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明細書 :ネーザルCPAP素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4710015号 (P4710015)
公開番号 特開2007-229206 (P2007-229206A)
登録日 平成23年4月1日(2011.4.1)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 ネーザルCPAP素子
国際特許分類 A61M  16/06        (2006.01)
A61M  16/00        (2006.01)
FI A61M 16/06 C
A61M 16/00 305A
A61M 16/00 332A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2006-054494 (P2006-054494)
出願日 平成18年3月1日(2006.3.1)
審査請求日 平成21年2月1日(2009.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】川 橋 正 昭
【氏名】細 井 健 司
個別代理人の代理人 【識別番号】100076967、【弁理士】、【氏名又は名称】杉信 興
審査官 【審査官】鈴木 洋昭
参考文献・文献 特表2005-501669(JP,A)
特開2004-321549(JP,A)
米国特許出願公開第2003/0047185(US,A1)
特表平5-505119(JP,A)
特開昭61-58667(JP,A)
実開昭56-116052(JP,U)
調査した分野 A61M 16/06
A61M 16/00
特許請求の範囲 【請求項1】
空気を噴出する噴流ノズル;該噴流ノズルとの間に噴流路をおいて、先端が該噴流ノズルの空気噴流に対向する位置にあって前記空気噴流の流れる方向に延び、前記空気噴流を第1および第2噴流に分割する噴流分岐板;第1噴流が流入する第1分岐路およびそれに連続するキャビティ;第2噴流が流入する第2分岐路およびそれに連続する排気ポート;および、前記キャビティに連続し、鼻腔プロングが結合する鼻腔プロングポート;を備えるネーザルCPAP素子において、
前記噴流分岐板の前記先端の後部に、前記キャビティと第2分岐路との間の空気の通流を許すバイパスを設けたことを特徴とする、ネーザルCPAP素子。
【請求項2】
空気を噴出する噴流ノズル;
該噴流ノズルとの間に噴流路をおいて、先端が該噴流ノズルの空気噴流に対向する位置にあって、前記空気噴流を第1および第2噴流に分割するウエッジ;
前記空気噴流の流れる方向に関して前記ウエッジの下流にあって前記空気噴流の流れる方向に延びる分離部;
第1噴流が流入する第1分岐路およびそれに連続するキャビティ;
第2噴流が流入する第2分岐路およびそれに連続する排気ポート;
前記キャビティに連続し、鼻腔プロングが結合する鼻腔プロングポート;および、
前記ウエッジと分離部との間のバイパス;を備え、
前記キャビティと第2分岐路は前記分離部で区分され、しかも、前記バイパスが、前記キャビティと第2分岐路との間の空気の通流を許す;
ネーザルCPAP素子。
【請求項3】
前記空気噴流に関して前記噴流ノズルの、上流側に該噴流ノズルに連通する給気ポートが、下流側に前記排気ポートが設けられ;前記噴流ノズルのノズル軸に直交する方向に、前記鼻腔プロングポートの中心軸が延びる;請求項1又は2に記載のネーザルCPAP素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ネーザルCPAPに関し、特に、未熟児への使用に適したネーザルCPAP素子に関する。近年、ネーザル(Nasal)CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)が、未熟児の呼吸補助又は呼吸障害の治療に用いられつつある。CPAPは、呼気相終末においても気道内圧を陽圧に保ち、呼気相での肺胞虚脱を防止することにより機能的残気量を増加させ、肺内シャントを減少し、低酸素血症を改善する。鼻孔に陽圧を加えるものをネーザルCPAPと呼ぶ。
【背景技術】
【0002】

【特許文献1】特開2004-321549号公報。
【0003】
ネーザルCPAPの利点は、(1)気管内挿管する必要がなく簡易にCPAPがかけられる、(2)挿管チューブの気道抵抗がなく呼吸仕事量が軽減できる、(3)気管内挿管に伴う気道感染症を回避することができることなどが挙げられる。
【0004】
しかしながら他方においては、(1)鼻孔取り付け部の鼻孔への強い圧迫による鼻孔狭窄、鼻中隔壊死を発症する可能性がある、(2)固定方法が難しく、リークにより十分なCPAPを維持することが困難である、(3)食道へも陽圧がかかるため、腸管が拡張して栄養が入れにくくなることがあるといった、改善すべき点もある。
【0005】
これに対処するために、微細な自発呼吸にも敏感に反応し、安定した気道内圧を提供し、呼気時の回路内抵抗を解消するため、流体力学的原理を応用したものが登場してきている。例えば、インファントフローシステムと呼ばれるものがある。インファントフローシステムにおいては、鼻孔部への衝突噴流の不安定性を利用することから、素子の基本形状が鼻孔に対抗する形状となっており、空気供給管および呼気排出管等を鼻から額に掛けて顔面部を縦に横切って装着しなければならない。したがって、これを固定するための方法が複雑になってしまい、特に未熟児に使用した場合には多大な装着負担を与え、長時間のネーザルCPAP実施時に患者の鼻腔狭窄や鼻中隔壊死などを招くおそれがあるという、改善すべき点が依然としてあった。
【0006】
上記特許文献1は、ネーザルCPAP実施時の新生児(例えば未熟児)に対する素子の装着負担軽減を可能にする小型で横型のネーザルCPAP素子を提供する。この種の従来の1例を図5に示す。図5に示すネーザルCPAP素子1は、空気を噴出する噴流ノズル3,該噴流ノズル3との間に噴流路4をおいて、先端が該噴流ノズル3の空気噴流に対向する位置にあって前記空気噴流の流れる方向に延び、前記空気噴流を第1および第2噴流に分割する噴流分岐板5,第1噴流が流入する第1分岐路7およびそれに連続するキャビティ9,第2噴流が流入する第2分岐路8およびそれに連続する排気ポート13、および、前記キャビティ9に連続し、鼻腔プロング(図示せず)に連通する鼻腔プロングポート10,11、を備える。
【0007】
給気管接続ポート15には実質的に定圧力で空気が供給される。この空気は、給気管接続ポート15から噴流ポート2を経てノズル3に入り、ノズル3から流出する空気噴流は、噴流路4を進むと噴流分岐板5の先端のナイフエッジで、第1噴流と第2噴流に2分割され、第1噴流はキャビティポートである第1分岐路7を通ってキャビティ9に入って壁面に沿うように時計方向に旋回する。これによりキャビティ9には陽圧(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)が加わっている。第2噴流は、余剰エア流路である第2分岐路8を通って排気ポート13を進んで、排気管接続ポート18から外部に流出する。鼻腔プロング(nose prongs:鼻孔に結合する2股チューブ部材;例えば図1上の12)が装着される接続ポート16,17と同軸で連続する鼻腔プロングポート10,11が、それらの軸心をノズル3の軸心(x方向)と直交するy方向に平行にして、キャビティ9に開いている。すなわち連通している。
【0008】
鼻腔プロングポート10,11に、新生児(例えば未熟児)の自発呼吸により、吸気圧が加わると、キャビティ9の空気がポート10,11に引かれるので、キャビティ9の圧力が下がり、これによりノズル3からキャビティ9への第1噴流の空気流量が増加する。これが新生児の吸気を助勢(補助;増幅)する。ポート10,11に呼気圧が加わるとキャビティ9の圧力が上がり、これによりノズル3から排気ポート13への第2噴流の空気流量が増加し、ノズル3からキャビティ9への第1噴流の空気流量が低下する。これが新生児の呼気を容易にする。このように、自発呼吸に対して呼吸補助動作、いわば増幅動作、を行う。
【0009】
また、吸気管接続ポート15に接続される空気供給管と、排気管接続ポート18に接続される排気管とが同じ方向xに配置され、接続ポート16,17に結合される鼻腔プロングがこれらに対して垂直方向yに配置されるため、これらの管を、例えば図4に示すように、患者の顔面を横に横切らせて装着することが可能になり、装着負担が軽減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、キャビティ9の陽圧(CPAP)を安定にし、自発呼吸に応答する呼吸補助動作、すなわち流体制御素子による自発呼吸圧の増幅、を安定にし信頼性を高くするためには、ノズルの噴流をある程度以上のパワーにするのが好ましく、キャビティ9の淀み圧(陽圧)を500Pa(パスカル)程度とするのが良い。しかしそうすると、呼吸補助による肺圧変動が300~400Paにもなることがあり、未熟児に対しては過大になることがあると考えられる。
【0011】
本発明は、自発呼吸に応答する呼吸補助動作は安定し信頼性の高いものに維持し、しかも呼吸補助による肺圧変動は適切な範囲に下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)空気を噴出する噴流ノズル(3);該噴流ノズル(3)との間に噴流路(4)をおいて、先端が該噴流ノズル(3)の空気噴流に対向する位置にあって前記空気噴流の流れる方向に延び、前記空気噴流を第1および第2噴流に分割する噴流分岐板(5a,5b);第1噴流が流入する第1分岐路(7)およびそれに連続するキャビティ(9);第2噴流が流入する第2分岐路(8)およびそれに連続する排気ポート(13);および、前記キャビティ(9)に連続し、鼻腔プロング(12)が結合する鼻腔プロングポート(10,11);を備えるネーザルCPAP素子(1)において、
前記噴流分岐板(5a,5b)の前記先端の後部に、前記キャビティ(9)と第2分岐路(8)との間の空気の通流を許すバイパス(6)を設けたことを特徴とする、ネーザルCPAP素子(図1)。
【0013】
(2)空気を噴出する噴流ノズル(3);
該噴流ノズル(3)との間に噴流路(4)をおいて、先端が該噴流ノズル(3)の空気噴流に対向する位置にあって、前記空気噴流を第1および第2噴流に分割するウエッジ(5a);
前記空気噴流の流れる方向に関して前記ウエッジ(5a)の下流にあって前記空気噴流の流れる方向に延びる分離部(5b);
第1噴流が流入する第1分岐路(7)およびそれに連続するキャビティ(9);
第2噴流が流入する第2分岐路(8)およびそれに連続する排気ポート(13);
前記キャビティ(9)に連続し、鼻腔プロング(12)が結合する鼻腔プロングポート(10,11);および、
前記ウエッジ(5a)と分離部(5b)との間のバイパス(6);を備え、
前記キャビティ(9)と第2分岐路(8)は前記分離部(5b)で区分され、しかも、前記バイパス(6)が、前記キャビティ(9)と第2分岐路(8)との間の空気の通流を許す;
ネーザルCPAP素子(図1)。
【0014】
なお、理解を容易にするために括弧内には、図面に示し後述する実施例の対応要素又は対応事項の符号を、例示として参考までに付記した。以下も同様である。
【発明の効果】
【0015】
上記(1)および(2)のネーザルCPAP素子(図1)によれば、鼻腔プロングポート(10,11)に、新生児(例えば未熟児)の自発呼吸により、吸気圧が加わると、キャビティ(9)の空気が鼻腔プロングポート(10,11)に引かれるので、キャビティ(9)の圧力が下がり、これにより噴流ノズル(3)からキャビティ(9)への空気流量が増加する。これが新生児の吸気を助勢(補助)する。鼻腔プロングポート(10,11)に呼気圧が加わるとキャビティ(9)の圧力が上がり、これにより噴流ノズル(3)から排気ポート(13)への空気流量が増加し、噴流ノズル(3)からキャビティ(9)への空気流量が低下する。これが新生児の呼気を容易にする。このように、自発呼吸に対して呼吸補助動作を行う。
【0016】
噴流分岐板(5a,5b)の前記先端の後部に、前記キャビティ(9)と第2分岐路(8)との間の空気の通流を許すバイパス(6)を設けたので、バイパス(6)を通してキャビティ(9)から第2分岐路(8)に常時空気が流れる。このバイパス(6)が呼吸に伴なうキャビティ(9)の圧力変動を緩和する。すなわち、吸気期間には、吸気によりキャビティ(9)の圧力が下がると、バイパス(6)を通してキャビティ(9)から第2分岐路(8)に流れる空気流量が減少してキャビティ(9)の圧力低下量が小さく、呼気期間には、呼気によりキャビティ(9)の圧力が上がると、バイパス(6)を通してキャビティ(9)から第2分岐路(8)に流れる空気流量が増加してキャビティ(9)の圧力上昇量が小さい。すなわち、呼吸補助による肺圧変動が小さくなる。例えば、キャビティ9の淀み圧(陽圧)を500Pa(パスカル)程度とするとき、呼吸補助による肺圧変動を100~150Paにすることができ、未熟児に最適な呼吸補助をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(3)前記空気噴流に関して前記噴流ノズル(3)の、上流側に該噴流ノズル(3)に連通する給気ポート(2,15)が、下流側に前記排気ポート(13)が設けられ;前記噴流ノズル(3)のノズル軸(x)に直交する方向(y)に、前記鼻腔プロングポート(10,11)の中心軸が延びる;請求項1又は2に記載のネーザルCPAP素子(図1)。
【0018】
これによれば、給気管接続ポート(15)に接続される空気供給管(21)と、排気管接続ポート(18)に接続される排気管(24)とが同じ方向xに配置され、前記鼻腔プロングポート(10,11)結合される鼻腔プロング(12)が、前記空気供給管(21)と排気管(24)に対して垂直方向yに配置されるため、これらの管を、例えば図4に示すように、患者の顔面を横に横切らせて装着することが可能になり、装着負担が軽減する。
【0019】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の一実施例のネーザルCPAP素子1の縦断面を示す。なおこの図面は、実物よりも拡大して素子断面を示す。ネーザルCPAP素子1は合成樹脂製である。可撓性樹脂製の鼻腔プロング12には、新生児の鼻孔に挿入される、y方向で外方に突出する2本の可撓管(flexible tube)がある。新生児に素子1を装着した外観を図4に示す。
【0021】
従来例(図5)と同様に、ネーザルCPAP素子1には、空気を噴出する噴流ノズル3,該噴流ノズル3との間に噴流路4をおいて、先端が該噴流ノズル3の空気噴流に対向する位置にあって前記空気噴流の流れる方向に延び、前記空気噴流を第1および第2噴流に分割する噴流分岐板5a,5b,第1噴流が流入する第1分岐路7およびそれに連続するキャビティ9,第2噴流が流入する第2分岐路8およびそれに連続する排気ポート13、および、前記キャビティ9に連続し、鼻腔プロング12に連通する鼻腔プロングポート10,11、がある。そして、それらに加えて、噴流分岐板5a,5bの先端のナイフエッジ部分5aを分断するバイパス6が噴流分岐板に開いている。
【0022】
換言すると、噴流ノズル3との間に噴流路4をおいて、先端がノズル3の空気噴流に対向する位置にあって該空気噴流を第1および第2噴流に分割するウエッジ5a,該空気噴流の流れる方向に関してウエッジ5aの下流にあって空気噴流の流れる方向に延びる分離部5b、および、ウエッジ5aと分離部5bとの間のバイパス6、を備える。キャビティ9と第2分岐路8は分離部5bで区分され、しかも、バイパス6が、キャビティ9と第2分岐路8との間の空気の通流を許す。
【0023】
ノズル3には噴流ポート2が連続しており、該噴流ポート2に給気管接続ポート15(図2)が連続している。この給気管接続ポート15に、給気口金22が装着され、該給気口金22に給気チューブ21が繋がっている。給気チューブ21には、図示しない空気給送装置から、定圧空気が供給される。排気ポート13には、スロットル14が挿入され、排気ポート13に連続する排気管接続ポート18(図2)に、排気口金23が装着され、該排気口金23に排気チューブ24が繋がっている。スロットル14は、キャビティ9の陽圧を所望の定圧(例えば平均圧500Pa)に安定化するために、給気チューブ21を通して噴流ポート2に定圧空気を送り込む、図示しない空気供給装置の送出圧仕様に合わせて、排気ポート13の流路抵抗を調整(設定)するためのものである。所要の送出圧仕様の空気給送装置のみを使用する場合、あるいは空気給送装置において信頼性が高い調整(設定)が可能な場合には、スロットル14は省略し、排気ポート13を所要の流路抵抗に設計して置けばよい。
【0024】
鼻腔プロングポート10,11には鼻腔プロング接続ポート16,17(図2)が連続しており、これらの接続ポート16,17に、鼻腔プロング12が装着されている。鼻腔プロング12の、新生児の鼻孔に挿入される、y方向で外方に突出する2本の可撓管は、キャビティ9に連通している。
【0025】
図1に示すネーザルCPAP素子1を使用するとき、鼻腔プロング12の、y方向で外方に突出する2本の可撓管を、新生児(未熟児)の鼻孔に挿入すると、図4に示すように、給気チューブ21および排気チューブ24が、新生児の顔面を横に横切る。この状態で、図示しないバンド,紐などの付いた固定保持具で素子1が頭部に固定される。
【0026】
このような使用状態で、給気管接続ポート15に実質的に定圧力で空気が供給される。この空気は、給気管接続ポート15から噴流ポート2を経てノズル3に入り、ノズル3から流出する空気噴流は、噴流路4を進むと噴流分岐板の先端に相当するウエッジ(楔)5aのナイフエッジで、第1噴流と第2噴流に2分割され、第1噴流はキャビティポートである第1分岐路7を通ってキャビティ9に入って壁面に沿うように時計方向に旋回する。これによりキャビティ9には陽圧が加わっている。第2噴流は、余剰エア流路である第2分岐路8を通って排気ポート13を進んで、排気管接続ポート18から外部に流出する。
【0027】
図2には、鼻腔プロングポート10,11に、新生児の自発呼吸により、吸気圧が加わっている吸気相での、ネーザルCPAP素子1内の空気流の概要を実線矢印で示し、図3には、鼻腔プロングポート10,11に、新生児の自発呼吸により、呼気圧が加わっている呼気相での、ネーザルCPAP素子1内の空気流の概要を実線矢印で示す。ノズル3からの噴流により素子1に供給される空気量は,毎分約7リットルであるが、この大部分は、CPAPすなわち気道内の平均圧(MAP:Mean Airway Pressure)を維持するためのもので、キャビティ9内を3次元的に循環して、ウエッジ5aと分離部5bとの間の隙間であるバイパス6の、z方向で下側と上側の壁面近くから、第2分岐路8に流出する。
【0028】
新生児の呼吸による吸気,呼気の流量は、一回の呼吸で約20ミリリットル程度で、呼吸回数は毎分30回程度であるので、1分間あたりの吸気量,呼気量は、約0.6リットルとなり、供給される空気量の10%程度である。したがって、主たる空気の流れは、
ノズル3-キャビティ9-バイパス6-スロットル14-排気管接続ポート18
となり、一部が、鼻腔プロング12を通過して、吸気(図2)および呼気(図3)となる。また、ウエッジ5aで分離される流れは、キャビティ9方向の流れすなわち第1噴流が大部分で、第2分岐路8方向の第2噴流量は少ない。しかし、第1噴流量と第2噴流量との比は、吸気相と呼気相とで少し異なり、吸気相では第1噴流量が少し増加するが、呼気相では第1噴流量が少し低下する。
【0029】
吸気,呼気による一番大きな流れの変化は、キャビティ9内に入った第1噴流にある。ウェッジ5aにより分岐した第1噴流は、ウエッジ5aに沿い、そして分離部5bに沿ってキャビティ9内を時計回りに旋回し、そしてバイパス6を通って第2分岐路8に出る。キャビティ9内のこの旋回流が、吸気時には、図2に示すように、鼻腔プロングポート10,11側に偏り、呼気時には、図3に示すように鼻腔プロングポート10,11から遠ざかる。この流れの変化は、鼻腔プロングポート10,11から吸気時と呼気時にキャビティ9に加わるわずかな圧力変動が、ノズル3からの噴流に干渉してウエッジ5a先端での噴流分割比に変化をもたらし、その結果キャビティ内流れの状態が変化して、吸気,呼気を補助することになる。
【0030】
上述の、バイパス6が存在することによる、キャビティ内圧力変動の緩衝により、キャビティ陽圧を平均値で500Pa程度に維持する場合で、肺圧の変動を未熟児の快適な呼吸補助に適した、100~150Paの範囲にすることができる。
【0031】
また、従来技術(図5)と同様に、給気チューブ21と排気チューブ24が同じ方向xに配置され、これらに対して、鼻腔プロング12の、鼻孔に挿入される2本の可撓性チューブが垂直方向yに配置されるため、これらの給,排気チューブを、例えば図4に示すように、新生児の顔面を横に横切らせて装着することが可能になり、装着負担が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例のネーザルCPAP素子1の縦断面図である。
【図2】図1に示すネーザルCPAP素子1の、鼻腔ブロング接続ポート16,17に吸気圧が加わっているときの、素子内空気流の概要を矢印で示す拡大図である。
【図3】図1に示すネーザルCPAP素子1の、鼻腔ブロング接続ポート16,17に呼気圧が加わっているときの、素子内空気流の概要を矢印で示す拡大図である。
【図4】図1に示すネーザルCPAP素子1を装着した新生児の正面図である。
【図5】従来の一例のネーザルCPAP素子の縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1:ネーザルCPAP素子
2:噴流ポート
3:噴流ノズル
4:噴流路
5:噴流分岐板
6:バイパス
7:第1分岐路
8:第2分岐路
9:キャビティ
10,11:鼻腔プロングポート
12:鼻腔プロング
13:排気ポート
14:スロットル
15:給気管接続ポート
16,17:鼻腔プロング接続ポート
18:排気管接続ポート
21:給気チューブ
22:給気口金
23:排気口金
24:排気チューブ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4