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明細書 :Si-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3826194号 (P3826194)
公開番号 特開2004-273869 (P2004-273869A)
登録日 平成18年7月14日(2006.7.14)
発行日 平成18年9月27日(2006.9.27)
公開日 平成16年9月30日(2004.9.30)
発明の名称または考案の名称 Si-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法
国際特許分類 H01L  21/316       (2006.01)
FI H01L 21/316 X
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2003-064304 (P2003-064304)
出願日 平成15年3月11日(2003.3.11)
審査請求日 平成15年3月11日(2003.3.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】大越 昌幸
【氏名】井上 成美
【氏名】高尾 寛弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100079290、【弁理士】、【氏名又は名称】村井 隆
審査官 【審査官】田中 永一
参考文献・文献 特開2002-249869(JP,A)
調査した分野 H01L 21/312
H01L 21/314
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/205
特許請求の範囲 【請求項1】
減圧した容器内に設置したSi-O-Si結合を含む化合物を、波長200nm以下の光を含む光源によりレーザーアブレーションしきい値以下で露光し、前記化合物から放出される気体を利用して、前記光源の光路中に置かれた基体上に酸化ケイ素膜を化学蒸着することを特徴とする酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項2】
前記酸化ケイ素膜を、常温の前記基体上に形成する請求項1記載の酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項3】
前記光源の光をマスクを透過させて前記基体に照射して、前記酸化ケイ素膜を、前記基体上に所定のパターンに形成する請求項1又は2記載の酸化ケイ素膜の形成法。
【請求項4】
前記基体が平板状基板であり、前記光源の光軸に対して傾斜乃至平行に設置されている請求項1,2又は3記載の酸化ケイ素膜の形成法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトニクスを目的とした、Si-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法に係り、特にSi-O-Si結合を含む化合物(例、ポリシロキサン)を、波長200nm以下の光を含む光源により露光し、同化合物から放出される気体を利用して、酸化ケイ素膜を化学蒸着する膜形成法に関するものであり、従来困難とされてきた熱影響を受けやすい基板(高分子材料や生体材料、低融点材料、熱拡散しやすい材料等)への膜形成も可能となり、その用途は電気、電子のみならずあらゆる分野で有用である。
【0002】
【従来の技術】
酸化ケイ素膜を形成する方法は枚挙にいとまがないが、主に高温の電気炉内にケイ素基板を設置し、酸素ガスや水蒸気等の雰囲気で熱酸化させる方法と、減圧容器内に導入された反応ガスを加熱した基板上で熱分解し膜形成する方法とに大別される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法では、いずれも酸化ケイ素膜形成のために高温を必要とするため、その基体使用に制限があった。つまり、熱影響を受けやすい基板(高分子材料や生体材料、低融点材料、熱拡散しやすい材料等)への膜形成は困難であった。また低温で膜形成を行うと、膜中に欠陥や不純物混入が生じ良質の膜を得ることは困難であった。さらに、任意のパターンに膜形成を行うためには、化学的あるいは物理的エッチングの工程を必要としていた。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑み、炭素混入のない良質の酸化ケイ素膜を室温(常温)で形成可能なSi-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願請求項1の発明に係るSi-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法は、減圧した容器内に設置したSi-O-Si結合を含む化合物を、波長200nm以下の光を含む光源によりレーザーアブレーションしきい値以下で露光し、前記化合物から放出される気体を利用して、前記光源の光路中に置かれた基体上に酸化ケイ素膜を化学蒸着することを特徴としている。
【0007】
本願請求項の発明に係る酸化ケイ素膜の形成法は、請求項において、前記酸化ケイ素膜を、常温の前記基体上に形成することを特徴としている。
【0008】
本願請求項の発明に係る酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1又は2において、前記光源の光をマスクを透過させて前記基体に照射して、前記酸化ケイ素膜を、前記基体上に所定のパターンに形成することを特徴としている。
本願請求項の発明に係る酸化ケイ素膜の形成法は、請求項1,2又は3において、前記基体が平板状基板であり、前記光源の光軸に対して傾斜乃至平行に設置されていることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るSi-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法の実施の形態を図面に従って説明する。
【0010】
図1は本発明に係るSi-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法の実施の形態を示す。この図において、1は減圧した容器としての真空容器であり、真空ポンプ2で真空排気されるようになっている。真空容器1にはMgFの光透過窓3が形成されている。真空容器1内にはSi-O-Si結合を含む化合物として有機ポリシロキサン10(例えば板状をなしている)が配置されるとともにケイ素基板20(酸化ケイ素膜を堆積させるための基体)が配置されている。前記MgFの光透過窓3の外側には光源30(波長200nm以下の光を含むもの)が設けられており、そのレーザー光が光透過窓3を通して有機ポリシロキサン10に照射されるとともにケイ素基板20にも照射される配置とする。なお、ケイ素基板20上に所定パターンの酸化ケイ素膜を形成する場合には金属マスク21を基板20の前側に配置する。
【0011】
有機ポリシロキサン10に照射する光として、波長200nm以下の光を含む必要があるのは、200nmを超える波長ではSiOを形成するための気体を発生させることができないからであり、光源30はポリシロキサンを構成している側鎖を光開裂により完全に除去できる200nm以下の波長の光を含む必要がある。例えば、真空紫外若しくはそれ以下の波長のレーザー光を発生可能なレーザ装置が好適に使用できる。
【0012】
図1の構成において、光源30としてFレーザー装置を用い、実質的に真空に減圧した真空容器1内に有機ポリシロキサン10を設置し、その表面に真空紫外Fレーザー光(波長157nm)をアブレーションしきい値(約140mJ/cm)以下で照射した。その際、Fレーザー光の光路一部に、金属マスク21(30μmメッシュ)を密着させたケイ素基板20をレーザー光に対して垂直に置いた。そのときの基板20上でのレーザーエネルギー密度は約9mJ/cm、パルス繰り返し周波数20Hz及び照射時間15分であった。これにより、有機ポリシロキサン10の露光部分から気体(ガス状のケイ素化合物と酸素)が放出され、この気体を利用して前記レーザー光の光路中に置かれたケイ素基板20上に酸化ケイ素膜を化学蒸着した。つまり、前記気体のケイ素基板20付近での光分解により酸化ケイ素を膜堆積させた。この化学蒸着に際して前記ケイ素基板20の加熱や冷却は不要であり、室温(常温)で実施できる。
【0013】
図2に、ケイ素基板上に形成された酸化ケイ素膜の原子間力顕微鏡写真を示す。ケイ素基板に密着させて設けた金属マスク(30μmメッシュ)を透過した光照射部分(30×30μm)のみ酸化ケイ素膜が形成されており、かつその表面は極めて平滑であることがわかる。
【0014】
また、図1ではレーザー光の光軸に対してケイ素基板20を垂直に配置したが、ケイ素基板を、レーザー光の光路中に、かつ光軸に対して傾斜乃至平行に設置した場合にも、同様の酸化ケイ素膜形成を確認した。ケイ素基板上への酸化ケイ素膜の成膜面積を広くしたい場合には有利である。
【0015】
さらに、ケイ素基板をゲルマニウム基板に代えても同様の酸化ケイ素膜形成が行えることがわかった。このことは任意の材質の基板上に酸化ケイ素膜の形成が可能であることを示している。
【0016】
図3は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による形成膜の分析結果であり、フーリエ変換赤外吸収スペクトル図である。図3中、曲線(a)はケイ素基板上に堆積した膜、曲線(b)はゲルマニウム基板上に堆積した膜である。いずれの場合も、1060~1070cm-1にSi-O-Si結合を示す吸収ピークが判定された。このピーク位置は、熱酸化ケイ素膜(SiO)の場合と一致する。したがって、形成された膜は化学量論組成をもつSiOであることがわかった。
【0017】
前記形成膜をX線光電子分光法(XPS)により分析したところ、Si 2pのXPSスペクトルは103.2~103.3eVにピークを持つことがわかった。この場合も、熱酸化ケイ素膜(SiO)のスペクトルと一致した。
【0018】
図4は、XPSによる形成膜の深さ方向の分析結果を示すX線光電子分光スペクトル図である。基板はケイ素基板を用いている。図4の横軸はアルゴンガスによるスパッタ時間(スパッタにより形成膜を削った時間;つまり深さ)、縦軸は原子濃度である。形成膜中の酸素とケイ素の原子濃度は、深さ方向に一様で、その比率は約2:1となっていた。したがって、形成膜の化学組成は深さ方向にもSiOであることが判明した。またC 1sのXPSスペクトルから、形成膜中への炭素混入は認められなかった。
【0019】
前記形成膜中への炭素混入の有無をさらに確認するために、ラマン分光分析を行った。その結果、炭素の存在を示す1350cm-1及び1580cm-1の2つのブロードなピークは全くみられなかった。したがって、形成膜は炭素フリーのSiOであることが判明した。
【0020】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0021】
(1) 実質的に真空に減圧した真空容器1内に設置した有機ポリシロキサン10を、波長200nm以下の光を含む光源30により露光し、有機ポリシロキサン10から放出される気体を利用することにより、光源30の光路中に置かれた基板上に良質の酸化ケイ素膜を化学蒸着することができる。
【0022】
(2) 前記酸化ケイ素膜を化学蒸着する際に、基板の加熱や冷却は不要であり、室温(常温)の基板上に成膜できる。従って、従来困難とされてきた熱影響を受けやすい基板(高分子材料や生体材料、低融点材料、熱拡散しやすい材料等)への膜形成も可能となる。
【0023】
(3) 光源30からの光を透過させる所定パターンを形成したマスクを基板に密着させて設けることで、所望のパターンの酸化ケイ素膜を基板上に形成できる。従って、SiO光導波路を基にした光集積回路を製作するための良質の酸化ケイ素膜を形成できる。
【0024】
なお、本発明の実施の形態においては、図1に酸化ケイ素膜を堆積させる基板20として平板状のものを図示したが、平板状基板に限定されず、湾曲面等を有する基体上にも酸化ケイ素膜を堆積させることが可能である。
【0025】
また、光源30からの光を反射させて基体側に照射させてもよい。
【0026】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るSi-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法によれば、熱の制限を受けることなく任意の基体上に所望のパターンで良質の酸化ケイ素膜が形成できる。この酸化ケイ素膜を利用して、光導波路やフォトニック結晶などが形成可能であるため、現在の集積回路から将来の光集積回路へ移行するための必要不可欠な技術となる。本発明はこれらフォトニクス分野に多大に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るSi-O-Si結合を含む化合物への光照射による酸化ケイ素膜の形成法の実施の形態を示す模式的な構成図である。
【図2】本発明の実施の形態において、真空紫外Fレーザー光を有機ポリシロキサンとケイ素基板とに同時照射することにより、30μm角にパターン形成された酸化ケイ素膜の原子間力顕微鏡写真を示す写真図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る形成膜について、基板をケイ素及びゲルマニウムとしたときの、波数と透過率との関係を示すフーリエ変換赤外吸収スペクトル図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る形成膜について、スパッタリング時間と形成膜中の原子濃度との関係を示すX線光電子分光スペクトル図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 真空ポンプ
3 光透過窓
10 有機ポリシロキサン
20 ケイ素基板
21 マスク
30 光源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3