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明細書 :多重ホログラム転写装置および多重ホログラム転写方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4815595号 (P4815595)
公開番号 特開2007-316152 (P2007-316152A)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
公開日 平成19年12月6日(2007.12.6)
発明の名称または考案の名称 多重ホログラム転写装置および多重ホログラム転写方法
国際特許分類 G03H   1/20        (2006.01)
G03H   1/04        (2006.01)
G11B   7/0065      (2006.01)
G11B   7/28        (2006.01)
G11B   7/0045      (2006.01)
FI G03H 1/20
G03H 1/04
G11B 7/0065
G11B 7/28 A
G11B 7/0045 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 15
出願番号 特願2006-143051 (P2006-143051)
出願日 平成18年5月23日(2006.5.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年11月23日 日本光学会発行の「Optics Japan 2005 講演予稿集」に発表
審査請求日 平成20年12月15日(2008.12.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 輝将
【氏名】岡本 淳
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】大橋 憲
参考文献・文献 特表2007-517267(JP,A)
特開2005-189845(JP,A)
特開2006-208858(JP,A)
調査した分野 G03H 1/20
G03H 1/04
G11B 7/0045
G11B 7/0065
G11B 7/28
特許請求の範囲 【請求項1】
空間スペクトル拡散多重方式によってマスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを、コピーホログラムメモリに転写する多重ホログラム転写装置において、
上記マスターホログラムメモリに第一参照光を照射して、記録されている多重ホログラムを一括再生する第一参照光光源と、
上記コピーホログラムメモリに上記第一参照光と干渉を生じることが可能な第二参照光を照射する第二参照光光源と備え、
上記コピーホログラムメモリに、上記マスターホログラムメモリから再生された多重ホログラムと、上記第二参照光とを同時に照射し、該コピーホログラムメモリに上記多重ホログラムを一括転写するものであって、
上記多重ホログラムがM枚のホログラムを多重化したものであり、
マスターホログラムメモリから再生される多重ホログラムの全ての信号光の強度和をMI、コピーホログラムメモリに照射される第二参照光の強度Irefとし、コピーされる全ての信号光の強度和と第二参照光の強度Irefとの光強度比をr=MI/Irefとする時、
上記光強度比rが、r=1となるように、上記第一参照光光源および第二参照光光源の出射光強度が設定されることを特徴とする多重ホログラム転写装置。
【請求項2】
空間スペクトル拡散多重方式によってマスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを、コピーホログラムメモリに転写する多重ホログラム転写方法において、
上記マスターホログラムメモリに第一参照光を照射して、記録されている多重ホログラムを一括再生し、
上記コピーホログラムメモリに上記多重ホログラムと第二参照光とを照射して、該コピーホログラムメモリに上記マスターホログラムメモリから再生された多重ホログラムを一括転写することを特徴とする多重ホログラム転写方法。
【請求項3】
上記多重ホログラムがM枚のホログラムを多重化したものであり、
マスターホログラムメモリから再生される多重ホログラムの全ての信号光の強度和を
MI、コピーホログラムメモリに照射される第二参照光の強度Irefとし、コピーされる全ての信号光の強度和と第二参照光の強度Irefとの光強度比をr=MI/Irefとする時、
上記光強度比rが、r=1に設定されることを特徴とする請求項に記載の多重ホログラム転写方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォトリフラクティブ結晶を用い、該結晶中へのホログラムの記録・再生を行うことのできるホログラムメモリにおいて、多重ホログラムをマスターメディアからコピーメディアへ転写する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムメモリは、物体をレーザ光などの干渉性の高い光で照明し、3次元の立体画像を記録できる技術(ホログラフィー)を応用し、2次元画像として表される情報を何層にも記録できるようにした記憶装置である。情報の再生は、ホログラムメモリに対して、情報を読み書きするための参照光を当てることによって、情報をもった画像が読み出されることによって実現される。
【0003】
例えば従来のCDやDVDなどの光ディスク記録装置は、回転する光ディスクにレーザを当て、ビット単位でデータの読み出し・書き込みを行う一方、ホログラムメモリは、レーザを一度当てるだけで同時に何千ビットもの読み出し・書き込みを行う。すなわち、ホログラムメモリは、従来の光ディスク記録装置と比較して、高速なデータ転送が可能となっている。
【0004】
また、ホログラムメモリは、情報としての2次元画像のホログラムをホログラム媒質中の同一個所に多重記録することが可能である。よって、情報の記録密度を極めて高くすることができるので、大容量化を実現することができる。
【0005】
以上のように、ホログラムメモリは、2次元データのダイレクトな記録再生方式に由来する高速性と、同一箇所への多重記録に由来する大容量性とを有しているので、次世代光メモリとして注目されている。
【0006】
このように、大容量、高速転送レートを併せ持つホログラムメモリの商用化に向けて、ROM(Read Only Memory)の作成技術が重要な検討課題となっている(例えば、非特許文献1参照)。従来提案されているホログラム転写方式の一例では、ROMの作成時に、空間的に重なるホログラムの数(多重数)と同じ回数だけ転写作業を繰り返す。すなわち、この方法では、インコヒーレント(非干渉)にホログラムを重ね書きする必要がある。
【0007】
一方、多重ホログラムを、多重化されたままの状態で転写することは容易でない。例えば非特許文献2では、角度多重、シフト多重、位相相関多重など、多くの多重記録方式に対して、体積ホログラムにおけるBragg回折条件の選択性を用いて一つのホログラムに対応した回折光のみを取り出すことが記載されている。そのような通常の多重記録を用いた場合、コヒーレント(干渉)に多重ホログラムを転写した後のホログラムを再生すると、多重ホログラム全てに対してBragg条件が満たされ、再生光の照射領域から全てのホログラムが同時に読み出される。すなわち、多重ホログラムから同時に再生した回折光を、そのまま一括転写(コヒーレント転写)すると、コピーのホログラムを再生した時に、隣接するホログラム同士で許容できないほど大きなクロストークが発生し、再生信号の区別が全くつかなくなる。
【0008】
このため、多重ホログラムを一括に転写する手法としては、これまでに、各ホログラムの記録に用いる光波の相互時間コヒーレンスをなくすことによって、クロストークなく一括転写する手法(インコヒーレント一括転写)が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、同一の波長で時間コヒーレンスだけを変えるには、各ホログラムに対応する参照光の光路長を、レーザのコヒーレンス長以上に離さなければならず、結果として光学系が複雑化するという問題がある。これらのインコヒーレント転写については、非特許文献4にて詳細に比較検討されているが、事実上、どの方法で転写しても、転写後に得られる最大回折効率は変わらないことが示されている。
【0010】
一方、本願出願人は、ホログラム媒質中のBragg条件ではなく、ランダムディフーザを用いた信号光自身の位相変調・復調によってホログラムを多重記録および選択再生する空間スペクトル拡散多重(以下、SSS多重)方式を提案している(非特許文献5,6参照)。
【0011】
尚、多重ホログラム記録について開示する他の文献としては、例えば、以下の非特許文献7ないし9が挙げられる。

【非特許文献1】H. Horimai and X. Tan,“Duplication technology for secured read-only holographic versatile disc”, Proc. International Symposium on Optical Memory and Optical Data Storage Topical Meeting, ISOM/ODS2005, no.M-B7, Hawaii, USA, Jul. 2005
【非特許文献2】L. Solymar, D. J. Webb and A. Grunnet-jepsen,“The Physics and Applications of Photorefractive Materials”, Oxford Unversity Press, New York, 1996.
【非特許文献3】S. Piazzolla, B. K. Jenkins and A. R. Tanguay, Jr.,“Single-step copying process for multiplexed volume holograms”, Opt. Lett., 17, pp.676-678, 1992.
【非特許文献4】S. Campbell, Y. Zhang, P. Yeh,“Writing and Copying in Volume holographic memories: approaches and analysis”, Opt. Commun., 123, pp.27-33, 1996
【非特許文献5】T. Ito and A. Okamoto,“Volume holographic recording using spatial spread-spectrum multiplexing”, Jpn. J. Appl. Phys. 45 Part 1, pp.1270-1276, 2006
【非特許文献6】T. Ito and A. Okamoto, “Volume holographic recording using spatial spread-spectrum multiplexing technique”, Proc. ISOM/ODS2005, MP-20, Honolulu, USA, Jul.2005
【非特許文献7】F. H. Mok, G. W. Burr and D. Psaltis,“System metric for holographic memory systems”, Opt. Lett., 21, pp.896-898, 1996
【非特許文献8】K. M. Johnson, M. Armstrong, L. Hesselink and J. W. Goodman,“Multiple multiple-exposure hologram”, Appl. Opt., 24, pp.4467-4472, 1985
【非特許文献9】K. Anderson and K. Curtis,“Polytopic multiplexing”, Opt. Lett., 29, pp.1402-1404, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記SSS多重方式によって記録されたホログラムの場合、再生時にはディフューザにおける逆拡散によってアドレス指定される。よって、SSS多重をベースにして多重ホログラムの転写方式を確立すれば、多重回折光がコピー側メディアに書込まれても、問題なく各ページデータを選択再生できるので、コヒーレントな転写が可能であると考えられる。また、コヒーレント一括転写では、インコヒーレント型に比べ、コヒーレンス調整に伴う光学系の複雑化は解消される。さらに、コヒーレント一括転写によっては、その回折効率を大幅に増強することも可能であると考えられる。
【0013】
しかしながら、上記SSS多重方式を用いたコヒーレント一括転写については、これまで研究されていなかった。
【0014】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記SSS多重方式を用いたコヒーレント一括転写の具体的手法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る多重ホログラム転写装置は、上記課題を解決するために、空間スペクトル拡散多重方式によってマスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを、コピーホログラムメモリに転写する多重ホログラム転写装置において、上記マスターホログラムメモリに第一参照光を照射して、記録されている多重ホログラムを一括再生する第一参照光光源と、上記コピーホログラムメモリに第二参照光を照射する第二参照光光源と備え、上記コピーホログラムメモリに、上記マスターホログラムメモリから再生された多重ホログラムと、上記第二参照光とを同時に照射し、該コピーホログラムメモリに上記多重ホログラムを一括転写することを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係る多重ホログラム転写方法は、上記課題を解決するために、空間スペクトル拡散多重方式によってマスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを、コピーホログラムメモリに転写する多重ホログラム転写方法において、上記マスターホログラムメモリに第一参照光を照射して、記録されている多重ホログラムを一括再生し、上記コピーホログラムメモリに上記多重ホログラムと第二参照光とを照射して、該コピーホログラムメモリに上記マスターホログラムメモリから再生された多重ホログラムを一括転写することを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、マスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムが空間スペクトル拡散多重方式によって記録されている。この場合、マスターホログラムメモリからコピーホログラムメモリへの転写を行うにあたって、上記第一参照光および第二参照光を同一波長及び同一光路として照射しながら、多重ホログラムのコヒーレント一括転写を行うことができる。このため、従来のインコヒーレント一括転写のように光学系が複雑化することなく、転写作業の簡素化を図ることができる。
【0018】
また、上記多重ホログラム転写装置においては、上記多重ホログラムがM枚のホログラムを多重化したものであり、マスターホログラムメモリから再生される多重ホログラムの全ての信号光の強度和をMI、コピーホログラムメモリに照射される第二参照光の強度Irefとし、コピーされる全ての信号光の強度和と第二参照光の強度Irefとの光強度比をr=MI/Irefとする時、上記光強度比rが、r=1となるように、上記第一参照光光源および第二参照光光源の出射光強度が設定される構成とすることが好ましい。
【0019】
また、上記多重ホログラム転写方法においては、上記多重ホログラムがM枚のホログラムを多重化したものであり、マスターホログラムメモリから再生される多重ホログラムの全ての信号光の強度和をMI、コピーホログラムメモリに照射される第二参照光の強度Irefとし、コピーされる全ての信号光の強度和と第二参照光の強度Irefとの光強度比をr=MI/Irefとする時、上記光強度比rが、r=1に設定されることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、上記光強度比rをr=1に設定することで、ホログラム1枚あたりの回折効率を最大値に設定することができる。また、ホログラム1枚あたりの回折効率は、1/Mに比例し、従来のインコヒーレント一括転写方式(ホログラム1枚あたりの回折効率が1/Mに比例する)に比べ、転写後の回折効率をM倍に向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る多重ホログラム転写装置は、以上のように、空間スペクトル拡散多重方式によってマスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを、コピーホログラムメモリに転写する多重ホログラム転写装置において、上記マスターホログラムメモリに第一参照光を照射して、記録されている多重ホログラムを一括再生する第一参照光光源と、上記コピーホログラムメモリに第二参照光を照射する第二参照光光源と備え、上記コピーホログラムメモリに、上記マスターホログラムメモリから再生された多重ホログラムと、上記第二参照光とを同時に照射し、該コピーホログラムメモリに上記多重ホログラムを一括転写する構成である。
【0022】
また、本発明に係る多重ホログラム転写方法は、以上のように、空間スペクトル拡散多重方式によってマスターホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを、コピーホログラムメモリに転写する多重ホログラム転写方法において、上記マスターホログラムメモリに第一参照光を照射して、記録されている多重ホログラムを一括再生し、上記コピーホログラムメモリに上記多重ホログラムと第二参照光とを照射して、該コピーホログラムメモリに上記マスターホログラムメモリから再生された多重ホログラムを一括転写する構成である。
【0023】
それゆえ、マスターホログラムメモリからコピーホログラムメモリへの転写を行うにあたって、上記第一参照光および第二参照光を同一波長及び同一光路として照射しながら、多重ホログラムのコヒーレント一括転写を行うことができ、従来のインコヒーレント一括転写のように光学系が複雑化することなく、転写作業の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態について図1ないし図12に基づいて説明すると以下の通りである。
【0025】
〔ホログラムメモリ装置の構成〕
図1に、本発明の実施の一形態に係るホログラムメモリ装置の概略構成を示す。同図に示すホログラムメモリ装置は、空間スペクトル拡散多重(SSS多重)方式を採用するものであり、マスターのホログラムメモリ1に対して多重ホログラムを記録するための構成、および、マスターのホログラムメモリ1に記録されている多重ホログラムをコピーとなるホログラムメモリ2にコヒーレント一括転写するための構成を記載している。上記ホログラムメモリ装置は、第一光源3、第二光源4、第三光源5、SLM6、ランダムディフューザ7、および制御部8を備えている。
【0026】
第一光源3は、SLM6に対して光を照射するための光源である。SLM6は、第一光源3からの光に対して、記録すべきデータに応じた変調を加え信号光とする。また、ランダムディフューザ7は、SLM6から送られてくる信号光に空間位相変調を加え、物体光としてホログラムメモリ1に入射させる。尚、本発明において、信号光に空間位相変調を加える手段は上述のようなランダムディフーザに限定されるものではなく、他の空間位相変調手段(例えば、ファイバを束にしたファイババンドル等)を用いることも可能である。
【0027】
第二光源4は、ホログラムメモリ1への多重ホログラム記録時、およびホログラムメモリ1からホログラムメモリ2へのコヒーレント一括転写時において、第一参照光をホログラムメモリ1に照射するための光源である。この第二光源4からホログラムメモリ1に入射される参照光は、第一光源3からホログラムメモリ1に入射される物体光とコヒーレントとなるように制御部8によって制御される。第三光源5は、ホログラムメモリ1からホログラムメモリ2へのコヒーレント一括転写時において、第二参照光をホログラムメモリ2に照射するための光源である。
【0028】
制御部8は、ホログラムメモリ装置における動作を統括的に制御する。具体的には、制御部8は、第一光源3、第二光源4、第三光源5、SLM6、およびランダムディフューザ7の動作を制御する。以下に示すホログラムの記録・転写処理は、制御部8の制御に基づいて行われる。
【0029】
なお、上記の説明では、第一光源3および第二光源4をそれぞれ別々の光源のように記載しているが、実際には、第一光源3および第二光源4から出射されるレーザ光が干渉しなければホログラムの記録ができない。このため、第一光源3および第二光源4は単一の光源から出射された光を、ビームスプリッタおよびミラーなどを用いて2つの光に分離し、これらを各光源として機能させる構成とされる。
【0030】
〔マスターホログラムメモリに対する多重ホログラムの記録動作〕
上記ホログラムメモリ装置において、ホログラムメモリ1に対する多重ホログラムの記録動作について図2を参照しながら説明する。
【0031】
マスターとなるホログラムメモリ1に多重ホログラムを記録する時には、図2に示すように、第一光源3から出射される光に対して、SLM6によって記録すべきデータに応じた変調を加え信号光とする。この信号光は、例えば、M層のホログラムを多重記録する場合には、Mページ分の信号光となる。
【0032】
また、上記信号光は、ランダムディフューザ7によって空間位相変調されてからホログラムメモリ1に照射されるが、この時、第二光源4から出射される第一参照光をホログラムメモリ1に同時に照射する。SSS多重方式では、上記第一参照光の位相は変化させず、信号光側のランダムディフューザ7をわずかに変位させることにより、信号光に変調する空間位相を各ページのホログラム毎に変化させる。
【0033】
上記の記録動作においては、ランダムディフューザ7を通過した物体光が、第一参照光とともにホログラムメモリ1に入射する。物体光中のデータはこれら2つの光波の干渉縞に応じて誘起されるホログラム(屈折率格子)Hとして記録される。尚、この時、他の多重記録と同様に、回折効率を均一化するための露光スケジューリングが行われる。
【0034】
〔マスターホログラムメモリからコピーホログラムへの多重ホログラムのコヒーレント一括転写動作〕
上記ホログラムメモリ装置において、ホログラムメモリ1からホログラムメモリ2へのコヒーレント一括転写動作について図3を参照しながら説明する。
【0035】
コヒーレント一括転写動作の際には、マスターであるホログラムメモリ1に第二光源4から出射される第一参照光を照射する。これにより、ホログラムメモリ1からは、記録されている多重ホログラムが一括して再生され、この再生光(すなわち、再生された多重ホログラム)がコピーとなるホログラムメモリ2に照射される。この時、第三光源5から出射される第二参照光をホログラムメモリ2に同時に照射する。
【0036】
このように、ホログラムメモリ2においては、ホログラムメモリ1からの再生光と、第三光源5からの第二参照光とが同時に照射されることにより、ホログラムメモリ1に記録されていた多重ホログラムがコヒーレント一括転写される。このような一括転写では、コピー作成時に露光スケジュールを考える必要はない。
【0037】
上記コヒーレント一括転写では、上記参照光を同一波長及び同一光路として照射することができるため、従来のインコヒーレント一括転写のように光学系が複雑化するといった問題を回避できる。
【0038】
〔再生動作〕
次に、多重ホログラムが記録されているホログラムメモリに対し、データの再生動作について図4を参照しながら説明する。
【0039】
ホログラムメモリに対してデータの再生を行う場合には、多重ホログラムの記録されているホログラムメモリ1に読出し光が照射され、位相共役鏡9に励起光が入射される。読出し光は記録時に用いた参照光と同一の方向からホログラムメモリ1に対して入射される。読出し光はホログラムメモリ1中のホログラムHによって回折され、その回折光は位相共役鏡9に入射する。
【0040】
位相共役鏡9中では、回折光強度が、励起光強度によって決められる強度閾値よりも大きい場合にのみ、回折光および励起光の入射によって生じる相互励起型位相共役現象を介して、互いの位相共役光を発生させるようなホログラムが生成される。その結果、回折光の位相共役となるフィードバック光が発生し、ホログラムメモリ1中に記録されたホログラムHの位相整合条件を自動的に満足して入射する。
【0041】
尚、本発明におけるSSS多重方式では、再生動作に「位相共役再生」が必須であるが、上記説明は「相互励起型」の位相共役器を用いた場合を例示したものである。本方式での再生動作はこれに限定されるものではなく、他の位相共役再生の場合にも適用可能である。
【0042】
また、位相共役再生を行うためには、大別して以下の二つの方法があります。
(1) 平面参照光でホログラムを記録し,それに対向する平面読み出し光を照射して再生する方法(本例ではこの方法を使用)。
(2) 平面以外の任意の波面をもつ参照光でホログラムを記録し、参照光を位相共役器に入力した後、位相共役鏡から返される光波を用いてホログラムを再生する方法。
【0043】
さらに、上記説明において使用されている位相共役器(すなわち、位相共役鏡9)は、外部から励起光が入力される能動的デバイスが例示されているが、必ずしもこのような能動的なデバイスである必要はなく、「自己励起型位相共役器」と呼ばれる外部励起光が必要ない受動的なタイプを用いることも可能である。
【0044】
ホログラムメモリ1中のホログラムHを透過したフィードバック光は、物体光の位相共役となっており、ビームスプリッタ3を介して出力光として出力される。この出力光は、多重ホログラムであるが、この多重ホログラムの中から、ランダムディフューザ7によって任意のホログラムを選択的に取り出して復元することができる。すなわち、ランダムディフューザ7の位置を調整することによって、記録時と同じ位置となる一つのホログラムのみが選択的に取り出され、このホログラムを光検出器10によって検出することによって再生が行われる。
【0045】
ホログラムメモリへ多重ホログラムを記録する機能と、ホログラムメモリに記録されている多重ホログラムを再生する機能とを有するホログラムメモリ装置の構成を図5に示す。図5に示すホログラムメモリ装置は、第一光源3、第二光源4、第四光源11、SLM6、ランダムディフューザ7、制御部8、位相共役鏡9、光検出器10、およびビームスプラッタ12を備えている。
【0046】
上記構成のホログラムメモリ装置では、再生時にホログラムメモリ1に読出し光を照射する光源として、記録時に参照光を照射する第二光源4を兼用することができる。また、SLM6とランダムディフューザ7との間にはビームスプリッタ12が配置されている。このビームスプリッタ12は、記録時にはSLM6から出射される信号光をランダムディフューザ7に入射させ、再生時にはランダムディフューザ7から出射される出力光を光検出器に入射させる機能を有する。また、第四光源11は、位相共役鏡9に上述した励起光を照射するための光源である。
【0047】
尚、上記説明では、マスターであるホログラムメモリ1に対しての再生動作を説明したが、コピーであるホログラムメモリ2に対しても、マスターと同じ位置に配置すれば同じように再生動作が行える
また、図1の構成のホログラム装置に再生機能を追加する場合には、図6に示すような構成となるが、この場合は、マスタであるホログラムメモリ1の位置に、ホログラムメモリ1と同じ厚みと屈折率とを有するダミーメディアをおくことによってもコピーであるログラムメモリ2の再生が可能となる。さらに他の方法としては、最初に奥側でマスターメディア(上記例ではホログラムメモリ1)に多重記録し、それを位相共役再生してコピーメディア(上記例ではホログラムメモリ2)に一括転写する方法も考えられる。
【0048】
〔回折効率増強効果〕
通常、多重記録後のホログラムの屈折率変調は、各ページに対応した信号光・参照光の干渉縞強度パターンの総和(インコヒーレント和)となる。ホログラムを一枚記録した時のダイナミックレンジがΔnであった場合、M枚のホログラムを多重化すると、ホログラム一枚当たりに割当てられるダイナミックレンジがΔn/Mとなるため、回折効率は1/Mに比例して減少する(非特許文献7参照)。同様のことが、インコヒーレント型の転写にも当てはまる。
【0049】
一方、上述したようなコヒーレント転写の場合には、回折効率は必ずしも1/M則に従うとは限らない。このコヒーレント一括転写において、マスターメディアから再生される多重ホログラムにおける1枚のホログラム当たりの信号光強度をIとすれば、コピーされる全ての信号光(M枚のホログラムの信号光)の強度和はMIである。また、このコヒーレント一括転写において、コピーメディアに照射される第二参照光の強度Irefとし、コピーされる全ての信号光の強度和と第二参照光の強度Irefとの比をr=MI/Irefとすると、マスターに記録されたある一つのホログラムから回折されるの振幅Aは、
【0050】
【数1】
JP0004815595B2_000002t.gif

【0051】
と表される。ここで、φは振幅Aの信号光に対応する位相であり、マスター記録時に変調される位相φは互いに直交する空間分布を持つものとする。このとき、コヒーレント転写後のメディア全体のダイナミックレンジは、
【0052】
【数2】
JP0004815595B2_000003t.gif

【0053】
と書くことができる。AおよびAはそれぞれ信号光の振幅、ArefおよびIrefは転写時の参照光の振幅および強度、c.c.は複素共役を表す。すなわち、多重回折光の振幅和(コヒーレント和)がホログラムとして記録される。上記(2)式の多重ホログラムに振幅Arefの参照光を照射することによって再生される多重回折光の振幅Aoutは、
【0054】
【数3】
JP0004815595B2_000004t.gif

【0055】
である。ここで、上記(2)式の信号光同士によって書かれたホログラム(第一項)からの参照光の回折成分Σ(A)・Arefは、薄いホログラムの場合はスペックルノイズとなるが、厚いホログラムでこのノイズは無視できるものと仮定した。exp(φ)の相互相関が十分に低い場合、この多重回折光Aoutにexp(-φ)を乗じて逆拡散すると、M枚のホログラムのうちのk枚目のホログラムに対応する信号光成分Aout kを選択再生できる。ここで、Aout kは以下の(4)式にて表される。
【0056】
【数4】
JP0004815595B2_000005t.gif

【0057】
よって、コヒーレント一括転写後の多重ホログラム一枚あたりの回折効率ηは、
【0058】
【数5】
JP0004815595B2_000006t.gif

【0059】
となる。上記(5)式において、コピー時の光強度比がr=Mの場合は、インコヒーレント記録の回折効率とほぼ変わらないが、r=1のときにホログラム一枚あたりの回折効率が最大となり(図7参照)、この回折効率は1/Mに比例する(図8参照)ことがわかる。すなわち、コヒーレント転写後の回折効率は、インコヒーレント転写の場合に比べて最大でM倍改善される。
【0060】
〔多重ホログラム一括転写実験〕
図9に示す光学系を用いて、コヒーレント一括転写による回折効率の増強効果を検証した。まず、シャッターS1およびS4のみを開放し、すりガラス(Diffuser)を50[μm]ずつシフトさせて、マスターメディアPRC1(マスター用フォトリフラクティブLiNbO結晶)に対してSSS多重記録を行った。
【0061】
ここで、マスターメディアPRC1に強い(回折効率の高い)ホログラムを書き込むと、ノイズホログラムによるPRC1での散乱が再生時の出力像の質を低下させるので、PRC1へのマスター作成時には、なるべく弱いホログラムを多重記録した。マスター作成時の光波入射条件は、信号光パワー:38[μW]、参照光1パワー:650[μW]、参照光1のビーム径:3[mm]、信号光と参照光の交差角:55[degree]とし、使用したFe-doped LiNbOの消去時定数が記録時定数よりも極端に遅かったので、特別な露光スケジュールは行わず、それぞれ90[s]ずつ照射を行った。
【0062】
次に、シャッターS1を閉じ、シャッターS2およびS4のみ開放してマスターメディアPRC1からコピーメディアPRC2に全てのホログラムを一括転写した。転写時は、PRC1に参照光1:7.2[mW]を照射し、PRC2に入射する多重回折光:50[μW]、参照光2:260[μW]に調整し、転写露光時間を330[s]とした。
【0063】
コピーホログラム記録完了後、シャッターS2およびS4を閉じ、260[μW]の読出し光をそれぞれ0.1秒程度照射して位相共役再生し、その出力光を測定した。散乱による損失を避けるためには、転写後に結晶1のマスターホログラムをインコヒーレント消去した方が望ましいが、今回はLiNbO結晶の消去時定数が遅かったので、マスターホログラムを消去しないまま再生を行った。
【0064】
測定結果を以下の表1に示す。また、M=5のときの測定例および出力像の例をそれぞれ図10および図11に示す。表1の結果から、多重数Mが増加しても出力光の総和(Total)は低下せず、ホログラム一枚あたりの出力光パワーは1/Mとなっていることがわかる。また、図10における測定例は、コヒーレント一括転写後における出力工パワーの測定結果であり、横軸は測定開始からの経過時間を示している。この測定例において、図中最右に示されている小さな強度ピークはクロストーク成分を表す。
【0065】
【表1】
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【0066】
図12に、通常のSSS多重とコヒーレント一括転写後における規格化回折効率の比較を示す。通常のSSS多重記録では、回折効率は1/Mよりやや大きくなるだけであるが、コヒーレント一括転写後の回折効率は、ほぼ完全に1/Mの曲線と一致しており、転写によって回折効率が大幅に改善されることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るホログラムメモリ装置は、大容量のデータを記録し、かつ、データの記録速度、読み出し速度を高速に行うことを要求される情報記録再生装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、ホログラムメモリ装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】上記ホログラムメモリ装置における記録動作を示す図である。
【図3】上記ホログラムメモリ装置における転写動作を示す図である。
【図4】上記ホログラムメモリ装置における再生動作を示す図である。

【0069】
図である。
【図5】本発明の実施形態を示すものであり、ホログラムメモリ装置の要部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態を示すものであり、ホログラムメモリ装置の要部構成を示すブロック図である。
【図7】光強度比と回折効率との関係を示すグラフである。
【図8】ホログラム多重数と回折効率との関係を示すグラフである。
【図9】多重ホログラム一括転写実験で使用された光学系を示す図である。
【図10】上記多重ホログラム一括転写実験におけるM=5のときの測定例を示すグラフである。
【図11】上記多重ホログラム一括転写実験における出力像の例を示す図である。
【図12】SSS多重とコヒーレント一括転写後における規格化回折効率の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1 ホログラムメモリ(マスターホログラムメモリ)
2 ホログラムメモリ(コピーホログラムメモリ)
3 第一光源
4 第二光源(第一参照光光源)
5 第三光源(第二参照光光源)
6 SLM
7 ランダムディフューザ
8 制御部
9 位相共役鏡
10 光検出器
11 第四光源
12 ビームスプリッタ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図12】
10
【図11】
11