加え60℃で1時間沸点還流後、シアノトリヒドロほう酸ナトリウム(37.7mg、0.6mmol)を含むメタノール溶液1.0mLを滴下し、そのまま60℃で72時間反応させた。反応溶媒をすべてエバポレーターにて留去後、ジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解させ、LH-20カラム(展開溶媒:DMSO)を用いて精製、減圧蒸留にて濃縮後水に対して透析し、凍結乾燥することで、リン脂質化プライマー 32.3mg (収率35.6%)を白色の紛末として得た。構造解析は1H-NMR、MSより行った。
【化20】
JP0004774506B2_000023t.gif
DMSO-d6中での1H-NMRより、δ値として、0.7-0.8と1.0-1.2および1.3-1.5ppmにホスファチジルエタノールアミンのアルキル鎖由来のピークが、また4.83および4.98ppmにマルトペンタオース中のグルコース残基1位由来のピークがそれぞれ確認された。またMS(-)よりm/z=1502.5(water/methanol=1/1)にピークを確認し、予想分子量 (Mw=1503.7)と近似した値の物質が確認された。
【0019】
実施例3
アルキル化マルトペンタオースの合成
a)ラクトン化マルトペンタオースの合成
マルトペンタオースを水に溶解し、ヨウ素を溶解したメタノールを加えた。撹拌しながら4%水酸化カリウム/メタノール溶液をゆっくり滴下し、40℃で1時間撹拌した。その後反応液を氷冷することで生じた沈澱を回収し、これを水に溶解しメタノールを貧溶媒として再沈殿を行った。得られた固体を水に溶解しイオン交換(アンバーライトIR-120B)を行い、凍結乾燥により白色粉末を得た(収率59.0%)。FT-IRによる構造解析から、新たにC=Oケトン(1735cm-1)の吸収が確認された。

b) ラクトン化マルトペンタオースとドデシルアミン(DA)の反応
マルトペンタオースラクトン (1.0g, 1.2mmol)/エチレングリコール (11mL)溶液にドデシルアミン (1.1g, 6.0mmol)/エチレングリコール (7mL)溶液を滴下し70℃で6時間攪拌した。反応液をアセトンに滴下、析出した固体を遠心分離により回収し減圧乾燥した。得られた固体をメタノール中に溶解して、LH-20カラム(展開溶媒:メタノール)を用いて精製しDA-プライマー 0.48g (0.47mmol,収率39%)を得た。構造解析は1H-NMR、FT-IR、MSより行った。1H-NMRスペクトル(溶媒:D2O)から0.78ppm、1.19ppm、1.44ppmに見られるドデシルアミンのアルキル鎖由来のピークが、5.31と5.05ppmにマルトペンタオース中のグルコース残基1位由来の2本の二重線ピークが確認された。またFT-IRスペクトルより新たにRCONHR' の-NH変角振動(1551cm-1)、C=O伸縮振動(1646cm-1)に基づくピークが確認された。またMS(-)よりm/z=1012.0にピークが確認され、予想分子量 (Mw=1012.1)と近似した値の物質が確認された。
【0020】
実施例4
DA-プライマーを用いた筋肉ホスホリラーゼ(ホスホリラーゼb)による酵素重合
DA-プライマー(15mg, 1.0mM)、G-1-P(454mg, 100mM)、AMP(52mg, 10mM) 、筋肉ホスホリラーゼ (0.26μM)をpH6.2の100mM Bis-Tris buffer(15mL)に溶解し、30℃にて、重合を開始した。15分毎に500μLを分取し、100℃に加熱して反応を止めた。またマルトペンタオース(12mg, 1.0mM)を用いて、同様の操作により酵素重合を行った。その後、分取した反応溶液を用いて以下の方法で遊離リン酸の定量を行い、重合度を求めた(図1)。またDA-プライマーを用いて酵素重合を行ったときの、120分後の沈殿物(DA-アミロース-DP-18)をDMSO-d6に再溶解して、1H-NMR測定を行った(図2)。 DA-アミロース-DP-18の1H-NMRスペクトルのピークデータを表1に示した。
【表1】
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【0021】
遊離リン酸の定量(Fiske-Subbarow法)
反応溶液(20.0μL)を試験管に取り、これに0.250N酢酸緩衝液(5.48mL)を加えた。5w/v%モリブデン酸アンモニウム水溶液と1w/v%アスコルビン酸水溶液をそれぞれ0.250mLずつ加えてよく撹拌し、100℃の湯バスに5分間浸漬した後、2分間氷冷して反応を止め、1分間常温で放置後の716nmの吸光度をUV-VIS分光光度計を用いて測定した。リン酸の濃度は既知濃度のリン酸水素二ナトリウムを含む溶液を標準として検量線を作成し、これから求めた。
【0022】
この結果、還元末端を修飾したDA-プライマーで酵素重合は進行し、疎水化アミロースが合成できた。重合度は反応時間によりコントロール可能であった。また、未修飾のマルトペンタオースと比べて、DA-プライマーの重合速度の方が約4倍速く進行することが分かった。これはDA-プライマーがミセルを形成することで、酵素との衝突頻度が増加したためであると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
1)両親媒性プライマーの酵素反応と共役した会合構造制御
両親媒性プライマーは、水中でミセルやリポソームなどの分子集合体を形成し、酵素重合によりその会合状態の制御が可能であることを見出した。酵素反応の条件を変えることで、重合と解重合(加水分解)が制御しえ、その結果ミセルの形成、崩壊や二分子膜の形態制御が可能となる。
2)人工分子シャペロン機能
アルキル基置換プライマーでの酵素反応と共役したミセル崩壊を利用して人工分子シャペロン機能が発現することを確認した。具体的なヒートショックプロテイン機能の例としては、酵素重合前のアルキル基置換プライマーミセル存在下に、加熱により酵素の熱変性を行わせるとミセルが変性酵素と複合体を形成して凝集を抑制する。その後、室温に戻したのち、ホスホリラーゼを添加して重合するとミセルが崩壊して変性酵素がミセルから解離してそれとともに酵素活性が回復した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】DA-プライマーを用いた筋肉ホスホリラーゼ(ホスホリラーゼb)による酵素重合の時間変化を示す。
【図2】DA-アミロース-DP-18をDMSO-d6に再溶解して得た1H-NMRスペクトルを示す。
図面
【図1】
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【図2】
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