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明細書 :橋梁路面の凍結抑制装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4696246号 (P4696246)
公開番号 特開2007-285056 (P2007-285056A)
登録日 平成23年3月11日(2011.3.11)
発行日 平成23年6月8日(2011.6.8)
公開日 平成19年11月1日(2007.11.1)
発明の名称または考案の名称 橋梁路面の凍結抑制装置
国際特許分類 E01D   1/00        (2006.01)
E01D   2/04        (2006.01)
E01C  11/26        (2006.01)
E01H   5/10        (2006.01)
FI E01D 1/00 Z
E01D 2/04
E01C 11/26 A
E01H 5/10 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2006-115594 (P2006-115594)
出願日 平成18年4月19日(2006.4.19)
審査請求日 平成21年4月8日(2009.4.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 純
個別代理人の代理人 【識別番号】100107445、【弁理士】、【氏名又は名称】小根田 一郎
審査官 【審査官】柳元 八大
参考文献・文献 実開昭59-051810(JP,U)
特開平10-147906(JP,A)
特開昭55-092404(JP,A)
特開2003-306904(JP,A)
特開平08-152484(JP,A)
調査した分野 E01D 1/00
E01C 11/26
E01D 2/04
E01H 5/10
特許請求の範囲 【請求項1】
上面が橋梁路面とされる上床版と、下床版と、両者を左右両側で結合する側壁とで内部に閉鎖空間が区画形成されてなる箱桁橋を対象にして設置される橋梁路面の凍結抑制装置であって、
上記閉鎖空間に臨む上記上床版の下面を覆うように配設され通電による発熱作動により上記上床版に対し給熱するシート状発熱体と、上記閉鎖空間に臨む上記両側壁の内側面を覆うように配設され上記閉鎖空間から両側壁を通しての放熱を遮断する断熱層とを備えてなる
ことを特徴とする橋梁路面の凍結抑制装置。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁路面の凍結抑制装置であって、
上記シート状発熱体に対する通電制御により上床版に対する給熱を制御する制御手段と、上記上床版の上面である橋梁路面の温度を検出する橋梁路面側温度センサと、上記橋梁路面に接続される取付道路の路面温度を検出する取付道路側温度センサとをさらに備え、
上記制御手段は、上記橋梁側温度センサにより検出される橋梁路面温度と、取付道路側温度センサにより検出される取付道路側路面温度との間の温度差をなくすように通電による発熱作動と、通電停止による発熱作動停止とを相互切換制御するように構成されている、橋梁路面の凍結抑制装置。
【請求項3】
請求項2に記載の橋梁路面の凍結抑制装置であって、
上記制御手段は、上記取付道路側温度センサから出力される検出路面温度が上記取付道路の路面上に着氷又は積雪の存在を判定するために設定された積雪判定温度であれば、シート状発熱体に対する通電を強制的に停止させるように構成されている、橋梁路面の凍結抑制装置。
【請求項4】
請求項2に記載の橋梁路面の凍結抑制装置であって、
上記取付道路の路面上に着氷又は積雪の存在を検知する積雪検知センサをさらに備え、
上記制御手段は、上記積雪検知センサにより着氷又は積雪の存在の検知出力を受けたとき、シート状発熱体に対する通電を強制的に停止させるように構成されている、橋梁路面の凍結抑制装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁上の路面(橋梁路面)の凍結を抑制・防止するための凍結抑制装置に関し、特に、橋梁上の路面状況と、橋梁前後の取付道路上の路面状況との間の急激な相違に起因する交通障害の発生、すなわち取付道路側は非凍結であるにも拘わらず橋梁路面のみが凍結しているという現象に起因する交通障害の発生を防止するための技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁の橋梁面の融雪・融氷や凍結防止を図るために、橋梁路面の下方に温風循環路を設けたり(例えば特許文献1参照)、上面が舗装路面とされた鋼床版の裏面に向けて温風を噴射するようにしたり(例えば特許文献2参照)、あるいは、橋梁下面に電熱ヒータを設置した上にさらにその橋梁下面を保温材で被覆したり(例えば特許文献3参照)、するものが提案されている。
【0003】

【特許文献1】特開昭59-224704号公報
【特許文献2】特開2003-313818号公報
【特許文献1】特開昭55-92404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、橋梁路面上を車両が走行する道路橋においては、橋梁路面の凍結を防止して交通障害の発生を防止する必要があるといわれている。特に川等を跨ぐ道路橋の橋梁路面は夜間の放射冷却をより厳しく受けたり、川風に晒されたりして、一般道路の路面よりも凍結がより生じ易くなると考えられるため、橋梁路面に対し凍結防止対策を通常の道路に対するよりも施す必要がある。
【0005】
しかしながら、橋梁に降雪があればそれを融雪させたり、融雪させたままではその水が凍結するため温風供給や電熱ヒータへの通電等を継続させて凍結防止を図ったりするのでは、そのためのエネルギー消費は膨大なものとなる。
【0006】
その上、温風供給のための設備や電熱ヒータ等を設置する対策では、たとえ寒冷地や山間部の橋梁に対象を絞ったとしても膨大な設置工事負担を強いられることになるため、実際の適用は限られるものとなる。これに代わり、対症療法的対策として、例えば塩化カルシウム等の凍結防止剤の撒布という対策が広く実施されているものの、かかる塩を主成分とする凍結防止剤の撒布は河川水や周辺の土壌生態系に悪影響を与える上に、橋梁の構成材料であるコンクリートや鋼鉄に対しダメージを与え橋梁の耐久性を悪化させる要因にもなる。
【0007】
さらに、凍結防止対策のための装置が既設の橋梁に対しても容易に設置できるものでなくては実際上の要請を満たすことはできないという実情もある。すなわち、設置のために橋梁を構成する躯体部分に埋設の必要があったり、橋梁の主要部分に特別な構造上の設計変更が必要であったりすると、対策を必要としている大多数の既設橋梁への適用が不能又は困難なものとなる。又、既設橋梁に対し適用可能ではあっても、そのために特別な工事設備を要したり手間のかかる作業を要したりするものであると、対策としては採用されず、結果として既設橋梁には適用されないままとなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー消費を極力抑制して省エネルギー化を図りつつも、橋梁路面の凍結等に起因する交通障害発生の防止を合理的にかつ十分に図り得る橋梁路面の凍結抑制装置を提供することにある。併せて、新設・既設の如何に拘わらず極めて容易に設置し得るようにし、結果として、従来使用されている凍結防止剤の撒布を不要又は廃止し得るようにすることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者は、橋梁路面の凍結に起因する交通障害発生のメカニズムについて検討を加え、橋梁路面の凍結に起因する交通障害発生を防止・抑制するには、橋梁路面と取付道路面との間における路面凍結発生のタイムラグをなくすようにすればよい、すなわち、橋梁路面が凍結し始める開始タイミングをより後に遅延させるようにすればよいことに着目した。すなわち、まず、従来は推測により言われてきた橋梁路面が取付道路面よりも早期に発生するという点につき、そのメカニズムを、既設橋梁を対象にした熱収支確認試験によって確認し、その上で、取付道路面は非凍結状態であるにも拘わらず橋梁路面のみが凍結しているという状況下で上記の交通障害が発生すること、つまり、取付道路面は非凍結状態であるにも拘わらず橋梁路面のみが凍結しているという現象の発生が交通障害発生の主原因であることを見出した。要するに、取付道路面に積雪又は凍結が認められるときには、運転者は橋梁路面に入る際にもスリップに注意して運転操作を行うであろうと考えられる反面、取付道路面が乾燥している等の非凍結状態で橋梁路面のみが凍結しているときには、運転者は橋梁に入った時点で初めてスリップを回避するための運転操作を行うことになり、このときの制動操作等によりスリップを生じ交通障害発生の可能性が高くなると考えられる。
【0010】
そこで、本発明では、具体的には、上面が橋梁路面とされる上床版と、下床版と、両者を左右両側で結合する側壁とで内部に閉鎖空間が区画形成されてなる箱桁橋を対象にして設置される橋梁路面の凍結抑制装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記閉鎖空間に臨む上記上床版の下面を覆うように配設され通電による発熱作動により上記上床版に対し給熱するシート状発熱体と、上記閉鎖空間に臨む上記両側壁の内側面を覆うように配設され上記閉鎖空間から両側壁を通しての放熱を遮断する断熱層とを備えてなるものとした(請求項1)。
【0011】
本発明の場合、上記閉鎖空間を蓄熱空間にして上床版の上面の橋梁路面に対しシート状発熱体から限定的にかつ効率よく給熱させて、橋梁路面の凍結予防又は凍結抑制を少ない消費エネルギーにより図ることが可能になる。通常、上床版は太陽放射により、下床版は河川から反射される長波放射によりそれぞれ加温され、内部の閉鎖空間まで伝搬する。その際、両側壁が断熱層により熱伝達が遮断されているため、両側壁を介しての放熱が阻止され、閉鎖空間内の蓄熱は上方の上床版を介して橋梁路面に給熱されることになる。そして、シート状発熱体が発熱作動されると、上記の如く両側壁の断熱層により両側壁を通して熱が逃げることが阻止されているため、その発熱が橋梁路面に対し効率よく給熱されて、橋梁路面の昇温のために利用されることになる。以上より、橋梁路面に対し効率よく給熱させて昇温させることが可能になり、昇温のための消費エネルギーの低減化が図られる。その上に、シート状発熱体及び断熱層の配設作業を、作業空間として閉鎖空間を利用して閉鎖空間の側から行い得るため、既設の橋梁に対しても極めて容易に設置することが可能である上に、以後のメンテナンスも容易に行い得る。これにより、既設の橋梁に対しても、従来の対症療法的な凍結防止剤の撒布による対策に代えて、本発明の凍結抑制装置を容易に適用することが可能となり、凍結防止剤の撒布に起因する種々の弊害の発生を回避させることが可能となる。
【0012】
上記発明に対し、さらに、上記シート状発熱体に対する通電制御により上床版に対する給熱を制御する制御手段と、上記上床版の上面である橋梁路面の温度を検出する橋梁路面側温度センサと、上記橋梁路面に接続される取付道路の路面温度を検出する取付道路側温度センサとを備えるようにすることができる。この場合には、上記制御手段として、上記橋梁側温度センサにより検出される橋梁路面温度と、取付道路側温度センサにより検出される取付道路側路面温度との間の温度差をなくすように通電による発熱作動と、通電停止による発熱作動停止とを相互切換制御する構成を採用するようにすればよい(請求項2)。つまり、取付道路側路面温度を基準にして橋梁路面温度が取付道路側路面温度と同等になるまで昇温するように通電による発熱作動と、通電停止による発熱作動停止とを相互切換制御する構成とすることであり、以後も橋梁路面温度が取付道路側路面温度と同等に維持することになるように上記の相互切換制御を実行する構成とする。このようにすることにより、橋梁路面の方が先に凍結し始めてしまい取付道路面は非凍結状態であるにも拘わらず橋梁路面のみが凍結しているという現象の発生を、確実に回避させることが可能になる。
【0013】
上記の如く制御手段による通電制御を行う場合には、さらに、上記制御手段として、上記取付道路側温度センサから出力される検出路面温度が上記取付道路の路面上に着氷又は積雪の存在を判定するために設定された積雪判定温度であれば、シート状発熱体に対する通電を強制的に停止させる構成を追加するようにしてもよい(請求項3)。取付道路側に積雪等があれば走行車両の運転者は橋梁に入る前からスリップを防止すべくこれに対応した運転操作を行うであろうことから、上記の如く取付道路側に積雪が存在するとの判定結果が得られたらシート状発熱体からの給熱を強制的に停止させることにより、橋梁路面の凍結に起因する交通障害の発生を極力回避しつつも、より一層の消費エネルギーの低減化を図ることが可能になる。
【0014】
あるいは、上記の積雪判定温度に基づく通電停止以外に、次の構成を採用するようにしてもよい。すなわち、上記取付道路の路面上に着氷又は積雪の存在を検知する積雪検知センサをさらに備えこととし、上記制御手段として、上記積雪検知センサにより着氷又は積雪の存在の検知出力を受けたとき、シート状発熱体に対する通電を強制的に停止させる構成を追加するようにしてもよい(請求項4)。このようにすることにより、上記の請求項3の場合と同様の作用を得つつも、取付道路側の積雪等の存在を直接に検知することが可能になるため、積雪等の検知における誤判定又は誤認の発生を排して上記の作用を確実に得られることになる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、請求項1~請求項4のいずれかの橋梁路面の凍結抑制装置によれば、橋梁内部の閉鎖空間を蓄熱空間にして上床版の上面の橋梁路面に対しシート状発熱体から限定的にかつ効率よく給熱させて昇温させることができ、昇温のための消費エネルギーの低減化を図り橋梁路面の凍結予防又は凍結抑制を実現する上で省エネルギー化を図ることができる。その上に、シート状発熱体及び断熱層の配設作業を、作業空間として閉鎖空間を利用して閉鎖空間の側から容易に行うことができ、既設の橋梁に対しても極めて容易に設置することができる上に、以後のメンテナンスも容易に行うことができる。この結果、既設の橋梁に対する凍結防止剤の撒布による従来の対策を不要にして、凍結防止剤の撒布に起因する種々の弊害の発生を回避させることができるようになる。
【0016】
特に、請求項2によれば、橋梁路面の方が先に凍結し始めてしまい取付道路面は非凍結状態であるにも拘わらず橋梁路面のみが凍結しているという現象の発生を確実に回避させることができ、かかる現象の発生に起因する交通障害の発生をより確実に防止・抑制することができる。その上に、給熱基準を特定することができ、消費エネルギーの低減化をより具体的に得ることができるようになる。
【0017】
又、請求項3によれば、取付道路側に着氷又は積雪があることを判定・検知すれば、橋梁路面に対するシート状発熱体による給熱を停止させることにより、上記の橋梁路面の凍結に起因する交通障害の発生を極力回避し得るという効果を得つつも、より一層の消費エネルギーの低減化を図ることができることになる。さらに、請求項4によれば、取付道路側の積雪等の存在を積雪検知センサにより直接に検知することができ、積雪等の検知における誤判定又は誤認の発生を排して、上記の請求項3による効果と同様効果をより一層確実に得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る橋梁路面の凍結抑制装置を適用した橋梁2の例を示す。この橋梁2は、河川3を跨いで前後の取付道路4a,4b間を接続する道路橋であり、図2にも示すようにPCコンクリート製の箱桁橋により構成されたものである。すなわち、上面が舗装されて橋梁路面21とされる上床版22と、下面が河川3に臨んで橋梁2の底面となる下床版23と、両者をその両側位置で接続する側壁24,25とで箱桁26が形成され、この箱桁26の内部には上記の上床版22、下床版23及び両側壁24,25により区画されて橋梁長手方向に連続する閉鎖空間27が形成されている。
【0020】
本実施形態の凍結抑制装置は、図2に示すように、上記上床版22の下面221を覆うように密着させて給熱するシート状発熱体5と、上記両側壁24,25の内側面241,251を覆うように設けられた断熱層6,6とを備えて構成されている。
【0021】
上記シート状発熱体5は、通電により発熱する電熱線等の抵抗素材を担持シートに担持させて構成されたものである。例えば、導電性カーボン粒子を可塑性のマトリックス樹脂に配合して形成した正温度係数(Positive Temperature Coefficient)を有する抵抗素材をシート状の絶縁性フィルムに塗布することにより面状の発熱体を構成したものが挙げられる。具体的にはフェバーヒーター(日本特殊工業株式会社製)等を用いればよい。このようなシート状発熱体5を上床版22の下面221を覆うように配置し接着等の手段により密着させて、発熱作動により上床版22に対し給熱(熱供給)させるようにする。接着により密着させる場合には、上記下面221に対し熱伝導性の良い接着材(例えば住友スリーエム株式会社製の熱伝導性接着剤EW2070)を塗布して接着させるようにすればよい。なお、かかるシート状発熱体5は所定サイズの矩形形態(例えば0.9m×1.8mの矩形)又は所定幅(例えば0.9m)の巻きロール形態により提供される。又、シート状発熱体5の接着範囲は上記下面221の実質的な意味での全表面を覆う範囲を設定するのが好ましいが、もちろん、給熱の熱伝達範囲として未給熱範囲が生じない範囲でシート状発熱体5の未接着範囲を設けるようにしてもよい。
【0022】
上記各断熱層6は、閉鎖空間27内の熱が両側壁24,25を介して外部空間に放熱しないように閉鎖空間27と両側壁24,25との間を熱的に絶縁するために設けられるものである。かかる断熱層6,6は、ポリウレタンフォーム製等の面状の断熱材を添着するようにしてもよいし、あるいは、発泡樹脂材料を各側壁24,25に対し所定厚みまで吹き付けることにより形成するようにしてもよい。
【0023】
上記シート状発熱体5の発熱作動(通電)及び発熱作動停止(通電停止)等は、図3に示すように制御手段としてのコントローラ7により制御されるようになっている。コントローラ7(図1参照)は、例えば取付道路4a又は4b側から上記閉鎖空間27内への点検用出入り口近傍の適所に設置され、外部の送電線等の電源8と電力供給線81を介して接続されている。又、取付道路4a又は4bの路面41a,41b(図1の例では41a)にはその路面温度(表面温度)を検出する取付道路側温度センサ91が配設される一方、橋梁2の路面21にはその表面温度を検出する橋梁路面側温度センサ92が配置されている。かかる温度センサ91,92としては、例えば株式会社チノー製の表面温度測定用センサーR060シリーズを用いればよい。そして、上記コントローラ7は、これら各温度センサ91,92から出力される取付道路4a側と、橋梁2側との2種類の検出路面温度に基づいてシート状発熱体5に対する通電制御を行うようになっている。
【0024】
すなわち、橋梁側路面温度Tbが取付道路側路面温度Trよりも低ければ、取付道路側路面温度Trに等しくなるようにシート状発熱体5に通電(発熱作動)して上床版22に給熱する一方、この給熱により橋梁側路面温度Tbが取付道路側路面温度Trまで到達すれば通電を停止(発熱作動を停止)する。以後、上記の2種類の検出路面温度Tb,Trの対比に基づいて通電と通電停止とを相互に繰り返すことにより、橋梁側路面温度Tbが取付道路側路面温度Trに等しくなるように維持する。
【0025】
以上の構成の凍結抑制装置により交通障害の発生を回避し得るメカニズムは、本発明者による次の試験結果及び検討結果から得た解釈に基づくものである。すなわち、外気温が氷点下の気温状況において石油バーナを備えた温風ヒータを用いて閉鎖空間27内に対する加温を開始しその加温を所定時間継続し、所定時間経過後に加温を停止させた。その加温の開始前から停止後までの閉鎖空間27内の代表点(中位レベル)、の温度変化を測定した。この結果、加温開始により閉鎖空間27の内部温度は速やかに上昇するも、ある温度幅だけ上昇した後には加温を継続しても一定温度を維持した。この温度上昇幅は2℃であった。そして、加温を停止すると、上記の内部温度は上記の温度上昇幅に相当する温度だけ速やかに低下した。以上の試験結果の詳細は本発明者を含む者によりアメリカ土木学会(ASCE)の文献(Suzuki and Hoshikawa; Proposed curing method for grouting concrete within box guilder bridge in cold regions and during cold seasons; Cold region engineering, ASCE )として発表予定である。以上より、橋梁2の内部(閉鎖空間27内)で発生した熱は、上床版22等の橋梁2の構成躯体に速やかに移動し、移動した熱も外部空間に速やかに放熱される、との解釈が成り立つと考えられる。
【0026】
又、橋梁2の自然条件下における温度特性については次のように解釈される。すなわち、橋梁2の温度特性は、上床版22、下床版23、両側壁24,25及び上床版22の両側の張り出し部22′,22′の各部位の温度特性により構成される。上床版22は放射に大きく支配されその放射により大きな温度変化を示す一方、下床版23は放射の影響が少なく温度変化も小さいものに止まる。つまり、日中において、上床版22は太陽放射を受けて大きく昇温する一方、下床版23の昇温幅は上床版22のそれと比較して極めて小さいものに止まる。これに対し、夜間において、上床版22は放射冷却を受けて大きく降温する一方、下床版23の降温幅は上床版22のそれと比較して小さいものに止まる。又、両側壁24,25は太陽が昇り始めて太陽放射を受ける間は昇温するものの、太陽が高く昇って太陽放射が上記張り出し部22′又は22′により遮られるようになると急激に降温する。さらに、上床版22の上面である路面21は、上床版22自体よりも日較差が大きくなる。そして、橋梁2の内部温度(閉鎖空間27内の気温)の日較差は極めて小さく、その日較差の大半部分は上床版22自体の温度変化に起因するものである。以上の検討の詳細は本発明者を含む者によりアメリカ土木学会(ASCE)の文献(Suzuki, Ohba, Uchikawa, Hoshikawa, and Kimura; Monitoring of the temperature on a real box guilder bridge and analysis for basic information of bridge cooling and surface freezing; Journal of bridge engineering, ASCE )として発表予定である。以上より、橋梁2の路面21と、上床版22とは、日中の太陽放射(日射;短波放射)と、夜間の放射冷却との影響を受けて温度の日較差が大きくなるのに対し、下床版23の温度の日較差は小さいものに止まる。閉鎖空間27内の温度の変化要因は上床版22の温度変化に起因するものに支配され、下床版23や両側壁24,25には左右されない、との解釈が成り立つと考えられる。
【0027】
以上の試験結果及び検討結果に基づく解釈より、次の事項が導かれる。すなわち、箱桁橋により構成された橋梁2の内部、つまり閉鎖空間27内に給熱することにより、橋梁2の構成躯体にその熱を移動させることが可能であり、この構成躯体に移動した熱は構成躯体に停滞することなく速やかに外部に放熱されて凍結抑制のために作用することになる。従って、上記の凍結抑制装置の如く、シート状発熱体5に通電して発熱させ、その発熱の大半を下面221から上床版22に対し熱伝導させて限定的に給熱して路面21を昇温させる一方、残りの熱で閉鎖空間27を昇温させる。この際、両側壁24,25の各内側面241,251の断熱層6,6により閉鎖空間27内の熱が逃げないように遮断される。これにより、閉鎖空間27内の熱の浪費が阻止され、閉鎖空間27が一種の蓄熱空間として機能することになる。一方、下床版23からの放熱は上床版22や両側壁24,25からのそれよりは小さいことから、下床版23に対する断熱層形成は行わず、日中の河川3から下床版23に対し受ける長波放射により閉鎖空間27内の昇温・蓄熱に寄与させることにする。そして、上記の上床版22にはシート状発熱体5に対する通電継続により給熱が継続されると共に、内部の閉鎖空間27への蓄熱継続により上記の上床版22に対する給熱をより安定的にかつより限定的に行うことができ、路面21を取付道路側路面温度と同等温度まで確実にかつ効率的に昇温させることができることになる。
【0028】
以上、単に上床版22を加熱するだけで側方にも放熱により熱が逃げてしまう場合と比べ、路面21を昇温させるのに要する消費エネルギーを大幅に低減させることができる上に、取付道路4a,4bの路面41a,41bが凍結していないにも拘わらず橋梁2側の路面21のみが凍結しているという事態の発生を確実に回避・抑制することができ、かかる橋梁2側の路面21のみが凍結していることに起因する交通障害発生のおそれを確実に回避することができるようになる。しかも、かかる効果を、閉鎖空間27を作業空間にして上床版22の下面221に対しシート状発熱体5を接着し、内側壁24,25の各内側面241,251の表面を断熱層6,6で覆うというように、既設の橋梁2に対しても特別な設備等なしに容易な作業により得ることができる。そして、以後のメンテナンスも、閉鎖空間27を作業空間として容易に行うことができるようになる。このように既設の橋梁2に対しても極めて容易に設置することができるため、結果として、従来の対症療法的対策として実施されている凍結防止剤の撒布行為を不要にしたり、廃止させたりすることができるようになる。このため、凍結防止剤の撒布に起因して従来生じていた橋梁2の耐久性低下やこれに起因する補修工事の増加、あるいは、河川・土壌等の生態系に対する悪影響等の不都合も全て解消させることができる。
【0029】
ここで、以上の構成だけに限らず、上記実施形態に対し次の如き付加事項を追加するようにしてもよい。すなわち、本発明の凍結抑制装置の目的は、取付道路4a,4b側の路面41a,41bが凍結していないにも拘わらず橋梁2側の路面21だけが凍結しているという事態を回避することであり、橋梁2側の路面21上の氷や積雪を常時溶けた状態にすることではない。従って、上記のコントローラ7による通電制御に基づく上床版22に対する給熱は、その目的実現に対応するものでよく、取付道路4a,4bの路面41a,41b上に氷や積雪が有る場合には走行車両の運転手は橋梁2に入る前から慎重に運転操作するであろうことから、上記の通電による上床版22に対する給熱を行う必要はない。このため、上述のコントローラ7による通電制御において、取付道路側温度センサ91から出力される検出路面温度Trが上記の氷又は積雪の存在を示す温度(例えば0℃以下)であれば、シート状発熱体5に対する通電を停止するようにすることもできる。このようにすれば、給熱に要する消費エネルギー(電力エネルギー)についてより一層の低減化(省エネルギー化)を図ることができるようになる。
【0030】
さらに、この場合には、取付道路4a,4b側の積雪等の検出の正確性を期すために、路面41a,41b上の着氷や積雪を直接に検知する積雪検知センサ93(図3参照)を設置し、この積雪検知センサからの検知出力を上記の取付道路側温度センサ91からの出力Trに加え又はこれに代えて、コントローラ7での通電制御に利用するようにしてもよい。あるいは、取付道路側温度センサ91からの出力と併用させる場合には、降雨検知センサ(例えば株式会社ブリード製の感雨計PPS-01又は02)を設置して、降雨の検知と0℃以下の路面温度Trの検出とによって着氷や積雪の発生や存在を検出するようにしてもよい。つまり、路面温度Trが低くても降雨や降雪がなければ凍結も生じ得ないことから、凍結のおそれのある温度と、降雨の存在との双方の検知により、確実な通電停止を図るようにしてもよい。
【0031】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、図1にPCコンクリート製の3径間連続箱桁橋を示しているが、PCコンクリート製に限らず鉄筋コンクリート製又は鋼製でもよく、もちろん3径間に限らず2径間もしくは多径間でもよく、箱桁橋の如く橋梁路面下側の橋梁内部に橋梁長手方向に連続する閉鎖空間が形成される形式のものであれば、いずれの形式の橋梁に対しても本発明を適用することができる。
【0032】
又、取付道路4a,4bの路面41a,41bの路面温度と、橋梁2の路面21の路面温度との間に普遍的関係があれば、上記実施形態の如く取付道路側と橋梁側とにそれぞれ温度センサを設置しなくても、取付道路側だけにその路面温度を検出する温度センサを設置するようにしてもよい。すなわち、上述のアメリカ土木学会の文献に発表した試験結果では橋梁2の路面21の路面温度は取付道路4a,4bの路面41a,41bの路面温度よりも常に2℃程度低いという結果を得たため、シート状発熱体5に対する通電制御として路面21をその2℃分だけ昇温させるのに要する給熱量となるように行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態が適用された橋梁を示す正面説明図である。
【図2】図1の例えばA-A線で切断した場合の一部省略斜視図である。
【図3】シート状発熱体に対する通電制御に係るブロック構成図である。
【符号の説明】
【0034】
2 橋梁(箱桁橋)
4a,4b 取付道路
5 シート状発熱体
6 断熱層
7 コントローラ(制御手段)
21 橋梁の路面
22 上床版
23 下床版
24,25 側壁
26 箱桁
27 閉鎖空間
41a,41b 取付道路の路面
91 取付道路側温度センサ
92 橋梁路面側温度センサ
221 上床版の下面
241,251 側壁の内側面
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2