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明細書 :色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法及び酸化物半導体電極

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5167531号 (P5167531)
公開番号 特開2007-287455 (P2007-287455A)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発行日 平成25年3月21日(2013.3.21)
公開日 平成19年11月1日(2007.11.1)
発明の名称または考案の名称 色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法及び酸化物半導体電極
国際特許分類 H01M  14/00        (2006.01)
H01L  31/04        (2006.01)
FI H01M 14/00 P
H01L 31/04 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2006-112788 (P2006-112788)
出願日 平成18年4月14日(2006.4.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年10月22日~23日 日本化学会中国四国支部・同九州支部主催の「2005年日本化学会西日本大会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成18年3月27日~30日 社団法人日本化学会主催の「日本化学会第86春季年会(2006)」において文書をもって発表
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】播磨 裕
【氏名】大山 陽介
個別代理人の代理人 【識別番号】100121795、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴亀 國康
審査官 【審査官】佐武 紀子
参考文献・文献 Nicos Kopidakis et al.,Transport-Limited Recombination of Photocarriers in Dye-Sensitized Nanocrystalline TiO2 Solar Cells ,J.Phys.Chem.B,2003年,Vol.107,P.11307-11315
Sven Sodergren et al.,Lithium Intercalation in Nanoporous Anatase TiO2 Studied with XPS,J.Phys.Chem.B,1997年,Vol.101,P.3087-3090
調査した分野 H01M 14/00
H01L 31/04
特許請求の範囲 【請求項1】
透明電極の導電面上にTiO2の多孔質層を形成する工程と、前記TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程と、そのインターカレートされたアルカリ金属イオンを排出除去後前記多孔質層に色素を吸着させる工程と、からなる色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
【請求項2】
TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程は、非水溶媒にアルカリ金属塩を溶解した電解液中でTiO2の多孔質層を電解還元する電解処理であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属塩は、LiX、NaX、KXのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
ここで、XはF、Cl、Br、I、PF6、BF4、ClO4のいずれかである。
【請求項4】
TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程は、有機アルカリ金属化合物を含む溶液にTiO2の多孔質層を浸漬する化学処理であることを特徴とする請求項1に記載の色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
【請求項5】
有機アルカリ金属化合物は、MeLi(メチルリチウム)、BuLi(ブチルリチウム)、PhLi(フェニルリチウム)、thienyllithium(チエニルリチウム)、t-BuOLi(ターシャルブトキシリチウム)、MeONa(ナトリウムメトキシド)、EtONa(ナトリウムエトキシド)、t-BuOK(カリウムブトキシド)のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
【請求項6】
TiO2にインターカレートされたアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩又は有機アルカリ金属化合物でTiO21mol当たり0.001~0.5mol含有されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
【請求項7】
色素は、Eosin Y(エオシンY)、Rhodamine B(ローダミンB)、Chicago Sky Blue(シカゴスカイブルー)、Alizarin(アリザリン)、Coumarin 343(クマリン343)のいずれかの有機色素であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法。
【請求項8】
導電性の透明電極と、該透明電極の導電面上に形成されたTiO2の多孔質層と、該多孔質層に吸着させた有機色素と、を有する色素増感太陽電池の酸化物半導体電極であって、TiO2の仕事関数が5eV以下であることを特徴とする色素増感太陽電池の酸化物半導体電極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法及び酸化物半導体電極に係り、特にTiO2酸化物を用いた酸化物半導体電極の製造方法及び酸化物半導体電極に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池は、シリコン系太陽電池に比較して安価に、かつ、低い環境負荷で製造することができ、多彩な色調の太陽電池を製造することができることから注目されている。しかし、色素増感太陽電池はシリコン系太陽電池に比較してエネルギー変換効率が低いためにその向上が求められており、種々の方法が開示されているが、開放光起電圧を向上することはエネルギー変換効率を向上させる有効な方法の一つである。
【0003】
例えば、特許文献1に、色素により増感した半導体微粒子層および電荷移動層を有する光電変換素子において、該半導体微粒子層が、これを構成する主たる第一の金属元素と共に少なくとも一種の第二の金属元素を、主たる金属元素の0.01mol%以上50mol%未満含有する光電変換素子が開示されている。ここで、第一の金属元素はシリコン、ゲルマニウム等の単体あるいは化合物の金属元素であり、第二の金属元素はアルカリ金属、アルカリ土類金属等であるとしている。そして、このような第二の金属元素の添加により半導体微粒子層の伝導体エネルギーレベルをコントロールすることができ、取り出し電圧に優れた変換効率の高い色素増感太陽電池を得ることができることが開示されている。
【0004】
非特許文献1と2には、逆電流を防ぎ開放光起電圧を高める4-tert-butyl pyridine(TBP)のようなピリジン誘導体やケノデオキシコール酸などを電解質溶液に添加する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2にはタンデム型色素増感太陽電池により開放光起電圧を向上させようとする、粒子径が0.1nm~1000nmであって、Cu、Al、Ag、Ni、Co、In、Fe、Zn、Rh、Ga、Sr、Li、Nのいずれかを含むp型無機酸化物半導体からなる酸化物半導体電極が開示されている。
【0006】

【特許文献1】特開2002-8741号公報
【特許文献2】特開2006-66215号公報
【非特許文献1】Electrochimica Acta、47(2002)p4213-4225
【非特許文献2】J. Phys. Chem.、97(1993)p6272-6277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法よりさらに開放光起電圧又は開放光起電圧向上率を高め、また、エネルギー変換効率を向上させる方法、手段が求められている。そして、特許文献1に記載の色素増感太陽電池は、均質な性能を有する色素増感太陽電池を製造するのが必ずしも容易ではないという問題がある。特許文献2に記載の酸化物半導体電極は複雑な構造をしており、容易かつ安価に製造することができないという問題がある。非特許文献1又は2に記載の方法は、ある程度の開放光起電圧又はエネルギー変換効率の向上効果しか得られないという問題がある。
【0008】
本発明は、色彩を多彩に変えることができ簡単な構造で開放光起電圧の高い又は開放光起電圧向上率の高い、また、エネルギー変換効率の高い経済性に優れた色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法及びその方法により得られる酸化物半導体電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法は、透明電極の導電面上にTiO2の多孔質層を形成する工程と、前記TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程と、そのインターカレートされたアルカリ金属イオンを排出除去後前記多孔質層に色素を吸着させる工程と、からなる。
【0010】
上記発明において、TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程は、非水溶媒にアルカリ金属塩を溶解した電解液中でTiO2の多孔質層を電解還元する電解処理であるものとすることができ、アルカリ金属塩は、LiX、NaX、KXのいずれかであるのがよい。ここで、XはF、Cl、Br、I、PF6、BF4、ClO4のいずれかである。
【0011】
また、TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程は、有機アルカリ金属化合物を含む溶液にTiO2の多孔質層を浸漬する化学処理であるものとすることができ、有機アルカリ金属化合物は、MeLi(メチルリチウム)、BuLi(ブチルリチウム)、PhLi(フェニルリチウム)、thienyllithium(チエニルリチウム)、t-BuOLi(ターシャルブトキシリチウム)、MeONa(ナトリウムメトキシド)、EtONa(ナトリウムエトキシド)、t-BuOK(カリウムブトキシド)のいずれかであるのがよい。

【0012】
また、TiO2にインターカレートされたアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩又は有機アルカリ金属化合物でTiO21mol当たり0.001~0.5mol含有されているのがよい。色素は、Eosin Y(エオシンY)、Rhodamine B(ローダミンB)、Chicago Sky Blue(シカゴスカイブルー)、Alizarin(アリザリン)、Coumarin 343(クマリン343)のいずれかであるのがよい。

【0013】
上記発明により、開放光起電圧又は開放光起電圧向上率の高い、エネルギー変換効率の高い色素増感太陽電池用の酸化物半導体電極を製造することができる。すなわち、導電性の透明電極と、該透明電極の導電面上に形成されたTiO2の多孔質層と、該多孔質層に吸着させた有機色素と、を有する色素増感太陽電池の酸化物半導体電極であって、TiO2の仕事関数が5eV以下である色素増感太陽電池の酸化物半導体電極を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法により、色彩を多彩に変えることができ簡単な構造で経済的な開放光起電圧又は開放光起電圧向上率の高い、また、エネルギー変換効率の高い色素増感太陽電池用の酸化物半導体電極を製造することができる。この酸化物半導体電極を用いて色素増感太陽電池を製造し、建物の屋根、外装あるいは広告宣伝用に好適な多彩な色調の太陽電池組み込みパネルを容易かつ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明に係る色素増感太陽電池の酸化物半導体電極の製造方法の実施の態様について説明する。図1に示すように、色素増感太陽電池10は、透明電極12の導電面上に色素16を吸着させた多孔質層15が形成された酸化物半導体電極11と、導電性の対極18と、酸化物半導体電極11と対極18の間に介在させた酸化還元体を含む電解質溶液(ゲル又は固体状のものを含む)17からなる。本発明に係る酸化物半導体電極11の製造方法は、透明電極12の導電面上にTiO2の多孔質層を形成する工程と、前記TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程と、そのインターカレートされたアルカリ金属イオンを排出除去後前記多孔質層に色素を吸着させる工程と、からなる。
【0016】
透明電極12の導電面上にTiO2の多孔質層を形成する工程は、公知の方法を使用することができる。例えば、ガラス製の基板13に95%酸化インジウムと5%酸化錫の化合物(ITO)を蒸着し、または、酸化錫を蒸着後にフッ素をドープ(FTO)して導電膜14を形成した導電性ガラス(TCO)の導電面上に、TiO2の粉末をポリエチレングリコールや10%アセチルアセトン、水等と混ぜて調整されたペーストを、ドクターブレード法、スキージ法等により塗布し、これを乾燥後焼成することにより透明電極12の導電面上にTiO2の多孔質層を形成することができる。
【0017】
つぎに、本発明においては、上記工程により形成された多孔質層を構成するTiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせる工程を設ける。ここで、インターカレートとは、アルカリ金属イオンをTiO2(チタニヤ)のアナタース層間に挿入することをいい、例えば、リチウムの場合は、Li0.5TiO2(青色)となるまでリチウムイオンをアナタース層間に挿入することをいう。本発明において、アルカリ金属イオンをTiO2にインターカレートし、開放光起電圧の向上等の効果を得るには、TiO2にアルカリ金属塩又は有機アルカリ金属化合物でTiO21mol当たり0.001~0.5mol含有されるようにインターカレートするのがよい。アルカリ金属塩又は有機アルカリ金属化合物が0.001mol未満であるとその効果が少なく、0.5molを超えるとその効果の程度が飽和するからである。
【0018】
本発明は、透明電極12の導電面上に形成されたTiO2の多孔質層にアルカリ金属イオンをインターカレートし、以下に説明するようにTiO2の構造を変化させ、変化させたTiO2の多孔質層に色素、特に有機色素を効果的に吸着させる方法である。このため、色素を効果的にTiO2の多孔質層に吸着させるには、アルカリ金属イオンをTiO2にインターカレートした後であるのがよく、また、アルカリ金属イオンをインターカレートさせる前に色素を吸着させた場合は、以下に説明する電気化学的又は化学的処理により色素の破壊、脱落を生ずるおそれがあるので、本発明においては、アルカリ金属イオンのインターカレートは色素の吸着前に行うということが重要である。
【0019】
アルカリ金属イオンをTiO2にインターカレートさせる方法は、特に問わないが、電気化学的又は化学的方法を使用することができる。例えば、非水溶媒にアルカリ金属塩を溶解した電解液中でTiO2の多孔質層を電解還元する電解処理がよい。非水溶媒としてアセトニトリルを使用することができる。アルカリ金属塩として、XをF、Cl、Br、I、PF6、BF4、ClO4のいずれかとするLiX、NaX、KXが好ましい。特にLiClO4が好ましい。
【0020】
非水溶媒とは、例えばアセトニトリル溶媒をいう。水溶媒の場合は、水自身が還元され、アルカリ金属イオンをTiO2にインターカレートさせることができないので不適である。
【0021】
また、アルカリ金属イオンをTiO2にインターカレートさせる方法は、有機アルカリ金属化合物を含む溶液にTiO2の多孔質層を浸漬する化学的処理であってもよい。有機アルカリ金属化合物は、MeLi(メチルリチウム)、BuLi(ブチルリチウム)、PhLi(フェニルリチウム)、thienyllithium(チエニルリチウム)、t-BuOLi(ターシャルブトキシリチウム)、MeONa(ナトリウムメトキシド)、EtONa(ナトリウムエトキシド)、t-BuOK(カリウムブトキシド)のいずれかが好ましい。特にBuLiが好ましい。

【0022】
つぎに、本発明においては、インターカレートされたアルカリ金属イオンを排出除去後前記多孔質層に色素を吸着させる工程を設ける。TiO2にインターカレートされたアルカリ金属イオンは、電気化学的処理又は化学的処理の後処理液から取り出されたときに、TiO2表面に拡散し大気中の水分と結合して水酸化物を形成する。このため、つぎの工程である色素吸着工程の前に、多孔質層13に付着したアルカリ金属の水酸化物や上記の電気化学的又は化学的処理に使用した処理液により色素吸着反応が妨げられないように、まず、多孔質層13を洗浄・乾燥してそれらの付着物を除去する。乾燥は、加熱乾燥でも自然乾燥でもよい。
【0023】
多孔質層の十分な洗浄及び乾燥を行った後に、多孔質層への色素の吸着を行う。多孔質層へ吸着させる色素は、有機色素であるのがよい。特にEosin Y(エオシンY)、Rhodamine B(ローダミンB)、Chicago Sky Blue(シカゴスカイブルー)、Alizarin(アリザリン)、Coumarin 343(クマリン343)のいずれかの有機色素であるのが好ましい。ルテニウム錯体のような金属錯体色素の場合は、本発明による電気化学的処理又は化学的処理を行っても開放光起電圧、エネルギー変換効率の向上効果が少ないので好ましくない。
【0024】
以上このような工程により、本発明に係る透明電極12の導電面上に色素16を吸着させた多孔質層15が形成された酸化物半導体電極11を製造することができる。この酸化物半導体電極11を用いた色素増感太陽電池により、短絡光電流密度を変化させず又はほとんど減少させずに開放光起電圧を向上させることができ、さらにはエネルギー変換効率を向上させることができる。
【実施例1】
【0025】
上記の方法により作製した酸化物半導体電極を用いて図1に示す色素増感太陽電池を作製し、電池性能試験を行った。酸化物半導体電極11は以下のように作製した。まず、TiO2粉末P-25(日本エアロジル社製の、平均粒径20~30nm、ルチル-アナタース混晶)1.3gをジルコニア製ポットに取り、水310μmを加えて、遊星型ボールミル(フリッチュ・ジャパン社製P-7)を用いて10分間ミリングした。さらに、同量の水を加えて、同様の処理を4回繰り返した。これに、EtOH310μlを加えて、10分間ミリングした。その後。PEG(平均分子量は500000)を80mg、硝酸適量(パスツールピペットで3~5滴)を加えて、3~4時間ミリングし、TiO2ペーストを作成した。
【0026】
TiO2の多孔質層の電気化学的処理は以下のように行った。まず、アセトニトリル(AN)溶媒に各種アルカリ金属塩を0.1M溶解した電解液、対極に白金線を用い、定電流-0.5mAとした二電極系の還元処理により行った。ポテンショスタットは、北斗電工株式会社製HA-501Gを使用した。
【0027】
TiO2の多孔質層の電気化学的処理の後、TiO2の多孔質層を形成させた透明電極12を洗浄及び乾燥し、これを表1に示す各種の色素溶液に浸漬処理することにより色素を多孔質層に吸着させ、色素16がTiO2の多孔質層15に吸着した酸化物半導体電極11を作製した。
【0028】
【表1】
JP0005167531B2_000002t.gif

【0029】
この酸化物半導体電極11に、電解質溶液17及び対極18を設けて0.5cm×0.5cmの色素増感太陽電池を作製し電池性能試験を行った。電解質溶液17は、アセトニトリル溶媒に0.5MのLiIと0.05MのI2を溶解させたものを用いた。対極18は、スライドガラスにCrを2nm蒸着させた上に、Ptを50nm蒸着したものを用いた。対極18は、ガラス板に白金蒸着膜を設けたものを用いた。なお、比較のためTiO2の多孔質層の電気化学的処理を行わないで色素増感太陽電池を作製したもの、上記電解質溶液17にTBPを添加して色素増感太陽電池を作製したものについても電池性能試験を行った。
【0030】
色素増感太陽電池の電池性能試験(I-V特性の測定)は、光源にソーラーシュミレータ(セリック株式会社製SERICSXL-500V2、AM1.5、93mW/cm2)を使用し、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製HA-501G)を用いて行った。
【0031】
図2に、TiO2の多孔質層の電気化学的処理の効果を示す。図2は、TiO2の多孔質層をLiClO4の電解溶液中で電解還元し、リチウムイオンをTiO2にインターカレートした後、色素Coumarin 343を吸着させた酸化物半導体電極11を用いて色素増感太陽電池を作製したものの電池性能試験の結果を示すグラフである。図2において、横軸は電解処理の処理時間、縦軸は短絡光電流密度Isc(mA/cm2)、開放光起電圧Voc(mV)、フィルファクターFF、エネルギー変換効率η(%)の電解処理を行った場合の電解処理を行わない場合に対する相対比を示す。
【0032】
図2によると、処理時間が5minまで、短絡光電流密度比(Isc)は変化せず、開放光起電圧比(Voc)及びエネルギー変換効率比(η)は急速に増大し、開放光起電圧比(Voc)及びエネルギー変換効率比は1.5になる。フィルファクター比(FF)はわずかであるが次第に増大している。一方、処理時間が5minを超えると、短絡光電流密度比及びエネルギー変換効率比は次第に減少するが、開放光起電圧比はなお増大し処理時間15nimで相対比1.9になりその後次第に減少する。処理時間15nimにおいて、短絡光電流密度比は0.5、エネルギー変換効率比は1.0になる。すなわち、本発明により、高い開放光起電圧、高いエネルギー変換効率の色素増感太陽電池を得ることができることが分かる。
【0033】
図3に、TiO2にインターカレートさせるアルカリ金属の効果を調べた結果を示す。図3は、各種アルカリ金属塩の電解液中でTiO2の多孔質層の電気化学的処理を行った酸化物半導体電極を用いて作製した色素増感太陽電池の開放光起電圧と、電解処理の処理時間との関係を示すグラフである。図3において、横軸は処理時間で縦軸は開放光起電圧を示し、Li曲線は電解処理をLiClO4の電解液中で行った場合、Na曲線は電解処理をNaClO4の電解液中で行った場合、K曲線は電解処理をKClO4の電解液中で行った場合を示す。
【0034】
図3によると、開放光起電圧の向上効果はLiClO4電解液中の電解処理が最も効果があり、次にNaClO4電解液中の電解処理であることが分かる。また、図3によると、いずれの処理の場合も開放光起電圧が最も高くなる最適な処理時間があることが分かる。
【0035】
つぎに、本発明における色素の効果を示す。表2は、LiClO4の電解液中でTiO2の多孔質層の電気化学的処理を行った酸化物半導体電極を用いて作製した色素増感太陽電池(処理あり)と、そのような電気化学的処理を行わなかった酸化物半導体電極を用いて作製した色素増感太陽電池(処理なし)の電池性能試験の結果である。表2によると、本発明において開放光起電圧を向上させる効果は、色素Coumarin 343の場合が最も高く、つづいて、Alizarin、Chicago Sky Blueの順に高い。これに対し、色素がルテニウム金属錯体である場合は、開放光起電圧向上効果が少ないことが分かる。
【0036】
【表2】
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【0037】
表3及び図4に、本発明による効果と電解質溶液17に逆電流を防ぎ開放光起電圧を高めるTBPを添加した場合の効果を比較した結果を示す。図4は、色素増感太陽電池の光照射時のI-V特性曲線を示すグラフであり、横軸は電圧で縦軸は電流密度を示す。表3及び図4において、処理ありとは、LiClO4の電解液中でTiO2の多孔質層の電気化学的処理を行った後、色素Coumarin 343を吸着させた酸化物半導体電極を用いて作製した色素増感太陽電池の場合を示す。処理なしとは、そのような電気化学的処理を行わず色素Coumarin 343を吸着させた酸化物半導体電極を用いて作製した色素増感太陽電池の場合を示す。
【0038】
表3の処理あり(本発明)の場合と処理なし(比較例)の場合を比較すると、本発明の場合は、短絡光電流密度Iscがほとんど比較例の場合と変わらないのに開放光起電圧Vocが1.7倍になり、エネルギー変換効率ηが1.8倍になっている。これに対し、TBP添加処理と処理なしの場合を比較すると、TBP添加処理の場合は処理なしの場合に対し、開放光起電圧Vocは1.2倍に高めることができるが、短絡光電流密度Isc及びエネルギー効率ηは1/3に減少してしまうことが分かる。
【0039】
【表3】
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【0040】
図4によると、TBP添加処理の場合は、処理なしの場合と比較してI-V曲線がマイナス側に70mVシフトし、処理ありの場合はさらに170mVマイナス側にシフトしていることが分かる。以上、表3及び図4から分かるように、本発明による開放光起電圧及びエネルギー効率の向上効果は高く、それらの効果はTBP添加処理に比較して相当に高いことが分かる。
【0041】
図5は、表3及び図4の試験で作製したと同様な酸化物半導体電極を用いてTiO2の仕事関数を求めた結果を示すグラフである。図5において、横軸は試料番号を示し、縦軸は仕事関数を示す。なお、仕事関数はKelvin Probe法を用いて測定した。測定前に、仕事関数が既知の試料(HOPG,Au)の仕事関数を測定し、参照電極の校正を行った。参照電極として、円筒状のガラスの底に金を蒸着したものを用いた。その参照電極にピエゾ素子(日本電気株式会社製AE023D08)を固定し、ピエゾドライバー(Mestek社製M-2633)を用いて500Hzで振動させた。このとき、試料と参照電極の間に流れる電流をプリアンプ(NF社製LI-76、gain:106 V/A) を用いて電圧に変換し、ロックインアンプ(NF社製LI-574A)で検出した。試料と参照電極間の電圧を10mV/s、または1mV/sで掃引し、印加電圧とロックインアンプの出力信号をX-Yレコーダ(理研電子株式会社製F-57)で記録した。
【0042】
図5によると、TiO2の多孔質層の電気化学的処理により、処理前にTiO2の仕事関数が5.1eVであったものを4.9eVに低下させることができることが分かる。これは、アルカリ金属イオンをTiO2にインターカレートさせることによりTiO2の構造を変化させたことに起因するものと考えられる。すなわち、本発明により、多孔質層15を形成するTiO2の仕事関数を低下させることができ、そのような多孔質層15を有する酸化物半導体電極11を用いて色素増感太陽電池を作製すると、開放光起電圧又は開放光起電圧向上率の高い、エネルギー効率の高い色素増感太陽電池を得ることができる。
【0043】
なお、処理ありの酸化物半導体電極11について多孔質層15を構成するTiO2の結晶構造のX線解析及び多孔質層15に存在するアルカリ金属微量成分の分析を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により行った。その結果によると、洗浄及び乾燥されてその後色素を吸着させた多孔質層15にはアルカリ金属が存在しないことが分かった。しかし、例えば、電気化学的処理により青色を呈した多孔質層(リチウムイオンがTiO2にインターカレートし、Li0.5TiO2が形成されている)を電解液から取り出し大気中に数分間以上放置・安定させた後(多孔質層の青色は消え、白色又は透明になる)、リチウムの残留量を測定するとLiが、分子量換算でTi021molに対して0.14mol含まれていた。Liの検量線の作製は、Liがそれぞれ1ppm、10ppm含まれた溶液のICP-AES分析を行って作製した。X線解析は、XRD測定装置(マックサイエンス社製M18XHF-SRA)を用いて行った。ICP-AESは、ICP発光分光分析装置(Perkin-Elmer社製Optima3000)を用いて行った。
【実施例2】
【0044】
TiO2の多孔質層の化学的処理を行って作製した酸化物半導体電極11を用いて色素増感太陽電池を作製し、電池性能試験を行った。色素増感太陽電池の作製及び試験方法は上記と同様に行った。化学処理は、THF30ml中に1.58MのBuLi(n-ヘキサン溶液)1.5mlを溶解させた溶液中にTiO2電極を10分間浸漬させることで行った。
【0045】
ブチルリチウム(BuLi)溶液中で化学的処理を行った試験結果を表4に示す。表4に示すように、化学的処理によっても上記の電気化学的処理と同様に、TiO2にアルカリ金属イオンをインターカレートさせることによって開放光起電圧を向上させ、エネルギー変換効率を向上させることができることが分かる。
【0046】
【表4】
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【実施例3】
【0047】
TiO2の多孔質層の電気化学的処理を、過塩素酸テトラメチルアンモニウム(TMAP)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)、テトラアルキルアンモニウム(TEAP)溶液中で行った酸化物半導体電極を用いて上記同様に色素増感太陽電池を作製し、電池性能試験を行った。短絡光電流密度、開放光起電圧、フィルファクター及びエネルギー変換効率のいずれについても、いずれの処理を行った場合も処理を行わなかった場合と変わらなかった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】色素増感太陽電池の構成を示す模式図である。
【図2】リチウムインターカレート処理を行った酸化物半導体電極からなる色素増感太陽電池の処理時間と電池性能特性の関係を示すグラフである。
【図3】各種アルカリ金属のインターカレート処理を行った酸化物半導体電極からなる色素増感太陽電池の処理時間と開放光起電圧の関係を示すグラフである。
【図4】リチウムインターカレート処理を行った酸化物半導体電極からなる色素増感太陽電池のI-V特性曲線を示すグラフである。
【図5】リチウムインターカレート処理の有無によるTiO2の仕事関数の相違を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
10 色素増感太陽電池
11 酸化物半導体電極
12 透明電極
13 基板
14 導電膜
15 多孔質層
16 色素
17 電解質溶液
18 対極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4