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明細書 :複素誘電率の非破壊測定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3787615号 (P3787615)
公開番号 特開2002-214161 (P2002-214161A)
登録日 平成18年4月7日(2006.4.7)
発行日 平成18年6月21日(2006.6.21)
公開日 平成14年7月31日(2002.7.31)
発明の名称または考案の名称 複素誘電率の非破壊測定方法及び装置
国際特許分類 G01N  22/00        (2006.01)
G01R  27/26        (2006.01)
FI G01N 22/00 G
G01N 22/00 Y
G01R 27/26 H
請求項の数または発明の数 11
全頁数 17
出願番号 特願2001-009468 (P2001-009468)
出願日 平成13年1月17日(2001.1.17)
審判番号 不服 2003-004071(P2003-004071/J1)
審査請求日 平成13年1月17日(2001.1.17)
審判請求日 平成15年3月13日(2003.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】平野 誠
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
参考文献・文献 特開昭56-124039(JP,A)
特開昭62-195568(JP,A)
特開平6-308177(JP,A)
特開平9-21837(JP,A)
特開平10-332605(JP,A)
特開平11-166951(JP,A)
実開昭62-162659(JP,U)
平野誠 他 「フランジ付方形導波管を用いた損失誘電体の複素誘電率の測定」電子情報通信学会論文誌 社団法人電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ 平成11年11月25日(J82-C-I)第11号 p.642-649
戸花康博 他 「同軸線路を用いた損失性シートの複素誘電率と複素透磁率の測定法に関する検討」電気関係学会北海道支部連合大会講演論文集 電子情報通信学会・映像情報メディア学会・電気学会・情報処理学会・照明学会 北海道支部 平成11年10月23-24日 科学技術振興事業団資料受入日 平成11年11月4日)p.177
調査した分野 G01N 22/00 - 22/04 , G01R 27/00 - 27/32
JOIS(JICSTファイル)
特許請求の範囲 【請求項1】
2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、かつ各々のフランジ及び誘電体の寸法は入射される電磁波が前記誘電体の端部に至るまでに充分減衰する寸法を有するものとし、
一方の前記導波管の開口面から一定の周波数の電磁波を入射させた際の反射係数及び透過係数を計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、前記挿入した誘電体の複素誘電率を求めることを特徴とする複素誘電率の非破壊測定方法。
【請求項2】
2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、かつ各々のフランジ及び誘電体の寸法は入射される電磁波が前記誘電体の端部に至るまでに充分減衰する寸法を有するものとし、
一方の前記導波管の開口面から当該導波管で伝搬可能な周波数範囲の電磁波を入射させた際の反射係数及び透過係数を計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角の周波数特性から、前記挿入した誘電体の複素誘電率の周波数特性を求めることを特徴とする複素誘電率の非破壊測定方法。
【請求項3】
前記被測定試料から得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率と誘電正接(tanδ)を求める作業をコンピュータによる演算処理で実行することを特徴とする請求項1又は2記載の複素誘電率の非破壊測定方法。
【請求項4】
2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、かつ各々のフランジ及び誘電体の寸法は入射される電磁波が前記誘電体の端部に至るまでに充分減衰する寸法を有するものとし、
一方の前記導波管の開口面の反射係数及び透過係数を反射・透過係数測定手段で計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、誘電率特定手段により前記挿入した誘電体の複素誘電率を求めることを特徴とする複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項5】
2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、一方のフランジ付導波管の開口面から電磁波を入射させ、該開口面から前記誘電体に入射した電磁波が、それぞれのフランジ付導波管の開口面以外の位置から前記誘電体の外部に漏れることがなく、よって計測系以外の外界の電磁波的な悪影響を受けることなく反射係数及び透過係数を反射・透過係数測定手段で計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、誘電率特定手段により前記挿入した誘電体の複素誘電率を求めることを特徴とする複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項6】
その開口面より被測定試料である平板形状の誘電体の表面に電磁波を入射して、当該開口面からの反射波を計測するための第1のフランジ付導波管を有し、当該第1のフランジ付導波管のフランジが前記誘電体の表面に隙間無く密着する電磁波入力手段と、
前記誘電体を透過した電磁波を計測するための第2のフランジ付導波管を有し、当該第2のフランジ付導波管のフランジが前記誘電体の反対面に隙間無く密着する電磁波出力手段と、
前記電磁波入力手段へ電磁波を供給して、その基本モードに対する挿入された前記誘電体の反射特性を測定するとともに、前記電磁波出力手段からの電磁波を受信して、基本モードに対する前記誘電体の透過特性を測定するための反射・透過係数測定手段と、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記反射・透過係数測定手段により測定された反射特性及び透過特性から、前記誘電体の複素誘電率を求めるために、反射係数及び透過係数と複素誘電率の関係を算出するための反射・透過係数算出手段と、
該反射・透過係数算出手段により算出された反射係数及び透過係数と複素誘電率の関係から前記誘電体の複素誘電率を特定するための誘電率特定手段とを備えたことを特徴とする複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項7】
前記電磁波入力手段は、高周波発生手段により発生した高周波を前記第1のフランジ付導波管の導波管部に導くためのコネクタと、該導波管部内において前記高周波を電磁波に変換するためのロッドアンテナとを有し、前記第1のフランジ付導波管の前記導波管部は前記ロッドアンテナから放射された電磁波を前記誘電体に入射させるためにその開口面まで導き、前記第1のフランジ付導波管のフランジは前記誘電体内部に入射した電磁波が、前記開口面以外の位置から前記誘電体の外部に漏れることを防ぐ構成である請求項6記載の複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項8】
前記電磁波出力手段は、前記第2のフランジ付導波管の導波管部内に設けられて電磁波を高周波に変換するための受信用ロッドアンテナと、該受信用ロッドアンテナで受信した高周波を、高周波受信手段に導くためのコネクタとを有し、前記第2のフランジ付導波管の前記導波管部はその開口面より入射した電磁波を、前記受信用のロッドアンテナまで導き、前記第2のフランジ付導波管のフランジは前記誘電体を透過した電磁波が、前記開口面以外の位置から誘電体の外部に漏れることを防ぐ構成である請求項6又は7記載の複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項9】
前記反射・透過係数算出手段は、マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記第1及び第2のフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれの前記フランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を、基本モードだけでなく2つの開口面で発生する高次モードを含めた上で、基本モードの反射係数及び透過係数を算出することを特徴とする請求項6,7又は8記載の複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項10】
前記誘電率特定手段は、前記反射・透過係数算出手段により算出された複素誘電率と反射係数及び複素誘電率と透過係数の対応関係を用い、前記反射・透過係数測定手段により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率を直接求めることを特徴とする請求項6,7,8又は9記載の複素誘電率の非破壊測定装置。
【請求項11】
被測定試料から得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率と誘電正接(tanδ)を求めるコンピュータを備えることを特徴とする請求項10記載の複素誘電率の非破壊測定装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複素誘電率の非破壊測定方法及び装置に係り、特にマイクロ波帯・ミリ波帯における複素誘電率の測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種材料の誘電率測定方法としては、低周波領域では誘電体材料を電極間に挟み、電極間の静電容量を測定して、その測定値と材料の寸法から誘電率を算出する方法が用いられる。
【0003】
また、高周波領域では測定周波数範囲に共振点をもつ共振器を用意し、誘電体材料をその共振器に内挿したときとしないときの共振周波数、Q等を測定し、それらの測定値の変化から複素誘電率を算出する方法、あるいは測定周波数がその通過帯域内にあるような同軸伝送路または導波管伝送路を用意し、誘電体材料をその伝送路に内挿したときとしないときの伝送特性を測定して、誘電率を算出する方法が用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マイクロ波帯・ミリ波帯における誘電体の複素誘電率測定を対象とするものである。従来のマイクロ波帯・ミリ波帯の測定法では、測定用の試料を共振器あるいは導波管の内部に挿入して測定されていた。このため、従来法は測定用試料に前記挿入する測定器具の寸法に合わせるための加工を必要とする破壊測定法であり、試料の加工には相当の手間を要した。また、作成した試料の外形寸法、特に測定器具の内壁に接触する部分の寸法精度が低いと大きい測定誤差が生じ、正確な測定は困難であった。
【0005】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を解決し、マイクロ波やミリ波領域で被測定試料の寸法精度を得るのが困難な場合であっても、簡単な構造の回路で容易かつ正確に当該試料の誘電体の複素誘電率を測定することのできる複素誘電率の非破壊測定方法及び装置を提供するにある。
【0006】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願請求項1に係る複素誘電率の非破壊測定方法は、2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、かつ各々のフランジ及び誘電体の寸法は入射される電磁波が前記誘電体の端部に至るまでに充分減衰する寸法を有するものとし、
一方の前記導波管の開口面から一定の周波数の電磁波を入射させた際の反射係数及び透過係数を計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、前記挿入した誘電体の複素誘電率を求めることを特徴としている。
【0008】
本願請求項2に係る複素誘電率の非破壊測定方法は、2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、かつ各々のフランジ及び誘電体の寸法は入射される電磁波が前記誘電体の端部に至るまでに充分減衰する寸法を有するものとし、
一方の前記導波管の開口面から当該導波管で伝搬可能な周波数範囲の電磁波を入射させた際の反射係数及び透過係数を計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角の周波数特性から、前記挿入した誘電体の複素誘電率の周波数特性を求めることを特徴としている。
【0009】
本願請求項3に係る複素誘電率の非破壊測定方法は、請求項1又は2において、前記被測定試料から得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率と誘電正接(tanδ)を求める作業をコンピュ-タによる演算処理で実行することを特徴としている。
【0010】
本願請求項4に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、かつ各々のフランジ及び誘電体の寸法は入射される電磁波が前記誘電体の端部に至るまでに充分減衰する寸法を有するものとし、
一方の前記導波管の開口面の反射係数及び透過係数を反射・透過係数測定手段で計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、誘電率特定手段により前記挿入した誘電体の複素誘電率を求めることを特徴としている。
【0012】
本願請求項5に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、2つのフランジ付導波管の間に被測定試料である平板形状の誘電体を挿入して隙間無く密着するように押さえ、一方のフランジ付導波管の開口面から電磁波を入射させ、該開口面から前記誘電体に入射した電磁波が、それぞれのフランジ付導波管の開口面以外の位置から前記誘電体の外部に漏れることがなく、よって計測系以外の外界の電磁波的な悪影響を受けることなく反射係数及び透過係数を反射・透過係数測定手段で計測し、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、誘電率特定手段により前記挿入した誘電体の複素誘電率を求めることを特徴としている。
【0013】
本願請求項6に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、その開口面より被測定試料である平板形状の誘電体の表面に電磁波を入射して、当該開口面からの反射波を計測するための第1のフランジ付導波管を有し、当該第1のフランジ付導波管のフランジが前記誘電体の表面に隙間無く密着する電磁波入力手段と、
前記誘電体を透過した電磁波を計測するための第2のフランジ付導波管を有し、当該第2のフランジ付導波管のフランジが前記誘電体の反対面に隙間無く密着する電磁波出力手段と、
前記電磁波入力手段へ電磁波を供給して、その基本モードに対する挿入された前記誘電体の反射特性を測定するとともに、前記電磁波出力手段からの電磁波を受信して、基本モードに対する前記誘電体の透過特性を測定するための反射・透過係数測定手段と、
マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記2つのフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を用いて、
前記反射・透過係数測定手段により測定された反射特性及び透過特性から、前記誘電体の複素誘電率を求めるために、反射係数及び透過係数と複素誘電率の関係を算出するための反射・透過係数算出手段と、
該反射・透過係数算出手段により算出された反射係数及び透過係数と複素誘電率の関係から前記誘電体の複素誘電率を特定するための誘電率特定手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
本願請求項に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、請求項において、前記電磁波入力手段は、高周波発生手段により発生した高周波を前記第1のフランジ付導波管の導波管部に導くためのコネクタと、該導波管部内において前記高周波を電磁波に変換するためのロッドアンテナとを有し、前記第1のフランジ付導波管の前記導波管部は前記ロッドアンテナから放射された電磁波を前記誘電体に入射させるためにその開口面まで導き、前記第1のフランジ付導波管のフランジは前記誘電体内部に入射した電磁波が、前記開口面以外の位置から前記誘電体の外部に漏れることを防ぐ構成であることを特徴としている。
【0015】
本願請求項に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、請求項6又は7において、前記電磁波出力手段が、前記第2のフランジ付導波管の導波管部内に設けられて電磁波を高周波に変換するための受信用ロッドアンテナと、該受信用ロッドアンテナで受信した高周波を、高周波受信手段に導くためのコネクタとを有し、前記第2のフランジ付導波管の前記導波管部はその開口面より入射した電磁波を、前記受信用のロッドアンテナまで導き、前記第2のフランジ付導波管のフランジは前記誘電体を透過した電磁波が、前記開口面以外の位置から誘電体の外部に漏れることを防ぐ構成であることを特徴としている。
【0016】
本願請求項に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、請求項6,7又は8において、前記反射・透過係数算出手段が、マックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記第1及び第2のフランジ付導波管と前記誘電体の各領域について立て、これらをそれぞれの前記フランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式を、基本モードだけでなく2つの開口面で発生する高次モードを含めた上で、基本モードの反射係数及び透過係数を算出することを特徴としている。
【0017】
本願請求項10に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、請求項6,7,8又は9において、前記誘電率特定手段が、前記反射・透過係数算出手段により算出された複素誘電率と反射係数及び複素誘電率と透過係数の対応関係を用い、前記反射・透過係数測定手段により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率を直接求めることを特徴としている。
【0018】
本願請求項11に係る複素誘電率の非破壊測定装置は、請求項10において、被測定試料から得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率と誘電正接(tanδ)を求めるコンピュータを備えることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る複素誘電率の非破壊測定方法及び装置の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る複素誘電率の非破壊測定方法及び装置の実施の形態を示すブロック図で、反射・透過係数測定手段としての反射・透過特性測定装置1の信号送受端子11と信号受信端子12の間に誘電体内挿部2を接続する。反射・透過特性測定装置1としては、この種の測定に多く利用されているベクトルネットワークアナライザを用いる。ベクトルネットワークアナライザには、掃引周波数発振器、レベル検出器、校正回路等が含まれている。測定結果は、反射・透過特性測定装置1上の表示器に表示されると共に、データ出力端子13を経て処理装置3に出力される。処理装置3としては、パーソナルコンピュータ等の計算機及びプリンタ等の周辺機器が必要に応じて接続できるようになっている。表示器に表示された反射係数及び透過係数の測定結果又は処理装置による処理の結果から、前記誘電体内挿部2に内挿された被測定試料である誘電体の反射・透過特性(つまり、反射係数及び透過係数の絶対値と位相角)が求められる。
【0021】
この反射係数及び透過係数の測定にあたってはベクトルネットワークアナライザの掃引発振器の発振周波数範囲を、測定しようとする周波数を含むように設定する。複素誘電率の値は、表示器上に表示された、又はプリンタで記録された反射係数及び透過係数の絶対値(大きさ)と位相角を直接読み取り、後述の方法によって求めることができる。また、当該方法による処理を、コンピュータ化して、コンピュータによる演算処理で実行する複素誘電率特定手段を用いる構成にするとよい。
【0022】
図2は、図1の誘電体内挿部2のうち第1のフランジ付導波管23を含む電磁波入力手段を示すものである。このフランジ付導波管23は導波管部24とフランジ25とからなり、その導波管部24には、高周波発生手段としての機能も有する反射・透過特性測定装置1からの高周波を供給する、又は反射・透過特性測定装置1へ高周波を送出するためのケ-ブルを接続するためのコネクタ21が設けられるとともに、このコネクタ21より入力された高周波から電磁波を発生させ、又は受信される電磁波を高周波に変換してコネクタ21に出力するためのロッドアンテナ22が導波管部24内に設けられる。前記コネクタ21はケーブルを介し反射・透過特性測定装置1の信号送受端子11に接続される。前記フランジ付導波管23の導波管部24は、ロッドアンテナ22により発生した電磁波を被測定試料の誘電体表面まで伝搬させると共に、導波管部24の開口面からの反射波のうち基本モ-ドだけをロッドアンテナ22まで伝搬させ、フランジ付導波管23のフランジ25は誘電体内部に入射した電磁波が、前記開口面以外の位置から誘電体の外部に漏れることを防ぐためのものである。
【0023】
図3は、誘電体内挿部2の構成例を示すものである。この誘電体内挿部2は、第1のフランジ付導波管23を有する電磁波入力手段と、第2のフランジ付導波管33を有する電磁波出力手段とを具備し、第1及び第2のフランジ付導波管23,33の中心軸を一致させて、被測定試料である平板形状の誘電体40の表裏を挟んだ構造を持っている。
【0024】
前記電磁波出力手段は前記誘電体40を透過した電磁波を計測するための構成であり、導波管部34とフランジ35からなる第2のフランジ付導波管33の導波管部34内に設けられて電磁波を高周波に変換するための受信用ロッドアンテナ32と、該受信用ロッドアンテナ32で受信した高周波を、高周波受信手段としての前記反射・透過特性測定装置1に導くためのコネクタ31とを有し、第2のフランジ付導波管33の導波管部34はその開口面より入射した電磁波を、前記受信用のロッドアンテナ32まで導き、前記第2のフランジ付導波管33のフランジ35は前記誘電体40を透過した電磁波が、前記開口面以外の位置から誘電体の外部に漏れることを防ぐものである。前記コネクタ31はケーブルを介し信号受信端子12に接続される。
【0025】
なお、図示では誘電体内挿部2と反射・透過特性測定装置1との接続部がコネクタとなっているが、反射・透過特性測定装置1の信号送受端子の回路形式が導波管であればフランジで直接結合し、同軸であれば図2、図3に示したようなコネクタとする。
【0026】
そして、誘電体内挿部2の2つのフランジ付導波管23,33の間に被測定試料である誘電体40を挿入して押さえ、一方の前記導波管23の開口面から一定の周波数又は当該導波管で伝搬可能な周波数範囲の電磁波を入射させた際の反射係数及び透過係数を前記反射・透過特性測定装置1で計測し、その計測により得られた反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、処理装置3にて誘電体40の複素誘電率を求めるようにする。処理装置3は、さらに必要であれば、前記反射係数及び透過係数の絶対値と位相角から、複素誘電率と誘電正接(tanδ)を求める作業をコンピュ-タによる演算処理で実行可能な構成とする。
【0027】
なお、ベクトルネットワークアナライザの掃引周波数発振器で、前記導波管23で伝搬可能な周波数範囲で入射電磁波の周波数を変化させることによって、前記誘電体40の複素誘電率の周波数特性を求めることができる。
【0028】
前記誘電体内挿部2の構造によるフランジ付導波管の開口面における反射係数Γ及び透過係数Tは、マクスウェルの方程式から導出された導波管内及び誘電体内の電磁界を、入射側及び透過側の導波管開口面の境界条件式(1)
【0029】
【数1】
JP0003787615B2_000002t.gifに代入し、これらをまとめることにより導かれた次の連立方程式(2)を、C10(=Γ)、F10(=T)について解くことにより得られる。
【0030】
【数2】
JP0003787615B2_000003t.gif
【0031】
【数3】
JP0003787615B2_000004t.gif
【0032】
【数4】
JP0003787615B2_000005t.gif
【0033】
【数5】
JP0003787615B2_000006t.gif
【0034】
【数6】
JP0003787615B2_000007t.gif
【0035】
【数7】
JP0003787615B2_000008t.gif
【0036】
【数8】
JP0003787615B2_000009t.gif
【0037】
【数9】
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【0038】
【数10】
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【0039】
【数11】
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【0040】
【数12】
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【0041】
【数13】
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【0042】
【数14】
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【0043】
【数15】
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【0044】
【数16】
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【0045】
【数17】
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【0046】
【数18】
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【0047】
【数19】
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【0048】
【数20】
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【0049】
【数21】
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【0050】
【数22】
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【0051】
図1の反射・透過特性測定装置1で、反射係数Γ及び透過係数Tを測定し、その値を前記連立方程式(2)に代入して解くことにより、被測定試料である誘電体40の複素誘電率の実部ε'及び虚部ε"がそれぞれ求められる。なお、前記連立方程式(2)はマックスウェルの方程式から導出されたヘルムホルツ方程式を、前記第1及び第2のフランジ付導波管23,33と誘電体40の各領域について立て、これらをそれぞれのフランジ付導波管の開口面及びフランジ面上の境界条件式に代入するという厳密解法によって得られた連立方程式である。
【0052】
以上のように本発明では、開口面の反射係数Γ及び透過係数Tを測定して複素誘電率を求めるが、これらの測定は開口面を短絡板で短絡したときと誘電体を挿入したときとの、又は2つのフランジ付導波管の開口面同士を接合したときと誘電体を挿入したときとの比較測定によることや、反射及び透過の2種の係数をもとにして複素誘電率を求めるため精度が高く、よって正確な複素誘電率の測定が可能である。
【0053】
以上で図1に示した本発明の実施の形態の原理的な動作を説明したが、次に、図3に示した誘電体内挿部2について詳細に説明する。まず、導波管23,33の長さι、ιは、長くなるほどロッドアンテナ22、32と開口面の間の伝送損失が大きくなるので、反射係数Γ及び透過係数Tが必要な精度で測定できる長さがあればよく、例えば、X帯(8.2~12.4GHz)の導波管の場合には、ι,ι=10cm程度でよい。次に、導波管断面の寸法a,bは、一般に用いられているX帯方形導波管の定格寸法a=22.9mm、b=10.2mmとしている。この寸法は、測定に不要な高次モ-ドの伝搬を抑制するように決められた定格なので、本測定法にもそのまま適用できる。
【0054】
また、フランジ、誘電体の寸法ιは、式(1)を導出する際には放射条件を満足させるために無限長としているが、実際には誘電体に損失があるため無限長の必要は無く、電磁波が誘電体の端部に至るまでに充分減衰する程度の寸法があればよい。平野他「フランジ付方形導波管を用いた損失誘電体の複素誘電率の測定」、pp.642-649、Nov.1999、電子情報通信学会論文誌における検討の結果を鑑みると、ι=15~20cm程度あれば充分である。
【0055】
次に本発明の実施の形態では、構造上、開口面において高次モ-ドが発生するが、これらの高次モ-ド反射波及び高次モ-ド透過波は、ロッドアンテナに到達するまでに充分減衰してしまい、反射・透過特性測定装置1では開口面における基本モ-ド反射波及び高次モ-ド透過波のみが観測される。しかし、式(1)を用いて反射係数Γ及び透過係数Tを算出するときには、前述の高次モ-ドを含める必要がある。平野他「フランジ付き方形導波管と導体板に挟まれた損失誘電体内の電磁界解析」、pp.525-536、Sep.1999、電子情報通信学会論文誌において検討の結果を鑑みると、TE10,TE30,TE12,TM12,TE14,TM14の6モ-ドを計算に含めれば正確な反射係数が得られることが明らかである。
【0056】
次に、図3の誘電体内挿部2への誘電体の内挿方法について述べる。被測定試料の誘電体40は、2つのフランジで挟むことができる平板形状の誘電体であれば何でもよい。そして、一方のフランジ付導波管23の開口面上に誘電体40を載せ、さらにその上から他方のフランジ付導波管33を誘電体表面に押し当てて測定を行う。このとき、2つのフランジ付導波管23,33の開口面位置は一致していなければならない。また、フランジと誘電体間に空気の隙間が生じないように密着させることが好ましい。それは、空気層が生じたことによる複素誘電率の相異や誘電体の厚さdの相異を考慮する必要がなくなるからである。従って、ある程度の力でフランジ付導波管を誘電体表面に押さえる必要があるが、あまり強く押さえても反射係数Γに変化はないので、隙間が無くなる程度でよい。
【0057】
以上、マイクロ波帯及びミリ波帯の伝送線路として最も普及している方形導波管により誘電体内挿部2を構成した実施の形態を詳しく説明したが、円形導波管や同軸導波管でも同様に適用できることは明らかである。
【0058】
従来の導波管による測定では、管壁に密着するような試料片の作成が必要であり、手間を要する。また、寸法精度は、本実施の形態のX帯ではそれほど大きな問題とはならないが、さらに周波数が高いミリ波帯では、試料片の寸法が数mm程度と小さくなるため、わずかな寸法の誤差が複素誘電率に大きく影響を与える。このため、試料片の加工や精度を必要としない本発明は、従来法に比べ有利である。
【0059】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、測定器具の寸法に合わせた試料の精密加工を必要とせずに、試料として任意の広さの平板形状の誘電体を用いればよく、しかもその表面をフランジ付導波管で押さえるという操作のみで複素誘電率を簡単に測定できる。また、導波管の開口部またはフランジ面に、複素誘電率が既知の誘電体で蓋をすることにより、固体だけでなく液体、気体であっても、さらに高温や腐食性の媒質であっても測定が行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる複素誘電率の非破壊測定方法及び装置の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】実施の形態における誘電体内挿部のうち電磁波入力手段を示す斜視図である。
【図3】実施の形態における誘電体内挿部の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 反射・透過特性測定装置
2 誘電体内挿部
21,31 コネクタ
22,32 ロッドアンテナ
23,33 フランジ付導波管
24,34 導波管部
25,35 フランジ
40 誘電体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2