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明細書 :熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定方法およびその測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3743802号 (P3743802)
公開番号 特開2005-055307 (P2005-055307A)
登録日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発行日 平成18年2月8日(2006.2.8)
公開日 平成17年3月3日(2005.3.3)
発明の名称または考案の名称 熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定方法およびその測定装置
国際特許分類 G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/00        (2006.01)
G01N  21/71        (2006.01)
FI G01N 21/64 Z
G01N 21/00 B
G01N 21/71
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2003-286624 (P2003-286624)
出願日 平成15年8月5日(2003.8.5)
審査請求日 平成15年12月12日(2003.12.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】鎌田 憲彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】横井 亜矢子
参考文献・文献 特開2002-286640(JP,A)
特開平04-310828(JP,A)
特開平09-167791(JP,A)
特開2002-148341(JP,A)
調査した分野 G01N 21/62-21/74
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
フォトルミネッセンス(PL)による禁制帯内準位の測定方法において、
(a)発光・受光および電子材料に低温下で予め光子エネルギーEexc のAGE光またはBGE光を照射して、励起キャリア(電子又は正孔)を禁制帯内の捕獲準位に捕獲させ、
(b)AGE光またはBGE光を遮断後、一定昇温率で温度を上昇させながら、捕獲準位から熱放出されたキャリアによる発光を温度の関数として観測するときに、ある中間温度で光子エネルギーEB のBGE光を照射して、照射しなければその後熱放射されたであろう捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位のキャリアをBGEにより光励起して、一度に発光を生成させ、この後の昇温では、捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位にキャリアは存在しないため発光は生じず、捕獲エネルギーET >EB の準位からのキャリアが熱放出される温度に達して初めて次の発光を生じさせ、
(c)前記光励起と熱励起の相反的関係から、特定の光子エネルギーEexc とEB 、あるいは相異なる複数のEexc とEB の組み合わせを利用して禁制帯内準位のエネルギーを検出することを特徴とする熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定方法。
【請求項2】
フォトルミネッセンス(PL)による禁制帯内準位の測定装置において、
(a)AGE光を照射するAGE光源と、
(b)BGE光を照射するBGE光源と、
(c)試料としての発光材料に作用する冷却および加熱装置と、
(d)該冷却および加熱装置の温度を制御する温度制御装置と、
(e)試料の温度を検出するセンサとを備え、
(f)発光・受光および電子材料に低温下で予め光子エネルギーEexc のAGE光またはBGE光を照射して、励起キャリア(電子又は正孔)を禁制帯内の捕獲準位に捕獲させ、AGE光またはBGE光を遮断後、前記センサ及び温度制御装置により、一定昇温率で温度を上昇させながら、捕獲準位から熱放出されたキャリアによる発光を温度の関数として観測するときに、ある中間温度で光子エネルギーEB のBGE光を照射すると、照射しなければその後熱放射されたであろう捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位のキャリアをBGEにより光励起させ、一度に発光を生じさせ、この後の昇温では、捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位にキャリアは存在しないため発光は生じず、捕獲エネルギーET >EB の準位からのキャリアが熱放出される温度に達して初めて次の発光を生じさせ、この光励起と熱励起の相反的関係から特定の光子エネルギーEexc とEB 、あるいは相異なる複数のEexc とEB の組み合わせを利用して、禁制帯内準位のエネルギーを測定することを特徴とする熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発光・受光および電子材料中に存在し、素子効率や安定性、信頼性を低下させるために、その成因解明と除去が望まれている禁制帯内準位(欠陥や残留不純物等の作る、本来あってはならないエネルギー準位で、捕獲準位や非発光再結合準位として作用する)を高精度に検出、評価するための非破壊、非接触の光学的測定方法およびその測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでのフォトルミネッセンス(PL)では、異なる試料間での発光強度の相対比を求めることは容易であるが、素子効率や安定性、信頼性を定める非発光再結合準位や捕獲準位のふるまいを定量的に調べることは不可能であった。
【0003】
これに対して本願発明者らは、禁制帯エネルギー幅以上の励起(Above-Gap Excitation,AGE)光と、禁制帯エネルギー幅以下の励起(Below-Gap Excitation,BGE)光の2波長励起PLの手法により、非発光再結合準位として作用する禁制帯内準位のエネルギー、空間分布、濃度、電子・正孔捕獲率等の非発光再結合パラメータを定量的に導出可能であることを示した。また、パルス励起での時分解PL応答から、より容易に非発光再結合パラメータの導出が可能であることを示した(下記特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ここで非発光再結合準位のエネルギー分布はBGEエネルギーを変化させて測定可能であるが、実際上はそれに十分な強度の光源を赤外領域まで準備すること、特に捕獲準位を分けて測定することはさほど容易でない。
【0005】
これとは別に、捕獲準位にキャリアを捕獲させた後、一定速度で昇温させながら熱放出キャリアによる発光を温度の関数として観測する方法(熱ルミネッセンス法)がある。
【0006】
この方法では、昇温速度を変えながら複数回の測定を行うと、捕獲準位のエネルギーが求められるが、測定に時間がかかる上に精度が十分でなく、また他の非発光再結合準位の影響を分離することができなかった。

【特許文献1】特開2002-286640号公報(第2-3頁 図2)
【非特許文献1】E.Kanoh,K.Hoshino,N.Kamata,K.Yamada,M.Nishioka and Y.Arakawa,J.Lumin,63,pp.235-240,1995.
【非特許文献2】N.Kamata,J.M.Z.Ocampo,K.Hoshino,K.Yamada,M.Nishioka,T.Someya and Y.Arakawa,Recent Res.Developments in Quantum Electronics,1,pp.123-135,1999.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発光・受光および電子材料・デバイスの素子効率や安定性、信頼性を改善するために、禁制帯内準位を高精度に検出、評価するための非破壊、非接触の測定手法が産業界から強く望まれている。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みて、捕獲準位を始めとする禁制帯内準位のエネルギーを簡便、かつ正確に測定することができる熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕熱励起を加えたフォトルミネッセンス(PL)による禁制帯内準位の測定方法において、
(a)発光・受光および電子材料に低温下で予め光子エネルギーEexc のAGE光またはBGE光を照射して、励起キャリア(電子又は正孔)を禁制帯内の捕獲準位に捕獲させ、
(b)AGE光またはBGE光を遮断後、一定昇温率で温度を上昇させながら、捕獲準位から熱放出されたキャリアによる発光を温度の関数として観測するときに、ある中間温度で光子エネルギーEB のBGE光を照射して、照射しなければその後熱放射されたであろう捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位のキャリアをBGEにより光励起して、一度に発光を生成させ、この後の昇温では、捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位にキャリアは存在しないため発光は生じず、捕獲エネルギーET >EB の準位からのキャリアが熱放出される温度に達して初めて次の発光を生じさせ、
(c)前記光励起と熱励起の相反的関係から、特定の光子エネルギーEexc とEB 、あるいは相異なる複数のEexc とEB の組み合わせを利用して、禁制帯内準位のエネルギーを検出することを特徴とする。
【0010】
ここで、簡単化のために2つの捕獲準位(エネルギーET1およびET2)と1つの非発光再結合準位(エネルギーENT)を有する半導体を図1に例示し、電子の捕獲、放出過程に関し説明する。
【0011】
図1は、2つの捕獲準位(エネルギーET1およびET2)と1つの非発光再結合準位(エネルギーENT)を持つ半導体のエネルギーバンド図(簡単化するため電子のみを考慮するもの)である。ここで、上記(a)でAGE光により捕獲準位1および2に電子が捕獲される。この場合、通常の熱ルミネッセンス測定では、捕獲準位1から非発光再結合準位および伝導帯への電子放出(要するエネルギーΔE1 =ENT-ET1,ΔE2 =Eg -ET1)が温度T1 ,T2 (T2 >T1 )で起こるが、このうち温度T2 での放出過程のみが発光として観測される。このとき捕獲準位2からの電子放出はΔE3 =ENT-ET2およびΔE4 =Eg -ET2に対応する温度が高すぎるため観測されず、結局捕獲準位2および非発光再結合準位は検出されない。
【0012】
これに対し、上記(b)で前述の温度T2 まで昇温を行うと、図2に示す通り、捕獲準位1の電子は既に放出されており、電子は捕獲準位2のみに捕獲されている。この状態に温度を保ち光子エネルギーEB2=Eg -ET2のBGE光を照射すると、捕獲準位2から伝導帯への電子放出が発光として観測される。また再度AGE光での電子捕獲、温度T2 までの昇温後、今度はEB2でなく、まずEB1=ENT-ET2のBGE光を照射し、その後に先のEB2のBGE光を照射すると、捕獲準位2の電子は非発光再結合準位を介して非発光再結合してしまっているため、発光は生じない(図2参照)。
【0013】
このことから、従来手法では測定不能であった捕獲準位2および非発光再結合準位のエネルギーを定量的に検出することができる。なお、図3に示すように、最初にAGE光でなく光子エネルギーEexc =ET2のBGE光を用いると、直接捕獲準位2のみに電子を捕獲させることができる。したがって、前述の通り捕獲準位へキャリアを捕獲させる光子エネルギーEexc および捕獲準位からキャリアを放出させる光子エネルギーEB の組み合わせによって、禁制帯内の捕獲準位、非発光再結合準位を個別に分離し、しかもその個々を定量測定することが可能となる。
【0014】
〔2〕熱励起を加えたフォトルミネッセンス(PL)による禁制帯内準位の測定装置において、AGE光を照射するAGE光源と、BGE光を照射するBGE光源と、試料としての発光材料に作用する冷却および加熱装置と、この冷却および加熱装置の温度を制御する温度制御装置と、試料の温度を検出するセンサとを備え、発光・受光および電子材料に低温下で予め光子エネルギーEexc のAGE光またはBGE光を照射して、励起キャリア(電子又は正孔)を禁制帯内の捕獲準位に捕獲させ、AGE光を遮断後、前記温度制御装置により、一定昇温率で温度を上昇させながら、捕獲準位から熱放出されたキャリアによる発光を温度の関数として観測するときに、ある中間温度で光子エネルギーEB のBGE光を照射すると、照射しなければその後熱放射されたであろう捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位のキャリアをBGEにより光励起させ、一度に発光を生じさせ、この後の昇温では、捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位にキャリアは存在しないため発光は生じず、捕獲エネルギーET >EB の準位からのキャリアが熱放出される温度に達して初めて次の発光を生じさせ、この光励起と熱励起の相反的関係から、特定の光子エネルギーEexc とEB 、あるいは相異なる複数のEexc とEB の組み合わせを利用して、禁制帯内準位のエネルギーを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0016】
(A)非破壊、非接触の光学測定であり、電極が不要であるため試料形状によらない、各プロセスごとの測定評価が可能である。
【0017】
(B)励起光スポットサイズを絞ることにより、局所的な評価が可能である。この極限として、近接場光学技術を用いて、単分子、単一量子ドット測定までが可能である。一方、スポットサイズを広げると、広範囲な領域の平均情報が容易に得られる。
【0018】
(C)発光観測による準位のエネルギー、空間分布測定が、さらに広いエネルギー領域で簡便に可能となる。
【0019】
(D)捕獲準位以外の非発光再結合準位に関する情報は従来の熱ルミネッセンス測定では得られないが、本発明ではそれが可能である。これにより、禁制帯内準位を総括的に分類評価することができる。
【0020】
(E)熱ルミネッセンス測定で問題であった測定時間を大幅に短縮し、測定精度を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発光・受光および電子材料に低温下で予め光子エネルギーEexc のAGE光またはBGE光を照射し、励起キャリア(電子又は正孔)を禁制帯内の捕獲準位に捕獲させる。AGE光またはBGE光を遮断後、一定昇温率で温度を上昇させながら、捕獲準位から熱放出されたキャリアによる発光を温度の関数として観測する。このときある中間温度で光子エネルギーEB のBGE光を照射すると、照射しなければその後熱放射されたであろう捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位のキャリアはBGEにより光励起され、一度に発光を生じる。この後の昇温では、捕獲エネルギーET <EB の捕獲準位にキャリアは存在しないため発光は生じず、捕獲エネルギーET >EB の準位からのキャリアが熱放出される温度に達して初めて次の発光が生じる。
【0022】
この光励起と熱励起の相反的関係から、特定の光子エネルギーEexc とEB 、あるいは相異なる複数のEexc とEB の組み合わせを利用して、本発明は禁制帯内の捕獲準位、非発光再結合準位のエネルギーを簡便、確実に測定する。また、この測定手法、並びにこの測定を行うために、試料を一定温度に保ち、また、一定速度で昇温しながら2波長励起発光測定が可能な測定装置を提供する。
【実施例】
【0023】
図4は本発明の実施例を示す熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定装置(システム)の構成図である。
【0024】
この図において、1はAGE光源、2はBGE光源、3は試料、4は分光器、5は光電子増倍管、6はデジタルオシロスコープ、7はボックスカー積分器、8はコンピュータ、9は冷却および加熱装置、10は温度制御装置、11は温度センサである。
【0025】
一例として、試料3として青色発光半導体であるGaNを評価する場合、AGE光源1としては重水素ランプに干渉フィルターを組み合わせたもの、BGE光源2としては連続発振Nd:YAGレーザー類、または波長可変のNd:YAGレーザー励起光パラメトリック発振器(OPO)、色素レーザー、Ti:サファイアレーザー等のパルス発振レーザー類を用いる。試料3からの発光は分光器4で分光後、光電子増倍管5で受光し、その時間応答波形(連続発振レーザー励起の場合はその光チョッパーによる断続に対する波形変化)がデジタルオシロスコープ6、またはボックスカー積分器7等を通してコンピュータ8に記録される。また、コンピュータ8はAGE光源1またはBGE光源2に接続されて、これらの励起光を得ることができるようになっている。
【0026】
さらに、本発明では、試料3の温度を制御するための構成を有している。つまり、試料3に作用する冷却および加熱装置9と、この冷却および加熱装置9の温度を制御する温度制御装置10と、試料3の温度を検出する温度センサ11とを備えている。
【0027】
以下、本発明の熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位のエネルギーの測定の実施例について説明する。
【0028】
図5は、本発明にかかるBGE照射を加えた場合の発光強度の温度依存性を示す図、図6は本発明にかかるBGE照射を加えない場合の発光強度の温度依存性と、各ピークをもたらす捕獲準位のエネルギーを示す図である。
【0029】
標準的な赤色蛍光体としてY2 2 S:Eu3+が知られている。そこで、母体のY2 2 S結晶を光励起すると、励起キャリアがEu3+に移動し、Eu3+のf-f遷移により固有の赤色発光(波長626nm)を生じる。このY2 2 S:Eu3+蛍光体(4.5mol%)を15Kに冷却し、波長240nm(光子エネルギーEexc =5.17eV)のAGE光を強度0.25nW/mm2 で300sec照射して禁制帯内の捕獲準位をキャリアで満たした。
【0030】
次に、3.17K/min(K/分)の速度で60Kまで昇温し、波長1064nm(光子エネルギーEB =1.17eV)のBGE光を強度7.87mW/mm2 で照射したところ、図5に示すように、Eu3+のf-f遷移による発光強度の一時的増大が観測された。その後、BGE照射を続けながら、3.17K/min(K/分)の速度で昇温し発光強度を温度の関数として調べたところ、260K付近に次のピークが観測された。
【0031】
一方、同一の試料を15Kに冷却し、波長240nm(光子エネルギーEexc =5.17eV)のAGE光を強度0.25nW/mm2 で300sec照射して禁制帯内の捕獲準位をキャリアで満たした。
【0032】
次に、3.17K/min(K/分)の速度で300Kまで昇温したところ、少なくとも6つの発光ピークが観測された。図6に示すように、これらのうち低温側から4つの発光ピークに着目し、それらをもたらす捕獲準位からの発光を伴うキャリア放出に要するエネルギー(図1の捕獲準位1ではΔE2 =Eg -ET1、図2の捕獲準位ではΔE4 =Eg -ET2に対応するエネルギー)をε1 ,ε2 ,ε3 ,ε4 とし、それらの値を、昇温率をβ1 ,β2 の2段階に変えた測定でのピーク温度Tm1,Tm2から求めた。その結果は、ε1 =0.22eV(Tm1=62.8K,Tm2=53.7K,β1 =13K/min,β2 =0.36K/min)、ε2 =0.55eV(Tm1=107.4K,Tm2=98.1K,β1 =9.0K/min,β2 =0.5K/min)、ε3 =0.69eV(Tm1=132.9K,Tm2=121.6K,β1 =9.0K/min,β2 =0.5K/min)、ε4 =1.10eV(Tm1=192.9K,Tm2=179.7K,β1 =4.0K/min,β2 =0.33K/min)であった。
【0033】
ここで、60Kまで昇温した後に、BGE光(光子エネルギーEB =1.17eV)を照射した図5と照射していない図6とを比較すると、図6の発光ピークε2 (0.55eV)、ε3 (0.69eV)、ε4 (1.10eV)は、図5では検出されていないことが分かる。これは図5において照射したBGE光の光子エネルギーEB が1.17eV(>ε2 ,ε3 ,ε4 )のため、図6のε2 ,ε3 ,ε4 で示される発光ピークをもたらす捕獲準位はこのBGE照射でキャリアを全て放出してしまい、その後の昇温で十分な熱エネルギーを得ても、もはやキャリア放出が起こらないからである。また、図5で260K付近の発光ピークが得られたことから、この発光ピークをもたらす捕獲準位のキャリア放出エネルギーは1.17eV以上であることが判明する。
【0034】
すなわち、昇温途中で照射したBGE光の光子エネルギーと、それにより消失した熱ルミネッセンスをもたらす捕獲準位のキャリア放出エネルギーとが対応しており、禁制帯内準位の挙動とキャリア捕獲、放出過程並びに発光・非発光再結合過程を総合的に観測する新たな測定手法が実証された。
【0035】
上記した実施例の具体的作用について説明する。
【0036】
発光・受光および電子材料の禁制帯エネルギー幅にも依存するが、BGEによる光励起は紫外~可視の光子エネルギー領域で有利であり、簡便迅速な測定が可能であるが、赤外の低エネルギー領域測定はさほど容易ではない。一方、熱励起は低エネルギー領域での測定に有効だが、時間を要し精度が不十分である上にエネルギーが高くなるにつれ測定は困難となる。そこで、AGEおよびBGE光による光励起と熱励起プロセスを有機的に組み合わせることにより、試料禁制帯エネルギー幅の全エネルギー領域において、簡便かつ高精度な測定を実現し、上記課題を解決することができる。
【0037】
さらに、2波長励起PLの利点により、禁制帯内準位として捕獲準位のみならず、他の非発光再結合準位までを一括して評価することが初めて可能となる。
【0038】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の定量的測定方法およびその装置は、禁制帯内準位の成因を明示し、その除去を通して材料組成、作製プロセス、デバイス構造等の最適化を容易とすることができる発光・受光および電子材料・デバイスの測定ツールに適している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる2つの捕獲準位(エネルギーET1およびET2)と1つの非発光再結合準位(エネルギーENT)を持つ半導体のエネルギーバンド図である。
【図2】AGE光で捕獲準位1および2に電子を捕獲させた後、図1における温度T2 まで昇温すると、捕獲準位2のみに電子が捕獲されている状態を示す説明図である。
【図3】AGE光で全ての捕獲準位に電子を捕獲させる他に、本発明の方法により、特定のBGE光で単一の捕獲準位(たとえば光子エネルギーEexc =ET2で捕獲準位2)のみに選択的に電子を捕獲させる状態を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例を示す熱励起を加えたフォトルミネッセンスによる禁制帯内準位の測定装置(システム)の構成図である。
【図5】本発明にかかるBGE照射を加えた場合の発光強度の温度依存性を示す図である。
【図6】本発明にかかるBGE照射を加えない場合の発光強度の温度依存性と、各ピークをもたらす捕獲準位のエネルギーを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 AGE光源
2 BGE光源
3 試料
4 分光器
5 光電子増倍管
6 デジタルオシロスコープ
7 ボックスカー積分器
8 コンピュータ
9 冷却および加熱装置
10 温度制御装置
11 温度センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5