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明細書 :新規微細藻類

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4876250号 (P4876250)
公開番号 特開2007-306870 (P2007-306870A)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
公開日 平成19年11月29日(2007.11.29)
発明の名称または考案の名称 新規微細藻類
国際特許分類 C12N   1/12        (2006.01)
C12P  23/00        (2006.01)
C12R   1/89        (2006.01)
FI C12N 1/12 ZNAC
C12P 23/00
C12N 1/12 ZNAC
C12R 1:89
請求項の数または発明の数 1
微生物の受託番号 IPOD FERM P-20853
全頁数 8
出願番号 特願2006-140512 (P2006-140512)
出願日 平成18年5月19日(2006.5.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年3月27日 社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会2006年度大会」において文書をもって発表
審査請求日 平成20年12月4日(2008.12.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】藤井 克彦
審査官 【審査官】幸田 俊希
参考文献・文献 特開2007-308432(JP,A)
FUJII,K. et al.,Isolation of the non-fatidious microalga with astaxanthin-accumulating property and its potential for application to aquaculture.,Aquaculture,2006年11月,Vol.261,pp.285-293
FUJII,K.,Monoraphidium sp. GK12 gene for 18S ribosomal RNA, partial sequence,Database DDBJ/EMBL/GenBank[online], Accession No. AB243988,2005年12月13日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AB243988
調査した分野 C12N 1/12
CA/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
アスタキサンチン産生能を有するモノラフィディウム属(Monoraphidium属)に属し、寄託番号はFERM P-20853である微細藻類。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は新規微細藻類に関する。また、本発明はその藻類にアスタキサンチン色素を蓄積させるアスタキサンチンの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンは天然物由来の赤色を呈するカロチノイド色素の一種であり、食材用色素、食品添加物として有用であると共に、マダイや甲殻類等の魚介類を養殖する場合には、通常飼料にアスタキサンチンを添加し、着色することが行われている(特許文献1、特許文献2)。また鶏卵の色調改善等を目的とした家禽用飼料等にも利用されている(特許文献3)。更に最近はアスタキサンチンの持つ強力な抗酸化作用が注目され、香粧品や医薬品、健康食品としての用途も検討されている(特許文献4)。
【0003】
今日市場で流通しているアスタキサンチンのほとんどは石油成分より化学合成されたものである。しかしながら、石油が有限な資源であること、消費者の天然由来成分への志向、1kgあたり数十万円という高価であることなどから、化学合成によるアスタキサンチン製造は最良の手段ではない。さらに、欧州では今後食品のみならず農林水産における化学合成アスタキサンチンの使用も禁じられた。
天然物由来のアスタキサンチン製造法として、カニ、エビ、オキアミなどから色素を抽出・精製する方法が報告されている(特許文献5)。これら生物はアスタキサンチン含有量が低く、抽出や精製等にも技術的、経済的問題がある。
【0004】
その点、Haematococcus pluvialis、Chlorella zofigiensis、Chlorococcum sp.、Phaffia rhodozymaなどのアスタキサンチンを生産する藻類を培養し、アスタキサンチンを抽出する技術が報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。これら藻類の中にはアスタキサンチン含量が高い藻類があるが、その藻類を含めて、前記藻類の培養条件が簡単であるということができない。また、特にHaematococcusでは、例えば、光照射量を多くする、高価な有機物を加える、培養途中で培養組成を変更する等の培養条件を改善することで、アスタキサンチン生産量を高めることができるが、手間や費用もかかる作業であることから、他の微生物の混入や増殖阻止、培地管理なども複雑となり、コストも高くなる。
従って、安価な原料から、天然の生合成経路を利用した、製造にかかるコストが低いアスタキサンチン製造技術の開発ソースとして新規微生物によるアスタキサンチン生産に期待が寄せられている。
なお、藻類モノラフィディウム属(Monoraphidium属)は淡水産の数種が知られているが、アスタキサンンチンを微生物内に蓄積することは知られていなかった。
【0005】

【特許文献1】特開昭54-70995号公報
【特許文献2】特開平7-67546号公報
【特許文献3】特許第2561198号公報
【特許文献4】特開平2-49091号公報
【特許文献5】特開平6-200179号公報
【非特許文献1】Process Biochemistry 39,1761-1766.
【非特許文献2】Appl.Microbiol.Biotechnol.66:249-252.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来の藻類の培養条件と比較して簡単な培養条件にて増殖することができ、しかもアスタキサンチン生産能が高い微細藻類を提供することにある。また本発明は安価な培地を用いて少ない照射光量にても増殖することができ、しかもアスタキサンチン生産能が高い微細藻類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を満足する微細藻類を見出すべく検討を重ねる中、山口市内のある下水処理場の活性処理物から藻類を採取し、その中のある微細藻類は、前記課題を解決する微細藻類であることを見出し、更に検討を重ね、遂に本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明により提供される微細藻類は、分子生物学的手法、すなわちリボソームDNA(以下、rDNAと記載することがある)の塩基配列を常法により解析した結果、および形態観察等からモノラフィディウム属(Monoraphidium属)に属する新規な微細藻類であることが判明した。そこでこの微細藻類をGK12と命名し、平成18年3月27日に独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センターに寄託した。寄託番号はFERM P-20853である。
また、本発明はその新規藻類を培養し、ついで培養した微細藻類からアスタキサンチンを抽出することを特徴とするアスタキサンチンの生産方法をも含む。
【0009】
本発明の新規藻類は非運動性で紡錘形であり、光合成による独立栄養生物である。また、本発明の新規藻類はアスタキサンチン含有量が極めて高い。
【0010】
本発明の新規微細藻類の培養条件は、既知の藻類を培養する条件を用いて培養することができるのであって、光合成を行える培養条件であれば特に制限されない。用いる培地は無機物から構成される培地でよい。光合成に必要な炭酸ガスは大気中に存在する炭酸ガスを利用することができる。培養条件の具体例としては、無機物を含有する液体培地を用い、20~30℃の温度で1000~3000lux照射下、100~200rpmで振盪する条件を挙げることができる。なお、有機物を含む培地を用いることもできる。
【0011】
本発明の新規微細藻類からアスタキサンチンを抽出する方法は、従来から知られている方法を採用すればよいのであり、特に制限されない。
より具体的に説明すると、培養液から藻類を分離し、藻類の細胞壁を破壊後抽出溶剤でアスタキサンチンを抽出し、分離した抽出溶媒からスタキサンチンを得る方法が代表的なアスタキサンチンを抽出する方法である。
培養液から藻類を分離する方法は、常法によって行うことができ、具体的には、遠心分離法や濾過分離法等を挙げられる。それら分離する条件は特に制限されない。
分離した藻類を直接抽出溶剤と接触させ、アスタキサンチンを抽出処理してもよいが、まず藻類の細胞壁を破砕し、ついで、抽出溶剤と接触させアスタキサンチンを抽出処理する方法が好ましい。なお、藻類の細胞壁の破砕処理とアスタキサンチンを抽出処理とを同時・並行することがより好ましい。
抽出溶剤は特に制限されないが、具体的には、例えばアセトン、エタノール、イソアミルアルコール、n-ヘキサン等の溶剤単独あるいはそれら溶剤の二種以上からなる混合溶剤が使用できる。溶解度の点から抽出効率の良いアセトンあるいはアセトンを含む混合溶剤が好ましい。その中でも特にアセトン-クロロホルム混合溶剤が好ましい。抽出溶剤量は用いる藻類の種類や量により変動するが、例えば藻類重量に対して2倍から20倍の量(重量)でよい。抽出温度は特に限定されないが室温から沸点までの範囲で加温してもしなくてもよい。抽出時間は、藻類の性状、用いる抽出溶剤の種類と量、抽出温度などにより変動するので一概に規定することができないが、例えば1~3時間の範囲で抽出処理できる。
【0012】
アスタキサンチンを含む抽出溶媒から藻類や藻類の細胞壁など固形物を除去した後、抽出溶剤を除去すると、アスタキサンチンを含むカロチノイド類(色素)を得ることができる。この色素を常法にて精製処理すれば、アスタキサンチンを得ることができる。抽出溶剤の除去法は特に制限されないが、例えば温和な条件下でアスタキサンチンを含む抽出溶媒を加温処理し、抽出溶剤を蒸発する処理法が好適である。前記精製処理法も特に制限されない。
【0013】
かくして製造したアスタキサンチンは、食品添加剤、食材用色素、飼料用添加剤などとして有用である。具体的には、香粧品や医薬品、健康食品、魚類用飼料、家禽用飼料等として使用される。アスタキサンチンの使用量は上記用途や使用目的によって大きく変動するので一概に規定することができないのであり、それぞれの用途に応じて最適な量を用いればよい。なお、上記アスタキサンチンを家畜類用飼料に配合してもよい。
【0014】
本発明では、アスタキサンチンを精製処理していないカロチノイド類を、上記用途に使用してもよい。さらには、アスタキサンチンを生物内に蓄積した微細藻類の破砕物を上記用途に使用してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、新規微細藻類が提供される。この微細藻類は、従来から用いられる培地と比較しても簡単な組成の培地にて増殖することが可能であり、しかも少ない照射光量で増殖することが可能である。
さらには、この微細藻類はアスタキサンチンの含有量が高いのであり、例えばアスタキサンチン含有量が高い藻類として知られているHaematococcus pluvialisに匹敵する程度の含有量である。従って、本発明の新規微細藻類からアスタキサンチンを抽出し、安価にアスアキサンチンを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施例)
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【実施例1】
【0017】
(藻類の選別)
入手した山口市内の下水処理場の活性汚泥0.1mLをそのままMG培地に接種し、蛍光灯(30μmol photon m2sec-1)で照射しながら、150rpm、20℃にて、2-3週間培養した。
その培養液50μLを1.5%寒天培地(MG培地)に接種し、前記蛍光灯で照射しながら、20℃にて培養した。増殖・出現したコロニーを新しい培地に接種し、培養する操作を3回繰り返し、藻類を単離した。
(藻類の培養)
その単離した藻類(コロニー)の一白金耳をMG塩培地30mLに接種し、前記蛍光灯照射下、150rpm、20℃にて培養した。
2週間後に、培養液を遠心分離処理し(1700xg、4℃、30分間)、藻類のペレットを得た。次いで、その藻類ペレットを生理的食塩水(saline)で洗浄した。
この藻類の顕微鏡写真を図1に示す。本株は非運動性で紡錘形である。任意の10株を測定した平均値としての長さが81μmで、直径が5.6μmであった。
培養日数と藻類の数との関係を図2に示した。なお、図2の横軸は培養時間(日)であり、縦軸は細胞増加(細胞数/培養液mL)である。
【0018】
(藻類の同定)
上記2週間後の培養物1mLからの細胞ペレットをtrisEDTA緩衝液(1%tritonX-100)200μL(pH=8.0)に懸濁し、3分間沸騰後、氷冷した。引き続き、それぞれの懸濁液をクロロホルム/イソアミル(24/1)混合溶媒200μLと混合し、14,500rpm、4℃で、10分間遠心分離して、水相から粗DNAを得た。
このDNAをPCR法の鋳型として用い、微細藻類の同定に際して常用される18SrDNAのDNAをPCR法にて増幅した。
すなわち、塩基配列が配列番号2のフォワードプライマー、及び塩基配列が配列番号3のリバースプライマーを利用して、94℃1分、55℃1分、72℃2分で30サイクルの条件でPCR法にて増幅した。
PCR法にて増幅した前記DNAに基づき、里見の方法(Int.J.Syst.Bacteriol.47,832-836)を用いて塩基配列を決定し、配列表に配列番号1として示した。
この方法で得た塩基配列を、BLASTアルゴリズムを用い(Altschul et.al.:J.Mol.Biol.215,403-410)、GenBank、EMBL,DDBJからから得た既知の微生物のrDNA塩基配列と比較して、既知の微生物とのDNA相同性の一致の程度を比較した。
近隣結合法として知られているClustal W プログラム(Saitou&Nei,1987;Mol.Biol.Evol.4,406-425、Thompson et al.1994;Nucleic Acids Res.22,4673-4680)を用いて、系統樹を作成した。その系統樹を表1に示す。
【0019】
【表1】
JP0004876250B2_000002t.gif

【0020】
上記解析結果から導き出された系統樹からも判るように、GK12にもっとも近縁の微細生物はM.grifithii、であるが、本発明のGK12はそれらとは異なる種であり、新種の藻類である。
【0021】
(アスタキサンチンの抽出)
上記培養した藻類を、50mgのガラスビーズ(0.5mmの径)と50mgのジルコニアシリケートビーズ(0.1mmの径)を含む500μLの抽出溶媒(アセトン/クロロフォルム=30/70)中に懸濁し、30秒間破砕処理した。
得られた藻類の破砕処理物を遠心分離(14,500rpm、4℃、5分間)し、アセトン/クロロホルム相をバイアルガラス瓶に収めた。
この処理操作を5回繰り返し、それぞれのアセトン/クロロホルム溶液を集め、窒素雰囲気下、温和な条件で蒸発処理した後、再度100μLクロロホルムに溶かした。赤色系色素2.52(mg/g-乾燥細胞)を得た。
赤色系色素がアスタキサンチンであることを、薄層クロマトグラフ法を用い、標準品と比較して確認した。
【実施例2】
【0022】
一方、MG培地に、酢酸ナトリウム1.0g/L、ペプトン100mg/Lを添加した調整培地を使うほかは、実施例1の(藻類の培養)と同様な操作を行い、新規藻類を培養した。
培養日数と藻類の数との関係を図2に示した(白丸○のグラフ)。
【0023】
【表2】
JP0004876250B2_000003t.gif

【0024】
HEPES*:緩衝液(348-01372:和光純薬工業株式会社製)
**Fe-EDTA溶液:702mg/l Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O and 660mg/l Na2EDTA・2H2O.
***PIV溶液:196mg/l FeCl3・6H2O,36mg/l MnCl24H2O,10.5mg/l ZnCl2,4mg/l CoCl2・6H2O,2.5mg/l Na2MoO4・2H2O,and 1g/l Na2EDTA・2H2O.
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】微細藻類の顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明の新規微細藻類を培養したときの日数と細胞数との関係を示す。
図面
【図1】
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【図2】
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