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明細書 :2光子吸収化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5130514号 (P5130514)
公開番号 特開2007-332043 (P2007-332043A)
登録日 平成24年11月16日(2012.11.16)
発行日 平成25年1月30日(2013.1.30)
公開日 平成19年12月27日(2007.12.27)
発明の名称または考案の名称 2光子吸収化合物
国際特許分類 C07C  49/653       (2006.01)
C07C  49/21        (2006.01)
G02F   1/361       (2006.01)
FI C07C 49/653 CSP
C07C 49/21
G02F 1/361
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2006-162583 (P2006-162583)
出願日 平成18年6月12日(2006.6.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成17年12月17日 日本化学会・アメリカ化学会・カナダ化学会・オーストラリア化学会・ニュージーランド化学会・韓国化学会主催の「2005環太平洋国際化学会議」において文書をもって発表
審査請求日 平成21年1月9日(2009.1.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】川俣 純
【氏名】平川 祥一朗
【氏名】村藤 俊宏
【氏名】笠谷 和男
審査官 【審査官】今井 周一郎
参考文献・文献 特開2003-183213(JP,A)
Proseedings of the International Society for Optical Engineering,1999年,3798,32-37
調査した分野 CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される2光子吸収化合物。
【化1】
JP0005130514B2_000009t.gif
(但し、Rは水素又はメチレン基で、該メチレン基は互いに結合し、環を形成している。X、Yは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基及びアミノ基から選ばれる基、nは0から2の整数を表す。)
【請求項2】
Rがメチレン基であり、互いに結合し、シクロペンタノン環を形成している請求項1記載の2光子吸収化合物。
【請求項3】
Rが水素である請求項1記載の2光子吸収化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物であり、特に2光子吸収断面積の大きい化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次の非線形光学材料の中でも、2光子吸収断面積の大きい有機化合物(以下「2光子吸収化合物」という)が関心を集めており、光デバイス及びバイオ関係で種々の応用が期待されている。
【0003】
有機化合物による非線形光学材料は、多く知られており、例えば、カルバゾール誘導体(特許文献1)、ヨードニウム塩構造を有する化合物(特許文献2)、テトラベンゾポルフィリン誘導体(特許文献3)、金属ポリフィリン類(特許文献4)、フタロシアン系化合物(特許文献5)、テトラアザポルフィン化合物(特許文献6)などがあげられる。中でも、効率よく2光子を吸収する有機材料、すなわち2光子吸収断面積の大きい有機材料として下記化合物が提案されている(特許文献7)。
【0004】
【化2】
JP0005130514B2_000002t.gif
(X,Xは置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、同一でも異なってもよく、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、または置換基を表しR、R、RおよびRのうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよく、nおよびmは2以上の場合、複数個のR、R,RおよびRは同一でも、それぞれ異なってもよく、nおよびmは、それぞれ独立に1~4の整数を表す。)
一般に非線形光学材料は、印加する光電場の2乗、3乗等に比較する非線形の光学応答を示す物質で、2光子吸収をする、第二高調波や第三高調波等を発生する、2光子励起発光を生ずるなどの特性を示す。
【0005】
2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して、励起される現象である。すなわち、化合物の吸収帯が存在しないエネルギー領域で、2つの光子を同時に吸収し励起状態へと電子が遷移する現象を2光子吸収という。
【0006】
化合物が2光子吸収により励起された場合であっても、エネルギーを放出する段階においては、1光子吸収励起と同様に種々の形でエネルギーを放出する。例えば、失活過程において、蛍光、リン光や熱としてエネルギーを放出するもの、化合物の分子構造の変化によりエネルギーを消化するものなどがある。
【0007】
2光子吸収の効率は、印加する光電場の2乗に比例するため、2次元平面にレーザーを照射した場合、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで、2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は生じない状況を作り出すことができる。一方、3次元空間では、レーザー光をレンズで集光し、焦点の電界強度を高めることにより励起し、空間の一点で2光子吸収を起こさせ、焦点のみで2光子発光させたり、或いは高熱を生じさせて化学変化を起こさせるなど、光励起に対して高い空間分解能を与えることができる。このため、物体、特に透光性物体の内部の加工等を可能としたり、物体内部で特殊な発光をさせるなどができる。特に生体組織の造影(バイオイメージング)、フォトダイナミックセラピー、アップコンパージョンレージング等への応用は、光毒性、3次元空間分解能などの観点から、これまでの1光子励起よりも利点が多い。
【0008】
しかし、生体内等で用いる場合、生体に対して、あまりに強い光を照射することは、生体組織の光による損傷を来たすこと、或いは2光子吸収化合物自体の劣化を生じるなどの悪影響のため、過度に強い光は使用できない。そこで、化合物の2光子吸収効率が高いこと及び2光子吸収による励起状態により発光や発熱の効率が高いことが望まれる。また、使用する化合物としては生体に無害でなければならないこと、生体組織への親和性があることなどの条件を満たす必要もある。
【0009】
しかるに、かかる条件を満足する2光子吸収化合物は、現在の所ほとんど提案されていない。

【特許文献1】特開2001-264828号
【特許文献2】特開平10-325968
【特許文献3】特開平9-179153号
【特許文献4】特開平7-218939号
【特許文献5】特開平7-218939号
【特許文献6】特開平5-5916号
【特許文献7】特開2003-183213号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、生体への親和性がよい、しかも2光子吸収効率のよい、また励起状態での2光子発光等の効率のよい新規な2光子吸収化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表される2光子吸収化合物である。
【0012】
【化3】
JP0005130514B2_000003t.gif
(但し、Rは水素又はメチレン基で、該メチレン基は互いに結合し、環を形成している。X、Yは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基及びアミノ基から選ばれる基、nは0から2の整数を表す。)
更に本発明において好ましい態様は、上記第1の態様において、2つのRがメチレン基であり、且つ該メチレン基は互いに結合し、シクロペンタノン環を形成した化合物である。
【0013】
また別の態様としては、上記一般式(1)において、2つのRが水素である2光子吸収化合物である。
【0014】
本発明の最大の特徴は、化合物の両端にアズレン環を有する点にある。
【0015】
アズレン自体、医薬品ともなり得るものであり、本発明の化合物は、一般に生体への親和性が高いと考えられる。
【0016】
更に後述する実施例からも明らかなとおり、本発明のアズレン環を有する化合物は、同じ分子量を持つ通常の芳香族化合物である下記化学式(2)の物質よりもはるかに2光子吸収断面積が大きい特徴を有する。
【0017】
【化4】
JP0005130514B2_000004t.gif
本発明において、前記一般式(1)のX及びYは、水素原子又は置換基であって、特に電子供与性置換基である。一般にアミノ基、水酸基、アルキル基、アルコキシ基などである。なかでも、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基などのモノアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基などのジアルキルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基が好ましく、特にジアルキルアミノ基、アルコキシ基及びアルキル基が高い吸収断面積を与える。勿論、各X及びYは同一の基であってもよいし、また任意に異なる基又は原子であってもよい。
【0018】
本発明の化合物は、中央にカルボニル基を有し、両端のアズレン基が共役の二重結合で連結されていることが重要であり、交互に二重結合を持つ鎖状炭化水素であれば一応の効果を有するものではあるが、一般に前記一般式(1)で示されるnは0、1及び2の中から選ばれる(これを0から2と表現する)場合が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、新規な2光子吸収化合物であり、特にその両端にアズレン環が結合しているものであって、大きな2光子吸収断面積を有する。
【0020】
また、一般に生体への親和性が高いことから、生体内、例えば細胞内の状況探索や極部的発熱を利用した治療方法への展開が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、前記一般式(1)で表される化合物であり、これらの化合物を合成する手段は特に限定されない。通常の化学者が、該化合物を見た場合に行うであろう合成手段に従って合成すればよい。例えば、市販のアズレンに前記電子供与性置換基を常法により導入するか又はすることなく、ホルミル化し、これをシクロペンタノン、2.5ジ(エチリデン)シクロペンタノン、アセトン、ジアリルケトンなどと反応させ、例えば下記化学式(3)、(4)、(5)及び(6)に示す化合物等が得られる。
【0022】
【化5】
JP0005130514B2_000005t.gif
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではないし、また化合物の合成方法もこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
(ホルミルアズレンの合成)
【0024】
【化6】
JP0005130514B2_000006t.gif
アルゴン雰囲気下、室温でアズレン(0.26g,2mmol)をベンゼン(8ml)に溶かしてDMF(0.31ml,4.0mmol)を加え、氷冷したでPOCl(0.37ml,4.0mmol)を徐々に滴下した。発熱が収まったら、溶液を85℃で2時間加熱還流した。反応溶液に飽和重曹水に加えてアルカリ性にし、CHClで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濃縮してカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=5/1)により分離精製した。紫色液体、収量0.31g、収率97.6%であった。
(α,α’-ジ(1-アズレニリデン)シクロペンタノンの合成)
【0025】
【化7】
JP0005130514B2_000007t.gif
窒素雰囲気下、室温で1-ホルミルアズレン(0.33g,2mmol)とシクロペンタノン(0.08g,1mmol)をエタノール300mlに溶かして、飽和水酸化ナトリウム水溶液を1ml加え、室温で10時間攪拌した。-10℃で12時間放置し、得られた粗生成物をクロロホルムで再結晶した。深紫色針状晶、収量0.05g、収率13.9%であった。このものはNMRにより次のピークが得られたことから、α,α’-ジ(1-アズレニリデン)シクロペンタノンであることが確認された。
【0026】
HNMRスペクトル(溶媒:CDCl):3.28(4H,s),7.30(2H,t,J=9.7Hz),7.39(2H,t,J=9.9Hz),7.52(2H,d,J=4.2Hz),7.72(2H,t,J=9.8Hz),8.28(2H,d,J=4.2Hz),8.35(2H,s),8.36(2H,d,J=8.8Hz),8.87(2H,d,J=9.8Hz)
[2光子吸収断面積の評価方法]
本発明の化合物の2光子吸収断面積の評価は、M.Sheik-Bahae et.al.,IEEE J.Quantum Electronics 1990,26,760.記載の方法を参考に行なった。2光子吸収断面積測定用の光源には、再生増幅器を通したTi:sapphire パルスレーザーの光(パルス幅:120fs、繰り返し:1kHz、平均出力:0.4mW、ピークパワー:3.3GW)を用い、700nmから1000nmの波長範囲で2光子吸収断面積を測定することで、各化合物の2光子吸収断面積を得た。2光子吸収測定用の試料には、1×10-3の濃度でクロロホルムに化合物を溶かした溶液を用いた。
【0027】
本発明の化合物の2光子吸収断面積を上記方法にて測定し、得られた結果をGM単位(1GM=1×10-50cms/photon)で表1に示した。なお、表中に示した値は1光子吸収の吸収端波長より長波側で1光子吸収との共鳴が生じない波長領域に観測された2光子吸収帯における吸収断面積の最大値である。
【0028】
なお、本発明の2光子吸収化合物が、類似する他の化合物に比べ格段に2光子吸収断面積が大きいことを示すための比較例としてα,α’-ジ(1-ナフチリデン)シクロペンタノンについても、2光子吸収断面積を測定し、表1に示した。
【0029】
【表1】
JP0005130514B2_000008t.gif