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明細書 :生物を利用した特定物質の検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4026132号 (P4026132)
公開番号 特開2004-184343 (P2004-184343A)
登録日 平成19年10月19日(2007.10.19)
発行日 平成19年12月26日(2007.12.26)
公開日 平成16年7月2日(2004.7.2)
発明の名称または考案の名称 生物を利用した特定物質の検出方法
国際特許分類 G01V   9/00        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
F41H  11/12        (2006.01)
G01V   3/08        (2006.01)
G01V  11/00        (2006.01)
FI G01V 9/00 J
G01V 9/00 K
C12Q 1/02
F41H 11/12
G01V 3/08 A
G01V 3/08 B
G01V 11/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2002-354426 (P2002-354426)
出願日 平成14年12月5日(2002.12.5)
審査請求日 平成16年9月2日(2004.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】平間 淳司
【氏名】賀戸 久
【氏名】宮本 紀男
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査官 【審査官】本郷 徹
参考文献・文献 特開2004-132634(JP,A)
特開2001-033455(JP,A)
特表2000-508075(JP,A)
調査した分野 G01V 9/00
C12Q 1/02
F41H 11/12
G01V 3/08
G01V 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
特定物質に対する走化性を有する生物を、特定物質に走化させるステップと、
前記生物が前記特定物質と相互作用した際に生成される検出物質を探知し、前記生物の位置を探知するステップと、
探知された前記生物の位置に基づき、前記特定物質を検出するステップと、
を含み、
検出物質を探知する前記ステップは、前記検出物質の発色または発光を探知するステップを含むことを特徴とする検出方法。
【請求項2】
特定物質に対する走化性を有する生物に標識を施すステップと、
標識を施された前記生物を前記特定物質に走化させるステップと、
前記標識を探知し、前記生物の位置を探知するステップと、
探知された前記生物の位置に基づき、前記特定物質を検出するステップと、
を含むことを特徴とする特定物質の検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の検出方法において、
生物に標識を施す前記ステップは、前記生物に磁性を付与するステップを含み、
標識を探知する前記ステップは、前記磁性を探知するステップを含む
ことを特徴とする検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の検出方法において、標識を探知する前記ステップは、フラックスゲート型磁気センサを用いて前記磁性を探知するステップを含むことを特徴とする検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の検出方法において、前記特定物質は地中に埋設されていることを特徴とする検出方法。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の検出方法において、前記特定物質が地雷の火薬成分であることを特徴とする検出方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の検出方法において、前記生物が微生物であることを特徴とする検出方法。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の検出方法において、前記生物は一次生物であって、前記一次生物を探知するステップは、
前記一次生物に対する走化性を有する二次生物を前記一次生物に走化させるステップと、
前記二次生物の位置を探知することにより前記一次生物を探知するステップと、
を含むことを特徴とする検出方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物を用いて特定の物質を検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中に埋設された特定物質を感度よく検出する方法は、地雷探査、油田探査などにおいて重要な技術である。たとえば、地雷を安全かつ確実に探知し、除去するための地雷探査方法が研究されている。有人による探知方法にかわり、レーザーマーカと赤外線レーザ探知機を用いた地雷探知方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、赤外線レーザ探知機が赤外線カメラと、レーザ測量装置と、GPS(Global Positioning System)などの自己位置測定装置とからなる装置を用いるため、危険性の高い有人による探知方法に比べ、安全性が向上している。しかし、この方法では、検出感度を向上させるため、埋設地雷地帯に水と液体窒素を散布したり、あるいはバーナーによって所定エリアを加熱したりする必要があった。一方、地雷が検出されると、これを除去する必要があったが、この作業にも危険が伴っていた。
【0004】
【特許文献1】
特開2001-74397号公報
【発明が解決しようとする課題】
したがって、特定物質を、危険を伴わない方法で感度よく検出する技術の開発が望まれている。また、検出された特定物質を、安全に除去する方法の開発も望まれている。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、特定物質を安全に高感度で検出する方法を提供することにある。本発明の別の目的は、地中に埋設された特定物質を安全に高感度で検出する方法を提供することにある。本発明のまた別の目的は、地中に埋設された特定物質を安全に高い精度で除去する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、特定物質に対する走化性を有する生物を、特定物質に走化させるステップと、前記生物が前記特定物質と相互作用した際に生成される検出物質を探知し、前記生物の位置を探知するステップと、探知された前記生物の位置に基づき、前記特定物質を検出するステップと、を含み、検出物質を探知する前記ステップは、前記検出物質の発色または発光を探知するステップを含むことを特徴とする検出方法が提供される。
【0007】
本発明に係る検出方法は、特定物質に対する走化性を有する生物を用いるため、確実に特定物質に走化させ、相互作用させることができる。また、生物が特定物質と相互作用した際に生じる検出物質を探知するため、特定物質と相互作用した生物の位置情報を精度よく探知することができる。したがって、特定物質を精度、感度よく検出することができる。また、生物を用いることにより、特定物質が存在する可能性のある領域に人間が足を踏み入れることなく検出物質の探知を行うことができるため、安全に特定物質を検出することができる。
【0008】
なお、本発明に係る製造方法において、発色、発光にはそれらの変色をも含む。したがって、生物が特定物質と相互作用することにより生じる検出物質の吸収波長の変化等を用いて探知を行うことも可能である。
【0009】
本発明によれば、特定物質に対する走化性を有する生物に標識を施すステップと、標識を施された前記生物を前記特定物質に走化させるステップと、前記標識を探知し、前記生物の位置を探知するステップと、探知された前記生物の位置に基づき、前記特定物質を検出するステップと、を含むことを特徴とする特定物質の検出方法が提供される。
【0010】
本発明に係る検出方法は、生物に標識を施すステップを含むため、特定物質に走化させた生物に施された標識を探知することにより、特定物質の位置を確実に探知することができる。
【0011】
なお、本発明において、「標識」には、発色物質、発光物質、放射性同位体等の共有結合によるラベルはもちろん、上記物質や磁性粒子等の粒子を生物に付着または吸収させることによるラベル、また、生物を磁化させることによる磁性の付与等も含まれる。
【0012】
本発明の検出方法において、生物に標識を施す前記ステップは、前記生物に磁性を付与するステップを含み、標識を探知する前記ステップは、前記磁性を探知するステップを含むことができる。こうすることにより、生物に付与された磁性を探知することが可能となるため、さらに確実に特定物質の検出を行うことができる。
【0013】
本発明の検出方法において、標識を探知する前記ステップは、フラックスゲート型磁気センサを用いて前記磁性を探知するステップを含むことができる。フラックスゲート型磁気センサを用いることにより、生物に付与された磁性をより一層高感度で検出することが可能となる。
【0014】
なお、フラックスゲート型磁気センサとは、高透磁率軟磁性材料を用いた磁気センサである。すなわち、透磁率の高い金属(鉄芯)に一次、二次の二種類のコイルを巻いたセンサ部からなり、磁場強度の測定に使用される。その測定原理は以下の通りである。測定時に、まず、鉄芯の周りの一次コイルに高調波電流を流して交流磁場を発生させる。その結果、鉄芯の磁化特性に従い、二次コイルを貫く誘導磁場は、一次コイルを流れる高調波電流と位相がずれたパルス波形の磁場となる。位相のずれは、地球磁場(周囲の磁場)の強さに依存する。このパルス波形の磁場は、二次コイルに同様な位相のずれを伴う電流を誘導し、そのずれも磁場の強さに依存している。つまり、一次コイルを流れる電流と、二次コイルに誘導された電流の位相差を見積もることで、地球磁場(周囲の磁場)の方向成分を測定できることになる(酒井英男、他5名、「石川県羽昨市滝・柴垣製塩遺跡における電磁気探査、[online]、[2002年10月22日検索]、インターネット<URL:www.geology.co.jp/ronbun/RA910701.pdf>)。
【0015】
本発明の検出方法において、前記特定物質は地中に埋設されてもよい。たとえば、前記特定物質は地雷の火薬成分とすることができる。
【0016】
本発明に係る検出方法は特定物質に対する走化性を有する生物を用いて特定物質の検出を行うため、特定物質が地中に埋設されている場合でも、これを精度良く探知することができる。このとき、特定物質が埋設された領域に人間が足を踏み入れることなく検出することができるため、埋設された物質が人体に危害を及ぼす可能性のある物質である場合にも、これを安全に検出することが可能となる。
【0017】
本発明の検出方法において、前記生物は微生物とすることができる。微生物を用いることにより、特定物質が地中に埋設されている場合や、特定物質の周囲が被覆されているような場合にも生物を特定物質に走化させることが可能となる。よって、特定物質をより一層確実に検出することができる。
【0018】
本発明の検出方法において、前記生物は一次生物であって、前記一次生物を探知するステップは、前記一次生物に対する走化性を有する二次生物を前記一次生物に走化させるステップと、前記二次生物の位置を探知することにより前記一次生物を探知するステップと、を含むことを特徴とする検出方法とすることができる。
【0019】
本発明に係る検出方法では、一次生物に対する走化性を有する二次生物をさらに用いるため、検出精度、感度をさらに向上させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本実施形態に係る検出方法は、特定物質に対して走化性を有する生物を特定物質に走化させ、この生物の位置を探知することによって特定物質を検出する方法である。
【0021】
図1は、本実施形態に係る検出方法の流れを示す図である。図1のフローでは、まず特定物質の検出に用いる生物に、後述のステップ4における探知方法に応じた標識を施す(S1)。次に、特定物質を検出する領域に生物を放ち、特定物質に走化させる(S2)。すると、特定物質に到達した生物が、特定物質と相互作用する(S3)。そして、特定物質に到達した生物を探知する(S4)。ステップ4にて探知された生物によって、特定物質の存在の有無、存在の位置が検出される(S5)。
【0022】
ここで、ステップ3で生成する検出物質をステップ4で直接検知することができる場合、ステップ1における標識の付与は省略することができる。このとき、ステップ3で生成する検出物質は、たとえば発色や蛍光等の発色を生じる物質とすることができる。
【0023】
また、ステップ1における標識は、ステップ4における探知方法に対応した形式とする。たとえば、ステップ4にて、FGM(フラックスゲート型磁気センサ)などの磁気センサを用いる場合は、ステップ1において、生物を磁化する。また、ステップ4にて、光電子倍増システムやイメージインテンシファイア暗視カメラなどの、光学特性の検出装置を用いる場合は、ステップ1において、生物に蛍光標識等を行う。
【0024】
ステップ2では、生物をたとえば地表に放つ。石油中や地雷の火薬中に含まれる成分のように、特定物質が地中に存在する場合、生物を地中に進入可能な生物とすることが好ましい。
【0025】
ステップ3での相互作用として、たとえば生物による特定物質の分解、捕食などが挙げられる。そのため、生物は、微生物とすることが好ましい。微生物は、たとえば菌体とする。生物は、遺伝子操作により、走化性や検出物質の生成量を極限まで高めてもよい。この場合これらの微生物が生態系を乱すことがないよう、生殖機能を失活させる操作を同時に施すことが好ましい。
【0026】
ステップ4における生物の探知は、たとえばステップ3で生じる検出物質が発色物質や発光物質である場合、これらの検出により行うことができる。また上述のように、ステップ1での標識を検出することによっても可能である。また、特定物質を検出するステップ5において、ステップ4で探知された生物の位置情報を用いるため、GPSシステム等、生物の位置情報を精度よく探知するシステムを用いることができる。さらに、ステップ4における生物の探知に、高感度のセンサを用いる場合、位置情報の探知を上空から行ってもよい。上空から探知を行うことにより、より広範囲にわたって特定物質の検出を行うことが可能となる。また、探知する物質が地雷中の成分等危険を伴う場合であっても、人間が探知領域に足を踏み入れることなく測定を行うことができるため、安全性が高い。
【0027】
以上より、図1の検出方法では、生物を用いて特定物質を精度、感度よく安全に検出することができる。また、特定物質の分解や捕食を効率よく行う生物を選択することにより、特定物質の処理も効率よく安全に行われる。
【0028】
図2は、本実施形態に係る検出方法の別の一例の流れを示す図である。図2の検出方法においては、一次生物を特定物質に走化させ(S31)、次いで一次生物に対して走化性のある生物を二次生物として用い、一次生物に走化させる(S34)。そして、二次生物を探知する(S35)ことにより、特定物質を検出する(S36)。
【0029】
ステップ35で二次生物を探知するため、予め二次生物には標識を施しておく(S33)。標識は、一次生物の場合と同様とすることができる。また、ステップ33で二次生物を標識するため、一次生物の標識は不要である。
【0030】
ステップ32では、図1の検出方法と同様に、一次生物が特定物質に走化し、相互作用するため、検出物質を検出することにより二次生物の探知結果と合わせて検出精度を向上させることもできる。また、特定物質の処理が不要である場合、ステップ32は省略することができる。すなわち、一次生物は特定物質に対する走化性を有していれば、特に相互作用しなくてもよい。
【0031】
なお、図2においては特定物質に対する一次生物および二次生物を用いているが、二次生物に対して走化性を有する別の生物をさらに三次生物として用いてもよい。また、三次以上の任意のN次生物(Nは自然数)とすることもできる。このとき、N次生物は(N-1)次生物に対する捕食生物とすることが好ましい。このように、食物連鎖の原理を本実施形態の検出方法に適用することにより、検出感度を向上させることが可能である。このとき、三次以上のそれぞれの生物についても、遺伝子操作により走化性等を高めることができるが、その場合も生殖機能を失活させることが好ましい。
【0032】
以下、本実施形態に係る検出方法について、第1~第5の実施形態によりさらに詳細に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
本実施形態は、地雷の火薬中に含まれるTNT(トリニトロトルエン)を検出し、除去する方法に関する。図3(a)に、本実施形態に係る検出方法の流れを示す。図3(a)では、シュードモナス菌(Pseudomonas)を用い、これを地雷の埋設が疑われる検出対象領域に散布し、走化させる(S9)。
【0034】
ここで、シュードモナス菌は、地雷の主原料であるTNTなどのニトロ芳香族化合物に対して正の走化性を示す。このうち、シュードモナス菌P.fluorescensは、菌自身が蛍光を発するので、P.fluorescensの蛍光を追跡するという形で、埋没されたTNTの存在位置を知ることが可能である。また、このシュードモナス菌は、TNTを分解する酵素であるゼノバイオティックリダクターゼを内在的に所持するので、TNTを除去することができる。
【0035】
一方、シュードモナス菌P.pseudoalcaligenesは、TNTを摂取して分解する過程で黄色の中間代謝産物を生成する。P.pseudoalcaligenesは遺伝子操作の可能な生物であるので、この微生物にTNT分解の初発反応を触媒するゼノバイオティックリダクターゼ遺伝子(ニトロベンゼンニトロレダクターゼ遺伝子)、ヒドロキシアミノベンゼンムターゼ遺伝子を、遺伝子の5’上流にTNT応答性のプロモータを連結したコンストラクトとして導入して過剰発現させ、黄色の中間代謝生成物をモニタリングしてTNTの検出または分解の指標とする構成とすることができる。
【0036】
なお、これらの組み換え体は、TNTが存在しない条件下では導入遺伝子を全く発現しないので、自然環境下では野生株と同様に振る舞う。このため、生態系を乱さないように特別に生殖機能を失活させる処理を施す必要はない。
【0037】
図3(a)に戻り、地中のTNTに走化したシュードモナス菌は微弱蛍光を発する(S10)。また、シュードモナス菌はTNTと相互作用し、これを分解する過程において、中間生成物として黄色に発色する検出物質を生成する(S10)。そこで、周回飛行船に搭載され、GPSシステムと連動させた発光検知装置を用いて上記いずれかの検出物質を探知する(S11)。発光検知装置によって検出物質が検知されれば、検知された位置に検出物質、すなわちTNTが存在したことになる。また、検知されなければ、検出対象領域にはTNTが存在しないことになる。これより、地中の地雷を探査することができる。また、TNTに走化したシュードモナス菌がこれを分解するため、地雷の除去作業にもつながる。
【0038】
したがって、図3(a)の検出方法を用いることにより、プラスチック地雷など、金属探知器による検出が困難な地雷が埋設された地域についても、検出対象領域に人間が足を踏み入れることなく、安全に高感度で地雷を探査し、またこれを除去することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
本実施形態は、地雷の火薬中に含まれるTNTを検出する別の方法に関する。図3(b)に、本実施形態に係る検出方法の流れを示す。まず、TNTに対する走化性を有するシュードモナス菌を磁化する(S12)。次に、磁化したシュードモナス菌を、第1の実施形態と同様にして地雷の埋設が疑われる検出対象領域に散布し、走化させる(S9)。そして、周回飛行船に搭載され、GPSシステムと連動させたFGM(Flux Gate Magnetometer)を用いて磁化したシュードモナス菌を探知する(S13)。FGMによってシュードモナス菌が検知されれば、検知された位置に検出物質、すなわちTNTが存在したことになる。また、検知されなければ、検出対象領域にはTNTが存在しないことになる。これにより、地中の地雷を探査することができる。また、TNTに走化したシュードモナス菌がこれを分解するため、地雷の除去作業にもつながる。
【0040】
ステップ12におけるシュードモナス菌を磁化する方法として、シュードモナス菌の集合を強磁場中に一定時間静置することにより磁化する方法が挙げられる。また、磁化する方法にかわり、磁性塗料等の磁性粒子分散液を菌塗布または散布し、磁性を付与してもよい。このとき、磁性粒子として、たとえばγ-Fe23などの強磁性酸化鉄、Co被着γ-Fe23などのCo被着強磁性酸化鉄、Co被着マグネタイト、その他Co含有の強磁性酸化鉄、Co含有マグネタイト、強磁性CrO2、Fe等の強磁性金属、強磁性合金、その他のフェライトあるいはフェライトの固溶体、フェライトのイオン置換体、などを用いる。磁性粒子の平均粒子径は、磁化する生物の種類に応じて適宜選択されるが、たとえば1nm以上100μm以下とする。
【0041】
次に、本実施形態で用いるFGMについて説明する。本実施形態においては、FGMが携帯可能な程度に小型、軽量であって、かつ高感度であることが好ましい。このようなFGMの構成の一例を図8に示す。図8のFGM101は、センサ部103とFGM本体105とを含む。FGM本体105には、電子回路部107と電池109とが収納されており、大きさはA5サイズ程度、厚さは約5cmと小型である。電子回路部107はセンサ部103に結線されている。FGM本体105には他に、低雑音で非常に微弱な磁場に比例した安定電圧を出力する端子、測定者が磁場強度の値を目で読めるメーター、外部周辺装置へ信号を出力できる専用端子、電源スイッチ、感度調整つまみ、運搬用の持ち手などが含まれる。センサ部103は1m程度の棒状部材の先端に設けられたマッチ箱程度の大きさの部分であり、特定方向からの磁場を検出する。このようなFGMとして、たとえばFGM-α(イーグルテクノロジー社製)を用いることができる。
【0042】
本実施形態では、ステップ12でシュードモナス菌を磁化することにより、上述のFGM101を用いてシュードモナス菌自体を直接検知することが可能となり、第一の実施形態に記載の方法に比べて検出感度、精度を向上させることができる。
【0043】
なお、第1の実施形態で述べたように、シュードモナス菌は、TNTを分解する際、黄色の代謝産物を生成するので、昼間には、土壌の変色、着色(黄色)を増感検知する方法と上記の磁性を探知する方法とを併用することにより、地雷の埋設位置の特定精度を更に向上させることができる。一方、夜間には、シュードモナス菌がTNTに走化した際に生じる蛍光を、イメージインテンシファイア方式の暗視カメラなどにより探知し、暗視カメラを自動周回飛行船に搭載し、GPSシステムと連動させることにより、地雷検知感度、埋設位置特定精度、および探査範囲を飛躍的に向上、拡大することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
本実施形態は、第2の実施形態に記載のTNT検出方法において、シュードモナス菌のかわりに脱窒性微生物および白色腐朽菌を用いる検出方法である。図4に、本実施形態に係る検出方法の流れを示す。図4では、まず脱窒性微生物または白色腐朽菌の少なくとも片方が磁化される(S14)。次に、これらの微生物をTNTに走化させる(S15)。そして、周回飛行船に搭載され、GPSシステムと連動させたFGMを用いて磁化したシュードモナス菌を探知する(S13)。
【0045】
ここで、脱窒性微生物および白色腐朽菌を併用することにより、TNTを分解し、浄化させることが可能である。脱窒性微生物として、たとえば植物の根粒菌にアセチレン阻害法等により脱窒能力を付与して用いる。ここで、アセチレン阻害法は、試料を、アセチレンを含む溶媒とともに培養し、発生した亜酸化窒素量から脱窒速度を求める方法である。
【0046】
なお、根粒菌の本来の機能は、土壌、空気中の窒素を固定し、植物が吸収可能なアンモニア態に変換することであるが、アセチレン阻害法等によって、本来の機能と逆の働きをするように改質することができる。また、根粒菌の遺伝子数は7303、塩基対の数は760万であって、窒素利用に関係する遺伝子は85個である。そこで窒素利用に関係する遺伝子を遺伝子組換え法または強調学習・調教法などにより過剰発現させて用いることが好ましい。
【0047】
一方、白色腐朽菌は、ニトロ芳香化合物の分解能力や、ダイオキシン等の難分解性物質の分解能力を有する。白色腐朽菌についても、遺伝子組換え等によって窒素成分の分解力を最大限高めることが好ましい。この場合、これらの微生物が生態系を乱すことがないよう、生殖機能を失活させる操作を同時に施すことが好ましい。
【0048】
根粒菌は、植物と共生するため、ホスト植物にTNTを部分分解させると、その代謝産物を共生菌である根粒菌に窒素代謝させることができる。また、白色腐朽菌は、TNTをある程度代謝することができるため、白色腐朽菌を用いてTNTを中間代謝物まで分解させることにより、土壌の微生物によるTNTの分解が可能となる。したがって、これらの微生物を組み合わせて用いることにより、TNTの浄化が可能となる。
【0049】
(第4の実施形態)
本実施形態は、第2または第3の実施形態において、一次生物であるTNTを分解する菌に対して走化性を有する生物を二次生物として用いる検出方法に関する。図5に、本実施形態に係る検出方法の流れを示す。まず、TNTに対して走化性を有する菌をTNTに走化させる(S17)。ステップ17では、シュードモナス菌を用いてもよいし、脱窒素性微生物および白色腐朽菌を用いてもよい。次に、予め磁化された二次生物(S16)を一次生物に走化させる(S24)。そして、周回飛行船に搭載され、GPSシステムと連動させたFGMを用いて磁化したシュードモナス菌を探知する(S13)。
【0050】
図5で用いる二次生物は、一次生物に応じて適宜選択される。たとえば、シュードモナス菌、脱窒性微生物または白色腐朽菌によるTNTの分解に伴って生成する硫酸還元菌やメタン生成菌などに、遺伝子組換えによって臭い物質またはフェロモン等の産出能力を付与する。そして、この臭い物質に対して走化性を有する昆虫、微小動物等を二次生物として用いる。このとき、臭い物質に対する受容体を二次生物に過剰発現させておくことが好ましい。この場合、これらの生物が生態系を乱すことがないよう、生殖機能を失活させる操作を同時に施すことが好ましい。
【0051】
図5のフローでは、二次生物を利用するため、検出感度をより一層向上させることができる。
【0052】
(第5の実施形態)
本実施形態は、油田に含まれる石油成分を検出する方法に関する。図6に、本実施形態に係る検出方法の流れを示す。
【0053】
図6では、まず対石油走化性を有する菌を磁化させる(S22)。次に、油田の埋設が疑われる検出対象領域に磁化した菌を散布し、走化させる(S23)。そして、周回飛行船に搭載され、GPSシステムと連動させたFGMを用いて対石油走化性を有する菌を探知する(S13)。FGMによって対石油走化性を有する菌が検知されれば、検知された位置に検出物質、すなわち石油が存在したことになる。また、検知されなければ、検出対象領域には石油が存在しないことになる。これより、地中の油田を探査することができる。
【0054】
対石油走化性を有する菌として、たとえば石油分解微生物、石油生成微生物等を用いることができる。このうち、石油分解微生物を用いた場合、地中の石油の除去作業にも利用することができる。このような微生物として、たとえばBacillus属の微生物が利用可能である。具体的には、たとえば石油の合成および分解の両方を行うHD-1株や、石油の分解を行うTK-122株等を用いることができる。さらに、これらの菌の石油生成能力を遺伝子操作により向上させて用いてもよい。また、ステップ22にて菌を磁化する際には、第2の実施形態と同様の方法を用いる。この場合、これらの微生物が生態系を乱すことがないよう、生殖機能を失活させる操作を同時に施すことが好ましい。また、第2の実施形態と同様、磁化する方法にかわり、磁性粒子等により磁性を付与してもよい。
【0055】
【実施例】
本実施例では、図7のフローに基づき、アリを用いたスクロースの検出を行った。
【0056】
まず、アリ1匹をCO2ガス内にて眠らせた(S17)。そして、水素アクリル樹脂塗料(OHASHI CHEMICAL工業社製)に磁性粉末(フェリコロイドW-40:タイホー工業社製)を混ぜた複合磁性塗料をスプレー塗布した(S18)。
【0057】
得られたアリを用いてスクロースの検出を行った。まず、地面(土)に1m×1mの囲いを設け、囲い中の一カ所に1gのスクロースを置いた。そして、覚醒したアリを囲いの中に放った(S19)。囲い内で携帯用FGMセンサを走査したところ、アリを検知することができた(S20)。検出された際、アリはスクロースを食していた。したがって、FGMを用いてアリを探知することにより、スクロースの置かれた位置を検知し、スクロースを検出することができた(S21)。
【0058】
一方、複合磁性塗料を塗布せずに、同様にしてアリを囲いの中に放ったところ、アリはスクロースを食していたが、FGMセンサによってアリを探知することはできなかった。
【0059】
したがってこれらの結果より、磁性塗料を塗布したアリをスクロースに走化させ、FGMセンサによってアリを探知することにより、スクロースを検出することができることが明らかになった。なお、高感度のFGMセンサにGPSシステム等の位置特定手段を連動させ、周回飛行船等に搭載することにより、上空からでもアリの位置を探知することが可能となり、囲い内に人間が足を踏み入れることなく、スクロースを検出することができる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、特定物質に対する走化性を有する生物を特定物質に走化させ、走化した生物が特定物質と相互作用することにより生じる検出物質の発色または発光を探知することにより、特定物質を安全に高感度で検出する方法が実現される。また、本発明によれば、地中に埋設された特定物質を安全に高感度で検出する方法が実現される。また、本発明によれば、特定物質と相互作用し、これを分解する生物を用いることにより、地中に埋設された特定物質を安全に高い精度で除去する方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図2】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図3】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図4】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図5】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図6】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図7】本発明に係る検出方法の流れの一例を示す図である。
【図8】携帯用高感度FGMの構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
101 FGM
103 センサ部
105 FGM本体
107 電子回路部
109 電池
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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