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明細書 :生分解期間が制御されたポリ乳酸系樹脂成形体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3783199号 (P3783199)
公開番号 特開2001-329082 (P2001-329082A)
登録日 平成18年3月24日(2006.3.24)
発行日 平成18年6月7日(2006.6.7)
公開日 平成13年11月27日(2001.11.27)
発明の名称または考案の名称 生分解期間が制御されたポリ乳酸系樹脂成形体及びその製造方法
国際特許分類 C08J   7/00        (2006.01)
FI C08J 7/00 303
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2000-155174 (P2000-155174)
出願日 平成12年5月25日(2000.5.25)
審査請求日 平成17年4月11日(2005.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】大澤 敏
【氏名】小川 俊夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100101960、【弁理士】、【氏名又は名称】服部 平八
審査官 【審査官】森川 聡
参考文献・文献 特開2000-103885(JP,A)
調査した分野 C08J 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂成型体をコロナ放電処理し表面層の化学構造を改変することを特徴とする生分解期間が制御されたポリ乳酸系樹脂成型体の製造方法。
【請求項2】
コロナ放電処理の放電量が200~000Wであることを特徴とする請求項1記載の生分解期間が制御されたポリ乳酸系樹脂成型体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法で得られた表面層の化学構造が改変され、含酸素官能基が導入され生分解期間が制御されたポリ乳酸系樹脂成型体。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、生分解期間が制御されたポリ乳酸系樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル系樹脂等の汎用プラスチックは軽量で、加工性に優れている上に、低コストで成形体が製造できることから農業用フィルム、建築・土木用シート、ごみ袋、各種容器などの材料として用いられてきた。しかし、前記汎用プラスチックは自然環境下で自然に分解しないことから使用後の処理において、例えば焼却による自然の温暖化、埋め立てるための埋立地の確保等大きな環境問題を提起し、自然環境下で自然に分解する樹脂の出現が要望されていた。かかる樹脂として、従来、縫合糸や骨接合剤などの医療用材料として使用されてきたポリ乳酸系樹脂が、その透明性、優れた力学物性、及び再生可能資源から容易に合成できるなどから注目を集め、実用化に向けた提案が多くなされている。前記提案の例として、特開平9-255880号公報には、分解促進の観点からポリ乳酸に澱粉を混合した組成物が、また特開平10-108669号には、ポリ乳酸の新規な分解微生物による分解方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記ポリ乳酸系樹脂を実際に材料として使用する場合には、使用中の一定期間は分解せず使用後には速やかに分解する機能を有することが必要になってくる。例えば農業シートには半年から1年間は分解せずその後土壌内にすき込むことで分解する機能が要求され、また医用材料においても分解しない期間を有することが望まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
こうした現状に鑑み、本発明者等は、鋭意研究を続けた結果、ポリ乳酸系樹脂から得た成型体の表面に物理的処理を施し表面層の化学構造を改変し、含酸素官能基を導入することで、生分解速度が一定の期間抑制されその後分解するポリ乳酸系樹脂成形体が得られることを見出して本発明を完成したものである。すなわち、
【0005】
本発明は、生分解期間制御されたポリ乳酸系樹脂成形体を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、上記ポリ乳酸系樹脂成型体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、表面層の化学構造が改変され、含酸素官能基が導入され生分解期間が一定期間制御されたポリ乳酸系樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【0008】
本発明で使用するポリ乳酸系樹脂としては、樹脂中の乳酸単位が60モル%以上であるのが生分解性から好ましく、ポリ乳酸、乳酸単位が60モル%以上の乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、乳酸単位が60モル%以上の乳酸、脂肪族多価カルボン酸及び脂肪族グリコールからなる脂肪族ポリエステル共重合体、並びにこれらの混合物などが挙げられる。前記ポリ乳酸樹脂としては、具体的にL-乳酸、D-乳酸、あるいはL-乳酸とD-乳酸の混合物を脱水縮合した樹脂が挙げられる。特に物性、耐熱性が要求される場合にはL体が85モル%、好ましくは95モル%のポリ乳酸が好ましい。前記ポリ乳酸は、乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合するなどの方法で製造され、その数平均分子量は20,000~1,000,000、好ましくは50,000~500、000の範囲がよく、数平均分子量が20,000未満では、実用的な成型体が得られず、また1,000,000を超えると成型加工性が悪く好ましくない。
【0009】
また、乳酸と共重合する他のヒドロキシカルボン酸としては、例えばグリコール酸、ジメチルグリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、3-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
【0010】
さらに、脂肪族ポリエステル共重合体を形成する脂肪族多価カルボン酸としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸及びこれらの無水物などが、また脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンチルジオール、1.6-ペンチルジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0011】
上記ポリ乳酸系樹脂を用いた成形体の製造においては、ポリ乳酸系樹脂に必要に応じて各種の添加剤、例えば充填剤、可塑剤、安定剤、滑剤、剥離剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合しそれを通常の熱可塑性プラスチックの成形に用いられている公知の成形方法、例えば射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、インフレーション成形及び真空成形などの成形方法が採用される。本発明におけるポリ乳酸系樹脂成形体とは、フィルム、シート、繊維をいい、特にフィルムの製造においてはカレンダー成形が低コストでフィルムを製造できることから好適である。このカレンダー成形の場合、ポリ乳酸系樹脂がカレンダーロールに付着し易いことから、ポリ乳酸系樹脂に離型剤や滑剤を配合するとともに、含有する水分量を2.0%以下とするのがよい。使用する離型剤としては、シリコーンが好ましく、具体的にはジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられ、また滑剤としては、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ペンタエリスリトールモノ・ジエステルなどが挙げられる。
【0012】
本発明のポリ乳酸系樹脂成形体は、上記成形方法で得たポリ乳酸系樹脂成形体コロナ放電処理の物理的表面処理を施し、表面層の化学構造を改変しカルボキシル基、カルボニル基、水酸機などの含酸素官能基を導入したものである。特にシートやフィルムの場合、その表裏の両面を前記物理的表面処理するのがよい。この表面処理により本発明のポリ乳酸系樹脂成形体は生分解性が阻害され、生分解期間抑制されることになる。前記抑制期間は、物理的表面処理量を変えることで任意に制御でき、特に、放電量が200~.1000W、好ましくは400~800Wの範囲のコロナ放電で表面処理したポリ乳酸系樹脂成形体は、屋外における生分解抑制期間が10ケ月、またコンポスト(堆肥)など微生物数の多い環境における生分解期間が5週間に抑制される。
【0013】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
実施例
数平均分子量38000、含水率1.0%のポリ乳酸樹脂と、重炭酸カルシウム充填剤(白石カルシウム社製)、アルキル変性シリコーン剥離剤(信越化学工業社製)及びステアリン酸カルシウム滑剤を加圧ニーダー中で混練し、ペレット化したのち、カレンダー成形でフィルムに成形した。得られたフィルムの両面に600Wの放電量でコロナ放電を行った。該コロナ放電処理を施したフィルム(以下処理済フィルムという)と前記コロナ放電処理を施さないフィルム(以下未処理フィルムという)とを屋外の暴露試験台に取り付け、一定の期間毎に採取しその破断強度を測定した。その結果を図1のグラフに示す。図1から明らかなように処理済フィルムは、6ヶ月後に分解が始まるが、未処理フィルムは、暴露試験の初期の段階から分解していた。
【0015】
次に、上記処理済フィルムと未処理フィルムとを36℃の表1に示すコンポスト中に埋設し、破断強度の経時変化をみた。その結果を図2のグラフに示す。図2から明らかなように、処理済フィルムは約30日間破断強度の低下がみれなかったが、未処理フィルムは、初期の段階から分解が始まっていた。
【0016】
【表1】
JP0003783199B2_000002t.gif【0017】
【発明の効果】
本発明のポリ乳酸系樹脂成形体は、使用目的に応じた一定期間生分解性が阻害され、その期間経過後は自然環境下で分解し、環境問題に好適な成形体である。そのため、各種の包装材、磁気カード、農業用フィルム、杭、パイル、建築・土木用シート等に利用でき、その産業上の利用価値は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】屋外に放置したポリ乳酸樹脂フィルムの破断強度の経時変化を示す図である。
【図2】コンポスト中に埋設したポリ乳酸フィルムの破断強度の経時変化を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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