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明細書 :電気流体力学ポンプ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4759671号 (P4759671)
公開番号 特開2006-158169 (P2006-158169A)
登録日 平成23年6月17日(2011.6.17)
発行日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成18年6月15日(2006.6.15)
発明の名称または考案の名称 電気流体力学ポンプ
国際特許分類 H02K  44/04        (2006.01)
F04B   9/00        (2006.01)
FI H02K 44/04
F04B 9/00 B
請求項の数または発明の数 13
全頁数 11
出願番号 特願2004-381641 (P2004-381641)
出願日 平成16年11月29日(2004.11.29)
審査請求日 平成19年11月13日(2007.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】花岡 良一
【氏名】高田 新三
【氏名】深見 正
個別代理人の代理人 【識別番号】100072420、【弁理士】、【氏名又は名称】小鍜治 明
審査官 【審査官】仲村 靖
参考文献・文献 特開昭58-148659(JP,A)
特開2003-284316(JP,A)
特開2002-8140(JP,A)
特開平05-068810(JP,A)
調査した分野 H02K 44/04
F04B 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、前記外側電極の外部に延びた流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加することを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項2】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、前記外側電極の外部に延びた流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加することを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項3】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、前記外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加することを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項4】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、前記外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加することを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項5】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、前記外側電極の外部に延びた流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して直列に連結したことを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項6】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、前記外側電極の外部に延びた流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して直列に連結したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項7】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、前記外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して直列に連結したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項8】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、前記外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して直列に連結したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項9】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、前記外側電極の外部に延びた流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して並列に結合したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項10】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、前記外側電極の外部に延びた流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して並列に結合したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項11】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、前記外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して並列に結合したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項12】
流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、前記外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で前記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、前記内側電極の露出部分を前記外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して前記外側電極と内側電極の間に前記流体を満たし、前記内側電極と前記外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ前記外側電極を複数個、前記流体送出流路管、ならびに前記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して並列に結合したことすることを特徴とする電気流体力学ポンプ。
【請求項13】
内側電極の露出部分の長さLを少なくとも0.7mmに設定したことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれが1項に記載の電気流体力学ポンプ。
発明の詳細な説明
【発明の詳細な説明】

【背景技術】
【0002】
古くから使用されてきた機械式ポンプ、すなわち回転羽根あるいは往復動ピストンを用いて流体を送り出すポンプは、羽根やピストンの動きに伴う摩擦熱や振動や摩擦音・振動音が生じ、それらを低減するためのメンテナンスを要することから、機械的ポンプに替わる電気流体力学ポンプ(electro-hydro-dynamics pump)(「EHDポンプ」と略す)の実用化に向けた研究開発が進んでいる。そして特開2003-284316号公開特許公報(特許文献1)に示されるようなEHDポンプが提案されている。
【0003】
上記特許文献1に示されるEHDポンプの概略構造は図8に示す通りで、ポンプケース70内に、リング状電極71と、リング状電極71の外径より小さい外径の柱状電極72を同軸状で長手方向にずらせて対向させ、その対をなすリング状電極71と柱状電極72の間に、電界が作用すると解離イオンが生ずる流体73(電界が加わると流体中にプラス・イオンとマイナス・イオンに分かれて現われる性質の流体)を充填し、そのリング状電極71と柱状電極72に間に電源74から直流高電圧を印加するものである。そしてリング状電極71と柱状電極72に間に直流高電圧が印加されると、リング状電極71と柱状電極72の間の電界によって、リング状電極71および柱状電極72の近傍にある流体73に解離イオンが生じ、電極界面にヘテロチャージ層が形成され、その結果、この層内のイオンと電極との間のクーロン力により、流体3は矢印M7に示すような流れとなって圧送される。しかし、このような従来のEHDポンプでは、リング状電極71と柱状電極72を同軸状で長手方向にずらせて対向させた電極群塊をポンプ内の流体流路中に置いていることから、ポンプ内に形成される流体流路の流路抵抗が大きくなる難点があり、またリング状電極71と柱状電極72を同軸状で長手方向にずらせて対向させる構造では、電極配置を構成する製作コストが嵩む難点があった。

【特許文献1】 特開2003-284316号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記のような従来のEHDポンプにおける難点に鑑み、ポンプ内の流体流路における電極の構成を改良することにより、EHDポンプの流路抵抗を減少させると共に電極配置構造を簡素化して製作コストを低減させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、この発明では、流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、その外側電極の外部に延びた流体送出流路管で上記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、内側電極の上記露出部分を外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を上記外側電極内に導入して外側電極と内側電極の間にその流体を満たし、上記の内側電極と外側電極との間に直流高電圧を印加して電気流体力学ポンプを構成する。
【0006】
そして実用的に好ましい手段として、流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、その外側電極の外部に延びた流体送出流路管で上記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、その内側電極の露出部分を外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を上記外側電極内に導入して外側電極と内側電極の間にその流体を満たし、上記の内側電極の露出部と外側電極との間に直流高電圧を印加して電気流体力学ポンプを構成する。
【0007】
また流体送出流路管を複数設けることも有効であり、流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、その外側電極の外部に互に反対方向へ延びた2本の流体送出流路管で上記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、その内側電極の露出部分を外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を上記外側電極内に導入して外側電極と内側電極の間にその流体を満たし、上記の内側電極と外側電極との間に直流高電圧を印加して電気流体力学ポンプを構成する。
【0008】
さらにまた、流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた筒状の外側電極の内部の長手方向に、線状の内側電極を露出状態で架設し、その外側電極の外部に延びた流体送出流路管で内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、上記の内側電極の露出部分を外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を前記外側電極内に導入して上記の外側電極と内側電極の間にその流体を満たして内側電極と外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ上記の外側電極を複数個、上記の流体送出流路管、ならびに上記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して並列または直列に連結してポンプ能力の拡大を図る。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、この発明に係る電気流体力学ポンプの構成では、可動機構がない上にポンプ内の流路内に、流体の流れ方向に大きな流路抵抗となる電極群を配設しないことから、摩擦音や振動音が生ずることなく大きな圧力ヘッドが得られ、また電極配置構造が極めて単純であることから、製造コストも低く抑えることができる。さらに原理上、従来のポンプのような電磁誘導現象を利用していないので電気的ノイズが一切発生しないという大きな特長がある。したがって、例えば精密電子機器等のクーリングユニットなどにこの発明に係る電気流体力学ポンプを利用すれば極めて大きな効果を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の望ましい実施形態は、流体帰還孔を設けた電気絶縁性端板で両端を封じた円筒状の外側電極の内部を長手方向に貫通するように線状の内側電極を同軸状に露出状態で架設し、その外側電極の外部に互いに反対方向へ延びた2本の流体送出流路管が上記内側電極を囲って流体送出流路を形成すると共に、少なくとも長さL=0.7mmに設定した上記内側電極の露出部分を外側電極の内周面と対向させ、電界が作用すると解離イオンが生成される流体を上記外側電極内に導入して上記の外側電極と内側電極の間にその流体を満たし、上記の内側電極と外側電極との間に直流高電圧を印加し、且つ上記の外側電極を少なくとも2個、上記の流体送出流路管、ならびに上記流体帰還孔に通ずる流体帰還流路管を介して並列または直列に連結した電気流体力学ンプである。なお、前記内側電極の露出部分の長さLが0.7mm以下では十分な圧力ヘッドが得られない。一方、ポンプを設置する対象に応じて長さLを7mm以上に大きくすることは全く問題はないが、圧力ヘッドはそれ以上増大せず飽和傾向を示す。
【実施例1】
【0011】
以下、この発明の実施例を説明する。図1はこの発明の一実施例を示す電気流体力学ポンプの縦断面図、図2は図1に示す電気流体力学ポンプのA-A′線断面図である。図1、図2において、1は、外径aの線状の内側電極で、内側電極1の露出部分1aの長さはLである。2は、内径bの円筒状の外側電極で、外側電極2の長さはNである。また、内側電極1と外側電極2の材質はステンレススチールで、内側電極1と外側電極2は同軸状に配置されている。3,4は電気絶縁性の流体送出流路管で、3a,4aはそれぞれ流体送出流路管3,4の送出口である。5,6は電気絶縁性端板で、外側電極2の両端面はそれぞれ電気絶縁性端板5,6で封じられている。7は電界が作用すると解離イオンが生成される流体、8は直流高圧電源である。9,10はそれぞれ電気絶縁性の流体帰還流路で、9a,10aはそれぞれ流体帰還流路9,10の流体還流口である。そして各絶縁性端板5,6の中心部にはそれぞれ流体送出流路管3,4のが接続され、外側電極2の内面近傍に流体帰還流路管9,10の流体還流口9a,10aが接続されている。また、外側電極2は接地線11を通じて常に接地電位に保たれており、線状の内側電極1と円筒状の外側電極2の間に直流高圧電圧を印加すると、内側電極1と外側電極2の間に強い電界が形成される。そして内側電極1と外側電極2が同軸電極配置となっているので、不平等電界が形成され、特に内側電極1の表面近傍に強電界が形成される結果となる。そこで解離性イオンとして負のイオンが生成され易い弱導電性流体の場合、内側電極1に(+)の電位、外側電極2に(-)の電位を与えると、「純伝導ポンピング」(前記特許文献1参照)の機構に基づき内側電極1の周囲に形成されたヘテロチャージ層と内側電極1との間で、層内イオンの当該電極表面法線方向に押す力により軸中心へ向こう圧力が発生する。この圧力は、露出している内側電極表面全体に及びベクトル的に相殺し合ってその積分値は零となるが、しかし流体送出流路管3,4の送出口3a,4a付近では当該圧力が無くなる結果、流体送出流路管3,4の送出口3a,4aへ向かう軸方向に新たな圧力差が生じて、これがポンピングの駆動源となる。
【0012】
上記のように、内側電極1と外側電極2の間に直流高電圧を印加して内側電極露出部分1aの表面電界強度が5~12MV/m程度の高い電界強度になると、円筒状の外側電極2から線状の内側電極1の露出部分1aに向かう強い電界が流体7に作用し、前記のように内側電極露出部分1aの表面近傍で流体7に大きな圧力が作用し、その内側電極露出部分1aと流体送出流路管3,4の内部を軸方向に沿って流体7が流動してポンプ機能が生じ、流体送出流路管3,4から吐出した流体7は、外部管路を経て流体帰還流路管9,10からそれぞれ流体帰還口9a,10aに流れ込んで循環する。
【実施例2】
【0013】
この発明に係るEHDポンプの他の実施例として、上記実施例1に示したEHDポンプを基にその構成を変え、電気絶縁性端板5,6のそれぞれに直径5mmの流体流流通孔を新たに設けると共に流体送出流路管3,4を大気中へ開放した内径4mmのガラス管とし、線状の内側電極1として外径(直径/線径)a=1.5mmの金属線を用い、円筒状の外側電極2の長さN=50mmとし、そのポンプ構造体を、電界が作用すると解離イオンが生成される流体7を満たしたタンク内に浸漬してポンピング特性を測定した。流体7として、2,3-ジヒドロデカフルオロペンテン(2,3-Dihydrodecafluoropenten)(「HFC43-10」と略す)(商品名:バートレル)を用いた上で、円筒状の外側電極2の内径b、内側電極1の露出部分1a露出部長さL、内側電極1と外側電極2の間に印加する印加電圧(直流高電圧)Vをそれぞれ変化させて、ポンピング圧力PEHDを測定した結果、それぞれ図3および図4に示す特性が認められた。
【0014】
図3は、外側電極2の内径b(=R)をパラメータとして、印加電圧Vに対するポンピング圧力PEHDの関係を示している。すなわち、外側電極2の内径bが小さくなるほど、内側電極1と外側電極2の間の電界が強くなるため、ポンピング圧力が2次曲線的に増大する特性が認められた。他方、図4は、外側電極2の内径b(=R)をパラメータとして、内側電極1の露出部長さLを変化させた場合のポンピング圧力PEHDの変化を示している。なお図4において、白抜き記号は印加電圧V=10kVの場合を示し、黒塗りつぶし記号は印加電圧V=14kVの場合を示している。当然ながら印加電圧Vが高い方がより大きなポンピング圧力PEHDが得られるが、一方で印加電圧Vに関わらず、内側電極1の露出部長さL=0.7mmを境に、内側電極1の露出部長さLをより長くしてもポンピング圧力PEHDが増大せず飽和傾向になることが認められた。したがって内側電極1の露出部長さLの最小値は0.7mmであるという結果が得られた。
【実施例3】
【0015】
次に、この発明に係る電気流体力学ポンプをクーリングユニットとして使用した実施例を、図5を参考に説明する。図5において、20はこの発明に係る前述と同様の電気流体力学ポンプ部(EHDポンプ部)で、1aは内側電極の露出部分、2は外側電極、3,4は流体送出流路管、5,6は電気絶縁性端板、7は解離イオンが生成される流体、8は直流高圧電源、9,10は流体帰還流路管、11は接地線である。21はペルチェ電子冷却素子で、ペルチェ電子冷却素子21は外側電極2の更に外側に密着して取り付けられている。22,23はアルミニウム製の冷却ユニットで、各冷却ユニット22,23には、それぞれ流体送出流路管3,4と流体帰還流路管9,10が接続されている。24,25はそれぞれ冷却ユニット22,23の吸熱面(被冷却面)であり、26,27はそれぞれ冷却ユニット22,23における流体流れ方向制御仕切り板である。そしてこの実施例では、外側電極2の長さN=20mmとし、直流高圧電源8を8kVに設定し、冷媒となる流体7にHFC43-10(商品名:バートレル)を用い、ペルチェ電子冷却素子21を-10℃に設定し、流体7をEHDポンプ部20により循環させた結果、約20分間で冷却ユニット22,23の吸熱面(被冷却面)24,25の温度が略-10℃に到達した。なお、この実施例では2箇所に吸熱面(被冷却面)24,25を設けたが、吸熱面(被冷却面)を1箇所として運転しても何ら支障は生じなかった。またペルチェ電子冷却素子21の冷却能力に応じて外側電極2の長さNを0.7mm以上にすれば、種々変えてもポンプ性能には問題生じなかった。さらにポンプの設置状況によって流体帰還流路管9,10の接続を入れ替えて用いることも可能であった。また、電界が作用すると解離イオンが生成される流体7としては、HFC43-10のほか、2,2-ジクロロ-1,1,1トリフルオロエタン(2,2-Dichloro-1,1,1-Trifluoroethane)(「HCFC123」と略す)、ジエチルグリコールモノブチルエーテルアセテート(「BCRA」と略す)、ドデカン二酸-nブチル(「DBDN」と略す)、フッ素変成シリコーン油、等を用いても良く、あるいは電気絶縁性液体にアルコールを微量添加したり、フッ素を添加して解離イオンの生成能力を高めて使用することは何ら差し支えない。
【実施例4】
【0016】
さらにこの発明に係るEHDポンプの他の実施例として、図6に示すように、2台の電気流体力学ポンプを流体送出流路管3と流体帰還流路管9を介して直列に連結して駆動することもできた。この場合、ポンプの外径寸法は実施例3と同一とし、流体7はHFC43-10(商品名:バートレル)を採用し、両方のポンプとも印加電圧Vを8kVに設定して、流体7を 流体送出流路管3-流体帰還流路管9-流体送出流路管3 と循環させた。その結果、外部管路に設置した圧力計によれば最大4kPaが得られた。
【実施例5】
【0017】
さらにまた、図7に示すように、2台の電気流体力学ポンプを流体送出流路管3と流体帰還流路管9を介して並列に結合して駆動することもできた。ここでの流体7や駆動条件は実施例4におけると同一としたが、一方のポンプ送出流体が他方のポンプの出口(流体送出管路)へ逆流することを防止するために逆止弁31を配設した。その結果、外部管路に設置した圧力計によれば最大2kPaが得られ、流量は2倍に達した。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明に係る電気流体力学ポンプは、可動機構がない上に流体の流れ方向に大きな流路抵抗となる電極群が存在しないことから摩擦音や振動音が生ずることなく大きな圧力ヘッドが得られ、また電極配置構造が極めて単純であることから製造コストも低く抑えることができる。さらに原理上、従来のポンプのような電磁誘導現象を利用していないので電気的ノイズが一切発生せず、したがって、例えば精密電子回路部品などのクーリングユニットなど、極めて幅広い分野・用途に、この発明に係る電気流体力学ポンプを活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 この発明の一実施例を示す電気流体力学ポンプの正面図。
【図2】 図1のA-A′線断面図。
【図3】 同電気流体力学ポンプの印加電圧に対するポンピング圧力の関係図。
【図4】 同電気流体力学ポンプの内側電極の露出部分長さに対するポンピング圧力の関係図。
【図5】 同電気流体力学ポンプをクーリングユニットに利用した概略構成図。
【図6】 同電気流体力学ポンプを2台直列接続して用いる概略構成図。
【図7】 同電気流体力学ポンプを2台並列接続して用いる概略構成図。
【図8】 従来の電気流体力学ポンプの断面図。
【符号の説明】
【0020】
1:内側電極
1a:内側電極の露出部分
2:外側電極
3,4:流体送出流路管
3a,4a:流体送出流路管の送出口
5,6:電気絶縁性端板
5a,6a:流体帰還孔
7:解離イオンが生成される流体
8:直流高圧電源
9,10:流体帰還流路管
9a,10a:流体帰還流路管の帰還口
11:接地線
20:電気流体力学ポンプ部分
21:ペルチェ電子冷却素子
22,23:冷却ユニット
24,25:吸熱面
26,27:流体流れ方向制御仕切り板
31:逆止弁
a:内側電極の外径
b:外側電極の内径
L:内側電極の露出部長さ
N:外側電極の長さ
EHD:ポンピング圧力
:外側電極の内径(半径)
:印加電圧
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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