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明細書 :磁気測定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3651268号 (P3651268)
公開番号 特開2000-028695 (P2000-028695A)
登録日 平成17年3月4日(2005.3.4)
発行日 平成17年5月25日(2005.5.25)
公開日 平成12年1月28日(2000.1.28)
発明の名称または考案の名称 磁気測定方法及び装置
国際特許分類 G01R 33/04      
FI G01R 33/04
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願平10-193053 (P1998-193053)
出願日 平成10年7月8日(1998.7.8)
審査請求日 平成14年10月22日(2002.10.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】賀戸 久
個別代理人の代理人 【識別番号】100087479、【弁理士】、【氏名又は名称】北野 好人
審査官 【審査官】堀 圭史
参考文献・文献 特開平06-294850(JP,A)
特開平09-304441(JP,A)
特開昭58-180964(JP,A)
調査した分野 G01R 33/02-10
特許請求の範囲 【請求項1】
磁性材料からなるコアに交流励磁信号を印加して励磁し、励磁された前記コアの磁束変化を検出することにより、前記コアに印加された磁気を測定する磁気測定方法において、
前記交流励磁信号の極大部分又は極小部分による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域に及ぶように前記交流励磁信号に直流信号を印加し、
前記交流励磁信号に同期して前記コアの磁束変化を検出することを特徴とする磁気測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の磁気測定方法において、
前記直流信号は、前記交流励磁信号の正部分全域又は負部分全域による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域にほぼ及ぶような大きさである
ことを特徴とする磁気測定方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁気測定方法において、
第1の方向に励磁される前記コアの第1の部分の磁束変化と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に励磁される前記コアの第2の部分の磁束変化とに基づいて、前記コアに印加された磁気を測定する
ことを特徴とする磁気測定方法。
【請求項4】
磁性材料からなるコアと、前記コアを励磁する励磁用コイルと、前記励磁用コイルに交流励磁信号を印加する励磁手段と、前記交流励磁信号の極大部分又は極小部分による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域に及ぶように前記交流励磁信号に直流信号を印加する直流印加手段と、前記励磁用コイルにより励磁された前記コアの磁束変化を検出する検出手段とを有し、
前記励磁手段は、前記励磁手段の前記交流励磁信号に同期して前記コアの磁束変化を検出することを特徴とする磁気測定装置。
【請求項5】
請求項記載の磁気測定装置において、
前記直流印加手段により印加される前記直流信号は、前記交流励磁信号の正部分全域又は負部分全域による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域にほぼ及ぶような大きさである
ことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の磁気測定装置において、
前記検出手段は、
第1の方向に励磁される前記コアの第1の部分の磁束変化と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に励磁される前記コアの第2の部分の磁束変化とに基づいて、前記コアの磁束変化を検出する
ことを特徴とする磁気測定装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の磁気測定装置において、
前記励磁コイルは、前記コアの所定領域を一方から他方に巻回され、折り返されて他方から一方に巻回されていることを特徴とする磁気測定装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気測定方法及び装置に係り、特に、磁性材料からなるコアに交流励磁信号を印加して励磁し、励磁されたコアの磁束変化を検出することにより、コアに印加された磁気を測定する磁気測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気センサは、ハードディスクやフロッピーディスク等の磁気記録用ヘッドや、メカトロニクスにおける各種センサ、医用電子技術における各種センサ、磁気方位センサ、環境磁気センサなどに幅広く使用されている。
フラックスゲートセンサは、地磁気検出に使用されたものでフラックスゲート磁界センサとも呼ばれている。これは、高透磁率材料の磁気的非線形性を利用した磁気センサであり、高感度で扱いやすく、指向性が鋭いので、月の地磁気などの微小な磁気や磁気の方向成分を測定するために使われている。
【0003】
従来のフラックスゲートセンサは、例えば、図12に示すように、高透磁率磁性材料、例えば、パーマロイ(ニッケル-鉄合金)からなる直線状のコア102の上部に励磁用コイル104が巻回され、コア102の下部に検出用コイル106が巻回されている。励磁用コイル104によりコア2が励磁され、検出用コイル106によりコア2の磁束変化を検出する。
【0004】
励磁用コイル104には、周波数2fの発振器120が1/2分周器122を介して接続されている。励磁用コイル104は周波数fでコア102を励磁する。検出用コイル106には、検出信号を増幅するプリアンプ130が接続され、プリアンプ130には発振器120の周波数2fの交流信号により同期するロックインアンプ132が接続されている。プリアンプ130により増幅された検出信号はロックインアンプ132により周波数2fの交流信号に同期して検波され、検波された信号は増幅されて出力される。
【0005】
従来のフラックスゲートセンサの検出原理は、磁性材料のB-Hカーブの特性が、外部磁性Hにより正又は負の方向に大きくずれると、それによる磁束密度Bが飽和するため、磁束密度Bの交流磁界周波数成分に二次高調波歪みが発生し、その二次高調波歪みを検出用コイル106により検出する。
図13に示すように、外部磁界Hexがゼロの場合に、励磁用コイル104により磁束密度が正負両方向において飽和する直前まで励磁電流をかけておく。外部磁界Hが印加されると、交流磁界の正部分の極大部分、又は交流磁界の負成分の極小部分のいずれか一方が磁束密度Bの飽和領域に入る。このことにより磁束密度の交流磁界周波数成分に二次高調波歪みが発生する。これにより外部磁界Hexを検出する。
【0006】
外部磁界Hexがゼロの場合には、図14(a)に示すような歪のない正弦波の磁束密度Bが得られ、この磁束密度Bの時間微分も、図14(b)に示すように正弦波となる。このため、その周波数スペクトルは、図14(c)に示すように、周波数fの振幅のみが表れる。
外部磁界Hexが印加されると、図14(d)に示すように磁束密度Bの極大部分が平坦となるように歪んだ磁束密度Bが得られる。この磁束密度Bの時間微分は、図14(e)に示すように歪んだ二次高調波を含むものとなる。このため、その周波数スペクトルは、図14(f)に示すように、周波数fの振幅に加えて周波数2fの振幅とが表れる。周波数2fの振幅から外部磁界Hexの大きさを知ることができる。
【0007】
従来のフラックスゲートセンサとしては、その他に、直線状の高透磁率磁心を平行に設置し、励磁コイルに交流を通電して反平行に交流励磁するものや、直線状の2磁心を連結してリング状磁心とするものがあるが、その検出原理は同じである(毛利佳年雄著「磁気センサ理工学」(株式会社コロナ社、1998年3月10日初版発行)第80~89頁参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のフラックスゲートセンサにおいて、二次高調波が発生するためには、励磁周波数においてコアが十分な非線形特性を有していなければならない。しかしながら、励磁周波数が高くなると、非線形性が劣化して十分な二次高調波が発生しなくなる。このため、励磁周波数を高くすることができず、高周波数の被測定磁界を測定することができない。
【0009】
従来のフラックスゲートセンサでは、原理的に大きな基本周波数信号が存在する中で、微弱な二次高調波信号を抽出するものであるので、検出回路のダイナミックレンジを大きくとる必要があり、検出感度を更に上げることは困難である。このため、従来においてもコア構造を工夫することにより、大きな基本周波数信号を相殺し二次高調波信号のみを出力するようにしたものがあるが、二次高調波信号が小さいために検出感度には限界があった。
【0010】
本発明の目的は、コアの形状や特性の影響を受けにくい磁気検出方法及び装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い周波数の交流励磁信号を用いて測定することができる磁気検出方法及び装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、磁性材料からなるコアに交流励磁信号を印加して励磁し、励磁された前記コアの磁束変化を検出することにより、前記コアに印加された磁気を測定する磁気測定方法において、前記交流励磁信号の極大部分又は極小部分による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域に及ぶように前記交流励磁信号に直流信号を印加し、前記交流励磁信号に同期して前記コアの磁束変化を検出することを特徴とする磁気測定方法によって達成される。
【0012】
上述した磁気測定方法において、前記直流信号は、前記交流励磁信号の正部分全域又は負部分全域による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域にほぼ及ぶような大きさであることが望ましい。
上述した磁気測定方法において、第1の方向に励磁される前記コアの第1の部分の磁束変化と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に励磁される前記コアの第2の部分の磁束変化とに基づいて、前記コアに印加された磁気を測定するようにしてもよい。
【0013】
上記目的は、磁性材料からなるコアと、前記コアを励磁する励磁用コイルと、前記励磁用コイルに交流励磁信号を印加する励磁手段と、前記交流励磁信号の極大部分又は極小部分による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域に及ぶように前記交流励磁信号に直流信号を印加する直流印加手段と、前記励磁用コイルにより励磁された前記コアの磁束変化を検出する検出手段とを有し、前記励磁手段は、前記励磁手段の前記交流励磁信号に同期して前記コアの磁束変化を検出することを特徴とする磁気測定装置によって達成される。
【0014】
上述した磁気測定装置において、前記直流印加手段により印加される前記直流信号は、前記交流励磁信号の正部分全域又は負部分全域による前記コアの磁化が前記磁性材料の磁化飽和領域にほぼ及ぶような大きさであることが望ましい。
上述した磁気測定装置において、前記検出手段は、第1の方向に励磁される前記コアの第1の部分の磁束変化と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に励磁される前記コアの第2の部分の磁束変化とに基づいて、前記コアの磁束変化を検出するようにしてもよい。
【0015】
上述した磁気測定装置において、前記励磁コイルは、前記コアの所定領域を一方から他方に巻回され、折り返されて他方から一方に巻回されるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態による磁気測定装置を図1乃至図3を用いて説明する。図1は本実施形態の磁気測定装置を示す図であり、図2は本実施形態の磁気測定装置の測定原理を説明するための図であり、図3は本実施形態の磁気測定装置の測定結果を示すグラフである。
【0017】
磁気測定装置のセンサヘッド1は、高透磁率磁性材料、例えば、パーマロイ(ニッケル-鉄合金)からなる直線状のコア2の上部に励磁用コイル4が巻回されている。励磁用コイル4によりコア2は磁化される。検出用コイル6は、図1に示すように、コア2の下部に巻回されている。検出用コイル6は、コア2の磁束変化を検出する。
【0018】
励磁用コイル4には、交流励磁信号を供給する交流信号源20と、直流信号を印加する直流信号源24とが、それぞれ抵抗22、抵抗26を介して接続されている。交流信号源20による交流励磁信号に、直流信号源24による直流信号が加えられて励磁用コイル4を励磁する。交流信号源20による交流励磁信号は、例えば、コア2の飽和値を振幅とする周波数fの交流信号である。直流信号源24による直流信号は、例えば、交流励磁信号の正部分全域又は負部分全域における磁化がコア2の磁化飽和領域になるように交流励磁信号を例えば正の方向にシフトする。
【0019】
検出用コイル6には、検出信号を増幅する増幅器30が接続され、増幅器30には交流信号源20の交流信号により同期する同期検波回路32が接続されている。同期検波回路32には低周波信号を濾過するローパスフィルタ34が接続されている。増幅器30により増幅された検出信号は同期検波回路32により交流励磁信号に同期して検波され、ローパスフィルタ34により直流信号として出力される。
【0020】
次に、本実施形態の磁気測定装置の測定原理について図2及び図3を用いて説明する。
磁気測定装置は、励磁用コイル4によりコア2に交流励磁信号を印加したときのコア2の磁束変化を、検出用コイル6により検出することにより外部磁界Hexを測定する。交流励磁信号によるコア2の磁束変化は、コア2の磁性材料のB-Hカーブに応じて定まる。
【0021】
本実施形態では、交流信号源20による交流信号と直流信号源24による直流信号とを印加することにより、図2に示すように、交流励磁信号を原点からシフトし、交流信号の正部分全域がコア2の磁性材料のB-Hカーブの飽和領域になるようにしている。
外部磁界Hexがゼロの場合には、図2(a)、(b)において細い線で示すように、交流励磁信号は正部分全域がB-Hカーブの飽和領域となるように磁化される。その結果、磁束密度Bは図2(a)、(b)の真ん中のグラフで細い線で示すように、交流励磁信号の正部分が平らで、負部分が下向き正弦波となる。したがって、磁束密度Bの時間微分である検出用コイル16による検出信号Vは、図2(a)、(b)の右側のグラフに細い線で示すようになる。
【0022】
図2(a)に示すように、外部磁界Hexとして、外部磁界Hexと同じ方向に磁界Hoが印加されると、コア2においては交流励磁信号を強くする方向に作用するので、図2(a)の左上部のグラフにおいて太い線で示すように、交流信号の正部分と負部分の一部がB-Hカーブの飽和領域になり、磁束密度Bは、平らとなる部分が長く、正弦波状の負部分が小さくなる。したがって、磁束密度Bの時間微分である検出用コイル16による検出信号Vは、図2(a)の右側のグラフに太い線で示すようになる。
【0023】
図2(b)に示すように、外部磁界Hexとして、外部磁界Hexと反対方向に磁界Hoが印加されると、コア2においては交流励磁信号を弱くする方向に作用するので、図2(b)の左上部のグラフにおいて太い線で示すように、交流信号の正部分の一部がB-Hカーブの飽和領域になり、磁束密度Bは、平らとなる部分が短く、正弦波状の負部分が大きく。したがって、磁束密度Bの時間微分である検出用コイル16による検出信号Vは、図2(b)の右側のグラフに太い線で示すようになる。
【0024】
このように、図2(a)(b)に示すように、検出用コイル6により外部磁界Hexに応じた検出信号Vが検出される。
図1に示すように、同期検波回路32には、交流信号源20による周波数fの交流励磁信号(図3(a))に同期した制御信号(図3(b))が印加される。その結果、磁束密度B(図3(c)、(f))を時間微分した検出用コイル6による検出信号V(図3(d)、(e)、(g)、(h))が検波され、周波数fの振幅が検出される。同期検波回路32により増幅された検出信号Vはローパスフィルタ34を介して出力される。
【0025】
外部磁界Hexとして、外部磁界Hexと同じ方向に磁界Hoが印加されると、磁束密度Bは、図3(c)に示すように、正弦波状の負部分が小さくなり、検出信号Vは、図3(d)に示すように、出力信号が小さくなる。
外部磁界Hexとして、外部磁界Hexと反対方向に磁界Hoが印加されると、磁束密度Bは、図3(e)に示すように、正弦波状の負部分が大きくなり、検出信号Vは、図3(h)に示すように、出力信号が大きくなる。
【0026】
なお、本実施形態では、図1に示すように、検出用コイル6による検出信号を周波数fに同期する同期検波回路32により検出したが、図4に示すように、周波数fの同期信号が必要ない同調検波回路33により検出してもよいし、図5に示すように、同調回路35と周波数fに同期する同期検波回路32とにより検出してもよい。
【0027】
このように本実施形態によれば、交流励磁信号の正弦波の一方の正部分又は負部分による磁束変化のみの特性を利用しているので、コアの形状や磁気特性により磁化特性が異なったり、高い周波数の交流励磁信号により磁性材料の磁束変化特性が劣化して、B-Hカーブが変化しても、その変化の影響を受けることなく高精度の磁化測定が可能である。高い周波数の交流励磁信号を用いるようにすれば、S/N比が向上するとともに高い出力を得ることができると共に、フェライトのような磁性材料をコアに用いることができる。
【0028】
本発明の第2実施形態による磁気測定装置を図6乃至図11を用いて説明する。図6は本実施形態による磁気測定装置を示す図であり、図7、図8は磁気測定装置のセンサヘッドの他の具体例を示す図である。
磁気測定装置のセンサヘッド10は、高透磁率磁性材料からなるリング状のコア12全体に励磁用コイル14が巻回されている。励磁用コイル14によりコア12は、リング状形状に沿って磁化される。検出用コイル16は、図6に示すように、コア12及び励磁用コイル14の外側を巻回している。検出用コイル16は、外部磁界Hexと同じ第1の方向に励磁されるコア12の第1の部分の磁束変化と、外部磁界Hexと反対の第2の方向に励磁されるコア12の第2の部分の磁束変化との和を検出する。これにより、検出信号の偶数次の高調波は加算され、奇数次の高調波は減算されてゼロとなり、S/N比が非常によくなる。
【0029】
本実施形態のセンサヘッド10では、図7(a)に示すように、リング状のコア12の所定の開始位置から励磁用コイル14を巻始め、コア12のほぼ全体を巻回して開始位置近傍で巻終わるようにしている。これによりコア12をリング形状に沿った方向に磁化している。しかしながら、このような巻き方だと、リングに沿って1回巻きのコイルがあるのと等価となり、そこに電流が流れると、その電流による磁場が外部に漏れてくるおそれがある。そこで、図7(b)に示すように、リング状のコア12の所定の開始位置から励磁用コイル14を巻始め、コア12のほぼ全体を巻回して開始位置近傍まで巻回し、その位置で折り返してコア12を再び巻回して開始位置で巻終わるようする。このようにすることにより、1回巻きをキャンセルするような電流が流れ、磁場がキャンセルされて外部に漏れなくなるという利点がある。
【0030】
励磁用コイル14には、交流励磁信号を供給する交流信号源20と抵抗22が接続され、抵抗22には直流信号を印加する直流信号源24が接続されている。交流信号源20による交流励磁信号は、例えば、コア12の飽和値を振幅とする周波数fの交流信号である。直流信号源24による直流信号は、例えば、交流励磁信号の正部分全域又は負部分全域における磁化がコア12の磁化飽和領域になるように、交流励磁信号を正又は負の方向にシフトする。
【0031】
検出用コイル16には、検出信号を増幅する増幅器30が接続され、増幅器30には交流信号源20の交流信号により同期する同期検波回路32が接続されている。同期検波回路32には低周波信号を濾過するローパスフィルタ34が接続されている。増幅器30により増幅された検出信号は同期検波回路32により交流励磁信号に同期して検波され、ローパスフィルタ34を介して出力される。
【0032】
本実施形態の磁気測定装置のセンサヘッド10としては、図6及び図7に示す具体例の他に、図8に示すような他の具体例のものでもよい。
図8(a)に示すセンサヘッド40は、図6に示すリング状のコア12を縦方向に延ばして円筒状のコア42としたものである。励磁用コイル44は、円筒状のコア42に巻回されている。検出用コイル46は、コア42の励磁用コイル44の外側に、励磁用コイル44とほぼ直交して巻回されている。
【0033】
図8(b)に示すセンサヘッド50は、図6に示すリング状のコア12を2分割して2つの直線状コア52a、52bとしたものである。2つの直線状コア52a、52bはほぼ平行に配置される。励磁用コイル54は、直線状コア52a、52bを互いに反対方向に磁化するように巻回されている。検出用コイル56は、2つの直線状コア52a、52bを束ねるように、その外側に巻回される。
【0034】
なお、図8に示す他の具体例においても、図7(b)に示すように、検出用コイルを折り返して二重に巻回するようにしても良い。
次に、本実施形態の磁気測定装置の測定原理について図9乃至図11を用いて説明する。
磁気測定装置は、励磁用コイル14によりコア12に交流励磁信号を印加したときのコア12の磁束変化を、検出用コイル16により検出することにより外部磁界Hexを測定する。交流励磁信号によるコア12の磁束変化は、コア12の磁性材料のB-Hカーブに応じて定まる。
【0035】
本実施形態では、交流信号源20による交流信号に直流信号源24による直流信号を印加することにより、図9に示すように、交流励磁信号を原点からシフトし、交流信号の正部分全域がコア12の磁性材料のB-Hカーブの飽和領域になるようにしている。図9の左上部のグラフは、磁化方向が外部磁界Hexの方向と反対方向であるコア12の左側のコア12aの磁化を示すものであり、図9の左下部のグラフは、磁化方向が外部磁界Hexの方向であるコア12の右側のコア12bの磁化を示すものである。
【0036】
外部磁界Hexがゼロの場合には、図9において細い線で示すように、交流励磁信号は正部分全域がB-Hカーブの飽和領域となるように磁化される。したがって、交流励磁信号によるコア12a、12bにおける磁束密度B1、B2は、図9に示すように、交流励磁信号の正部分が平らで、負部分が下向き正弦波となる。磁束密度B1、B2の時間微分である磁束変化の検出信号V1、V2は、図9に示すようになる。検出用コイル16による検出信号は、検出信号V1から検出信号V2を差し引いたものであるから、図9の右側のグラフに細い線で示すように、常にゼロとなる。
【0037】
図9に示すように、外部磁界Hexとして、外部磁界Hexと同じ方向に磁界Hoが印加されると、コア12aにおいては交流励磁信号を弱くする方向に作用するので、図9の左上部のグラフにおいて太い線で示すように、交流信号の正部分の一部のみがB-Hカーブの飽和領域になり、その結果、磁束密度B1は平らとなる部分が短く、正弦波状の負部分が大きくなり、磁束密度B1の時間微分である磁束変化の検出信号V1は、図9に示すようになる。
【0038】
一方、磁界Hoはコア12aにおいては交流励磁信号を強くする方向に作用するので、図9の左下部のグラフにおいて太い線で示すように、交流信号の正部分及び負部分の一部がB-Hカーブの飽和領域になり、その結果、磁束密度B2は平らとなる部分が長く、正弦波状の負部分が小さくなり、磁束密度B2の時間微分である磁束変化の検出信号V2は、図9に示すようになる。
【0039】
検出用コイル16による検出信号Vは、検出信号V1から検出信号V2を差し引き、図9の右側のグラフに太い線で示すように、周波数fの信号となる。
図10に示すように、外部磁界Hexとして、外部磁界Hexと反対方向に磁界Hoが印加されると、コア12aにおいては交流励磁信号を強くする方向に作用するので、図10の左上部のグラフにおいて太い線で示すように、交流信号の正部分と負部分の一部がB-Hカーブの飽和領域になり、その結果、磁束密度B1は平らとなる部分が長く、正弦波状の負部分が小さくなり、磁束密度B1の時間微分である磁束変化の検出信号V1は、図10に示すようになる。
【0040】
一方、磁界Hoはコア12aにおいては交流励磁信号を弱くする方向に作用するので、図10の左下部のグラフにおいて太い線で示すように、交流信号の正部分の一部のみがB-Hカーブの飽和領域になり、その結果、磁束密度B2は平らとなる部分が短く、正弦波状の負部分が大きくなり、磁束密度B2の時間微分である磁束変化の検出信号V2は、図10に示すようになる。
【0041】
検出用コイル16による検出信号Vは、検出信号V1から検出信号V2を差し引き、図10の右側のグラフに太い線で示すように、平らな部分から正弦波が上向きに突出した波形となる。図10の検出信号Vは、図9の検出信号Vの波形を反転した波形となる。
このように、図9及び図10に示すように、検出用コイル16により外部磁界Hexに応じた検出信号V1-V2が検出される。
【0042】
図11に示すように、同期検波回路32には、交流信号源20による周波数fの交流励磁信号(図11(a))に同期した制御信号(図11(b))が印加される。その結果、検出用コイル16による検出信号Vは信号成分のみが増幅され、S/N比のよい検出信号Vが得られる。同期検波回路32により検波された検出信号Vはローパスフィルタ34を介して出力される。
【0043】
図9の場合には、図11(c)に示す検出信号Vが得られ、周波数fの制御信号により検波することにより、検出信号Vと制御信号との位相差により決定される符号であって、図11(d)に示す振幅を絶対値とする出力信号が得られる。図10の場合には、図11(e)に示す検出信号Vが得られ、周波数fの制御信号により検波することにより、検出信号Vと制御信号との位相差により決定される符号であって、図11(f)に示す振幅を絶対値とする出力信号が得られる。図9と図10とでは、検出信号Vの位相が異なり、反転しているので、出力信号の符号は互いに異なることになる。
【0044】
このように本実施形態によれば、交流励磁信号の正弦波の一方の正部分又は負部分による磁束変化のみの特性を利用しているので、コアの形状や磁気特性により磁化特性が異なったり、高い周波数の交流励磁信号により磁性材料の磁束変化特性が劣化して、B-Hカーブが変化しても、その変化の影響を受けることなく高精度の磁化測定が可能である。高い周波数の交流励磁信号を用いるようにすれば、S/N比が向上するとともに高い出力を得ることができると共に、フェライトのような磁性材料をコアに用いることができる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態ではコアをパーマロイにより形成したが、他の磁性材料、フェライトや、アモルファス系磁性材料等を用いてもよい。
また、上記実施形態では交流励磁信号の正部分又は負部分のほぼ全域が、磁性材料の磁化飽和領域となるように交流信号及び直流信号を定めたが、少なくとも交流励磁信号の正部分又は負部分の一部、すなわち、交流励磁信号の極大部分又は極小部分が磁性材料の磁化飽和領域となるように交流信号及び直流信号を定めればよい。
【0046】
また、上記実施形態では磁気測定装置に本発明を適用したが、磁気測定装置の具体的構成は上記実施形態のものに限るものではなく、他の構成の磁気測定装置に本発明を適用してもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、交流励磁信号の極大部分又は極小部分による磁束変化のみの特性を利用し、交流励磁信号に同期してコアの磁束変化を検出しているので、コアの形状や磁気特性により磁化特性が異なったり、高い周波数の交流励磁信号により磁性材料の磁束変化特性が変化しても、その変化の影響を受けることなく高精度の磁化測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による磁気測定装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態による磁気測定装置の測定原理を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態による磁気測定装置の測定波形を示すグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態による磁気測定装置の検出回路の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態による磁気測定装置の検出回路の変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による磁気測定装置を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態による磁気測定装置のセンサヘッドの変形例を示す図である。
【図8】磁気測定装置のセンサヘッドの他の具体例を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態による磁気測定装置の測定原理を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態による磁気測定装置の測定原理を説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態による磁気測定装置の測定波形を示すグラフである。
【図12】従来のフラックスゲートセンサを示す図である。
【図13】従来のフラックスゲートセンサの測定原理を説明するための図である。
【図14】従来のフラックスゲートセンサの測定原理を説明するための図である。
【符号の説明】
1…センサヘッド
2…コア
4…励磁用コイル
6…検出用コイル
10…センサヘッド
12…コア
14…励磁用コイル
16…検出用コイル
20…交流信号源
22…抵抗
24…直流信号源
26…抵抗
30…増幅器
32…同期検波回路
33…同調検波回路
34…ローパスフィルタ
35…同調回路
40…センサヘッド
42…コア
44…励磁用コイル
46…検出用コイル
50…センサヘッド
52a、52b…直線状コア
54…励磁用コイル
56…検出用コイル
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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