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明細書 :ゾルゲル導電性ガラス、及びそれを用いた光機能素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4743743号 (P4743743)
公開番号 特開2005-170708 (P2005-170708A)
登録日 平成23年5月20日(2011.5.20)
発行日 平成23年8月10日(2011.8.10)
公開日 平成17年6月30日(2005.6.30)
発明の名称または考案の名称 ゾルゲル導電性ガラス、及びそれを用いた光機能素子
国際特許分類 C03B   8/02        (2006.01)
C01B  33/12        (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
H05B  33/28        (2006.01)
FI C03B 8/02 A
C01B 33/12 C
H01L 31/08 T
H05B 33/14 A
H05B 33/28
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2003-410513 (P2003-410513)
出願日 平成15年12月9日(2003.12.9)
審査請求日 平成18年10月2日(2006.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】相原 聡
【氏名】久保田 節
【氏名】鎌田 憲彦
【氏名】照沼 大陽
【氏名】幡野 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100143568、【弁理士】、【氏名又は名称】英 貢
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】西山 義之
参考文献・文献 特開平01-183420(JP,A)
特開平01-167254(JP,A)
特開平08-295537(JP,A)
特開平11-236210(JP,A)
特開平03-033031(JP,A)
特開2001-253721(JP,A)
特開2001-271012(JP,A)
調査した分野 C01B 33/00-33/193
C03B 8/02
特許請求の範囲 【請求項1】
疎水性の導電性高分子を含む、光機能素子用のゾルゲル導電性ガラスであって、
前記導電性高分子がキャリアの伝導及び発光を担
前記導電性高分子の疎水性を除去して親水性を付与するために、前記導電性高分子の側鎖の一部を親水性のホスト分子に包接させ、該ホスト分子を当該ゾルゲル導電性ガラスに分散させることにより、当該光機能素子のための導電性が形成され、
前記導電性高分子は、供給された電流の値に応じて、前記導電性高分子で伝導されるキャリアを用いて前記導電性高分子で定まる特定波長の光を発光するように機能することを特徴とするゾルゲル導電性ガラス。
【請求項2】
疎水性の導電性高分子を含む、光機能素子用のゾルゲル導電性ガラスであって、
前記導電性高分子がキャリアの伝導を担い、前記導電性高分子の膜内に分散させる疎水性でアルコール不溶性の光機能性低分子が発光を担
前記導電性高分子及び光機能性低分子の疎水性を除去して親水性を付与するために、前記導電性高分子の側鎖の一部及び光機能性低分子を親水性のホスト分子に包接させ、該ホスト分子を当該ゾルゲル導電性ガラスに分散させることにより、当該光機能素子のための導電性が形成され、
前記導電性高分子が供給された電流の値に応じてキャリアを伝導させ、前記光機能性低分子が特定波長の光を発光するように機能することを特徴とするゾルゲル導電性ガラス。
【請求項3】
疎水性の導電性高分子を含む、光機能素子用のゾルゲル導電性ガラスであって、
前記導電性高分子がキャリアの発生及び伝導を担
前記導電性高分子の疎水性を除去して親水性を付与するために、前記導電性高分子の側鎖の一部を親水性のホスト分子に包接させ、該ホスト分子を当該ゾルゲル導電性ガラスに分散させることにより、当該光機能素子のための導電性が形成され、
前記導電性高分子は、入射した光を受け、前記導電性高分子で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力するように機能することを特徴とするゾルゲル導電性ガラス。
【請求項4】
疎水性の導電性高分子を含む、光機能素子用のゾルゲル導電性ガラスであって、
前記導電性高分子がキャリアの伝導を担い、前記導電性高分子の膜内に分散させる疎水性でアルコール不溶性の光機能性低分子がキャリアの発生を担
前記導電性高分子及び光機能性低分子の疎水性を除去して親水性を付与するために、前記導電性高分子の側鎖の一部及び光機能性低分子を親水性のホスト分子に包接させ、該ホスト分子を当該ゾルゲル導電性ガラスに分散させることにより、当該光機能素子のための導電性が形成され、
前記光機能性低分子が入射した光を受け、前記光機能性低分子で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、前記導電性高分子が当該吸収量に応じた電流を出力するように機能することを特徴とするゾルゲル導電性ガラス。
【請求項5】
請求項2又は4に記載のゾルゲル導電性ガラスにおいて、前記アルコール不溶性の光機能性低分子を前記ホスト分子に包接させることに代えて、アルコール可溶性の光機能性低分子を当該ゾルゲル導電性ガラスに分散させることを特徴とするゾルゲル導電性ガラス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゾルゲル導電性ガラスを備えることを特徴とする光機能素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾルゲル導電性ガラス、及びそれを用いた光機能素子に関するものであり、より詳細には、疎水性の導電性高分子をホスト分子に包接させたゾルゲル導電性ガラス、及びそれを用いた光機能素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を電流信号に変換する有機光導電素子や、電流注入により発光を生じる有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、一般に透明電極を設けたガラス基板上に光機能性物質の薄膜を作製し、その上に金属電極を蒸着する方法により作製される。光導電素子の場合、ガラス基板側から入射した光は透明電極を透過後、光導電性物質に吸収され、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔がそれぞれ発生する。両キャリアは電界によってそれぞれ反対方向に加速され、両端の電極に達することにより外部回路に電流が流れる。また、有機ELでは、透明電極より注入された正孔、金属電極より注入された電子は、発光層内で励起子を形成し、それが基底状態に戻るときのエネルギー放出によって発光が生じる。
【0003】
有機分子を用いてこれらの光機能素子を作製する場合、導電性高分子がよく用いられる。低分子材料より高分子材料を有機高分子に用いる場合の利点としては、耐熱性、機械的強度に勝る、湿式法により成膜できるため製造コスト面で有利であることなどが挙げられる。一方、高分子、低分子に限らず有機材料は、一般に大気中の酸素や水分の影響により劣化しやすい欠点がある。信頼性を確保するためには強固な封止技術の確立が不可欠であり、一般的にはUV硬化樹脂の塗布、不活性ガスの導入、封止キャップの張り合わせ、UV照射による樹脂の硬化などの工程を連続して行うが、プロセスコストはその分上昇することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題のうち、導電性高分子をゾルゲルガラスに封入することで、導電性高分子を大気中の酸素や水分から保護できることが示されている(特許文献1、及び非特許文献1を参照されたい。)加えて、ゾルゲル法はウェットプロセスのため蒸着装置などの大規模成膜装置が不要であり、任意形状対応、大面積化、低コスト化等にも有利である。
ゾルゲルガラスの主成分は、目的とする酸化物に対応した金属アルコキシドであり、この金属アルコキシドをアルコールと混ぜて混合溶液とし、加水分解に必要な水、及び触媒として酸又は塩基を加えて原料溶液を調整する。そのため、ゾルゲルガラスに添加できる導電性高分子は、アルコールや水に可溶な親水性の材料に限られるが、一般的に導電性高分子は疎水性であるものが殆どであり、例えば導電性高分子の一つであるポリシランに水溶性を付加する場合、ポリシランの側鎖に含まれるフェニル基を、フリーデルクラフツ(Freidel-Crafts)反応でクロロメチル化し、更に3級アミンを作用させることによって強い親水性をもつアンモニウム塩を導入するなどの複雑な化学的処理を施す必要があった。
<patcit num="1"><text>特開2001-253721号公報(段落0004、図1)</text></patcit><nplcit num="1"><text>「半導体国際会議(ICPS)、2001年大会予稿集pp. 1669-1670」(佐藤、鎌田他(H. Satoh, N. Kamata, K. Kanezaki, S. Aihara, Y. Yaoita and D. Terumura, Proc. Int. Conf. On Physics of Semiconductors, Springer Proc. In Physics, 87, pp. 1669-1670, 2001)</text></nplcit>
【課題を解決するための手段】
【0005】
疎水性の分子に親水性を付加する一手法として、シクロデキストリンに分子を包接させることが知られている。包接とは、原子または分子が結合して形成する三次元構造物の内部に空孔があり、その空孔の中に別の原子や分子が入り込む現象のことで、この三次元構造物をホスト分子と呼ぶ。シクロデキストリンは代表的なホスト分子であり、六個から十個のグルコースが環状に繋がったグルコース・オリゴマーである。環の外側が親水性で内側が疎水性であることから、種々の疎水性分子を環内に取り込む。この包接作用は食品や医薬分野で用いられており、たとえばチューブ入り練りわさびの辛み成分の長期安定化などに応用されている(佐藤充克著、「化学と教育」(49巻1号、P4-7、2001)を参照されたい。)。
【0006】
本発明は、導電性高分子や光機能性有機低分子材料の全体、その末端基、或いは側鎖の一部をホスト分子に包接させることで、ホスト分子の親水性によりゾルゲルガラスへの導電性高分子の封入を可能とし、信頼性の高い素子の作製を容易に実現するものである。
即ち、本発明によるゾルゲル導電性ガラスは、
親水性のホスト分子及び疎水性の導電性高分子を含むゾルゲル導電性ガラスであって、
前記導電性高分子の疎水性を呈する側鎖の少なくとも一部が、疎水性のもの(例えば、分子全体、側鎖、或いは末端基など)を包接する機能を有する親水性のホスト分子に包接されている、
ことを特徴とする。
本発明によれば、疎水性であるためにゾルゲルガラスに安定して均一に分散させることが困難であった疎水性の導電性高分子をゲスト分子としてホスト分子に包接させることにより当該高分子を封入したゾルゲルガラスを提供することができるようになる。即ち、大気中の酸素や水分など機能阻害物質から導電性高分子を効果的に保護して、これらによる導電性物質の劣化(主鎖の酸化や分解などによる断裂など)を防止し、耐用時間を顕著に増加させることが可能である。よって、本発明によれば、安定した導電性(即ち安定した光応答性或いは電流応答性)を長期にわたって保障することができる。また、疎水性のため不安的かつ不均一な分散状態であった導電性高分子を均一かつ安定した状態で分散させることが可能となり、よって均一かつ安定した導電性機能を長期にわたり発揮させることが可能となる。このようなゾルゲルガラスは、光導電素子、光電変換素子、或いは発光・表示・照明素子など様々な用途に利用可能である。
【0007】
また、本発明によるゾルゲル導電性ガラスは、
光機能性有機低分子をも含む、
ことを特徴とする。
本発明によれば、ホスト分子の包接機能によって一般的に疎水性の導電性高分子ゾルゲルガラスに封入し、さらに光機能性有機低分子をもゾルゲルガラスに封入することで、導電性高分子及び光機能性有機低分子を空気中の水分や酸素などの機能阻害物質から効果的に保護することが可能となる。
【0008】
さらにまた、本発明によるゾルゲル導電性ガラスは、
光機能性有機低分子をも含み、
前記光機能性有機低分子、或いは当該低分子のうちの疎水性を呈する部分の少なくとも一部(例えば、分子全体、疎水性を呈する側鎖、官能基、または末端基など)が、前記親水性のホスト分子に包接されている、
ことを特徴とする。
本発明によれば、ホスト分子の包接機能によって、光機能性有機低分子が疎水性であってもゾルゲルガラスに安定かつ均一に分散させることができ、前述の構成と同様に、導電性高分子及び光機能性有機低分子を空気中の水分や酸素などの機能阻害物質から効果的に保護することが可能となる。また、均一かつ安定した導電性機能を長期にわたり発揮させることが可能となる。
なお、ホスト分子の包接機能、即ちホスト分子内部のゲストを包接する空間のサイズとゲスト分子のサイズとに応じて包接の状態は異なる。この場合は有機低分子のサイズとホスト分子のサイズに応じて、分子全体、側鎖、官能基、或いは末端基の一部などがホスト分子に包接され、このホスト分子を親水性の溶媒などに分散させてゾルゲルガラスを作製することが可能となる。
【0009】
本発明による光機能素子は、
ゾルゲル導電性ガラスを用いた光機能素子であって、
前記ゾルゲル導電性ガラスは、親水性のホスト分子及び疎水性の導電性高分子を含み、
前記導電性高分子の疎水性を呈する側鎖の少なくとも一部が、疎水性のもの(分子、側鎖、末端基など)を包接する機能を有する親水性のホスト分子に包接されており、
入射した光を受け、前記導電性高分子で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力する、
ことを特徴とする光機能素子(受光、撮像素子、光導電素子、光電変換素子など)である。
【0010】
また、本発明による光機能素子は、
ゾルゲル導電性ガラスを用いた光機能素子であって、
前記ゾルゲル導電性ガラスは、親水性のホスト分子及び疎水性の導電性高分子を含み、
前記導電性高分子の疎水性を呈する側鎖の少なくとも一部が、疎水性のもの(分子、側鎖、或いは末端基など)を包接する機能を有する親水性のホスト分子に包接されており、
供給された電流の値に応じて、前記導電性高分子で伝導されるキャリアを用いて前記導電性高分子で定まる特定波長の光を発光する、
ことを特徴とする光機能素子(発光、表示、照明素子など)である。
【0011】
さらにまた、本発明による光機能素子は、
ゾルゲル導電性ガラスを用いた光機能素子であって、
光機能性有機低分子をも含み、
入射した光を受け、前記光機能性有機低分子で定まる特定波長の光を選択的に吸収し、吸収量に応じた電流を出力する、
ことを特徴とする光機能素子(受光、撮像素子、光導電素子、光電変換素子など)である。
【0012】
さらにまた、本発明による光機能素子は、
ゾルゲル導電性ガラスを用いた光機能素子であって、
前記導電性高分子の近傍には、光機能性有機低分子が分散されており、
供給された電流の値に応じて、前記導電性高分子で伝導されるキャリアを用いて、前記導電性高分子の近傍に分散させた前記光機能性有機低分子で定まる特定波長の光を発光する、
ことを特徴とする光機能素子(発光、表示、照明素子など)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、諸図面を参照しつつ本発明の実施態様を詳細に説明する。
(1)ホスト分子
本発明では、機能性を発揮する疎水性の導電性高分子や光機能性有機低分子を包接してその疎水性を除去して親水性の溶媒に溶解や分散させるために、包接機能を有するホスト分子を利用する。本発明に好適なホスト分子の1例としてはシクロデキストリンがある。ホスト分子であるシクロデキストリンは、グルコースの結合数が六個環状に連なったα-シクロデキストリン、七個からなるβ-シクロデキストリン、八個からなるγ一シクロデキストリンがよく知られている。図1A)に、α-シクロデキストリンの構造式を示す。また、シクロデキストリンの構造簡略図を図1Bのように表す。このうち、α-シクロデキストリンの内径は0.4nm(4Å)程度であり、ちょうどベンゼン環が一つ入る大きさである。また、β-シクロデキストリンの内径は0.7nm(7Å)程度であり、ベンゼン環2つからなるナフタレンが入る。γ-シクロデキストリンの内径は1nm(10Å)程度であり、これはナフタレンが2個入る大きさである。ホスト分子としては、これらシクロデキストリンだけでなく、各種シクロデキストリン誘導体も含まれる。
【0014】
(2)導電性高分子
一方、導電性高分子の一つであるポリシラン誘導体は、Si原子が直鎖状に結合した一次元高分子であり、主鎖のσ電子共役による電子状態の広がりに応じた高効率の紫外発光、高い正孔輸送特性を呈するため、本発明に用いる導電性高分子に適した材料の1つである。また、Siを骨格構造としているため、シリカガラスやSi集積回路との親和性がよい。代表的なポリシラン誘導体であるポリメチルフェニルシランは、側鎖にメチル基とフェニル基を有しており、α-シクロデキストリンがそのフェニル基を包接することにより、分子全体が親水性となる。ポリメチルフェニルシランがα-シクロデキストリンに包接された状態の模式図を図2に示す。α-シクロデキストリンに包接されるポリシランの一例としては、例えば、図3Aに示す化学式のように側鎖の片方にフェニル基が結合していればよい。
ここで、もう一方の側鎖であるR1はフェニル基、ナフチル基、あるいはアルキル基が好適で、アルキル基(CnH2n+1)の場合、nはn=1から10程度がよい。β-シクロデキストリンに包接されるポリシランの一例としては、例えば図3Bに示す化学式のように、側鎖の片方にナフチル基が結合していればよい。
【0015】
ここで、R2はフェニル基、ナフチル基、あるいはアルキル基が好適で、アルキル基(CnH2n+1)の場合、nはn=1から10程度がよい。さらに、上記フェニル基、ナフチル基以外でも、シクロデキストリンに包接され得る分子(例えばポリエチレングリコールなど)が側鎖に結合している化合物でもよい。また、上記側鎖フェニル基上のm-、あるいはp-位にアルキルあるいはアルコキシ置換基を有するポリシランも含まれる。ポリシラン誘導体以外の好適な導電性高分子としては、側鎖にフェニル基やナフチル基、ポリエチレングリコールなど、シクロデキストリンに包接される分子が結合しているものがよく、例えばポリバラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体などが挙げられる。
【0016】
(3)ホスト分子に包接された導電性高分子の調整
ホスト分子の飽和水溶液に導電性高分子をそのまま、あるいは少量の有機溶媒に溶解した溶液を加え、数時間攪拌した後、乾燥することにより得られる。
【0017】
(4)ゾルゲルガラス
ゾルゲル法は原料溶液を調合し、その後溶液反応を利用して母体ネットワークを形成するという、均一性に優れた低温プロセスである。テトラエトキシシラン(TEOS)を出発原料とした場合、加水分解、重縮合反応及び焼成過程を経て-Si-O-Si-O-Si-‥‥という3次元ネットワークを有するシリカガラスが作製可能である。標準的なゾルゲルプロセスとしては、TEOS:EtOH(エタノール):H2O:HNO3:DMF(ジメチルホルムアミド)=1:6:11:0.3:1の組成比(モル比、以下同様)で出発溶液を調合し、ゾルゲガラスを作製することができる(詳細には、作花済夫著「ゾルゲル法の科学」(アグネ承風社)を参照されたい。)。この場合容器形状により最終的なバルク固体形状が定まり、また基板へのディップ、滴下やスピンコートによりガラス薄膜を得ることが出来る。
【0018】
(5)導電性高分子がゾルゲルガラスに封入された有機EL素子
導電性高分子がキャリア伝導および発光の両方を担う場合、シクロデキストリンに側鎖を包接された導電性高分子をゾルゲルガラスに封入すればよい。ゾルゲルプロセスの出発組成比としては、TEOSの1モルに対してホスト分子に包接された導電性高分子が0.01~0.1モル程度がよい。
導電性高分子がキャリアの伝導を担い、高分子膜内に分散された有機色素などの低分子材料が発光を担う分散型高分子系有機ELの場合、分散させる低分子材料がエタノールなどのアルコール類に可溶であればそのままゾルゲルガラスに分散させることが可能である。また、対象となる低分子材料がアルコールに不溶であっても、その低分子材料にフェニル基、あるいはナフチル基が結合している湯合、さらにはその低分子材料にフェニル基、あるいはナフチル基を化学的に結合させ、ホスト分子に包接させることでゾルゲルガラスに分散させることが可能となる。発光性低分子材料の一例を挙げるとアクリジン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、キサンテン系色素、スアリウム系色素、各種金属錯体などがある。ゾルゲルプロセスの組成比としては、導電性高分子の1モルに対して低分子系材料が0.001~0.01モル程度がよい。
【0019】
(6)導電性高分子がゾルゲルガラスに封入された光機能素子(受光・撮像素子など)
導電性高分子が光吸収によるキャリア発生およびキャリア伝導の両方を担う場合、シクロデキストリンに側鎖を包接された導電性高分子をゾルゲルガラスに封入すればよい。ゾルゲルプロセスの出発組成比としては、TEOSの1モルに対してホスト分子に包接された導電性高分子が0.01~0.1モル程度がよい。
導電性高分子がキャリアの伝導を担い、高分子膜内に分散された有機色素などの低分子材料がキャリアを担う分散型高分子系受光・撮像素子の場合、分散させる低分子材料がエタノールなどのアルコール類に可溶であればそのままゾルゲルガラスに分散させることが可能である。また、アルコールに不溶な低分子材料であっても、その低分子材料にフェニル基、あるいはナフチル基が結合している場合、さらにはその低分子材料にフェニル基、あるいはナフチル基を化学的に結合させ、ホスト分子に包接させることでゾルゲルガラスに分散させることが可能となる。光吸収性低分子材料の一列を挙げるとアクリジン系色素、クマリン系色素、シアニン系色素、キサンテン系色素、スクアリウム系色素、各種金属錯体などがある。ゾルゲルプロセスの組成比としては、導電性高分子の1モルに対して低分子系材料が0.001~0.01モル軽度がよい。
【0020】
以下の手順で実際に本発明によるゾルゲル導電性ガラスを作成した。
(i)ホスト分子に包接された導電性高分子の作製
α-シクロデキストリンの飽和水溶液10mlに、ポリメチルフェニルシラン1mgを1mlのクロロホルムに溶かした溶液を滴下し、2時間攪拌することにより、沈殿物が生じた。溶媒を除去乾燥することで、α-シクロデキストリンに包接されたポリメチルフェニルシラン(CD-PMPS)の粉末を得た。
【0021】
(ii)導電性ゾルゲルガラスの作製と光学特性
標準的なゾルゲルプロセスにより、TEOS:エタノール:水:硝酸:ジメチルホルムアミド:CD-PMPS=1:6:11:0.3:1:0.05の組成比になるように調整し、30分攪拌混合することにより出発溶液を調合した。調整したゾルゲル溶液0.2mlを、インジウム錫酸化膜(ITO)透明電極付石英ガラス基板上に滴下した後、回転塗布法(1500回転、60秒)により塗布し、100℃にて1時間乾燥させることで、薄膜ゾルゲルガラスを作製した。作製した薄膜ガラスは無色透明であったことから、ポリメチルフェニルシランがガラス中に均一に分散されていることを確認した。また、作製したゾルゲルガラス上にアルミニウム電極を蒸着することにより、「ITO電極/ゾルゲルガラス/アルミ電極」構造のサンドイッチセルを形成した。ITO電極側からPMPSの光吸収波長である330nmの光を入射したとき、光キャリア生成による電流を観測し、作製したゾルゲルガラスが光機能素子として動作することを確認した。
なお、この実施例は触媒として硝酸を用いたシリカガラスの場合であり、他の酸(塩酸等)や塩基(アンモニア)触媒を用いても、またシリカ系以外のガラスでも作製可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上に示したように、疎水性の導電性高分子を、導電性高分子の側鎖をホスト分子に包接させてゾルゲルガラスに封入することにより、光信号を電流信号に変換するフォトダイオード、撮像デバイスや、電流注入により発光を生じるELデバイスを始めとする光通信光源、表示・照明デバイス等、産業上有用な信頼性の高い発光・受光デバイスを、容易に作製することが可能となる。
【0023】
本明細書では、様々な実施態様で本発明の原理を説明してきたが、本発明は上述した実施例に限定されず幾多の変形および修正を施すことが可能であり、これら変形および修正されたものも本発明に含まれることを理解されたい。例えば、ゲスト分子としては、主としてデキストリンを挙げて説明したが、本発明には、その他の包接機能を有する各種材料を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】α-シクロデキストリンの構造を示す図である。
【図1B】シクロデキストリンの構造簡略図である。
【図2】ホスト分子に側鎖を包接されたポリメチルフェニルシランの模式図である。
【図3A】α-シクロデキストリンに包接されるポリシランの化学式の一例を示す図である。
【図3B】β-シクロデキストリンに包接されるポリシランの化学式の一例を示す図である。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3A】
3
【図3B】
4