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明細書 :透明導電膜の製造方法および製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4599595号 (P4599595)
公開番号 特開2007-154255 (P2007-154255A)
登録日 平成22年10月8日(2010.10.8)
発行日 平成22年12月15日(2010.12.15)
公開日 平成19年6月21日(2007.6.21)
発明の名称または考案の名称 透明導電膜の製造方法および製造装置
国際特許分類 C23C  14/08        (2006.01)
C23C  14/35        (2006.01)
C23C  14/34        (2006.01)
C23C  14/38        (2006.01)
C23C  14/40        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
FI C23C 14/08 C
C23C 14/35 Z
C23C 14/34 S
C23C 14/38
C23C 14/40
C23C 14/34 A
H01B 13/00 503B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願2005-350575 (P2005-350575)
出願日 平成17年12月5日(2005.12.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年9月7日 (社)応用物理学会発行の「2005年(平成17年)秋季 第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第2分冊」に発表
審査請求日 平成19年8月7日(2007.8.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】南 内嗣
【氏名】宮田 俊弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査官 【審査官】若土 雅之
参考文献・文献 特表2003-532997(JP,A)
特開2003-105533(JP,A)
特開2004-259764(JP,A)
特開2004-176099(JP,A)
調査した分野 C23C 14/00-14/58
H01B 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化亜鉛をターゲットとして用い、不活性ガスに水素、メタン、アルコール及びケトンからなる群から選択された少なくとも一つのガスを導入した雰囲気中で、直流電力に高周波電力を重畳したスパッタ電圧を用いたマグネトロンスパッタリング法により基体上に透明導電膜を形成する透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
前記酸化亜鉛は、Al,Ga,B,In,Y,Sc,F,V,Si,Ge,Ti,Zr,Hfからなる群から選択された少なくとも一つの元素がドープされている請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスはArである請求項1または2に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
前記雰囲気中に導入する水素導入量が0.1%~2.0%の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項5】
前記雰囲気中に導入する水素導入量が0.2%~1.0%の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項6】
前記不活性ガスに導入する水素導入量が0.3%~0.6%の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項7】
直流電力に重畳する高周波電力の周波数は2MHz~700MHzの範囲である請求項1乃至6のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項8】
前記高周波電力は、前記直流電力の30%~300%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項9】
前記高周波電力は、前記直流電力の60%~200%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜の製造方法に関し、特にマグネトロンスパッタリング装置を用いた透明導電膜の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(以下、FPDという)の大型化、高性能化に伴い、それらに用いる透明導電膜に要求される性能の向上やコストの低減の要求が高まっている。
【0003】
従来、透明導電膜を作製する薄膜形成技術として、マグネトロンスパッタリング装置が知られている(特許文献1参照)。マグネトロンスパッタリング装置は、放電などによりターゲット付近にプラズマを発生させ、このプラズマ中のイオンをターゲットに衝突させることにより粒子をスパッタし、その粒子を基体に付着させることにより成膜することが出来る。
【0004】
また、FPDに用いられる透明導電膜としては、錫ドープ酸化インジウム(In:Sn、以下、ITOという)が幅広く用いられているが、原料として含まれているインジウムが希少金属で高価なため、安定供給やコストの観点から懸念がある。
【0005】
そこで、ITO透明導電膜の代替材料として、安価で豊富な供給が可能なアルミニウムドープ酸化亜鉛(ZnO:Al、以下、AZOという)等が注目されている。

【特許文献1】特開平6-172995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ZnO系透明導電膜等は、マグネトロンスパッタリング(以下、MSPという)法を用いて約300℃以下の基板上に作製される場合、ターゲット表面と対向して配置された基板上で抵抗率分布を生じるため、導電膜の低抵抗率化を阻害する大きな要因となっている。
【0007】
本発明は、上述の課題を鑑みなされたもので、その目的とするところは、MSP法で酸化物による導電膜を形成する際に、抵抗率分布の均一性の向上を図る透明導電膜の製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の透明導電膜の製造方法は、酸化物をターゲットとして用い、不活性ガスに水素及び/又は有機ガスを導入した雰囲気中で、直流電力に高周波電力を重畳したスパッタ電圧を用いたマグネトロンスパッタリング法により基体上に透明導電膜を形成する。
【0010】
前記酸化物としては、例えば、Al,Ga,B,In,Y,Sc,F,V,Si,Ge,Ti,Zr,Hfからなる群から選択された少なくとも一つの元素がドープされた酸化亜鉛であってもよい。より好ましくは、低コストで入手も比較的容易であり、抵抗率も低くくなるAl,Gaがよい。
【0011】
この態様によると、不活性ガスに水素及び/又は有機ガスを導入した雰囲気中で直流電力に高周波電力を重畳したスパッタ電圧を用いることで、エロージョン対向部での酸化を抑制可能となり、過剰な酸化が原因と考えられる酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の抵抗率分布の均一性を向上することができる。なお、直流電力に高周波電力を重畳した電圧が生成する放電プラズマを用いてもよい。また、雰囲気中に導入する水素や有機ガスは、不活性ガスと混合された状態で真空容器等に導入してもよいし、別々のガス供給源から真空容器等に導入された後に雰囲気中で混合されてもよい。
【0012】
前記不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガスを用いることが出来る。また、有機ガスとしては、例えば、C-C結合を持たないメタン、アルコール、ケトン等の還元性を発現する有機ガスを用いることが出来る。また、前記雰囲気中に導入する水素導入量が0.1%~2.0%の範囲であってもよい。より好ましくは、水素導入量が0.2%~1.0%の範囲であるとよい。更により好ましくは0.3%~0.6%の範囲であるとよい。この態様によれば、透明電極の抵抗率自体を低くすることができる。また、エロージョン対向部の抵抗率が低くなることで抵抗率分布も改善される。
【0013】
また、直流電力に重畳する高周波電力の周波数は2MHz~700MHzの範囲であってもよい。また、前記高周波電力は、前記直流電力の30%~300%の範囲であってもよい。より好ましくは、前記直流電力の60%~200%の範囲であってもよい。
【0014】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抵抗率分布の均一性を向上した透明導電膜を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(基本原理)
従来、ターゲットのエロージョン対向部の抵抗率の増加は、高エネルギーに加速された酸素(エロージョン部上の直流電界(スパッタ電圧)により基板上に向かって加速される酸素(負イオン))の衝撃による膜のダメージが原因と考えられていた。
【0017】
しかし、発明者らの研究によりこの研究成果(解釈)が正確でないことが発見され、その知見に基づいて本発明は考案されたものである。
【0018】
発明者らの解釈では、エロージョン対向部における基板上では、他の部分と比較して到達する酸素の量が多く、かつ酸素の活性度も高いことが、エロージョン対向部における抵抗率上昇の主原因と考えている。
【0019】
換言すれば、マグネトロンスパッタリングでは、原理上、アルゴンガス(正イオン)を加速してスパッタリングを生じることのできる部分(直流電界)が存在(分布)するため、酸素イオン(負イオン)が加速する部分も存在(分布)する。
【0020】
結果として、基板上へ到達する酸素の活性度及び酸素の量に分布を生じる。膜作製条件に依存するが、酸化亜鉛等の場合、通常、基板上はターゲットからスパッタされた酸素のみですでに酸化過剰(酸素の供給過剰)の状態にある。そのため、エロージョン対向部では、さらに酸化過剰(酸素の供給過剰)となり、抵抗率が高くなると考えられる。
【0021】
そこで、発明者らは、酸化過剰な状態を抑制すべく、還元性のある水素や有機ガスを導入することで抵抗率や抵抗率分布が改善されることを見いだした。
【0022】
一方、発明者らは、高周波電力のみまたは直流電力のみでは水素や有機ガスの還元性が不足するが、高周波電力を直流電力に重畳することで水素や有機ガスの還元性を高めるこことにより低抵抗率や抵抗率分布が改善されることを見いだした。
【0023】
図1は、直流電力を一定にして高周波電力を異ならせてAr雰囲気中でガラス基板上に作製したAZO膜の抵抗率分布を比較したグラフである。
【0024】
図1に示すように、Ar雰囲気中においても高周波電力を直流電力に重畳した場合は、直流電力のみの場合と比較して、抵抗率自体が下がるだけでなく抵抗率分布の均一性が向上する。また、高周波電力の重畳により成膜速度が向上する作用効果がある。
【0025】
以上の知見に基づき、水素や有機ガスを導入した雰囲気中で、直流電力に高周波電力を重畳したスパッタ電圧を用いたマグネトロンスパッタリング法を行うことにより、更なる抵抗率や抵抗率分布の改善を果たすことが可能となった。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0027】
(実施形態)
図2は、本実施形態に係るマグネトロンスパッタリング装置10の一例を模式的に示した要部断面図である。なお、図2は、マグネトロンスパッタリング装置10の構成のうち、真空チャンバ70に収容された構成を示す。
【0028】
マグネトロンスパッタリング装置10では、ターゲット20と薄膜が形成される土台となる基体30とが対向して配置されている。ターゲット20と反対側の基体30の面に接する状態でアノード60が設けられている。アノード60は、スパッタされたターゲット20の成分が薄膜として形成される基体30を保持する基体ホルダとして機能する。一方、ターゲット20は、ターゲットホルダを有するマグネトロンカソード部22によって保持されている。
【0029】
マグネトロンカソード部22は、ステンレスなどの金属で形成されている。また、マグネトロンカソード部22は、高周波電源と直流電源を有する電力供給源40により交流電力(高周波電力)を重畳した直流電力が供給され、カソードとしても機能する。マグネトロンカソード部22の背面には、磁界発生手段として磁石50およびヨーク52が設けられている。磁石50およびヨーク52との隙間には、マグネトロンカソード部22を冷却する手段として、冷却水などの冷媒を循環させるパイプ54が設けられている。磁石50としては、永久磁石を用いてもよいし、電磁石を用いてもよい。
【0030】
なお、マグネトロンカソード部22を冷却する手段は、冷却水の循環による放熱に限られず、アルミニウムブロックのような金属による放熱であってもよい。磁石50およびヨーク52は、ステンレスなどの金属等で形成されたシールド板43によって囲まれている。シールド板43により、ターゲット20のエロージョン部上方以外での放電やスパッタリングを防止する。
【0031】
真空チャンバ70は、ターゲット20と基体30とを含む空間を所望の真空度に維持することが可能であり、スパッタリングガスを供給するガス供給源72と、真空チャンバ内を排気し所望の真空度を得るための真空ポンプ74が取り付けられている。また、成膜時の基体30の温度を変更するための加熱手段(不図示)が設けられている。
【0032】
以下、上述の実施形態に係るマグネトロンスパッタリング装置10を用いた透明導電膜の製造方法について実施例を参照して説明する。
【0033】
(実施例)
はじめに、マグネトロンスパッタリング装置10で使用される本実施例に係るターゲット20および基体30について説明する。
【0034】
ターゲット20は、直径約150mmの高密度焼結体であるZnOにAlをドープしたものを使用する。なお、ターゲットの形状は円形だけでなく方形等任意のものであってもよく、装置や材料、成膜条件に応じて適宜選択すればよい。また、基体30にはガラス基板を使用する。そして、ターゲット20および基体30をマグネトロンスパッタリング装置10の所定の位置に配置し、真空ポンプ74により所望の真空度となるよう真空チャンバ70内を排気する。その際、基体30であるガラス基板を加熱手段(不図示)により200℃に加熱する。
【0035】
真空チャンバ70が所望の真空度となった状態で、ArにHをX%導入したスパッタガスをガス供給源72から真空チャンバ70内に供給する。なお、雰囲気中に導入するHや有機ガスは、不活性ガスと混合されてから真空チャンバ70に導入してもよいし、別々のガス供給源から真空チャンバ70に導入されてもよい。ここで、スパッタガス圧は0.4Paである。そして、電力供給源40からマグネトロンカソード部22に高周波電力を重畳した直流電力を印加し透明導電膜を作成する。本実施例では、高周波電力は100W、直流電力は80Wである。
【0036】
ここで高周波電力は、直流電力の30%~300%、より好ましくは60%~200%の範囲で設定されているとよい。高周波電力の割合が少なすぎる又は多すぎると、直流成分、高周波成分の一方の特性が強すぎてしまうからである。
【0037】
また、直流電力に重畳する高周波電力の周波数は2MHz~700MHzの範囲が好ましい。周波数が2MHzより小さいと、プラズマが生成しにくくなる一方、周波数が700MHzより大きくなると、電力損失が増大し、スパッタ効率が悪化するからである。より好ましくは、10MHz~100MHzの範囲であればよく、例えば、13.56MHzの周波数が好適に用いられる。
【0038】
図3は、Arガスに導入するHの導入量を異ならせてガラス基板上に作製したAZO膜の抵抗率分布を比較したグラフである。図3に示すように、Arのみの条件(X=0%)と比較してH導入量X=0.4%、0.6%、0.8%の条件で作製したAZO膜は、抵抗率が低くなると共に抵抗率分布の均一性も向上している。これは、エロージョン対向部での酸化を抑制することができているためと考えられる。
【0039】
一方、H導入量X=1.0%の条件で作製したAZO膜は、抵抗率が若干上昇すると共に抵抗率分布の均一性も若干低下している。これは、H導入量の増加による結晶性の悪化が原因と考えられる。以上の結果を考慮すると、H導入量の好ましい範囲の上限は2.0%以下、より好ましくは1.0%以下である。H導入量の好ましい範囲の下限は0.1%以上、より好ましくは0.2%以上である。それ以下であるとH導入による酸化の抑制が不十分となるからである。それ以上では水素が膜中に取り込まれたり酸素が過剰に還元されてしまう。
【0040】
図4は、本実施例の作製法により作製されたAZO膜の平均抵抗率と水素導入量との関係を示すグラフである。図4に示すように、基体表面全体について場所と膜厚について平均した抵抗率は、水素導入量が0%の場合と比較して、水素導入量が約0.2%から約0.7%の範囲で低下しており、効果が認められる。より好ましくは、水素導入量が0.3%以上、0.6%以下のArをスパッタガスに用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】直流電力を一定にして高周波電力を異ならせてガラス基板上に作製したAZO膜の抵抗率分布を比較したグラフである。
【図2】本実施形態に係るマグネトロンスパッタリング装置の一例を模式的に示した要部断面図である。
【図3】Arガスに導入するHの導入量を異ならせてガラス基板上に作製したAZO膜の抵抗率分布を比較したグラフである。
【図4】本実施例の作製法により作製されたAZO膜の平均抵抗率と水素導入量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
10 マグネトロンスパッタリング装置、 20 ターゲット、 22 マグネトロンカソード部、 30 基体、 40 電力供給源、 43 シールド板、 50 磁石、 52 ヨーク、 54 パイプ、 60 アノード、 70 真空チャンバ、 72 ガス供給源、 74 真空ポンプ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3