TOP > 国内特許検索 > 物体の加工処理方法と、その装置 > 明細書

明細書 :物体の加工処理方法と、その装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3463159号 (P3463159)
公開番号 特開平11-297493 (P1999-297493A)
登録日 平成15年8月22日(2003.8.22)
発行日 平成15年11月5日(2003.11.5)
公開日 平成11年10月29日(1999.10.29)
発明の名称または考案の名称 物体の加工処理方法と、その装置
国際特許分類 H05H  1/46      
C23C 14/54      
FI H05H 1/46 A
H05H 1/46
C23C 14/54
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願平10-091749 (P1998-091749)
出願日 平成10年4月3日(1998.4.3)
審査請求日 平成12年10月6日(2000.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】作道 訓之
【氏名】粟津 薫
個別代理人の代理人 【識別番号】100090712、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 忠秋
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開 平5-267226(JP,A)
特開 平2-105413(JP,A)
特開 平2-164441(JP,A)
特開 平9-330915(JP,A)
特開 平4-174514(JP,A)
特開 平10-5579(JP,A)
特開 平6-256943(JP,A)
特開 平2-11762(JP,A)
特開 平11-260276(JP,A)
特開 平6-192834(JP,A)
特開 平4-280055(JP,A)
N. Sakubo et al.,Development of hybrid pulse plasma coating system,Surface and Coatings Technology,2001年,136,23-27
調査した分野 H05H 1/46
C23C 14/54
特許請求の範囲 【請求項1】
三次元の複雑形状の被処理物体の表面に均一な加工処理をするに際し、被処理物体を収容する真空槽に一定の加工処理用の原料ガスを導入し、真空槽内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させるとともに原料ガスを間欠的に電離させてプラズマを生成し、原料ガスの圧力変化に対し、原料ガスが被処理物体の周囲に均一に拡散するに要する時間相当だけ遅らせて原料ガスの電離の開始時期を同期させることを特徴とする物体の加工処理方法。

【請求項2】
原料ガスを電離させた後、被処理物体に負のパルス電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の物体の加工処理方法。

【請求項3】
三次元の複雑形状の被処理物体の表面に均一な加工処理をするための物体の加工処理装置であって、被処理物体を収容する真空槽と、該真空槽に一定の加工処理用の原料ガスを供給する原料ガス供給源と、記真空槽内の原料ガスを間欠的に電離させてプラズマを生成する電力供給源と、前記真空槽内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させる圧力変化手段とを備えてなり、電力供給源は、原料ガスの圧力変化に対し、原料ガスが被処理物体の周囲に均一に拡散するに要する時間相当だけ遅らせて原料ガスの電離の開始時期を同期させるように作動ることを特徴とする物体の加工処理装置。

【請求項4】
前記真空槽内の被処理物体に負のパルス電圧を印加する電源装置を付加することを特徴とする請求項記載の物体の加工処理装置。

【請求項5】
前記電力供給源は、高周波発振器、マイクロ波発振器の一方または双方を備えることを特徴とする請求項3または請求項記載の物体の加工処理装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】この発明は、三次元の複雑形状の被処理物体であっても、表面に均一な薄膜を形成し、または均一なイオンドーピング処理等をすることができる物体の加工処理方法と、その装置に関する。

【0002】

【従来の技術】真空槽内に被処理物体を置いてプラズマを発生させると、被処理物体の近傍にイオンリッチなイオンシースと呼ばれる領域が形成され、イオンシースを介してイオンが被処理物体の表面に向けて垂直に加速される。そこで、この現象を利用することにより、複雑形状の三次元物体の表面をエッチング処理したり、イオンドーピング処理したり、薄膜を形成したりすることができる(たとえば特公昭53-44795号公報)。なお、以下の説明において、これらの処理を一括して物体の加工処理という。

【0003】
従来のこの種の加工処理装置は、被処理物体を収容する真空槽内に原料ガスを連続的に導入し、数10~数100MHzの高周波電力または数GHzのマイクロ波電力を投入することによって原料ガスを連続的に電離させ、プラズマを生成させるものである。なお、金属イオンを利用するときは、アルゴンなどのイオンまたはプラズマにより金属材料をスパッタリングして金属イオンを放出させ、金属イオンビームとして真空槽内の被処理物体に衝突させる方法も知られている。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】かかる従来技術の前者によるときは、原料ガスは、真空槽内に連続的に導入され、プラズマ界面において連続的に分解するので、その近傍の被処理物体の表面のみが選択的に加工処理され、被処理物体の表面全体を均一に加工処理することが容易でないという問題があった。また、後者によるときは、金属イオンビームは、電場や磁場を介して被処理物体に導く必要があるため、全体装置が大形化し、複雑化する上、金属イオンビームに方向性があるため、複雑形状の被処理物体の均一な加工処理が困難であり、原料ガス中の金属等が被処理物体以外の部分にも付着して安定な長時間操業が難しいという問題がある。

【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、真空槽内の原料ガスを間欠的に電離させてプラズマを生成することによって、金属イオンを利用する場合であっても、複雑形状の被処理物体に対して均一な加工処理を容易に、しかも安定に実現することができる物体の加工処理方法と、その装置を提供することにある。

【0006】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するためのこの出願に係る第1発明の構成は、三次元の複雑形状の被処理物体の表面に均一な加工処理をするに際し、被処理物体を収容する真空槽に一定の加工処理用の原料ガスを導入し、真空槽内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させるとともに原料ガスを間欠的に電離させてプラズマを生成し、原料ガスの圧力変化に対し、原料ガスが被処理物体の周囲に均一に拡散するに要する時間相当だけ遅らせて原料ガスの電離の開始時期を同期させることをその要旨とする。

【0007】
なお、原料ガスを電離させた後、被処理物体に負のパルス電圧を印加してもよい。

【0008】
第2発明の構成は、三次元の複雑形状の被処理物体の表面に均一な加工処理をするための物体の加工処理装置であって、被処理物体を収容する真空槽と、真空槽に一定の加工処理用の原料ガスを供給する原料ガス供給源と、真空槽内の原料ガスを間欠的に電離させてプラズマを生成する電力供給源と、真空槽内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させる圧力変化手段とを備えてなり、電力供給源は、原料ガスの圧力変化に対し、原料ガスが被処理物体の周囲に均一に拡散するに要する時間相当だけ遅らせて原料ガスの電離の開始時期を同期させるように作動することをその要旨とする。

【0009】
なお、真空槽内の被処理物体に負のパルス電圧を印加する電源装置を付加してもよい。

【0010】
さらに、電力供給源は、高周波発振器、マイクロ波発振器の一方または双方を備えることができる。

【0011】

【作用】かかる第1発明の構成によるときは、原料ガスは、真空槽内に導入され、真空槽内の被処理物体の周囲に均一に拡散された後、電離されてプラズマを生成し、イオンシースを介して所定のイオンが被処理物体の表面に向けて加速され、被処理物体に対して所定の加工処理をすることができる。すなわち、原料ガスの電離の開始時期は、原料ガスの拡散に要する時間相当のオフ時間をおいて、原料ガスの電離、イオンシースの形成、イオンの加速に要する時間相当のオン時間を有するように設定すればよい。

【0012】
ただし、ここでいう「間欠的」とは、一定または不定の周期による繰返し動作を意味する他、単発動作をも含むものとする。

【0013】
なお、原料ガスは、各種の有機金属化合物や、ハロゲン化金属などの他、いわゆるCVD(chemical vapour deposition)技術に適用可能なあらゆるガスが単体ガスまたは混合ガスとして使用可能である。また、原料ガスを電離させるには、誘導結合または容量結合により、原料ガス中に所定の電力密度以上の高周波電力またはマイクロ波電力を投入すればよい。

【0014】
真空槽内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させれば、原料ガスの圧力変化の時期と、原料ガスの電離の開始時期とを同期させることにより、一層均一な加工処理が可能である。原料ガスは、その圧力が所定値以上に高くなることにより、被処理物体の周囲に均一に拡散していることが保証されるからである。なお、ここでいう「同期」とは、原料ガスの圧力変化に対し、一定の時間遅れをおいて原料ガスの電離の開始時期が同期する場合を含むものとする。

【0015】
また、原料ガスの圧力を間欠的に変化させるには、原料ガスを真空槽に対して間欠的にパルス状に導入する他、原料ガスを真空槽に連続的に導入するとともに真空槽の排気系の排気速度を時間的に変化させてもよく、これらの双方を併用してもよい。

【0016】
原料ガスを電離させた後、被処理物体に負のパルス電圧を印加すれば、パルス電圧は、プラズマ中のイオンを電気的に加速し、イオンミキシングによる改質効果を実現することができる。

【0017】
なお、この発明は、原料ガスを間欠的に電離させることにより、原料ガスをプラズマ中に導入せず、真空槽内の原料ガスがプラズマ化していないときに原料ガスを導入するから、原料ガス中の金属等が導入口の近傍などに付着してしまう不都合を最少に抑えることができる。

【0018】
第2発明の構成によるときは、原料ガス供給源は、被処理物体を収容する真空槽に原料ガスを供給し、電力供給源は、真空槽内の原料ガスを間欠的に電離させる。すなわち、電力供給源による原料ガスの電離の開始時期を適切に設定することにより、第1発明を容易に実施することができる。なお、ここでいう「間欠的」とは、第1発明におけるそれと同様の意味である。

【0019】
圧力変化手段を付加すれば、圧力変化手段は、真空槽内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させる。そこで、圧力変化手段による原料ガスの圧力変化に対し、電力供給源による原料ガスの電離の開始時期を同期させることにより、一層均一な加工処理が可能である。なお、ここでいう「同期」とは、第1発明におけるそれと同様の意味である。また、圧力変化手段は、原料ガスを真空槽に間欠的にパルス状に導入し、または、原料ガスを真空槽に連続的に導入して真空槽の排気速度を時間的に変化させ、あるいは、これらの双方を併用することができる。

【0020】
電源装置を付加すれば、電源装置は、真空槽内の原料ガスが電離した後、被処理物に負のパルス電圧を印加し、イオンミキシングによる改質効果を実現することができる。

【0021】
高周波発振器、マイクロ波発振器の一方または双方を備える電力供給源は、原料ガスに投入する電力密度、原料ガスの電離効率等の観点から、高周波発振器、マイクロ波発振器の利点を最適に組み合わせて利用することができる。

【0022】

【発明の実施の形態】以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。

【0023】
物体の加工処理装置は、真空槽11と、真空槽11に一定の加工処理用の原料ガスを供給するガス供給源20と、真空槽11内の原料ガスを電離させる電力供給源30とを備えてなる(図1)。

【0024】
真空槽11は、台座Wa を介し、二次元、三次元の任意の形状の被処理物体Wを収容することができる。真空槽11には、排気弁12を介して真空ポンプ13が連結されており、排気弁12、真空ポンプ13は、他の付属機器とともに真空槽11の排気系を形成している。また、真空槽11には、真空ゲージ14が付設されている。

【0025】
原料ガス供給源20は、原料ガス用のボンベ21に流量調整弁22を付設して構成されている。流量調整弁22の出口側は、コネクタ20aを介して真空槽11内に開口している。

【0026】
電力供給源30は、高周波発振器31に整合回路32を付設して構成されている。高周波発振器31には、制御器41が接続されており、整合回路32の出力側は、気密の導入窓11aを介し、真空槽11内に配設するアンテナ33に接続されている。

【0027】
真空槽11は、真空ポンプ13を作動させて排気弁12を開くことにより、所定の真空度に排気することができる。そこで、流量調整弁22を開いてボンベ21からの原料ガスを真空槽11に導入すると、原料ガスは、真空槽11内の被処理物体Wの周囲に均一に拡散するから、その後、制御器41を介して高周波発振器31を作動させると、高周波発振器31は、整合回路32、アンテナ33を介して真空槽11内の原料ガスに高周波電力を供給し、原料ガスを電離させてプラズマを生成することができる。よって、このようにしてプラズマ化された原料ガスは、被処理物体Wの周囲にイオンシースを形成し、イオンシースを介してイオンが被処理物体Wの表面に向けて垂直に加速され、被処理物体Wを均一に加工処理することができる。なお、整合回路32は、高周波発振器31とアンテナ33とのインピーダンス整合を図る。

【0028】
制御器41は、高周波発振器31を周期T=T1 +T2 により間欠的に作動させる(図2)。ただし、オフ時間T2 は、真空槽11内に導入される原料ガスが被処理物体Wの周囲に均一に拡散するに要する時間相当にとり、オン時間T1 は、電離されてプラズマ化した原料ガスが被処理物体Wの周囲にイオンシースを形成し、イオンが被処理物体Wに向けて加速されるに要する時間相当にとればよい。なお、周期Tは、必ずしも一定でなくてもよく、制御器41による高周波発振器31の動作は、繰返し動作ではなく、単発動作であってもよい。

【0029】

【他の実施の形態】ガス供給源20の流量調整弁22は、制御器41によって開閉制御するコントロール弁23に代えることができる(図3)。

【0030】
制御器41は、コントロール弁23を間欠的に開閉することにより(図4)、ボンベ21からの原料ガスを真空槽11に間欠的にパルス状に導入するとともに、高周波発振器31を間欠的に作動させる。ただし、高周波発振器31は、コントロール弁23を介して導入される原料ガスが被処理物体Wの周囲に均一に拡散するに要する時間相当の時間遅れTd1だけ遅れてコントロール弁23に同期して作動する。また、コントロール弁23は、開時間T3 、閉時間T4 、周期T=T3 +T4 =T1 +T2 に従って開閉させている。

【0031】
図3、図4において、コントロール弁23は、周期T、開時間T3 、閉時間T4 に従って開閉することにより、真空槽11内の原料ガスの圧力を間欠的に変化させる圧力変化手段を形成している。そこで、かかる圧力変化手段は、図1において、排気弁12、真空ポンプ13からなる排気系の排気速度を間欠的に変化させてもよい。また、圧力変化手段は、コントロール弁23の開閉制御と、排気系の排気速度の変化制御との双方を併用してもよい。

【0032】
被処理物体Wを支持する台座Wa は、絶縁物Wb を介して真空槽11から電気的に絶縁し、電源装置42に接続することができる(図3)。電源装置42は、制御器41によって制御されており、被処理物体Wに対して負のパルス電圧Vを印加することができる。

【0033】
電源装置42は、高周波発振器31の作動から時間遅れTd2だけ遅れて作動し(図5)、被処理物体Wに負のパルス電圧Vを印加することにより、プラズマ中のイオンを被処理物体Wに向けて電気的に加速し、イオンミキシングによる改質効果を実現することができる。なお、電源装置42からのパルス電圧Vは、V=-(1~20)kV、パルス幅T5 ≒10μSのオーダである。また、時間遅れTd2は、イオンシースを介してイオンが加速され、被処理物体W上にイオンが十分にデポジットされるに要する時間相当に設定すればよい。

【0034】
以上の説明において、アンテナ33、整合回路32は、高周波発振器31からの高周波電力を誘導結合によって原料ガスに供給する。そこで、アンテナ33は、真空槽11内に配設する適当な電極板に代え、容量結合によって高周波電力を供給してもよい。また、電力供給源30は、高周波発振器31に代えてマイクロ波発振器を使用し、図示しない導波管を介してマイクロ波電力を真空槽11内の原料ガスに供給してもよく、高周波発振器31とマイクロ波発振器とを併用してもよい。

【0035】

【発明の効果】以上説明したように、この出願に係る第1発明によれば、真空槽内の原料ガスを間欠的に電離させてプラズマを生成することによって、原料ガスは、被処理物体の周囲に均一に拡散されてプラズマ化されるから、三次元の複雑形状の被処理物体に対して均一な加工処理を容易に実現することができる上、原料ガスがプラズマ中に導入されることがないから、金属イオンを利用する場合であっても、金属が導入口の近傍などに付着したり、それによって操業の安定性が損われたりするおそれがないという優れた効果がある。

【0036】
第2発明によれば、真空槽と、原料ガス供給源と、電力供給源とを組み合わせることによって、第1発明を容易に実施することができる。
図面
【図2】
0
【図4】
1
【図1】
2
【図3】
3
【図5】
4