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明細書 :超微細パターン転写用Zr-Cu系金属ガラス合金製金型及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4372667号 (P4372667)
公開番号 特開2006-147727 (P2006-147727A)
登録日 平成21年9月11日(2009.9.11)
発行日 平成21年11月25日(2009.11.25)
公開日 平成18年6月8日(2006.6.8)
発明の名称または考案の名称 超微細パターン転写用Zr-Cu系金属ガラス合金製金型及びその製造方法
国際特許分類 H01L  21/027       (2006.01)
B81C   5/00        (2006.01)
G11B   7/26        (2006.01)
FI H01L 21/30 502D
B81C 5/00
G11B 7/26 511
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2004-333765 (P2004-333765)
出願日 平成16年11月17日(2004.11.17)
審査請求日 平成18年8月9日(2006.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】井上 明久
【氏名】シャルマ パルマナンド
【氏名】木村 久道
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】佐藤 秀樹
参考文献・文献 特開2000-322780(JP,A)
特開2003-160343(JP,A)
特開平11-288527(JP,A)
特開平09-134549(JP,A)
特開昭63-119039(JP,A)
特開2002-230849(JP,A)
特開2002-326825(JP,A)
特開2005-121730(JP,A)
Jia Zhang, et.al.,Effect of pressure on crystallization process of Zr55Al10Ni5Cu30 bulk metallic glass,MATERIALS LETTERS,2004年 3月,Vol.58,No.7/8,p.1379-1382
Makoto TAKAGI, et.al.,Nanocrystallization of Zr55Al10Ni5Cu30 Bulk Metallic Glass Composites Containing ZrC Particles,愛知工業大学総合技術研究所研究報告,2001年 6月30日,No.3,p.45-49
調査した分野 H01L 21/027
B29C 33/00-33/76,39/26-39/36,
41/38-41/44,43/36-43/42,
43/50,45/26-45/44,45/64-
45/68,45/73,49/48-49/56,
49/70,51/30-51/40,51/44
G11B 7/26

JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
スパッタ法により基体上に形成された、組成が原子%でZr50~65%、Cu30~3
2%、Al5~20%、Ni0~9%で、硬度がHv900以上のZr-Cu系金属ガラス合
金薄膜に、集束イオンビーム描画法によりにより加工された状態で線幅又はドット径が2
0nm以下であるナノスケールの寸法の500GB以上の高密度記録用光ディスク製造用
の情報ピットパターンが形成されていることを特徴とする、光ディスク製造用金属スタン
パーの原盤として用いられる超微細パターン転写用金型。
【請求項2】
該パターンの線幅をW、長さをL、深さをDとした場合、アスペクト比RW=D/W、ア
スペクト比RL=D/Lが5以上であることを特徴とする請求項1記載の超微細パターン
転写用金型。
【請求項3】
スパッタ法により基体上に形成された、組成が原子%でZr50~65%、Cu30~3
2%、Al5~20%、Ni0~9%で、硬度がHv900以上のZr-Cu系金属ガラス合
金薄膜に、集束イオンビーム描画法によりにより加工された状態で線幅又はドット径が2
0nm以下であるナノスケールの寸法のパターンが形成されていることを特徴とする、
ノ・インプリント金型として用いられる超微細パターン転写用金型。
【請求項4】
組成が原子%でZr50~65%、Cu30~32%、Al5~20%、Ni0~9%で
、硬度がHv900以上のZr-Cu系金属ガラス合金薄膜をrfマグネトロン・スパッタリ
ング法により基体上に形成し、該薄膜をマスクレス集束イオンビーム描画法により加工し
て、ワンステップの加工で線幅又はドット径が20nm以下であるナノスケールの寸法の
パターンを形成することを特徴とする請求項1又は3記載の超微細パターン転写用金型の
製造方法。
【請求項5】
請求項記載の金型を、熱硬化性樹脂膜、結晶性金属膜、金属ガラス合金膜又は半導体膜
にプレスすることにより超微細パターンを該膜に転写することを特徴とするナノ・インプ
リント方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ピットパターンを形成した原盤(原型)又はナノ・インプリント(nano-impri
nting;ナノ刻印)金型(モールド)などとして用いられるナノスケール寸法の超微細パタ
ーン転写用Zr-Cu系金属ガラス合金製金型及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの寸法の超微細パターンの転写技術で急速な進歩が見られる分野は光ディス
クなどの情報記録媒体の分野である。光ディスクはガラス基板に形成されたレジストにレ
ーザー光を選択的にスポット露光して、その後レジストを現像して所定のピットパターン
を形成し、原盤が得られる。この原盤を導体化処理し、ニッケル等の金属の電鋳メッキを
行って得られた金属膜を原盤から剥離して金属スタンパーが得られる。この金属スタンパ
ーを樹脂にプレスしてピットパターンを転写して光ディスクが得られる。
【0003】
本発明者らは、シリコン基板にピットパターンを形成した原盤を過冷却液体状態に保った
金属ガラス合金に押圧して成型転写面を形成して金属ガラス合金スタンパーを形成する方
法及び該スタンパーを用いて製造した金属ガラス合金からなる情報記録ディスクの発明に
ついて特許出願している(特許文献1)。
【0004】
光ディスクのような情報記録分野以外にも、マイクロ又はナノ・電子機械システム(MEMS/
NEMS)は未来のナノテクノロジーのベースである。何故なら、これらは電子回路を持つミ
ニチュアセンサーやアクチエーターと深く結びついているからである。
【0005】
過去数十年にわたって最も成功したパターニングの技術は光リソグラフィーであった。半
導体集積回路などの分野において100nm領域の精度特性はより手の込んだ費用のかか
る製作装置を煩わして達成された。通常の転写リソグラフィーは極限に達したので、電子
ビームやスキャニングプローブ、ディップペン(Dip Pen)ナノリソグラフフィー(DPN)、
そしてナノ・インプリント・リソグラフィー(NIL)の様な次世代リソグラフィーは更なる
パターンの縮小の手段になり得る。
【0006】
NILは、従来のリソグラフィー法を利用して微細構造を形成した金型を基板上の樹脂薄膜
にプレスすることによって微細構造を樹脂薄膜に転写成型する方法であり、大容量光ディ
スクや電極ドットアレーなどの製造に応用されている。この方法によって、数十nmから
数千nmの溝幅又は直径、パターン深さ数十nm~数百nmの凹凸やドット構造を樹脂薄
膜に転写できる。
【0007】
NILは、これからのナノ構造物又はナノ装置の作製に最も約束されたテクノロジーの一つ
である。何故なら、優れた精度を持ち、高いスループットを持ち、その上、簡単で費用の
かからないプロセスだからである。
【0008】
NILにおいては、図5に模式的に示すように、硬い無機材料の金型1(ダイともいう)を
基板2上に形成した塑性変形可能な樹脂3へ加圧した状態で樹脂を硬化させた後離型する
ことにより樹脂表面に金型のパターンを転写した製品を得るものである。NILは、樹脂の
硬化の方式の違いにより図5(A)に示す熱硬化式(熱ナノ・インプリント)と図5(B
)に示す光硬化式(光ナノ・インプリント)に別けられる。
【0009】
熱ナノ・インプリント用の金型材料としては、シリコン、炭化珪素、タンタル金属が報告
されている。また、光ナノ・インプリント用の金型材料としては、光透過性の合成石英が
報告されている。これらの金型材料の表面に、通常、電子線描画法(EB)によりパターン
を描画し、これを結晶異方性エッチングすることにより微細溝などを作製している。例え
ば、シリコンを金型として用いたナノ・インプリントで40nmのパターンを形成できる
ことが報告されている(非特許文献1)。
【0010】
また、金型を金、アルミニウム、チタンなどの金属薄膜や半導体基板などに直接プレスし
て金型の微細凹凸パターンを直接インプリントする方法も知られている(例えば、特許文
献2、非特許文献2)。この方法に使用する金型材料としては、Si,SiC、Si34
、金属炭化物、DLCなどを用い、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチング(REI
)で微細パターンを形成している。
【0011】
電子銃の代わりに液体金属イオン源を用いるイオンビームによるナノ加工技術も利用され
ている。光ディスクの高密度化を図るためには、露光波長を短波長化することが必要にな
る。露光源として電子線を使用すると解像度を約0.01μm~0.1μmにすることが
できるが、さらに集束イオンビームを用いて露光を行うと0.1μm以下の微細パターン
を形成できる。集束イオンビームを合成石英ガラスやシリコン基板に照射して基板をエッ
チングすることによりパターンを形成して記録媒体製造用原盤を作製することができる(
特許文献3)。
【0012】

【特許文献1】特開2000-322780号公報
【特許文献2】特開2004-268170号公報
【特許文献3】特開平11-288527号公報
【非特許文献1】C.M.Park et al.,Journal of the Korean Physical Society,Vol.39,No.1,July 2001,pp.157~159
【非特許文献2】J.Vac.Sci.Technol.B,Vol.16,1998,pp.1145~1149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
光ディスクの高記録密度化に伴い情報ピット等の凹凸パターンの微細化が進み、100n
m以下の寸法(線幅、ドット径)が実現している。このような微細化は、電子線描画技術
、及び反応性イオンエッチング技術によって微細パターン金型を製作することによって可
能になっている。また、集束イオンビーム加工による微細パターン金型の製作法も開発さ
れつつある。これらの方法では従来数十nmの寸法の形成が可能になっているが、凹凸パ
ターンの均一性や耐久性、被加工材料への転写性などが十分でなく、金属薄膜などへのナ
ノ・インプリントでは基板や薄膜に損傷を生じる。このため、凹凸パターンの付加的加工
や金型の表面処理などが工夫されているが、パターンの寸法がさらに小さくなり、ピッチ
も100nm以下程度に狭くなる製品では、これらの問題はさらに大きくなり数mmから
数cm角の面積のパターニングエリアで微細凹凸構造を高い均一性で刻印転写できる金型
の実現は困難であった。
【0014】
本発明は、従来よりもさらに微細で高精度のパターンを有する耐久性、転写性等に優れ、
曲面構造や積層構造などの複雑な金型形状の製作も容易な金型の提供、例えば、次々世代
光ディスクといわれる500GBの情報を記録できる光ディスクの製造を可能にする金型
を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、これまでガラス遷移温度を持つ非晶質合金と定義される「金属ガラス合金
」を数多く開発してきた。金属ガラス合金は、従来の非晶質合金では見られない過冷却液
体領域ΔTx(=結晶化開始温度Tx以下、ガラス転移点温度Tg以上の温度範囲)を有
し、温度がTgを超えると酸化物ガラスと同様に温度に比例して粘性が低下するので過冷
却液体状態の温度範囲で樹脂と同様な成形性で一様に変形させることができる性質を有し
ている。この性質を利用して、金属ガラス合金は、これまでに、ゴルフクラブの部品、装
飾品、筆記用具、プリント用具、ばね、医療器具、機械のギア、ロボットの部品、又はマ
イクロマシ等の製造に応用されている。
【0016】
数ある金属ガラス合金の中でZr-Cu系金属ガラス合金は、金属ガラス生成能が大きく
、しかも、酸化にも強い。材料費の安いことや反応性が低く、人体に害の無い元素構成は
この系の実際の応用面で重要なファクターになっている。しかし、これまでZr-Cu系
金属ガラス合金に関する研究開発は全てバルク材料の製造と過冷却液体領域での塑性加工
に焦点を当てたもので半導体工業の色々な応用からほど遠かった。
【0017】
金型の作製とその材料はNILで重要な研究課題である。従来報告されている金型材料は自
然には結晶であり、格子歪みや異方性、結晶粒と結晶粒界を持つ。デバイスのサイズが数
十nmに近づくとこれらの効果がより一層効いてくる。そこで、ナノ・ファブリケィショ
ン・テクノロジー(NFT)で更なる開発のためにはサイズ効果のない、しかもナノ・機械特
性の良い材料が必要になる。
【0018】
本発明者は、Zr-Cu系金属ガラス合金がマスクレス集束イオンビーム(FIB)描画法で
極めて線(凹部)幅の狭いパターンを鮮明な輪郭で描画できる特性を有しており、従来の
リソグラフィーでは超えることの出来なかった線幅25nmを超えてはるかに線幅の小さ
い12nm幅まで集束イオンビームにより加工された状態で到達でき、線幅20nm以下
の超微細パターンを熱硬化性樹脂膜、アルミニウムやチタンなどの結晶性金属膜、金属ガ
ラス合金膜、半導体膜などに高精度に形成でき、上記の課題を解決できることを見出した
。従来、このような金属ガラス合金を用いたμmレベルの微細加工の試みはなされている
が、それよりはるかに微細な20nm~10nmレベルの超微細パターン転写用の金型と
してこのような非鉄合金系材料を適用し得ることの知見は本発明者によって初めてもたら
された。
【0019】
また、本発明者は、Zr-Cu-Al-Ni系のスパッタリング法で基体上に形成した金
属ガラス合金薄膜が高硬度と極めて平滑な表面を有しており、かつマスクレス集束イオン
ビーム(FIB)描画法で極めて線幅の狭いパターンを鮮明な輪郭で描画できる特性を有して
いることを見出した。
【0020】
すなわち、本発明は、(1)スパッタ法により基体上に形成された、組成が原子%でZr
50~65%、Cu30~32%、Al5~20%、Ni0~9%で、硬度がHv900以上
のZr-Cu系金属ガラス合金薄膜に、集束イオンビーム描画法によりにより加工された
状態で線幅又はドット径が20nm以下であるナノスケールの寸法の500GB以上の高
密度記録用光ディスク製造用の情報ピットパターンが形成されていることを特徴とする
光ディスク製造用金属スタンパーの原盤として用いられる超微細パターン転写用金型、で
ある。
また、本発明は、(2)該パターンの線幅をW、長さをL、深さをDとした場合、アスペ
クト比RW=D/W、アスペクト比RL=D/Lが5以上であることを特徴とする上記(1
)の超微細パターン転写用金型、である。
また、本発明は、(3)スパッタ法により基体上に形成された、組成が原子%でZr50
~65%、Cu30~32%、Al5~20%、Ni0~9%で、硬度がHv900以上のZ
r-Cu系金属ガラス合金薄膜に、集束イオンビーム描画法によりにより加工された状態
で線幅又はドット径が20nm以下であるナノスケールの寸法のパターンが形成されてい
ることを特徴とする、ナノ・インプリント金型として用いられる超微細パターン転写用金
型、である。
また、本発明は、(4)組成が原子%でZr50~65%、Cu30~32%、Al5~
20%、Ni0~9%で、硬度がHv900以上のZr-Cu系金属ガラス合金薄膜をrfマ
グネトロン・スパッタリング法により基体上に形成し、該薄膜をマスクレス集束イオンビ
ーム描画法により加工して、ワンステップの加工で線幅又はドット径が20nm以下であ
るナノスケールの寸法のパターンを形成することを特徴とする上記(1)又は(3)の超
微細パターン転写用金型の製造方法、である。
また、本発明は、()上記(3)の金型を、熱硬化性樹脂膜、結晶性金属膜、金属ガラ
ス合金膜又は半導体膜にプレスすることにより超微細パターンを該膜に転写することを特
徴とするナノ・インプリント方法、である。
【発明の効果】
【0021】
ナノレベルのパターンの転写は、微細パターン金型をどのようにして製作するかが重要な
ポイントである。樹脂、半導体、ガラス、金属などを被加工材料とするナノ・インプリン
ト用金型の材料としては、微細構造の成型加工性のほか、強度、硬度、熱膨張率、微細形
状転写性、離型性等が問題となる。また、微細形状転写性が良い材料ほど金型と材料のな
じみ性がよく、金型表面のわずかな凹凸によっても金型と被加工材料との離型性が悪くな
る問題があった。本発明は、金属ガラス合金材料を用いて、これらの特性を兼ね備え、特
に高強度、高硬度で表面平滑性が優れ、20nm以下の線幅やドット径の形成が容易な金
型の実現に成功したものであり、超微細加工技術の発展に寄与するところ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
Zr-Cu系金属ガラス合金の代表的な組成としては、Zr-Cu-Ti系(Zr40Cu
50Ti10など)、Zr-Cu-Al系(Zr75Cu19l6など)、Zr-Cu-Al-N
i系(Zr65Cu17.5Al7.5Ni10など),Zr-Cu-Ti-Y系(Zr40Cu50
55など)、Zr-Cu-Al-Ni-(Ti,Nb,Pd)系(Zr63Cu25Al5
Ni5Ti2)などが報告されている(V.V.Molokanov et al.,Journal of Non-Crystallin
e Solids 205-207(1996)508-513、秦 誠一ら、精密工学会誌、Vol.67,No.10,2001,pp.170
8-1713、特開2000-129378号公報)。これらの金属ガラスは銅鋳型鋳造によりバルク状の
ものが得られる。また、スパッタリング法で薄膜を得ることもできる。
【0023】
非晶質相を得ることのできる臨界冷却速度は、Fe-B、Fe-Si-B、Ni-Si-
B、Co-Si-B系では、105~106K/秒、Pt-Ni-P、Pd-Si系では、
103~104K/秒であるのに対して、Zr-Cu系では103K/秒未満であり102
/秒未満でも非晶質相を得ることができるので銅鋳型鋳造で容易にバルク状の金属ガラス
を製作することができる。
【0024】
Zr-Cu系金属ガラス合金は、数ある有効なパターニング手法の中で、パターン・レイ
アウトの高い精度と自由度を兼ね備えている集束イオンビームを用いてマスクレスで素早
く、しかも、Si基材料で作成された多段ステップの加工が要請される従来の金型と比較
してワンステップの加工で20nm以下の線幅又はドット径のパターンを形成することが
できることが分かった。
【0025】
Zr-Cu系金属ガラス合金は、硬い表面を持ち、腐食に強く摩耗に強い性質を有する。
さらに、優れた離型性を有し、金型の表面処理が不要である。強度や成形性に優れている
ので、過冷却液体領域において曲面構造や多層構造を容易に形成できる。したがって、微
細パターンの形成前又は形成後に所望の表面構造に塑性変形加工をすることができる。
【0026】
また、Zr-Cu系金属ガラス合金は、低スパッタリングガス圧力下でのrfマグネトロ
ン・スパッタリングにより基体上に厚み3~5μm程度の薄膜として形成することができ
る。得られた薄膜は表面が滑らかで、高硬度である。
【0027】
例えば、rfマグネトロン・スパッタリングにより基体上に形成したZr-Cu-Al-
Ni系金属ガラスとして、例えば、Zr55Cu30Al10Ni5組成の薄膜は、金属ガラス
形成能が特に大きく、ΔTxは95K以上であり、薄膜の表面は原子レベルで平滑であり
(表面粗さRa=約0.65nm)、電場勾配のない表面となっており、最も幅の狭い線を描くこ
とができる。さらに、硬度は銅鋳型鋳造したバルク材よりもかなり大きく高硬度(Hv約90
0以上)が得られ、摩擦に非常に強いことから高密度メモリの材料や集積回路への応用も
適用可能である。また、膜の熱膨張率はガラス状態で約1.0×10-5/K、過冷却状態
で、約18×10-5/Kである。Zr-Cu-Al-Ni系金属ガラスを得るための好ま
しい組成範囲は原子%でZr50~65%、Cu30~32%、Al5~20%、Ni0
~9%程度である。
【0028】
集束イオンビーム(FIB)描画法は、電子ビーム加工の電子銃の代わりに液体金属イオン源
を用いることによって微細なイオンビームを発生させ、この液体金属イオン源を用いて加
工する方法である。特に、ガリウムイオン源は、電圧をかけたときに理想的な円錐状のイ
オン源形状を形成して10nm程度の安定した点光源を提供できる。このイオンビームを
用いた微細構造物の製造方法としてはレジスト膜を用いたリソグラフィ法とレジスト膜
を用いないマスクレスの直接加工方法とがある。
【0029】
レジストを用いないことによりレジストの感度等に影響されることなく微細パターンを精
度良く形成することができる。光ディスクでは、凹凸パターンの線幅W、長さL 深さD
とした場合、アスペクト比RW=D/W、アスペクト比RL=D/Lが1以上であることが
好ましいとされるが、集束イオンビーム描画法で製作した本発明の金型によれば、1以上
、より好ましくは5以上の高いアスペクト比の凹凸構造、穴構造を形成できる。また、マ
スクレス集束イオンビーム描画法では、レジストの塗布工程、現像工程が不要になる。
【0030】
このようにして超微細パターンを形成した金型はそのまま、ナノ・インプリント用の金型
として使用できる。また、従来の合成石英基板やシリコン基板を用いて原盤を作製し、こ
れに電鋳メッキしてマスターを製造する場合は、原盤を導体化処理する必要があったが、
本発明では、Zr-Cu系金属ガラス合金は良導体であるので導体化処理は不要となる。
【0031】
上記方法で製作された金型は従来の電鋳用の原盤やナノ・インプリント用金型として使用
される。原盤として用いて光ディスク製造用のマスターを製作すれば、50GB以上の高
密度記録媒体はもとより次々世代の光ディスクとして必要な500GB以上の高密度記録
媒体を製造することもできる。さらに、ナノ技術分野では、生分解性樹脂を用いたドラッ
グデリバリーチップ、カーボンナノワイヤやナノチューブを成長させる100nm以下の
微小細孔を開けた構造体、微細孔に金属、半導体、電界発光体を充填したハイブリッド素
子膜なども提案されているが、本発明のナノ・インプリント用金型はこれらの用途にも適
用できる。
【0032】
Zr-Cu系金属ガラス合金は過冷却液体領域で粘性流動を示すので、Zr-Cu-Al
-Ni系金属ガラス合金薄膜で3Dパターンを作られた硬いナノ・金型は、これよりも低い
ガラス転移温度を持つ金属ガラス合金(例えば、Pd76Cu7Si17;Tg=637K、T
x=669K、ΔTx32K、Hv515)を被加工材料として、金型のガラス転移温度
範囲重複しない被加工材料のガラス転移温度範囲の温度に被加工材料を加熱した状態で
プレスすることにより被加工材料の粘性流動状態で被加工材料に3Dパターンを作成するの
に使用出来る。
【実施例1】
【0033】
Zr、Cu、Al、及びNiの純金属(99.99%)をZr55Cu30Al10Ni5に相当する
量秤量して、アルゴン雰囲気下で水冷したダイの中でアーク溶解した。ターゲット中の元
素分布が一様になるように繰り返しアーク熔解した後、鋳造して直径80mm、厚み5m
mのターゲットを製作した。エネルギー分散スペクトルスコピー(EDS)でターゲットの異
なる場所の成分分析を行った。平均成分はZr54.6Cu31.0Al9.3Ni5.1(at%)であり、
仕込み量とほぼ一致していた。X線回折によると溶解鋳造したままのスパッタリングター
ゲットは自然の結晶の回折線が現れた。
【0034】
rfマグネトロン・スッパタリング装置により、このターゲットを用いて、Arガス雰囲
気中でスパッタ圧0.4Pa、rf出力150Wで石英(SiO2)基板上に厚み約4.5μm
の薄膜を析出させた。スパッタリング速度は約26nm/分であった。薄膜の組成はZr
48.4Cu31.2Al11.6Ni8.7であった。得られた薄膜は、ガラス遷移温度(Tg)が約
693K、結晶化温度(Tx)が約788Kで95Kもの大きな過冷却液体領域(ΔTx)
を示した。この値はバルク試料のZr55Cu30Al10Ni5金属ガラス合金の値に近い。
【0035】
得られた金属ガラス合金薄膜は原子レベルで滑らかな表面(Ra約0.65nm)を示し、ビッカー
ス硬さはHv940(インデンター角65.30度のUMISナノインデンター使用、最大荷重15.
00mN)であった。この値は、バルクZr-Cu-Al-Ni金属ガラス合金のビッカース
硬さ(550)よりかなり大きい。
【0036】
イオンビームエッチング装置(日立製作所製(FB-2100)を用いて、得られた薄膜にマスク
レスでパターンを形成した。アクセル電圧は40keV、エミッション電流は3.2μA
、デュエルタイムは3~4μsとした。
(比較例1)
【0037】
比較のために実施例1と同じ条件でPt薄膜にパターンを形成した。
【0038】
実施例1と比較例1で生成したパターンは装置の二次イオンイメージング能力を用いてF
IBコラム内でその場観察を行った。図1及び図2に、原子間力顕微鏡(AFM)及びスキャ
ニング電子顕微鏡(SEM)を用いて得られたパターンの二次元又は三次元イメージ(2D/3D)
を示す。
【0039】
AFMで測定して、ナノメータからマイクロメータの線幅を持ち、150nmのパターン
深さを持っている沢山のテスト構造を作製した。図1は、比較例1のPt薄膜(a)及び
実施例1のZr-Cu-Al-Ni金属ガラス合金薄膜(b)にFIB製作されたパター
ンのSEM像を示す。
【0040】
図1(a)及び(b)から材料のパターニング能力に対する結晶性(結晶粒)の影響がわ
かる。結晶粒及び結晶粒界の存在による不均一なエッチングを示す結晶性薄膜(a)に対
比して、完全に非晶質の金属ガラス合金薄膜(b)では膜表面の滑らかなエッチングが観
測された。図1(c)は、試料を傾けて得られた像であり、Zr-Cu-Al-Ni金属
ガラス合金薄膜のナノメータ範囲での2D/3D(像中に鋭いエッジが見られる)パター
ニング能力を示す。
【0041】
図2(a)に示すように、最も安定したビーム条件で矢印で示す12nmの線幅を書き込
むことが出来た。図2(b)は、繰り返し書き込みできた17nm程度の線幅のパターン
のAFM分析を示す。図2(c)及び(d)は、それぞれナノサイズの文字(LAM)を描
画したAFM像及び薄膜に作成されたマイクロモールドの3D像を示す。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、従来の金型よりも高精細な解像度20nm以下の超微細パターンを樹脂、
半導体、ガラス、金属などの被加工材料に形成できるスタンパー製造用原盤として、又は
ナノ・インプリント用金型として使用される金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】Pt薄膜(a)及び金属ガラス合金薄膜(b)上にFIB製作されたパターンのSEM像、及び、金属ガラス合金薄膜のナノメータ範囲における2D/3Dパターン形成能力を示す、試料を傾けて得られた像(c)の図面代用写真。
【図2】Zr-Cu-Al-Ni金属ガラス合金薄膜上に製作されたパターンのFIBで其の場観察した像(a)、線(凹部)幅約17nmのパターンを示す該像のAFM分析像(b)、FIBで書いたナノスケールの寸法の文字のAFM像(c)、超微細パターン転写用金型の3D像(d)を示す図面代用写真である。
【図3】熱ナノ・インプリント法(A)と光ナノ・インプリント法(B)の概念を示す模式図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2