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明細書 :金属繊維三次元構造体、およびその製造方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4497473号 (P4497473)
公開番号 特開2006-241582 (P2006-241582A)
登録日 平成22年4月23日(2010.4.23)
発行日 平成22年7月7日(2010.7.7)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
発明の名称または考案の名称 金属繊維三次元構造体、およびその製造方法。
国際特許分類 B22F   3/11        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
B22F   3/10        (2006.01)
B22F   5/10        (2006.01)
B22F   3/24        (2006.01)
FI B22F 3/11 C
A61L 27/00 L
B22F 3/10 F
B22F 5/10
B22F 3/24 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2005-062944 (P2005-062944)
出願日 平成17年3月7日(2005.3.7)
審査請求日 平成20年2月29日(2008.2.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】岸 陽一
個別代理人の代理人 【識別番号】100101960、【弁理士】、【氏名又は名称】服部 平八
審査官 【審査官】浅井 雅弘
参考文献・文献 特開昭52-050909(JP,A)
特開平03-146626(JP,A)
特開平09-049004(JP,A)
特開2000-080591(JP,A)
特開2003-268410(JP,A)
特開2004-018951(JP,A)
調査した分野 B22F 1/00- 8/00
C22C 1/04, 1/05
C22C33/02
A61L27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
純チタン繊維と純ニッケル繊維が空隙率40~95%の三次元構造をなし、かつ両繊維の接触部に金属間化合物が形成されていることを特徴とする金属繊維三次元構造体。
【請求項2】
さらに形状記憶特性を有することを特徴とする請求項1記載の金属繊維三次元構造体。
【請求項3】
純チタン繊維と純ニッケル繊維とを型枠内に積層状又はアトランダムな展開に充填し、1×10-3Pa以下の減圧雰囲気下、800~1000℃で焼結したのち、さらに1×10-4Pa以下の真空雰囲気下、800~1000℃で加熱し、冷却することを特徴とする金属繊維三次元構造体の製造方法。
【請求項4】
純チタン繊維と純ニッケル繊維との混合比率が原子組成比で0.7~2:1であることを特徴とする請求項3に記載の金属繊維三次元構造体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高い空隙率を有する金属繊維からなる三次元構造体、およびその製造方法に関し、さらに詳しくは冠動脈ステント、人工骨、人工歯根、電気機器の電極および空調機器などのフィルター用素材として用いられる高い空隙率を有し、かつ形状記憶特性を有する金属繊維三次元構造体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン系金属材料は、比強度が高く、耐食性、生体親和性にも優れていることから、工業分野では電気機器の電極や空調機器のフィルターとして、生体・医療分野では人工骨、人工歯根として使用されてきた。ところが、チタンは機械加工が困難な金属であり高精度の加工品や複雑な形状の部材を作成するには、粉末焼結法で仕様製品に近い製品を作成し、それを研削などで整形するなど無駄に消費する量が多く製品コストを高いものにしていた。
【0003】
近年、チタン系金属材料の上記特質を生かすとともに、高い空隙率を有する部材が、例えば心臓外科分野では冠動脈ステントの素材として、再生医療では生体骨の足場材の素材として、また、歯科分野では人工歯根の素材として、さらには空調機器分野ではフィルターの素材として求められるようになってきた。高い空隙率を有する部材の作成にはレーザー加工などの特殊加工法を用いて加工するのが一般的におこなわれているが、それでも空隙率が30%程度の製品が得られるのが限界であった。この問題を解決したチタン系金属部材として特許文献1にチタン繊維三次元構造焼結体が提案されている。該チタン繊維三次元構造焼結体は、空隙率が40%を超え、再生医療における骨髄中の未分化間葉系幹細胞の成長を大きく促進できる素材として、また、歯根培養が容易である部材として、また、電極における電流密度を大きくできる部材として、さらには空調機器分野において流体の圧力損失が少なく、パーティクルの補足効果が高い素材として注目を集めている。
【0004】
しかし、上記引用文献1に記載のチタン繊維三次元構造焼結体は、不織布状に展開したチタン系繊維を焼成したにとどまることから、人工骨、人工歯根、電極或いは空調機器のフィルターとして使用している内に、繊維の脱落が起こり、これらの部材が変形し、寿命が短いなどの欠点があった。その上、前記チタン繊維三次元構造焼結体では冠動脈ステントで必要とされる可撓性、高屈曲抵抗などの条件を満足させることができなかった。その上、前記チタン繊維三次元構造焼結体は加工が難しいことから所望の形状の部材を容易に作成できないなどの問題もあった。
【0005】
上記冠動脈ステントへの摘要からみるならば純チタンと純ニッケルとの金属間化合物であるTiNi形状記憶合金は優れた素材といえるが、従来のTiNi形状記憶合金ではレーザー加工などで空隙率を高めようとしても上記冠動脈ステント、人工骨、人工歯根、電極或いは空調機器のフィルター用素材として満足する空隙率を有する素材の作成が困難であるなどの問題があった。

【特許文献1】特開2004-18951号公報
【特許文献2】特開平2-303729号公報
【特許文献3】特開平4-82626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした現状に鑑み、本発明者は、鋭意研究を続けた結果、2種類以上の金属繊維を不織布状に積層体或いは混合展開し、それを特定の条件で加熱し、二種類以上の金属繊維間の接触部分を固相接合し、さらに規則化処理で金属間化合物を形成することで任意の形状の部材が容易に作成できる上に、金属繊維同士が堅固に固定され型崩れがなく安定した高い空隙率を有する三次元構造体が得られること、さらに、チタン繊維とニッケル繊維を用いて三次元構造体を得た場合には、それがTiNi形状記憶合金の特徴を有することをも見出して、本発明を完成したものである。すなわち、
【0007】
本発明は、金属繊維の接触部に金属間化合物が形成され形状記憶特性、超弾性特性に優れ、高い空隙率を有する金属繊維三次元構造体を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、可撓性、屈曲抵抗性に優れた金属繊維三次元構造体を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記金属繊維三次元構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、純チタン繊維と純ニッケル繊維が空隙率40~95%の三次元構造をなし、かつ両繊維の接触部に金属間化合物が形成されていることを特徴とする金属繊維三次元構造体及びその製造方法に係る。
【0011】
上記チタン繊維又はニッケル繊維は、JIS規格の第1種、第2種、第3種に定められた純金属チタン又はニッケルの1種又はそれ以外を削り出す切削法(特許文献2、3)や、チタン又はニッケル金属母材を伸線加工する伸線法などで製造された金属繊維であって、少なくともアスペクト比が15以上の短繊維又は長繊維である。前記アスペクト比が15未満では、繊維同士の絡み合いがなく不織布としての機能を果たさず、高い空隙率を有する三次元構造体を得ることができない。さらに、前記金属繊維はその断面を顕微鏡で観測する測定法で直径10~300μmであるのがよい。直径が1μm未満では三次元構造体の製造時に充填密度が過度になり空隙率の高い構造体が得られず、直径が300μmを越えると剛性が大きくなり過ぎ繊維の形枠への充填が困難となる。
【0012】
本発明の金属繊維三次元構造体は、純チタン繊維と純ニッケル繊維とが原子組成比で0.7~2:1の割合で混合展開又は積層された不織布状をなし、両金属繊維の接触部分が金属間化合物を形成し形状記憶特性、超弾性特性を有するとともに、空隙率が40~95%と高い立体形状をなす上に、可撓性、屈曲抵抗性にも優れた三次元構造体である。このように本発明の三次元構造体は金属繊維の接触部分がTiNi金属間化合物となっていることから冠動脈ステント、人工骨、人工歯根、電気機器の電極および空調機器などのフィルターとして使用中に金属繊維の脱落がなく長期間の使用ができる。さらに、形状記憶特性、超弾性特性、可撓性、屈曲抵抗性などに優れていることから、従来の形状記憶合金線或いは形状記憶薄板では製造困難な形状の部材も容易に製造できる。前記空隙率は、数式(1)
【0013】
【数1】
JP0004497473B2_000002t.gif

(式中、Rpは空隙率(%)、mは構造体の質量(g)、Vは構造体の体積(cm)、ρは密度(g/cm)を表わす。)
で表わされる値であり、製品の用途により適宜選定される。たとえば人工骨の場合には空隙率40~95%が、人工歯根の場合には60~95%が、電気機器の場合には40~60%が、フィルター材料の場合には空隙率70~90%などがよい。
【0014】
本発明の金属繊維三次元構造体は、純チタン繊維と純ニッケル繊維とを、型枠に原子組成比が0.7~2;1の範囲で混合展開又は積層し、それを不活性ガス又は真空雰囲気下、好ましくは1×10-3Pa以下の減圧雰囲気下で、800~1200℃の温度で加熱し、固相拡散による金属間化合物を形成したのち、さらに、1×10-4Pa以下の高度真空雰囲気下、800~1200℃で規則化処理して製造される。前記型枠としては、高融点を有し、チタンやニッケルと反応性がない材質、例えばMo、W、Taなどの高融点金属材料、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、サイアロンなどのセラミックス材料が好適に使用される。金属繊維三次元構造体の形状としては、円柱、角錐、円筒、円錐第、角錐台、球体、それらの組合せ体などが挙げられる。
【0015】
また、加熱炉としては、電気加熱式炉、ガス加熱式炉、通電加熱式炉、誘導加熱式炉等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属繊維三次元構造体は、純チタン繊維と純ニッケル繊維とが不織布状をなし、高空隙率を有する上に、純チタン繊維と純ニッケル繊維の接触部分が金属間化合物を形成し高い保形性を有し、かつ形状記憶特性、超弾性特性を有することから冠動脈ステント、人工骨、人工歯根、電気機器の電極および空調機器などのフィルターなど複雑な形状の部材も容易に作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明をさらに実施例に基づいて詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
コイル材切削法により換算直径46μmの純チタン繊維と換算直径46μmの純ニッケル繊維を製造し、洗浄・脱脂した。前記純チタン繊維と純ニッケル繊維とを原子組成比1:1で形枠内に均一に分散し、1×10-3Paの減圧雰囲気下、850℃で10時間加熱し、そのまま冷却し、縦14cm、横14cm、厚さ1mm、質量18.4gの角柱状の金属不織布を得た。この金属不織布をさらに真空熱処理炉内で1×10-4Paの真空雰囲気下、850℃で10時間加熱し、室温まで冷却し規則化処理を行った。得られた金属繊維三次元構造体の接合部を観察したところ図1、2にみるようにTiNi金属間化合物が形成されていた。さらに、同金属繊維三次元構造体について示差走査熱量測定をおこなったとこる、図3にみるようにマルチンサイト変態と逆変態とが見られ形状記憶特性を有することが確認された。この金属繊維三次元構造体についてニッケルの密度を8.85(g/cm)、チタンの密度を4.5(g/cm)として、式(1)を使用して空隙率を計算したところ86%であった。前記金属繊維三次元構造体は、形状記憶特性、超弾性特性、可撓性、屈曲抵抗などが良好で、冠動脈ステント用素材として有用であった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の金属繊維三次元構造体は、純チタン繊維と純ニッケル繊維とからなる三次元構造体で耐熱性、耐薬品性に優れている上に、高い空隙率を有し、かつ形状記憶特性、超弾性特性、可撓性、屈曲抵抗性に優れ、心臓外科、再生医療、歯科治療、電気機器の電極、空調用フィルターなどの素材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の金属繊維三次元構造体の接合部の200倍の走査電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明の金属繊維三次元構造体のX線回折図である。
【図3】本発明の金属繊維三次元構造体の示差走査熱量測定図である。
【符号の説明】
【0021】
1:チタン繊維
2:ニッケル繊維
3:チタン・ニッケル金属間化合物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2