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明細書 :多指ロボットハンドの制御方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4206305号 (P4206305)
公開番号 特開2005-014166 (P2005-014166A)
登録日 平成20年10月24日(2008.10.24)
発行日 平成21年1月7日(2009.1.7)
公開日 平成17年1月20日(2005.1.20)
発明の名称または考案の名称 多指ロボットハンドの制御方法及び装置
国際特許分類 B25J  13/00        (2006.01)
B25J  15/08        (2006.01)
FI B25J 13/00 Z
B25J 15/08 K
請求項の数または発明の数 5
全頁数 14
出願番号 特願2003-183586 (P2003-183586)
出願日 平成15年6月26日(2003.6.26)
審判番号 不服 2007-007926(P2007-007926/J1)
審査請求日 平成17年3月22日(2005.3.22)
審判請求日 平成19年3月19日(2007.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】星野 聖
個別代理人の代理人 【識別番号】100091443、【弁理士】、【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
参考文献・文献 特開平5-57637(JP,A)
特開平9-300251(JP,A)
特開平4-46778(JP,A)
特開平3-270886(JP,A)
特開平7-65168(JP,A)
星野聖、植山祐樹、谷本貴頒、佐藤智子、川渕一郎、廣池敦,見まねするロボットハンドの試作,信学技報,日本,社団法人電子情報通信学会,2003年11月14日
調査した分野 B25J 3/00
B25J13/00-13/08
特許請求の範囲 【請求項1】
関節角度を指示する関節角度指令値yに応じて動作するアクチュエータを備えたk個(kは正の整数)の関節を有する多指ロボットハンドを、操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じてn個(nはkより大きい正の整数)の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する方法であって、
前記k個の関節のためのk個の関節角度指令値yそれぞれについて、予め各関節角度指令値yと前記n個の出力信号xnとの間の対応関係を定める対応関係決定ステップと、
前記対応関係決定ステップで定めた前記対応関係と前記n個の出力信号xnとに基づいて前記k個の関節角度指令値yを求めて前記多指ロボットハンドを制御する制御ステップとからなり、
前記対応関係決定ステップは、
前記k個の関節にそれぞれ予め定めた時系列関節角度パターンに従って関節角度指令値を入力して前記多指ロボットハンドを動作させた状態において、前記多指ロボットハンドの動きに倣うように前記操作者に前記遠隔指令装置を操作させて前記n個の出力信号xnを時系列でm回(mはnより大きい正の整数)サンプリングするサンプリングステップと、
前記時系列関節角度パターンと、前記m回のサンプリングにより求めたm組の前記n個の出力信号xnとに基づいて重回帰分析を行い、前記k個の関節のそれぞれについて偏回帰係数を導出する偏回帰係数導出ステップと、
前記偏回帰係数導出ステップに基づいて定めた前記k個の関節毎の前記偏回帰係数を用いて、前記k個の関節毎の前記関節角度指令値yと前記n個の出力信号xnとの間の前記対応関係を定めるk個の重回帰式を決定する重回帰式決定ステップとからなり、
前記制御ステップでは、前記k個の重回帰式を前記対応関係として用いて、前記n個の出力信号xnを入力として前記k個の関節角度指令値yを求めて、前記多指ロボットハンドを、前記操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じて前記n個の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記偏回帰係数導出ステップでは、前記偏回帰係数を導出するために最小二乗法と特異値分解とを用いて前記重回帰分析を行って、前記多指ロボットハンドを、前記操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じて前記n個の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記遠隔指令装置がデータグローブである、前記多指ロボットハンドを、前記操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じて前記n個の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する方法。
【請求項4】
関節角度を指示する関節角度指令値yに応じて動作するアクチュエータを備えたk個(kは正の整数)の関節を有する多指ロボットハンドを、操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じてn個(nはkより大きい正の整数)の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて遠隔制御する多指ロボットハンドの制御装置であって、
前記k個の関節のためのk個の関節角度指令値yそれぞれについて、各関節角度指令値yと前記n個の出力信号xnとの間の対応関係を予め定める対応関係決定手段と、
前記対応関係決定手段が定めた前記対応関係と前記n個の出力信号xnとに基づいて前記k個の関節角度指令値yを求め、前記k個の関節角度指令値yを示す制御信号を前記多指ロボットハンドの前記k個の関節に出力する制御信号発生手段とからなり、
前記対応関係決定手段は、
前記k個の関節にそれぞれ予め定めた時系列関節角度パターンに従って関節角度指令値を入力して前記多指ロボットハンドを動作させた状態において、前記多指ロボットハンドの動きに倣うように前記操作者が前記遠隔指令装置を操作したときに前記n個の出力信号xnを時系列でm回(mはnより大きい正の整数)サンプリングするサンプリング手段と、
前記時系列関節角度パターンと、前記m回のサンプリングにより求めたm組の前記n個の出力信号xnとに基づいて重回帰分析を行い、前記k個の関節のそれぞれについて偏回帰係数を導出する偏回帰係数導出手段と、
前記偏回帰係数導出ステップに基づいて定めた前記k個の関節毎の前記偏回帰係数を用いて、前記k個の関節毎の前記関節角度指令値yと前記n個の出力信号xnとの間の前記対応関係を定めるk個の重回帰式を決定する重回帰式決定手段とを備えており、
前記制御信号発生手段は、前記k個の重回帰式を前記対応関係として用いて、前記n個の出力信号xnを入力として前記k個の関節角度指令値yを求め、前記多指ロボットハンドを、前記操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じて前記n個の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する装置
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記偏回帰係数導出手段は、前記偏回帰係数を導出するために最小二乗法と特異値分解とを用いて前記重回帰分析を行う、前記多指ロボットハンドを、前記操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じて前記n個の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する装置
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多指ロボットハンドの制御方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
見まね学習により、人動作をロボットに模倣させようとするときには、人の随意動作による多関節運動軌道を定量的に再現し、ロボットに運動を実現するための制御パラメータを与える必要がある。人腕の制御に関しては、最適化規範の観点から躍度最小モデル[T.Flash及びN.Hoganが“The coordination of arm movements: An experimentally confirmed matchcmatical model,”の名称で1985年発行の「Jurnal of Neuroscience,5」の1688~1703頁に発表した論文]、トルク変化最小モデル[Y.Uno,M.Kawato及びR.Suzukiが、“Formation and control of optimal trajectory in human multijoint arm movements - minimum torque - change model”の名称で1989年に「Biological Cybernetics,61」の第89~101頁に発表した論文]、反射運動の観点から複数の反射運動の組み合わせによるモデル[城間智大,星野聖が、“原始反射の運動解析と人型ロボットアームによる随意運動制御”の名称で2001年発行の「信学技報,vol.101, no.154」の第15~20頁に発表した論文]、[中村仁彦が、“反射行動の重ね合わせ理論とその多指ハンドの反射的把握動作への応用”の名称で1997年に「日本ロボット学会誌,vol.15,no.3」の第448~459頁に発表した論文]、また神経振動子の数学モデルを用いた運動生成モデル[Shinya Kotosaka及びStefan Schaalが、“神経振動子を用いたロボットのリズミックな運動生成”の名称で2001年発行の「日本ロボット学会誌,vol.19,no.5」の第580~583頁に発表した論文]などが提案されている。しかしながら従来は、ロボットハンドに見まね学習をさせる場合、重視すべき制御パラメータは人が決定しなければならなかった。またロボットハンドの多くは、特定の動作のみを目的としているために不必要な部位や自由度をカットされていたり、完全な人型多指ロボットハンドでも重量や大きさから人の手とは大きく異なってるため、個々の多指ロボットハンド毎に専用のデータグローブ等の遠隔操作装置を用意しなければならないのが現状である。
【0003】
本発明の目的は、遠隔操作装置の構成の如何に係らず各種の多指ロボットハンドを遠隔制御することを可能にした多指ロボットハンドの制御方法及び装置を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的は、自由度の数(入出力の数)が異なっていたり、データグローブのセンサの位置と多指ロボットハンドに設けられたアクチュエータの位置が異なっている場合においても、データグローブ等の遠隔操作装置により多指ロボットハンドを高速・高精度に遠隔制御することができる多指ロボットハンドの制御方法及び装置を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、データグローブ等の遠隔操作装置の出力の内容を問題とすることなくる多指ロボットハンドを制御することができる多指ロボットハンドの制御方法及び装置を提供することにある。
【0006】
本発明は、関節角度を指示する関節角度指令値yに応じて動作するアクチュエータを備えたk個(kは正の整数)の関節を有する多指ロボットハンドを、操作者の手に装着されて操作者の手の動きに応じてn個(nは正の整数)の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて制御する方法を改良の対象とする。本発明では、まずk個の関節のためのk個の関節角度指令値yそれぞれについて、予め各関節角度指令値yとn個の出力信号xnとの間の対応関係を定める対応関係決定ステップを実施する。そして対応関係決定ステップで定めた対応関係とn個の出力信号xnとに基づいてk個の関節角度指令値yを求めて多指ロボットハンドを制御する制御ステップを実施する。
【0007】
本発明においては、特に、対応関係決定ステップをサンプリングステップと、偏回帰係数導出ステップと重回帰式決定ステップとから構成する。サンプリングステップでは、k個の関節にそれぞれ予め定めた時系列関節角度パターンに従って関節角度指令値を入力して多指ロボットハンドを動作させた状態において、多指ロボットハンドの動きに倣うように操作者に遠隔指令装置を操作させる。そしてn個の出力信号xnを時系列でm回(mはnより大きい正の整数)サンプリングする。偏回帰係数導出ステップでは、時系列関節角度パターンと、m回のサンプリングにより求めたm組の前記n個の出力信号xnとに基づいて重回帰分析を行い、k個の関節のそれぞれについて偏回帰係数を導出する。そして重回帰式決定ステップでは、偏回帰係数導出ステップに基づいて定めたk個の関節毎の偏回帰係数を用いて、k個の関節毎の関節角度指令値yとn個の出力信号xnとの間の対応関係を定めるk個の重回帰式を決定する。制御ステップでは、k個の重回帰式を対応関係として用いて、n個の出力信号xnを入力としてk個の関節角度指令値yを求めて多指ロボットハンドを制御する。
【0008】
本発明によれば、遠隔操作指令装置を多指ロボットハンドの動きに合わせて動作させることにより、遠隔操作指令装置と多指ロボットハンドとの対応関係を求めることができ、遠隔操作装置の構成の如何に係らず各種の多指ロボットハンドを遠隔制御することができる。
【0009】
特に、偏回帰係数導出ステップで、偏回帰係数を導出するために最小二乗法と特異値分解とを用いて重回帰回分析を行うと、迅速にしかもより高い精度で偏回帰係数を求めることができるので、制御の速度と精度を高めることができる。
【0010】
なお遠隔指令装置としては、データグローブが好ましい。
【0011】
また関節角度を指示する関節角度指令値yに応じて動作するアクチュエータを備えたk個(kは正の整数)の関節を有する多指ロボットハンドを、操作者の手に装着されて前記操作者の手の動きに応じてn個(nは正の整数)の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を用いて遠隔制御する本発明の多指ロボットハンドの制御装置は、対応関係決定手段と制御信号発生手段とから構成される。対応関係決定手段は、k個の関節のためのk個の関節角度指令値yそれぞれについて、各関節角度指令値yとn個の出力信号xnとの間の対応関係を予め定めるように構成されている。
【0012】
本発明で用いる対応関係決定手段は、サンプリング手段と、偏回帰係数導出手段と、重回帰式決定手段とを備えている。サンプリング手段は、k個の関節にそれぞれ予め定めた時系列関節角度パターンに従って関節角度指令値を入力して多指ロボットハンドを動作させた状態において、多指ロボットハンドの動きに倣うように操作者が遠隔指令装置を操作したときにn個の出力信号xnを時系列でm回(mはnより大きい正の整数)サンプリングする。また偏回帰係数導出手段は、時系列関節角度パターンと、m回のサンプリングにより求めたm組のn個の出力信号xnとに基づいて重回帰分析を行い、k個の関節のそれぞれについて偏回帰係数を導出する。さらに重回帰式決定手段は、偏回帰係数導出手段が定めるk個の関節毎の偏回帰係数を用いて、k個の関節毎の関節角度指令値yとn個の出力信号xnとの間の対応関係を定めるk個の重回帰式を決定する。
【0013】
また制御信号発生手段は、対応関係決定手段が求めた対応関係とn個の出力信号xnとに基づいてk個の関節角度指令値yを求め、k個の関節角度指令値yを示す制御信号を多指ロボットハンドのk個の関節を駆動する駆動装置に出力するように構成されている。具体的に、制御信号発生手段は、k個の重回帰式を対応関係として用いて、n個の出力信号xnを入力としてk個の関節角度指令値yを求める。
【0014】
本発明の装置によれば、自動で遠隔操作指令装置と多指ロボットハンドとの対応関係を求めることができ、遠隔操作装置の構成の如何に拘わらず各種の多指ロボットハンドを簡単に遠隔制御することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。まず実施の形態で用いる多指ロボットハンドの機構について説明する。図1は、発明者等が開発した本実施の形態で制御の対象とする公知の多指ロボットハンド1の平面図であり、図2は図1のロボットハンドの内部に配置されたアクチュエータ2(エンコーダ内蔵型超小形モータ)の配置構成を示す図である。なおこの多指ロボットハンドの詳細は、特開2003-117873号公報に示されている。この多指ロボットハンド1の各関節の可動範囲は、親指の内外旋が120°であり、内外転が60°である。そして各5本指の屈曲、伸展は第2関節に連動して行われ、第2関節の可動範囲は112°であり、第1関節はその7/10倍、第3関節は5/7倍となっている。指の開閉は薬指に連動して、人指し指、小指が動き、中指は動かない。また薬指の開閉可動範囲は15°であり、人指し指はその-12.8/15倍であり、小指は31.3/1倍となっている。これらの構成によって、拇指と小指の接触が可能になり人の手指の可動域を十分に実現できている。
【0016】
各関節のアクチュエータ2には、DCマイクロモータを使用している。各指の第2関節、拇指の内外旋、内外転部位とアブダクション用に掌の内部にそれぞれアクチュエータ2が設置されている。各関節の制御は、図示しない制御用計算機からの指令を受けて動作し、内部にD/Aコンバータや、小型サーボモータ専用ドライバー(マイクロサーボ)が配置された駆動装置3を介して、各アクチュエータ2のモータにかける電圧を変化させることで行う。各アクチュエータ2のモータには、インクリメンタルシャフトエンコーダが内蔵されている。このエンコーダの出力は、軸速度、回転方向の検出の他に、位置制御に使用できる。各関節の角度情報は、ギヤを介して分解能を挙げたエンコーダを介して図示しない制御用計算機にフィードバックされる機構を持っている。エンコーダ自体の分解能は16[Pulse/Revolution]である。指の開閉部のエンコーダには減速比1/400のギアを介しており、換算分解能は6400[Pulse/Revolution]となる。その他のエンコーダには減速比1/50のギアを介しており、換算分解能は800[Pulse/Revolution]となる。
【0017】
多指ロボットハンドを有効に制御するためには、まず各アクチュエータの特性を把握しておく必要がある。そこで、ステップ状の入力指令(この場合アクチュエータ制御の指令電圧)をモータに与えて関節角度の応答特性を測った。結果の一例を図3(A)乃至(C)に示し、指令電圧と関節角速度の関係を図4に示す。これらのグラフにより、指令電圧に対する角速度の関係が線形であることがわかる。
【0018】
この関係から各指の制御関数に用いるために傾きaijと切片bijを求め以下の式を用いて制御関数とした。
【0019】
【数1】
JP0004206305B2_000002t.gif ここで、sgnは屈曲及び伸展時に1,-1の値をとる2値関数、V(t)は時刻tにおける各関節への指令電圧値、θd(t)は時系列角度指令値θの時刻tにおける目標角速度、iはロボットハンドの各関節に対応し、jは屈曲・進展の状態を表す。
【0020】
しかし、この式だけでは角速度の大きさにより慣性力がかかりオーバーシュートが発生する。そこで角加速度に比例して指令電圧値を抑制・促進させる項を加えのが下記の式である。
【0021】
【数2】
JP0004206305B2_000003t.gif 上記式において、f()は予備実験により得られた慣性力抑制のための関数で2次関数の式である。このようにして求めた制御関数を用いサイン波、FM変調波の時系列角度変化指令を入力したときの追従結果を図5及び図6に示す。図5はサイン波入力に対する追従性能を示し、図6はサインFM変調波入力に対する追従性能を示す。これらの結果から、ゆっくりとした動作から比較的早い動作、変調波に対しても良好な追従特性が得られることが分かる。
【0022】
図7は、遠隔指令装置として使用するデータグローブ4の一例の概略構成を示す図である。このデータグローブ4には、手袋形の本体の関節部分を中心にして約16箇所の位置に分散して位置センサが備えられた構成を有している。具体的には、Virtual technologies社製のcyberglove(商標)をデータグローブとして用いている。このデータグローブのセンサ5は、拇指を除く各指のMP(中手指節関節),PIP(近位指節間関節)に一つずつ、拇指にはMP、PIP、DIP(遠位節間関節)についており、また各指の間にあるアブダクションを計測するセンサーと掌の中央のセンサーとで計16ヶ所に設置されている各センサー5はそれぞれ歪曲(ひずみ)度を数値化して60~80Hzで出力する仕様を有している。掌の中央に設置されているセンサー5は掌全体の歪曲度を計測するものであり、対する人型ロボットハンドにはその機構は備わっていないため、この実施の形態では、この中央のセンサー5は使用しない。
【0023】
本実施の形態の多指ロボットハンド制御方法及び装置は、人の手指動作を操作者が手に装着したデータグローブによりデータ化し、これを計算機に取り込んで多指型ロボットハンドの制御指令値に変換し、データグローブを装着した操作者の手の動作と同様の動作をロボットハンドで実現させる。
【0024】
データグローブによるロボットハンドの制御法においてもっとも単純な方法としては、サイバーグローブから出力されるデータを3次元座標位置に変換しロボットハンドの関節と対になる部分の角度情報を時系列で取り出し、それをロボットハンドに実行させて、ロボットハンドを動作させるという手段がある。しかし、この方法を用いるとデータグローブの各センサーから出力される16個の値がそれぞれ各関節のX座標、Y座標、Z座標、ピッチ角、ヨー角、ロール角に変換され、一単位時刻あたり100ものデータが生成されることとなり、これからロボットハンドの動作に必要な8関節分のデータを抽出して使用することは計算効率や時間効率を考える面からも最適ではない。
【0025】
人手指は拇指を除く四指に至って、他の四指の影響を少なからず受ける。その特徴を定量的に表すこともこの制御方法及び装置において重要であると考える。そこでデータグローブで得られるデータからロボットハンド制御用の指令値への変換式に本発明の実施の形態では、重回帰式を用いる。
【0026】
ロボットハンドの各関節に対し重回帰式を立てるためにはまず重回帰分析を行い偏回帰係数を求める必要がある。そこで重回帰分析用のデータを取得するためにデータグローブ装着者は予め定めた時系列関節角度パターンに従って関節角度指令値を駆動装置3に入力して、ロボットハンドを動作させる。なお駆動装置3に指令を与える制御装置は、ロボットハンド1にあらかじめ重回帰分析に有効な動作を行わせる予め定めた時系列関節角度パターンの関節角度指令値を記憶している。そしてこのロボットハンドの動作に従い即ち倣って、データグローブを装着した操作者には、データグローブを装着した手において、指の屈伸、アブダクション等の動作を事前に行ってもらう。本発明では、このようにして計測したデータグローブ4の出力と計測に用いたロボットハンドの時系列関節角度パターンとを重回帰分析にかけ、各関節ごとの偏回帰係数を導き出す。下記の式は本実施の形態で用いる重回帰分析に用いる式である。
【0027】
【数3】
JP0004206305B2_000004t.gif 上記式において、f()の式は最小二乗法による重回帰分析を行う関数であり、y(t)はロボットハンドの時系列関節角度パターンであり、x(t),x(t),...,x(t)はデータグローブ4から出力された値であり、bnjは偏回帰係数、Cnは定数を示す。nはロボットハンドの各関節に対応し、関節数分8つの重回帰分析を行うことを意味する。
【0028】
ロボットハンド1の制御対象の各関節一つに対して下記式を立てる。
【0029】
【数4】
JP0004206305B2_000005t.gif ここで、説明変数xn,jにはデータグローブ4からの出力値、目的変数θjはロボットハンド1での制御対象となる関節各度の指令値である。上記式中のΣの上限値16は、データグローブ4のセンサの数である。この重回帰式で出される値はデータグローブ4での各指の関節角度の値であるので、この値をロボットハンドの角度指令値として制御を行えばよいことになる。
【0030】
本発明の多指ロボットハンドの制御装置の実施の形態の一例の概略構成を図8に示す。この実施の形態の制御装置では、関節角度を指示する関節角度指令値yに応じて動作するアクチュエータを備えたk個(kは正の整数)の関節を有する多指ロボットハンド1を制御するものとする。そしてデータグローブ4は、操作者の手に装着されて操作者の手の動きに応じてn個(nは正の整数)の出力信号xnを出力する遠隔指令装置を構成している。この多指ロボットハンドの制御装置は、対応関係決定手段6と制御信号発生手段7とを備えている。対応関係決定手段6は、k個の関節のためのk個の関節角度指令値yそれぞれについて、各関節角度指令値yとn個の出力信号xnとの間の対応関係を予め定めるように構成されている。具体的には、対応関係決定手段6は、時系列関節角度パターン記憶手段61と、サンプリング手段62と、偏回帰係数導出手段63と、重回帰式決定手段64とを備えている。
【0031】
サンプリング手段63は、k個の関節(実際にはアクチュエータ2)にそれぞれ予め定めた時系列関節角度パターン記憶手段61に記憶した時系列関節角度パターンに従って関節角度指令値を入力して多指ロボットハンド1を動作させた状態において、多指ロボットハンド1の動きに倣うように操作者がデータグローブ4を操作したときにn個の出力信号xnを時系列でm回(mはnより大きい正の整数)サンプリングする。サンプリング手段62はサンプリングを開始する前に時系列関節角度パターン記憶手段61に指令を与え、時系列関節角度パターン記憶手段61は駆動装置3に予め定めた関節角度指令値を出力する。なお時系列関節角度パターンは、N次元空間をまんべんなく動くような任意の関数指令を多指ロボットハンドの関節(アクチュエータ)に与えるように構成するのが好ましい。駆動手段3は、これを受けて多指ロボットハンド1を動作させる。
【0032】
偏回帰係数導出手段63は、時系列関節角度パターン記憶手段61に記憶した時系列関節角度パターンと、サンプリング手段62から出力されるm回のサンプリングにより求めたm組のn個の出力信号xnとに基づいて重回帰分析を行い、k個の関節のそれぞれについて偏回帰係数を導出する。
【0033】
重回帰式決定手段64、偏回帰係数導出手段63が定めたk個の関節毎の偏回帰係数を用いて、k個の関節毎の関節角度指令値yとn個の出力信号xnとの間の対応関係を定めるk個の重回帰式を決定する。
【0034】
そして制御信号発生手段7は、対応関係決定手段6の重回帰式決定手段64が求めた対応関係とn個の出力信号xnとに基づいて、k個の関節角度指令値yを求め、k個の関節角度指令値yを示す制御信号を多指ロボットハンドのk個の関節を駆動するための駆動装置3に出力するように構成されている。この制御信号発生手段7は、重回帰式決定手段64が求めたk個の重回帰式を対応関係として用い、n個の出力信号xnを入力としてk個の関節角度指令値yを求める。
【0035】
重回帰式決定手段64で決定するデータグローブ4の出力と多指ロボットハンド1の関節角度との対応を示す重回帰式は以下のようの形で記述することもできる。
【0036】
【数5】
JP0004206305B2_000006t.gif 上記式においてHANDは、多指ロボットハンドのk番目の関節値,は残差、aはi番目のデータグローブ出力にかかる偏回帰係数、GLOVEはi自由度のデータグローブ出力、mは測定回数である。また上記式中のΣの上限値16は、データグローブ4のセンサの数である。なお上記式を用いる場合には、行が列より大きくなり(m>i)、優決定となる。そのため特異値分解を用いて最適解としての偏回帰係数を求めることが好ましい。
【0037】
図9は、図8の対応関係決定手段6の主要部をコンピュータを用いて実現する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。まずステップST1では、データグローブ4と時系列関節角度パターンのデータ対を獲得する。即ち多指ロボットハンド1の各関節可動域をまんべんなく動かすような関数を多指ロボットハンド1に与えて駆動し、多指ロボットハンド1に合わせて操作者の手指も同じ動作を行う。多指ロボットハンド1のある関節角度または関節角度指令値をy(時系列関節角度パターンに従って与えられる値)とし、n個のデータグローブ出力をn(サンプリング値)とすると,次式のように時刻1~mまでの時系列データが得られる。
【0038】
【数6】
JP0004206305B2_000007t.gif ただし上記式において、m>nである。また前提として,xにはシステム雑音,量子化誤差などの雑音が含まれるものとする。
【0039】
次にステップST2進んで、データ対をベクトルと行列の形式で表現すると、y=[H]xのように表現することができる。ただしこの式におけるy、x及び[H]は下記の通りである。
【0040】
【数7】
JP0004206305B2_000008t.gif 次にステップST3で、最小二乗法による解xの推定を開始する。この推定の過程において、偏回帰係数が求められる。最小二乗法に用いる式は以下の式である。
【0041】
【数8】
JP0004206305B2_000009t.gif 次にステップST4から、ヤコビ法による([H][H])の計算を開始する。すなわち直交行列Pを使って([H][H])(=[A])を簡単な形の類似行列[B]に変換する。言い換えれば、すなわち,[P]-1[A][P]=[B]を計算する.
次にステップST5で、行列[A]の非対角要素のうちの絶対値最大のものakl(=alk)を選ぶ。そして次にステップST6において、akk=all=cosθ、akl=-sinθ、alk=sinθとする単位行列[P]を作る。
【0042】
次にステップST7へと進んでcとθの値を決定する。θは、下記の行列により求める。
【0043】
【数9】
JP0004206305B2_000010t.gif ただし、上記式においてk<lである。
【0044】
次にステップST8へと進んで、[P][A][P]を計算して新しい[A]とする。次にステップST9で、行列[P]の積から固有ベクトルVを下記の式で求める。
【0045】
【数10】
JP0004206305B2_000011t.gif ただし、上記式において[P](N)はN回目の変換に用いた行列[P]である。
【0046】
次にステップST10へと進み、[A]のどの非対角要素も収束条件<0.0001なら終了し、そうでなければステップST5へと戻る。ここで行列[B]の対角要素が固有値となる。+
次にステップST11へと進んで解に含まれる雑音を抑制する。ステップST12では、固有値(λ12,・・・λn)を(1/(λ1+υ),1/(λ2+υ),・・・1/(λn+υ))と置き換えて逆行列([H]t[H])-1を求める。
【0047】
但し([H]t[H])-1 =[U][A]-1[U]t である。またベクトルuは[H]t[H]の固有ベクトルである。また[U]=[u1,u2,・・・uN]である。更に[A]-1 は下記のように表される。
【0048】
【数11】
JP0004206305B2_000012t.gif そしてステップST13で最小二乗法による解xの推定を終了する。
【0049】
上記フローチャートのアルゴリズムに従えば、偏回帰係数を導出するために最小二乗法と特異値分解とを用いて重回帰分析を行うことになる。なお上記ステップST4~ST10までが特異値分解を実施しているステップである。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、遠隔操作指令装置を多指ロボットハンドの動きに合わせて動作させることにより、遠隔操作指令装置と多指ロボットハンドとの対応関係を求めることができ、遠隔操作装置の構成の如何に係らず各種の多指ロボットハンドを遠隔制御することができる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明者等が開発した本実施の形態で制御の対象とする公知の多指ロボットハンド1の平面図である。
【図2】 図1のロボットハンドの内部に配置されたアクチュエータの配置構成を示す図である。
【図3】 (A)乃至(C)は、ステップ状の入力指令をモータに与えて関節角度の応答特性を測った結果の一例を示す図である。
【図4】 指令電圧と関節角速度の関係を示す図である。
【図5】 サイン波入力に対する追従性能を示す図である。
【図6】 サインFM変調波入力に対する追従性能を示す図である。
【図7】 遠隔指令装置として使用するデータグローブの一例の概略構成を示す図である。
【図8】 多指ロボットハンドの制御装置の実施の形態の一例の概略構成を示す図である。
【図9】 図8の対応関係決定手段の主要部をコンピュータを用いて実現する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 多指ロボットハンド
2 アクチュエータ
3 駆動装置
4 データグローブ
5 センサー
6 対応関係決定手段
7 制御信号発生手段
61 時系列関節角度パターン記憶手段
62 サンプリング手段
63 偏回帰係数導出手段
64 重回帰式決定手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8