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明細書 :適応フィルタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4324676号 (P4324676)
公開番号 特開2007-036791 (P2007-036791A)
登録日 平成21年6月19日(2009.6.19)
発行日 平成21年9月2日(2009.9.2)
公開日 平成19年2月8日(2007.2.8)
発明の名称または考案の名称 適応フィルタ
国際特許分類 H03H  21/00        (2006.01)
FI H03H 21/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2005-218605 (P2005-218605)
出願日 平成17年7月28日(2005.7.28)
審査請求日 平成19年2月6日(2007.2.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】島村 徹也
【氏名】津田 雄亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100100918、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 公治
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
審査官 【審査官】白井 孝治
参考文献・文献 特開平10-164687(JP,A)
特開2004-064681(JP,A)
調査した分野 H03H21/00
特許請求の範囲 【請求項1】
入力信号を遅延する複数の遅延素子と、入力信号及び各遅延素子からの出力信号の各々にフィルタ係数を乗算する複数の乗算器と、各乗算器の出力を加算する加算器とを備える第1のトランスバーサルフィルタと、
前記第1のトランスバーサルフィルタに入力する入力信号と同一の入力信号が入力し、前記入力信号を遅延する複数の遅延素子と、各遅延素子からの出力信号の各々にフィルタ係数を乗算する、前記第1のトランスバーサルフィルタと同数の乗算器と、各乗算器の出力を加算する加算器とを備える第2のトランスバーサルフィルタと、
前記第1のトランスバーサルフィルタの加算器からの出力信号と所望信号との差分を誤差信号として出力する加算手段と、
前記誤差信号の低減を図るための更新用のフィルタ係数を算出して、前記第1のトランスバーサルフィルタ及び第2のトランスバーサルフィルタの同一序列の各乗算器で乗算される前記フィルタ係数を同一の値のフィルタ係数更新する係数調整部と、
を有し、
前記係数調整部では、更新用の前記フィルタ係数を算出する際のステップサイズμが、
(1-μ)2<1
となるように設定され、前記第2のトランスバーサルフィルタの加算器からの出力信号フィルタ出力として出力されることを特徴とする適応フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の適応フィルタであって、前記係数調整部が、正規化最小平均自乗アルゴリズムにより前記更新用のフィルタ係数を算出することを特徴とする適応フィルタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、適応フィルタに関し、特に、目標にする信号への追従性能を改善したものである。
【背景技術】
【0002】
適応フィルタは、出力信号と目標にする信号(所望信号)との誤差が最小になるように適応処理を行うフィルタであり、通常、有限長インパルス応答(finite impulse response:FIR)フィルタが使用され、そのフィルタ係数が、適応アルゴリズムを用いて、入力信号が入力するごとに調整される。
図8は、適応フィルタの概念図を表している。適応フィルタ10は、離散時間nの入力信号xnに対し、フィルタ係数Cnを用いて積和演算を実行し、出力信号ynを出力する。出力信号ynが入力した加算器30は、所望信号dnと出力信号ynとの差分を表す誤差信号enを出力し、適応フィルタ10は、この誤差信号enが減少するように、フィルタ係数をCn+1に更新する。そして、このフィルタ係数Cn+1を用いて次の離散時間n+1の入力信号xn+1に対する積和演算が実行され、この手順が繰り返される。
【0003】
図9は、適応フィルタの構成をブロック図で示している。この適応フィルタは、積和演算を行うトランスバーサルフィルタ回路11と、適応アルゴリズムによりトランスバーサルフィルタ回路11の係数を更新する係数調整部12とを備えており、トランスバーサルフィルタ回路11は、入力信号xnを遅延する複数の遅延素子13、14と、入力信号xn及び遅延した各入力信号xn-1、xn-2に対して係数調整部12が設定した係数c0(n)、c1(n)、c3(n)をそれぞれ乗算する乗算器15、16、17と、各乗算器15、16、17の出力を加算して出力信号ynを出力する加算器18とを備えている。
【0004】
適応アルゴリズム(適応フィルタの係数調整アルゴリズム)としては、最も基本的な最小平均自乗(Least Mean Square:LMS)アルゴリズムが、従来から広く用いられている。このアルゴリズムでは、誤差信号enの平均自乗誤差E[(en2]を最小化するように係数の更新が行われる。
【0005】
また、LMSアルゴリズムの係数ベクトルの収束条件を扱い易いものに改良した正規化LMSアルゴリズムも、近年、多く用いられている。
正規化LMSアルゴリズムを用いた適応処理は、数式で次のように記述できる。
入力信号は(数1)によりベクトルXnで表す。
【数1】
JP0004324676B2_000002t.gif
Tは転置である。また、係数は(数2)によりベクトルCnで表す。
【数2】
JP0004324676B2_000003t.gif
このとき、適応処理は、(数3)(数4)(数5)により記述される。
【数3】
JP0004324676B2_000004t.gif
【数4】
JP0004324676B2_000005t.gif
【数5】
JP0004324676B2_000006t.gif
ここで、μは、正規化LMSアルゴリズムにおけるステップサイズパラメータであり、
0<μ<2 (数6)
のとき、係数ベクトルは収束する。この収束範囲は、LMSアルゴリズムにおける収束条件と違って、入力信号に依存しない。そのため、正規化LMSアルゴリズムは、LMSアルゴリズムに比べて扱い易い。この範囲内でμの値を大きく取れば時定数が低減し、係数ベクトルの収束速度が向上する。逆に、μの値を小さく取れば、時定数が増大し、係数ベクトルの収束速度が低下する。
また、βは、0による割り算を避けるために導入された小さな正の実数値であり、“安定化パラメータ”と呼ばれている。
なお、正規化LMSアルゴリズムについては、下記特許文献1あるいは下記非特許文献1に詳述されている。
【0006】
こうした適応フィルタの係数を適応的に更新し、適応フィルタの出力を、適宜選定した所望信号に追随させることで、伝送路の自動等化、通信回線におけるエコーキャンセリング、雑音に埋もれた信号の検出、逆に信号に僅かに混入した雑音の検出、信号の予測等が可能になる。
例えば、図10は、適応フィルタ10を用いて通信路の自動等化を行うシステムのシミュレーションモデルを示している。ここで、Hnは通信路(未知システム)32のインパルス応答を示し、加算器31で加算されるvnは、伝送中の送信信号snに加わる付加雑音を示している。
このシステムでは、送信側と受信側とが擬似的に同じ信号系列を参照できるトレーニングモードにおいて、送信側は送信信号snを送信し、受信側は、その送信信号snと同じ信号を所望信号dnに用いて、受信信号を入力信号とする適応フィルタ10の出力信号ynが所望信号dnと一致するようにフィルタ係数を調整する。このシミュレーションモデルでは、送信信号snを遅延器33で遅延させて、所望信号dnとなる信号sn-Dを生成している。
【0007】
また、図11は、適応フィルタ10を用いて未知システム32の同定を行うシステムのシミュレーションモデルを示している。このシステムでは、未知システム32及び適応フィルタ10に同一の入力信号xn(白色雑音)を入力し、未知システム32の出力信号に付加雑音vnが加えられた信号を所望信号dnとして、適応フィルタ10の出力信号ynが所望信号dnと一致するようにフィルタ係数を調整し、付加雑音vnを含む未知システム32を同定する。

【特許文献1】特開2004-64681号公報
【非特許文献1】池原雅章、島村徹也共著「マルチメディア信号処理 上」培風館、2004年1月20日発行、pp.182~207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の適応フィルタでは、誤差信号enの平均自乗誤差を十分小さくすることが難しい。そのため、入力信号の時間的変化が激しい場合に、所望信号に十分に追従することできず、また、予測精度が要求されるシステムでは、不十分な結果しか得られない、と言った状況が生じている。
【0009】
本発明は、こうした従来の問題点を解決するものであり、誤差信号enの平均自乗誤差を十分小さくすることができる適応フィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の適応フィルタは、入力信号を遅延する複数の遅延素子と、入力信号及び各遅延素子からの出力信号の各々にフィルタ係数を乗算する複数の乗算器と、各乗算器の出力を加算する加算器とを備える第1のトランスバーサルフィルタと、前記第1のトランスバーサルフィルタに入力する入力信号と同一の入力信号が入力し、前記入力信号を遅延する複数の遅延素子と、各遅延素子からの出力信号の各々にフィルタ係数を乗算する、前記第1のトランスバーサルフィルタと同数の乗算器と、各乗算器の出力を加算する加算器とを備える第2のトランスバーサルフィルタと、前記第1のトランスバーサルフィルタの加算器からの出力信号と所望信号との差分を誤差信号として出力する加算手段と、前記誤差信号の低減を図るための更新用のフィルタ係数を算出して、前記第1のトランスバーサルフィルタ及び第2のトランスバーサルフィルタの同一序列の各乗算器で乗算される前記フィルタ係数を同一の値のフィルタ係数更新する係数調整部と、を有し、前記係数調整部では、更新用の前記フィルタ係数を算出する際のステップサイズμが、
(1-μ)2<1
となるように設定され、前記第2のトランスバーサルフィルタの加算器からの出力信号フィルタ出力として出力される。
この第2のトランスバーサルフィルタは、第1のトランスバーサルフィルタから得られた係数を利用して、再度フィルタリングを施すことにより、第1のトランスバーサルフィルタにおける誤差を小さくする。


【0011】
また、本発明の適応フィルタでは、係数調整部が、正規化最小平均自乗アルゴリズムにより更新用のフィルタ係数を算出する。
正規化LMSアルゴリズムでは、ステップサイズμを0<μ<2の範囲に設定すれば、フィルタ係数は収束し、この収束範囲の全てにおいて、誤差は低減する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の適応フィルタは、誤差信号の平均自乗誤差を十分小さくすることができる。その結果、予測精度が向上し、また、入力信号の時間的変化が激しい場合でも、所望信号への追従が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態における適応フィルタの概念図を示している。この適応フィルタは、入力信号xnをフィルタ処理して出力信号ynを出力する第1のトランスバーサルフィルタ回路11と、所望信号dnと出力信号ynとの差分を誤差信号enとして出力する加算器30と、正規化LMSアルゴリズムに基づいて誤差信号enの平均自乗誤差を最小化するフィルタ係数を算出し、第1トランスバーサルフィルタ回路11及び第2トランスバーサルフィルタ回路21のフィルタ係数を更新する正規化LMS係数調整部20と、更新されたフィルタ係数を用いて入力信号xnのフィルタ処理を行い、出力信号ypnを出力する第2トランスバーサルフィルタ回路21とを備えている。
この適応フィルタでは、第1トランスバーサルフィルタ回路11の出力信号ynが、フィルタ係数の更新のためだけに使用され、第2トランスバーサルフィルタ回路21の出力信号ypnが適応フィルタの出力信号として出力される。
【0014】
図2は、この適応フィルタの構成をブロック図で示している。第1トランスバーサルフィルタ回路11の構成は、図9と同じであり、入力信号xnを遅延する複数の遅延素子13、14と、入力信号xn及び遅延した各入力信号xn-1、xn-2に対して正規化LMS係数調整部20が設定した係数を乗算する乗算器15、16、17と、各乗算器15、16、17の出力を加算して出力信号ynを出力する加算器18とを備えている。
また、第2トランスバーサルフィルタ回路21の構成は、入力信号xnを遅延する遅延素子23を1つ余分に備えている点で第1トランスバーサルフィルタ回路11と相違しているが、その他は第1トランスバーサルフィルタ回路11と同じであり、入力信号xnを遅延する遅延素子24、25、遅延した各入力信号xn-1、xn-2、xn-3に対して正規化LMS係数調整部20が設定した係数を乗算する乗算器26、27、28、及び、各乗算器26~28の出力を加算して出力信号ypnを出力する加算器29を備えている。
【0015】
次に、この適応フィルタの動作について説明する。
いま、入力信号xnが入力し、このときの第1トランスバーサルフィルタ回路11の乗算器15、16、17に設定されているフィルタ係数が、それぞれ、c0(n)、c1(n)、c2(n)であるとする。第1トランスバーサルフィルタ回路11は、積和演算を行い、次に示す出力信号ynを出力する。
n=(c0(n)・xn+c1(n)・xn-1+c2(n)・xn-2
これを受けて、加算器30は、次に示す誤差信号enを出力する。
n=dn-yn
【0016】
正規化LMS係数調整部20は、誤差信号enの平均自乗誤差を最小化するフィルタ係数c0(n+1)、c1(n+1)、c2(n+1)を算出し、第1トランスバーサルフィルタ回路11及び第2トランスバーサルフィルタ回路21のフィルタ係数を更新する。
第1トランスバーサルフィルタ回路11は、次の入力信号xn+1が入力すると、c0(n+1)、c1(n+1)、c2(n+1)を用いて積和演算を行い、次に示す出力信号yn+1を出力する。
n+1=(c0(n+1)・xn+1+c1(n+1)・xn+c2(n+1)・xn-1
この出力信号yn+1は、次回の誤差信号en+1(=dn+1-yn+1)の算出に使用され、この誤差信号en+1の平均自乗誤差を最小化するフィルタ係数c0(n+2)、c1(n+2)、c2(n+2)が算出される。
この第1トランスバーサルフィルタ回路11の動作は、図9のトランスバーサルフィルタ回路11の動作と同じであり、その処理は、(数3)(数4)(数5)により記述される。
【0017】
一方、フィルタ係数が更新された第2トランスバーサルフィルタ回路21は、次の入力信号xn+1が入力すると、c0(n+1)、c1(n+1)、c2(n+1)を用いて積和演算を行い、次に示す出力信号ypnを出力する。
pn=(c0(n+1)・xn+c1(n+1)・xn-1+c2(n+1)・xn-2
これは、数式で(数7)のように記述できる。
【数7】
JP0004324676B2_000007t.gif
従って、第2トランスバーサルフィルタ回路21から出力される出力信号ypnの所望信号dnに対する誤差をepnとすると、この誤差は(数8)で表される。
pn=dn-ypn (数8)
【0018】
この誤差epnは、次に説明するように、第1トランスバーサルフィルタ回路11の出力信号ynの所望信号dnに対する誤差en(=dn-yn)よりも小さい。つまり、適応フィルタの最終的な出力を、ynでは無く、ypnとすることで、平均自乗誤差(MSE)の低減を図ることができる。
それでは、誤差epnが誤差enより小さくなることを理論的に説明する。
pnは、(数3)及び(数5)を用いて、(数9)のように変形できる。
【数9】
JP0004324676B2_000008t.gif
そして、(数5)より(数10)の関係がある。
【数10】
JP0004324676B2_000009t.gif
ここで、αnは(数11)のように定義している。
【数11】
JP0004324676B2_000010t.gif
(数10)を(数9)に代入し、さらに、(数4)の関係を代入することにより、ypnは(数12)のように変形できる。
【数12】
JP0004324676B2_000011t.gif
(数12)を(数8)に代入することにより、epnは(数13)で表される。
【数13】
JP0004324676B2_000012t.gif
この結果から、(数14)の関係が導き出せる。
|epn2=(1-μ)2|en2 (数14)
ここで、αnについては、βが小さな正の実数値であるため、(数15)に示すように1と仮定する。
【数15】
JP0004324676B2_000013t.gif
このとき、(数14)は(数16)のようになる。
【数16】
JP0004324676B2_000014t.gif
正規化LMSアルゴリズムでは、(数6)に示したように、ステップサイズμは、
0<μ<2 (数6)
の範囲に設定される。そのため、
(1-μ)2<1 (数17)
となり、|epn2は|en2より常に小さくなる。
【0019】
このように、第2トランスバーサルフィルタ回路21は、第1トランスバーサルフィルタ回路11から得られた係数を利用して、再度フィルタリングを施すことにより、第1トランスバーサルフィルタ回路11での誤差を低減する“洗練機能”を果たしている。
【0020】
また、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能は、計算機シミュレーションの結果からも確かめられている。
図3は、図10の通信路等化モデルの適応フィルタ10として、図1の適応フィルタを用いた場合の構成を示している。そして、図4には、図3及び図10のシミュレーションモデルにおける収束特性を対比して示している。
なお、このモデルでは、適応フィルタの次数(equalizer length)M=9、遅延器33の遅延量D=4、安定化パラメータβ=0.05、individual trials 100runs、SN比40dBに設定し、また、ステップサイズμ=0.5に設定している。
【0021】
図4の縦軸は、平均自乗誤差(MSE)をdBで示し、横軸は、適応処理の繰り返し回数(n)を示している。また、実線の特性は、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用しない場合を示し、点線の特性は、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用した場合を示している。
図4において、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用しない場合の収束状態におけるMSEは-33.9281(dB)であり、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用した場合のMSEは-39.8961(dB)である。この結果から、
|en2=10-33.9281/10=4.0475×10-4 (数18)
|epn2=10-39.8961/10=1.0242×10-4 (数19)
と計算され、|epn2と|en2との比が(数20)のようになる。
【数20】
JP0004324676B2_000015t.gif
一方、(数16)から(数21)が得られる。
【数21】
JP0004324676B2_000016t.gif
(数21)にμ=0.5を代入すると(数22)が得られる。
【数22】
JP0004324676B2_000017t.gif
(数22)及び(数20)の算出結果は、ほぼ一致しており、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能による効果が確認できる。
【0022】
なお、(数22)及び(数20)の間の差分は、(数15)でαnを1と仮定したことが影響している。αnは1より小さいが、1に近い値である(例えば0.98)。そのため、0<μ<1の場合
(1-μ)2<(1-μαn2 (数23)
1<μ<2の場合
(1-μ)2>(1-μαn2 (数24)
となる。ここではμ=0.5としているため、(数23)の関係が成り立ち、(数22)の値が(数20)の値より小さく現われている。
【0023】
また、図5は、ステップサイズをμ=0.8に設定し、その他の条件は図4と同じに設定したときの収束特性を示している。実線の特性は、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用しない場合であり、点線の特性は、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用した場合である。
【0024】
また、図6は、図11の同定システムの適応フィルタ10として、図1の適応フィルタを用いた場合のシミュレーションモデルを示しており、図7は、図6及び図11のシミュレーションモデルにおける収束特性を対比して示している。
なお、このモデルでは、適応フィルタの次数(equalizer length)M=3、安定化パラメータβ=0.05、individual trials 100runs、SN比40dBに設定し、また、ステップサイズμ=0.5に設定している。実線の特性は、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用しない場合であり、点線の特性は、第2トランスバーサルフィルタ回路21の洗練機能を使用した場合である。
【0025】
このように、“洗練機能”を果たす第2トランスバーサルフィルタ回路21において、第1トランスバーサルフィルタ回路11から得られた係数を利用して再度フィルタリングを行うことにより、適応フィルタの所望信号への追従性を改善することができる。
【0026】
なお、ここで示した適応フィルタの次数や各パラメータの値は、一例であって、本発明は、それらに限定されるものではない。
また、ここでは、フィルタ係数の算出に、正規化LMSアルゴリズムを用いる場合について説明したが、本発明は、他のアルゴリズムを用いてフィルタ係数を算出する適応フィルタにも適用できる。ただ、正規化LMSアルゴリズムの場合は、ステップサイズμが0<μ<2の範囲に設定されるため、(数17)の関係が成り立ち、|epn2は|en2より常に小さくなるが、他のアルゴリズムを用いる場合は、|epn2が|en2より小さくなるようなステップサイズμを選択して使用する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の適応フィルタは、所望信号への追従性が良好であり、エコーキャンセラ、ノイズキャンセラ、通信路等化器、信号予測等に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態における適応フィルタの概念図
【図2】本発明の実施形態における適応フィルタの構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施形態における適応フィルタを適用した通信路等化モデルを示す図
【図4】本発明の実施形態における適応フィルタの収束特性を従来の適応フィルタと対比して示す図(その1)
【図5】本発明の実施形態における適応フィルタの収束特性を従来の適応フィルタと対比して示す図(その2)
【図6】本発明の実施形態における適応フィルタを適用した同定システムのモデルを示す図
【図7】本発明の実施形態における適応フィルタの収束特性を従来の適応フィルタと対比して示す図(その3)
【図8】適応フィルタの概念図
【図9】適応フィルタの構成を示すブロック図
【図10】通信路等化モデルを示す図
【図11】同定システムのモデルを示す図
【符号の説明】
【0029】
10 適応フィルタ
11 第1トランスバーサルフィルタ回路
12 係数調整部
13 遅延素子
14 遅延素子
15 乗算器
16 乗算器
17 乗算器
18 加算器
20 正規化LMS係数調整部
21 第2トランスバーサルフィルタ回路
23 遅延素子
24 遅延素子
25 遅延素子
26 乗算器
27 乗算器
28 乗算器
29 加算器
30 加算器
31 加算器
32 未知システム
33 遅延器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10