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明細書 :アルキンの環化三量化によるベンゼン誘導体の位置選択的合成方法およびそれに用いる触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4538634号 (P4538634)
公開番号 特開2007-070315 (P2007-070315A)
登録日 平成22年7月2日(2010.7.2)
発行日 平成22年9月8日(2010.9.8)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
発明の名称または考案の名称 アルキンの環化三量化によるベンゼン誘導体の位置選択的合成方法およびそれに用いる触媒
国際特許分類 C07C   2/48        (2006.01)
C07C  15/14        (2006.01)
C07C  15/02        (2006.01)
C07C  17/269       (2006.01)
C07C  22/04        (2006.01)
C07C  67/343       (2006.01)
C07C  69/76        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
B01J  31/22        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07F   9/00        (2006.01)
FI C07C 2/48
C07C 15/14
C07C 15/02
C07C 17/269
C07C 22/04
C07C 67/343
C07C 69/76 Z
C07F 7/08 W
B01J 31/22 Z
C07B 61/00 300
C07F 9/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2005-261996 (P2005-261996)
出願日 平成17年9月9日(2005.9.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年3月11日 日本化学会第85春季年会-講演予稿集I 1C4-11に発表
審査請求日 平成19年3月27日(2007.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】永澤 明
【氏名】掛谷 政輝
【氏名】藤原 隆司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】水島 英一郎
参考文献・文献 Macromolecules,1981年,Vol. 14, No. 2,233-236
日本化学会第84春季年会-講演予稿集I,日本,2004年 3月11日,609頁
調査した分野 C07C 2/48
B01J 31/22
C07F 9/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式で表されるニオブ二核錯体を反応触媒として用いて、下記一般式(1)で示されるアルキン化合物を20~30℃で環化三量化して、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体を得る、ベンゼン誘導体の製造方法。
【化1】
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【化2】
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(一般式(1)および(2)中、R1およびR2は、同一または異なる、水素原子、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アシル基または有機シラン基である。)
【請求項2】
下記式で表されるニオブ二核錯体であり、かつ下記一般式(1)で示されるアルキン化合物を20~30℃で環化三量化して、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体を得るために用いる、アルキン化合物の環化三量化用触媒。
【化3】
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【化4】
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(一般式(1)および(2)中、R1およびR2は、同一または異なる、水素原子、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アシル基または有機シラン基である。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ二核錯体を反応触媒として用い、アルキン化合物を位置選択的に環化三量化してベンゼン誘導体を製造する方法、およびこの方法に用いる位置選択的合成触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキンの環化三量化によるベンゼン誘導体の合成(化1参照)を、金属塩または金属錯体が触媒することはすでに知られている(T. Oshigi, K. Takai, Jpn. Kokai Tokkyo Koho 2002-60354(2002)、非特許文献1)。
【0003】
【化1】
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【0004】
遷移金属錯体としてニオブ単核錯体を上記反応の触媒に用いる例も知られている (J. B. Hartung, Jr., and S. F. Pederson, Organometallics, 9, 1414 (1990)、非特許文献2)。この報告例では、ニオブ単核錯体を用いた1-へキシンとの反応において、高収率でベンゼン誘導体が得られている。

【非特許文献1】T. Oshigi, K. Takai, Jpn. Kokai Tokkyo Koho 2002-60354(2002)
【非特許文献2】J. B. Hartung, Jr., and S. F. Pederson, Organometallics, 9, 1414 (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記反応式に示すように、生成物は1,3,5-異性体と1,2,4-異性体の2つの異性体の混合物であり、反応に立体選択性が全くないか、または乏しい。従って、目的とする一方の異性体を得るためには、生成した2つの異性体を分離する工程が必要であった。基本的にこの傾向は、触媒として使用する金属塩または金属錯体の種類によらず同じであった。
【0006】
上述のように、アルキンの環化三量化によるベンゼン誘導体の合成に関する従来法では、アルキンを位置選択的に反応させて、一方の生成物である1,3,5-異性体のみを合成することはできなかった。1,3,5-異性体は、主に、合成試薬の原料として使われ、その他に例えば、1,3,5-トリメチルベンゼンは石油の一成分であり、燃料やガソリンなどに含まれている。また、石油から1,3,5-トリメチルベンゼンを取り出して、溶剤、塗料うすめ液などとして使われるほか、染料中間体、プラスチックの紫外線安定剤、医薬品および工業薬品の原料等の用途が有る。原料となるアルキンは、一般に1,2-ジブロモ化合物RCHBr・CHR'Brにアルコールカリを作用させ、その他にアセチレンHC≡CHの場合は炭化カルシウム(カーバイド)に水を作用させる等の方法により安価に製造できる。したがって、アルキン化合物から1,3,5-異性体であるベンゼン誘導体を選択的に合成することができれば、非常に有用である。
【0007】
そこで本発明の目的は、アルキンから1,3,5-異性体であるベンゼン誘導体のみを選択的に合成できる方法およびこの方法に用いる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ニオブ二核錯体を用いて様々なアルキン化合物との反応を行った結果、いずれもベンゼン誘導体として位置選択的に1,3,5-異性体のみを高収率に合成することができることを見いだして、本発明を完成した。
【0009】
本発明は以下のとおりである。
[1]
下記式で表されるニオブ二核錯体を反応触媒として用いて、下記一般式(1)で示されるアルキン化合物を20~30℃で環化三量化して、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体を得る、ベンゼン誘導体の製造方法。
【化2】
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【化3】
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(一般式(1)および(2)中、R1およびR2は、同一または異なる、水素原子、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アシル基または有機シラン基である。)
[2]
下記式で表されるニオブ二核錯体であり、かつ下記一般式(1)で示されるアルキン化合物を20~30℃で環化三量化して、下記一般式(2)で示されるベンゼン誘導体を得るために用いる、アルキン化合物の環化三量化用触媒。
【化4】
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(一般式(1)および(2)中、R1およびR2は、同一または異なる、水素原子、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換アシル基または有機シラン基である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルキン化合物から、ベンゼン誘導体として位置選択的に1,3,5-異性体のみを高収率に合成する方法及び触媒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、反応触媒としてテトラヒドロチオフェンを少なくとも一部の配位子とするニオブ二核錯体を用いてアルキン化合物を環化三量化してベンゼン誘導体を得る、ベンゼン誘導体の製造方法に関する。特に、本発明の方法では、ベンゼン誘導体として位置選択的に1,3,5-異性体のみを得る。
【0012】
[反応触媒]
本発明で用いる反応触媒は、テトラヒドロチオフェンを少なくとも一部の配位子とするニオブ二核錯体である。この触媒は、ニオブ二核錯体であって、テトラヒドロチオフェンを少なくとも一部の配位子とする。具体的には、テトラヒドロチオフェンとハロゲン原子、好ましくは塩素原子とを配位子として含み、より具体的には、テトラヒドロチオフェンが3つと、それ以外の配位子として塩素を含むものであることができる。ニオブ二核錯体は、より具体的には、下記式で示される。
【化5】
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【0013】
上記式で示されるニオブ二核錯体は、新規化合物であり、塩化ニオブをマグネシウムの存在下で、テトラヒドロチオフェンを添加し、反応させることで合成できる。詳細は、実施例に示す。合成されたニオブ二核錯体は、必要により洗浄および乾燥され、さらには再結晶により精製することもできる。
【0014】
[ベンゼン誘導体製造方法]
本発明の製造方法における、アルキン化合物およびベンゼン誘導体は、下記一般式で示されるアルキン化合物(1)およびベンゼン誘導体(2)であることができる。
【化6】
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一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、同一または異なる、水素原子、置換または無置換アルキル基、置換または無置換アリール基、置換または無置換アシル基または有機シラン基であることができる。
【0015】
アルキル基は、例えば、炭素数1~6のアルキル基であることができ、メチル、エチル、iso-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル等を挙げることができる。また、置換アルキル基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子を挙げることができ、具体的には、フッ素、塩素、臭素等を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル、トリルを挙げることができ、置換アリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子を挙げることができ、具体的には、フッ素、塩素、臭素等を挙げることができる。アシル基は、例えば、エチルカルボキシレート基、ホルミル基、アセチル基、マロニル基、ベンゾイル基、シンナモイル基等であることができる。有機シラン基は、-SiH3の少なくとも1つの水素の代りに有機基が結合した基であり、例えば、-SiH2R、-SiHR2、および-SiR3(Rは有機基である)があり、有機基としては、例えば、置換または無置換アルキル基、置換または無置換アリール基、置換または無置換アシル基を挙げることができる。特に、有機基は、アルキル基であることが好ましい。有機シラン基は、好ましくは-SiMe3である。
【0016】
反応は、例えば、有機溶媒中にアルキン化合物とニオブ二核錯体とを添加し、室温(例えば、20~30℃)で行うことができる。有機溶媒は、錯体のニオブに配位しない溶媒を用いるのが好ましい。そのような観点から、有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン等を挙げることができる。例えばテトラヒドロフランやアセトニトリルなどは錯体のニオブに配位するので好ましくない。アルキン化合物に対するニオブ二核錯体の量はアルキン化合物の種類や反応温度および反応時間等を考慮して適宜決定できる。
【0017】
化学反応の形式は、バッチ式または連続法のいずれであってもよく、工業的な生産には連続法が適すると考えられる。バッチ式の場合、反応終了後、触媒を反応溶液から固液分離することが回収できる。回収された触媒は、そのままあるいは、例えば、ジクロロメタン/ノルマルへキサンによる再結晶等の再生処理を施した後に、再度、上記反応に使用することができる。また、連続法は、カラム等に固定化された、または、流動可能に収納された上記触媒にアルキン化合物を含む溶媒を、所定時間滞留するように流通させて、生成物であるベンゼン誘導体を含む溶液を回収できる。カラム等に収納され使用された触媒は、一定時間使用後、上記と同様に再生処理を施すことができる。
【0018】
反応後、生成物は、触媒および原料、さらには、有機溶媒から分離される。生成物の分離は、例えば、以下の方法により実施できる。
【0019】
(1)室温下において、生成物が液体の場合
原料が液体の場合は、溶液を蒸留法により、有機溶媒・ベンゼン誘導体・アルキン原料と分離することができる。また、原料が固体の場合は、溶液を蒸発乾固し、その際に液体は蒸留法により溶媒・アルキン原料と分離し、固体はカラムクロマトグラフィーにより触媒・原料と分離して得られる。
【0020】
(2)室温下において、生成物が固体の場合
原料が固体の場合は、溶液を蒸発乾固し、その際に液体は溶媒として得られ、固体はカラムクロマトグラフィーにより生成物・原料・触媒と分離することができる。
【0021】
また、両者においてもさらに、再結晶法(例えば、ジクロロメタン/ノルマルへキサンなどによる)を行って生成物の精製を行うこともできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
例1
THT-二核Nb錯体の合成
【化7】
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【0023】
100 mlのシュレンク(Ar 雰囲気下)に塩化ニオブ(V)(2.3 g, 8.5 mmol)と粉末マグネ
シウム(0.7 g, 29 mmol)を入れ、ジクロロメタン(50 ml, 0.622mol)に溶解した後、テトラヒドロチオフェン(1.8 ml, 28 mmol)を10分かけて加え、さらにジクロロメタン(25 ml)とジエチルエーテル(11.5 ml)をそれぞれ4分ずつかけて加え、一晩撹拌した(黄褐色→褐色→暗紫色溶液)。その後、上澄み液を、F.T.P.法(Filter through the paper法)を用いて取り出し、残りをdry upした。さらにジクロロメタン(30 ml)を加えて、一晩撹拌した。その後、上澄み液を、F.T.P.法を用いて取り出し、ろ紙に残った沈殿物をジクロロメタン(20 ml)で洗浄し、dry upした。その後、n-へキサン(10 ml×3回)で洗浄し、dry upした後、真空乾燥した。ジクロロメタン-n-へキサンを用いて再結晶を行い、が得られた。(収量2.40 g、収率86 %)
【0024】
紫色結晶の各種スペクトルデータ
1H-NMR (300 K, CDCl3):δ4.03 (4H, Hα, bridge-C4H8S), 3.41 (8H, Hα, terminal-C4H8S), 2.31 (4H, Hβ, bridge- C4H8S), 2.15 (8H, Hβ, terminal-C4H8S).
13C[1H]NMR (300 K, CDCl3):δ38.0 (2C, Cα, bridge-C4H8S), 31.8 (4C, Cα, terminal- C4H8S), 31.0 (4C, Cβ, terminal- C4H8S), 30.5 (2C, Cβ, bridge- C4H8S).
93Nb NMR (300 K, C6D6):δ437
UV-vis (CH2Cl2):λmax, 536 nm (ε= 92000 M-1cm-1)
Anal. Calcd for C12H24Cl6S3Nb2: C, 21.74; H, 3.65. Found: C, 21.61; H, 3.53.
FAB-MS / NBA 664 (M+ 100%)
【0025】
下記表1は、本発明のTHT-二核Nb錯体の結晶構造データを示し、さらにこのデータに基づいて作成された構造式を示す。
【0026】
【表1】
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【0027】
【化8】
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【0028】
例2
下記表に示すアルキンを原料として用いて、下式の反応(式中、1は例1で得た触媒を示す)を行い下記表に示すベンゼン誘導体2~9を得た。反応温度は室温(約25℃)とし、溶媒の使用量は、常に20 mlとした。反応終了後、室温下においてアルキン原料が液体の場合、得られたベンゼン誘導体が液体の場合は、溶液を蒸留法により、溶媒・ベンゼン誘導体・アルキン原料と分離した。また、得られたベンゼン誘導体が固体の場合は、溶液を蒸発乾固し、その際に固体はベンゼン誘導体として得られ、液体は蒸留法により溶媒・アルキン原料と分離した。一方、室温下において、アルキン原料が固体の場合は、溶液を蒸発乾固し、その際に得られたベンゼン誘導体が液体の場合は留出した液体として得られ、得られたベンゼン誘導体が固体の場合は、カラムクロマトグラフィーによりベンゼン誘導体・アルキン原料と分離した。
【0029】
得られたベンゼン誘導体は、1H NMRスペクトル、FAB-MSスペクトル、融点測定により確認した。置換基を変えた8種類のアルキンについての反応生成物の収率を表2に示す。電子吸引性置換基を持つアルキンでは,立体的に嵩高い置換基または電子供与性置換基を持つアルキンより短時間で環化三量体生成が完結することがわかった。
【0030】
【化9】
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【0031】
【表2】
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【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ベンゼン誘導体の生産分野に有用である。