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明細書 :ゾルゲル導電ガラスを具えた光導電素子および発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4371303号 (P4371303)
公開番号 特開2005-056762 (P2005-056762A)
登録日 平成21年9月11日(2009.9.11)
発行日 平成21年11月25日(2009.11.25)
公開日 平成17年3月3日(2005.3.3)
発明の名称または考案の名称 ゾルゲル導電ガラスを具えた光導電素子および発光素子
国際特許分類 H01L  51/50        (2006.01)
C03B   8/02        (2006.01)
H01L  31/08        (2006.01)
FI H05B 33/14 B
C03B 8/02 N
H01L 31/08 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2003-288132 (P2003-288132)
出願日 平成15年8月6日(2003.8.6)
審査請求日 平成18年6月7日(2006.6.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】相原 聡
【氏名】斎藤 信雄
【氏名】鎌田 憲彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100143568、【弁理士】、【氏名又は名称】英 貢
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】本田 博幸
参考文献・文献 特開平01-167254(JP,A)
特開平03-126787(JP,A)
特開平08-295537(JP,A)
特開2001-253721(JP,A)
特開2002-275460(JP,A)
調査した分野 H01L 51/50
C03B 8/02
H01L 31/08
特許請求の範囲 【請求項1】
対向する電極と、該電極間に配置されるゾルゲル導電ガラスを具える光導電素子であって、
前記ゾルゲル導電ガラスは、
前記電極方向に延伸され、かつ、前記電極間を電気伝導するように配置された、ほぼ前記電極方向に配向されている導電性高分子を含み、入射された光を吸収して吸収量に応じた電流を出力する導電性領域と、
前記導電性領域の延伸によって生じた空隙を埋めて前記導電性領域を覆い保護する、前記導電性高分子を含まない保護領域とを具える、
ことを特徴とする光導電素子。
【請求項2】
請求項に記載の光導電素子において、
前記導電性領域の前記導電性高分子は感光性側鎖を持ち、
前記ゾルゲル導電ガラスは、入射された光を受け前記感光性側鎖で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力する、
ことを特徴とする光導電素子。
【請求項3】
請求項に記載の光導電素子において、
前記導電性領域の前記導電性高分子の近傍には波長選択性の有機高分子が分散されており、
前記ゾルゲル導電ガラスは、入射された光を受け前記有機高分子の波長選択性で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力する、
ことを特徴とする光導電素子。
【請求項4】
対向する電極と、該電極間に配置されるゾルゲル導電ガラスを具える発光素子であって、
ゾルゲル導電ガラスを具える発光素子であって、
前記ゾルゲル導電ガラスは、
前記電極方向に延伸され、かつ、前記電極間を電気伝導するように配置された、ほぼ前記電極方向に配向されている導電性高分子を含み、前記電極から供給される電流に応じて発光する導電性領域と、
前記導電性領域の延伸によって生じた空隙を埋めて前記導電性領域を覆い保護する、前記導電性高分子を含まない保護領域とを具える、
ことを特徴とする発光素子。
【請求項5】
請求項に記載の発光素子において、
前記導電性領域の前記導電性高分子は発光性側鎖を持ち、
前記ゾルゲル導電ガラスは、前記電極から供給される電流に応じて、前記発光性側鎖で定まる特定波長の光を選択的に発光する、
ことを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項に記載の発光素子において、
前記導電性領域の前記導電性高分子の近傍には波長選択性の有機高分子が分散されており、
前記ゾルゲル導電ガラスは、前記電極から供給される電流に応じて、前記有機高分子の波長選択性で定まる特定波長の光を選択的に発光する、
ことを特徴とする発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾルゲル導電ガラスを具えた光導電素子および発光素子に関するものである。より詳細には、本発明は、電流注入により発光を生ずるELデバイスを始めとする光通信用光源、発光・表示・照明デバイスや、光信号を電流信号に変換するフォトダイオード、撮像、画像演算デバイス等、産業上有用な広範囲に利用し得る・発光・受光材料・デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、一般的な光導電素子の構造を示す概略図である。図に示すように、従来の一般的な光導電素子は、ガラス基板上11に設けた透明電極12の上に光導電性物質層13を作製し、さらにその上に金属電極14を蒸着する方法で一般的に作製されてきた。
図2は、このような一般的な光導電素子の原理を説明するバンド図である。図に示すように、ガラス基板側から入射した光は透明電極を透過後、光導電性物質層の光導電性物質に吸収され、キャリアとして、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が発生する。発生した両キャリアは電界によってそれぞれ反対方向に加速され、両端の電極に達することにより外部回路に電流が流れる。これが光導電素子の原理であり、受光素子、撮像素子等に利用されている。
【0003】
有機高分子を用いて光導電素子を作製する場合、光導電性物質としては感光部位を持った導電性高分子等が用いられる。この場合電気伝導を担うのは導電性高分子であるが、その導電率は一般に無機導電材料よりも低く、その改善が望まれている。導電性高分子は、主鎖方向には電気を良く流すという性質があるが、一方、分子と分子との間の伝導は主としてホッピングというあまり電気の伝導が良くない方法による。同じ材料で導電率を改善するためには、両電極間を1つの導電性高分子で直接接続することが最も望ましいがこのような薄膜の形成は非常に困難である。或いは、前述したようにホッピングはボトルネックになるため、できる限りホッピング回数を減らす必要がある。そのためには、導電性高分子の主鎖を可能な限りキャリアの伝導方向即ち電極方向(即ち電極と電極とを最短で結ぶ方向)に配向して、ホッピング回数を減らすようにする工夫が必要である。
【0004】
図3は、このような理想的な導電性物質の配向状態および電荷移動過程を模式的に示す図である。後で詳細に説明するが、本発明は、ゾルゲル化可能な溶液を使用することによってこのような理想的な配向を実現させるものである。即ち、このような理想的な配向を実現できれば、キャリアは、図に示すように、電極方向へ配向された電気を良く流す主鎖を通り、一回のホッピングを経て電極へと流れる。しかしながら、従来技術ではこのような理想的な配向を実現することは非常に難しく、最も一般的なスピンコート法で導電し高分子薄膜を作製すると、主鎖方向はランダムになってしまうという問題があった。
【0005】
図4は、スピンコート法で作製された導電性物質の配向状態および電荷移動過程を模式的に示す図である。図に示すように、通常のスピンコート法では、導電性高分子はランダムに配向されてしまい、主鎖は様々な方向を向いており、キャリアは、数回のホッピングを経て、主鎖や側鎖を通って電極へと流れる。従って、このような配向状態では、高い導電性を得ることは困難であった。
そこで、LB累積法や様々な配向制御技法が試みられてきた。しかしがなら、LB累積法では、限られた両親媒性分子でなければ適用できないという問題があった。また、ラビング法等の配向制御法も完全ではない上にプロセスが複雑で高度の制御技術を要し、プロセスコストを大幅に上げてしまうという問題があった。さらに、導電性高分子を含む有機材料は、一般に大気中の酸素や水分などに接触すると主鎖の酸化や分解などによる切断が起こり導電性が劣化するため、信頼性を確保するためには強固な封止技術の確立が不可欠である。この封止のコストにより製造コストが上昇するという問題があった。
【0006】
この導電性高分子を封止する従来技術としては、導電性高分子をゾルゲルガラスに封入して、導電性高分子を大気中の酸素や水分から保護する技法が開示されている(特許文献1、非特許文献1を参照されたい。)。さらに、ゾルゲル法は、ウェットプロセスのため蒸着装置などの大規模成膜装置が不要であり、任意形状対応、大面積化、低コスト化などにも有利な方法である。

【特許文献1】特開2000-253721号公報(段落0004、図1)
【非特許文献1】「半導体国際会議(ICPS)、2001年大会予稿集pp. 1669-1670」(佐藤、鎌田他(H. Satoh, N. Kamata, K. Kanezaki, S. Aihara, Y. Yaoita and D. Terumura, Proc. Int. Conf. On Physics of Semiconductors, Springer Proc. In Physics, 87, pp. 1669-1670, 2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のゾルゲルガラスの成膜法としては、一般にスピンコート法やディッピング法などが用いられており、依然として添加した導電性高分子をキャリア伝導方向に配向させることが課題として残っていた。
本発明の目的は、上述した課題を解決した導電性の良好な耐用時間の長いゾルゲル導電ガラス、およびこれを具えた光導電素子や発光素子を提供することである。即ち、本発明は、従来困難であった導電性高分子を局所的に高密度化し、さらに導電方向に配向させた導電性ガラスを、ゾルゲル法によって容易に作製する手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光導電素子及び発光素子は、用いられるゾルゲル導電ガラス
電極間に配置されるゾルゲル導電ガラスであって、
前記電極方向(当該ガラスの厚さ方向)に延伸され、かつ、前記電極間を電気伝導するように配置された、ほぼ前記電極方向(当該ガラスの厚さ方向)に配向されている導電性高分子を含む導電性領域と、
前記導電性領域の延伸によって生じた空隙を埋めて前記導電性領域を覆い保護する、前記導電性高分子を含まない保護領域と、
を具え、
前記導電性高分子は、入射された光を吸収しこの吸収量に応じて電流を出力する、或いは、電極から供給された電流に応じて発光する機能を有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性領域がガラスの厚さ方向である電極方向(即ちキャリア伝導方向)に延伸されることによって、導電性高分子を局所的に高密度化し、この延伸に伴って当該領域に含まれる導電性高分子も電極方向に配向させるため、導電性を高めることができ、さらに、ホッピング回数の減少によっても導電性を高めることができる。また、延伸によって生じた空隙を保護領域で埋め、導電性領域を覆うことによって、大気中の酸素や水分などから保護して、これらによる導電性物質の劣化(主鎖の酸化や分解などによる断裂など)を防止し、耐用時間を顕著に増加させることが可能である。即ち、本発明によれば、安定した導電性(即ち安定した光応答性或いは電流応答性)を長期にわたって保障することができる。このようなゾルゲル導電ガラスは、光導電素子、光電変換素子、或いは発光・表示・照明素子など様々な用途に利用可能である。
【0010】
また、本発明による光導電素子は、
対向する電極と、該電極間に配置されるゾルゲル導電ガラスを具える光導電素子であって、
前記ゾルゲル導電ガラスは、
前記電極方向に延伸され、かつ、前記電極間を電気伝導するように配置された、ほぼ前記電極方向に配向されている導電性高分子を含み、入射された光を吸収して吸収量に応じた電流を出力する導電性領域と、
前記導電性領域の延伸によって生じた空隙を埋めて前記導電性領域を覆い保護する、前記導電性高分子を含まない保護領域とを具える、
ことを特徴とする。
本発明によれば、上述したような良好な導電性を持ち、耐用時間の長い光導電素子を得ることができる。
【0011】
また、本発明による光導電素子は、
前記導電性領域の前記導電性高分子は感光性側鎖を持ち、
前記ゾルゲル導電ガラスは、入射された光を受け前記感光性側鎖で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、所望の特定波長に感光性を有する感光性側鎖を持つ導電性高分子を使用することによって、所望の特定波長を検出する光導電素子を得ることができる。また、本発明では、入射された光のうちの特定波長領域の強度に応じた電流値を得ることができる。即ち、目的に応じて感光性側鎖を選択することによって、様々な用途(波長)に利用可能な光導電素子が得られる。
【0012】
また、本発明による光導電素子は、
前記導電性領域の前記導電性高分子の近傍には波長選択性の有機高分子が分散されており、
前記ゾルゲル導電ガラスは、入射された光を受け前記有機高分子の波長選択性で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、所望の波長選択性を持つ有機高分子を導電性高分子の近傍に分散するという比較的容易な手法によって、所望の波長選択性を持つ光導電素子を得ることができる。また、本発明では、入射された光のうちの特定波長領域の強度に応じた電流値を得ることができる。
【0013】
本発明による発光素子は、
対向する電極と、該電極間に配置されるゾルゲル導電ガラスを具える発光素子であって、
ゾルゲル導電ガラスを具える発光素子であって、
前記ゾルゲル導電ガラスは、
前記電極方向に延伸され、かつ、前記電極間を電気伝導するように配置された、ほぼ前記電極方向に配向されている導電性高分子を含み、前記電極から供給される電流に応じて発光する導電性領域と、
前記導電性領域の延伸によって生じた空隙を埋めて前記導電性領域を覆い保護する、前記導電性高分子を含まない保護領域とを具える、
ことを特徴とする。
本発明によれば、上述したような良好な導電性を持ち、耐用時間の長い発光素子を得ることができる。
【0014】
本発明による発光素子は、
前記導電性領域の前記導電性高分子は発光性側鎖を持ち、
前記ゾルゲル導電ガラスは、前記電極から供給される電流に応じて、前記導電性高分子で伝導されるキャリアを用いて前記発光性側鎖で定まる特定波長の光を選択的に発光する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、所望の特定波長を発光する感光性側鎖を持つ導電性高分子を使用することによって、供給する電流に応じて所望の特定波長の光を選択的に発光する発光素子を得ることができる。即ち、目的に応じて感光性側鎖を選択することによって、様々な用途(波長)に利用可能な発光素子が得られる。
【0015】
また、本発明による発光素子は、
前記導電性領域の前記導電性高分子の近傍には波長選択性の有機高分子が分散されており、
前記ゾルゲル導電ガラスは、前記電極から供給される電流に応じて、前記導電性高分子で伝導されるキャリアを用いて前記有機高分子の波長選択性で定まる特定波長の光を選択的に発光する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、所望の波長選択性を持つ有機高分子を導電性高分子の近傍に分散するという比較的容易な手法によって、電流に応じて所望の特定波長の光を選択的に発光する発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、諸図面を参照しつつ本発明の実施態様を詳細に説明する。
ゾルゲル法は原料溶液を調合し、その後、溶液反応を利用して母体ネットワークを形成するという、本来均一性に優れた低温プロセスである。テトラエトキシシラン(TEOS)を出発原料とした場合、加水分解、重縮合反応及び焼成過程を経て「-Si-O-Si-O-Si-・・・・」という3次元ネットワークを有するシリカガラスが作製可能である。この時、原料組成を調合することにより、通常のバルクガラスやガラス薄膜の他に、ゾルに曳糸性を発現させてから延伸し、ファイバーガラスとすることができる。
【0017】
図5は、本発明によるゾルゲルファイバーガラスの作製過程を示す図である。
本発明では、図中の工程1に示すように、まず導電性高分子を含み、曳糸性を発現してファイバー化が可能となるような出発組成の溶液SFを調合し、ガラス基板20上の透明電極22aと、対向電極22bとの間の微小空間に充填する。
このような電極配置のまま、反応を進めゾル(溶液SF)が「曳糸性(糸曳き性)」を示してから、図中の工程2に示すように、両電極22a,b間を所定の間隔まで延伸することによって、ゾルゲル化した溶液SFがファイバー形状となって両電極間を接続するような状態にする。この状態で仮焼成を行い、導電性高分子の配向性を固定する。この溶液SFがファイバー形状となり焼成された部分が固形化して導電性領域24となる。
【0018】
次に、導電性高分子を含まず、通常のバルク体のガラス形成用の出発組成Bの溶液SBを調合し、図中の工程3に示すように、ゾルゲル化した溶液SFの延伸によって生じた空隙を埋め両電極間の空間全体を再度充填する。即ち、SBがSFによって固形化したファイバー部分(導電性領域24)の隙間を埋め、全体を被覆した後、本焼成によって全体構造を固定化する。焼成によって、溶液SBはガラス化し保護領域26となる。
このような2段階ゾルゲルプロセスにより、電極間を配向制御された導電性高分子で効率的に接続し、さらに、全体をガラスで封止され大気中の酸素や水分から保護された導電性ガラス薄膜が作製可能となる。
【0019】
図6は、発明によるゾルゲル導電ガラスの一例の断面図である。図に示すように、本発明によるゾルゲル導電ガラスは、電極32を設けた基板30の間に配置され、溶液SFが固形化した導電性高分子を含む導電性領域34と、溶液SBが固形化した導電性高分子を含まず導電性領域34を覆って保護する保護領域36とから構成される。導電性領域34は、溶液SFの曳糸性を利用して電極32間を間隔を広げることによって糸を曳くように電極32間を接続している。このように糸を曳くような形状で固定化することによって、中に含まれる導電性高分子の主鎖が電極方向(図の縦の方向)に配向され、この部分がキャリアの伝導を担うこととなる。また、導電性領域34を保護領域36で覆うことによって、導電性領域34に含まれる導電性高分子を大気中の酸素や水分から効果的に保護する。なお、添付の諸図面で図示したゾルゲル導電ガラスは模式的に示したものであり、説明の便宜上、電極間の間隔を大きくとってある等、実際の各構成要素の比率やサイズとは必ずしも同じではないことに注意されたい。
【0020】
次に本発明によるゾルゲル導電ガラスを幾つか挙げる。
(i)水溶性ポリシランを含むゾルゲル導電ガラス
ポリシランはSi原子が直鎖状に結合した一次元高分子であり、主鎖のσ電子共役による電子状態の広がりに応じた高効率の紫外発光、高い正孔輸送特性を呈するため、本発明に用いる導電性高分子に適した材料の1つである。また、Siを骨格構造としているため、シリカガラスやSi集積回路との親和性がよい。水溶性のポリシランとしては、ポリシランの側鎖に含まれるフェニル基を、フリーデルクラフツ反応でクロロメチル化し、さらに3級アミンを作用させることによって強い親水性を持つアンモニウム塩を導入したものなどが用いられる。この他にも、ゾルゲル導電ガラスに添加する導電性高分子としては、水溶性のものであればよく、一例として水溶性化したポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。
【0021】
(ii)感光性側鎖を持った水溶性ポリシランを含むゾルゲル導電ガラス
このゾルゲルガラスは側鎖で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力するような光導電素子、受光・撮像素子として利用可能である。感光性側鎖ではなく、導電性高分子近傍に波長選択性の有機色素高分子を分散させたものであっても同様の機能を持った光導電素子、受光・撮像素子として利用可能である。このような色素分子としては、可視部に吸収のあるものであれば良く、一例を挙げるとアクリジン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクエアアリリウム、オキサジン系色素、キサンテン系色素、フタロシアニン系色素等を用いることができる。
【0022】
(iii)発光性側鎖を持った水溶性ポリシランを含むゾルゲル導電ガラス
導電性高分子で伝導されたキャリアを用いて、側鎖で定まる特定波長の光を選択的に発光し、電流に応じた光出力が得られる発光素子、表示、照明素子として利用可能である。発光性側鎖ではなく、導電性高分子近傍に発光性の有機高分子を分散させたものであっても同様の機能を持つ発光素子、表示、照明素子として利用可能である。色素分子としては可視部に発光のあるものであればよく、一例を挙げるとアクリジン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、スクエアアリリウム、オキサジン系色素、キサンテン系色素等を用いることができる。
【0023】
本発明によるゾルゲル導電ガラスを作製するにあたり、まず以下の予備実験を行った。
(1)ゾルゲル絶縁性ガラスの作製
標準的なゾルゲルプロセス(特許文献1、非特許文献1)により、TEOS:EtOH(エタノール):H2O:HNO3:DMF(ジメチルホルムアミド)=1:6:11:0.3:1の組成比(モル比、以下同様)で出発溶液を調合し、この溶液からゾルゲルガラスを作製した。この場合、容器形状により最終的なバルク固体形状が定まり、基板へのディップ、滴下やスピンコートによりガラス薄膜を得ることができる。但し上記出発組成は一例に過ぎない。
【0024】
(2)水溶性ポリシランを含むゾルゲルガラスの作製
上記(1)の出発溶液に水溶性ポリシランを添加することにより、導電性を持つ同様のガラスを作製することができる。ポリシランは紫外光照射によって主鎖が酸化され、フォトルミネセンス強度が徐々に低下するが、ゾルゲルガラス中に分散させた場合、フォトルミネセンス強度の低下は初期を除き抑制可能であることが実証されている(特許文献1、非特許文献1)。これは前述の通り、ガラスネットワークにより大気中の酸素や水分から封止され、ポリシラン主鎖の酸化を阻害することができたためである。
【0025】
(3)ゾルゲルファイバーガラスの作製
一般に通常のバルク体組成に対して、水の含有量を低下させると、単量体が完全に加水分解を受ける前に重縮合が起こるため、立体的な架橋結合が生じる割合は少ない。そのため線状の結合が多くなり曳糸性発現に有利と考えられる(作花済夫著;「ゾルゲル法の科学、アグネ承風社、1988年」、「ゾルゲル法の応用、アグネ承風社、1997年」を参照されたい。)。出発溶液の組成をTEOS:EtOH:H2O:HNO3:DMF=1:6:4:0.01:1とした際に、ゾルに曳糸性が現れ、ファイバー形状のガラスとすることができた。実際の作製手順は、上記出発溶液を9ml調合し、ガラス板(1×4cm)に滴下し、その上に同サイズのガラス板を貼り合せた後、そのまま30分間反応を進める。その後、両ガラス板の間隔を1mm程度延伸し、500℃で3時間焼成した。
【0026】
(4)水溶性ポリシランを含むゾルゲルファイバーガラスの作製
水溶性ポリシラン([MeSi(C6H4CH2NEt3+・Cl-)]n、分子量Mw=11000、Mn=5500)を用い、出発溶液の組成をTEOS:EtOH:H2O:HNO3:DMF:ポリシラン=1:6:4:0.01:1:0.05としたときに、同様なファイバー形状のガラスが作製できることを確認した。
【0027】
(5)上記(1)および(4)を含む導電性ゾルゲルガラスの作製
上記(1)、(4)の結果を基に、前述した2段階ゾルゲルプロセスによって、水溶性ポリシランを含む「本発明による導電性ゾルゲルガラス」を作製した。比較のために、同じ出発溶液(即ち同じ量の導電性高分子を含む溶液)から延伸処理を行わない「従来のポリシラン添加ガラス」を作製し、両セルのホール移動度を測定したところ、「本発明による導電性ゾルゲルガラス」のホール移動度の方が従来のものより約1桁高かったことを確認した。このことから、ファイバー部分のポリシランは導電方向に延伸され、この延伸に伴って自動的に導電方向にポリシランの主鎖が配向されていることが確認された。実際の作製手順は、第1の出発溶液(TEOS:EtOH:H2O:HNO3:DMF:ポリシラン=1:6:4:0.01:1:0.05)の9mlを、2cm角のITO透明電極付きガラス基板に滴下し、同サイズの透明電極付きガラス基板を両電極が向き合うように貼り合せた後、そのまま30分間反応を進め曳糸性を発現させる。その後、両ガラス基板を1mm延伸し、100℃で1時間仮焼成することで水溶性ポリシラン添加ファイバーガラスセルを作製した。一方、標準的なゾルゲルプロセスにより、TEOS:EtOH:H2O:HNO3:DMF=1:6:11:0.3:1の組成比で第2の出発溶液を調合しておき、側面3方向をマスキングしたセルの残りの1面から第2の出発溶液を注入し、両電極間の空間全体に充填した。そのまま反応を進め固化した後に、100℃で5時間、本焼成することにより完成させた。
なお、上記実施例はいずれも触媒として硝酸を用いたシリカガラスの場合であり、その他の酸(塩酸等)や塩基(アンモニア等)触媒を用いても作製可能であり、さらに、曳糸性を発現できる素材であればシリカ系以外の様々なガラスでも作製可能である。
【0028】
本発明8効果や利点をまとめると以下のようになる。
導電性高分子として電気伝導性(特に正孔伝導)の高い1次元鎖状高分子を用いて、側鎖に様々な有機基を結合させて光吸収特性、発光特性、電気伝導特性を制御することが容易である。このため各応用に適した分子構造の最適設計が可能となる。なお、導電性高分子としては他にも多くの選択肢があり、本発明は本明細書で挙げた特定の分子、側鎖、色素などに限定されるものではない。
導電性高分子としてポリシランを用いた場合は、Siが主原料のためコストが安く環境に対する悪影響がないという利点がある。また、シリカガラス、Si集積回路基板等との親和性が高い。
有機高分子は、酸化、開裂、変性等による機能劣化の恐れがあるが、ガラスは可視領域で透明かつ理想的な封止機能を持つので、両者の相補的融合により、良好な導電性を呈するゾルゲル導電ガラスを提供でき、これを用いた素子の耐用時間を向上させ、製品の信頼性を保障する。
ゾルゲルプロセスは溶融法に比して低温プロセスであり、本質的に有機・無機ハイブリッド化に適している。
ウェットプロセスのため蒸着が不要で、任意形状対応、大面積化、低コスト化等に有利である。
曳糸性を利用して導電性高分子を延伸させることによって、導電性高分子を局所的に高密度化し、さらに、この延伸に伴って導電方向に配向させるため、総量としては少量の導電性高分子添加で伝導性が得られ効率的である。このため導電性高分子の大量添加による母体ネットワークの乱れの恐れがないというメリットがある。
【0029】
本明細書では、様々な実施態様で本発明の原理を説明してきたが、本発明は上述した実施例に限定されず幾多の変形および修正を施すことが可能であり、これら変形および修正されたものも本発明に含まれることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一般的な光導電素子の構造を示す概略図である。
【図2】一般的な光導電素子の原理を説明するバンド図である。
【図3】理想的な導電性物質の配向状態および電荷移動過程を模式的に示す図である。
【図4】スピンコート法で作製された導電性物質の配向状態および電荷移動過程を模式的に示す図である。
【図5】本発明によるゾルゲルファイバーガラスの作製過程を示す図である。
【図6】本発明によるゾルゲル導電ガラスの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
11 ガラス基板
12 透明電極
13 光導電性物質層
14 金属電極
20 ガラス基板
22a 透明電極
22b 対向電極
24 導電性領域(溶液SF
26 保護領域(溶液SB
30 基板
32 電極
34 導電性領域(溶液SFが固形化した領域)
36 保護領域(溶液SBが固形化した領域)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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