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明細書 :電線の張力測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3745853号 (P3745853)
公開番号 特開平10-176968 (P1998-176968A)
登録日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発行日 平成18年2月15日(2006.2.15)
公開日 平成10年6月30日(1998.6.30)
発明の名称または考案の名称 電線の張力測定方法
国際特許分類 G01L   5/10        (2006.01)
B60M   1/28        (2006.01)
FI G01L 5/10 C
B60M 1/28 R
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願平08-353656 (P1996-353656)
出願日 平成8年12月16日(1996.12.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第74期全国大会講演論文集(IV)(1996年9月10日)社団法人日本機械学会発行第425-426ページに発表
審査請求日 平成15年8月4日(2003.8.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000151036
【氏名又は名称】株式会社電業
発明者または考案者 【氏名】網干 光雄
【氏名】真鍋 克士
【氏名】冨樫 敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100102211、【弁理士】、【氏名又は名称】森 治
審査官 【審査官】松浦 久夫
参考文献・文献 特開平07-209110(JP,A)
特開昭53-132392(JP,A)
特公昭42-007515(JP,B1)
特開平08-278215(JP,A)
特開平10-171779(JP,A)
調査した分野 G01L 5/04 - 5/10
B60M 1/28
特許請求の範囲 【請求項1】
電車の通過により測定対象となる張架された電線に生じる振動を、一定距離だけ離して設定した電線上の測定点において加速度計によって測定するとともに測定した振動をデータ記録手段に記録し、データ記録手段に記録された測定した振動の周波数分析を行い、特定の周波数の振動の波動伝幡速度を算出し、その平均速度から電線の張力を算出することを特徴とする電線の張力測定方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電車線、送電線等の電線(本明細書において、単に「電線」という場合がある。)の張力測定方法に関し、特に、低周波数の振動の波動伝幡速度に基づいて電線の張力を測定できるようにした電線の張力測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、電車線においては、パンタグラフを介して走行する電車に給電を行うようにしているが、走行する電車に安定して給電を行うようにするためには、パンタグラフが電車線に安定して接触させる必要があり、このため、電車線を予め定めた一定の張力にて張架するようにしている。
しかしながら、電車線は、外気温の変化、風雨、電車の通過による電車線の流れの発生、電車線自体の劣化に伴う伸び等の影響を受け、その張力は変化する。
このため、電車線が上記の種々の影響を受けても、その張力が一定に保たれるように、テンションバランサ等を電車線の端部付近に配設するとともに、定期的にその張力測定を行うようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の電車線の張力測定方法としては、
(1) ロードセル等の張力計を用いる張力測定方法
(2) 波動伝幡速度から算出する張力測定方法
がある。
このうち、(1)の張力計を用いる張力測定方法は、最も一般的なものであるが、図4に示すように、張架した電車線Tにこの張力計Kを設置するには、張力計Kを設置する箇所で電車線Tを破断し、張力計Kを介在させる必要がある。このため、張架された電車線の切断等の準備作業が大がかりなものとなり、しかも、測定できる位置は電車線の端部に限定され、電車線の中間部分での測定はできないという問題点がある。
また、(2)の波動伝幡速度から算出する張力測定方法は、図5に示すように、電車線Tに人為的に衝撃を与え、この衝撃を与えた位置から一定距離Sだけ離れた測定点に衝撃波(振動)が伝わる時間差(t2ーt1)を測定し、張力Tを測定するものである。なお、張力Tは次式(概算式)で算出される。
【0004】
c=(T/ρ)1/2
T=cρ
c:波動伝幡速度(=S/(t2-t1))
ρ:電線の線密度
T:張力
【0005】
ところで、波動伝幡速度は、振動の周波数が高くなるほど速くなる性質がある。
このため、この波動伝幡速度から算出する張力測定方法は、電車線Tに衝撃を与える方法等によって衝撃波に含まれる周波数成分が異なることから、測定精度が低いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の張力測定方法の有する問題点を解決し、波動伝幡速度から算出する張力測定方法を改良して、低周波数の振動の波動伝幡速度に基づいて電線の張力を簡易に精度高く測定できるようにした電線の張力測定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の電線の張力測定方法は、電車の通過により測定対象となる張架された電線に生じる振動を、一定距離だけ離して設定した電線上の測定点において加速度計によって測定するとともに測定した振動をデータ記録手段に記録し、データ記録手段に記録された測定した振動の周波数分析を行い、特定の周波数の振動の波動伝幡速度を算出し、その平均速度から電線の張力を算出することを特徴とする。
【0008】
これにより、本発明は、一定距離だけ離して設定した電線上の測定点において測定した振動中の特定の周波数、すなわち、電線の張力を安定して測定することができる低周波数(100Hz程度以下)の振動に基づいて波動伝幡速度を算出し、その平均速度から電線の張力を算出する。
【0009】
この場合において、測定点間の距離は、2m以上に設定することが望ましく、これにより、一般的な架線構造の電線の波動伝幡速度が100m/s前後であるため、波動伝幡速度の算出に用いる100Hz程度以下の周波数の振動成分を数点程度確保することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電線の張力測定方法の実施の形態を電車線の張力測定を行う場合を例に説明する。
【0011】
まず、波動伝幡速度の測定方法の原理を示す。
電車線を伝幡する波動として、
【0012】
【式1】
JP0003745853B2_000002t.gif【0013】
を考える。
ただし、式1において、A,Bは各周波数成分の振幅、iは虚数単位を示す。
式1は、電車線の両方向に伝幡し、かつすべての周波数成分を含む波動であり、c,A,Bは周波数によって異なる値を有する。
このとき、距離Lだけ離れた測定点x,xで観測される波動y,yの差及び和は、式2で表される。
【0014】
【式2】
JP0003745853B2_000003t.gif【0015】
ただし、測定点x,x間にはハンガ等の波動の反射する素子は存在せず、また、この間における波動伝幡の減衰は無視するものとする。
ここで、特に、ω=ωにおいて、
【0016】
【式3】
JP0003745853B2_000004t.gif【0017】
であるから、y-y,y+yの周波数成分が0となる周波数f(ω=2πf)が分かれば、それに相当するnからその周波数における波動伝幡速度Cは、式4から求めることができる。
【0018】
【式4】
JP0003745853B2_000005t.gif【0019】
波動の周波数及び波長をf,λとすればc=fλであるから、この測定方法は、波長λを測定して波動伝幡速度を求めることに相当する。
図3に、距離Lだけ離れた測定点と、波動伝幡速度が求まる波動(y-y=0又はy+y=0となる波動)との関係を示す。
【0020】
この方法においては、電車線の1箇所で与えた衝撃により発生する波動が、衝撃を与えた位置から電車線の両方向に伝幡していても、さらには、異なる周波数の波動が混在していても測定可能である。ただし、測定点は周波数に対して連続的ではなく、離散的な値となる。
【0021】
測定点間の距離Lについては、2m程度以上が望ましい。
これは、一般的な架線構造の電車線の波動伝幡速度が100m/s前後であるため、波動伝幡速度の算出(波動伝幡速度の算出は、式1を用いて行う。)に用いる100Hz程度以下の周波数の振動成分を数点程度確保することができるようにするためである。
【0022】
-y=0,y+y=0となる周波数検出方法は、それぞれのスペクトルの各周波数における比(スぺクトル比)をそれぞれ計算し、その極大、極小となる周波数を求める。
【0023】
測定する波動については、変位、速度、加速度のいずれでも上記の原理で測定可能であるが、実用的には、比較的高周波まで測定容易な加速度を測定するのが適当である。
【0024】
以下、本発明の電線の張力測定方法を実施するための電線の張力測定装置の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、電車線1の一定距離Lだけ離れた任意の2箇所に加速度計2,2を取り付ける。
加速度計2,2の取付位置は、電車の通過に支障のない位置で、電車の通過によって電車線1に生じる残留振動を測定できる位置とし、両加速度計2,2は、好ましくは、2m以上離間して取り付けるようにする。
各加速度計2には、測定器20としての歪増幅器3を接続し、加速度計2と歪増幅器3にて振動測定手段を構成する。
これにより、電車の通過によって電車線1に生じる残留振動の振動加速度を加速度計2、歪増幅器3にて測定する。
この場合、振動は、電車の通過により生じる残留振動のほか、人為的に衝撃を与えることにより生じさせることもできる。
また、電車線の加速度のほか、振動振幅又は振動速度を測定することも可能である。
【0025】
測定器20は、歪増幅器3のほか、データ記録手段のA/D変換器及びメモリ4、演算手段のマイクロコンピュータ5、制御手段の制御器及び表示器6を備えるとともに、各機能部を順次電気的に接続して構成する。
【0026】
そして、A/D変換器及びメモリ4より構成されるデータ記録手段では、測定された振動波形の約5秒間分をA/D変換してメモリに記録する。このデータを演算手段で処理して、張力を算出するのであるが、処理内容から考えてサンプリング周波数は最低500Hz必要である。
【0027】
次に、マイクロコンピュータ5より構成される演算手段によるデータ処理方法を、図2を用いて説明する。
まず、メモリに記録されたデータを用いて周波数分析を行い、各周波数スペクトル比を周波数fの関数として算出する。これを式5に示す。
【0028】
【式5】
JP0003745853B2_000006t.gif【0029】
次に式6となる周波数fを計算し、関数Z(f)を極大、極小とする周波数を見いだす。
【0030】
【式6】
JP0003745853B2_000007t.gif【0031】
この場合、周波数fが極大であるか、極小であるかは関数Z(f)がほぼ1を中心として変動していることから、
Z(f)>1
であれば極大であると判定し、このときの周波数fを改めて周波数fで表し、
Z(f)<1
であれば極小であると判定し、このときの周波数fを改めて周波数fで表す。 この周波数f,fを式4に代入して波動伝幡速度を算出する。
この場合、周波数fに対しては式4の上式を、周波数fに対しては下式を適用する。
【0032】
周波数が高くなると波動伝幡速度は高くなるので、計算には、100Hz以下、さらに好ましくは、60Hz以下の周波数f,周波数fを使用して波動伝幡速度を計算し、式7に示すように、算出された波動伝幡速度の平均値cを用いて張力を計算する。
【0033】
【式7】
JP0003745853B2_000008t.gif【0034】
この場合、60Hz以下の周波数におけるZ(f)の極値は、加速度計2,2の取付間隔Lが2mの場合は2~3個、4mの場合は4~5個得ることができるられる。
そこで、周波数の低い方からN及びMの値を1,2,3,・・・として計算する。
制御手段は、振動測定手段、記録手段及び演算手段を制御するとともに、算出した張力の値を表示するものである。
【0035】
なお、上記例は、本発明を電車線の張力測定に適用した例を示したが、本発明の適用対象はこれに限定されず、送電線等の電線にも適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の電線の張力測定方法によれば、一定距離だけ離して設定した電線上の測定点において測定した振動中の特定の周波数、すなわち、電線の張力を安定して測定することができる低周波数(100Hz程度以下)の振動に基づいて波動伝幡速度を算出し、その平均速度から電線の張力を算出することができるため、振動の周波数の違いによる波動伝幡速度の変動の影響を受けず、電線の張力を簡易、かつ迅速に、また、精度高く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電線の張力測定装置の一実施例を示す説明図である。
【図2】 同演算手段によるデータ処理方法のフローチャートを示す説明図である。
【図3】 測定点と波動の関係を示すグラフ図である。
【図4】 従来の電車線の張力測定方法を示す説明図である。
【図5】 従来の電車線の張力測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 電車線
2 加速度計
3 歪増幅器
4 A/D変換器及びメモリ
5 マイクロコンピュータ
6 制御器及び表示器
20 測定器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4