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明細書 :根管に充填された光硬化型レジンへの光供給装置及び根管に充填された光硬化型レジンの硬化装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4344824号 (P4344824)
公開番号 特開2006-055451 (P2006-055451A)
登録日 平成21年7月24日(2009.7.24)
発行日 平成21年10月14日(2009.10.14)
公開日 平成18年3月2日(2006.3.2)
発明の名称または考案の名称 根管に充填された光硬化型レジンへの光供給装置及び根管に充填された光硬化型レジンの硬化装置
国際特許分類 A61C   5/02        (2006.01)
A61C  13/15        (2006.01)
FI A61C 5/02
A61C 13/14 B
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2004-241657 (P2004-241657)
出願日 平成16年8月20日(2004.8.20)
審査請求日 平成19年6月21日(2007.6.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】渡邉 昭彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100103137、【弁理士】、【氏名又は名称】稲葉 滋
審査官 【審査官】芦原 康裕
参考文献・文献 国際公開第00/074587(WO,A1)
特開平05-095961(JP,A)
特開2005-160865(JP,A)
特表2002-541907(JP,A)
特開2003-310641(JP,A)
特表平8-507224(JP,A)
調査した分野 A61C 5/02
A61C 13/15
特許請求の範囲 【請求項1】
側壁に複数の孔を備えた金属製チューブと、
光ファイバと、
光源とを有し、
該光ファイバの基端側は該光源に接続されており、該光ファイバの先端部位は該金属製チューブ内に挿入されていると共に、該光ファイバの先端部位は、その側壁から光が照射可能に形成されており、
根管に充填された光硬化型レジンに該金属製チューブの側壁を接触させ、該孔から光を該レジンに照射するように構成されており、該金属製チューブは、支台築造用ポストとして機能することを特徴とする根管に充填された光硬化型レジンへの光供給装置。
【請求項2】
該光硬化型レジンへの光照射後に、該光ファイバの先端部位を切断して該金属製チューブ内に残留させることを特徴とする請求項に記載の光硬化型レジンへの光供給装置。
【請求項3】
該金属製チューブは両端に開口を有し、一側の開口から光ファイバの先端部位を金属製チューブの中空部に挿入させてあり、光ファイバの先端から供給される光を、該金属製チューブの他側の開口から該レジンに照射するように構成されている請求項1、2いずれか1項に記載の光硬化型レジンへの光供給装置。
【請求項4】
側壁に複数の孔を備えた金属製チューブと、
光ファイバと、
光源とを有し、
該光ファイバの基端側は該光源に接続されており、該光ファイバの先端部位は該金属製チューブ内に挿入されていると共に、該光ファイバの先端部位は、その側壁から光が照射可能に形成されており、
根管に充填された光硬化型レジンに該チューブの側壁を接触させ、該孔から光を該光硬化型レジンに照射することで該光硬化型レジンを硬化させるように構成されており、該金属製チューブは、該光硬化型レジンの硬化後は、支台築造用ポストとして機能することを特徴とする根管に充填された光硬化型レジンの硬化装置。
【請求項5】
該光硬化型レジンの硬化後に、該光ファイバの先端部位を切断して該ポスト内に残留させることを特徴とする請求項に記載の光硬化型レジンの硬化装置。
【請求項6】
該金属製チューブは両端に開口を有し、一側の開口から光ファイバの先端部位を金属製チューブの中空部に挿入させてあり、光ファイバの先端から供給される光を、該金属製チューブの他側の開口から該レジンに照射するように構成されている請求項4、5いずれか1項に記載の光硬化型レジンの硬化装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は支台築造に係り、詳しくは、支台築造用ポスト、根管に充填された光硬化型レジンへの光照射装置及び方法、根管に充填された光硬化型レジンの硬化装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
根管治療後の支台築造に用いられるポストの多くは歯根管の拡大後いろいろな手法を用いて埴立している。図1において、P1は鋳造ポストであり、P2は金属製既製ポストである。金属ポスト材料では歯質とが接着していないため、根管部の拡大や周囲組織を切削しネジで固定することが多い。
【0003】
ここで、弾性係数の大きな鋳造支台築造体や金属製既製ポストでは咬合の応力を分散させても築造体の根面部とポスト先端に発生する大きな内部応力をコントロールできず、応力集中による歯根破折が起こる可能性がある。そのため、象牙質と弾性係数の近い光硬化型レジンによるレジンコアP3を用いた支台築造法が広く用いられている。また、歯根破折の防止のみならず、可及的歯質の保存、あるいは審美的な歯冠補綴の観点からもレジンによる支台築造法が広く推奨されている。
【0004】
しかし、直接法(直接支台築造法)に用いられるDual cure typeのレジンでは歯質との接着が確実に行われない場合や、特に残存歯質が極端に少なく、ポスト部に維持を求める必要がある症例では、重合収縮により充填されたコンポジットレジンの辺縁の封鎖性に劣るためポストの脱落が生じやすい。また、歯根の開口部が狭くコンポジットレジンを根管の深部にまで填入する症例では根管の深部まで照射光が及ばないためコンポジットレジンの重合硬化が十分に行われず、コンポジットレジンと歯質との接着が不十分となる惧れがある。
【0005】
特許文献1には、歯科治療における光硬化性レジンの窩洞への接着性を高める光照射補助チップが記載されている。光照射補助チップは、非粘着性の部材から形成されていると共に、歯牙の窩洞に沿った形状に作られ、接着剤塗布重合硬化後の窩洞内に充填された光硬化性レジン内に挿入され、光重合の後抜かれるように構成されている。光照射補助チップを抜いた光硬化性レジン穴には既製ポストが挿入されるか、あるいは、再度光硬化性レジンを充填させて光重合させるものである。このものでは、光照射補助チップはレジンの重合硬化後に取り除かれるものであるため、光照射補助チップがポストの機械的強度に寄与するものではない。また、光照射補助チップを非粘着性部材から形成する必要があると共に、光照射補助チップを取り除くという一工程が余分に発生する。
【0006】
特許文献2には、根管に挿入された光透過性の樹脂製合釘によって光硬化性の複合材料を硬化させることが記載されている。しかしながら、樹脂製合釘は、可撓性を有すると共に、周囲の複合充填材料よりも硬度が小さいものであり、樹脂製合釘がポストの機械的強度に寄与するものではない。したがって、ポストに機械的強度が要求される場合には、樹脂製合釘は予め抜き取られることを前提として根管に挿入され、複合材料を硬化させた後に樹脂製合釘を抜き取って、構造強度の大きい合釘を挿入して固定するようにしている。この場合、樹脂製合釘を構造強度の大きい合釘に交換するという工程が余分に発生する。

【特許文献1】特開2003-310641
【特許文献2】特表平8-507224
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光硬化型レジンの重合収縮に基づく不具合や機械的強度の不足を解消すると共に、根管に充填された光硬化型レジンに内部から光を照射することで該光硬化型レジンを重合硬化させ、光硬化型レジンと歯質との接着を確実に行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するべく本発明が採用した技術手段は、側壁に複数の孔を備えた金属製チューブからなる光照射部兼用の支台築造用ポストである。一つの態様では、該部材は円筒状部材であり、該複数の孔は該円筒状部材の周面に形成されている。金属製チューブは細長状の長手部材であり、その中空部に光ファイバの先端部位(側壁から光が照射可能なように構成されたもの)を受け入れ可能に構成されており、光照射体から照射される光を側壁に形成された複数の孔から照射させることで光照射部として働く。金属性チューブは、その中空部に光ファイバの先端部位を挿入させた状態で、根管に充填された光硬化型レジンに対して挿入することで支台築造用ポストを構成する。光硬化型レジンの重合硬化後は、光ファイバの先端部位は、金属チューブ内に残存してポストの一部を構成する。本明細書において、「光ファイバの先端部位」とは、基端側が光源に接続された光ファイバの先端側の部位を意味し、「光ファイバの先端部位」は光ファイバと一体の同一部材であるか、あるいは光ファイバと別部材であるかを問わない。一つの好ましい態様では、光ファイバの先端部位は光ファイバと一体であり、光ファイバの先端部位の外周面を研削加工することで先端部位の側壁から光照射が可能とする。他の態様では、透光性部材から構成された短尺(光ファイバに比べて)かつ細長状の光照射体を用意し、該光照射体と光ファイバの先端側とを接続することで該光照射体が「光ファイバの先端部位」を構成するようにしてもよい。後者の場合、予め中空部に透光性部材が充填された金属製チューブを用意し、金属製チューブに充填された透光性部材に光ファイバを接続してもよい。
【0009】
本発明が採用した他の技術手段は、根管に充填された光硬化型レジンへの光供給装置及び方法である。光硬化型レジンへの光供給装置は、側壁に複数の孔を備えた金属製チューブと、光ファイバと、光源とを有し、該光ファイバの基端側は該光源に接続されており、該光ファイバの先端部位は該金属製チューブ内に挿入されていると共に、該光ファイバの先端部位は、その側壁から光が照射可能に形成されており、根管に充填された光硬化型レジンに該金属製チューブの側壁を接触させ、該孔から光を該レジンに照射するように構成されている。光硬化型レジンへの光供給方法は、側壁に複数の孔を備えた金属製チューブを用意し、該チューブ内には光ファイバの先端部位が挿入されていると共に、該光ファイバの先端部位は、その側壁から光が照射可能に形成されており、該チューブを根管に充填された光硬化型レジンに挿入して該チューブの側壁を該光硬化型レジンに接触させ、該光ファイバに光を供給することで、該孔から光を該光硬化型レジンに照射するものである。
【0010】
本発明が採用した他の技術手段は、根管に充填された光硬化型レジンの硬化装置及び方法である。光硬化型レジンの硬化装置は、側壁に複数の孔を備えた金属製チューブと、光ファイバと、光源とを有し、該光ファイバの基端側は該光源に接続されており、該光ファイバの先端部位は該金属製チューブ内に挿入されていると共に、該光ファイバの先端部位は、その側壁から光が照射可能に形成されており、根管に充填された光硬化型レジンに該チューブの側壁を接触させ、該孔から光を該光硬化型レジンに照射することで該光硬化型レジンを硬化させるように構成されている。光硬化型レジンの硬化方法は、側壁に複数の孔を備えた金属製チューブを用意し、該チューブ内には光ファイバの先端部位が挿入されていると共に、該光ファイバの先端部位は、その側壁から光が照射可能に形成されており、該チューブを根管に充填された光硬化型レジンに挿入して該チューブの側壁を該光硬化型レジンに接触させ、該光ファイバに光を供給することで、該孔から光を該光硬化型レジンに照射することで該光硬化型レジンを硬化させるものである。
【0011】
本発明が採用したさらに他の技術手段は、側壁に複数の孔を備えた金属製チューブを用いた支台築造方法である。支台築造方法は、根管の壁面にボンディング材を塗布して接着層を形成するステップと、根管に光硬化型レジンを充填するステップと、根管に充填された該光硬化型レジンに該チューブを挿入してチューブ側壁と該光硬化型レジンとを接触させ、該孔から光を該光硬化型レジンに照射することで該光硬化型レジンを重合硬化させるステップと、を有する。接着層を形成するボンディング材は好ましくは光硬化型ボンディング材であるが、本発明に採用されるボンディング材は光硬化型ボンディング材に限定されない。
【0012】
好ましい態様では、該金属製チューブは両端に開口を有し、一側の開口から光ファイバの先端部位を金属製チューブの中空部に挿入させてあり、光ファイバの先端から供給される光を、該金属製チューブの他側の開口から該レジンに照射するように構成されている。本発明において、該金属製チューブは、支台築造用ポストとして機能する。この場合、該レジンへの光照射後に、該光ファイバの先端部位を切断して該ポスト内に残留させることができる。
【発明の効果】
【0013】
側壁に複数の孔を備えた金属製チューブを用意し、該チューブ内に光ファイバを挿入させたものを、根管に充填された光硬化型レジンに差し込んで、光ファイバから側壁の孔を介して光硬化型レジンに光を供給するように構成したので、根管の深部においても、根管の拡大をすることなく光を照射することができ、良好にレジンを硬化させることができ、レジンコアと根管、レジンコアと金属製チューブとを確実に接着させることができる。また、金属性チューブの側壁に形成した孔は光を照射する役割のみならず、隣接するレジンコアとの間のアンカリングとしての役割をも有する。
【0014】
本発明は、レジンコアの欠点とも言える重合収縮によるレジンコア周辺の漏洩や機械的強度の不足も補うことができる。充填するレジンコアの総量が多ければ、その分だけ重合後の樹脂収縮量が多くなり、レジンコア周辺に隙間が生じ易い。本発明では、根管内の空間の一部を光ファイバが挿入された金属製チューブが占めることで根管に充填するレジンコア量を減らすことができるため相対的に収縮を抑えることができる。また、レジンコアは繰り返し曲げ強さに劣るが、本発明では、ポストとして機能する金属製チューブ(ある程度の可撓性を持ち、かつ、曲げ応力に対して耐性がある)によって機械的弱点が補完される。さらに、ポストを構成する金属製チューブの周囲をレジンで覆うことにより象牙質に近いみかけの弾性率を持つ構造体とすることができるため、歯根破折などのリスクも軽減できる。
【0015】
本発明に係る金属チューブは、光照射機能とポスト補強機能の両方を兼ね揃えているので、別々の光照射部材とポスト補強部材を用意する必要がなく、より少ない工程で支台築造を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2は、ステンレス製チューブ1と光ファイバ3を示す図であり、光ファイバ3の先端部位はチューブ1内に挿入される。ステンレス製チューブ1は、長さ方向両端に開口を有し、側壁すなわち周壁に多数の孔2を備えた細長円筒状部材である。図3に示すように、ステンレス製チューブ1の中空部には、チューブ1の一端側の開口から光ファイバ3の先端部位が挿入される。光ファイバ3の先端部位は、その外周面に研削加工を施すことで、光ファイバ3のコア30の一部分あるいは全部を露出させ、光ファイバ3のコア30を伝搬する光が光ファイバ3のクラッド31から積極的に漏洩するように構成されている。光ファイバ3の基端部位は光源32に光学的に接続されており、光源32から光を入射することで、光ファイバ3の先端部位の周面および先端部から光が照射されるようになっている。
【0017】
光ファイバの先端部位をチューブ1の中空部に挿入した状態で、光源32から光ファイバ3に光を供給すると、光ファイバ3の先端部位の周面から照射される光は、チューブ1の側壁に穿設された複数の孔2からチューブ1の周壁の外部に照射される。また、光ファイバ3の先端部から放射される光は、チューブ1の他端(図3における下端)の開口から外部に放射される。
【0018】
図では、チューブ1の側壁に形成された孔として真円状の孔を示したが、孔2の形状は真円には限定されず、例えば、長孔やスリットでもよい。長孔やスリットの配設態様についても特には限定されず、長孔やスリットの延びる方向は、チューブ1の長さ方向、チューブ1の長さ方向に直交する方向、チューブ1の長さ方向に傾斜する方向、のいずれであってもよい。また、複数の孔を異なる配設態様の孔の組み合わせから構成してもよい。
【0019】
ポストを構成する金属製チューブ1として、ステンレス製のチューブ1を例示したが、金属製チューブ1の材質はステンレスに限定されるものではなく、その他の金属材料(チタン、ニッケルチタン合金、金合金、金銀パラジウム合金、銀合金、コバルトクロム合金が例示される)から構成され得る。図では、金属製チューブとして、円筒状のチューブを示したが、チューブは円筒状のものに限定されず、例えば、角筒状のチューブであってもよい。
【0020】
図4は、本発明に係る支台築造を示す図である。光ファイバ3を挿入した状態のチューブ1がポストとして根管4に挿入されている。根管4の内周面にはボンディング材を塗布することで接着層5が形成されており、接着層5とポストを構成するチューブ1との間の空間には光硬化型レジン7が充填されており、チューブ1はレジン7に挿入されている。光硬化型レジン7は、チューブ1の壁面に接触すると共に、その流動性によって、チューブ1の壁面に形成した複数の孔2内やチューブ1の内周面と光ファイバ3の先端部位との間の隙間(存在する場合には)に入り込む。図中、符号6は封止部である。この状態で、光源32から光ファイバ3に光を供給すると、供給された光は、チューブ1の中空部に挿入されている光ファイバ3の先端部位の周面より、チューブ1の周壁に穿設されている多数の孔2を介して、チューブ1の外周側に位置する光硬化型レジン7へ放射されると共に、光ファイバ3の先端からチューブ1の下端側の開口を介して、チューブ1の下端に位置する光硬化型レジン7へ放射され、光が放射された光硬化型レジン7が重合硬化する。根管内のレジン7を硬化させた後、光ファイバの先端部位を切断して、ポスト内に残留させることができる。また、接着層5を形成するボンディング材は光硬化型ボンディング材であり、光ファイバ3の先端部位からチューブ1を介して照射される光によって接着層5が重合硬化し、接着層5と光硬化型レジン7、接着層5と根管4の周面との接着が行われる。光硬化型ボンディング材からなる接着層について説明したが、光硬化型ボンディング材以外のボンディング材から接着層を形成してもよい。
【0021】
ここで、本発明に採用される好ましい光源について説明する。歯質接着性を有する光硬化型レジンの硬化には多くの場合数種の多官能性メタクリレートが用いられその硬化剤にはカンファーキノンが用いられている。カンファーキノンの励起波長は470nm近傍であるため、硬化のための光源として、フィルタにより400nmから500nm近傍に波長変換したハロゲン光やキセノン光が用いられている。しかし、これらの光源は発熱を伴うこと、小口径のビームに変換しにくいことなどがあげられる。発明者らは光源として473nmの波長を有するNd:YAG青色レーザを採用した。本発明に採用され得る光源は青色レーザ光に限定されるものではなく、光照射によって光硬化型レジンを硬化させることができるもの(例えばカンファーキノンを用いる場合には、カンファーキノンを励起させる波長を有するもの)であれば他の光源から供給される光(例えば、ハロゲン光、LED)でもよい。
【0022】
歯質に対し安定して強固に接着させるためには、脱灰処理を行った象牙質にモノマーが十分拡散し、そこで重合硬化して樹脂含量の多い樹脂含浸象牙質層が生成されることが望ましい。歯質へ補綴物を強固に接着させるためには歯質をあらかじめ酸などの脱灰剤またはEDTAを用いて脱灰処理し研削で生じたスミヤー層を除去し接着性レジンを塗布し硬化させる方法により、歯質と補綴物の界面に樹脂が含浸した層を形成させることが必要である。本発明に係る実験例ではあらかじめ組成の決まった光硬化型コンポジットレジンを調製し新しい支台築造システムの評価を行った。
【実験例】
【0023】
[照射光源の選定]
光硬化型レジンの光源には高輝度のハロゲン光やキセノン光をフィルタによりCQの励起波長近傍の光に変換して用いることが多い。しかし、これらの光源は発熱を伴い、ビーム口径を絞りにくく、光の透過性が劣る。築造窩洞やポスト窩洞の深部まで光が届きにくい等の欠点があり臨床で安全に使用しにくい。これを解決するため、光源として473nmの単一な波長域をもつNd:YAG青色レーザを用い、光ファイバにより青色レーザ光を歯根管の深部まで照射する方法を考案した。光ファイバは三菱レイヨン製エスカ(直径0.75、1.0mm)を用いた。また、光ファイバの先端部位の周面を研削加工して、先端部位の側壁から光を漏洩させることで、先端部位側壁から光照射を可能とした。
【符号の説明】
【0024】
[ポストの作成]
内径0.80mm外径1.25mm長さ20mm、および、内径1.00mm外径1.40mm長さ2.0mmのステンレス製チューブに直径0.4mmの孔を1mm間隔で開けたものと内径1.00mm外径1.40mm長さ2.0mmのステンレス製チューブに直径0.4mmの孔を1mm間隔で開けたものを作成し、光ファイバを挿入させるポストの外筒として用いた。これに、それぞれ直径0.75mm、1.00mmの光ファイバを挿入し照射光の導入に用いた。
【0025】
[光硬化型歯質接着性ボンディング材および光硬化型接着性レジン]
トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)をベースモノマーとし、これに4-メタクリロイルオキシトリメリット酸無水物(4-META)、メタクリロイルオキシエチルフタル酸(PHMA)を含む光硬化型接着性ボンディング材を新たに開発した。光硬化剤としてはカンファーキノン(CQ)を用い、増感剤としてN-フェニルグリシン(NPG)を添加した。
【0026】
従来、光硬化型コンポジットレジンのベースモノマーにはUDMAが使われている場合が多いが、UDMAは粘調であり脱灰象牙質へは拡散しにくく、そのままでは硬化させても接着できない。本実験では歯質とより強固に接着できるモノマーとして、
同一分子内に親水性基と疎水性基を有する4-METAとベースモノマーとしてTEGDMAを加えた光硬化型ボンディング材を試作した。具体的には、試作した光硬化型接着性ボンディング材には、ベースモノマーとしてトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を用い、これに4-メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物(4-META、5%)、メタクリロイルオキシエチルフタレート(PHMA、10%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA、10%)又はウレタンジメタクリレート(UDMA、10%)をそれぞれ加えモノマー混合液とした。光硬化剤としてカンファーキノン(CQ)0.5%、光増感剤としてN-フェニルグリシン(NPG)0.3%を添加した。試作した光硬化型ボンディング材の組成を表1に示す。
【表1】
JP0004344824B2_000002t.gif
また、光ファイバーポストの歯質適合性を評価するため比較として、市販の接着性レジン(AQボンドII サンメディカル社 滋賀)およびコンポジットレジン(EPIC TMPT サンメディカル社 滋賀)を用いたものについても同様の操作を行った。
【0027】
[牛象牙質への接着]
凍結保存した牛の抜去歯を流水下で解凍し、歯冠を切断後、歯根部から歯髄を取り除いた後、軽く気銃で根管を乾燥させた。根尖部を即重レジンにて仮封したのち10%クエン酸-3%塩化第二鉄溶液で10秒間エッチングした。軽く水洗後、根管内に5%4-META/アセトンプライマーを塗布し60秒間放置した後過剰のプライマーを取り除いた。さらに、根管内に、光硬化型接着性ボンディング材を満たした。60秒後、過剰のボンディング材をとりのぞき、試作ボンディング材と同様の組成のモノマー混合液にTMPT-有機質複合フィラーを50%加えたコンポジットレジン組成物(通常の組成物は機械的強さを持たせるため、フィラーの混合割合が60%以上となるよう可能な限り多く混合するが、本試作コンポジットレジンは根管内の深部にまで充填するよう配慮し流動性を持たせる目的で有機質複合フィラーの添加量を少なくした)を満たし、光ファイバを取り付けた試作ステンレス製ポストを気泡が混入しないように注意して挿入した。その後、Nd:YAG青色レーザを30秒間、ポストを構成するチューブ1を介して照射し植立した。
【0028】
[結果及び考察]
メチレンブルー染色法による色素侵入実験について述べる。根管に挿入し接着させたステンレス製ポスト周囲のレジン重合収縮に伴うマージナルリーケージを調べるため、接着後の歯根を0.5%メチレンブルー水溶液中に浸漬し、37℃恒温槽に7日間静置した。水洗後、歯根の横断試料と歯根に対し垂直に切断した試料を作成し顕微鏡観察を行って色素侵入の程度を調べた。色素侵入試験の結果、填入したコンポジットレジンの周囲、ボンディング材と歯根の界面、金属製チューブの周囲、光ファイバの周囲に青色の色素の侵入は全く観察されなかった。このことは、光ファイバ照射によりコンポジットレジン、ボンディング材の重合硬化が完全に進行し歯質との接着が確実に行われたことを示唆している。
【0029】
SEM(走査型電子顕微鏡)による観察について述べる。ステンレス製ポスト植立後、歯根部の横断面についてSEM観察を行った。ポストを挿入後、接着した歯根をそのまま厚さ2mm横断試料を作成し、耐水研磨紙#1200にて研磨後、研磨試料、6N塩酸30秒浸漬、1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液10分間浸漬したものについてそれぞれ乾燥し金蒸着後、走査型電子顕微鏡(JEOL 5400)により観察した。走査型電子顕微鏡観察の結果、歯根の横断面を研磨し滑沢な面とした試料表面では光ファイバ・金属製チューブ・コンポジットレジン・ボンディング材・歯質の各界面の接着は良好であり、間隙は認められない(図5参照)。レジンの浸透を確認する目的のために6Nの塩酸に浸漬し象牙質の一部を除去した試験片では、象牙細管内に樹脂が浸透し硬化していることが確認された。さらに、樹脂と象牙質界面に樹脂と象牙質のハイドロキシアパタイト、コラーゲンの混じりあったハイブリッドな層が、次亜塩素酸ナトリウム溶液中に浸漬し、乾燥後、走査型電子顕微鏡観察を行った試験片にも認められた。これらの事実より、金属製チューブにて覆い補強したポストは歯根内に填入した光硬化型コンポジットレジン、光硬化型接着性ボンディング材の硬化のために有効であり接着性に優れたポストを提供することができた。
【0030】
金属チューブから構成されるポストの歯質への接着強さを調べるため、牛前歯の歯根管をA) AQボンド処理、B)10%クエン酸—3%塩化第二鉄溶液で処理した実験群を用意した。A群はメーカー推奨の方法で、B群はウエットボンディング法に準じた方法で歯根管内を処理し、ボンディング材を塗布した。続いて、試作ボンディング材に50%の有機質複合フィラー(TMPTフィラー、7μm)を混合したコンポジットレジンを歯根内に入れ、光ファイバにより硬化させポストを植立した。AQボンドII処理群には光硬化型コンポジットレジン(EPIC-TMPT サンメディカル社 滋賀)を充填した。
【0031】
ポストとして、直径0.4mmの穴のあいたステンレス製チューブ(直径1.25mm、内径0.8mm、長さ20mm)を持つタイプA、(直径1.4mm、内径1.0mm長さ20mm)タイプD、穴をあけないステンレス製チューブをもつタイプCを用いた。比較対象として、直径1.5mm長さ20mmのステンレス棒(タイプB)を従来の金属製ポストの代用として用いた。AQボンドプラス処理群にはタイプAおよびタイプBを植立し、試作ボンディング材/試作コンポジットレジン処理群にはタイプAおよびタイプCをそれぞれ植立した。クロスヘッドスピード2mm/minとし、4回繰り返し測定を行い平均値を求めた。
【0032】
Type-A(ボンディング材AQ-B)および、Type-A(試作ボンディング材)では、いずれも、挿入硬化し植立させたステンレス製ポストが破壊され、歯根部および、充填し硬化させた光硬化型コンポジットレジンは破断しなかった。これに対し、Type-B(ボンディング材AQ-B)および、Type-B試作ボンディング材の群ではポスト材料が引き抜かれる事がわかった。これは、微細な孔の開いたステンレス製外筒を通して、青色レーザ光が照射されコンポジットを確実に重合硬化させたため、きわめて高い維持力が得られたためと考えられる。いずれの場合においても、歯質の破壊は見られず、引き抜き試験後でも、根管内のポストは動揺(ポスト周囲のレジンや、歯質が引っ張り応力により根管内部で破壊されれば間隙を生じグラグラする)して破折した試料は見られなかった。
【0033】
ここで、歯根破折の原因は金属製ポストの弾性率が象牙質の弾性率と大きく異なるため、歯根面や挿入したポストの根尖部に応力の集中が起きるためと説明されている。これを解決するためには、できるだけ象牙質の弾性率に近い素材を用いると良いとされている。表2にはいろいろな素材の弾性率と象牙質の弾性率を示した。また本実験で用いたステンレス製の金属チューブからなるポストのみかけの弾性率(計算上)および測定値も示した。
【表2】
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【0034】
本発明の構成及び実験例について説明してきた。従来のポスト植立法では、ポスト周囲が歯質と十分に接着していないため咬合時の応力によりポストの動揺や.歯根の破折、口腔内細菌の歯根内への侵入等の恐れがあった。光硬化型ボンディング材と新しく考案したステンレス製ポストおよび光ファイバを用いることにより、レジンコアを根管と確実に接着させることができる。また、ポストの周囲をレジンで覆うことにより象牙質に近いみかけの弾性率を持つ構造体とすることができるため、従来使用されているメタルコアや金属製ポストなど弾性率の大きな材料による、歯根破折などのリスクも軽減できる。さらに、レジンコアの欠点とも言える重合収縮によるレジンコア周辺の漏洩や機械的強度の不足も補えると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、根管に充填された光硬化型レジンに光を供給して重合硬化させる手法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の支台築造法を示す図である。
【図2】本発明に係る金属製チューブおよび光ファイバを示す図である。
【図3】本発明に係る金属製チューブ内に光ファイバの先端部位を挿入した状態を示す図である。
【図4】本発明に係る支台築造を示す図である。
【図5】(A)ステンレス製チューブとコンポジットとの接着状態;(B)コンポジットレジンと歯質との接着状態を示す図である。
【図6】引き抜き試験の結果を示す図であり、縦軸の単位はMPaである。
【0037】
1 金属製チューブ
2 孔
3 光ファイバ
4 根管
5 接着層
7 光硬化型レジン
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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