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明細書 :放射線検出用発色材及び放射線検出ラベル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4370379号 (P4370379)
公開番号 特開2006-343212 (P2006-343212A)
登録日 平成21年9月11日(2009.9.11)
発行日 平成21年11月25日(2009.11.25)
公開日 平成18年12月21日(2006.12.21)
発明の名称または考案の名称 放射線検出用発色材及び放射線検出ラベル
国際特許分類 G01T   1/04        (2006.01)
C07D 241/46        (2006.01)
C07D 265/38        (2006.01)
FI G01T 1/04
C07D 241/46
C07D 265/38
請求項の数または発明の数 4
全頁数 16
出願番号 特願2005-169055 (P2005-169055)
出願日 平成17年6月9日(2005.6.9)
審査請求日 平成19年2月27日(2007.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】時田 澄男
【氏名】太刀川 達也
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】木下 忠
参考文献・文献 特開2003-277368(JP,A)
特開2004-277302(JP,A)
特開昭63-35643(JP,A)
特公昭47-4638(JP,B2)
特開平01-313569(JP,A)
特表2005-514658(JP,A)
特開2001-242249(JP,A)
調査した分野 G01T1/04
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(1)(化1)で表されるフェノキサジン系化合物を含有する、放射線の照射により発色する放射線検出用発色材。
【化1】
JP0004370379B2_000011t.gif
(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、R11、R12、R13、R14は、それぞれ同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R15は、Xが硫黄原子のとき、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基若しくはニトロ基で置換されていてもよいフェノキシ基又はナフトキシ基であり、Xが酸素原子のとき、モノ若しくはジアルキルアミノ基(この場合アルキル基の炭素数は1~8である)、炭素数5~7のシクロアルキルアミノ基、ピペリジル基又はモルホリノ基である)
【請求項2】
式(1)(化2)で表されるフェノキサジン系化合物を含有する、放射線の照射により発色する放射線検出ラベル。
【化2】
JP0004370379B2_000012t.gif
(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、R11、R12、R13、R14は、それぞれ同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R15は、Xが硫黄原子のとき、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基若しくはニトロ基で置換されていてもよいフェノキシ基又はナフトキシ基であり、Xが酸素原子のとき、モノ若しくはジアルキルアミノ基(この場合アルキル基の炭素数は1~8である)、炭素数5~7のシクロアルキルアミノ基、ピペリジル基又はモルホリノ基である)
【請求項3】
式(2)(化3)で表されるフェナジン系化合物を含有する、放射線の照射により発色する放射線検出用発色材。
【化3】
JP0004370379B2_000013t.gif
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はベンジルカルボニル基であり、Rは、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基、又はベンジルオキシ基であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、R、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である)
【請求項4】
式(2)(化4)で表されるフェナジン系化合物を含有する、放射線の照射により発色する放射線検出ラベル。
【化4】
JP0004370379B2_000014t.gif
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はベンジルカルボニル基であり、Rは、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基、又はベンジルオキシ基であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、R、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の照射により発色するフェノキサジン系化合物及びフェナジン系化合物を含有する発色材に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線は、医療、工業、農業等、種々の産業分野で広く利用されている。放射線を取り扱う医療、研究施設さらには原子力発電所などの放射線利用施設では、人体への効率的な被曝低減対策と徹底した漏洩対策が求められている。また、放射線照射を利用する滅菌加工等を行う施設においては、照射した放射線量を短時間に的確に把握する必要がある。
原子力発電所では通常管理区域入口に定点の定期的サーベイによりエリア線量率マップを作成し、この線量率の情報を作業者に提供することにより被曝管理を行っている。しかし情報伝達には新たな電気配線を必要とする上、咄嗟の放射線漏洩に敏感に対応することが困難な場合が生ずる。
一方、放射線照射を利用する施設では、対象物により放射線量を変更するため、広い線領域で放射線を感受することが求められている。
【0003】
このような課題に応えるべく、照射線漏洩に直感的に対応することができるよう、放射線に感応して色彩が変化(変色、発色)する放射線検出色素が開発されている。例えば、時田らは、N-スルフォニルオキシイミド系化合物とフルオラン染料の組み合わせのような二成分系の放射線検出色素を開示している(J.Photopolym.Sci.Technol.,Vol.14,221-224(2001年))(非特許文献1)。また、特開2000-241548号公報(特許文献1)では原子力発電所等での低レベル放射線に対しても発色変化を示すロイコ色素を主成分とする放射線感応物質が提案されている。このような検出色素は、放射線の照射により酸を発生して着色し、これにより放射線を検出する。
しかし、このような検出色素は、色素の熱安定性や光安定性、酸に対する発色感度の調整、ポリマー等の担体との相溶性、担体に担持された状態での発色感度の把握に問題があるうえ、酸発生剤についてもその熱や光に対する安定性、放射線に対する感度、酸発生剤と担体との相溶性や相互作用等、考慮しなければならない課題が非常に多い。
【0004】
二成分系の放射線検出色素のこのような問題を解決すべく、単独の色素から成る検出色素も提案されている。例えば、入江らは、ジアリールエテン類の化合物を提案している(Bull.Chem.Soc.Jpn.,vol.73,No.10,2385-2388(2000年))(非特許文献2)。しかしながら、これらの化合物は、光により退色し易いという性質を有する。
【0005】
また、本発明者等は、先に、広い幅で放射線に感応して発色し、放射線照射を目視で確認することが可能な、ある種の化合物、すなわち、下記式(化5)のフェノキサジン系化合物を含有する放射線検出用カラーフォーマーを提案している(特開2003-277368号公報)。
【0006】
【化5】
JP0004370379B2_000002t.gif
(式において、R、R、R、Rは、水素原子又は同一若しくは異なるアルキル基を示し、Aは芳香環を示し、nは1~5の整数を示す)
【0007】

【非特許文献1】J.Photopolym.Sci.Technol.,Vol.14,221-224(2001年)
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Jpn.,vol.73,No.10,2385-2388(2000年)
【特許文献1】特開2000-241548号公報
【特許文献2】特開2003-277368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、公知のフェノキサジン系化合物と比較して、さらに低濃度において、及び/又は、低レベルの放射線に感応して発色し、放射線照射を目視で確認することが可能な化合物を含有する放射線検出用発色剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記フェノキサジン系化合物について、更に検討を進めた結果、低濃度においても、低レベルの放射線に感応して発色し、放射線照射を目視で確認することが可能な化合物を見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、式(1)(化6)で表される、放射線の照射によって発色するフェノキサジン系化合物を含有する発色材及び放射線検出ラベルである。
【0010】
【化6】
JP0004370379B2_000003t.gif
(式中、Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、R11、R12、R13、R14は、それぞれ同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R15は、Xが硫黄原子のとき、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基若しくはニトロ基で置換されていてもよいフェノキシ基又はナフトキシ基であり、Xが酸素原子のとき、モノ若しくはジアルキルアミノ基(この場合アルキル基の炭素数は1~8である)、炭素数5~7のシクロアルキルアミノ基、ピペリジル基又はモルホリノ基である)
【0011】
更に本発明の1つは、下記式(2)(化7)で表される、放射線の照射によって発色するフェナジン系化合物を含有する発色材及び放射線検出ラベルである。
【0012】
【化7】
JP0004370379B2_000004t.gif
(式中、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はベンジルカルボニル基であり、Rは、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基、又はベンジルオキシ基であり、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、R、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である)
【発明の効果】
【0013】
本発明により、広い幅で放射線に感応して発色し、放射線照射を目視で確認することが可能なフェノキサジン系化合物及びフェナジン系化合物を含有する発色剤及び放射線検出ラベルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の式(1)で表される化合物は、10位の窒素原子に、-C(X)R15基(X及びR15は、前記の意味を表す)を有し、3,7位にアミノ基を有するフェノキサジン系化合物を包含する。また、本発明の式(2)で表される化合物もまた、10位の窒素原子に、-C(O)R基(Rは、前記の意味を表す)を有し、3,7位にアミノ基を有するフェナジン系化合物を包含する。本発明の式(1)及び式(2)の化合物は、放射線の照射により、10位のN-C(X)結合又はN-C(O)結合が開裂して、それぞれ、フェノキサジン系化合物及びフェナジン系化合物のカチオン物質を生成し、それらのイオン特有の色に発色し、放射線を視認することができる。
【0015】
式(1)で表されるフェノキサジン系化合物において、R11、R12、R13、R14は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。原料の入手の容易さから、R11、R12、R13、R14のいずれもが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0016】
式(1)で表されるフェノキサジン系化合物において、R15は、Xが硫黄原子である場合と酸素原子である場合とでは、置換基が異なる。Xが硫黄原子である場合、R15は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基若しくはニトロ基で置換されていてもよいフェノキシ基又はナフトキシ基である。
ここで、ハロゲン原子は、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子であり、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられ、炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基が挙げられる。
【0017】
また、Xが酸素原子である場合、R15は、モノ若しくはジアルキルアミノ基(この場合アルキル基の炭素数は1~8である)、炭素数5~7のシクロアルキルアミノ基、ピペリジル基又はモルホリノ基である。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、n-オクチル基、iso-オクチル基、sec-オクチル基等が挙げられ、なかでも炭素数3~8の、カルボニル基に結合している炭素部で分枝したアルキル基、例えば、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、sec-ヘキシル基、sec-オクチル基等が好ましい。また、炭素数5~7のシクロアルキルアミノ基もまた、好ましい。
【0018】
本発明に係る式(1)で表されるフェノキサジン系化合物は、例えば、以下の公知の方法で製造できる。
1)Xが硫黄原子の場合
本発明の式(1)で表される化合物は、下記反応式(1)(化8)に従って、製造できる。
【0019】
【化8】
JP0004370379B2_000005t.gif
(反応式中、R11、R12、R13、R14は、前記の意味を表し、R15は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基若しくはニトロ基で置換されていてもよいフェノキシ基又はナフトキシ基である)
【0020】
すなわち、本発明に係る式(1)で表される、Xが硫黄原子であるフェノキサジン系化合物(式(1)’で表される化合物)は、式(6)で表されるフェノール類又はナフトール類とチオホスゲン(7)の反応により製造した、式(5)で表わされるフェニルクロロチオノフォーメート類又はナフチルクロロチオノホーメート類と、式(3)で表されるフェノキサジン色素を、水酸化ナトリウムのような塩基の存在下、亜二チオン酸ナトリウムのような還元剤で還元して得られる、式(4)で表されるビスアミノフェノキサジン類を、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのようなアルカリの存在下に反応することにより得られる。
【0021】
2)Xが酸素原子の場合
本発明の式(1)で表される化合物は、下記反応式(2)(化9)に従って、製造できる。
【0022】
【化9】
JP0004370379B2_000006t.gif
(反応式中、R11、R12、R13、R14は、前記の意味を表し、R15は、モノ若しくはジアルキルアミノ基(この場合アルキル基の炭素数は1~8である)、炭素数5~7のシクロアルキルアミノ基、ピペリジル基又はモルホリノ基である)
【0023】
すなわち、本発明に係る式(1)で表される、Xが酸素原子であるフェノキサジン系化合物(式(1)”で表される化合物)は、式(8)で表される10-クロロホルミルフェノキサジン類と、R15Hで表されるアミン類を、トリエチルアミンのような有機塩基の存在下に反応することにより得られる。
このようにして得られる、本発明に係る式(1)で表されるフェノキサジン系化合物の例を、後述の表1(表1)、表1(つづき)(表2)に示す。
【0024】
式(2)で表されるフェナジン系化合物において、R、R、R、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はベンジルカルボニル基であり、炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。炭素数1~4のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、iso-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、iso-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基が挙げられ、ハロゲン化された炭素数1~4のアルコキシカルボニル基としては、トリクロロメトキシカルボニル基、2-クロロエトキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、1,2,2,2-テトラクロロエトキシカルボニル基、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0025】
式(2)で表されるフェナジン系化合物において、Rは、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基、フェノキシ基、又はベンジルオキシ基であり、ハロゲン化されていてもよい炭素数1~4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、トリクロロメトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、1,2,2,2-テトラクロロエトキシ基、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロエトキシ等が挙げられる。
【0026】
式(2)で表されるフェナジン系化合物において、Rは、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、フェニル基、又は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基若しくはn-ブチル基等のアルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。
式(2)で表されるフェナジン系化合物において、R、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る式(2)で表されるフェナジン系化合物は、例えば、反応式(3)(化10)で表される、以下の公知の方法で製造できる。
【0028】
【化10】
JP0004370379B2_000007t.gif
(反応式中、R1’、R2’、R3’、R4’は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R、R、R、R、R、R、R、Rは、前記の意味を表す)
【0029】
すなわち、本発明に係る式(2)で表されるフェナジン系化合物は、式(9)で表されるフェナジン色素を、水酸化ナトリウムのような塩基の存在下、亜二チオン酸ナトリウムのような還元剤で還元して得られる、式(10)で表される化合物と、式(11)で表されるクロロフォーメート類を、水酸化ナトリウムのような塩基の存在下に反応することにより得られる。この反応において、NR1’2’及び/又はNR3’4’がNHのとき、式(11)のクロロフォーメート類と反応して、NR及び/又はNRは、NHCORとなる。
このようにして得られる、本発明に係る式(2)で表されるフェナジン系化合物の例を、後述の表2(表3)に示す。
【0030】
本発明に係る式(1)で表されるフェノキサジン系化合物及び式(2)で表されるフェナジン系化合物を溶媒中又は担体中に溶解又は分散させて、それに、γ線等の放射線を照射すると、いずれの化合物も10位のN-CO又はN-CS結合が開裂して、空気中又は溶媒、担体中に含まれる酸素により酸化反応が進み、それぞれフェノキサジン色素及びフェナジン色素を生成し、それぞれのカチオン特有の色に発色するので、放射線照射を目視で確認することができる。
【0031】
例えば、本発明に係る式(1)で表されるフェノキサジン系化合物をアセトニトリルのような溶媒に溶解し、この無色の溶液にγ線を照射すると、上記の色素体を生成して、青色に発色する(λmax=約644nm)。また、本発明に係る式(2)で表されるフェナジン系化合物をアセトニトリルのような溶媒に溶解し、この無色の溶液にγ線を照射すると、色素体を生成し、黄色(例えば、λmax=460nm)、赤紫色(λmax=568nm)等のそれぞれのカチオン特有の色に発色する。
【0032】
本発明に係るいずれの化合物も、溶媒中又は担体中に溶解又は分散させて、放射線を照射すると、λmaxにおける吸光度は、吸収線量の増加に比例して増加し、式(1)のフェノキサジン系化合物において、Xが硫黄原子の場合、2.5×10-4Mの濃度で40Gyの吸収線量で、また、Xが酸素原子の場合、2.5×10-4Mの濃度で約2Gyの吸収線量で視認することができる。また、式(2)のフェナジン系化合物は、2.5×10-4Mの濃度で、約10Gyの吸収線量で視認することができる。
また、λmaxにおける吸光度は、化合物濃度にも比例するので、化合物の濃度を上げることにより、より低吸収線量においても、目視で確認することができる。
【0033】
従って、本発明に係る式(1)のフェノキサジン系化合物及び式(2)のフェナジン系化合物は、いずれも、溶媒に溶解又は担体中に分散して、放射線の照射によって発色する発色材とすることができる。
溶媒としては、アルコール類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等、担体としては、PVA、PMMA、PET、ポリシラン等のポリマー、液晶、アモルファス材料が挙げられる。溶媒としては、特に、アセトニトリルが好適である。
さらに本発明に係る式(1)のフェノキサジン系化合物及び式(2)のフェナジン系化合物は、いずれも、放射線検出ラベルとして用いることができる。本発明に係る放射線検出ラベルは、PVA、PMMA、PET、ポリシラン等のポリマーとともに、本発明に係る式(1)のフェノキサジン系化合物又は式(2)のフェナジン系化合物を溶かした溶液から、溶媒を徐々に蒸発させるか、又は高温で融解したPVA、PMMA、PET、ポリシラン等のポリマーに、本発明に係る式(1)のフェノキサジン系化合物又は式(2)のフェナジン系化合物を溶解させ、成型する等の方法により容易に得ることができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明の構成及び効果を実施例により具体的に説明する。
実施例1(3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(p-クロロフェノキシチオカルボニル)フェノキサジンの製造)(化合物番号1106の製造)
アルゴン置換した50ml三口フラスコに、チオホスゲン1.21g(10.53mmol)を溶解したヘキサン13mlを加えた。これに、p-クロロフェノール1.20g(9.29mmol)及び水酸化ナトリウム0.25g(6.25mmol)を溶解した水10mlを、室温でゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で5時間攪拌した。その後、分液操作を行い、p-クロロフェニルクロロチオノホルメートを含むヘキサン層を分取した。ヘキサン層はすぐに次の反応に用いた。
室温、アルゴン雰囲気下で、3,7-ビス(ジエチルアミノ)フェノキサジニウム塩化物1.46g(4.06mmol)を水50mlに溶解した。その後、トルエン50mlを加え、10分程度攪拌した後、亜二チオン酸ナトリウム1.39g(8.05mmol)、水酸化ナトリウム0.38g(9.48mmol)及び炭酸水素ナトリウム0.52g(6.16mmol)を溶解した水50mlを加え、遮光した。30分攪拌して還元反応を行った後、室温のまま、上記の粗製p-クロロフェニルクロロチオノホルメートを含むヘキサン溶液約15mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で15時間攪拌した。その後、分液操作を行い、トルエン層を分取した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去した。得られた残渣を用いてプレパラティブTLCを行い、次に、ソックスレイ抽出を行った。残渣をメタノールで再結晶し、目的化合物3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(p-クロロフェノキシチオカルボニル)フェノキサジン313.6mg(0.63mmol)を、無色針状結晶として得た(収率15.6%)。物性値を表1(表1)に示す。
【0035】
実施例2(3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(N-シクロヘキシルカルバモイル)フェノキサジンの製造)(化合物番号1102の製造)
アルゴン雰囲気下、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-クロロホルミルフェノキサジン289mg(0.745mmol)、シクロヘキシルアミン297mg(3.00mmol)及びトリエチルアミン0.3mlをアセトン10mlに加えた。この溶液を2時間30分攪拌しながら還流した後、水を加えて塩酸塩を溶解し、トルエン10mlで抽出した。トルエン層を水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去し、残渣をメタノールで低温再結晶を2回することにより、目的化合物(3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(N-シクロヘキシルカルバモイル)フェノキサジン61.3mgを、帯紫白色の柱状結晶として得た(収率18.3%)。物性値を表1(表1)に示す。
【0036】
実施例3(3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(N-sec-ブチルカルバモイル)フェノキサジンの製造)(化合物番号1103の製造)
アルゴン雰囲気下、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-クロロホルミルフェノキサジン621mg(1.60mmol)、sec-ブチルアミン350mg(4.80mmol)及びトリエチルアミン0.3mlをアセトン10mlに加えた。この溶液を2時間30分攪拌しながら還流した後、水を加えて塩酸塩を溶解し、トルエン10mlで抽出した。トルエン層を水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去し、残渣をメタノールで低温再結晶することにより、目的化合物3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(N-sec-ブチルカルバモイル)フェノキサジン282mgを、帯青白色の柱状晶として得た(収率41.4%)。物性値を表1(表1)に示す。
【0037】
実施例4(3,7-ビス(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2,8-ジメチル-5-フェニル-10-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)フェナジンの製造)(化合物番号1201の製造)
アルゴン雰囲気下、水20mlに3,7-アミノ-2,8-ジメチル-5-フェニルフェナジニウム塩化物(Safranine O)373mg(1.03mmol)を溶解し、トルエン20mlを加えた。次いで、水酸化ナトリウム808mg(20.2mmol)、亜二チオン酸ナトリウム811mg(4.66mmol)及び炭酸水素ナトリウム510mg(6.07mmol)を溶解した水20mlを加え、激しく攪拌した。水層が無色に変化したら、この反応液に、クロロ蟻酸2,2,2-トリクロロエチル2037mg(9.61mmol)をトルエン30mlに溶解した溶液を、等圧滴下漏斗を用いて滴下した。一晩攪拌した後、トルエン層を分取した。トルエン層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを留去して、黒色の残渣を得た。この残渣をトルエンと酢酸エチルの混合溶媒(100:7.5)に溶解し、この溶液をプレパラティブTLC(シリカゲル)に塗布し、先に用いたトルエンと酢酸エチルの混合溶媒で展開した。その後、目的物と思われるスポットを削り、酢酸エチルでソックスレイ抽出した。酢酸エチルを留去して、メタノールによる再結晶にて、目的化合物の3,7-ビス(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-2,8-ジメチル-5-フェニル-10-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)フェナジン102.5mgを、白色粉末として得た(収率12%)。物性値を表2(表2)に示す。
【0038】
実施例5(3,7-ビス(ジメチルアミノ)-5-(4-メチルフェニル)-10-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)フェナジンの製造)(化合物番号1203の製造)
アルゴン雰囲気下、水40mlに3,7-ビス(ジメチルアミノ)-5-(4-メチルフェニル)フェナジニウム塩化物756mg(1.93mmol)を溶解し、トルエン40mlを加えた。次いで、水酸化ナトリウム416mg(10.4mmol)、亜二チオン酸ナトリウム2204mg(6.02mmol)及び炭酸水素ナトリウム889mg(10.6mmol)を溶解した水40mlを加え、激しく攪拌した。水層が無色に変化したら、この反応液に、クロロ蟻酸2,2,2-トリクロロエチル1283mg(6.05mmol)をトルエン30mlに溶解した溶液を、等圧滴下漏斗を用いて滴下した。一晩攪拌した後、トルエン層を分取した。トルエン層を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、トルエンを留去して、赤紫色の固体を得た。この固体をトルエンと酢酸エチルの混合溶媒(100:7.5)に溶解し、この溶液をプレパラティブTLC(シリカゲル)に塗布し、先に用いたトルエンと酢酸エチルの混合溶媒で展開した。その後、目的物と思われるスポットを削り、酢酸エチルでソックスレイ抽出した。酢酸エチルを留去して、メタノールによる再結晶にて、目的化合物の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-5-(4-メチルフェニル)-10-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル)フェナジン33.2mgを、淡黄白色粉末として得た(収率3.2%)。物性値を表2(表2)に示す。
【0039】
実施例6(本願発明に係る化合物のγ線照射試験)
実施例1~5等で製造した本願発明に係る化合物の蒸留したアセトニトリル溶液(化合物濃度2.5×10-4M)に、60Coを線源として、所定量のγ線を照射する照射試験を行なった。γ線の照射による各溶液の発色の状態をUVスペクトルにより測定し、λmaxにおける、γ線吸収線量(単位:Gy)に対する吸光度を、表1に示した。また、その発色の状態を目視で観察したところ、実施例1~5の化合物は、それぞれ、40Gy、2Gy、2Gy、10Gy、10Gyの吸収線量から、視認することができた。
【0040】
【表1】
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【0041】
【表2】
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【0042】
【表3】
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