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明細書 :二次元パターニング方法ならびにそれを用いた電子デバイスの作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4405201号 (P4405201)
公開番号 特開2005-051081 (P2005-051081A)
登録日 平成21年11月13日(2009.11.13)
発行日 平成22年1月27日(2010.1.27)
公開日 平成17年2月24日(2005.2.24)
発明の名称または考案の名称 二次元パターニング方法ならびにそれを用いた電子デバイスの作製方法
国際特許分類 H01L  21/302       (2006.01)
H01L  21/265       (2006.01)
FI H01L 21/302
H01L 21/265
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2003-282196 (P2003-282196)
出願日 平成15年7月29日(2003.7.29)
審判番号 不服 2007-016804(P2007-016804/J1)
審査請求日 平成15年9月10日(2003.9.10)
審判請求日 平成19年6月14日(2007.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】五十嵐 慎一
【氏名】中村 明子
【氏名】北島 正弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
参考文献・文献 特開平2-8381(JP,A)
Sin Igarashi et.al.,In-situ observation of surface blistering in silicon by deuterium and helium ion irradiation, Surface and Coatings Technology, Elsevier Science B.V., 2002年,vol.158-159,pages.421-425
Tetsuya Narushima et.al.,電子照射によるシリコンの表面応力の緩和,表面科学,日本,日本表面科学会,2001年 9月10日,第22巻第9号,pages.614-619
調査した分野 H01L21/302
H01L21/265
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコン基板の表面に、所望の二次元パターンを形成する二次元パターニング方法であって、基板表面に所望の二次元パターンにて水素イオン、重水素イオン又はヘリウムイオンを注入して、基板内の決まった深さ範囲の、水素イオン、重水素イオン又はヘリウムイオンの注入により形成されたドーム状の膨らみであるブリスターを形成し、当該ブリスターのみを電子照射により破壊して、上記決まった深さ範囲の深さの二次元パターンを形成することを特徴とする二次元パターニング方法。
【請求項2】
ブリスターを形成した後、ブリスターが形成された基板を酸素雰囲気に曝し、表面に酸化膜を形成した後、ブリスターとその上に形成された酸化膜を電子照射により破壊し除去することで、未成膜の清浄表面の二次元パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の二次元パターニング方法。
【請求項3】
マスクを介してイオン照射することにより、パターン化された配置を持つブリスターを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の二次元パターニング方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の二次元パターニング方法を用いることを特徴とする電子デバイスの作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、二次元パターニング方法ならびにそれを用いた電子デバイスの作製方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、微細加工技術や、電気デバイス、半導体デバイス等の作製に有用な、感光剤やイオンミリングを使わない二次元パターニングを可能ならしめる新しい二次元パターニング方法、ならびにそれを用いた新しい電子デバイスの作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二次元パターニング技術として、リソグラフィとエッチングの組み合わせが広く知られている。リソグラフィ技術については、感光剤を塗布したのちマスクを利用して光や電子などで感光剤を露光する手法や、収束電子線により感光剤を直接露光する手法が考案されており(たとえば非特許文献1,2参照)、これらのリソグラフィ技術により形成したフォトレジストパターンをマスクとしてエッチングを施し、ウェハ表面に微細な電極や配線などの回路パターンを作製することができる。
【0003】
また、FIB(Focused Ion Beam:収束イオンビーム)を利用し、直接基板を微細に彫るイオンミリングと呼ばれる手法も存在する(たとえば非特許文献3,4,5参照)。

【非特許文献1】M. Rothschild and D. J. Ehrlich, J. Vac. Sci. Tech. B 6, 1 (1988)
【非特許文献2】A. Heuberger, J. Vac. Sci. Tech. B 6, 107 (1988)
【非特許文献3】R. L. Kubena et al., J. Vac. Sci. Tech. 19, 916 (1981)
【非特許文献4】T. Ishitani et al., Jpn. J. Appl. Phys. 24, L133 (1985)
【非特許文献5】P. Sudraud et al., J. Vac. Sci. Tech. B 6, 234 (1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リソグラフィ技術およびエッチング技術においては、感光剤、現像液、エッチング液の塗布や、剥離液による感光剤の除去が不可欠であり、これらの工程が加わることによって、感光剤や除去剤などの不純物原子がデバイスに介入し、それによる汚染を避けることが難しいといった問題があった。これに関わる基板表面のクリーニング作業は、パターニングの工程を複雑なものとしている。
【0005】
また、FIBによるイオンミリングにおいても、使用されるGaなどのイオンによる汚染が避けられない。
【0006】
そこで、以上のとおりの事情に鑑み、この出願の発明は、感光剤やイオンミリングを使わない二次元パターニングを可能ならしめる新しい二次元パターニング方法、ならびにそれを用いた新しい電子デバイスの作製方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、シリコン基板の表面に、所望の二次元パターンを形成する二次元パターニング方法であって、基板表面に所望の二次元パターンにて水素イオン、重水素イオン又はヘリウムイオンを注入して、基板内の決まった深さ範囲の、水素イオン、重水素イオン又はヘリウムイオンの注入により形成されたドーム状の膨らみであるブリスターを形成し、当該ブリスターのみを電子照射により破壊して、上記決まった深さ範囲の深さの二次元パターンを形成することを特徴とする二次元パターニング方法を提供する。
【0008】
第2には、上記第1の発明において、ブリスターを形成した後、ブリスターが形成された基板を酸素雰囲気に曝し、表面に酸化膜を形成した後、ブリスターとその上に形成された酸化膜を電子照射により破壊し除去することで、未成膜の清浄表面の二次元パターンを形成することを特徴とする二次元パターニング方法を提供する。
【0009】
第3には、上記第1又は第2の発明において、マスクを介してイオン照射することにより、パターン化された配置を持つブリスターを形成することを特徴とする二次元パターニング方法を提供する。
【0010】
第4には、前記二次元パターニング方法を用いることを特徴とする電子デバイスの作製方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記二次元パターニング方法によれば、感光剤やイオンミリングを使わない二次元パターニングを実現することができ、基板材質と成膜の材質、不溶性気体のイオン(水素イオン、重水素イオン又はヘリウムイオン)と電子のみにより、パターン化された微細加工が可能で、異種原子の介入がないため、不純物による汚染の影響を無くすことができる。
【0012】
また、イオンエネルギーを調節することにより、エッチングされる深さも調整でき、非常に薄くエッチングを行うことも可能であり、限りなく平面に近い、凹凸の値で0.1ミクロン以下のパターン作製も可能である。
【0013】
そして、上記電子デバイスの作製方法および磁気デバイスの作製方法によれば、上記のとおりに優れたパターニングを施した良好な電子デバイスを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1(a)~(d)は、この出願の発明に従ったブリスターを用いた二次元パターニングを説明するための図である。この図1では便宜上縦方向のスケールを強調して図示している。
【0015】
まず、シリコン基板や金属基板等の基板(1)に対し、水素イオンや重水素イオン、ヘリウムイオン等の溶解度の低い気体元素のイオン(2)を注入すると(図1(a)参照)、基板(1)内の決まった深さ範囲に気体元素のイオン(2)が溜まり、ブリスター(3)と呼ばれるドーム状の膨れが形成される(図1(b)参照)。この基板(1)を酸素雰囲気に曝すと、表面に酸化膜(4)が形成される(図1(c)参照)。酸素を排気し、酸化膜(4)の上からブリスター(3)に対して電子線またはイオン(5)(以下、電子線・イオン(5)と略する)を照射すると、そのエネルギーを受けたブリスター(3)が酸化膜(4)とともに破壊されて剥離する(図1(d)参照)。ブリスター(3)が剥離したところには、清浄な基板(1)の表面が現れる。
【0016】
以上の一連の作業により、基板表面に酸化表面(6)と局所的な清浄表面(7)の二次元パターンが形成される。
【0017】
このときの非剥離部の表面つまり酸化表面(6)と剥離部の表面つまり清浄表面(7)との段差は、照射する電子線・イオン(5)の電子種・イオン種、電子エネルギー・イオンエネルギー、および入射角により決まる。剥離部の面積および剥離部の数密度は、電子線・イオン(5)の照射量によって調節できる。
【0018】
また、マスクを利用して領域を選択してイオン照射を行う、あるいは収束イオンビーム照射を行うことにより、パターン化された配置を持つブリスター(3)を形成し、且つその規則的な剥離を行うことも可能である。
【0019】
照射するイオン(5)としては、たとえばAr+、Kr+、Xe+などを考慮することが
できる。
【0020】
次に、実際に行った一観察例について説明する。Si(100)基板に、表面法線から30°の方向から水素イオンH+を1×1022ions/m2照射し、その後、酸素気体雰囲気に曝してから、走査型オージェ顕微鏡(アルバック・ファイ製SAM680)による観察を行った。図2(a)~(c)は、その観察されたを例示したものである。
【0021】
まず、H+照射により、数ミクロン程度の大きさのブリスターが形成された。その後、5keVのエネルギーの電子線を4mA/cm2の電流密度で1分ほど照射すると、その
エネルギーを受けたブリスターが図2(a)に示すように剥離することが観察された(図中「剥離部」参照)。剥離部の大きさはブリスターの大きさと等しく、数ミクロン程度である。TRIM98シミュレーションコードによる計算から、注入されたH+は0.1ミ
クロン程度の深さに分布していることが見積もられる。そのため、基板表面と剥離部との段差も0.1ミクロン程度と見積もることができる。
【0022】
図2(b)にO(KLL)オージェピーク(510eV)強度を可視化した元素マッピングを、図2(c)にSi(LVV)オージェピーク(96eV)によるマッピングを示す。基板表面と比べ、剥離部ではOのオージェピークが見られず、強いSiのオージェピークが観察された。基板表面上が均一に酸化されている中に、剥離された部分で、Oと結合していない清浄なSi基板表現が現れていることを示している。基板中のシリコンの不飽和結合を水素終端化が均一な厚さの剥離を可能にすることから、この剥離された表面も水素終端化されている。基板との反応性のないイオンを用いれば、活性なシリコン基板表面を出すことも可能である。このようにして、清浄な環境下で、限りなく平面に近い、つまり凹凸の値で0.1ミクロン程度のSiとSiO2の二次元パターンが作製されるので
ある。
【0023】
応用例として、シリコン基板で二次元パターンを作製し、その表面に蒸着を施すことにより、局所的に3次元の積層構造をもつデバイスの作製も可能である。
【0024】
たとえば図3に示すように、ブリスターを剥離した後にSi(8)を蒸着すると、電気絶縁層であるSiO2を局所的にSiで挟み込んだ構造を作製することができる。これに
よれば、SOI(Silicon-on-Insulator)構造中に、シリコン薄膜と基板シリコンの電気伝導路を作ることが可能になる。
【0025】
また、たとえば図4に示すように、蒸着種を金属(9)にすると、MOS(Metal-Oxide-Silicon)トランジスタにおける金属電極のパターンとなる。
【0026】
さらに、吸着・反応の選択性を利用すれば、つまりブリスターにより保護されていた基板表面と保護されていなかった基板表面との吸着確率または反応性を利用すれば、たとえば図5に示すように、剥離部のみに蒸着(10)を行うことも可能であり、表面上の直接パターニングの有力な手法となり得る。
【0027】
またさらに、以上のようなシリコン酸化膜の二次元パターニングだけでなく、たとえば図6に示すように、異種原子(11)を蒸着した後に、イオンまたは電子照射を行い、二次元パターンを作製することもできる。
【0028】
さらには、たとえば図7に示すように、酸化膜(4)を作製した後に異種原子(11)の蒸着を行い、二次元パターンを作製することもできる。
【0029】
これらのとき(図6および図7)の凹凸も、0.1ミクロン以下に抑えて、限りなく平面に近いパターニングが可能である。
【0030】
そして、以上のとおりの二次元パターニング方法を利用することで、良好なパターンを持つ電子デバイスや磁気デバイスを作製することができるのである。
【0031】
もちろん、この出願の発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。たとえば、形成できる二次元パターンとしては、上述のとおり電気特性のパターン、さらには親水性や疎水性等の親和性を代表とする反応性のパターンなどが挙げられる。特に親水性や疎水性のパターンには、不純物の残らないこの出願の発明は有用であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、感光剤やイオンミリングを使わない二次元パターニングを可能ならしめる新しい二次元パターニング方法、ならびにそれを用いた新しい電子デバイスの作製方法が提供される。
【0033】
従来のリソグラフィ技術において不可欠であった薬品などの不純物なしに二次元パターニングを実現することができ、不純物の混入を防ぎ、清浄な環境でのデバイス作製が可能になる。また、感光剤の塗布と除去、およびエッチング工程が省けることから、製造の簡略化によるコスト削減を図ることもできる。工程が減ることにより、全ての作業を一つの真空容器内で済ますことができるようになり、省スペース化にも繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)~(d)は、各々、この出願の発明に従ったブリスターを用いた二次 元パターニングを説明するための図である。
【図2】(a)~(c)は、各々、実際に観測したSEM画像を例示した図である。
【図3】この出願の発明の別の一実施形態を例示した模式図である。
【図4】この出願の発明の別の一実施形態を例示した模式図である。
【図5】この出願の発明の別の一実施形態を例示した模式図である。
【図6】この出願の発明の別の一実施形態を例示した模式図である。
【図7】この出願の発明の別の一実施形態を例示した模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 基板
気体元素のイオン
3 ブリスター
4 酸化膜
5 電子線・イオン
6 酸化表面
7 清浄表面
8 Si
9 金属
10 蒸着
11 異種原子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6