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明細書 :植物培養方法及び植物培養装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4899052号 (P4899052)
公開番号 特開2007-330219 (P2007-330219A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成19年12月27日(2007.12.27)
発明の名称または考案の名称 植物培養方法及び植物培養装置
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
A01G   9/02        (2006.01)
FI A01G 7/00 604Z
A01G 7/00 601C
A01G 9/02 101S
請求項の数または発明の数 19
全頁数 13
出願番号 特願2006-168945 (P2006-168945)
出願日 平成18年6月19日(2006.6.19)
審査請求日 平成21年5月15日(2009.5.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】久米 篤
【氏名】唐原 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100092657、【弁理士】、【氏名又は名称】寺崎 史朗
【識別番号】100122770、【弁理士】、【氏名又は名称】上田 和弘
審査官 【審査官】草野 顕子
参考文献・文献 特開平08-228597(JP,A)
曽我 康一,地上での実験手段:遠心過重力環境の有効性,生物工学会誌,日本,社団法人日本生物工学会,2005年12月25日,83(12),574-576
調査した分野 A01G 7/00
A01G 9/02
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
植物が収容された容器を周回させて前記植物に遠心力を加えながら、周回する前記容器の回転軸上から前記植物に光を照射して植物を培養することを特徴とする植物培養方法。
【請求項2】
水平面上で前記容器を周回させることを特徴とする請求項1に記載の植物培養方法。
【請求項3】
前記容器は、当該容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動自在に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物培養方法。
【請求項4】
重力と遠心力とが合成された過重力が前記植物に作用する方向に向けて前記植物に光を照射することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の植物培養方法。
【請求項5】
前記植物に照射する光の光量を、所定の周期で調節することを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の植物培養方法。
【請求項6】
前記植物に照射する光の照射角度を、所定の周期又は前記容器の周回速度に応じて調節することを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の植物培養方法。
【請求項7】
前記植物に照射する光の光質を調節することを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の植物培養方法。
【請求項8】
前記容器を自転させることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の植物培養方法。
【請求項9】
前記容器を、当該容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動させることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の植物培養方法。
【請求項10】
植物を培養する植物培養装置において、
植物が収容される容器と、
前記容器に遠心力が作用するように前記容器を周回させる回転機構と、
前記容器に収容される植物に光を照射する光源とを備えることを特徴とする植物培養装置。
【請求項11】
前記回転機構は、水平面上で前記容器を周回させることを特徴とする請求項10に記載の植物培養装置。
【請求項12】
前記容器は、前記容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動自在に支持されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の植物培養装置。
【請求項13】
前記光源は、重力と遠心力とが合成された過重力が前記容器に作用する方向と反対の方向に設けられていることを特徴とする請求項1012の何れか1項に記載の植物培養装置。
【請求項14】
前記光源は、周回する前記容器の回転軸上に設けられていることを特徴とする請求項1013の何れか1項に記載の植物培養装置。
【請求項15】
前記光源の光量を、所定の周期で調節する光量調節部を有することを特徴とする請求項10~14の何れか1項に記載の植物培養装置。
【請求項16】
前記光源の位置を、所定の周期又は前記容器の周回速度に応じて調節する位置調節部を有することを特徴とする請求項1015の何れか1項に記載の植物培養装置。
【請求項17】
前記植物に照射する光の光質を調節する光質調節部を有することを特徴とする請求項10~16の何れか1項に記載の植物培養装置。
【請求項18】
前記容器を自転させる自転機構を有することを特徴とする請求項1017の何れか1項に記載の植物培養装置。
【請求項19】
前記容器を、当該容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動させる揺動駆動部を、更に備えることを特徴とする請求項1018の何れか1項に記載の植物培養装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、重力環境を変化させて植物を培養する植物培養方法及び植物培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、重力環境が変化すると植物の成長にも影響があることが知られている。例えば、非特許文献1に示されるように、二次代謝産物の大元であるフェニルアラニン(phenylalanine)を作る酵素フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL:phenylalanine ammonia-lyase)の酵素活性が、スペースシャトル内における微小重力下では低下するとの報告がある。
【0003】
一方、地上においては、重力環境を変化させて植物を培養するために、例えば、特許文献1に示されるように、重力を多方向から作用させることで擬似無重力状態を作り出す動植物育成装置などが知られている。この従来の動植物育成装置は、動植物が収容される容器を2軸で回転させることにより、擬似無重力状態を作り出し、動植物を育成するものである。

【非特許文献1】Cowles et al. (1984) Growth and lignification in seedlings exposedto eight days of microgravity. Annals of Botany vol.54: pp.33-48
【特許文献1】特公平07-089798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の重力環境を変化させて植物を培養する方法は、無重力状態を作り出すことを目的としており、過重力状態を作り出すことは考えられていない。そのため、過重力状態において適切に植物を培養することができなかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、過重力状態で適切に植物を培養できる植物培養装置及び植物培養方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る植物培養方法は、植物が収容された容器を周回させて植物に遠心力を加えながら、周回する容器の回転軸上から植物に光を照射して植物を培養することを特徴とする。
【0007】
このような特徴を有する植物培養方法によれば、容器を周回させることにより、容器に遠心力が作用するため、地上において長時間安定して過重力状態を作り出すことができ、植物を培養することができる。また、植物に光を照射することにより、植物の培養が促進されるため、過重力状態において適切に植物を培養することができる。そして、周回する容器の回転軸上から光を照射するで、周回する容器とこの回転軸との角度及び距離は一定の関係にあるため、容器の周回転位置によらず、植物に照射する光の照射方向及び照射光量を一定にすることができる。
【0008】
この場合、水平面上で容器を周回させることが望ましい。容器を周回転すると、植物には、自重による垂直方向の重力と遠心力とが作用する。そのため、水平面上で容器を周回させることで、容器の周回位置にかかわらず、植物に作用する過重力の方向を一定に保つことができ、安定した過重力状態を作り出すことができる。
【0009】
上記容器は、当該容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動自在に支持されていることが望ましい。これにより、容器が周回されると、容器に遠心力が作用するため、容器は周回する円周の接線を回転軸として揺動する。従って、容器に対して一定の方向に過重力が作用するため、容器の周回速度によらず、一定の方向で植物に過重力を加えることができる。
【0010】
また、本発明に係る植物培養方法では、重力と遠心力とが合成された過重力が植物に作用する方向に向けて植物に光を照射することが望ましい。植物は光量の多い方向に向かって成長する性質があるため、過重力が植物に作用する方向から光を照射することで、植物に過重力が作用する方向と反対方向に成長させることができる。
【0012】
また、植物に照射する光の光量を、所定の周期で調節することが望ましい。所定の周期(例えば1日)で植物に照射する光の光量を調節することで、1日周期で日の入りと日の出を繰り返す自然に近い日照環境で、植物を培養することができる。
【0013】
また、植物に照射する光の照射角度を、所定の周期又は容器の周回速度に応じて調節することが望ましい。所定の周期(例えば1年や1日)で光の照射角度を調節することで、太陽光が照射角度を変化させながら移動する自然に近い日照環境で、植物を培養することができる。一方、周回速度を変化させると、容器に作用する遠心力が変化する。これに伴い、揺動自在に支持された容器の傾斜角度も変化する。このため、回転速度によって定まる容器の傾斜角度に応じて光の照射角度を調節することで、容器の周回速度によらず、自然に近い日照環境で植物を培養することができる。
【0014】
また、植物に照射する光の光質を調節することが望ましい。これにより、光の波長等の光質を選択調節して植物に照射できるため、様々な培養目的に合致した光質の光を照射して植物を培養することができる。
【0015】
また、本発明に係る植物培養方法では、容器を自転させることが望ましい。容器が一定の速度で周回しているときは、この容器の向きと光の照射方向との関係は一定となる。そこで、容器の中心軸を枢軸として容器を自転させることにより、植物に照射する光の照射方向を変化させることができ、自然に近い日照環境で植物を培養することができる。
【0016】
また、上記容器を、当該容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動させることが望ましい。容器を自転させるとともに、容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動させることにより、植物に作用する過重力の方向とは関係なく、容器を揺動させることができるため、植物に対して、所望の方向から過重力を作用させることができる。
【0017】
本発明に係る植物培養装置は、植物を培養する植物培養装置において、植物が収容される容器と、容器に遠心力が作用するように容器を周回させる回転機構と、容器に収容される植物に光を照射する光源とを備えることを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する植物培養装置によれば、回転機構によって容器が周回されると、容器に遠心力が作用するため、地上において長時間安定した過重力状態を作り出して、植物を培養することができる。また、光源から植物に光が照射されるため、植物の培養が促進され、過重力状態において適切に植物を培養することができる。
【0019】
この場合、回転機構は、水平面上で容器を周回させることが望ましい。容器を周回すると、容器に収容される植物には自重による垂直方向の重力と遠心力とが作用する。そのため、回転機構が水平面上で容器を周回させることで、容器の周回位置にかかわらず、植物に作用する過重力の方向を一定に保つことができ、安定した過重力状態を作り出すことができる。
【0020】
上記容器は、容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動自在に支持されていることが望ましい。これにより、回転機構によって容器が周回されると、容器に遠心力が作用するため、容器は周回する円周の接線を回転軸として揺動する。従って、容器に対して一定の方向に過重力が作用するため、容器の周回速度によらず、植物に一定の方向で過重力を与えることができる。
【0021】
上記光源は、重力と遠心力とが合成された過重力が作用する容器の方向と反対の方向に設けられていることが望ましい。植物は光量の多い方向に向かって成長する性質がある。従って、植物に過重力が作用する方向から光を照射することで、過重力が作用する方向と反対方向に植物を成長させることができる。
【0022】
また、上記光源は、周回する容器の回転軸上に設けられていることが望ましい。回転機構によって周回される容器とこの回転軸との角度及び距離は一定の関係にあるため、光源を容器の中心軸に設けることで、容器の周回位置によらず、植物に照射する光の照射方向及び照射光量を一定にすることができる。従って、植物の生長方向を一定にすることができる。
【0023】
また、本発明に係る植物培養装置では、光源の光量を、所定の周期で調節する光量調節部を有することが望ましい。光量調節部が所定の周期(例えば1日)で植物に光を照射する光源の光量を調節することで、1日周期で日の入りと日の出を繰り返す自然に近い日照環境で、植物を培養することができる。
【0024】
また、本発明に係る植物培養装置では、光源の位置を、所定の周期又は容器の周回速度に応じて調節する位置調節部を有することが望ましい。所定の周期(例えば1日)で光源の位置を調節することで、太陽光が照射角度を変化させながら移動する自然に近い日照環境で植物を培養することができる。一方、回転機構による容器の周回速度を変化させると、容器に作用する遠心力が変化する。これに伴い、揺動自在に支持された容器の傾斜角度も変化する。このため、回転速度によって定まる容器の傾斜角度に応じて光源の位置を調節することで、植物に照射される光の照射角度を変化させることができ、容器の周回速度によらず、自然に近い日照環境で植物を培養することができる。
【0025】
また、本発明に係る植物培養装置では、植物に照射する光の光質を調節する光質調節部を有することが望ましい。これにより、光質調節部では、光の波長等の光質を選択調節することができるため、様々な培養目的に合致した光質の光を照射して植物を培養することができる。
【0026】
また、本発明に係る植物培養装置では、容器を自転させる自転機構を有することが望ましい。容器が一定の周回転速度で周回転しているときは、この容器の向きと光の照射角度との関係は一定となる。そこで、容器の中心軸を枢軸として容器を自転させることにより、植物に照射する光の照射方向を変化させることができ、自然に近い日照環境で植物を培養することができる。
【0027】
また、本発明に係る植物培養装置では、容器を、当該容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動させる揺動駆動部を、更に備えることが望ましい。これにより、揺動駆動部は、容器が周回する円周の接線を回転軸として揺動させることにより、植物に作用する過重力の方向とは関係なく、容器を揺動させることができるため、植物に対して、所望の方向から過重力を作用させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、過重力状態で適切に植物を培養することができ、より幅広い重力環境で植物の培養を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る植物培養方法及び植物培養装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0030】
まず、図1及び図2を用いて、第1の実施形態に係る植物培養装置1について説明する。図1は、植物培養装置1の構成を模式的に示した図であり、図2は、植物培養装置における支持部7の周辺を示す図である。植物培養装置1は、培養する植物2を収容する複数のバケット(容器)3と、バケット3を揺動可能に支持して水平面上で回転可能に取付けられたスイングローター4(回転機構)と、スイングローター4を回転させる回転駆動部(回転機構)5と、スイングローター4の回転軸上であって、バケット3よりも上方に取付けられている光源6と、光源6の照射光量を調節する光量調節部9と、スイングローター4の回転軸上で光源6の位置を上下に調節する位置調節部10と、光源6から照射される光の光質を調節する光質調節部13、を備えている。なお、照射光量とは、光源6の点灯状態のみならず、光源6が無灯(光量がゼロ)の状態を含むものである。また、光質とは、光の波長など、光の様々な性質を含むものである。
【0031】
スイングローター4は、中心から放射状に延びる複数のアーム4aを有しており、それぞれのアーム4aの先端には、バケット3を揺動可能に支持する支持部7が設けられている。
【0032】
支持部7は、図2に示すように、アーム4aの先端から2方向に分岐されて、バケット3の幅よりも広く離間して延在する一対の支持アーム7aと、この一対の支持アーム7a間に設けられ、バケット3を揺動可能に支持する支持ピン7bとを有している。なお、一対の支持アーム7aの長さは、バケット3を支持ピン7bに係合させて揺動自在に支持したときに、揺動するバケット3が支持部7と干渉しないように定められる。
【0033】
なお、本実施形態では、植物2を、組織培養ポット(アグリポット等)8に収容し、この組織培養ポット8を3個セットとしてバケット3に収容している。
【0034】
次に、植物培養装置1の動作、及び植物培養装置1を用いた植物培養方法について説明する。
【0035】
まず、複数の組織培養ポット8に培養対象の植物2を収容し、組織培養ポット8をそれぞれのバケット3に3個ずつ収容する。そして、回転駆動部5を作動させてスイングローター4を回転させると共に、光源6から光を照射させる。
【0036】
スイングローター4の回転は、スイングローター4の支持部7で揺動自在に支持されているバケット3に伝達される。バケット3はスイングローター4の回転軸を中心軸として周回するため、バケット3には遠心力が作用する。このとき、バケット3及びバケット3に収容された植物2には、図3に示すように、鉛直方向下向きの重力と遠心力とが合成された過重力が作用する。そのため、植物培養装置1は、図4に示すように、バケット3が支持ピン7bを軸として揺動し、過重力が作用する方向に傾斜する状態となる。このバケット3の傾斜により、過重力はバケット3の底方向に作用するため、バケット3に作用する過重力の方向と、バケット3の傾斜の方向とは同じ方向となる。
【0037】
バケット3に作用する過重力は、バケット3が周回する円周の半径と周回速度とによって定まるため、スイングローター4の回転軸から支持部7までの距離と、回転駆動部5の回転速度を設定することで、目的の過重力を植物2に作用させることができる。
【0038】
一方、光源6とバケット3との間には光を遮るものが無いため、遠心力によってバケット3に過重力が作用している間も、バケット3及びバケット3に収容された植物2には、光源6からの光が照射され続ける。ところで、スイングローター4を一定速度で回転すると、バケット3に作用する遠心力も一定となるため、バケット3の傾斜角度が一定となる。光源6は、スイングローター4の回転軸上に取付けられているため、スイングローター4を一定速度で回転させると、バケット3と光源6との距離、及びバケット3に対する光源6の傾斜角度は一定となる。このため、光源6は、一定の光量で一定の照射角度からバケット3及びバケット3に収容された植物2に光を照射する。
【0039】
なお、光源6は、目的の過重力がバケット3に作用したときに、当該過重力が作用する作用軸と、スイングローター4の回転軸との交点に取付けられることが望ましい。
【0040】
このように、植物2に所定の過重力を作用させている状態においては、光源6とバケット3との角度及び距離は常に一定となる。そこで、光量調節部9は、光源6の照射光量を調節して、植物2に照射する光の光量を変化させ、位置調節部10は、光源6の位置をスイングローター4の回転軸上で上下に変動させる。具体的には、地上と太陽との関係に近づけるため、光量調節部9は、日の出の時間になると光を光源6を点灯させ、昼間にかけて光量を上げ、夕方にかけて光量を下げ、日の入りの時間になると光源6を消灯させる。一方、位置調節部10は、日の出の時間から日の入りの時間になるまでの間、光源6の位置を、バケット3の略側面方向から上方に移動させ、再度バケット3の略側面方向に下降させる。
【0041】
なお、光量調節部9及び位置調節部10は、地上と太陽との関係に近づけるため、1日または1年周期で調節する。
【0042】
また、所望の波長の光を植物に照射したい場合は、光質調節部13により、所望の波長を選択調節することで、光源6から照射される光の波長を変えることができる。
【0043】
以上説明したように、植物培養装置1及び植物培養装置1を用いた植物培養方法によれば、バケット3を支持しているスイングローター4を回転させることにより、バケット3はスイングローター4の周囲を周回する。すると、バケットには、遠心力が生じるため、重力と遠心力とが合成された過重力が作用する。一方、光源6からは、バケット3に向けて光が照射されている。そのため、このバケット3に培養対象の植物2を収容して植物培養装置1を作動させることで、過重力状態において光を照射しながら、植物2を適切に培養することができる。
【0044】
また、植物培養装置1及び植物培養装置1を用いた植物培養方法によれば、バケット3は、水平面上で回転可能に取付けられたスイングローター4に支持されているため、バケット3は水平面上で周回する。バケット3が一定速度で周回しているときは、一定の重力が鉛直方向下向きに作用し、バケット3が水平方向で周回しているときは、一定の遠心力が水平方向に作用する。従って、植物2に対する一定の方向から過重力を作用させることができ、安定した過重力状態において、植物2を培養することができる。
【0045】
更に,バケット3が周回してバケット3に遠心力が作用すると、バケット3は、支持部7の支持ピン3bを回転軸として揺動し、過重力が作用する方向に傾斜する。このため、過重力は、常にバケット3の底方向に作用する。従って、植物2に対して常に一定の方向から過重力を作用させながら、植物を培養することができる。
【0046】
また、植物培養装置1及び植物培養装置1を用いた植物培養方法によれば、光源6は、バケット3よりも上方に取付けられているため、バケット3が一定の速度で周回しているときは、植物2に対して上方から一定の照射角度で光を照射する。従って、照射される光に向かって成長する性質をもつ植物2を、上方に成長を促しながら、培養することができる。
【0047】
更に、光源6は、スイングローター4の回転軸上に取付けられているため、光源6とバケット3との角度及び距離は一定となり、周回するバケット3の周回位置によらず、植物2に照射される光の照射方向及び照射角度は一定となる。そのため、植物2を、一定方向に成長を促しながら、培養することができる。
【0048】
また、植物培養装置1及び植物培養装置1を用いた植物培養方法によれば、光量調節部9は、光源6から照射する光の光量を所定の周期で調節することができるため、地球の自転により生じる、昼夜の日照環境に近い環境を作り出すことができる。そのため、植物2に過重力を作用させながらも、自然に近い日照環境の下で植物2を培養することができる。
【0049】
また、植物培養装置1及び植物培養装置1を用いた植物培養方法によれば、位置調節部10は、光源6の位置を、スイングローター4の回転軸上で上下に移動させて、植物2に照射する光の照射角度を変化させることができるため、地球の自転により生じる、日照角度が変化する日照環境に近い環境を作り出すことができる。そのため、植物2に過重力を作用させながらも、過重力の大きさに拘らず、自然に近い日照環境の下で植物2を培養することができる。また、植物に作用させる過重力の大きさに応じて、光源6の位置を上下に移動させることで、植物2を成長させたい方向から光を照射することができ、植物2の成長方向を調節することができる。
【0050】
また、植物培養装置1及び植物培養装置1を用いた植物培養方法によれば、光質調節部13によって、光の波長等の光質を選択調節して植物に照射することができる。そのため、植物2に過重力を作用させながらも、様々な培養目的に合致した光質の光を照射して植物を培養することができる。
【0051】
次に、図5を参照して、第2の実施形態に係る植物培養装置11について説明する。図5は、植物培養装置11(全体は図示しない)のスイングローター4の支持部7周辺の構成を水平方向から示している。第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に加え、スイングローター4の支持部7とバケット3との間に、バケット3を自転させる自転機構12と、支持部7の支持アーム7aに固定されて、ステッピングモータのような回転角を制御できる揺動駆動部14と、揺動駆動部14の駆動軸であって、自転機構12の揺動部12aに固定される揺動駆動軸15を備えている。なお、第2の実施形態に係る植物培養装置11の構成は、第1の実施形態に係る植物培養装置1の支持ピン7bが揺動駆動軸15に置き換えられた他は、植物培養装置1の構成を全て備え、更に自転機構12及び揺動駆動部14を追加した構成であるため、同じ構成に関する詳細な説明を省略する。
【0052】
自転機構12は、支持部7の支持ピン7bにより揺動自在に支持される揺動部12aと、バケット3に接続されて自転する自転部12bとを有している。なお、植物2を収容したバケット3の重心と自転機構12の重心とは、静止状態において同一の鉛直線上になるように取付ける。
【0053】
揺動駆動部14は、支持アーム7aに固定されており、回転角を制御して揺動駆動軸15を回転させる。揺動駆動軸15は、支持アーム7aに対して回動自在に支持されており、自転機構12の自転部12bと固定されている。
【0054】
植物培養装置11は、第1の実施形態と同様に、培養対象の植物2を複数の組織培養ポット8に収容し、この組織培養ポット8をそれぞれのバケット3に3個ずつ収容する。そして、回転駆動部5を作動させると、スイングローター4が回転し、スイングローター4の支持部7に揺動自在に支持されたバケット3が、スイングローター4の回転軸を中心軸として周回する。
【0055】
周回しているバケット3には遠心力が作用するため、バケット3は、図4に示すように、過重力が作用する方向に傾斜する。このとき、バケット3に作用させたい過重力が一定のときは、バケット3に作用する遠心力が一定となり、バケット3の傾斜角度も一定となる。
【0056】
自転機構12の自転部12bは、1日1回転の自転を行うことで、バケット3を同様に自転させる。バケット3は、バケット3の重心点を通り過重力が作用する方向の軸を枢軸として自転する。このため、バケット3に一定の過重力を作用させると、光源6とバケット3との角度及び距離は一定となるが、バケット3は自転するため、光源6からの光はバケット3の周囲を均等に照射する。
【0057】
一方、植物に作用させる過重力の方向を変化させたい場合は、揺動駆動部14により、揺動駆動軸15を所望の回転角に回転させる。揺動駆動軸15は自転機構12の揺動部12aと固定されているため、揺動駆動軸15が回転すると、自転機構12及びバケット3は、揺動駆動軸15を回転軸として揺動する。このため、揺動駆動部14により揺動駆動軸15を所望の回転角に回転させることで、バケット3を所望の角度に傾斜させることができ、バケット3に収容されている植物に対して、所望の方向から過重力を作用させることができる。
【0058】
植物培養装置11及び植物培養装置11を用いた植物培養方法によれば、上述したように、光量調節部9で昼夜の日照環境に近い環境を作り出し、位置調節部10で日照角度が変化する日照環境に近い環境を作り出す。そして、自転機構12の自転部12bがバケット3を自転させることで、植物2の周囲から光を照射することができる。このため、光量調節部9により昼夜の日照環境を、位置調節部10により日照角度の日照環境を、自転機構12により日照方向の日照環境を、それぞれ作り出すことで、地球の自転により生ずる日照環境に近い環境を作り出すことができる。そのため、植物2に過重力を作用させながらも、自然に近い日照環境の下で植物2を培養することができる。
【0059】
また、植物培養装置11及び植物培養装置11を用いた植物培養方法によれば、揺動駆動部14によって回転される回転角を制御することで、植物に作用する過重力の方向とは関係なく、バケット3を所望の角度に傾斜させることができるため、植物に対して、所望の方向から過重力を作用させることができる。
【0060】
ここで、本実施形態によって、適切に植物を培養することが可能であることを、実施例によって具体的に示す。実施例では、過重力状態における植物化学成分の変化を調べるため、植物化学成分である二次代謝産物の発現量を調査することを目的として、二次代謝産物の発現に影響を与える遺伝子の発現量を解析している。
【0061】
具体的には、植物培養装置1を用いて、光源6から光を照射しながら10G(地上の重力の10倍の重力)の過重力を作用させ、これを10日間継続して植物2を培養した。収穫した植物2からrRNAを単離し、リアルタイムPCR解析により、定量的解析を行った。解析では、rRNAを内部標準として用い、これに対するリグニン合成系の下記4遺伝子の発現量を測定した。
【0062】
実験条件を下記に示す。
・種子数:3粒
・ゲル量:7.3ml
・組織培養ポットの蓋:マイクロポアテープ+7/8パラフィルム
・重力環境:10G
・培養日数:10日
・内部標準:rRNA
・解析対象遺伝子
(1)CINNAMATE 4-HYDROXYLASE (AtC4H)
(2)O-METHYLTRANSFERASE1 (AtOMT1)
(3)PEROXYDASE 30 (AtPER30)
(4)FERULATE 5-HYDROXYLASE1 (AtF5H1)
【0063】
分析結果を表1に示す。
【表1】
JP0004899052B2_000002t.gif

【0064】
表1から分かるように、リグニン合成系の4つの遺伝子の発現量は何れも低下し、最も発現量低下率が高かったのは、(3)PEROXYDASE 30の61.5%であった。
【0065】
また、表1から、分析した4つの全てのリグニン合成系の遺伝子発現が低下することが分かり、リグニン合成が低下した可能性が示唆された。この結果から、過重力環境下における植物の培養によって、植物の二次代謝産物に関わる遺伝子発現を変化させることが実証され、本発明に係る植物培養方法及び植物培養装置の有用性及び効果が確認された。
【0066】
なお、本実験の結果については、リグニンの遺伝子発現が特に重合段階で大きく調節されている可能性が考えられる。リグニンの減少は、野菜などの食味改善、製紙工業などの有用技術開発に繋がる可能性があり、他の有用二次代謝産物の発現量が増大する可能性もある。
【0067】
以上、本発明を上記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、バケット3には、直接植物2を収容させても、組織培養ポット8以外の他の容器を用いて間接的に植物2を収容させてもよい。バケット3は、植物2を載置することが可能であれば、器状、皿状、筒状等、如何なる形状のものであってもよい。バケット3に収容する植物2の数は、3つ以外でもよい。自転機構12は、独立した構成要素であってもよく、スイングローター4又はバケット3に含まれる構成要素であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1の実施形態に係る植物培養装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】植物培養装置における支持部の周辺を示す図である。
【図3】バケットに作用する力を示す図である。
【図4】バケットを周回させたときの状態を模式的に示す図である。
【図5】第2の実施形態の支持部周辺を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1,11…植物培養装置、2…植物、3…バケット、4…スイングローター、5…回転駆動部、6…光源、7…支持部、7a…支持アーム、7b…支持ピン、8…組織培養ポット、9…光量調節部、10…位置調節部、12…自転機構、12a…揺動部、12b…自転部、13…光質調節部、14…揺動駆動部、15…揺動駆動軸。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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