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明細書 :漆塗膜の改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3992093号 (P3992093)
公開番号 特開2002-001208 (P2002-001208A)
登録日 平成19年8月3日(2007.8.3)
発行日 平成19年10月17日(2007.10.17)
公開日 平成14年1月8日(2002.1.8)
発明の名称または考案の名称 漆塗膜の改質方法
国際特許分類 B05D   3/04        (2006.01)
B05D   7/24        (2006.01)
C09D   5/00        (2006.01)
C09D 199/00        (2006.01)
B44C   3/00        (2006.01)
FI B05D 3/04 B
B05D 7/24 302C
C09D 5/00 Z
C09D 199/00
B44C 3/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願2000-180776 (P2000-180776)
出願日 平成12年6月16日(2000.6.16)
審査請求日 平成17年4月11日(2005.4.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】小川 俊夫
【氏名】大澤 敏
個別代理人の代理人 【識別番号】100101960、【弁理士】、【氏名又は名称】服部 平八
審査官 【審査官】佐藤 健史
参考文献・文献 特開昭63-007874(JP,A)
特開平05-320576(JP,A)
調査した分野 B05D1/00~7/26、
B44C3/00、
B32B1/00~43/00、
C09D1/00~10/00、101/00~201/10
特許請求の範囲 【請求項1】
漆塗膜の表面を臭素含有雰囲気と接触させることを特徴とする漆塗膜の改質方法。
【請求項2】
臭素含有雰囲気が臭素蒸気を2~5g/lの範囲で含有することを特徴とする請求項1記載の漆塗膜の改質方法。
【請求項3】
漆塗膜と臭素含有雰囲気との接触が温度10~40℃、湿度50~80%で、かつ接触時間が10分以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の漆塗膜の改質方法。
【請求項4】
接触時間が10~40分であることを特徴とする請求項3記載の漆塗膜の改質方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、漆塗膜の改質方法、さらに詳しくは漆塗装物の漆塗膜の耐光性を向上させる簡便な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然産の漆は無溶剤で常温乾燥性を有し、緻密な橋架け塗膜となるため優雅な肌合いや優れた光沢を呈し、しかも耐薬品性、付着性、耐久性にも優れ工芸品、室内装飾塗装等に古くから用いられてきた。この天然産の漆は、漆科植物の幹部から採取した原料漆液から樹皮やゴミ等の夾雑物を除去して生漆とし、その水系成分を分散して「ナヤシ」とし、さらに脱水して精製漆又はクロメ漆として塗膜形成に使用されている。前記精製漆又はクロメ漆に、さらに色剤を添加することで、なしじ漆、透ろいろ漆、透つや漆、透つや消漆、黒つや漆、黒ろいろ漆、黒つや消漆等に調製される。漆はこのように優れた特性を有するが、高価であることから、特開平6-287516号公報、特開平8-283664号公報、特開平11-256108号公報等にみられるような合成漆塗料も提案されている。
【0003】
しかしながら、上記天然産の漆もまた合成漆塗料も日光や蛍光ランプの光で塗膜表面が劣化し、光沢度の低下が起きる。そのため、漆塗装物は日光や蛍光ランプに長時間暴露しない環境で使用することが要求され、使用範囲が限定されるなどの問題があった。この問題を解決するため漆塗装物の極く表面層に水素イオンを注入しウルシオールの重合を促進させて紫外線を吸収しにくい重合体に改質することで漆塗装物の光沢度の低下を防ぐ方法が、例えば石川県工業試験所研究報告No.47、 p53~58(1998)等で提案されている。しかし前記方法にあってはイオン注入装置という高価でかつ大掛かりの装置を使用することから、処理漆塗装物のコストを高くする上に、大型の工芸品等を処理できない欠点があった。そそこで、より簡便な方法で漆塗膜の耐光性を改善することが熱望されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
こうした現状に鑑み、本発明者等は、鋭意研究を続けた結果、漆塗膜表面を臭素含有雰囲気と接触させることで、漆塗装物の耐光性が改善されることを見出して、本発明を完成したものである。すなわち、
【0005】
本発明は、漆塗装物の塗膜の耐光性を改善する簡便な方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、漆塗膜の表面を臭素含有雰囲気と接触させることを特徴とする漆塗膜の改質方法に係る。
【0007】
本発明の改質方法では、上述のように漆塗装物の塗膜表面を臭素含有雰囲気と接触させることで、漆塗装物の耐光性が向上するが、使用する臭素含有雰囲気としては、臭素蒸気を2~10g/l、より好ましくは2~5g/l含有し、かつ湿度が40~70%、温度が10~25℃の範囲が用いられ、該臭素含有雰囲気と漆塗膜との接触時間を10分以上とするのがよい。この接触により漆の主成分であるウルシオールからなる重合体の不飽和基が臭素で付加され耐光性が向上する。前記臭素含有雰囲気と漆塗膜との接触時間が長い程、漆塗膜の耐光性が向上するが、色彩が濃くなる。そのため、黒つや漆、黒ろいろ漆、黒つや消漆等で形成した色彩の濃い漆塗膜の場合には、接触時間を30分以上、好ましくは30~40分とするのがよいが、なしじ漆、透ろいろ漆、透つや漆、透つや消漆等の色彩が薄い漆を用いた塗膜の場合には処理時間を20分以下とするのがよい。
【0008】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
なお、以下の実施例において耐光性は、光沢計(商品名光沢計GM-60、ミノルタ社製)で測定した光沢度の変化度で表わし、また、色彩の変化は、測色色差計を用いJIS-Z8729で求められる、L“a”b表色系で表わす。
【0010】
実施例
ガラス板に市販の透漆を塗布し、温度20℃、湿度70%で3週間乾燥させ、さらに3ヶ月間暗所に保管して試料を作成した。前記試料4を図1に示すデシケータ1の上部2に配置する一方、デシケータの底部3には結晶皿5を置き、その中に純度99.0%の臭素6(石津製薬製)を配し、デシケータ内の雰囲気を温度15℃、湿度50%とし、その状態で10分、20分及び30分間保持した。前記保持した試料4を2日間暗所に保存したのち、紫外域を主波長とする蛍光ランプを用いてUV-Aで50W/m2の紫外線に表1に示す日数照射した。前記紫外線の照射50日間は、太陽光に約半年間曝露したことに相当するが、この紫外線照射日数と光沢変化率および色彩変化率との関係をそれぞれ表1および表2に示す。なお、光沢変化率は、処理前の光沢を100とし、色彩変化率は、臭素付加前の基準白色板と漆塗膜の色差を100として表わしている。
【0011】
【表1】
JP0003992093B2_000002t.gif【0012】
【表2】
JP0003992093B2_000003t.gif【0013】
上記表1にみるように臭素を付加した漆塗膜は、紫外線の照射日数が増加しても光沢の低下が起こらず、むしろ増大するが、臭素付加をしない漆塗膜は、蛍光ランプの照射日数とともに光沢が低下する。その一方、色彩は、表2にみるように臭素を付加した漆塗膜は、照射日数が増加しても殆ど変化がないが、接触時間が30分以上になると色彩変化率が増大する。それ故、漆塗装物が色彩の薄い塗膜の場合には臭素付加時間を20分以下にするのがよく、色彩が濃い漆塗膜の場合には、臭素付加時間を30分以上とするのがよい。
【0014】
【発明の効果】
本発明の改質方法にあっては、漆塗装物を臭素含有雰囲気と接触させるという簡便な方法で、その耐光性を向上させることができ、工業的にも実用的にも価値のある方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための装置の概略図である。
【符号の説明】
1 デシケータ
2 デシケータの上部
3 デシケータの底部
4 試料
5 結晶皿
6 臭素
図面
【図1】
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