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明細書 :トンネルの施工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3447530号 (P3447530)
公開番号 特開平10-238290 (P1998-238290A)
登録日 平成15年7月4日(2003.7.4)
発行日 平成15年9月16日(2003.9.16)
公開日 平成10年9月8日(1998.9.8)
発明の名称または考案の名称 トンネルの施工方法
国際特許分類 E21D 11/00      
C04B 26/02      
C04B 28/02      
FI E21D 11/00 A
C04B 26/02
C04B 28/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願平09-247287 (P1997-247287)
出願日 平成9年9月11日(1997.9.11)
優先権出願番号 1996344260
優先日 平成8年12月24日(1996.12.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成13年2月7日(2001.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【識別番号】000115500
【氏名又は名称】ラサ工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】太田 勲
【氏名】岸本 雅雄
【氏名】空西 正夫
【氏名】小田中 博
【氏名】増田 善彦
【氏名】角永 憲資
【氏名】河野 重行
【氏名】木内 勉
【氏名】橘 大介
【氏名】堀内 澄夫
【氏名】名倉 健二
【氏名】宮瀬 文裕
【氏名】野口 恒久
個別代理人の代理人 【識別番号】100097423、【弁理士】、【氏名又は名称】柳田 良徳 (外2名)
【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武 (外1名)
審査官 【審査官】中槙 利明
参考文献・文献 特開 平7-206503(JP,A)
特開 平6-221088(JP,A)
特開 昭59-210195(JP,A)
調査した分野 E21D 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
トンネルを構築するため地山に孔を掘削していき、前記孔内に鋼製支保工を設置すると共に、該鋼製支保工の外周に矢板部材を設置し、しかる後に、前記矢板部材の地山側に形成された凹部に、少なくとも吸水性樹脂とセメントとベントナイトとを含む組成物からなる空洞充填材を送給すると共に、この凹部に水を注入し、前記凹部内でこの空洞充填材を吸水・膨張させ、かつ硬化させることとし、空洞充填材の配合を、重量比で水100に対し、吸水性樹脂0.1~5,セメント10~60、ベントナイト20~80としたことを特徴とするトンネルの施工方法。

【請求項2】
請求項1に記載のトンネルの施工方法において、前記空洞充填材が更に水溶性有機溶剤を含むースト状またはウエットパウダー状の組成物からなることを特徴とするトンネルの施工方法。

【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトンネルの施工方法において、2本の送給管と1本の注出管とが連結された二股ノズルを用い、この二股ノズルの一方の送給管から前記空洞充填材を送給し、他方の送給管から水を送給し、二股ノズル内でこれらを合流、混合し、混合物を前記注出管から前記凹部に送給することを特徴とするトンネルの施工方法。

【請求項4】
トンネルを構築するため地山に孔を掘削していき、前記孔内に鋼製支保工を設置すると共に、該鋼製支保工の外周に矢板部材を設置し、しかる後に、前記矢板部材の地山側に形成された凹部に、少なくとも吸水性樹脂とセメントとベントナイトと水とを含む流動性の組成物からなり、この組成物の配合が、重量比で水100に対し、吸水性樹脂0.1~5,セメント10~60、ベントナイト20~80とされ、この組成物中で吸水性樹脂が少なくとも部分的に吸水・膨張した空洞充填材を送給し、前記凹部内で硬化させることを特徴とするトンネルの施工方法。

【請求項5】
請求項4に記載のトンネルの施工方法において、組成物におけるセメントの配合が重量比で水100に対し10~40であり、かつその組成物の吸液指数が1~3の範囲内であることを特徴とするトンネルの施工方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、トンネル掘削時に孔壁面に生じた凹部を効率的に充填するトンネルの施工方法に関する。

【0002】

【従来の技術】周知のように、山岳にトンネルを掘削するに際しては、地山を構成する岩盤に孔を掘削していく。このとき、掘削した孔の内周面の、特に天端部に小規模な崩落による凹部が発生しやすい。この凹部は、地山の安定性にとって好ましくないため、充填材を充填して凹部を埋める必要がある。このような場合、従来は、例えば発泡ポリウレタンやエアモルタル等を充填材として凹部に充填していた。これらの充填材は、充填後に凹部の内部で膨張するので、これによって凹部を埋めていた。

【0003】
また、トンネルボーリングマシンやシールド掘削機等を用いてトンネルを掘削する場合、覆工材として、掘削した孔内にセグメントを組み立てることがある。この場合、組み立てたセグメントの外周面と孔の内周面との隙間の凹部をうめるため、モルタルやセメントミルク等のセメント系材料を裏込材(充填材)として充填していた。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したような従来の技術には以下のような問題が存在する。すなわち、前記凹部を埋めるために用いていた充填材が、発泡ポリウレタンでは高価にすぎる。一方、エアモルタルは流動性が大きく、注入箇所が特に天端側である場合、矢板部材の間隙や他の空隙等へ漏出してしまうために定着させ難い。

【0005】
また、トンネルボーリングマシンやシールド掘削機等を用いてトンネルを掘削する場合、覆工材として、掘削した孔内にセグメントを組み立てることがある。この場合、組み立てたセグメントの外周面と孔の内周面との隙間の空洞をうめるため、モルタルやセメントミルク等のセメント系材料を裏込材(充填材)として充填していた。しかし、特に掘削にトンネルボーリングマシンを用いる場合には、トンネルボーリングマシンのテールリングプレートにはセグメントとの隙間を塞ぐテールシールが通常備えられていないため、裏込材を充填しても、矢板部材の掘進方向側端部の間隙から漏出してしまうために、凹部までも確実に埋めるような充填を行うことは困難であるという問題がある。

【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、トンネル掘削時に孔壁面に凹部が生じた場合にも、凹部を確実に埋めてトンネルの施工を円滑に行うことができるトンネルの施工方法を提供することを課題とする。

【0007】

【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するため本発明は請求項1において、トンネルを構築するため地山に孔を掘削していき、前記孔内に鋼製支保工を設置すると共に、該鋼製支保工の外周に矢板部材を設置し、しかる後に、前記矢板部材の地山側に形成された凹部に、少なくとも吸水性樹脂とセメントとベントナイトとを含む組成物からなる空洞充填材を送給すると共に、この凹部に水を注入し、前記凹部内でこの空洞充填材を吸水・膨張させ、かつ硬化させることとし、空洞充填材の配合を、重量比で水100に対し、吸水性樹脂0.1~5,セメント10~60、ベントナイト20~80としトンネルの施工方法を提供する。請求項2の発明は、前記請求項1に記載のトンネルの施工方法において、前記空洞充填材が更に水溶性有機溶剤を含むペースト状またはウエットパウダー状の組成物からなることを特徴とする。請求項3の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載のトンネルの施工方法において、2本の送給管と1本の注出管とが連結された二股ノズルを用い、この二股ノズルの一方の送給管から前記空洞充填材を送給し、他方の送給管から水を送給し、二股ノズル内でこれらを合流、混合し、混合物を前記注出管から前記凹部内に送給することを特徴とする。また、前記の課題を解決するため本発明は請求項4において、トンネルを構築するため地山に孔を掘削していき、前記孔内に鋼製支保工を設置すると共に、該鋼製支保工の外周に矢板部材を設置し、しかる後に、前記矢板部材の地山側に形成された凹部内に、少なくとも吸水性樹脂とセメントとベントナイトと水とを含む流動性の組成物からなり、この組成物の配合が、重量比で水100に対し、吸水性樹脂0.1~5,セメント10~60、ベントナイト20~80とされ、この組成物中で吸水性樹脂が少なくとも部分的に吸水・膨張した空洞充填材を送給し、前記凹部内で硬化させるトンネルの施工方法を提供する。請求項5の発明は、前記請求項4に記載のトンネルの施工方法において、組成物におけるセメントの配合が重量比で水100に対し10~40であり、かつその組成物の吸液指数が1~3の範囲内であることを特徴とする。

【0008】


【0009】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るトンネルの施工方法の実施の形態について、施工例(本発明に関連する参考例を含む)によって詳しく説明する。
(施工例1)
本発明の請求項1に係わる一施工例を、図1及び図2により説明する。図1に示すように、山岳等にトンネルを掘削するに際しては、先ず各種工法で地山Gに孔3を掘削する。このとき地山(岩盤)Gの崩落によって孔3の天端部等に凹部Aが発生する場合がある。

【0010】
孔3の掘削に合わせて、リング状の支保工4を、孔3の進行方向に所定間隔を隔てて複数設置する。各支保工4は、孔3の内径よりも所定寸法だけ小径とされており、例えば、所定の曲率に湾曲形成されたH型鋼材を複数本接続することによってリング状に形成する。次いで、矢板部材5を、前記設置した支保工4,4,…上と、孔3の天端部との間に挿入して設置し、凹部Aの下方全体を覆うようにする。この矢板部材5には、例えば鋼製のキーストンプレートが用いられる。

【0011】
次に施工例1では、図2に示すように、凹部Aの下方に位置する矢板部材5の上に、粉状の空洞充填材F1を、ホースを用いた空気圧送等の方法により載置する。この空洞充填材F1は、所定量の粉末状又は砕粒状の吸水性樹脂と、セメントと、必要なら他の骨材や混和材とを粉体混合器中で均一に混合して調製した流動性粉体である。

【0012】
この状態で放置すると、凹部Aの地山(岩盤)Gの表面から地下水wが滲み出している場合は、この地下水wが空洞充填材F1上に滴下し、これを浸潤する。すると空洞充填材F1に含まれている吸水性樹脂が先ず吸水し、膨張する。これによって空洞充填材F1全体が体積を増大させると共に吸水性樹脂の粘着力によって塊化し、凹部A内に充満するに到る。その後、時間の経過と共に、配合されているセメントが吸水して硬化し、凹部Aが硬化物によって充填されることになる。

【0013】
これによって、トンネル掘削時に孔壁面に凹部が生じた場合にも、安価な材料で凹部を確実に埋めて地山を安定化させると共に、トンネルの施工を円滑化することができる。また、湧水量が過大な場合でも、吸水性樹脂の粘着力によって矢板部材5上に載置された空洞充填材F1が直ちに塊化するので、その流失が抑制される。

【0014】
用いる空洞充填材F1は、凹部の状態や湧水の程度、膨張倍率、要求される硬化物の物性等を考慮して吸水性樹脂とセメントとの配合割合及び使用量を決定することが好ましい。一般には、加えられる水を100とするときの重量比で、吸水性樹脂が0.1~5の範囲内、セメントが10~60の範囲内となるような割合で混合使用することが好ましい。ここで用いる吸水性樹脂は、耐塩性が良好なもの、例えば日本触媒社製「アクアリックCS」等が好適である。

【0015】
前記の空洞充填材F1は、吸水性樹脂とセメントに加えて、更にベントナイトを含むことが好ましい。ベントナイトは、比重が比較的小さいので、組成物中に均一に混合することが容易であり、また分離し難いので安定した空洞充填材が得られる。更にベントナイトは、無機塩を含有する水を吸収して膨潤しゲル化する性質を有するので、これを含む空洞充填材は、充填後硬化するまでに流水にさらされても更に流失し難く、また、重力に抗して盛り上げ充填が可能になり、施工領域を広げることができる。ベントナイトの使用量は、空洞充填材F1に加えられる水に対する重量比で2/10~8/10とすることが好ましい。

【0016】
前記の粉体空洞充填材は、凹部へ送給するとき等の粉塵飛散を防止するために、請求項2に示したように、例えばプロピレングリコール等の水溶性有機溶剤を添加して湿潤させ、ウエットパウダー状又はペースト状としてもよい。添加された水溶性有機溶剤は吸水性樹脂を膨潤させず、セメントを硬化させないので、保管中等に空洞充填材が膨張したり固化したりすることはない。水溶性有機溶剤を含む空洞充填材を凹部に送給し、水を加えれば直ちに膨張が始まり、次いで硬化する。

【0017】
空洞充填材が水溶性有機溶剤を含むことによりペースト状とされている場合は、予めこのペーストを矢板部材5の外面に塗布し、この外面を凹部Aに向けて矢板部材5を支保工4上と孔3の天端部との間に挿入設置すると、ペーストの粘性によって付着状態を維持したまま吸水・膨張し、硬化する。この方法によれば粉体の空洞充填材を矢板部材の隙間から凹部Aに向けて空気圧送等により送給する必要がないので、凹部が小規模な場合には、特別な装置を要せず粉塵も発生しない好適な方法である。

【0018】
また水溶性有機溶剤を含む空洞充填材を用いる施工方法は、トンネル凹部の充填だけでなく、トンネルの覆工材としてセグメントを用いる場合のセグメントの裏込め等にも適用することができる。特に、テールシールを備えないトンネルボーリングマシン等を用いる場合、粉体の空洞充填材に水溶性有機溶剤として少量のプロピレングリコール等を添加すると、空洞充填材をペースト化することができ、天端側においてもセグメント端部から空洞充填材が流れ出すことなく、円滑に充填作業を行うことが可能となる。

【0019】
(施工例2)
前記において、凹部Aに地下水の湧出がないか、又は少ない場合は、請求項1に示したように、空洞充填材を凹部に送給すると共に、この凹部に水を注入することが好ましい。この方法に基づく施工例を図3によって説明する。この施工例2では先ず、孔3内に前記の施工例1と同様に支保工4と矢板部材5とを設置する。次いで、図3に示すように、矢板部材5の外側から凹部A内に第一のホース7を挿入し、このホース7から、施工例1で用いたと同様に少なくとも吸水性樹脂とセメントとを含む粉状の空洞充填材F2を凹部A内に空気圧送等で送給する。これと同時に、又は空洞充填材F2の送給後に、矢板部材5の外側から挿入した第二のホース8で水を凹部A内に注入する。このホース8は、その周面に多数の細孔8aが形成されていて、この細孔8aから散布される水が、凹部A内に送給された空洞充填材F4に浸透する。

【0020】
この後は、前記施工例1と同様、空洞充填材F2は、散布された水を吸水性樹脂が吸収することにより急速に膨張して凹部Aに充満し、セメントの硬化により強度が発現し、凹部Aが硬化物により充填されることになる。

【0021】
この場合も空洞充填材F2は、粉塵飛散を抑制するために、水溶性有機溶剤を添加して湿潤させ、ウエットパウダー状として用いてもよい。また、比較的多量の水溶性有機溶剤及び/又は水を混合し、流動性としてポンプ圧送により凹部A内に送給してもよいことはいうまでもない。

【0022】
(施工例3)
この施工例は、図1に示したトンネルの孔3を掘削するときに、地山(岩盤)Gに生じた天端部の凹部Aを、求項3の方法に基づき充填する施工例である。この施工例で用いる空洞充填材は、吸水性樹脂とセメントと、必要なら他の混和剤とを所定の配合割合で混合した粉体空洞充填材F3である。

【0023】
先ず、図1に示すように、リング状の支保工4を、孔3に複数設置し、支保工4,4,…上と孔3の天端部との間に、矢板部材5を挿入設置して凹部Aの下方全体を覆う。次に、図4に示すように、2本の送給管6a,6bと1本の注出管6cとが連結された二股ノズル6を用い、この二股ノズル6の一方の送給管6aから前記の粉体空洞充填材F3を空気圧送により送給し、他方の送給管6bから水を送給し、二股ノズル6内でこれらを合流させて混合し、混合物を注出管6cから前記凹部A内に注出する。

【0024】
凹部A内に注入された空洞充填材F3は、これに配合されている吸水性樹脂が水を吸収することによって体積が急速に膨張し、凹部Aに充満する。この状態で時間が経過すると、空洞充填材F3中に配合されたセメントが硬化することにより強度が発現し、凹部Aが硬化物により充填される。

【0025】
この施工例3によれば、空洞充填材F3が粉体組成物であるから、製造に際して混練等の作業が省略され、また、搬送も空気圧送により容易に行うことができ、簡単な器具である二股ノズル6を用いるのみで粉状の空洞充填材F3と水との急速かつ均一な混合が可能であり、水と混合後直ちに凹部A内に送給されるので、空洞充填材が送給途中で膨張したり硬化したりして詰まりを起こすこともなく、容易かつ円滑に充填作業を完了することができる。

【0026】
前記施工例3において、粉体空洞充填材F3は、吸水性樹脂とセメントに加えて、更にベントナイトを含むことが好ましい。ベントナイトは、比重が比較的小さいので粉体組成物中に均一に分散し、空気圧送等によっても分離しないので安定した空洞充填材が得られる。ベントナイトは、無機塩を含有する水を吸収して膨潤しゲル化する性質があるので、これを含む空洞充填材は、含水しても重力に抗して盛り上げ充填が可能となり、孔3の側壁部等へ流失することなく天端部凹部Aの天部にまで達する充填が可能となる。

【0027】
また粉体空洞充填材F3は、粉塵飛散を抑制するために、例えばプロピレングリコール等の水溶性有機溶剤を添加して湿潤させ、ウエットパウダー状として用いてもよい。または、粉体空洞充填材F3に比較的多量の水溶性有機溶剤及び/又は水を混合し、流動性としてもよい。この場合は、ポンプ等を用いて二股ノズル6の送給管6aからこの流動性の空洞充填材を供給し、他方の送給管6bから水を送給することによって、施工例3と同様な結果が得られる。

【0028】
前記施工例3に用いた二股ノズル6は、要は粉体と水とを混合して送給できるものであればよいので、例えばこの二股ノズル6に代えて乾式吹付け機を用い、そのノズルガンを凹部Aに挿入し、前記の粉体空洞充填材と水とを送給し、双方を合流させて凹部A内に噴射充填してもよい。従って、二股ノズル6に代えて乾式吹付け機を用いる施工方法も本発明に含まれるものである。

【0029】
(施工例4)
この施工例4は、図1に示したトンネルの孔3を掘削するときに、地山(岩盤)Gに生じた天端部の凹部Aを、請求項4に関連した方法を用いて充填する施工例である。この施工例4では、空洞充填材を凹部に充填した後に、必ずしも水により体積を膨張させる操作を必要としない。

【0030】
この施工例においては、基本的に吸水性樹脂とセメントと水とが予め混合され、流動性とされた空洞充填材F4が用いられる。この空洞充填材F4は、吸水性樹脂、セメント及び水を必須成分として含む組成物であって、この組成物の水への流出率は40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下に調整され、かつフロー値は140~210の範囲内に調整されている。

【0031】
この施工例4においては、図5に示すように、矢板部材5の外側から凹部A内にホース9を挿入し、このホース9から前記の流動性空洞充填材F4を凹部A内にポンプ圧送等で送給し、凹部Aを充填する。この空洞充填材F4は、予め水が配合され、フロー値が140~210の範囲内とされているので流動性であり、1本のホース9で凹部に注入充填するだけで別途に水を供給しなくてもセメントが硬化し、硬化物による充填が完了する。

【0032】
この空洞充填材F4は、流出率が40%以下に調整されているので、湧水存在下での凹部充填においても、硬化完了までの期間に水中への流失が抑制でき、その結果、湧水の存在するトンネルの人工構造物と岩盤等との間に凹部が発生した天端部にも、注入時の流失が著しく少なく、地下水や工事現場周辺への粉塵等の環境汚染も起こさず、確実かつ効率的に注入することが可能になる。また、フロー値が140~210に調整されているので可塑性があり、ポンプによる送給が可能であり、しかも送給した後は打設場所に留まるので、凹部の特定な箇所のみを充填する限定充填も可能になる。更に、重力に抗した盛り上げ充填が容易になり、その結果、トンネルでの人工構造物と岩盤や地盤との間に発生した空隙の天端部にも届くようになり、確実かつ効率的に充填作業を完了することができる。

【0033】
前記の空洞充填材F4は、少なくとも吸水性樹脂、セメント及び水を含んでいればよい。この吸水性樹脂は、トンネルの凹部に送給する以前に吸水性樹脂が飽和状態まで吸水して膨潤を完了していてもよいが、加える水量を調節するか、又は調製時点から凹部注入までの時間を調節することによって、吸水性樹脂の膨張が未完了の状態で凹部に注入してもよい。膨張が未完了の状態で注入した場合には、凹部内で更に膨張が進行するので、凹部内の狭いすき間等にも進入し、更に緻密な充填施工が行えるようになる。いずれにしても空洞充填材F4は、充填後に必ずしも水を供給する必要がないので、充填するためのポンプは一つで充分であり、全体の設備をコンパクトにすることができる。このため短時間での施工や小規模の凹部の充填にも容易に適用することができる。

【0034】
(施工例5)この施工例5は、前記施工例4における空洞充填材F4の代わりに、吸水性樹脂とベントナイトとセメントと水とが予め混合され流動性とされた空洞充填材F5を用いる以外は施工例4と同様である。この空洞充填材F5も空洞充填材F4と同様に、水への流出率が40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下に調整され、かつフロー値が140~210の範囲内に調整されている。

【0035】
この施工例5においては、図5において、矢板部材5の外側から凹部A内にホース9を挿入し、このホース9から前記の空洞充填材F4に代えて空洞充填材F5を凹部A内にポンプ圧送等で送給し、凹部Aを充填する。これによって、空洞充填材F5は予め水が配合されているので別途に水を供給しなくてもセメントが硬化し、凹部Aが硬化物によって充填される。

【0036】
この空洞充填材F5はベントナイトを含んでいる。ベントナイトは空洞充填材の骨材として用いられるものであるが、骨材としては比較的比重が小さいので、組成物中に均一に混合することが容易である。更にベントナイトは、無機塩を含有する水を吸収して膨潤し、ゲル化する性質があるので、水を含んだ状態では比重が更に小さく水の比重に近づき、組成物中に一層均一に分布して分離し難くなると共に、流動性が改善され、凹部充填に好適な140~210の範囲内のフロー値が達成し易くなる。また、ベントナイトのゲル化性によって、この空洞充填材F5は、含水状態で重力に抗して盛り上げ充填が可能となり、孔3の側壁部へ流失することなく天端部の凹部Aの天部にまで達する充填ができるようになる。従ってベントナイトを含む空洞充填材F5を充填後に硬化させると、得られた硬化物は緻密で均質となり、強度も大となる。

【0037】
前記の空洞充填材F5における吸水性樹脂、ベントナイト、セメント及び水の配合割合は、水を100とするときの重量比で、吸水性樹脂:ベントナイト:セメントが0.1~5:20~80:10~60の範囲内であることが好ましい。この配合比とすることによって、水への流出率を40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下に調整し、かつフロー値を140~210の範囲内に調整することが一層容易になる。

【0038】
上記の空洞充填材F5は、凹部の充填だけでなく、トンネルの覆工材としてセグメントを用いる場合のセグメントの裏込材としても用いることができる。特に、テールシールを備えないトンネルボーリングマシン等を用いる場合、ベントナイトを含む空洞充填材F5は粘度を高めることができるので、天端側においてもセグメント端部から空洞充填材が流れ出すこともなく、充填作業を良好に行うことが可能となる。

【0039】
以下、本発明の構成要素について更に詳しく説明する。本発明に用いられる吸水性樹脂は、親水性ポリマーの架橋構造体であり、自重の10~1000倍の水を吸収し膨潤する性質を持つものである。通常は、架橋剤の存在下に水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合させて得られるものと、水溶性のエチレン性不飽和モノマーを重合し水溶性ポリマーとしたものを架橋処理して得られるものとがある。

【0040】
前記吸水性樹脂の例としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリアルキレン鎖を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン-ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン-ポリ(メタ)アクリル酸(およびその塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)の反応物、架橋ポリイソブチレン-マレイン酸塩共重合体、ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール-アクリル酸グラフト共重合物等の吸水性ポリマー等を挙げることができる。

【0041】
特にセメントを含む組成物中で高い吸液膨潤性を付与するためには、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、又はそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩と、例えばアクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、又はそれらのアルカリ金属塩等の耐塩性の吸液性ポリマーを与えるモノマー(耐塩性モノマー)とを共重合させることが好ましい。

【0042】
空洞充填材に用いることができる吸水性樹脂の好ましい市販品としては、例えば、商品名「アクアリックCA」、「アクアリックCS」(いずれも日本触媒社製)等を挙げることができる。アクアリックCSは、耐塩性が優れているので、特に好ましい吸水性樹脂である。

【0043】
本発明に用いられるセメントは、一般的にはポルトランドセメントであるが、その他のセメント、例えば白色セメント、アルミナセメント、高炉セメント等も単独で、又は他のセメントと混合して用いることができる。通常、セメントと共に用いられる混和剤についても、公知の混和剤を適宜用いることができる。

【0044】
本発明に用いられるベントナイトは、シリカとアルミナとを主成分とするモンモリロナイトを主とした粘土であり、その平均粒子径が10~100μm、好ましくは30~50μmの微粉末であり、吸水性および膨潤性に富んでいる。ベントナイトは産地や粒径等により物性や膨潤力が異なるため、これらを考慮して選択されるべきである。好ましいベントナイトの例としては、例えば米国ワイオミング州産(吸液倍率は7.5g/g)、栃木産(4.6g/g)等を挙げることができる。

【0045】
本発明に用いる空洞充填材で、少なくとも吸水性樹脂とセメントと水とを含み、必要に応じてベントナイトを含むものについては、セメントの水に対する重量比が1/10~4/10の範囲内であり、かつこの組成物の下記式2で示される吸液指数が1~3の範囲内であることが好ましい。
吸液指数=(吸水性樹脂配合量(g)×吸水性樹脂の吸液倍率+ベントナイト
配合量(g)×ベントナイトの吸液倍率)/水の配合量(g) …式2

【0046】
ここで、吸水性樹脂及びベントナイトの吸液倍率は、下記の方法で測定することができる。先ず、脱イオン水80重量部に普通ポルトランドセメント(トクヤマ社製)20重量部を添加し2時間攪拌する。次いで、東洋濾紙社製No.2濾紙で濾過して20%セメント水ろ液を調製する。ティーバッグに吸水性樹脂粉末またはベントナイト約0.1gをとり、前記の20%セメント水ろ液100gに1時間浸漬した後、ティーバッグを引き上げ重量を測定し、次式3に従って算出する。
吸液倍率=(B-C)/A …式3
A:採取した吸水性樹脂粉末またはベントナイトの重量(g)
B:吸水後のティーバッグを含めた全重量(g)
C:空試験におけるティーバッグを含めた重量(g)

【0047】
本発明の方法に用いる空洞充填材は、前記の各成分の他にも、この分野で一般に用いられている添加材、例えば骨材として使用される砂、磔、土、粘土、フライアッシュ、パーライト、バーミュキュライト等や炭酸カルシウム、微粉末シリカ、アルミナなどの無機粉末、或いは木粉、パルプ、吸水性繊維、ガラス繊維などの無機あるいは有機の繊維質物質やカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の天然あるいは合成増粘剤、および/または水溶性有機溶剤を含有していてもよい。

【0048】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1に係るトンネルの施工方法は、地山にトンネルとなる孔を掘削し、この孔に鋼製支保工を設置し、支保工の外周に矢板部材を設置し、矢板部材の地山側の凹部に、少なくとも吸水性樹脂とセメントとベントナイトとを含む組成物からなる空洞充填材を送給すると共に、この凹部に水を注入し、前記凹部内でこの空洞充填材を吸水・膨張させ、かつ硬化させることとし、空洞充填材の配合を、重量比で水100に対し、吸水性樹脂0.1~5,セメント10~60、ベントナイト20~80としたので、粉体混合器中で安価な粉体原料を均一に混合するだけで空洞充填材が得られ、凹部への送給はホース等を用いる空気搬送等によればよいので簡便かつ効率的であるし、凹部に湧水がなくても容易に膨張・硬化して凹部に充填することができ、ベントナイトを含むものであるから充填後硬化するまでに流水にさらされても流失し難くまた重力に抗して盛り上げ充填が可能である。このとき、必要なら請求項2に基づき、前記空洞充填材に更に水溶性有機溶剤を添加してペースト状またはウエットパウダー状とすれば、粉塵等の発生を抑制することができる。請求項3に係るトンネルの施工方法は、二股ノズルの一方の送給管から前記空洞充填材を送給し、他方の送給管から水を送給し、二股ノズル内でこれらを合流、混合し、混合物を前記注出管から前記凹部内に送給するものであるので、簡単な器具を用いるのみで粉体空洞充填材と水との急速かつ均一な混合が可能であり、水と混合後直ちに凹部内に送給されるので、空洞充填材が送給途中で膨張したり硬化したりして詰まりを起こすこともなく、容易かつ円滑に充填作業を完了することができる。請求項4に係るトンネルの施工方法は、空洞充填材が少なくとも吸水性樹脂とセメントとベントナイトと水とを含む流動性の組成物からなり、この組成物の配合が、重量比で水100に対し、吸水性樹脂0.1~5,セメント10~60、ベントナイト20~80とされ、この組成物中で吸水性樹脂が少なくとも部分的に吸水、膨張したものを凹部内に送給し、凹部内で硬化させるものであるので、1本のホースで空洞充填材を凹部に注入充填するだけで別途に水を供給しなくてもセメントが硬化し、極めて容易に充填が完了する。また、組成物がベントナイトを含むものであるので、充填後硬化するまでに流水にさらされても流失し難く、また、重力に抗して盛り上げ充填が可能になり、施工領域を広げることができる。このとき、必要なら請求項5に基づき、組成物におけるセメントの配合を重量比で水100に対し10~40とし、かつその組成物の吸液指数を1~3の範囲内とすることが好ましい。
図面
【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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