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明細書 :磁性複合型制振材、及びレール制振装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3679232号 (P3679232)
公開番号 特開平11-132273 (P1999-132273A)
登録日 平成17年5月20日(2005.5.20)
発行日 平成17年8月3日(2005.8.3)
公開日 平成11年5月18日(1999.5.18)
発明の名称または考案の名称 磁性複合型制振材、及びレール制振装置
国際特許分類 F16F  1/36      
E01B  5/00      
E01B 19/00      
F16F 15/02      
FI F16F 1/36 C
E01B 5/00
E01B 19/00 B
F16F 15/02 S
請求項の数または発明の数 8
全頁数 26
出願番号 特願平09-311359 (P1997-311359)
出願日 平成9年10月27日(1997.10.27)
審査請求日 平成13年9月21日(2001.9.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000106726
【氏名又は名称】シーアイ化成株式会社
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
発明者または考案者 【氏名】半坂 征則
【氏名】御船 直人
【氏名】佐藤 仁
【氏名】滝野沢 洋臣
【氏名】西本 一夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100105108、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 洋一
審査官 【審査官】藤村 聖子
参考文献・文献 特開平04-203001(JP,A)
特開平05-257485(JP,A)
特開昭52-109206(JP,A)
特開昭51-139004(JP,A)
特開昭52-018613(JP,A)
実開平02-112701(JP,U)
特公平07-051339(JP,B2)
調査した分野 F16F 1/00-6/00
F16F 15/00-15/36
E01B 1/00-37/00
B32B 1/00-35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鋼材からなる鉄道用レールの腹部側面である振動面に磁気吸着させて制振を行う磁性複合型制振材であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなるとともに前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材である1個又は複数個の拘束板と、
残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在して前記拘束板に積層される帯板状部材であってその表面が前記鉄道用レールの腹部側面の凹曲面に合致する凸曲面状に形成され短手方向の両側端部を除く中間部分のみが磁性化されかつ前記振動面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を
備えたことを特徴とする磁性複合型制振材。
【請求項2】
鋼材からなる鉄道用レールの腹部側面及び底部上面である振動面に磁気吸着させて制振を行う磁性複合型制振材であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなるとともに前記鉄道用レールの長手方向に延在する屈曲された帯板状部材である1個又は複数個の拘束板と、
残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在して前記拘束板に積層される帯板状部材であってその表面が前記鉄道用レールの腹部側面及び底部上面の凹曲面に合致する凸曲面状に形成され短手方向の両側端部を除く中間部分のみが磁性化されかつ前記振動面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を
備えたことを特徴とする磁性複合型制振材。
【請求項3】
鋼材からなり凹曲面状の腹部側面を有する鉄道用レールの制振を行うレール制振装置であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材に形成された1個又は複数個の拘束板と、残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記拘束板に積層され表面形状が前記鉄道用レールの腹部側面に合致する凸曲面状で前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯状部材状に形成されかつ前記鉄道用レールの腹部側面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を有する磁性複合型制振材と、
他の腹部側面に磁気吸着している他の磁性複合型制振材へ前記鉄道用レールの底部下方を通してボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、又は前記鉄道用レールの底部にボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、反力を得て、前記鉄道用レールの上下方向又は長手方向への前記磁性複合型制振材の移動を規制する制振材規制具を
備えたことを特徴とするレール制振装置
【請求項4】
請求項3に記載のレール制振装置において、
前記制振材規制具は、前記鉄道用レールの長手方向の端部に取り付けられ、隣接する2つの磁性複合型制振材を同時に規制すること
を特徴とするレール制振装置
【請求項5】
請求項3に記載のレール制振装置において、
前記磁性複合型制振材及び前記制振材規制具のうちのいずれか一方又は両方は、前記磁性複合型制振材の前記鉄道用レールの長手方向の誤差を吸収する誤差吸収手段を有すること
を特徴とするレール制振装置。
【請求項6】
鋼材からなり凹曲面状の腹部側面を有する鉄道用レールの制振を行うレール制振装置であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在する屈曲された帯板状部材に形成された1個又は複数個の拘束板と、残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記拘束板に積層され表面形状が前記鉄道用レールの腹部側面及び底部上面に合致する凸曲面状で前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材に形成されかつ前記鉄道用レールの腹部側面及び底部上面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を有する磁性複合型制振材と、
他の腹部側面及び底部上面に磁気吸着している他の磁性複合型制振材へ前記鉄道用レールの底部下方を通してボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、又は前記鉄道用レールの底部にボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、反力を得て、前記鉄道用レールの上下方向又は長手方向への前記磁性複合型制振材の移動を規制する制振材規制具を
備えたことを特徴とするレール制振装置。
【請求項7】
請求項に記載のレール制振装置において、
前記制振材規制具は、前記鉄道用レールの長手方向の端部に取り付けられ、隣接する2つの磁性複合型制振材を同時に規制すること
を特徴とするレール制振装置。
【請求項8】
請求項6に記載のレール制振装置において、
前記磁性複合型制振材及び前記制振材規制具のうちのいずれか一方又は両方は、前記磁性複合型制振材の前記鉄道用レールの長手方向の誤差を吸収する誤差吸収手段を有すること
を特徴とするレール制振装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性を有する拘束板と、着磁された磁性粉を含有する高分子粘弾性体層とを積層して構成され、曲面を有する振動体に装着可能な磁性複合型制振材、この磁性複合型制振材を用いたレール制振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄道の鋼製桁橋等において、列車走行による騒音や振動を抑制するための制振材として、本願出願人らにより出願された磁性複合型制振材が知られている。この磁性複合型制振材は、剛体からなる拘束板と、着磁された磁性粉を含有する高分子粘弾性体の層とを積層させることにより形成されている(特公平7-51339号公報参照。以下、「剛体板拘束式磁性複合型制振材」という。)。
【0003】
上記の剛体板拘束式磁性複合型制振材においては、高分子粘弾性体の層はそれ自体が磁力を有しているため、高分子粘弾性体の層の側を鋼製桁橋等の表面に当接させることにより、磁力により容易に磁気吸着させることができる。この状態で鋼製桁橋等を振動させると、振動は高分子粘弾性体層内に伝達され、高分子粘弾性体層は鋼製桁橋等と一緒になって振動しようとする。しかし、高分子粘弾性体層には、剛体拘束板が接着等により積層されているので、高分子粘弾性体層は、剛体拘束板によってその動きが拘束される。このため、高分子粘弾性体層内部において振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、熱となって発散されて失われる。したがって、振動エネルギーは、まず高分子粘弾性体層の内部損失により低減される(以下、「内部損失制振効果」という。)。
【0004】
一方、高分子粘弾性体層と鋼製桁橋等との境界面においては、両者は完全に固着されているわけではなく、磁力によって高分子粘弾性体層が鋼製桁橋等に磁気吸着されているだけなので、ある程度以上の外力が作用すると、高分子粘弾性体層は鋼製桁橋等に対して「すべり」又は「ずれ」を起こすことが可能となっている。このため、鋼製桁橋等から高分子粘弾性体層内に振動が伝達され、高分子粘弾性体層が境界面で変形しようとすると、高分子粘弾性体層と鋼製桁橋等との間にはすべり摩擦力が発生し、高分子粘弾性体層はこのすべり摩擦力を受けながら境界面上で振動(変形)することになる。この際、振動エネルギーが熱エネルギーに変換され、熱となって発散されて失われる。したがって、振動エネルギーは、高分子粘弾性体層と鋼製桁橋等との境界面のすべり摩擦によっても低減される(以下、「すべり摩擦制振効果」という。)。
【0005】
上記した剛体板拘束式磁性複合型制振材以前の制振材は、内部損失制振効果のみに頼っていたが、上記した剛体板拘束式磁性複合型制振材においては、すべり摩擦制振効果が内部損失制振効果と同等以上の役割を果たしており、両効果の相乗作用により、それまでの制振材に比べより優れた制振効果を発揮することが実験等によっても確認されている。
【0006】
また、それまでの制振材が接着剤等によって振動体に取り付けられていたのに対し、上記した剛体板拘束式磁性複合型制振材においては、振動体が鋼板等によって形成されていれば、磁力により磁気吸着されて支持されるので、接着剤等の塗布に伴う作業が一切不要となり、それまでの制振材に比べ振動体への設置施工が非常に簡易になる。
【0007】
さらに、それまでの制振材の制振効果は、高分子粘弾性体層の内部におけるエネルギーの損失によっていたが、このようなエネルギー損失を表わす損失係数は、ある所定の温度においては高いピーク値を持つが、その温度をはずれると急に減少する、という温度依存性を有していた。しかし、上記した剛体板拘束式磁性複合型制振材においては、すべり摩擦による制振効果も大きく、このすべり摩擦は広い温度範囲でほぼ一定値であるため、温度により制振効果が低減することがなく、内部損失制振効果の温度依存性が緩和され、それまでの制振材に比べ幅広い温度範囲で高い制振性能を発揮することが実験等においても確認されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した剛体板拘束式磁性複合型制振材においては、振動体が曲面状の振動面を有する場合で、剛体拘束板がセラミックスのような脆性材料の場合には、平板状の制振材を製作した後にプレス加工等により曲面状に成形しようとすると剛体拘束板が破壊してしまうおそれがあるため、あらかじめ曲面状に形成された剛体拘束板の曲面上に高分子粘弾性体層を形成する必要があるが、このような方法では、均一な高分子粘弾性体層を形成することは困難であった。
【0009】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、曲面状の振動面を有する振動体の制振が可能な磁性複合型制振材、この磁性複合型制振材を用いたレール制振装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る磁性複合型制振材は、
鋼材からなる鉄道用レールの腹部側面である振動面に磁気吸着させて制振を行う磁性複合型制振材であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなるとともに前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材である1個又は複数個の拘束板と、
残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在して前記拘束板に積層される帯板状部材であってその表面が前記鉄道用レールの腹部側面の凹曲面に合致する凸曲面状に形成され短手方向の両側端部を除く中間部分のみが磁性化されかつ前記振動面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を
備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る磁性複合型制振材は、
鋼材からなる鉄道用レールの腹部側面及び底部上面である振動面に磁気吸着させて制振を行う磁性複合型制振材であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなるとともに前記鉄道用レールの長手方向に延在する屈曲された帯板状部材である1個又は複数個の拘束板と、
残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在して前記拘束板に積層される帯板状部材であってその表面が前記鉄道用レールの腹部側面及び底部上面の凹曲面に合致する凸曲面状に形成され短手方向の両側端部を除く中間部分のみが磁性化されかつ前記振動面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を
備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に係るレール制振装置は、
鋼材からなり凹曲面状の腹部側面を有する鉄道用レールの制振を行うレール制振装置であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材に形成された1個又は複数個の拘束板と、残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記拘束板に積層され表面形状が前記鉄道用レールの腹部側面に合致する凸曲面状で前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯状部材状に形成されかつ前記鉄道用レールの腹部側面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を有する磁性複合型制振材と、
他の腹部側面に磁気吸着している他の磁性複合型制振材へ前記鉄道用レールの底部下方を通してボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、又は前記鉄道用レールの底部にボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、反力を得て、前記鉄道用レールの上下方向又は長手方向への前記磁性複合型制振材の移動を規制する制振材規制具を
備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に係るレール制振装置は、
請求項3に記載のレール制振装置において、
前記制振材規制具は、前記鉄道用レールの長手方向の端部に取り付けられ、隣接する2つの磁性複合型制振材を同時に規制すること
を特徴とする
【0014】
また、本発明の請求項5に係るレール制振装置は、
請求項3に記載のレール制振装置において、
前記磁性複合型制振材及び前記制振材規制具のうちのいずれか一方又は両方は、前記磁性複合型制振材の前記鉄道用レールの長手方向の誤差を吸収する誤差吸収手段を有すること
を特徴とする
【0015】
また、本発明の請求項6に係るレール制振装置は、
鋼材からなり凹曲面状の腹部側面を有する鉄道用レールの制振を行うレール制振装置であって、
ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなり前記鉄道用レールの長手方向に延在する屈曲された帯板状部材に形成された1個又は複数個の拘束板と、残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり前記拘束板に積層され表面形状が前記鉄道用レールの腹部側面及び底部上面に合致する凸曲面状で前記鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材に形成されかつ前記鉄道用レールの腹部側面及び底部上面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を有する磁性複合型制振材と、
他の腹部側面及び底部上面に磁気吸着している他の磁性複合型制振材へ前記鉄道用レールの底部下方を通してボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、又は前記鉄道用レールの底部にボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、反力を得て、前記鉄道用レールの上下方向又は長手方向への前記磁性複合型制振材の移動を規制する制振材規制具を
備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項7に係るレール制振装置は、
請求項6に記載のレール制振装置において、
前記制振材規制具は、前記鉄道用レールの長手方向の端部に取り付けられ、隣接する2つの磁性複合型制振材を同時に規制すること
を特徴とする
【0017】
また、本発明の請求項8に係るレール制振装置は、
請求項6に記載のレール制振装置において、
前記磁性複合型制振材及び前記制振材規制具のうちのいずれか一方又は両方は、前記磁性複合型制振材の前記鉄道用レールの長手方向の誤差を吸収する誤差吸収手段を有すること
を特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(1)第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態であるレール制振装置の構成を示す図であり、図1(A)は断面図を、図1(B)は側面図を、それぞれ示している。また、図2は、図1に示すレール制振装置における磁性複合型制振材のさらに詳細な構成を示す図であり、図2(A)は拘束部の側から見た側面図を、図2(B)は図2(A)における長手方向端部付近の拡大図を、図2(C)は図2(B)におけるA-A断面図を、図2(D)は図2(B)におけるB-B断面図を、それぞれ示している。また、図3は、図1に示す磁性複合型制振材の造方法を示す概念図である。
【0023】
図1に示すように、このレール制振装置101は、鉄道用のレールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の各側面にそれぞれ取り付けられる磁性複合型制振材11A,11Aと、磁性複合型制振材11A,11Aの移動を規制する制振材規制具21Aを備えて構成されている。
【0024】
ここに、レールRは、強磁性体である鋼からなり、まくらぎ(図示せず)上にレール締結装置(図示せず)によって締結されている。図1(A)及び図1(B)は、まくらぎとまくらぎの中間に位置するレールを図示している。レールR上を列車の車輪(図示せず)が走行すると振動が発生し、レールRは振動体に相当している。また、レール腹部R2の各側面は、鉄道の諸規格で規定される所定の凹曲面状、例えば所定の曲率半径の円筒曲面の組合わせによって形成されており、振動面に相当している。
【0025】
図2に示すように、磁性複合型制振材11Aは、弾性材料である鋼板等からなり帯板状部材に形成された拘束板14Aと、磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料である磁性ゴム等からなり拘束板14A上に積層される帯板状の磁性層15を有している。
【0026】
拘束板14Aは、一方向に延在する板状部14aと、板状部14aの短手方向の両端から直角に屈曲する屈曲部14b,14bを有している(図2(C),図2(D)参照)。また、板状部14aの長手方向の両端付近には、円形断面の被嵌合孔14c,14cが設けられている(図2(A),図2(B),図2(D)参照)。
【0027】
また、磁性層15は、表面が凸曲面状に形成されており、この凸曲面は、レール腹部R2の側面の凹曲面に合致するように設定されている(図1(A),図2(C),図2(D)参照)。また、磁性層15の背面は、拘束板14Aの板状部14a及び屈曲部14b,14bが形成する凹部に密着されて積層されている(図2(C),図2(D)参照)。また、拘束板14Aの被嵌合孔14c,14cの箇所では磁性層15の背面が外部に露出している(図2(A),図2(B),図2(D)参照)。
【0028】
上記した磁性複合型制振材11AのレールRの長手方向の長さは、レールRと隣接するレールRとをつなぐ継目板(図示せず)の端部間の距離よりも短い長さの範囲内であれば任意の長さが選択可能である。また、磁性複合型制振材11AのレールRの直角方向の長さは、レール腹部R2の凹曲面部の範囲内であれば任意の長さが選択可能である。
【0029】
また、制振材規制具21Aは、図1に示すように、2つの規制片22,22と、これらの規制片22,22を連結するボルト24Aと、ボルト24Aに螺合可能なナット25と、規制片22と磁性複合型制振材11Aとの間に挿入配置するスペーサー23を有している。
【0030】
規制片22は、図1における上下方向に延在する2つの垂直板部22a及び22cと、これらの垂直板部22a,22cをつなぐ斜板部22bを有しており、全体として偏平かつ直線的なS字状に形成されている。また、垂直板部22aには、板面から垂直に短い円柱状の嵌合凸部22dが突設されている。また、垂直板部22cには、ボルト24Aの外径と同等の内径の円形断面を有するボルト挿通孔22eが設けられている。また、垂直部22cの厚みが少ない場合、ボルト24Aの外径と同等の内径を有する円筒部材を設け、ボルト24Aの長手方向に沿ってスライドする構成としてもよい。
【0031】
規制片22の嵌合凸部22dの中心からボルト挿通孔22eの中心までの長さは、レール腹部R2の中央付近からレール底部R3までの長さよりやや長い値以上であれば任意の長さが選択可能である。また、規制片22の嵌合凸部22dの先端面から垂直板部22cの外面までの長さは、レール腹部R2の側面に取り付けた磁性複合型制振材11Aの背面付近からレール底部R3の突端面までの長さよりやや長い値以上であれば任意の長さが選択可能である。また、ボルト24Aの長さは、垂下した状態の2つの垂直板部22cの外面間の長さよりやや長い値以上であれば任意の長さが選択可能である。
【0032】
また、スペーサー23は、円環状に形成されており、内孔の内壁から直立する小円筒部を有している。この小円筒部の外径値は、上記した磁性複合型制振材11Aの被嵌合孔14cの内径値よりもやや小さく設定されている。また、規制片22の嵌合凸部22dの外径値は、スペーサー23の小円筒部の内径値よりもやや小さく設定されている。
【0033】
上記のような構成により、磁性複合型制振材11Aの長手方向をレールRの長手方向と一致させるようにして、磁性層15の凸曲面状の表面をレール腹部R2の側面に密着させると、磁性層15の磁力により磁性複合型制振材11Aはレール腹部R2の一側面に磁気吸着される。同様にして、レール腹部R2の他の側面の同一位置に他の磁性複合型制振材11Aを磁気吸着させる。
【0034】
その後、それぞれの磁性複合型制振材11Aの被嵌合孔14cにスペーサー23の小円筒部を挿入し、スペーサー23の内孔に規制片22の嵌合凸部22dを挿入する。その後、それぞれの規制片22の垂直板部22cが垂下するようにし、一方のボルト挿通孔22eから他方のボルト挿通孔22eに向けてボルト24Aを挿通し、ナット25をボルト24Aに螺合させて締め付ける(図1(A),図1(B)参照)。
【0035】
上記のようにしてレール制振装置101をレール腹部R2の側面に取り付けると、列車の車輪(図示せず)の走行によりレールRが振動した場合、その振動エネルギーを、磁性複合型制振材11Aの拘束板14Aにより拘束される磁性層15の内部において損失させるとともに、レール腹部R2の側面と磁性層15との境界におけるすべり摩擦によって損失させることができ、レール底部R3からまくらぎ(図示せず)へ伝達される振動を低く抑制することができる。
【0036】
また、制振材規制具21Aにより、磁性複合型制振材11A,11Aは、レールの上下方向(レール頭部R1又はレール底部R3へ向う方向)、又はレールの長手方向のいずれへも微少量しか移動できないように規制される。したがって、磁性複合型制振材11Aに外力が加わった場合でも、レール腹部R2の側面から外れることがない。
【0037】
また、磁性複合型制振材11Aの短手方向の端部、すなわち図1における磁性複合型制振材11Aの上端又は下端付近では、磁性層15の背後の鋼製の拘束板14Aが屈曲部14bで示すように磁性層15側へ屈曲しているため、上端又は下端付近においても磁気遮蔽効果が生じている。このため、列車の車輪(図示せず)とレールRとの摩擦によって発生する鉄粉や、鋳鉄等からなるブレーキ用制輪子からの鉄粉が磁性複合型制振材11Aの短手方向の端部に磁気吸着されて集積し、汚れやサビの原因となることがない。
【0038】
上記した制振材規制具21Aは、レール腹部R2の両側面の同一位置に配置された2個の磁性複合型制振材11A,11Aごとに少なくとも2箇所以上配置されればよい。
【0039】
次に、上記した磁性複合型制振材11Aの製造方法について、図3を参照しつつ説明する。図3においては、被嵌合孔14cを含む断面を図示している。
【0040】
まず、弾性材料を帯板状に加工するとともに、短手方向の両端部を直角に折り曲げて屈曲部14b,14bを形成し、長手方向の両端付近に円形断面の被嵌合孔14c,14cを形成して、拘束板14Aを製作する(図3(A))。
【0041】
拘束板14Aに用いる材料としては、ヤング率300kgf/mm2 以上の弾性、好ましくはヤング率500kgf/mm2 以上の弾性を有し、かつ塑性を有するものが使用可能である。
【0042】
拘束板14Aのヤング率が300kgf/mm2 より小さいと、剛性が小さすぎて磁性層への拘束力が小さくなるため、磁性層内部での変形が起こりにくくなり内部損失による制振性能が低下する。また、磁性層への拘束力が小さくなるため、振動体の振動に制振材全体が容易に追随してしまい、振動体と磁性層との境界でのすべり摩擦が起こりにくくなり、本発明の有利な効果である幅広い温度範囲での制振性能を発揮することができない。
【0043】
拘束板14Aの材料としては、例えば、炭素鋼板、合板鋼板、ステンレス鋼板、冷間圧延鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の鋼板が挙げられる。また、銅板、銅合金板等の銅系板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等のアルミニウム系板なども使用可能である。また、上記の弾性、塑性の条件を満足すれば、他の金属からなる板、繊維強化金属(Fiber Reinforced Metal:FRM)からなる板等も使用可能である。
【0044】
これらの金属板材の厚みとしては、0.1mm~5.0mm程度のものが使用可能である。金属板材の厚みは、金属板材のヤング率と関連する。金属板材のヤング率が上記の値の範囲内でかなり大きい場合には、厚みを薄くしても板の剛性は確保される。一方、金属板材のヤング率が上記の値の範囲内ではあるが小さい値の場合には、ある程度厚みを厚くして板の剛性を確保する必要がある。
【0045】
また、上記の弾性、塑性の条件を満足すれば、金属材料以外の材料からなる拘束板も使用可能である。例えば、合成樹脂材料であり、この例としては、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を含む熱硬化性樹脂、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂等を含む熱可塑性樹脂、あるいはまたこれらを母材(マトリクス)としガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド樹脂(アラミド樹脂)繊維等の合成樹脂繊維によって補強された繊維強化合成樹脂(Fiber Reinforced Plastics:FRP )などが挙げられる。これらの合成樹脂材料は、金属材料と比べ、一般にヤング率が小さいため、板材の厚みは、金属板材の場合より厚くする必要があり、0.2mm~5.0mm程度のものが使用可能である。
【0046】
上記した拘束板14Aの一面14d、すなわち図3(A)における下面(以下、「接着面」という。)に、後述する接着剤を塗布し、拘束板14Aと略同一の平面投影形状を有する平面状のシート材15′(図3(B))を接着して積層した後に成型し、表面が凸曲面状の曲面板状部材15”と拘束板14Aとの積層部材を形成する(図3(C))。その後、曲面板状部材15”内の磁性粉を着磁して磁性層15を形成する(図3(D))。以下、この方式を「シート材接着方式」と呼ぶ。
【0047】
以下にこのシート材接着方式による磁性複合型制振材の製造方法について説明する。
【0048】
磁性層15は、高分子粘弾性材料からなる層の内部に、残留磁束密度25~15000ガウス程度、好ましくは残留磁束密度100~10000ガウス程度に磁性化された磁性粉(図示せず)が分散混合されて形成されている。
【0049】
磁性粉の残留磁束密度が25ガウスより小さいと、振動体への制振材の磁気吸着力が不足するため、振動時に脱落、ずれ、ばたつき等が発生し、制振作用が十分発揮できない。一方、磁性粉の残留磁束密度が15000ガウスより大きいと、振動体への制振材の磁気吸着力が強すぎるため、振動時にすべり摩擦が起こりにくくなり、本発明の有利な効果である幅広い温度範囲での制振性能を発揮することができない。
【0050】
粘弾性材料とは、粘性と弾性の両方を兼ね備えた性質を有する材料である。一般に、外力を加えて変形をさせたときに、観測時間の長い時間領域では粘性体としての性質を示し、観測時間の短い時間領域では弾性体としての性質を示す。このような高分子粘弾性材料としては、ゴム系材料と、熱可塑性エラストマーと、熱可塑性樹脂が使用可能である。ゴム系材料としては、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、ポリイソブチレンゴム、ハロゲン化ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM及びEPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM及びANM)、シリコンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、エピクロルヒドリンゴム(CO及びECO)、ウレタンゴム(U)、ポリノルボルネンゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)等が使用可能である。
【0051】
ゴム系材料は、その種類、配合、加硫の有無によって、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐溶剤性、難燃性等の耐性に差がある。したがって、制振すべき振動体の環境条件によって適宜選択する必要がある。また、ゴム系材料の場合は、後述する熱可塑性合成樹脂等に比べ、加硫工程が増えるものの、高温で軟化しにくく耐熱性に優れているという利点を有しているため、用途により適宜使いわければよい。
【0052】
また、熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer :TPE)系材料としては、例えば、スチレン系統TPE(TPS)、オレフィン系TPE(TPO)、塩ビ系TPE、ウレタン系TPE(TPU)、エステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE、1,2-ポリブタジエン系TPE等が使用可能である。
【0053】
さらに、熱可塑性樹脂系材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフォン、ポリブチレンテレフタレート、塩化ビニル、EVA樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、エポキシ樹脂等が使用可能である。
【0054】
また、磁性粉としては、フェライト系磁性粉と希土類系磁性粉が使用可能である。フェライト系磁性粉としては、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト等のフェライト系物質の粉末が挙げられる。また、希土類系磁性粉としては、1-5型サマリウム・コバルト、2-17型サマリウム・コバルト等のサマリウム・コバルト系物質の粉末、あるいはネオジウム・鉄・ボロン系物質の粉末等が挙げられる。これらの磁性粉は、高分子粘弾性材料の製造時、特に、原料の練混ぜ時に混合される。磁性粉の高分子粘弾性材料への充填率は、20~100重量%程度、好ましくは30~90重量%程度とする。具体的には、フェライト系磁性粉の場合は、40~95重量%程度が好ましい。また、希土類系磁性粉の場合には、フェライト系磁性粉に比べて磁力が強いので、フェライト系磁性粉の場合の充填率よりも低い充填率でも十分である。
【0055】
磁性粉の高分子粘弾性材料への充填率が少なすぎると、振動体への制振材の磁気吸着力が不足するため、上述したように制振作用が十分発揮できない。一方、磁性粉の高分子粘弾性材料への充填率が多すぎると、振動体への制振材の磁気吸着力が強くなりすぎ、上述したように制振性能がかえって低下するほか、高分子粘弾性材料の粘弾性が損なわれ、この意味でも好ましくない。
【0056】
磁性粉の混合後、上記の高分子粘弾性材料は、プレス成型、押出し成型、インジェクション(射出)成型、カレンダー成型等によりシート材15′に成型される(図3(B)参照)。高分子粘弾性材料としてゴム系ポリマーを用いる場合には、シート材15′形成時には、非加硫状態とする。高分子粘弾性材料として熱可塑性エラストマー、あるいは熱可塑性樹脂を用いる場合も、加硫は行わない。なお、高分子粘弾性材料中には磁性粉が混合されており、シート材の厚みが薄いとシート状に成型する場合に高分子粘弾性材料の流れが悪いため、厚みが0.4mm程度以下の磁性層を単体のシート材として形成することは困難であり、このような場合には後述するコート法が適している。
【0057】
上記した拘束板14Aの接着面14dにシート材15′を接着して積層するために、拘束板14Aの接着面14dの表面処理を行う必要がある。この表面処理としては、油脂分等を除去し接着面を清浄化するための表面脱脂処理、次いで塗布される接着剤の接着力を高めるための粗面化処理、次いで接着面の防錆、接着力のさらなる向上のために必要に応じて化成処理を行う。
【0058】
拘束板14Aが金属板の場合には、脱脂処理の方法として、溶剤脱脂法、アルカリ脱脂法、電解脱脂法、超音波脱脂法、蒸気洗浄法等が用いられる。また、粗面化処理の方法として、サンドブラスト法、スコッチブライト法、サンドペーパー研磨法等が用いられる。化成処理は、金属板の種類によって異なり、冷間圧延鋼板の場合にはリン酸塩(例えばリン酸鉄)の被膜を、ステンレス鋼板の場合にはシュウ酸塩被膜や亜鉛メッキ又は銅メッキ等の被膜を形成させる。上記した脱脂処理、粗面化処理、化成処理は、金属板の汚れが少ないこと、後述するプライマーの接着性、磁性層を構成する高分子粘弾性体の高分子の種類とその形成方法によっては、1工程又は2工程以上を省略することが可能である。また、拘束板が合成樹脂板の場合には、脱脂処理、粗面化処理、化成処理は、金属板の場合に準じる。
【0059】
次に、上記の化成処理によって拘束板14Aの接着面14d上に形成された被膜の上に接着剤を塗布し、接着剤層を形成する。
【0060】
この接着剤としては、反応型アクリル系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、α-オレフィン-無水マレイン酸樹脂系接着剤、水性高分子-イソシアネート系接着剤、変形アクリル樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン型接着剤、酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂系エマルジョン型接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン型接着剤、EVA系ホットメルト型接着剤、エラストマー系ホットメルト型接着剤、ポリアミド系ホットメルト型接着剤、合成ゴム系溶剤型接着剤、合成ゴム系ラテックス型接着剤等の接着剤や、溶剤型ゴム系接着剤、水系型ゴム系接着剤、溶剤型アクリル系接着剤、水系型アクリル系接着剤、液状硬化型接着剤等の感圧接着剤等が使用可能である。
【0061】
また、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フッ素樹脂系等の、高融点の熱融着性合成樹脂フィルムも使用可能である。
【0062】
あるいは、溶剤型アクリル樹脂系粘着剤、溶液型ゴム系粘着剤、水系型ゴム系粘着剤、水系型アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ホットメルト系粘着剤、液状硬化型粘着剤等も使用可能である。上記の溶液型ゴム系粘着剤としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)等を用いたものなどが挙げられる。また、水系型ゴム系粘着剤としては、天然ゴムラテックス、SBRラテックス、クロロプレンラテックス等のラテックスを使用したものなどが挙げられる。
【0063】
次に、上記のようにして拘束板14Aの接着面14dにシート材15′が接着された部材のシート表面を、成型装置51によって所定の凸曲面状に成型する(図3(C)参照)。成型装置51は、上型53と下型55を有している。上型には拘束板14Aの背面形状が形成されており、被嵌合孔14cと合致する凸部53cが形成されている。また、下型55には、磁性層の表面となる凸曲面を形成するための凹曲面部55aが形成されている。高分子粘弾性材料がゴム系材料の場合は、この成型時に加硫を行う(加硫条件は通常170°Cで20分間程度)。
【0064】
高分子粘弾性体内の磁性粉への着磁は、上記した曲面板状部材15”が拘束板14A上に形成された後に行う。着磁を行う場合には、片面多極着磁型コンデンサ着磁装置61を使用する。この装置61では、強磁性体からなる本体61aの一面に、磁性層の表面となる凸曲面と合致する凹曲面部61bが形成され、凹曲面部61b上に、溝61cが1~10mm程度の間隔で平行形成し、溝61c内に導線61dが配置されて着磁ヨークが構成されている。
【0065】
着磁は、曲面板状部材15”を着磁ヨークに密着させ、各導線61dに交互に逆方向となる大電流をコンデンサを用いて瞬間的に通電することにより行う。これにより、各導線61dに密接していた部分が交互に付近がN磁極又はS磁極に着磁され、磁性層内部の磁性粉が磁性化される(図3(D)参照)。
【0066】
上記した着磁装置61における導線61dの間隔により、着磁後の磁性層の磁力を調整することができるため、制振を行う振動体の表面の荒さや塗装厚等に応じて適宜設定することが望ましい。
【0067】
上記の「シート材接着方式」以外に、拘束板14A上に高分子粘弾性材料を直接シート状に形成し磁性層を形成することも可能である。以下、この方式を「シート材直接形成方式」と呼び、以下にその手順について説明する。
【0068】
このシート材直接形成方式としては、拘束板14A上に形成する磁性層の高分子粘弾性材料がゴム系材料で、接着する拘束板14Aが金属板の場合には、上記の化成処理によって拘束板14Aの接着面14d上に形成された被膜の上に、例えばフェノール樹脂系プライマーをコーター等により塗布し、その後焼付け処理(通常、130~180°Cで1~10分間程度)によって約5~20μm程度の厚みのプライマー層を形成し、このプライマー層上で未加硫ゴムコンパウンドをプレス成型、インジェクション成型等の方法で加硫接着する方法がある。
【0069】
あるいは、他のシート材直接形成方式として、上記と同様に金属製の拘束板14Aとゴム系材料の磁性層の場合に、上記の化成処理によって拘束板14Aの接着面14d上に形成された被膜の上に、例えばフェノール系プライマー等を上記と同様にして焼付け処理によってプライマー層を形成し、未加硫ゴムを溶剤に溶解させたゴム液をコーター等によりプライマー層上にコートした後に乾燥(例えば、60~130°C程度)させて溶剤を揮発させ、その後に加硫(例えば、160~240°Cで5~30分間程度)を行い、磁性層を形成するという方法(「コート法」という。)がある。
【0070】
また、上記したコート法では、コートされるゴム液の厚みが厚いとゴム液が垂れたり、乾燥に長時間が必要であったり、ゴム液中の溶剤が残存しやすいため、厚みが0.5mm以下程度の磁性層を形成する場合に適しており、これ以上の厚みの磁性層の場合にはシート材接着方式等が適している。
【0071】
あるいは、さらに他のシート材直接形成方式として、拘束板14Aが金属製で、高分子粘弾性材料が熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂の場合に、上記の化成処理によって拘束板14Aの接着面14d上に被膜が形成された後、適当な隙間を有する金型等を用い、不定形の熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂を金属製拘束板14A上で熱可塑性エラストマー等の融点以上の温度でプレスしてシート状に成型し、次いで融点以下に冷却することにより、金属製拘束板14Aの上に磁性層を形成するという方法もある。この場合には、接着剤を用いなくても、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂自身の接着力により磁性層が金属製拘束板14Aに接着される。
【0072】
上記したような各種のシート材直接形成方式によっても、拘束板14Aにシート材15′が積層された曲面板状部材を形成することができる。その後の成型工程は図4(C)の工程と同様であり、着磁工程は、図4(D)の工程と同様である。
【0073】
(2)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2実施形態であるレール制振装置の構成を示す図であり、図4(A)は断面図を、図4(B)はC-C断面図を、それぞれ示している。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0074】
この第2実施形態のレール制振装置102は、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の側面に取り付けられる磁性複合型制振材11Aと、磁性複合型制振材11Aの移動を規制する制振材規制具21Bを備えて構成されている。
【0075】
この第2実施形態のレール制振装置102が第1実施形態のレール制振装置101と異なる点は、異なる制振材規制具21Bを備えた点である。
【0076】
制振材規制具21Bは、図4(A)に示すように、1つの規制片22と、係止片26と、規制片22及び係止片26を連結するボルト24Aと、ボルト24Aに螺合可能なナット25と、規制片22と磁性複合型制振材11Aとの間に挿入配置するスペーサー23を有している。これらのうち、係止片26以外の構成要素は、第1実施形態の場合と同様である。
【0077】
係止片26は、図4(A)における上下方向に延在する垂直板部26cと、この垂直板部26cに接続する斜板部26bを有しており、全体として略L字状に形成されている。また、垂直板部26cには、ボルト24Aの外径よりも大きな内径の円形断面を有するボルト挿通孔26eが設けられている。
【0078】
上記のような構成により、磁性複合型制振材11Aの長手方向をレールRの長手方向と一致させるようにして、磁性層15の凸曲面状の表面をレール腹部R2の側面に密着させると、磁性層15の磁力により磁性複合型制振材11Aはレール腹部R2の一側面に磁気吸着される。
【0079】
その後、磁性複合型制振材11Aの被嵌合孔14cにスペーサー23の小円筒部を挿入し、スペーサー23の内孔に規制片22の嵌合凸部22dを挿入する。その後、規制片22の垂直板部22cが垂下するようにし、かつ係止片26の斜板部26bを規制片22の側とは逆側のレール底部R3に係止させて垂直板部26cを垂下させ、一方のボルト挿通孔、例えば26eから他方のボルト挿通孔、例えば22eに向けてボルト24Aを挿通し、ナット25をボルト24Aに螺合させて締め付ける(図4(A)参照)。
【0080】
したがって、この第2実施形態では、第1実施形態の場合とは異なり、制振材規制具21Bは、2つの磁性複合型制振材11A,11Aを、レール腹部R2の側面の同一位置に磁気吸着させる必要はなく、レール腹部R2の片側の側面ごとに任意の位置に取り付け可能である。このため、図4(B)に示すように、レール長手方向に隣接する2つの磁性複合型制振材11Aの間の継目部Jの位置がレール腹部R2の同一位置となることを防止することができ、制振性能をより向上できる。
【0081】
(3)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、本発明の第3実施形態であるレール制振装置の構成を示す断面図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0082】
この第3実施形態のレール制振装置103は、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の側面に取り付けられる磁性複合型制振材11Aと、磁性複合型制振材11Aの移動を規制する制振材規制具21Cを備えて構成されている。
【0083】
この第3実施形態のレール制振装置103は、第2実施形態のレール制振装置の変形例であり、第2実施形態における係止片26をボルト24の頭部に溶接等により結合して係止片付きボルト24Bとしたものである。他の構成要素、及び制振作用は第2実施形態の場合と同様である。
【0084】
(4)第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図6は、本発明の第4実施形態であるレール制振装置の構成を示す断面図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0085】
この第4実施形態のレール制振装置104は、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の側面に取り付けられる磁性複合型制振材11Bと、磁性複合型制振材11Bの移動を規制する制振材規制具21Dを備えて構成されている。
【0086】
この第4実施形態のレール制振装置104は、第3実施形態のレール制振装置の変形例であり、第3実施形態と異なる点は、異なる磁性複合型制振材11Bを用いた点、及び第3実施形態における制振材規制具21Cのかわりに、ステンレス鋼等のバネ鋼材により一体的に形成される制振材規制具21Dを用いた点である。
【0087】
磁性複合型制振材11Bが第1実施形態の磁性複合型制振材11Aと異なる点は、拘束板14Bに、第1実施形態における被嵌合孔14cが設けられていない点であり、その他の点は第1実施形態の磁性複合型制振材11Aと同様である。
【0088】
また、制振材規制具21Dは、垂直板部27bと、垂直板部27bの上方に突設された上方規制部27aと、垂直板部27bの下方に突設された下方規制部27cと、垂直板部27bの下方に接続する係止用曲面部27dと、係止用曲面部27dに接続する平板部27eと、平板部27eに接続する係止用端部27fを有している。上記の上方規制部27aと下方規制部27cの距離は、磁性複合型制振材11Bの短手方向の長さよりやや長く設定されている。
【0089】
上記のような構成により、磁性複合型制振材11Bの長手方向をレールRの長手方向と一致させるようにして、磁性層15の凸曲面状の表面をレール腹部R2の側面に密着させると、磁性層15の磁力により磁性複合型制振材11Bはレール腹部R2の一側面に磁気吸着される。
【0090】
その後、制振材規制具21Dを曲げて開くようにし、係止用端部27fを磁性複合型制振材11Bが磁気吸着されている側とは逆側のレール底部R3に係止させ、平板部27eをレール底部R3の底面にあてがい、係止用曲面部27dを磁性複合型制振材11Bが磁気吸着されている側のレール底部R3に係止させ、磁気吸着されている磁性複合型制振材11Bの背部を、制振材規制具21Dの上方規制部27aと下方規制部27cの間に嵌め込む(図6参照)。
【0091】
このようにすれば、制振材規制具21Dを、バネ鋼材の弾性反発作用により、レール底部R3に係止させることができ、かつ上方規制部27a及び下方規制部27cにより、磁性複合型制振材11Bが、レールの上下方向、又はレールの長手方向へ移動することを規制することができる。また、第2,3実施形態と同様に、制振材規制具21Dは、レール腹部R2の片側の側面ごとに任意の位置に取り付け可能であり、レール長手方向に隣接する2つの磁性複合型制振材の間の継目部の位置がレール腹部R2の同一位置となることを防止することができ、制振性能をより向上できる、という作用も有している。
【0092】
図7は、図6に示すレール制振装置における制振材規制具の変化例を説明する図である。図7(A)は、下方規制部として、L字断面形状の部材27c1を溶接により垂直板部27bの下方に接合して構成した制振材規制具21D1を示している。
【0093】
また、図7(B)は、垂直板部27bに半円形切れ目を入れ、これを折り返すことによって下方規制部27c2を形成した制振材規制具27D2を示している。
【0094】
(5)第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
図8は、本発明の第5実施形態であるレール制振装置の構成を示す図であり、図8(A)は断面図を、図8(B)は側面図を、それぞれ示している。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0095】
この第5実施形態のレール制振装置105は、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の各側面にそれぞれ取り付けられる磁性複合型制振材11C,11Cと、磁性複合型制振材11C,11Cの移動を規制する制振材規制具21Eを備えて構成されている。
【0096】
この第5実施形態のレール制振装置105が第1実施形態のレール制振装置101と異なる点は、異なる磁性複合型制振材11Cを備えた点、及び異なる制振材規制具21Eを備えた点である。
【0097】
磁性複合型制振材11Cが第1実施形態の磁性複合型制振材11Aと異なる点は、拘束板14Cに、第1実施形態とは異なり、長円形断面の被嵌合孔14eが設けられている点であり、その他の点は第1実施形態の磁性複合型制振材11Aと同様である。
【0098】
制振材規制具21Eは、図8に示すように、2つの規制片28,28と、これらの規制片28,28を連結するボルト24Aと、ボルト24Aに螺合可能なナット25と、規制片22と磁性複合型制振材11Aとの間に挿入配置するスペーサー23を有している。これらの要素のうち、係止片28以外の構成要素は、第1実施形態の場合と同様である。
【0099】
規制片28は、図8における上下方向に延在する2つの垂直板部28a及び28cと、これらの垂直板部28a,28cをつなぐ斜板部28bを有しており、全体として偏平かつ直線的なS字状に形成されている。また、垂直板部28aには、板面から垂直に短い円柱状の嵌合凸部28dが2個、レール長手方向に並べて突設されている。また、垂直板部28cには、ボルト24Aの外径よりも大きな内径の円形断面を有するボルト挿通孔22eが2個、レール長手方向に並べて開設されている。
【0100】
規制片28の嵌合凸部28dの中心からボルト挿通孔28eの中心までの長さは、レール腹部R2の中央付近からレール底部R3までの長さよりやや長い値以上であれば任意の長さが選択可能である。また、規制片28の嵌合凸部28dの先端面から垂直板部28cの外面までの長さは、レール腹部R2の側面に取り付けた磁性複合型制振材11Cの背面付近からレール底部R3の突端面までの長さよりやや長い値以上であれば任意の長さが選択可能である。また、ボルト24Aの長さは、垂下した状態の2つの垂直板部28cの外面間の長さよりやや長い値以上であれば任意の長さが選択可能である。また、規制片28の2つの嵌合凸部28d間の距離は、磁性複合型制振材11Cをレール長手方向に隣接させた場合の隣接する被嵌合孔14eの中心間隔とほぼ同様の長さであればよい。
【0101】
上記のような構成により、磁性複合型制振材11Cの長手方向をレールRの長手方向と一致させるようにして、磁性層15の凸曲面状の表面をレール腹部R2の側面に密着させると、磁性層15の磁力により磁性複合型制振材11Cはレール腹部R2の一側面に磁気吸着される。同様にして、レール腹部R2の他の側面の同一位置に他の磁性複合型制振材11Cを磁気吸着させる。
【0102】
次に、磁性複合型制振材11Cをレール長手方向に隣接させた継目箇所において、レール腹部R2の両側面の磁性複合型制振材11Cの4個の被嵌合孔14eにスペーサー23の小円筒部を挿入し、スペーサー23の内孔に規制片28の嵌合凸部28dを挿入する。その後、それぞれの規制片28の垂直板部28cが垂下するようにし、一方のボルト挿通孔28eから他方のボルト挿通孔28eに向けてボルト24Aを2本挿通し、ナット25をボルト24Aに螺合させて締め付ける(図8(A),図8(B)参照)。
【0103】
この第5実施形態では、レールの長手方向に隣接する2つの磁性複合型制振材11Cを同時に規制することができ、磁性複合型制振材11Cのレール長手方向の長さや、被嵌合孔14eの位置等に製作誤差があっても、長円形状の被嵌合孔14eと嵌合凸部28dの組合わせにより、それらの誤差を吸収することができる。
【0104】
(6)第6実施形態
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図9は、本発明の第6実施形態であるレール制振装置における磁性複合型制振材の詳細な構成を示す図であり、図9(A)は拘束部の側から見た側面図を、図9(B)は図9(A)における長手方向端部付近の拡大図を、図9(C)は図9(B)におけるD-D断面図を、図9(D)は図9(B)におけるE-E断面図を、それぞれ示している。図10は、図9に示す磁性複合型制振材の製造方法を示す概念図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0105】
この第6実施形態のレール制振装置は、図示はしていないが、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の各側面にそれぞれ取り付けられる磁性複合型制振材11D,11Dと、磁性複合型制振材11D,11Dの移動を規制する制振材規制具21Aを備えて構成されている。
【0106】
この第6実施形態のレール制振装置(図示せず)が第1実施形態のレール制振装置101と異なる点は、異なる磁性複合型制振材11Dを備えた点であり、制振材規制具は第1実施形態の場合と同様である。
【0107】
図9に示すように、磁性複合型制振材11Dは、弾性材料である鋼板等からなり帯板状部材に形成された拘束板16と、磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料である磁性ゴム等からなり拘束板16上に積層される帯板状の磁性層17を有している。
【0108】
磁性複合型制振材11Dが第1実施形態の磁性複合型制振材11Aと異なる点は、拘束板16として、第1実施形態の帯板状部材とは異なり、短手方向の両側端部に屈曲部のない帯板状部材を用いた点であり、その他の点は第1実施形態の磁性複合型制振材11Aと同様である。
【0109】
拘束板16は、一方向に延在する板状部16aからなり、板状部16aの長手方向の両端付近には、円形断面の被嵌合孔16c,16cが設けられている(図9(A),図9(B),図9(D)参照)。
【0110】
また、磁性層17は、表面が凸曲面状に形成されており、この凸曲面は、レール腹部R2の側面の凹曲面に合致するように設定されている(図9(C),図9(D)参照)。また、磁性層17の背面は、拘束板16の板状部16aに密着されて積層されている(図9(C),図9(D)参照)。また、拘束板16の被嵌合孔16c,16cの箇所では磁性層17の背面が外部に露出している(図9(A),図9(B),図9(D)参照)。
【0111】
上記した磁性複合型制振材11DのレールRの長手方向の長さは、レールRと隣接するレールRとをつなぐ継目板(図示せず)の端部間の距離よりも短い長さの範囲内であれば任意の長さが選択可能である。また、磁性複合型制振材11DのレールRの直角方向の長さは、レール腹部R2の凹曲面部の範囲内であれば任意の長さが選択可能である。
【0112】
上記のような構成により、磁性複合型制振材11Dの長手方向をレールRの長手方向と一致させるようにして、磁性層17の凸曲面状の表面をレール腹部R2の側面に密着させると、磁性層17の磁力により磁性複合型制振材11Dはレール腹部R2の一側面に磁気吸着される。同様にして、レール腹部R2の他の側面の同一位置に他の磁性複合型制振材11Dを磁気吸着させる。
【0113】
その後、それぞれの磁性複合型制振材11Dの被嵌合孔16cにスペーサー23の小円筒部を挿入し、スペーサー23の内孔に規制片22の嵌合凸部22dを挿入する。その後、それぞれの規制片22の垂直板部22cが垂下するようにし、一方のボルト挿通孔22eから他方のボルト挿通孔22eに向けてボルト24Aを挿通し、ナット25をボルト24Aに螺合させて締め付ける。
【0114】
上記のようにしてレール制振装置を構成しレール腹部R2の側面に取り付けると、列車の車輪(図示せず)の走行によりレールRが振動した場合、その振動エネルギーを、磁性複合型制振材11Dの拘束板16により拘束される磁性層17の内部において損失させるとともに、レール腹部R2の側面と磁性層17との境界におけるすべり摩擦によって損失させることができ、レール底部R3からまくらぎ(図示せず)へ伝達される振動を低く抑制することができる。
【0115】
また、制振材規制具21Aにより、磁性複合型制振材11D,11Dは、レールの上下方向、又はレールの長手方向のいずれへも微少量しか移動できないように規制される。したがって、磁性複合型制振材11Dに外力が加わった場合でも、レール腹部R2の側面から外れることがない。
【0116】
また、磁性複合型制振材11Dの短手方向の両側端部、すなわち図9における磁性複合型制振材11Dの上端又は下端付近では、磁性層17が磁性化されていないため、列車の車輪(図示せず)とレールRとの摩擦によって発生する鉄粉や、鋳鉄等からなるブレーキ用制輪子からの鉄粉が磁性複合型制振材11Dの短手方向の端部に磁気吸着されて集積し、汚れやサビの原因となることがない。
【0117】
上記した制振材規制具21Aは、レール腹部R2の両側面の同一位置に配置された2個の磁性複合型制振材11D,11Dごとに少なくとも2箇所以上配置されればよい。
【0118】
次に、上記した磁性複合型制振材11Dの製造方法について、図10を参照しつつ説明する。図10においては、被嵌合孔16cを含む断面を図示している。
【0119】
まず、弾性材料を帯板状に加工するとともに、長手方向の両端付近に円形断面の被嵌合孔16c,16cを形成して、拘束板16を製作する(図10(A))。拘束板16の材料の材質等については、上記した第1実施形態の拘束板14Aの場合と同様である。
【0120】
上記した拘束板16の一面16d、すなわち図10(A)における下面(以下、「接着面」という。)に、後述する接着剤を塗布し、拘束板16と略同一の平面投影形状を有する平面状のシート材17′(図10(B))を接着して積層した後に成型し、表面が凸曲面状の曲面板状部材17”と拘束板16との積層部材を形成する(図10(C))。その後、曲面板状部材17”内の磁性粉を着磁して磁性層17を形成する(図10(D))。シート材の形成工程については、「シート材接着方式」又は「シート材直接形成方式」のいずれを採用してもよい。また、高分子粘弾性体、磁性粉の材質等については、上記した第1実施形態の拘束板14Aの場合と同様である。
【0121】
拘束板16の接着面16dにシート材17′が接着された部材のシート表面を、成型装置52によって所定の凸曲面状に成型する(図10(C)参照)。成型装置52は、上型54と下型56を有している。上型には拘束板16の背面形状が形成されており、被嵌合孔16cと合致する凸部54cが形成されている。また、下型56には、磁性層の表面となる凸曲面を形成するための凹曲面部56aが形成されている。高分子粘弾性材料がゴム系材料の場合は、この成型時に加硫を行う(加硫条件は通常170°Cで20分間程度)。
【0122】
高分子粘弾性体内の磁性粉への着磁は、上記した曲面板状部材17”が拘束板16上に形成された後に行う。着磁を行う場合には、片面多極着磁型コンデンサ着磁装置62を使用する。この装置62では、強磁性体からなる本体62aの一面に、磁性層の表面となる凸曲面と合致する凹曲面部62bが形成され、凹曲面部62b上に、溝62cが1~10mm程度の間隔で平行形成し、溝62c内に導線62dが配置されて着磁ヨークが構成されている。また、凹曲面部62bの図における左右両端部には、本体を除去した空間部62eが設けられている。
【0123】
着磁は、曲面板状部材17”を着磁ヨークに密着させ、各導線62dに交互に逆方向となる大電流をコンデンサを用いて瞬間的に通電することにより行う。これにより、各導線62dに密接していた部分が交互に付近がN磁極又はS磁極に着磁され、凹曲面部62bの図における左右両端部の空間部62eに密接していた部分、すなわち磁性層の短手方向の両側端部は磁力線が通らないため着磁されず、磁性層内部の磁性粉は磁性化されないで残る(図10(D)参照)。
【0124】
上記した着磁装置62における導線62dの間隔により、着磁後の磁性層の磁力を調整することができるため、制振を行う振動体の表面の荒さや塗装厚等に応じて適宜設定することが望ましい。
【0125】
(7)第7実施形態
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
図11は、本発明の第7実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0126】
この第7実施形態のレール制振構造107は、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の両側面に取り付けられる2つの磁性複合型制振材11B,11Bを備えて構成されている。
【0127】
この第7実施形態のレール制振構造107が上記した実施形態と異なる点は、制振材規制具を設けず、磁性複合型制振材11Bを直接レール腹部R2に取り付けた点である。制振作用は上記した各実施形態の場合と同様である。
【0128】
(8)第8実施形態
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
図12は、本発明の第8実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0129】
この第8実施形態のレール制振構造108は、レールRの長手方向に延在する帯板状に形成されレール腹部R2の両側面に取り付けられる2つの磁性複合型制振材11D,11Dを備えて構成されている。
【0130】
この第8実施形態のレール制振構造108は、第7実施形態のレール制振構造の変形例であり、上記した実施形態と異なる点は、制振材規制具を設けず、磁性複合型制振材11Dを直接レール腹部R2に取り付けた点である。制振作用は上記した各実施形態の場合と同様である。
【0131】
(9)第9実施形態
次に、本発明の第9実施形態について説明する。
図13は、本発明の第9実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0132】
この第9実施形態のレール制振構造109は、レールRの長手方向に延在するとともに屈曲された帯板状に形成され、レール腹部R2の側面とレール底部R3の上面にわたって取り付けられる2つの磁性複合型制振材11E,11Eを備えて構成されている。
【0133】
この第9実施形態のレール制振構造109が上記した実施形態と異なる点は、レール腹部R2の側面とレール底部R3の上面にわたって取り付けられるように磁性複合型制振材11Eが屈曲形成された点である。この制振材の製造は、磁性層の成型時に拘束板もプレス成型することにより可能である。制振の原理は上記した各実施形態の場合と同様である。また、磁性複合型制振材11A~11Cと同様に、短手方向の両側端部が屈曲しているため、磁気遮蔽効果により、鉄粉等が磁気吸着されて集積されることがない。また、レールのより広い面を被覆するため、制振効果はさらに向上する。この第9実施形態には、さらに、上記各実施形態で説明したような各種の制振材規制具を取り付けてもよい。
【0134】
(10)第10実施形態
次に、本発明の第10実施形態について説明する。
図14は、本発明の第10実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。図において、レールRの構成は第1実施形態の場合とまったく同様である。
【0135】
この第10実施形態のレール制振構造110は、レールRの長手方向に延在するとともに屈曲された帯板状に形成され、レール腹部R2の側面とレール底部R3の上面にわたって取り付けられる2つの磁性複合型制振材11F,11Fを備えて構成されている。
【0136】
この第10実施形態のレール制振構造110が上記した実施形態と異なる点は、レール腹部R2の側面とレール底部R3の上面にわたって取り付けられるように磁性複合型制振材11Fが屈曲形成された点である。この制振材の製造は、磁性層の成型時に拘束板もプレス成型することにより可能である。制振の原理は上記した各実施形態の場合と同様である。また、磁性複合型制振材11Dと同様に、短手方向の両側端部が磁性化されていないため、鉄粉等が磁気吸着されて集積されることがない。また、レールのより広い面を被覆するため、制振効果はさらに向上する。この第10実施形態には、さらに、上記各実施形態で説明したような各種の制振材規制具を取り付けてもよい。
【0137】
上記各実施形態における被嵌合孔14c,14e、及び図6における拘束板14Bの背部は、被嵌合部に相当している。また、嵌合凸部22d,28d、及び図6における上方規制部27aと下方規制部27c、図7(A)における上方規制部27aと下方規制部27c1、図7(B)における上方規制部27aと下方規制部27c2は、嵌合部に相当している。また、図8(B)における被嵌合孔14eと嵌合凸部28eは、誤差吸収手段に相当している。
【0138】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0139】
例えば、上記各実施形態においては、振動体がレールで振動面がレール腹部側面である例について説明したが、本発明はこれには限定されず、振動体は強磁性体からなり曲面を含む面からなる振動面を有するものであればどのようなものであってもよい。
【0140】
また、上記各実施形態においては、被嵌合部が孔で嵌合部が凸部の例等について説明したが、本発明はこれには限定されず、他の構成であってもよく、例えば、被嵌合部が凸部で嵌合部が孔や凹部等であってもよい。
【0141】
また、拘束板は複数個の層で構成されていてもよいし、磁性層も複数の層で構成されていてもよい。
【0142】
また、誤差吸収手段は、図1,4,5に示す第1,2,3実施形態に用いられてもよい。
【0143】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁性複合型制振材によれば、ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなるとともに鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材である1個又は複数個の拘束板と、残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり鉄道用レールの長手方向に延在して拘束板に積層される帯板状部材であってその表面が鉄道用レールの腹部側面、又は腹部側面及び底部上面の凹曲面に合致する凸曲面状に形成され短手方向の両側端部を除く中間部分のみが磁性化されかつ振動面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を備えた。また、本発明のレール制振装置によれば、ヤング率300kgf/mm2以上の弾性を有する材料からなり鉄道用レールの長手方向に延在する帯板状部材に形成された1個又は複数個の拘束板と、残留磁束密度25~15000ガウス程度に磁性化された磁性粉を含有する高分子粘弾性材料からなり拘束板に積層され表面形状がレールの腹部側面、又は腹部側面及び底部上面に合致する凸曲面状で鉄道用レールの長手方向に延在する帯状部材状に形成されかつ鉄道用レールの腹部側面に磁気吸着可能な1層又は複数層の磁性層を有する磁性複合型制振材と、他の腹部側面、又は他の腹部側面及び底部上面に磁気吸着している他の磁性複合型制振材へ鉄道用レールの底部下方を通してボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、又は鉄道用レールの底部にボルト結合作用又は弾性反発作用により係止することにより、反力を得て、鉄道用レールの上下方向又は長手方向への磁性複合型制振材の移動を規制する制振材規制具を備えた。このため、鋼材からなる鉄道用レールの振動面に磁気吸着させて制振を行うことができる。
また、磁性複合型制振材であるので、振動エネルギーの内部損失制振効果の温度依存性が緩和され、幅広い温度範囲で高い制振性能を発揮する、という利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるレール制振装置の構成を示す図であり、図1(A)は断面図を、図1(B)は側面図を、それぞれ示している。
【図2】図1に示すレール制振装置における磁性複合型制振材のさらに詳細な構成を示す図であり、図2(A)は拘束部の側から見た側面図を、図2(B)は図2(A)における長手方向端部付近の拡大図を、図2(C)は図2(B)におけるA-A断面図を、図2(D)は図2(B)におけるB-B断面図を、それぞれ示している。
【図3】図1に示す磁性複合型制振材の製造方法を示す概念図である。
【図4】本発明の第2実施形態であるレール制振装置の構成を示す図であり、図4(A)は断面図を、図4(B)はC-C断面図を、それぞれ示している。
【図5】本発明の第3実施形態であるレール制振装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態であるレール制振装置の構成を示す断面図である。
【図7】図6に示すレール制振装置における制振材規制具の例を説明する図であり、図7(A)は下方規制部を溶接により規制具本体に接合した例を、図7(B)は半円形切れ目を折り返すことにより下方規制部を形成した例を、それぞれ示している。
【図8】本発明の第5実施形態であるレール制振装置の構成を示す図であり、図8(A)は断面図を、図8(B)は側面図を、それぞれ示している。
【図9】本発明の第6実施形態であるレール制振装置における磁性複合型制振材の詳細な構成を示す図であり、図9(A)は拘束部の側から見た側面図を、図9(B)は図9(A)における長手方向端部付近の拡大図を、図9(C)は図9(B)におけるD-D断面図を、図9(D)は図9(B)におけるE-E断面図を、それぞれ示している。
【図10】図9に示す磁性複合型制振材の製造方法を示す概念図である。
【図11】本発明の第7実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。
【図13】本発明の第9実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第10実施形態であるレール制振構造の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
11A~11D 磁性複合型制振材
14A~14C 拘束板
14a 板状部
14b 屈曲部
14c 被嵌合孔
14d 接着面
14e 被嵌合孔
15 磁性層
15′ シート材
15” 成型後の曲面板状部材
16 拘束板
16a 板状部
16c 被嵌合孔
16d 接着面
17 磁性層
17′ シート材
17” 成型後の曲面板状部材
21A,21B,21C,21D1,21D2,21E 制振材規制具
22 規制片
22a 垂直板部
22b 斜板部
22c 垂直板部
22d 嵌合凸部
22e ボルト挿通孔
23 スペーサー
24A ボルト
24B 係止片付きボルト
25 ナット
26 係止片
26b 斜板部
26c 垂直板部
26e ボルト挿通孔
27a 上方規制部
27b 垂直板部
27c,27c1,27c2 下方規制部
27d 係止用曲面部
27e 平板部
27f 係止用端部
28 規制片
28a 垂直板部
28b 斜板部
28c 垂直板部
28d 嵌合凸部
28e ボルト挿通孔
51,52 成型装置
53 上型
53c 凸部
54 上型
54c 凸部
55 下型
55a 凹曲面部
56 下型
56a 凹曲面部
61 片面多極着磁型コンデンサ着磁装置
61a 本体
61b 凹曲面部
61c 溝
61d 導線
62 片面多極着磁型コンデンサ着磁装置
62a 本体
62b 凹曲面部
62c 溝
62d 導線
62e 空間部
101~105 レール制振装置
107,108 レール制振構造
R レール
R1 レール頭部
R2 レール腹部
R3 レール底部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13