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明細書 :縮合多環化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2007-326815 (P2007-326815A)
公開日 平成19年12月20日(2007.12.20)
発明の名称または考案の名称 縮合多環化合物の製造方法
国際特許分類 C07C  46/00        (2006.01)
C07C  50/36        (2006.01)
C07C  50/34        (2006.01)
FI C07C 46/00
C07C 50/36
C07C 50/34
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2006-159347 (P2006-159347)
出願日 平成18年6月8日(2006.6.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年2月16日~17日 国立大学法人高知大学主催の「2005年度(平成17年度)修士論文ならびに卒業論文発表会」において文書をもって発表
発明者または考案者 【氏名】小槻 日吉三
出願人 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
Fターム 4H006AA02
4H006AC23
4H006AC42
4H006AC92
4H006BA95
4H006BC11
4H006BE01
要約 【課題】反応性が低いアントラキノン誘導体同士を、直接的に二量化により環縮合させて、立体選択的に収率良く、多環化合物を大量に製造できる方法を提供する。
【解決手段】縮合多環化合物の製造方法は、1,2,7,8位が未置換であってもよく3,6位が遊離の水酸基で置換され又は保護基によって保護された水酸基で置換され4,5位が未置換であるアントラキノン類を1×10~1×1010Paの高圧に晒し、その2分子を、10位の炭素原子同士と、該4,5位の何れか一方の炭素原子同士とで結合させ、二量体にする。
【選択図】なし。
特許請求の範囲 【請求項1】
1,2,7,8位が未置換であってもよく3,6位が遊離の水酸基で置換され又は保護基によって保護された水酸基で置換され4,5位が未置換であるアントラキノン類を1×10~1×1010Paの高圧に晒し、その2分子を、10位の炭素原子同士と、該4,5位の何れか一方の炭素原子同士とで結合させ、二量体にすることを特徴とする縮合多環化合物の製造方法。
【請求項2】
該二量体に光を照射して、該アントラキノン類の該4,5位の他方の炭素原子同士を結合させてフェナントロピレン ジオン類にすることを特徴とする請求項1に記載の縮合多環化合物の製造方法。
【請求項3】
該アントラキノン類の該3,6位の少なくともいずれかが該保護基によって保護された水酸基で置換されており、該フェナントロピレン ジオン類から該保護基を開裂させることを特徴とする請求項2に記載の縮合多環化合物の製造方法。
【請求項4】
該アントラキノン類の該3,6位の一方が該遊離の水酸基で置換され他方がアルキル基、アラルキル基及びアシル基から選ばれる該保護基によって保護された水酸基で置換され、同じく該1,8位が遊離の水酸基で置換され又はアルキル基、アラルキル基及びアシル基から選ばれる保護基によって保護された水酸基で置換され、同じく該2,7位の少なくとも一方がアルキル基で置換されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の縮合多環化合物の製造方法。
【請求項5】
該アントラキノン類が、下記化学式(1)
【化1】
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(化学式(1)中、Rは該保護基)で表されるものであり、それをアルカリ性条件下で該高圧に晒し該二量体にしてから、光照射により、該フェナントロピレン ジオン類にした後、酸性条件下で該保護基を開裂させて、下記化学式(2)
【化2】
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で表されるステントリンCにすることを特徴とする請求項4に記載の縮合多環化合物の製造方法。
【請求項6】
3,4,5-トリアルコキシ安息香酸エステルにアルキルマグネシウムハライド又はアルケニルマグネシウムハライドを反応させてから還元された4-アルキル又はアルケニル-3,5-ジアルコキシベンズアルデヒドと、2-アルコキシ-4-トリアルキルシロキシ安息香酸N,N-ジアルキルアミドのオルトリチオ体とを、反応させた後、酸性条件下でのラクトン化反応、接触還元反応、分子内フリーデル・クラフツ反応、酸化反応及びアルコキシ開裂反応の順で反応させることを特徴とするアントラキノン類の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧下でアントラキノン類を環縮合させて、多環化合物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然由来の縮合多環化合物の中には、生体内色素、抗菌作用や抗ウィルス作用等を有する生理活性物質、有機染料であるものが知られている。
【0003】
非特許文献1に記載のステントリンC(Stentorin-C)は、ソライロラッパムシ(Stentor coeruleus)から光受容体色素として単離されたもので、フェナントロピレン ジオン骨格を持つ縮合多環化合物であり、抗ヒト免疫不全ウィルス(抗HIV)作用を有している。ステントリンCは、すでに全合成されている。
【0004】
例えば、非特許文献1及び2に、下記化学反応式〔1〕で示す通り、アントラキノン誘導体(10)が還元されたアントロン誘導体(11)を、そのメチレン部位でのカップリングにより二量化させて、meso体とdl体との1:1のジアステレオマー混合物(12)へ誘導した後、酸素雰囲気下で加熱して紫外線(UV)照射し酸化的光環化させ、さらに脱保護化して、ステントリンC(2)へ誘導する合成方法が開示されている。
【0005】
【化1】
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【0006】
また、非特許文献3に、下記化学反応式〔2〕で示す通り、アントロン誘導体(11)を、酸化的二量化、引続き酸化的光環化させて、ステントリンC(2)とその異性体であるイソステントリンC(Isostentorin-C)(3)との1:1の混合物へ誘導する合成方法が開示されている。
【0007】
【化2】
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【0008】
いずれの方法も、アントロン誘導体(11、13)の分子間での二量化の際の立体選択性が低いうえ、所望のステントリンC(2)の分離・精製が困難であるという問題がある。
また、非特許文献4に、下記化学反応式〔3〕で示す通り、アントラキノン誘導体(14)を、ウルマン(Ullmann)のカップリング反応により二量化させた誘導体(15)にした後、還元的分子内環化、引続く酸化的光環化、さらに脱保護化して、ステントリンC(2)へ誘導する合成方法が開示されている。この方法は、分子内環化・酸化的光環化での収率が著しく低いという問題がある。
【0009】
【化3】
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【0010】
反応性が低いアントラキノン誘導体同士を、直接的に二量化させて、立体選択的に収率良くステントリンC(2)へ誘導する方法は、知られていない。
【0011】
一方、特許文献1に、常圧下でジエンとして作用しないチオフェンと、無水マレイン酸とを無溶媒で、100~2000MPaの高圧条件下、ディールス-アルダー(Diels-Alder)反応により架橋させて、チオフェン誘導体を合成する方法が、記載されている。
【0012】

【非特許文献1】ディ.ダブリュー.キャメロン及びエー.ジー.リッチズ(D.W.Cameron and A.G.Riches)、「テトラへドロン レターズ(Tetrahedron Letters)」、1995年、第36巻、p.2331
【非特許文献2】ディ.ダブリュー.キャメロン及びエー.ジー.リッチズ(D.W.Cameron and A.G.Riches)、「オーストラリアン ジャーナル オブ ケミストリー(Australian Journal of Chemistry)」、1997年、第50巻、p. 409
【非特許文献3】エイチ.フォルク及びイー.メイラ(H.Falk and E.Mayr)、「モナトシェフテ フューア ケミー(Monatshefte fuer Chemie)」、1995年、第126巻、p.1311
【非特許文献4】飯尾、善福及び野老山(H.Iio, K.Zenfuku, and T.Tokoroyama)、「テトラへドロン レターズ(Tetrahedron Letters)」、1995年、第36巻、p. 5921
【特許文献1】特開2003-192688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、反応性が低いアントラキノン誘導体同士を、直接的に二量化により環縮合させて、立体選択的に収率良く、多環化合物を大量に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の縮合多環化合物の製造方法は、1,2,7,8位が未置換であってもよく3,6位が遊離の水酸基で置換され又は保護基によって保護された水酸基で置換され4,5位が未置換であるアントラキノン類を1×10~1×1010Paの高圧に晒し、その2分子を、10位の炭素原子同士と、該4,5位の何れか一方の炭素原子同士とで結合させ、二量体にすることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の縮合多環化合物の製造方法は、請求項1に記載されたもので、該二量体に光を照射して、該アントラキノン類の該4,5位の他方の炭素原子同士を結合させてフェナントロピレン ジオン類にすることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の縮合多環化合物の製造方法は、請求項2に記載されたもので、該アントラキノン類の該3,6位の少なくともいずれかが該保護基によって保護された水酸基で置換されており、該フェナントロピレン ジオン類から該保護基を開裂させることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の縮合多環化合物の製造方法は、請求項1~3のいずれかに記載されたもので、該アントラキノン類の該3,6位の一方が該遊離の水酸基で置換され他方がアルキル基、アラルキル基及びアシル基から選ばれる該保護基によって保護された水酸基で置換され、同じく該1,8位が遊離の水酸基で置換され又はアルキル基、アラルキル基及びアシル基から選ばれる保護基によって保護された水酸基で置換され、同じく該2,7位の少なくとも一方がアルキル基で置換されていることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の縮合多環化合物の製造方法は、請求項4に記載されたもので、該アントラキノン類が、下記化学式(1)
【0019】
【化4】
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【0020】
(化学式(1)中、Rは該保護基)で表されるものであり、それをアルカリ性条件下で該高圧に晒し該二量体にしてから、光照射により、該フェナントロピレン ジオン類にした後、酸性条件下で該保護基を開裂させて、下記化学式(2)
【0021】
【化5】
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【0022】
で表されるステントリンCにすることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載にされたアントラキノン類の製造方法は、3,4,5-トリアルコキシ安息香酸エステルにアルキルマグネシウムハライド又はアルケニルマグネシウムハライドを反応させてから還元された4-アルキル又はアルケニル-3,5-ジアルコキシベンズアルデヒドと、2-アルコキシ-4-トリアルキルシロキシ安息香酸N,N-ジアルキルアミドのオルトリチオ体とを、反応させた後、酸性条件下でのラクトン化反応、接触還元反応、分子内フリーデル・クラフツ反応、酸化反応及びアルコキシ開裂反応の順で反応させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の縮合多環化合物の製造方法によれば、反応性が低いアントラキノン類の二量体を、高圧下で、直接的に二量化により環縮合させて、多環化合物を簡便かつ収率良く、大量に製造することができる。しかも、アントラキノン類の置換基を適切に選択することにより、立体選択的に多環化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の縮合多環化合物の製造方法の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
アントラキノン類から縮合多環化合物を製造する方法の好ましい実施の態様を、化学反応式〔4〕を参照しながら説明する。
【0027】
【化6】
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【0028】
先ずアントラキノン類は以下のようにして合成される。
【0029】
始発物質は、3,4,5-トリアルコキシ安息香酸(20)から誘導されるエステル(21)である。この安息香酸エステル体(21)中、RO-、RO-、RO-はメトキシ基のような炭素数1~6のアルコキシ基、ベンジルオキシ基のようなアラルキルオキシ基である。Rは、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
【0030】
3,4,5-トリアルコキシ安息香酸エステル(21)に、グリニヤル(Grignard)試薬例えば炭素数1~6のアルキルマグネシウムハライドやアルケニルマグネシウムハライド(RMgX)を用いて芳香族求核置換(SAr)反応によりアルキル基Rを導入する。次いで、水素化リチウムアルミニウムによる還元と引続くクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)や活性二酸化マンガンによる酸化を経て、エステル基をアルデヒド基に還元し、4-イソプロピル-3,5-ジアルコキシベンズアルデヒド(22)とする。
【0031】
別な始発物質は、2-アルコキシ-4-トリアルキルシロキシ安息香酸N,N-ジアルキルアミドにn-ブチルリチウム(n-BuLi)でリチオ化させたオルトリチオ体(23)である。このオルトリチオ体(23)中、RO-はメトキシ基のような炭素数1~6のアルコキシ基であり、R-はエチル基のような炭素数1~6のアルキル基であり、R-,R-,R10-は、同一又は異なる炭素数1~6のアルキル基である。
【0032】
4-イソプロピル-3,5-ジアルコキシベンズアルデヒド(22)と、2-アルコキシ-4-トリアルキルシロキシ安息香酸N,N-ジアルキルアミドのオルトリチオ体(23)とを、反応させた後、p-トルエンスルホン酸(p-TosOH)存在下のような酸性条件下でラクトン化させると、ラクトン(24)が得られる。
【0033】
このラクトン(24)を、水酸化パラジウム-炭素(Pd(OH)/C)のような触媒存在下で接触還元反応、引続きトリフルオロ酢酸無水物のような酸無水物存在下で分子内フリーデル・クラフツ(Friedel-Crafts)反応、空気酸化反応、塩化アルミニウム存在下でアルコキシ開裂反応の順で反応させることにより、前記化学式(1)に対応するアントラキノン類(25)が得られる。なおアントラキノン類(25)の置換位置を数字で示してある。
【0034】
なお、アントラキノン類(25)は、前記のアルコキシ基、アラルキルオキシ基で置換されていてもよく、アセチル基やベンゾイル基のようなアシル基で置換されていてもよい。
【0035】
このアントラキノン類(25)から縮合多環化合物が、以下のようにして合成される。
【0036】
アントラキノン類(25)を、重合防止剤であるヒドロキノン存在下、水酸化物の水溶液中のようなアルカリ性条件下で、1×10~1×1010Pa、好ましくは加熱しながら0.8~1.5GPa、より好ましくは加熱しながら0.8GPaの高圧に晒すと、アントラキノン類(25)の2分子が、10位の炭素原子同士と、5位の炭素原子同士とで結合して、面対称の二量体(26)が、立体選択的に得られる。圧力がこの範囲より小さいと反応が進行せず、一方圧力がこの範囲より大きいと、生成物が分解したりタール化したりしてしまう。
【0037】
アントラキノン類(25)は、150℃に加熱しながら高圧に、数時間~1週間、好ましくは1日間、晒されることが好ましい。ヒドロキノンは、3当量用いられることが好ましい。アルカリ性条件は、0.6N水酸化カリウム水溶液中であることが好ましい。
【0038】
二量体(26)を日光のような光で照射することにより、アントラキノン類(25)の4位の炭素原子同士が結合し、フェナントロピレン ジオン骨格を有する化合物(26)が形成される。必要に応じ、ヨウ化水素酸のようなアルコキシ開裂剤により、3位のアルコキシ基を水酸基に変換すると、前記化学式(2)のステントリンCやその誘導体に対応するフェナントロピレン ジオン類(27)が得られる。
【0039】
この面対称のフェナントロピレン ジオン類(27)の異性体である点対称の二量体は、得られない。その詳細は必ずしも明らかではないが、二量化の際、アントラキノン類(25)の3位にアルコキシ基が置換され、その6位に水酸基が置換されているから、その4,5位の電子密度の違いを惹き起こし、その電子密度差に起因してアントラキノン類(25)の5位同士が選択的に反応したからであると推察される。
【実施例】
【0040】
以下に、より具体的に本発明の縮合多環化合物の製造方法により、市販の試薬を原料にして、縮合多環化合物の一例であるステントリンCを製造した実施例を以下に示す。
【0041】
(3,4,5-トリメトキシ安息香酸tert-ブチル(31a)の合成)
【化7】
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激しく撹拌させている無水硫酸マグネシウム(220g,1.83mol)の1200mL無水クロロホルム懸濁液に、濃硫酸(25.2mL,458mmol)を加えた。それに3,4,5-トリメトキシ安息香酸(30)(97g,458mmol)を加えた後、その混合物を15分間撹拌した。次いでtert-ブタノール(t-BuOH)(218mL,2.29mol)を加えた。この混合物を、密栓下、室温で12時間撹拌した。その反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を止めた後、硫酸マグネシウムが完全に溶解するまで撹拌した。有機層を、分液し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧下で留去すると、無色固体の3,4,5-トリメトキシ安息香酸tert-ブチル(31a)(120g,収率98%)が得られた。その安息香酸ブチル体(31a)の薄層クロマトグラフィーによるRf値の物性と、フーリエ変換赤外分光光度法(FTIR)、1H及び13C 核磁気共鳴スペクトル測定法(NMR)による分光学的データとを示す。
Rf 0.28 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 4:1).
FTIR (KBr) ν1704, 1586, 1337, 1124 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.60 (9H, s), 3.90 (3H, s), 3.91 (6H, s), 7.26 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 28.1 (×3), 56.1 (×3), 60.8, 81.1, 106.6 (×2), 127.0, 141.8, 152.7 (×2), 165.3.
【0042】
(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシ安息香酸tert-ブチル(32a)の合成)
【化8】
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撹拌している安息香酸ブチル体(31a)(65g,242mmol)の600mLトルエン溶液に、-15℃で、1.0Nのイソプロピルマグネシウムクロリドのジエチルエーテル溶液(485mL,485mmol)を加えた。その混合物を5時間撹拌した。反応混合物に氷水と2N塩酸とを加え反応を止めた。有機相を分液し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を留去した後、油状粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、無色固体の4-イソプロピル-3,5-ジメトキシ安息香酸tert-ブチル(32a)(37g,収率55%)が得られた。その4-イソプロピル-安息香酸ブチル体(32a)物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.40 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 9:1).
融点 65.0-65.5 ℃.
FTIR (KBr) ν 1710, 1579, 1144 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.27 (6H, d, J = 7.1 Hz), 1.59 (9H, s), 3.62 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 3.84 (6H, s), 7.18 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 20.3 (×2), 24.3, 28.2 (×3), 55.7, 80.9, 105.4, 129.4, 130.3, 158.2 (×2), 165.8.
【0043】
(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド(33)の合成)
【化9】
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撹拌しているLiAlH(541mg,14mmol)の15mL無水テトラヒドロフラン懸濁液に、4-イソプロピル-安息香酸ブチル体(32a)(3.56g,12.7mmol)の20mL無水テトラヒドロフラン溶液を、0℃で加えた。混合物を、室温で8時間撹拌した。その反応混合物に、0℃で水を加え、反応を止めた。反応混合液を、セライトで濾過した。有機溶媒を減圧下で留去すると、無色固体の4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンジルアルコール(2.65g,収率99%)が得られた。このアルコールを精製することなく次の反応に用いた。それの物性を示す。
Rf 0.26 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 2:1).
【0044】
クロロクロム酸ピリジニウム(PCC試薬)(3.1g,14.4mmol)と酢酸ナトリウム(3.0g,34mmol)とセライト(300mg)との35mL無水塩化メチレン懸濁液に、0℃で、4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンジルアルコール(2.53g,12mmol)の15mL塩化メチレン溶液を滴下しながら加えた。反応混合物を、10時間撹拌した後、フロリジルで濾過した。濾液を、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色固体の4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド(33)(2.22g,収率89%)を得た。そのベンズアルデヒド体(33)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.65 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 2:1).
FTIR (KBr) ν 1694, 1142 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.29 (6H, d, J = 7.1 Hz), 3.66 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 3.87 (6H, s), 7.05 (2H, s), 9.89 (1H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 20.1 (×2), 24.5, 55.8 (×2), 105.4 (×2), 131.8, 135.1, 158.90 (×2), 191.8.
【0045】
(3,4,5-トリメトキシ安息香酸1,1-ジエチルプロピル(31b)の合成)
【化10】
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3,4,5-トリメトキシ安息香酸(30)(5.3g,25mmol)の100mL塩化メチレン溶液に、触媒量のN,N-ジメチルホルムアミド(cat.DMF)と塩化チオニル(2.66mL,37mmol)とを室温で滴下しながら加えた。反応混合物を一晩、撹拌しながら還流させた。室温まで冷却した後、有機溶媒と過剰の塩化チオニルとを留去し、安息香酸クロリド体を得た。3-エチル-3-ペンタノール((Et)COH)(5.3mL,37mmol)の65mLテトラヒドロフラン溶液に、1.54Nのn-ブチルリチウム(n-BuLi)のヘキサン溶液(19mL,30mmol)を、滴下しながら加えた。混合物を、室温で1時間撹拌した。この溶液に、先の安息香酸クロリド体の15mLのテトラヒドロフラン溶液を加えた。混合物を、室温で一晩撹拌した。この反応混合物に水を加え反応を止めた。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、淡黄色油状物の3,4,5-トリメトキシ安息香酸1,1-ジエチルプロピル(31b)(定量的収率)が得られた。その安息香酸ジエチルプロピル体(31b)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.46 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 4:1).
FTIR (neat) ν 1705, 1231, 1130 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.89 (9H, t, J = 7.4 Hz), 1.98 (6H, q, J = 7.5 Hz), 3.90 (3H, s), 3.90 (6H, s), 7.27 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 7.8 (×3), 27.0 (×3), 56.1 (×3), 60.9, 89.1, 106.6 (×2), 127.0, 141.9, 152.8 (×2), 165.0.
【0046】
(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシ安息香酸1,1-ジエチルプロピル(32b)の合成)
【化11】
JP2007326815A_000012t.gif
安息香酸ジエチルプロピル体(31b)(155mg,0.50mmol)の2mLトルエン溶液に、0℃で撹拌しながら、0.98Mのイソプロピルマグネシウムクロリドのジエチルエーテル溶液(1.94mL,1.9mmol)を加えた。この混合液を室温で7時間撹拌した。反応混合物に氷水と2N塩酸とを加え反応を止めた。有機相を分液し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン/アセトン = 4:1)により精製すると、無色固体の4-イソプロピル-3,5-ジメトキシ安息香酸1,1-ジエチルプロピル(32b)(126mg,収率78%)が得られた。その安息香酸ジエチルプロピル体(32b)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.63 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 9:1).
融点 65.0-65.5 ℃
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.27 (6H, d, J = 7.1 Hz), 1.59 (9H, s), 3.62 (1H, quin, J = 7.1 Hz), 3.84 (6H, s), 7.18 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 20.3 (×2), 24.3, 28.2 (×3), 55.7 (×2), 80.9, 105.4, 129.4, 130.3, 158.2 (×2), 165.79.
【0047】
(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド(33)の合成)
前記のように安息香酸ブチル体(31a)から(32a)を経てベンズアルデヒド体(33)を合成したのと同様にして、安息香酸ジエチルプロピル体(32b)からベンズアルデヒド体(33)を同様な収率で合成した。
【0048】
なお、安息香酸体(30)から安息香酸ブチル体(31a・32a)を経てベンズアルデヒド体(33)を合成する方法での全収率は46%であり、安息香酸ブチル体(31a)の入手が容易であるので、ベンズアルデヒド体(33)を50g以上のスケールで合成することが可能である。一方、安息香酸体(30)から安息香酸ジエチルプロピル体(31b・32b)を経てベンズアルデヒド体(33)を合成する方法での全収率は約70%であるから歩留まりが良い。
【0049】
(2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル(35)の合成)
【化12】
JP2007326815A_000013t.gif
2,4-ジヒドロキシ安息香酸(34)(25g,162mmol)の200mL無水メタノール溶液に、0℃で撹拌しながら、塩化チオニル(28mL,243mmol)を加えた。混合物を撹拌しながら、30分間還した。有機溶媒を減圧下で留去すると、定量的に2,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル(35)が得られた。さらに再結晶により精製して、無色固体の純粋な安息香酸メチル体(35)を得た。それの物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.49 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 1:1).
FTIR (KBr) ν 3341, 1642 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.92 (3H, s), 6.37 (1H, d, J = 2.4 Hz), 6.40 (1H, dd, J = 2.4, 6.8 Hz), 7.73 (1H, d, J = 8.8 Hz), 11.0 (1H, br).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 52.0, 103.0, 105.7, 108.0, 131.9, 162.3, 163.4, 170.4.
【0050】
(4-(ベンジルオキシ)-2-メトキシ安息香酸メチル(36)の合成)
【化13】
JP2007326815A_000014t.gif
安息香酸メチル体(35)(22.4g,133mmol)とジイソプロピルエチルアミン(i-PrNEt)(35mL,200mmol)と臭化ベンジル(BnBr)(18mL,146mmol)との450mL無水塩化メチレン溶液を、撹拌しながら、一晩還流させた。反応終了後、有機溶媒を減圧下で留去したところ、4-(ベンジルオキシ)-2-ヒドロキシ安息香酸メチルが得られた。再結晶により精製して、純粋なものを得た。その4-(ベンジルオキシ)-2-ヒドロキシ安息香酸メチルとジメチル硫酸(13.8mL,146mmol)と炭酸カリウム(36.8g,266mmol)との400mLアセトニトリル混合物を、撹拌しながら、一晩還流させた。反応混合物をセライト膜で濾過した。有機溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。その水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機溶媒を留去すると、定量的に4-(ベンジルオキシ)-2-メトキシ安息香酸メチル(36)が得られた。さらに再結晶により精製して、無色固体の純粋な4-ベンジルオキシ安息香酸メチル体(36)を得た。それの物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.23 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 4:1).
FTIR (KBr) ν 1713, 1258 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.83 (3H, s), 5.07 (2H, s), 6.54 (1H,d, J = 5.4 Hz), 6.55 (1H, s), 7.73-7.43 (5H, m), 7.84 (1H, d, J = 9.5 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 51.6, 55.9, 70.1, 99.8, 105.2,112.4,127.5 (×2), 128.2, 128.6 (×2), 133.8, 136.0, 161.2, 163.3, 166.0.
【0051】
(4-ヒドロキシ-2-メトキシ安息香酸メチル(37)の合成)
【化14】
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4-ベンジルオキシ安息香酸メチル体(36)(6.15g,22.6mmol)と水酸化パラジウム/炭素(200mg)との酢酸エチル(AcOEt)懸濁液を、水素ガス雰囲気下、室温で2日間撹拌した。混合物をセライト膜で濾過し、有機溶媒を留去すると、無色固体の4-ヒドロキシ-2-メトキシ安息香酸メチル(37)(4.04g,収率99%)が得られた。その4-ヒドロキシ安息香酸メチル体(37)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.25 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 1:1).
FTIR (KBr) ν 3308, 1699 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 3.80 (3H, s), 3.86 (3H, s), 6.44 (1H, dd, J = 2.3, 8.4 Hz), 6.46 (1H, d, J = 2.2 Hz), 7.80 (1H, d, J = 8.5 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 51.8, 55.8, 99.5, 107.3, 111.3, 134.0, 161.4, 161.7, 166.6.
【0052】
(4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-2-メトキシ安息香酸メチル(38)の合成)
【化15】
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4-ヒドロキシ安息香酸メチル体(37)(4.0g,22mmol)の80mL無水テトラヒドロフラン溶液に、トリエチルアミン(7.67mL,55mmol)とtert-ブチルジメチルクロロシラン(3.62g,24.2mmol)とを、室温で加えた。混合物を一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、反応を止めた。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、無色油状物の4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-2-メトキシ安息香酸メチル(38)(6.44g,収率92%)が得られた。その4-シリルオキシ安息香酸メチル体(38)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.42 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 2:1).
FTIR (neat) ν 1728, 1705, 1252 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.23 (6H, s), 0.99 (9H, s), 3.85 (3H, s), 3.87 (3H, s), 6.43 (1H, d, J = 2.4 Hz), 6.43 (1H, dd, J = 2.2, 9.3 Hz), 7.77 (1H, d, J = 9.0 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -4.3 (×2), 18.3, 25.6 (×3), 51.7, 55.9, 104.3, 111.7, 112.9.
【0053】
(4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-N,N-ジエチル-2-メトキシベンズアミド(39)の合成)
【化16】
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4-シリルオキシ安息香酸メチル体(38)の10mL無水テトラヒドロフラン溶液に、ジエチルアミン(EtNH)(1mL,9.6mmol)と1.54Nのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(5mL,7.7mmol)とから調製されたEtNLi溶液を、0℃で加えた。混合物を室温まで温め、3時間撹拌した。反応混合物に水を加え、反応を止めた。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を留去した後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、黄色がかった固体の4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-N,N-ジエチル-2-メトキシベンズアミド(39)(1.52g,収率70%)が得られた。そのベンズアミド体(39)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.36 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 2:1).
FTIR (neat) ν 3406, 1591, 1205 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.21 (6H, s), 0.99 (9H, s), 1.02 (3H, t, J = 7.3 Hz), 1.22 (3H, t, J = 7.2 Hz), 3.14 (2H, q, J = 7.1 Hz), 3.55 (2H, br), 6.43 (1H, d, J = 2.4 Hz), 6.43 (1H, dd, J = 2.2, 9.3 Hz), 7.77 (1H, d, J = 9.0 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -4.4 (×2), 12.9,13.9,18.2, 25.6 (×3), 38.8, 51.7, 55.9, 104.3, 111.7, 112.9.
【0054】
(4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-N,N-ジエチル-2-[ヒドロキシ(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシフェニル)メチル]-6-メトキシベンズアミド(40)の合成)
【化17】
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トルエンで水を共沸したベンズアミド体(39)(1.45g,4.3mmol)とN,N,N,N-テトラメチル-1,2-エチレンジアミン(TMEDA)(0.71mL,4.7mmol)との15mL無水テトラヒドロフラン溶液に、0.55Nのsec-ブチルリチウム(sec-BuLi)のシクロヘキサン溶液(8.6mL,4.7mmol)を、-78℃で撹拌しながら加えた。4時間後、反応混合液に、ベンズアルデヒド体(33)の20mL無水テトラヒドロフラン溶液を、-78℃で、加えた。この混合物を1時間撹拌した。反応混合物に水を加え、反応を止めた。水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を留去した。得られた4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-N,N-ジエチル-2-[ヒドロキシ(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシフェニル)メチル]-6-メトキシベンズアミド(40)の粗生成物(3.70g)を、さらに精製することなく、次のラクトン化に用いた。
【0055】
(5-ヒドロキシ-3-(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシフェニル)-7-メトキシ-2-ベンゾフラン-1(3H)-オン(41)の合成)
【化18】
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ベンズアミド体(40)とp-トルエンスルホン酸(p-TsOH)(100mg,0.53mmol)との35mL1,2-ジクロロエタン溶液を、撹拌しながら、10時間還流した。有機溶媒を留去した後、懸濁液を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、無色固体のラクトン体である5-ヒドロキシ-3-(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシフェニル)-7-メトキシ-2-ベンゾフラン-1(3H)-オン(41)(1.13g,2工程での収率74%)を得た。このラクトン体(41)物性と分光学的データと元素分析結果とを示す。
Rf 0.39 (展開溶媒 ヘキサン/アセトン = 1:1).
FTIR (KBr) ν 3268, 1736 cm-1
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.23 (6H, d, J = 7.1 Hz), 3.55 (1H, sept, J = 7.0 Hz), 3.76 (6H, s), 3.94 (3H, s), 6.34 (1H, s), 6.43 (1H, s), 6.43 (2H, s), 9.93 (1H, br).
13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 20.5 (×2), 23.4, 33.2, 55.7 (×2), 65.7, 80.3, 97.2, 99.4, 101.1, 102.5, 103.0, 123.2, 136.6, 154.7, 158.2, 159.3, 165.5, 167.4.
Anal. Calcd for C20H22O6: C, 67.03; H, 6.19; Found: C, 66.97; H, 6.04.
【0056】
なお、5-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-3-(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシフェニル)-7-メトキシ-2-ベンゾフラン-1(3H)-オン(42)が副生した。それの物性と分光学的データとを示す。
【化19】
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Rf 0.58 (展開溶媒 ヘキサン/アセトン = 2:1).
FTIR (neat) ν 1750, 1603 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.22(1), 0.22(8) (3H ×2, s), 0.97 (9H, s), 1.25 (6H, dd, J = 1.5, 7.1 Hz), 3.56 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 3.75 (6H, s), 3.96 (3H, s), 6.15 (1H, s), 6.31 (1H, dd, J = 0.73, 1.7 Hz), 6.38 (2H, d, J = 7.0 Hz) 6.42 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -4.3 (×2), 18.2, 20.5 (×2), 24.1, 25.2 (×3), 55.8 (×2), 56.0, 81.5, 103.0 (×2), 103.0, 105.8, 135.1, 154.0, 158.8 (×2), 159.6, 163.3, 168.3.
【0057】
(4-ヒドロキシ-2-(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンジル)-6-メトキシ安息香酸(43)の合成)
【化20】
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ラクトン体(41)(122mg,0.34mmol)と水酸化パラジウム/炭素(150mg)との200mL酢酸エチル懸濁液を、水素ガス雰囲気下、室温で4日間撹拌した。反応混合物を、セライト膜で濾過し、溶媒を留去すると、無色固体の4-ヒドロキシ-2-(4-イソプロピル-3,5-ジメトキシベンジル)-6-メトキシ安息香酸(43)(122mg,収率99%)が得られた。その安息香酸体(43)の物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.31 (展開溶媒 ヘキサン/アセトン = 1:1).
FTIR (neat) ν 3382, 1678, 1595 cm-1.
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 1.23 (6H, d, J = 7.1 Hz), 3.52 (1H, sept, J = 7.0 Hz), 3.73 (6H, s), 3.85 (3H, s), 4.10 (2H, s), 6.30 (1H, d, J = 2.2 Hz), 6.35 (1H, d, J = 2.0 Hz) 6.41 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, CD3OD) δ 20.8 (×2), 23.8, 39.7, 55.7 (×2), 56.2, 97.5, 105.9 (×2), 110.4, 113.0, 121.9, 139.0, 144.3, 158.4 (×2), 159.0, 159.7, 168.5.
【0058】
(6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-1,3,8-トリメトキシアントラ-9,10-キノン(44)の合成)
【化21】
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安息香酸体(43)(343mg,0.95mmol)の100mL無水クロロホルム液を0℃に冷却し、それに、新たに蒸留したトリルルオロ酢酸無水物(TFAA)(781mg,3.7mmol)を、窒素雰囲気下で加えた。混合物を、0℃で30分間撹拌した後、室温で一晩撹拌した。反応混合物からトリルルオロ酢酸無水物とCHClを減圧下で除去し、そこに飽和炭酸カリウム水溶液を加えた。水相をクロロホルムで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、残渣を、30mLメタノール(MeOH)で希釈した後、酸素雰囲気下で1日間撹拌した。懸濁液を濾過し、メタノールで洗浄すると、黄色固体の6-ヒドロキシ-2-イソプロピル-1,3,8-トリメトキシアントラ-9,10-キノン(44)(314mg,収率93%)が得られた。そのトリメトキシアントラキノン体(44)の物性と分光学的データとを示す。なおUVは吸光度測定法である。
Rf 0.25 (展開溶媒 ヘキサン/アセトン = 2:1).
融点 246 ℃ (分解).
FTIR (KBr) ν 3462, 1639, 1591 cm-1.
UV λmax 280 (ε = 12000), 346 (ε = 2200) nm.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.34 (6H, d, J = 7.1 Hz), 3.69 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 3.89 (3H, s), 3.94 (3H, s), 3.96 (3H, s), 6.74 (1H, d, J = 2.2 Hz), 7.18 (1H, d, J = 2.2 Hz) 7.45 (1H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 20.4 (×2), 25.2, 55.6, 56.3, 62.6, 104.6, 105.3, 105.6, 116.7, 120.0, 133.3, 136.1, 159.3, 162.1, 162.3, 162.4, 181.4, 184.3.
【0059】
(1,6,8-トリヒドロキシ-2-イソプロピル-3-メトキシアントラ-9,10-キノン(45)の合成)
【化22】
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トリメトキシアントラキノン体(44)(74mg,0.21mmol)の10mL無水塩化メチレン懸濁液に、無水塩化アンモニウム(280mg,2.1mmol)を、0℃で加えた。混合物を2時間撹拌した後、室温に温めた。反応混合物を、室温で12時間撹拌した。それを、氷片と濃塩酸との混合物に注ぎ込んだ後、30分間湯浴上で溶解させた。この混合物を、室温まで放冷した後、クロロホルムと酢酸エチルとで抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、橙色固体の1,6,8-トリヒドロキシ-2-イソプロピル-3-メトキシアントラ-9,10-キノン(45)(50mg,収率77%)が得られた。そのアントラキノン体(45)の物性と分光学的データとを示す。図1に1H NMRの測定チャートを示し、図2に13C NMRの測定チャートを示す。これらのデータは、(45)の化学構造を支持する。
Rf 0.40 (展開溶媒 ヘキサン/アセトン = 2:1).
融点 233.5-235.5 ℃.
FTIR (KBr) ν 3314, 3229, 1622 cm-1.
1H NMR (400 MHz, acetone-d6) δ 1.34 (6H, d, J = 7.1 Hz), 3.69 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 4.04 (3H, s), 6.59 (1H, d, J = 2.2Hz), 7.17 (1H, d, J = 2.2 Hz), 7.30 (1H, s), 12.14 (1H,s), 12.66 (1H,s).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 19.7 (×2), 24.1, 55.8, 103.4, 108.5, 109.2, 109.4, 110.4, 130.0, 132.3, 135.0, 161.9, 163.5, 164.7, 182.5 (×2).
【0060】
(1,6,8,10,11,13-ヘキサヒドロキシ-2,5-ジイソプロピル-3,4-ジメトキシフェナントロ[1,10,9,8-opqra]ペリレン-7,14-ジオン(ステントリンC-(OMe)2)(46)の合成)
【化23】
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トリヒドロキシアントラキノン体(45)(100mg、0.3mmol)とヒドロキノン(0.91mmol)と0.6Nの水酸化カリウム水溶液との混合物を、ポリテトラフルオロエチレン製の反応容器に入れて密閉し、加圧装置(光高圧機器株式会社製;製品番号HR-15型)を用いて0.8GPaの高圧に加圧しつつ、150℃で24時間反応させた。反応混合物を、0.1N塩酸でpH1になるまで酸性化してから、溶媒を留去し、中間体を黒色の残渣として得た。これを精製することなく、アセトン-メタノール(1:1)混合溶媒で希釈した後、窒素雰囲気下、日光に6時間晒した。暗赤色の懸濁液を、減圧下で、濃縮した。残渣を、シュウ酸塩処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル= 4:1)で精製した。さらに、セファデックス(GLヘルスケアバイオサイエンス社製;登録商標)を用い、溶離液として塩化メチレン/メタオール(4:1)でのゲル濾過により、黒色固体のフェナントロピレン ジオン類であるステントリンC-(OMe)2 (46)(収率30~40%)が得られた。それの物性と分光学的データとを示す。なお、HRMS (FAB)は、高分解能マススペクトロメトリー(高速原子衝撃法)である。図3に1H NMRの測定チャートを示し、図4に13C NMRの測定チャートを示す。これらのデータは、ステントリンC-(OMe)2 (46)の化学構造を支持する。
Rf 0.45 (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル = 2:1, シュウ酸塩処理シリカゲル).
1H NMR (400 MHz, acetone-d6) δ 1.53 (6H, d, J = 7.1 Hz), 1.63 (6H, d, J = 7.1 Hz), 3.48 (3H, s), 4.08 (2H, sept, J = 7.1Hz), 6.66 (2H, s), 14.75 (2H, s), 15.32 (2H, s).
13C NMR (100 MHz, acetone-d6 ) δ 20.9 (×2), 21.6 (×2), 25.8 (×2), 61.7 (×2), 103.1 (×2), 106.7 (×2), 107.7 (×2), 112.3 (×2), 120.9 (×2), 122.8 (×2), 126.5 (×2), 128.2 (×2), 128.7 (×2), 163.2 (×2), 164.3 (×2), 169.6 (×2), 176.3 (×2), 184.6 (×2).
HRMS (FAB) calcd. for C36H27O10 (M-H+) 620.6015, found 619.1595.
【0061】
なお、ステントリンC-(OMe)2 (46)は、遠心液-液分配クロマトグラフィー(Centrifugal Partition Chromatography)を用いた分離方法でも精製できる。その場合の展開溶媒として、ヘキサン/酢酸エチル/メタノール/水=55:45:55:45が最適であった。
【0062】
(1,3,4,6,8,10,11,13-オクラヒドロキシ-2,5-ジイソプロピルフェナントロ[1,10,9,8-opqra]ペリレン-7,14-ジオン(ステントリンC)(2)の合成)
【化24】
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ステントリンC-(OMe)2 (46)(15mg、24μmol)を、加熱しながら3.0mLの酢酸に溶解した後、次亜リン酸ナトリウム(56mg)とヨウ化水素酸(10滴)とを加えた。その混合物に、さらにヨウ化水素酸を10滴ずつ3回加えつつ、32時間還流させた。反応混合物を放冷し、水に注ぎこんだ。得られた沈殿物を、集めて水で洗浄してから、乾燥した。それをシリカゲル分取薄層クロマトグラフィーに付し、溶離液として、アセトン/トルエン/酢酸(43:56:1)で精製した。えび茶色の主バンドからアセトンで溶出させ、有機溶媒を留去すると、黒色固体のステントリンC(2)が得られた。それの物性と分光学的データとを示す。
Rf 0.13(展開溶媒 酢酸エチル/アセトン = 1:1).
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.51 (12H, d, J = 7.1 Hz), 6.56 (2H, s), 14.61 (2H, s), 15.09 (2H, s).
【0063】
得られたステントリンCと非特許文献2に記載された標品のステントリンCとについて、1H NMRでのケミカルシフト(δ)と結合定数(J)と多重度とを比較した。その結果を、表1に示す。
【0064】
【表1】
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【0065】
表1から明らかな通り、得られたステントリンCと非特許文献2に記載された標品のステントリンCとは、1H NMRでのケミカルシフトと結合定数と多重度とが一致している。このことから、得られたステントリンCが、前記化学式(2)で示されるものであることが、確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の縮合多環化合物の製造方法によれば、生体内色素、抗菌剤、抗ウィルス剤、有機染料等となる縮合多環化合物を、簡便かつ収率良く製造することができる。とりわけ反応性が低いアントラキノン誘導体同士を、直接的に二量化により環縮合させて、立体選択的に収率良く、フェナントロピレン ジオン骨格を持つ縮合多環化合物を大量に製造できる。
【0067】
縮合多環化合物の中でもステントリンCは、抗HIV剤として有用である。その薬学的又は医学的研究のための試薬として、また抗HIV製剤の原料として、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を適用する縮合多環化合物の製造方法に用いられるアントラキノン類の1H NMRの測定チャートを示す図である。

【0069】
【図2】本発明を適用する縮合多環化合物の製造方法に用いられるアントラキノン類の13C NMRの測定チャートを示す図である。

【0070】
【図3】本発明を適用する縮合多環化合物の製造方法での目的物であるフェナントロピレン ジオン類の1H NMRの測定チャートを示す図である。

【0071】
【図4】本発明を適用する縮合多環化合物の製造方法での目的物であるフェナントロピレン ジオン類の13C NMRの測定チャートを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3