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明細書 :EHDポンピングによる液体ジェット発生方法ならびにEHDポンピングによる液体ジェット発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3873204号 (P3873204)
公開番号 特開2002-081400 (P2002-081400A)
登録日 平成18年11月2日(2006.11.2)
発行日 平成19年1月24日(2007.1.24)
公開日 平成14年3月22日(2002.3.22)
発明の名称または考案の名称 EHDポンピングによる液体ジェット発生方法ならびにEHDポンピングによる液体ジェット発生装置
国際特許分類 F04F  11/00        (2006.01)
B01J   4/00        (2006.01)
FI F04F 11/00
B01J 4/00 103
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2000-314474 (P2000-314474)
出願日 平成12年9月6日(2000.9.6)
審査請求日 平成13年2月15日(2001.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】花岡 良一
【氏名】高田 新三
個別代理人の代理人 【識別番号】100072420、【弁理士】、【氏名又は名称】小鍜治 明
審査官 【審査官】尾崎 和寛
参考文献・文献 特開平11-125173(JP,A)
特開2000-127409(JP,A)
調査した分野 F04F 11/00
B01J 4/00
特許請求の範囲 【請求項1】
中心軸の方向に液体流通孔を貫通させた環状あるいは筒状でその両端面を滑らかな円弧状に成形した擬似ドーナッツ状電極の一端を平板電極に対し間隙をおいて対向させると共に、前記擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔と同軸状に繋がる絞り円錐状液体流通孔と前記中心軸方向に対し垂直方向の流れ成分をもつ液流を前記絞り円錐状液体流通孔の根元大径部へ導入する補助液体流通路を形成したスパイラル・ノズルを前記擬似ドーナッツ状電極の他端に結合させ、前記補助液体流通路の入口周辺に補助リング電極を配設しこの補助リング電極に対して間隙を介して補助平板電極を対向させて電極系とし、前記擬似ドーナッツ状電極と平板電極が対向する部分および前記補助リング電極と補助平板電極が対向する部分を含む前記電極系の少なくとも一部を電気絶縁性液体の中に置いて、前記擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間ならびに前記補助リング電極と補助平板電極の間に同時に直流高電圧を印加することにより、前記擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔を通して前記スパイラル・ノズルの先端から前記電気絶縁性液体を噴出させることを特徴とするEHDポンピングによる液体ジェット発生方法。
【請求項2】
電気絶縁性液体としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを用いることを特徴とする請求項1に記載のEHDポンピングによる液体ジェット発生方法。
【請求項3】
電気絶縁性液体としてドデカン二酸—nブチルを用いることを特徴とする請求項1に記載のEHDポンピングによる液体ジェット発生方法。
【請求項4】
中心軸の方向に液体流通孔が貫通した環状あるいは筒状でその両端面が滑らかな円弧状に成形された擬似ドーナッツ状電極と、前記擬似ドーナッツ状電極の一端に間隙をおいて対向した平板電極と、前記擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔と同軸状に繋がる絞り円錐状液体流通孔が貫通すると共に前記中心軸方向に対し垂直方向の流れ成分をもつ液流を前記絞り円錐状液体流通孔の根元大径部へ導入する補助液体流通路が形成されて前記擬似ドーナッツ状電極の他端に結合したスパイラル・ノズルと、前記補助液体流通路の入口周辺に配設された補助リング電極と、この補助リング電極に間隙を介して対向した補助平板電極を有し、少なくとも前記擬似ドーナッツ状電極と平板電極の対向部分および前記補助リング電極と補助平板電極の対向部分が電気絶縁性液体中に保持され前記擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間ならびに前記補助リング電極と補助平板電極の間に同時に直流高電圧が印加される電極系を備え、且つ、前記スパイラル・ノズルの絞り円錐状液体流通孔の根元大径部内周壁の内側に短い円筒状案内体を配設して、その円筒状案内体と前記根元大径部の間に、液体を絞り円錐状液体流通孔の中心に向けて付勢する誘導溝を形成すると共に、前記スパイラル・ノズルの外周面から前記誘導溝に通ずる小孔を設け、前記誘導溝と小孔で補助液体通路が形成されたことを特徴とするEHDポンピングによる液体ジェット発生装置。
【請求項5】
電気絶縁性液体がジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートであることを特徴とする請求項4に記載のEHDポンピングによる液体ジェット発生装置。
【請求項6】
電気絶縁性液体がドデカン二酸—nブチルであることを特徴とする請求項4に記載のEHDポンピングによる液体ジェット発生装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、いわゆるEHD(Electrohydrodynamic:電気流体力学)ポンピング現象を利用して液体(電気絶縁性液体)を噴出させる方法とその噴出方法で液体ジェットを発生させるための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気絶縁性の気体や液体に高電圧を加えると、それらの流体中における電場と流れ場の相互作用によって、EHDポンピング現象と言われる流体の流動現象が生ずることが古くから知られている。そしてEHDポンピング現象を応用すれば機械的な可動機構を要することなく液体を流動させることができることから、将来特に液体のEHDポンピング現象が、例えばヒートパイプ、ポンプ、噴水装置、液体循環装置、熱交換システム、あるいは液体ジェット流による動力装置などの種々の実用分野で工業的に幅広く活用できるものと期待されている。
【0003】
液体中で発生するEHDポンピング現象については未だ不明な点が多いが、既に幾つかの発生メカニズムが報告されている。その最も一般的なメカニズムはイオンドラッグポンピングと言われる流動メカニズムで、高電圧が印加された鋭利な電極の先端から、電界放出、電界電離、コロナ放電などに基づいて液体中に注入されたイオンが、電界によりクーロン力を受け、中性分子とのエネルギー変換によって発生する流動現象である。そして、流速約1m/sに達する液体ジェットが鋭利な電極(針状電極または刃型電極)から、これに対向する平板電極に向かって発生することが報告されている。
【0004】
またEHDポンピング現象の他の発生メカニズムとして、誘導ポンピングと言われる流動メカニズムが知られている。これは誘導電荷と電界との相互作用によって発生する流動現象で、電界で生ずるこの誘導電荷は、液体導電率の不均一性によって生じ、液体導電率の不均一性は、液体の不平等な温度分布あるいは液体の異質性(例えば、分離二層流体)によって生ずる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら液体のEHDポンピング現象を種々の産業分野で活用し実用化する際には、上記のイオンドラッグポンピングや誘導ポンピングの流動メカニズムに基づくEHDポンピング現象を利用しようとすると大きな難点がある。すなわち、イオンドラッグポンピングメカニズムに沿うEHDポンピングによる液体ジェット発生方法では、液体に荷電粒子が注入されることから、液体の電気的特性が次第に劣化して長期の使用に耐えられなくなる難点があり、また誘導ポンピングメカニズムに沿うEHDポンピングによる液体ジェット発生方法は、熱的に絶縁された一定温度の液体に対しては利用できないという根本的な難点がある。
【0006】
上記の現状に鑑み、この発明は、上記従来のイオンドラッグポンピングや誘導ポンピングの流動メカニズムに拠らず、また液体の分極効果に基づく電歪力に起因するという流動メカニズムとも全く異なる純伝導ポンピング現象、すなわち液体中に存在する電界質成分の解離/再結合反応が高電界の作用によって不平衡化し発生した解離イオンが電極表面付近にヘテロチャージ層を形成することによって電極とこのヘテロチャージ層との間に働く引力が流動をもたらすという流動メカニズムに着目することにより、鋭利な形状の電極を用いず従って絶縁性液体への電荷注入を伴うことなく、熱的に絶縁された一定温度の液体に対してもEHDポンピングによる指向性の高い液体ジェットを発生し得る液体ジェット発生方法と、その方法によってEHDポンピングによる指向性の高い液体ジェットを発生できる液体ジェット発生装置を得ようとするものである。そして長期に亘って絶縁性液体を劣化させず大きなポンピング圧力と高い指向性をもつ液体ジェットを発生させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的に沿うEHDポンピングによる液体ジェットを発生させるために、この発明は、中心軸の方向に液体流通孔を貫通させた環状あるいは筒状でその両端面を滑らかな円弧状に成形した擬似ドーナッツ状電極の一端を平板電極に対し間隙をおいて対向させて電極系とし、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極が対向する部分を含む電極系の少なくとも一部を電気絶縁性液体の中に置いて、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間に直流高電圧を印加することにより、擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔を通して擬似ドーナッツ状電極のいずれか一方の端面から上記の電気絶縁性液体を噴出させるようにする。
【0008】
また上記目的に沿うEHDポンピングによる液体ジェットの指向性を高めるために、この発明は、中心軸の方向に液体流通孔を貫通させた環状あるいは筒状でその両端面を滑らかな円弧状に成形した擬似ドーナッツ状電極の一端を平板電極に対し間隙をおいて対向させると共に、その擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔と同軸状に繋がる絞り円錐状液体流通孔を貫通させたノズルを擬似ドーナッツ状電極の他端に結合させて電極系とし、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極が対向する部分を含む前記電極系の少なくとも一部を電気絶縁性液体の中に置いて、擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間に直流高電圧を印加することにより、前記擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔を通してノズルの先端から上記電気絶縁性液体を噴出させるようにする。
【0009】
EHDポンピングによる液体ジェットの指向性をさらに高めるために、この発明は、中心軸の方向に液体流通孔を貫通させた環状あるいは筒状でその両端面を滑らかな円弧状に成形した擬似ドーナッツ状電極の一端を平板電極に対し間隙をおいて対向させると共に、その擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔と同軸状に繋がる絞り円錐状液体流通孔と前記中心軸方向に対し垂直方向の流れ成分をもつ液流を前記絞り円錐状液体流通孔の根元の大径部へ導入する補助液体通路を形成したスパイラル・ノズルを擬似ドーナッツ状電極の他端に結合させ、その補助液体通路の入口周辺に補助リング電極を配設し、この補助リング電極に対して間隙を介して補助平板電極を対向させて電極系とし、擬似ドーナッツ状電極と平板電極が対向する部分および補助リング電極と補助平板電極が対向する部分を含む電極系の少なくとも一部を電気絶縁性液体の中に置いて、擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間ならびに補助リング電極と補助平板電極の間に同時に直流高電圧を印加することにより、擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔を通してスパイラル・ノズルの先端から上記電気絶縁性液体を噴出させるようにする。
【0010】
またEHDポンピングによる液体ジェットの流速とポンピング圧力を高めるために、この発明は前記電気絶縁性液体として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートやドデカン二酸-nブチルを用いる。
【0011】
この発明では前記の目的に沿うEHDポンピングによる液体ジェットを発生させる装置として、中心軸の方向に液体流通孔が貫通した環状あるいは筒状でその両端面が滑らかな円弧状に成形された擬似ドーナッツ状電極と、この擬似ドーナッツ状電極の一端に間隙をおいて対向した平板電極をもって基本的な+電極系を形成し、少なくともその擬似ドーナッツ電極と平面電極の対向部分が電気絶縁性液体中に保持されるものとし、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間に直流高電圧が印加される構成をとる。
【0012】
またこの発明のEHDポンピングによる液体ジェット発生装置は、液体ジェットの指向性を高めるために、中心軸の方向に液体流通孔が貫通した環状あるいは筒状でその両端面が滑らかな円弧状に成形された擬似ドーナッツ状電極と、この擬似ドーナッツ状電極の一端に間隙をおいて対向する平板電極と、その擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔と同軸状に繋がる絞り円錐状液体流通孔が形成されて擬似ドーナッツ状電極の他端に結合するノズルをもって電極系を形成し、少なくともその擬似ドーナッツ状電極と平板電極の対向部分が電気絶縁性液体中に保持されるものとし、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間に直流高電圧が印加される構成をとる。
【0013】
さらにこの発明のEHPポンピングによる液体ジェット発生装置は、液体ジェットの指向性を一層高めるために、中心軸の方向に液体流通孔が貫通した環状あるいは筒状でその両端面が滑らかな円弧状に成形された擬似ドーナッツ状電極と、この擬似ドーナッツ状電極の一端に間隙をおいて対向した平板電極と、この擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔と同軌状に繋がる絞り円錐状液体流通孔が形成されると共に前記中心軸方向に対し垂直方向の流れ成分をもつ液流を絞り円錐状液体流通孔の根元大径部へ導入する補助液体通路が形成されて擬似ドーナッツ状電極の他端に結合したスパイラル・ノズルと、上記補助液体通路の入口周辺に配設された補助リング電極と、この補助リング電極に間隙を介して対向した補助平板電極をもって電極系を形成し、少なくとも上記の擬似ドーナッツ状電極と平板電極の対向部分および上記の補助リング電極と補助平板電極の対向部分が電気絶縁性液体中に保持されるものとし、擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間ならびに補助リング電極と補助平板電極の間に同時に直流高電圧が印加される構成をとる。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の基本的な実施形態の一つは、中心軸の方向に液体流通孔を貫通させた環状あるいは筒状でその両端面を滑らかな円弧状に成形した擬似ドーナッツ状電極の一端を平板電極に対し間隙をおいて対向させて電極系とし、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極が対向する部分を含む電極系の少なくとも一部を電気絶縁性液体の中に置いて、その擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間に直流高電圧を印加することにより、擬似ドーナッツ状電極の液体流通孔を通して擬似ドーナッツ状電極のいずれか一方の端面から前記電気絶縁性液体を噴出させるEHDポンピングによる液体ジェットの発生方法である。そしてこの原理は、液体中の解離イオンが電極表面付近に電極極性と異極性の非平衡層(ヘテロチャージ層)を形成することによる圧力の発生に起因した純伝導ポンピングに基づいている。
【0015】
またこの発明の他の基本的な実施形態は、中心軸の方向に液体流通孔が貫通した環状あるいは筒状でその両端面が滑らかな円弧状に成形された擬似ドーナッツ状電極と、この擬似ドーナッツ状電極の一端に間隙をおいて対向した平板電極を有し、少なくともその擬似ドーナッツ電極と平面電極の対向部分が電気絶縁性液体中に保持されてその擬似ドーナッツ状電極と平板電極の間に直流高電圧が印加される電極系を備えたEHDポンピングによる液体ジェットの発生装置である。
【0016】
【実施例】
以下この発明の実施例を図面を参考に説明する。図1は、この発明の一実施例を示すEHDポンピングによる液体ジェット発生装置の基本構成を示すものである。図1において、1は擬似ドーナッツ状電極(高電圧電極)、2は平板電極(接地電極)である。擬似ドーナッツ状電極1は、中心軸Z方向に液体流通孔1aを貫通させた環状あるいは円筒状でその両端面は滑らかな円弧Rに成形された形状であり、電界放出、電界電離、コロナ放電などが生ずるような鋭利な突部が存しないよう全表面が滑らかに成形されている。すなわち擬似ドーナッツ状電極1は、断面が円形のドーナッツ形状を中心軸Z方向に若干引き伸ばしたような形状である。そして擬似ドーナッツ状電極1の一端を平板電極2に対し間隙dをおいて対向させて電極系10とし、この電極系10を電気絶縁性液体3の中へ沈めて置き、直流高電圧電源4から擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2の間に直流高電圧を印加することにより、すなわち平板電極2の電位に対し正または負の直流高電圧を擬似ドーナッツ状電極1に印加することにより、EHDポンピング現象によって擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔1aを通して擬似ドーナッツ状電極1のいずれか一方の端面から電気絶縁性液体3の液体ジェットが発生し、その液体ジェットは電気絶縁性液体3の液面を破って高く(長く)噴出する。矢印Aは電気絶縁性液体3のジェット方向を示しているが、この方向は、電気絶縁性液体3の種類や擬似ドーナッツ状電極1に印加される直流高電圧の極性によって反転し得る。
【0017】
なお、実験で用いた図1に示す電極系10の寸法は、擬似ドーナッツ状電極1の長さBが10mm,円弧Rの半径が2.5mm、液体流通孔1aの直径Cが3mm、間隙dが2mmである。
【0018】
また図1に示す実施例では、電極系10の全体を電気絶縁性液体3の中へ沈めているが、擬似ドーナッツ状電極1の一部を電気絶縁性液体3の中へ沈め、擬似ドーナッツ状電極1の噴出側を電気絶縁性液体3の液面から持ち上げて作動させることも、できる。その場合、少なくとも擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2が対向する部分を含む前記電極系の一部を電気絶縁性液体3の中に置くことになる。
【0019】
図2は、この発明の他の実施例を示すEHDポンピングによる液体ジェット発生装置の構成を示すもので、液体ジェットの指向性を高めるものである。図2において、擬似ドーナッツ状電極1、流体流通孔1a,平板電極2、電気絶縁性流体(図示せず)、直流高電圧電源(図示せず)、間隙dとそれらの相互の関係は図1に示したところと同じである。25はポリエチレン製のノズルで、円柱素材の内部を円錐形にくり抜いて、液体の流れ方向に先細りの絞り円錐状液体流通孔25aを貫通させている。絞り円錐状液体流通孔25aは、中心軸Zを共有して擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔1aと同軸状に繋がり、擬似ドーナッツ状電極1の他端(平板電極2と対向しない端面)結合されている。そして、擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2とノズル25によって電極系10が構成されており、少なくとも擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2が対向する部分を含めて電極系10を電気絶縁性流体の中に入れ、擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2の間に直流高電圧を印加することにより、擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔1aを通してノズル25の先端から電気絶縁性液体を噴出させるものである。図2に示す液体ジェット発生方法および装置によれば、絞り円錐状液体流通孔25aを有するノズル25を擬似ドーナッツ状電極1に付加することにより、液体ジェットの指向性が高まり液体ジェットの到達長を伸ばすことができる。なお、実験で用いた図2に示すノズル25の寸法は、長さE,Fがそれぞれ23mm,16mm、絞り円錐状液体流通孔25aの吐出口直径Gが2mmである。
【0020】
図3は、この発明のさらに他の実施例を示すEHDポンピングによる液体ジェット発生装置の構成を示すもので、液体ジェットの指向性、収斂性を一層高めるために、図2に示したノズルをさらに改良してスパイラル・ノズルにしたものである。図3において、擬似ドーナッツ状電極1、流体流通孔1a,平板電極2、電気絶縁性流体(図示せず)、間隙dとそれらの相互の関係は図1や図2に示したところと同じである。35はポリエチレン製のスパイラル・ノズルで、図2のノズル25と同様に、スパイラル・ノズル35は、液体の流れ方向に先細りの絞り円錐状液体流通孔35aを有し、絞り円錐状液体流通孔35aは、擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔1aと同軸状に繋がり、擬似ドーナッツ状電極1の他端(平板電極2と対向しない端面)結合される。
【0021】
スパイラル・ノズル35には、絞り円錐状液体流通孔35aに加えて、中心軸Z方向に対し垂直方向の流れ成分をもつ液流を絞り円錐状液体流通孔35aの根元の大径部35bへ導入する補助液体通路36を形成し、この補助液体通路36の入口周辺に小さな径の補助リング電極37を配設し、この補助リング電極37に対し間隙sを介して補助平板電極(接地電極)38を対向させたものである。そして擬似ドーナッツ状電極1、平板電極2、スパイラル・ノズル35、補助リング電極37、補助平板電極38によって電極系10が構成されており、少なくとも擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2の対向部分および補助リング電極37と補助平板電極38の対向部分を含めて電極系10を電気絶縁性流体の中に入れて保持し、直流高電圧電源(図示せず)から、擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2の間ならびに補助リング電極37と補助平板電極38の間に直流高電圧を印加することにより、擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔1aを通してスパイラル・ノズル35の先端から電気絶縁性液体を噴出させるものである。
【0022】
また、スパイラル・ノズル35の絞り用錐状液体流通孔35aの根元の大径部の内周壁の内側に短い円筒状案内体39を配設して、円筒状案内体39と絞り円錐状液体流通孔35aの根元大径部35bの内周壁の間に誘導溝(円環状スリット)40を形成すると共に、スパイラル・ノズル35の外周面から液体誘導溝40に通ずる小孔41を設け、この誘導溝40と小孔41によって補助液体通路36が形成されている。
【0023】
擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2の間ならびに補助リング電極37と補助平板電極38の間に直流高電圧を印加すると、擬似ドーナッツ状電極1と平板電極2の間の間隙でEHD流動が生じ、これに起因して電気絶縁性液体の液体ジェットが生成され、その液体ジェットがスパイラル・ノズル35の先端から噴出するが、同時に補助リング電極37と補助平板電極38の間の間隙でもEHD流動が生じ、これに起因する液流が小孔41と誘導溝40を通ってスパイラル・ノズル35の絞り円錐状液体流通孔35aに噴出する。そして誘導溝40から噴出する液流は絞り円錐状液体流通孔35aの中心軸Zの方に向かう放射方向の流れ成分を有することから、絞り円錐状液体流通孔35a内の液体ジェットの主流に放射方向の速度ベクトルを与えることになる。この結果液体ジェットは中心軸Zに収斂し指向性が高まり、液体ジェットの到達長を伸ばすことができる。なお、実験で用いた図3に示すスパイラル・ノズル35の寸法は、小孔41の直径Mが1mm、補助リング電極37の径Nが5mm、補助平板電極38の長さHが20mm、補助リング電極37と補助平板電極38の間の間隙sが2mmである。
【0024】
EHDポンピングによる液体ジェットの発生に用いる電気絶縁性液体は種々考えられるが、この発明の過程で、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BCRA」と略す)、ドデカン二酸-nブチル(以下、「DBDN」と略す)、変圧器油(JIS-C2320)(以下「Tr-Oilと略す)、フッ素変成シリコーン油(以下、「FS-Oil」と略す)の4種類の電気絶縁性液体を用いて実験・思考し、それらの特性と実用上の優劣を見きわめた。図1に示した電極系を上記の4種類の電気絶縁性液体中に設置して、正または負の直流高電圧を印加した場合に生ずる液体ジェットは、液体の種類と印加電圧の極性によってそれぞれ異なる特性を示す。なお、上記電気絶縁性液体の性質に係わる物理的定数は図4に示す通りである。
【0025】
図5は、流速Uと印加電圧Vの関係を示している。これらの速度は、擬似ドーナッツ状電極1の上部先端から電極系10の中心軸Z上1mmの点で測定されたものである。また、BCRAとTr-Oilの流れは印加電圧の極性に関わらず常に平板電極2側から擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔5aを通って上方へ噴射し、DBDNとFS-Oilの流れは印加電圧の極性によって変化することが確認された。図5から明らかなように、BCRAやDBDNは所与の印加電圧に対し大きな流速を示し、特にBCRAが大きな流速を示す。このことからEHDポンピングによる液体ジェットを活用する場合、電気絶縁性液体としてBCRAやDBDNを用いることが有用である。
【0026】
図6は、ポンピング圧力Pと印加電圧Vの関係を示している。図6から明らかなように、BCRAとDBDNは所与の印加電圧に対し大きなポンピング圧力を発生し、ポンピング圧力Pは印加電圧Vのほぼ2乗に比例して変化している。したがってこの特性からも、EHDポンピングによる液体ジェットを活用する場合、電気絶縁性液体としてBCRAやDBDNを用いることが有用である。
【0027】
ノズルを設けない図1に示すような電極系の場合、擬似ドーナッツ状電極1の液体流通孔1a通過して上方向に噴出する液体ジェットは、擬似ドーナッツ状電極1の先端から離れるに従って乱流的成分が含まれて直線的な流れを維持できなくなる。そこでより高い収斂性と指向性をもつ液体ジェットを得るために図2に示したノズル25や、図3に示したスパイラル・ノズル35を擬似ドーナッツ状電極1に付加した電極系10を用いたが、図7ならびに図8には、これらノズル25やスパイラル・ノズル35を付加した効果が顕著に現れている。
【0028】
すなわち図7は、電極系10の中心軸Zに沿って、ノズルの先端から上方25mmまでの間で測定された速度分布を示し、最大速度を1.0に規格化して示したものである。図8は、ノズルの先端から上方20mmの位置で放射方向に測定された速度分布を示している。そして図7、図8のいずれにおいても、ノズルをもたない電極系(図1に示した電極系)と普通のノズルをもった電極系(図2に示した電極系)とスパイラル・ノズルをもった電極系(図3に示した電極系)を対比したものである。
【0029】
図7に示されるように、測定点が電極系から離れるにつれ電極系の違いによる差が大きく現れている。すなわち、スパイラル・ノズルをもつ電極系は、その先端から離れた点においても速度の減衰率が小さく、他の電極系の場合に比べて液体ジェットの指向性が最も良い。また、スパイラル・ノズルをもつ電極系の液体ジェットは、他の電極系に比べて最も収斂性の良いことが図8に現れている。
【0030】
【発明の効果】
上記実施例からも明らかなように、この発明によれば、擬似ドーナッツ状電極と平板電極を対向させた電極系に正または負の直流高電圧を印加することによって、一定温度の電気絶縁性液体中で指向性の高い液体ジェットを発生させることができ、また電極から電気絶縁性液体への電荷注入を伴わないので使用する電気絶縁性液体の劣化が抑制され実用上きわめて有効である。
【0031】
その上に擬似ドーナッツ状電極にノズル、とりわけスパイラル・ノズルを付加結合して電極系を構成することにより、液体ジェットの収斂性と指向性を更に高めることができる。そしてまた、電気絶縁性液体としてBCRAあるいはDBDNを用いることにより、液体ジェットの特性として良好な結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示すEHDポンピングによる液体ジェット発生装置の基本構成図。
【図2】この発明の他の実施例を示すEHDポンピングによる液体ジェット発生装置の構成図。
【図3】この発明の別の実施例を示すEHDポンピングによる液体ジェット発生装置の構成図。
【図4】この発明のEHDによる液体ジェット発生方法および装置で用いた電気絶縁性液体の物理的定数を示した特性説明図。
【図5】この発明の実験結果に基づく印加電圧と液体ジェット流速の関係図。
【図6】この発明の実験結果に基づく印加電圧とポンピング圧力の関係図。
【図7】この発明の実験結果に基づく流体ジェットの軸方向速度の特性図。
【図8】この発明の実験結果に基づく流体ジェットの放射方向速度の特性図。
【符号の説明】
1 : 擬似ドーナッツ状電極
1a: 液体流通孔
2 : 平板電極
3 : 電気絶縁性液体
4 : 直流高電圧電源
10 : 電極系
25 : ノズル
25a: 絞り円錐状液体流通孔
35 : スパイラル・ノズル
35a: 絞り円錐状液体流通孔
35b: 根元大径部
36 : 補助液体通路
37 : 補助リング電極
38 : 補助平板電極
39 : 円筒状案内体
40 : 誘導溝(円環スリット)
41 : 小孔
d : 間隙
R : 円弧
s : 間隙
Z : 中心軸
図面
【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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