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明細書 :アスタキサンチンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4961550号 (P4961550)
公開番号 特開2007-308432 (P2007-308432A)
登録日 平成24年4月6日(2012.4.6)
発行日 平成24年6月27日(2012.6.27)
公開日 平成19年11月29日(2007.11.29)
発明の名称または考案の名称 アスタキサンチンの製造方法
国際特許分類 C07C 403/24        (2006.01)
C09B  61/00        (2006.01)
C09B  67/54        (2006.01)
A23K   1/18        (2006.01)
A23K   1/16        (2006.01)
A61K  36/02        (2006.01)
A61K  31/122       (2006.01)
A61P   3/00        (2006.01)
FI C07C 403/24
C09B 61/00 A
C09B 67/54 Z
A23K 1/18 102
A23K 1/18 D
A23K 1/16 304C
A23K 1/16 301C
A61K 35/80 Z
A61K 31/122
A61P 3/00 171
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2006-140511 (P2006-140511)
出願日 平成18年5月19日(2006.5.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年3月27日 社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2006年度大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成20年12月4日(2008.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】藤井 克彦
審査官 【審査官】岩井 好子
参考文献・文献 特開2007-306870(JP,A)
特開2006-070114(JP,A)
特開平05-068585(JP,A)
特開平03-083577(JP,A)
特表2003-519722(JP,A)
調査した分野 C07C 403/24
A23K 1/16
A23K 1/18
A61K 31/122
A61K 36/02
A61P 3/00
C09B 61/00
C09B 67/54
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
アスタキサンチンを含有するモノラフィディウム属(Monoraphidium属)藻類からアスタキサンチンを抽出することを特徴とするアスタキサンチンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のモノラフィディウム属藻類を含有する魚介類用又は家禽類用の飼料。
【請求項3】
請求項1に記載のモノラフィディウム属藻類の破砕物を含有する魚介類用又は家禽類用の飼料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンを含有するモノラフィディウム属(Monoraphidium属)藻類の微細生物からアスタキサンチンを抽出することを特徴とするアスタキサンチンの製造方法及び前記藻類又はその破砕物を含有する魚介類、家禽類用飼料に関する。さらに詳細には、本発明は、アスタキサンチン含有量が高い藻類モノラフィディウム属(Monoraphidium属)の微細生物を簡単な方法で低価格で培養し、ついでその微細生物からアスタキサンチンを抽出することを特徴とするアスタキサンチンの製造方法及び前記藻類又はその破砕物を含有する魚介類用又は家禽類用の飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンは赤色を呈するカロチノイド色素の一種で、自然界に広く分布している。例えば、マダイやサケ・マス等の魚類、あるいは甲殻類等は、その表皮、筋肉又は外殻等にアスタキサンチンを蓄積し、その為に表皮あるいは肉が美しい赤色もしくは桃色を呈する。
アスタキサンチンは天然物由来で、食材用色素、食品添加物として有用であると共に、これら魚介類を養殖する場合には、通常飼料にアスタキサンチンを添加し、着色することが行われている(特許文献1、特許文献2)。また鶏卵の色調改善等を目的とした家禽用飼料等にも利用されている(特許文献3)。更に最近はアスタキサンチンの持つ強力な抗酸化作用が注目され、香粧品や医薬品、健康食品としての用途も検討されている(特許文献4)。
【0003】
今日市場で流通しているアスタキサンチンのほとんどは石油成分より化学合成されたものである。しかしながら、石油が有限な資源であること、消費者の天然由来成分への志向、1kgあたり数十万円という高価であることなどから、化学合成によるアスタキサンチン製造は最良の手段ではない。さらに、欧州では今後食品のみならず農林水産における化学合成アスタキサンチンの使用も禁じられた。
天然物由来のアスタキサンチン製造法として、カニ、エビ、オキアミなどから色素を抽出・精製する方法や、アスタキサンチンを蓄積する微生物としてごくわずかの微生物、例えばファフィア酵母の培養法等が研究されている(特許文献5)。これら生物はアスタキサンチン含有量が低く、アスタキサンチンの抽出や精製等にも技術的、経済的問題がある。
【0004】
その点、Haematococcus pluvialis、Chlorella zofigiensis、Chlorococcum sp.,Phaffia rhodozyma、Nannochloropsisなどのアスタキサンチンを生産する藻類を培養し、アスタキサンチンを抽出する技術が報告されている(特許文献6)。これら藻類からアスタキサンチンを製造する技術は、従来から知られている生物からアスタキサンチンを製造する方法と比較すると確かにスタキサンチンを製造する方法は改良されたものの、依然として経済的な問題は満足されるほどではない。例えば、微細生物を培養する培地に高価な有機物を必要とするし、光照射量を多く必要とする。そのため、微細生物の培養コストが高いだけでなく、他の微細生物の混入や増殖阻止、培地管理なども複雑となるなど不都合が残されている。
従って、安価な原料から、天然の生合成経路を利用した、製造にかかるコストが低いアスタキサンチン製造技術の開発ソースとして微細生物によるアスタキサンチン生産に期待が寄せられている。
一方、モノラフィディウム属(Monoraphidium属)は淡水産の数種が知られているが、アスタキサンンチンを微細生物内に蓄積することは知られていなかった。
【0005】

【特許文献1】特開昭54-70995号公報
【特許文献2】特開平7-67546号公報
【特許文献3】特許第2561198号公報
【特許文献4】特開平2-49091号公報
【特許文献5】特開平6-200179号公報
【特許文献6】特開平7-59558号公報
【非特許文献1】Biotechnology and Bioengineering 91,808-815.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような実情において、本発明の課題は、天然物由来であり消費者に不安を与えることのないアスタキサンチンの製造方法を提供することにある。また、従来法よりも安価でかつ手間のかからない方法でアスタキサンチン生産微細生物を培養する技術を提供することも本発明の課題でもある。更に、その方法で培養した藻類の破砕物を安価に低給することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するためいろいろと検討した結果、意外にも藻類モノラフィディウム属(Monoraphidium属)の微細生物はアスタキサンチン生産能が高く、生物内に多量のアスタキサンチンを蓄積することを見出した。しかも、この藻類の培養条件をいろいろと検討すると、従来から知られているアスタキサンチン生産微細生物の培養条件よりもはるかに簡単であり、高価な有機物を要求しないという知見を得た。これらの知見に基づきさらに検討を加え、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)アスタキサンチンを含有するモノラフィディウム属(Monoraphidium属)藻類からアスタキサンチンを抽出することを特徴とするアスタキサンチンの製造方法。
(2)1)に記載のモノラフィディウム属藻類を含有する魚介類用又は家禽類用の飼料。
(3)(1)に記載のモノラフィディウム属藻類の破砕物を含有する魚介類用又は家禽類用の飼料。
この(2)。(3)の発明は、スタキサンチンを含有する前記藻類又はその破砕物を含有する魚介類用飼料であり、スタキサンチンを含有する前記藻類又はその破砕物を含有する家禽類用飼料でもある。なお、スタキサンチンを含有する前記藻類又はその破砕物を家畜類用飼料に配合してもよい。

【発明の効果】
【0009】
本発明により、藻類モノラフィディウム属(Monoraphidium属)を簡単な方法で培養することができ、その藻類からアスタキサンチンを抽出することにより、アスタキサンチンを安価に提供することができる。また、アスタキサンチンを含有する安価な魚介類、家禽類用飼料を提供することができる。とくに、本発明では有機物を含まない無機培地を用いて培養することが可能であるので、培地のコストは有機物を必要とする微細生物、例えばC.zofigiensis培地のコストと比較すると約1000分の1ですみ、大幅に安価となる。また、ごく少量の有機物を培地に加えると有利であるが、その有機物も例えビタミン12やビタミンH(ビオチン)などの高価な有機物は不要であるので、それら高価な有機物を必要とする藻類、例えばH.pluviarisの培地(非特許文献1)と比較しても約1/8~1/10程度ですむので有利である。また、少ない照射光量にてMonoraphidium属は培養することができる。たとえば、前記H.pluviarisの培養に際して用いる照射光量(非特許文献1)の約1/2.5~1/4.5と少ないので、その点でも有利である。さらに、例えば、H.pluvialを培養するには、培地中のC/N日を常に一定範囲内に収まるように常時ウヲッチしなければならないのであるが(非特許文献1)、Monoraphidium属を培養するときには、そのようなウオッチをする必要もない。そのうえ、カビなどの他の微細生物の混入を阻止するための装置も不要である。以上の培養条件等での有利さを考慮すると、本発明はきわめて実用的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で原料として用いられるモノラフィディウム属(Monoraphidium属)の藻類はすでに知られている。この藻類は簡単な方法で培養することができ、しかもアスタキサンチン蓄積量が高いのであり、本発明ではモノラフィディウム属(Monoraphidium属)に属するアスタキサンチンを含有する藻類を用いることができるが、その中でも特にM.grifithii、M.terrestre、M.braunii、新規微細藻類GK12を用いることが、アスタキサンチン蓄積量などの点から好ましい。
上記新種のGK12は特許生物センターに寄託されたが(FERM P-20853)、この微細生物は山口市内の下水処理場の活性汚泥から採取された。
【0011】
本発明のモノラフィディウム属(Monoraphidium属)の藻類は、独立栄養条件下にて増殖可能であるから、既知の藻類を培養する条件を用いて培養することができるのであって、その培養条件は、光合成を行える培養条件であれば特に制限されない。用いる培地は無機物から構成される培地でよい。光合成に必要な炭酸ガスは大気中に存在する炭酸ガスを利用することができる。培養条件の具体例としては、無機物を含有する液体培地を用い、20~30℃の温度で1000~3000lux照射下、100~200rpmで振盪する条件を挙げることができる。なお、有機物を含む培地を用いることもできる。例えばビタミン12やビタミンH(ビオチン)などの高価な有機物を要求しない。しかし、ペプトンなどの有機物を場位置に添加すれば、増殖速度は早まる。すなわち、独立栄養条件下にて2週間培養すると、安定期となるが、細胞の密度は、混合栄養条件下で培養したときと比較すると、約4倍も差があることがわかった(培養9日目の結果から)。
【0012】
モノラフィディウム属(Monoraphidium属)の藻類からアスタキサンチンを抽出する方法は、従来から知られている方法を採用すればよいのであり、特に制限されない。
より具体的に説明すると、培養液から藻類を分離し、藻類の細胞壁を破壊後抽出溶剤でアスタキサンチンを藻類から抽出し、抽出溶媒を分離する方法が代表的なアスタキサンチンを抽出する方法である。
【0013】
培養液から藻類を分離する方法は、常法によって行うことができ、具体的には、遠心分離法や濾過分離法等を挙げられる。それら分離する条件はとくに制限されない。
分離した藻類に直接抽出溶剤と接触させアスタキサンチンを抽出処理してもよいが、まず藻類の細胞壁を破砕しついで、抽出溶剤と接触させアスタキサンチンを抽出処理する方法が好ましい。なお、藻類の細胞壁の破砕処理とアスタキサンチンを抽出処理とを同時・並行することがより好ましい。
【0014】
抽出溶剤は特に制限されないが、具体的には、例えばアセトン、エタノール、イソアミルアルコール、n-ヘキサン等の溶剤単独あるいはそれら溶剤の二種以上からなる混合溶剤が使用できる。溶解度の点から抽出効率の良いアセトンあるいはアセトンを含む混合溶剤が好ましい。その中でも特にアセトン-クロロホルム混合溶剤が好ましい。抽出溶剤量は用いる藻類の種類や量により変動するが、例えば藻類重量に対して2倍から20倍の量(重量)でよい。抽出温度は特に限定されないが室温から沸点までの範囲で加温してもしなくてもよい。抽出時間は、藻類の性状、用いる抽出溶剤の種類と量、抽出温度などにより変動するので一概に規定することができないが、例えば1~3時間の範囲で抽出処理できる。
【0015】
アスタキサンチンを含む抽出溶媒から藻類や藻類の細胞壁など固形物を除去した後、抽出溶剤を除去すると、アスタキサンチンを含むカロチノイド類(色素)を得ることができる。この色素を常法にて精製処理すれば、アスタキサンチンを得ることができる。抽出溶剤の除去法は特に制限されないが、例えば温和な条件下でアスタキサンチンを含む抽出溶媒を加温処理し、抽出溶剤を蒸発する処理法が好適である。前記精製処理法も特に制限されない。
【0016】
なお、上記と異なるアスタキサンチンの抽出方法を説明する。
藻類との分離を行った抽出液は、そのまま濃縮して晶析工程に入ることもできるが、この際水が存在すると濃縮中の不純物の増加を少なくすることができることから、水を加えた状態で濃縮することが好ましい。濃縮条件は特に制限されないが、通常液温40℃以下を保って行うのが望ましい。水を添加する時期についても特に規定はされず、最初から、もしくは濃縮途中、あるいは濃縮の最後に加えてもよい。
【0017】
得られた油状濃縮液に炭化水素系溶剤を加えるとアスタキサンチンが晶析してくるが、炭化水素系溶剤の量は乾燥藻類質量に対して通常0.1~2倍の量でよい。投入温度については通常30~50℃であるがこれに限られない。前記炭化水素系溶剤としては特に限定されないが、ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレンなどの芳香族炭化水秦系溶剤を挙げることができ、その中でも脂肪族炭化水素系溶剤が好ましい。
以下析出した結晶を濾別することによりアスタキサンチンを高濃度に含むカロチノイド類を得ることができる。
【0018】
かくして製造したアスタキサンチンは、食品添加剤、食材用色素、飼料用添加剤などとして有用である。具体的には、香粧品や医薬品、健康食品、家禽用飼料、魚類用飼料等として使用される。アスタキサンチンの使用量は上記用途や使用目的によって大きく変動するので一概に規定することができない。
【0019】
本発明では、アスタキサンチンを精製処理していない赤色系色素を、上記用途に使用してもよい。さらには、アスタキサンチンを生物内に蓄積した微細藻類の破砕物を上記用途に使用してもよい。
【0020】
(実施例)
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
【0021】
(藻類モノラフィディウム属(Monoraphidium属)の培養)
藻類M.grifithiiのコロニーを30mlのMG培地に接種し、蛍光灯を用いて照射しながら(30μmol photon m2sec-1)、150rpm、20℃、2-3週間で培養した。 培養後、培地を遠心分離処理し(1700xg、4℃、30分間)、生理的食塩水(saline)で洗浄し、モノラフィディウム属(Monoraphidium属)に属する藻類を得た。
【0022】
(藻類の破砕物の調製)
前記藻類を、50mgのガラスビーズ(0.5mmの径)と50mgのジルコニアシリケートビーズ(0.1mmの径)を含む500μLの抽出溶媒(アセトン/クロロフォルム=30/70)中に懸濁し、30秒間破砕処理した。
【0023】
(アスタキサンチンの抽出)
得られた藻類の細胞ホモジネートを遠心分離処理し(14,500rpm、4℃、5分間)し、アセトン/クロロホルム相をバイアルガラス瓶に収めた。
それら集めたアセトン/クロロホルムを窒素雰囲気下、温和な条件で蒸発処理し、得られた色素を薄層クロマトグラフにて展開し、分離されたアスタキサンチン部分からアスタキサンチン0.76(mg/g-乾燥細胞)を得た。なお、アスタキサンチンであることを、薄層クロマトグラフにて、標準品と比較して確認した。
【0024】
(実施例2~4)
M.grifithii、の代わりに、M.terrestre、M.braunii、新規株(GKI-12)を用い、実施例1と同様の操作にて、アスタキサンチンを得た。0.63アスタキサンチンの量は、それぞれ0.69、0.63、2.52(mg/g-乾燥細胞)であった。
【0025】
【表1】
JP0004961550B2_000002t.gif

【0026】
HEPES:緩衝液(和光純薬工業株式会社製)
**Fe-EDTA溶液:702mg/l Fe(NH(SO・6HO and 660mg/l NaEDTA 2HO.
***PIV溶液:196mg/l FeCl 6HO, 36mg/l MnCl 4HO, 10.5mg/l ZnCl,4mg/l CoCl 6HO, 2.5mg/l NaMoO 2HO,and 1 g/l NaEDTA 2HO.