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明細書 :コンクリート構造体の耐力補強工法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3766729号 (P3766729)
公開番号 特開平10-140850 (P1998-140850A)
登録日 平成18年2月3日(2006.2.3)
発行日 平成18年4月19日(2006.4.19)
公開日 平成10年5月26日(1998.5.26)
発明の名称または考案の名称 コンクリート構造体の耐力補強工法
国際特許分類 E04G  23/02        (2006.01)
FI E04G 23/02 E
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願平08-304922 (P1996-304922)
出願日 平成8年11月15日(1996.11.15)
審査請求日 平成15年4月11日(2003.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】渡辺 忠朋
【氏名】出頭 圭三
【氏名】渡部 正
【氏名】三島 徹也
【氏名】鈴木 顕彰
【氏名】中島 良光
個別代理人の代理人 【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100090516、【弁理士】、【氏名又は名称】松倉 秀実
【識別番号】100098268、【弁理士】、【氏名又は名称】永田 豊
審査官 【審査官】江成 克己
参考文献・文献 特開平08-291631(JP,A)
特開昭47-020937(JP,A)
調査した分野 E04G 23/02
特許請求の範囲 【請求項1】
コンクリート構造体の一面側から前記コンクリート構造体を補強する耐力補強工法であって、
前記コンクリート構造体の一面側から補強の必要な面に鋼板を位置決めし、前記コンクリート構造体のほぼ全厚みに亘って剪断補強鋼材を打ち込んで前記コンクリート構造体に定着させると共に前記鋼板を固定することにより、前記コンクリート構造体の剪断耐力及び曲げ耐力を増加させることを特徴とするコンクリート構造体の耐力補強工法。
【請求項2】
前記コンクリート構造体に打ち込まれる前記剪断補強材が前記コンクリート構造体を貫通し、その先端部が前記コンクリート構造体の外面側で係止して定着されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造体の耐力補強工法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はコンクリート構造体の耐力補強工法に関し、更に詳細には、例えばボックスカルバートの上下床版や地下外壁などのように構造体の外部からの補強作業が事実上困難な場合に用いる剪断又は曲げ耐力の補強工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、既設鉄筋コンクリート構造体における剪断又は曲げ耐力の補強は、柱構造物やラーメン構造物の中間梁などのように部材の全周囲から補強可能な場合には帯鉄筋の追加を含んだRC(鉄筋コンクリート)打ち増し、或いは鋼板巻きなどにより行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ボックスカルバートや地下外壁などのような既設鉄筋コンクリート構造体については、一面からしか補強作業が実施できず、このような場合にはRC打ち増しによる断面増強以外に有効な対策はなかった。
【0004】
特に、下水施設等に使用されているボックスカルバートの場合には、内空が侵食されるため実際に適用できる場所は限定され、そのため効果的な剪断又は曲げ耐力の補強を施すことが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、コンクリート構造体の一面から剪断又は曲げ耐力の補強工事を行うことができるコンクリート構造体の耐力補強工法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明はコンクリート構造体の耐力補強工法であり、前述した技術的課題を解決するために以下のように構成されている。すなわち、本発明は、コンクリート構造体の一面側から前記コンクリート構造体を補強する耐力補強工法であって、前記コンクリート構造体の一面側から補強の必要な面に鋼板を位置決めし、前記コンクリート構造体のほぼ全厚みに亘って剪断補強鋼材を打ち込んで前記コンクリート構造体に定着させると共に前記鋼板を固定することにより、前記コンクリート構造体の剪断耐力及び曲げ耐力を増加させることを特徴とする。
【0007】
コンクリート構造体としては、ボックスカルバートや地下外壁などのような鉄筋コンクリート構造体を挙げることができる。本発明に係るコンクリート構造体の耐力補強工法では、このようなボックスカルバートや地下外壁などのように内部側からしか補強作業ができないコンクリート構造体の場合に特に有効である。
【0008】
<本発明における具体的構成>
本発明に係るコンクリート構造体の耐力補強工法は、前述した必須の構成要素からなるが、その構成要素が具体的に以下のような場合であっても成立する。その具体的構成要素とは、前記コンクリート構造体に打ち込まれる前記剪断補強材が前記コンクリート構造体を貫通し、その先端部が前記コンクリート構造体の外面側で係止して定着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコンクリート構造体の耐力補強工法では、剪断補強鋼材としてアンカーボルトを使用することができる。このアンカーボルトは、周知のものを使用することができ、例えばアンダーカットアンカーとして市販されているものなどは好ましい。
【0010】
本発明に係るコンクリート構造体の耐力補強工法によると、複数のボルト挿通穴を適所に形成した鋼板を準備し、コンクリート構造体における補強しようとする内壁面における前述した鋼板のボルト挿通穴に整合する位置に剪断補強鋼材挿入用の削孔を形成する。
【0011】
この剪断補強鋼材挿入用の削孔は、補強を予定している内壁面を構成しているコンクリート構造体のほぼ全厚みに亘って形成される。従って、この剪断補強鋼材挿入用の削孔がコンクリート構造体の壁を完全に貫通して形成されていてもよい。次いで、そのコンクリート構造体の補強しようとする内壁面に前述した鋼板を、これに形成されたボルト挿通穴がコンクリート構造体の壁に形成された削孔に整合するように配置する。
【0012】
その後、剪断補強鋼材であるアンカーボルトを鋼板の各ボルト挿通穴からコンクリート構造体壁部の削孔に入れ、その先端部をその剪断補強鋼材挿入穴内で拡張するか、又は外壁側に突出させて拡張する等してコンクリート構造体に係止する。これによりコンクリート構造体は、剪断補強鋼材の取り付けにより剪断耐力が向上すると共に同時にこの剪断補強鋼材によって固定された鋼板により曲げ耐力も向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明におけるコンクリート構造体の耐力補強工法を一実施形態について更に詳細に説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造体の耐力補強工法によって耐力補強されたボックスカルバート10が部分的に示されている。
【0014】
このボックスカルバート10は、その上床版10aを内側から補強したものであり、その補強工法は、最初に、複数のボルト挿通穴11a(図2参照)を適所に形成した鋼板11を準備する。この鋼板11は、補強しようとするボックスカルバート10の上床版10a内壁面の幅にほぼ一致する幅寸法のものが使用される。
【0015】
そして、ボックスカルバート10の上床版10aには、前述の鋼板11を当てた時、そのボルト挿通穴11aに整合する位置に剪断補強鋼材挿入用の削孔12が形成される。この削孔12は、補強を予定している内壁面を構成しているボックスカルバート10のほぼ全厚みに亘って形成されると共にその底部近傍に後述する目的のために拡径部12aが形成される。
【0016】
次いで、剪断補強鋼材であるアンカーボルト13を鋼板11の各ボルト挿通穴11aからボックスカルバート10の上床版10aの削孔12に入れる。そして、アンカーボルト13の先端部をその削孔12内で拡張し、ボックスカルバート10に係止する。このように先端部が拡張するアンカーボルト13の構成を図2を参照しながら簡単に説明する。
【0017】
このアンカーボルト13は、ボルト部分13aとこれに外装されたスリーブ13bと、このスリーブ13bから突出したボルト部分13aの端部に螺合された拡張体13cとから構成されている。この拡張体13cには、外周面に複数の係止片13dが形成され、各係止片13dは拡張体13cを回転させないようにした状態でボルト部分13aを回転すると、ボルト部分13aの先端に螺合された拡張ナット13eが軸方向に動いて係止片13dを放射状に即ち径方向外方に傘のように広げて削孔12の底部近傍における拡径部12a内に進入しさせ、ボックスカルバート10の上床版12aに係止される。
【0018】
このようなアンカーボルト13それ自体は前述したように公知のものであり、従ってこのアンカーボルト13のこれ以上の説明は省略する。各削孔12へのアンカーボルト13の挿入は、ボルト部分13aが挿通したスリーブ13b及びボルト部分13aに螺合した拡張体13c及び拡張ナット13eを削孔12内に圧入することでなされるが、その際、拡張体13cのボルト部分13aに対する取付け位置は、その係止片13dが削孔12の拡径部12aに対応するように予め計算して設定されている。
【0019】
その後、前述した鋼板11をそのボルト挿通穴11aに各アンカーボルト13のボルト部端部が相対的に通過して外方に突出するようにボックスカルバート10の上床版内壁面に配置する。そして、鋼板11の各ボルト挿通穴11aから突出するボルト部分13aの先端部にワッシャー14を介在させた上でナット15が螺着され、これを所定のトルクで締め付けて鋼板11の固定が終了する。
【0020】
その際、必要に応じて、アンカーボルト13のボルト部13aに取り付けられたワッシャー14及びナット15をその端部と共に覆うプラスチックキャップ16が装着され、鋼板11とボックスカルバート10の上床版10a内壁面との間の隙間にはグラウト17が充填される。
【0021】
これにより、このボックスカルバート10は、剪断補強鋼材であるアンカーボルト13の取り付けにより剪断耐力が向上すると共に同時にこの剪断補強鋼材によって固定された鋼板11により曲げ耐力も向上することになる。この効果を確認するため、構造実験を実施した。試験概要を図3に、また試験結果を表1に示す。この構造実験は、図3に示されるような梁試験体20により剪断スパン長を3050mmとして、2点載荷方式の曲げ剪断試験とした。
【0022】
【表1】
JP0003766729B2_000002t.gif
【0023】
表1における比較値は、無補強梁の剪断破壊荷重であり、土木学会コンクリート標準示方書に従って求めたものである。本発明の耐力補強工法で形成された補強梁は、その破壊時の最大荷重が50.8(tf)であり、無補強試験体の計算比較値である剪断破壊荷重32.7(tf)を大きく上回っている。
【0024】
前述した実施形態に係るコンクリート構造体の耐力補強工法では、ボックスカルバート10の上床版10aにそのほぼ全厚みに亘る削孔12を形成し、その内部にアンカーボルト13を挿入して固定し、鋼板11を上床版10aの内壁面に固定したが、図4に示されるようにボックスカルバート10の上床版10aを完全に貫通して剪断補強鋼材挿入用の削孔を形成してもよい。その場合には、屋内の間仕切り壁として用いられる石膏ボードに吊りフック等を固定する時によく使用される公知のアンカーボルト18を使用することができる。
【0025】
すなわち、このアンカーボルト18は、図5及び図6に示されるように、ボルト部18aが内部に螺入され且つ先端部がボルト部の端部に接続された割りさや部18bの先端部近傍を外側に「く」の字状に屈曲し得るように構成されたものである。このアンカーボルト18は、ボックスカルバート10の上床版10aに形成された貫通孔19に、割りさや部18bの先端部近傍における屈曲可能部18cが外壁側に突出するまで挿入され、その後ボルト部18aを回転させて割りさや部18bを軸方向に移動して屈曲可能部18cを「く」の字形に折り曲げて拡張させることでボックスカルバート10の上床版10a外壁面に係止する。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート構造体の耐力補強工法によれば、コンクリート構造体の一面側から当該コンクリート構造体に剪断補強鋼材を打ち込むと同時にこの剪断補強鋼材を利用してその内壁面に鋼板を固定するようにしたことから一面側からのみの作業によってコンクリート構造体の剪断耐力及び曲げ耐力を比較的に容易に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート構造体の補強工法により補強されたボックスカルバートを部分的に示す断面図である。
【図2】図1に示したボックスカルバートの一部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明のコンクリート構造体の耐力補強工法によって形成した補強梁の耐力試験の状態を示す構成説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るコンクリート構造体の補強工法により補強されたボックスカルバートを部分的に示す断面図である。
【図5】図4に示されたボックスカルバートの一部におけるアンカーボルトの取り付け初期状態を示す断面図である。
【図6】図4に示されたボックスカルバートの一部を拡大してアンカーボルトの取付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 ボックスカルバート(コンクリート構造体)
10a 上床版
11 鋼板
11a ボルト挿通穴
12 削孔
12a 拡径部
13 アンカーボルト(剪断補強鋼材)
14 ワッシャー
15 ナット
16 プラスチックキャップ
17 グラウト
18 アンカーボルト
20 梁試験体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5