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明細書 :走行型ロボット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3834651号 (P3834651)
公開番号 特開2005-081447 (P2005-081447A)
登録日 平成18年8月4日(2006.8.4)
発行日 平成18年10月18日(2006.10.18)
公開日 平成17年3月31日(2005.3.31)
発明の名称または考案の名称 走行型ロボット
国際特許分類 B25J   5/00        (2006.01)
FI B25J 5/00 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 15
出願番号 特願2003-312726 (P2003-312726)
出願日 平成15年9月4日(2003.9.4)
審査請求日 平成15年9月4日(2003.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛庁技術研究本部長
発明者または考案者 【氏名】内田 康之
個別代理人の代理人 【識別番号】100067323、【弁理士】、【氏名又は名称】西村 教光
審査官 【審査官】二階堂 恭弘
参考文献・文献 実開昭58-80387(JP,U)
特開平4-92784(JP,A)
調査した分野 B25J 1/00-21/02
特許請求の範囲 【請求項1】
左部と右部とを有し、上下方向に貫通する間隙部を備えて略コ字状に形成される筐体と、
該筐体の前記左部及び右部のそれぞれの外側面に備えられ、接地面となる外周面が、前記左部及び右部の外方に位置して前記筐体に該筐体の外形部分を突出させずに配設された走行部であって、左右前後のバルーンタイヤと前後に位置するバルーンタイヤの外周面を覆うようにパラ系アラミド繊維を積層縫製して得られる履帯とよりなる走行部と、
前記筐体の間隙部に配設されて前記左部と右部との間に収容可能とされ、前記筐体に対して揺動自在なアームと、
前記アームに設けられたハンド部及び該ハンド部の背面に搭載された全方位カメラと、
前記アームの長手方向に沿う外周に巻き掛け配置され、前記走行部と連動するクローラベルトと、
を具備し、
前記アームは、多関節型アームよりなり、各関節部分にて基端側に対して先端側が順次折り畳めて収容状態となり、前記間隙部に収納され、
路面に対し表裏がひっくり返った状態でも、前記アームの作動が可能となるようにしたことを特徴とする走行型ロボット。
【請求項2】
前記筐体の左部と右部及び走行部とアームとが、それぞれ脱着自在に備えられた構成とされることを特徴とする請求項記載の走行型ロボット。
【請求項3】
前記筐体と走行部とは、緩衝装置を介して連結されていることを特徴とする請求項記載の走行型ロボット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
屋内外の狭隘かつ凹凸などの障害が多い空間や迅速な対処が要求される各種危険環境下での警備、情報収集や災害救助等の特殊かつ長時間の作業を支援する車両を含め、各種車両に適用可能な機構を備えた走行型ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、屋内外を移動する車両は、平坦地と不整地を区別なく移動できる走行安定性が要求される。また、段差、階段、溝等の幾何学的な凹凸地形を移動できることは、その車両の活躍の場を広げることになり、多くの研究が行われてきた。そして、ある程度の移動能力が備わった時点で、それら車両にセンサやマニピュレータなどの作業を目的とした各種ツールを搭載し、それらの作業性についての研究も行われてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら車両というものは、このような作業用の各種ツールを搭載することで表と裏(上と下)が決定されてしまい、移動中の転倒や落下等のアクシデントにより、通常外部に突出した状態のままであることが多い搭載された各種ツールが周囲の物体と衝突して故障或いは破損することや、それらツールが路面と接触した際に車両の姿勢がひっくり返った不安定な姿勢に変化することで不稼働となり、事後の継続的な走行や作業ができない状況に陥るという問題点があった。
【0004】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、作業用の各種ツールを搭載した車両が、表と裏がひっくり返るような状況でも不稼働とならず、種々の作業等を継続することを可能とする走行型ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明の請求項1記載の走行型ロボットは、左部3と右部4とを有し、上下方向に貫通する間隙部6を備えて略コ字状に形成される筐体2と、該筐体2の前記左部3及び右部4のそれぞれの外側面に備えられ、接地面となる外周面が、前記左部3及び右部4の外方に位置して前記筐体2に該筐体の外形部分を突出させずに配設された走行部であって、左右前後のバルーンタイヤ12と前後に位置するバルーンタイヤの外周面を覆うようにパラ系アラミド繊維を積層縫製して得られる履帯60とよりなる走行部11と、前記筐体2の間隙部6に配設されて前記左部3と右部4との間に収容可能とされ、前記筐体2に対して揺動自在なアーム21と、前記アームに設けられたハンド部及び該ハンド部の背面に搭載された全方位カメラと、該アーム21の長手方向に沿う外周に巻き掛け配置され、前記走行部11と連動するクローラベルト30と、を具備している。
【0006】
前記アーム21は、多関節型アームよりなり、各関節部分にて基端側に対して先端側が順次折り畳めて収容状態となり、前記間隙部6に収納され、路面に対し表裏がひっくり返った状態でも、前記アームの作動が可能となるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の走行型ロボットは、上記走行型ロボットにおいて、前記筐体2の左部3と右部4及び走行部11とアーム21とが、それぞれ脱着自在に備えられた構成とされることを特徴とする。
【0012】
請求項記載の走行型ロボットは、上記走行型ロボットにおいて、前記筐体2と走行部11とは、緩衝装置19を介して連結されていることを特徴とする。
【0013】
このような走行型ロボットによれば、作業用の各種ツールを搭載した車両が、表と裏がひっくり返るような状況でも不稼働とならない機構、4輪又は2つのクローラで構成された車両では踏破不可能であった段差を、アーム21に設けられるクローラベルト30よりなる補助クローラユニット29や作業ツールの側面に補助クローラ29を設けたものを、車両本体である筐体2に格納できるように搭載し、これらの姿勢変化により通過できるようにした機構、小型車両の走行時の振動を抑制するためにサスペンションを適用すると、構造が複雑化し大型化してしまうため、緩衝装置19としての、走行部11を構成する駆動力伝達機構部を緩衝材で包み込み筐体2と結合することで簡易に構築できるサスペンション機構とこれを用いた転倒落下時の衝撃緩和機構、また、各種ツールや車両本体等を構成要素毎にユニット化することで、それらの組合せにより作業や路面状況に応じたロボットを構成でき、また、脱着自在としたことによる分割により持ち運びを容易にできる機構、装輪型を一例として車輪に車両本体の厚みより径が大きいバルーンタイヤ12を適用することで、転倒落下時の衝撃緩和と突起物の車両本体への衝突を回避する機構、また、パラ系アラミド繊維を円環上に積層縫製したその両側面にワイヤを通す穴を等間隔に作り、タイヤ空気圧とワイヤの締め付具合により発生する張力で、隣り合うタイヤ外周に連続して履帯60を巻き、さらに積層間に平行かつ連続に棒状ゴムを並べることでグローサを構成し、不整地踏破性、パラ系アラミド繊維による耐摩耗性や耐熱性等、そして繊維の積層構造により表面がすり切れた時でも同程度の摩擦を得られる効果を向上させた装輪型車両を簡易に変更した装軌型の機構、多自由度アーム型作業ツールの手先部にカメラ41を搭載することで任意の高さでの情報収集と走行時の周囲情報の取得を可能とする機構等を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の走行型ロボットによれば、アームやカメラ,センサ等が筐体に収容可能な構造とし、これらが外部に突出しない構造としたので、屋内外等の地上を移動する車両として適用する場合に、車両の表裏(上下)を意識する必要がなくなり、アーム等各種ツールが周囲の物体と衝突して故障,破損を起こしたり、路面に接触するなどの不具合が減少し、また、階段や段差等の高さのある位置や不慮による落下や転倒により不稼働となる状態を減らすことができる。これにより、種々の作業を継続可能となる。
【0015】
また、車両本体に搭載されるカメラやセンサ等精密機器を緩衝装置の衝撃吸収構造により保護できるために同様に不稼働となる状態を減らすことができる。そして、危険な場所での作業領域を拡大でき、安全かつ迅速に走行や各種作業を継続することができる。
【0016】
また、本体を構成要素毎にユニット化し、各部毎に脱着自在な分割可能な構成としているために、容易に持ち運ぶことが可能であり、走行路面状態に応じた最適な走行装置への変更や作業に応じた最適な作業ツールへの交換、さらに、故障時の軽易な作業での部品交換、故障した数台の車両から故障していないユニットを取り出し組み立てることで、使用可能な1台の車両を再構成することが可能である。
【0017】
また、装輪型の車両を簡易に装軌型に変更する方法として、隣り合うタイヤ外周を連続して履帯で巻く方法があるが、この履帯は、パラ系アラミド繊維を円環上に積層縫製し、その両側面にワイヤを通す穴を等間隔に作り、タイヤ空気圧とワイヤの締め付具合により発生する張力で、タイヤ外周に履帯を取付け、さらに積層間に平行かつ連続に棒状ゴムを並べることでグローサを構成することで、不整地踏破性を向上させることが可能であり、また、パラ系アラミド繊維により耐摩耗性や耐熱性、そして繊維の積層構造により表面がすり切れた時でも同程度の摩擦を得られる効果を有することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の走行型ロボットの一実施の形態を示す斜視図、図2は同走行型ロボットを構成する走行装置の構造斜視図、図3は同走行型ロボットの正面側より見た一部省略斜視図、図4は同走行型ロボットの背面側より見た一部省略斜視図、図5は同走行型ロボットを構成する走行装置の平面図を(a)に側面図を(b)に示した説明図、図6は同走行型ロボットのアーム部分における斜視図である。
【0019】
本発明の走行型ロボット1は、筐体2と走行部11とアーム21とクローラベルト30とで大略構成される。
筐体2は、後述する走行部の外殻となる左部3と右部4とを有し、これら左部3と右部4とを一端で連結する制御部5とで、左部3と右部4との他端側に間隙部6を備えた略コ字状に形成されている。なお、この説明では、図1に示す左方を走行型ロボットとしての前方とし、図中左方向を進行方向として進行方向左側を左部3、右側を右部4とする。また、左部3と右部4と制御部5とは、互いに脱着自在な構成とされ、分離可能に構成されている。
【0020】
左部3と右部4とには、この走行型ロボット1の駆動源となる電池7が内蔵される(図3参照)。この電池7は例えばニッケル水素バッテリなどの充電式電池である二次電池よりなる。左部3と右部4の各他端側は、車両としての先端となり、その各前部には、可視と近赤外を切り替えられる前方監視カメラ8、及び、ライト9が備えられる。
制御部5は、車両としての後部となり、後述する走行部11やアーム21の駆動の制御を行うための制御回路等の制御装置が内蔵される。また、後面には、後方監視可視カメラ10が搭載される(図4参照)。
【0021】
次に走行部11は、本実施の形態では、平坦地上にて高速走行を可能とする装輪型として構成し、前後左右の4つで構成されるタイヤとし、各タイヤをバルーンタイヤ12として構成している。バルーンタイヤ11は弾力性を有し、図2に示すように、上記筐体2の大きさと比べて十分に大きく、例えば、タイヤ12の外径が筐体2の厚みの約3倍に設定され、前記筐体2の外形を突出させず(図5(b)参照)、接地面となる外周面が、十分に筐体2の外方となる。また、本実施の形態の走行部11は、左部3と右部4とで独立して構成される。
【0022】
図5は、左右各走行部11における一方の走行部11の駆動力伝達機構を上面及び側面から示した図である。後部ユニット13に配置されるDCギアドモータ14の出力は、等速プーリを介して、前後各ユニット13,15の前輪及び後輪に伝達され2輪を同時に駆動する。
また、前部ユニット15においては、増速チェン17を介して、後述する補助クローラに駆動力を分配するための連動補助プーリ18へ伝達する。なお、車輪12の回転量は、モータ部14に取付けた光学式エンコーダにより計測する。これにより、自己位置同定のためのデッドレコニングが可能となる。
【0023】
図3,5(a)は、転倒・落下時の衝撃緩和や走行時の振動吸収のための緩衝装置としての簡易サスペンション機構19を示している。ロボット本体は弾力性の高いバルーンタイヤ12で包み込むように構成しており、路面の凹凸の程度に依るが、転倒・落下時には、バルーンタイヤ12周囲で接地することにより衝撃を緩和する。さらに、この時車軸に加わる衝撃力が、ロボット本体、後述するマニピュレータ等の作業用ツール及び各種搭載機器へ伝達されることを緩和するために、各車輪12の伝達駆動系をコンポーネント化し、筐体2に対して、衝撃吸収材により図5(b)に示すように全周を包含するように浮かせることで、それらの微小変形により衝撃力を緩和する。すなわち、筐体2の左部3及び右部4の内部に、走行部11の各ユニット13,15が、上下の緩衝装置19を介して配設される構造とされる。
【0024】
このとき、衝撃緩和時の微小な軸ずれの影響を除外するために、前後輪12の動力伝達、すなわち等速プーリ16に掛け渡されるベルトはタイミングベルト20とされる。また、この衝撃吸収材19は、走行時の振動緩和のための簡易サスペンションとしても作用する。
【0025】
以上のような走行部11は、筐体2の左部3及び右部4を外殻として構成されて、制御部5にて結合することで、図3,4,5に示すような表裏対称・耐衝撃型走行装置を構成する。そして、本ロボット1は、スキッドステア方式により、直進走行、緩旋回、超信地旋回を可能とする。
【0026】
また、あらゆる状況においても不稼働とならない機構構造であり、特に転倒や落下等に対処するための耐衝撃性や表裏対称性が考慮されている。
【0027】
次に、アーム21について説明する。
本発明の走行型ロボット1に搭載される作業アームとして、関節可動範囲を無制限化し、アームの表裏対象性を考慮した格納型能動多自由度作業アームが好ましい。
【0028】
作業性を考慮した場合、走行部の超信地旋回(1自由度)を含む非ホロノミック移動に加え、肩関節(1自由度)、肘関節(2自由度)、手首関節(2自由度)を持った5自由度型の能動型作業アームとして構成することで、空間上の任意の点に関する位置と姿勢を決定できる機構構造とすることが可能である。また、必要に応じて直動関節を含む構成も可能である。
【0029】
また、簡易な物体の把持作業等を可能とするために、作業アームの自由度に含まないが、手首部には物体を把持できるハンド(開閉1自由度)を付加することが好ましい。
【0030】
そして、各関節部にセルフロック機構等の付加による非制御や無給電時の姿勢保持、ハンドの背面逆向きに全方位カメラ等を搭載することによる車両操縦支援や目的に応じたロボットシステムの再構成化を可能とする作業アームや車両本体走行装置等のユニット化などの構造もある。
【0031】
本実施の形態でのアーム21は、複数のリンク腕22,23を備えた多関節型アームを構成しており、図6に示すような肩関節(1自由度)24、肘関節(1自由度)25、手首関節(1自由度)26の関節可動範囲を無制限化した3自由度型の表裏対称・格納性を有するアーム21に、連結差動機構によるなじみ機能を有する小型軽量で格納性の高いハンド27を搭載している。なお、本実施の形態では、基端側の第1リンク腕22が肩関節24を介して筐体2に接続され、この筐体2に対し、筐体2の左部3と右部4との間の間隙部6に納まる幅長で構成されて、揺動(可動)自在な構成とされる。
【0032】
肩関節部24の駆動力伝達機構(図示せず)としては、肩関節部24内に配置されるDCギアドモータを備え、このDCギアドモータの出力は、減速プーリを介して、減速機構のウェーブジェネレータに伝達し、サーキュラスプラインに取付けた第1リンク腕22を駆動する。肩関節の回転量は肩回転軸に取付けた多回転型ポテンショメータにより計測する。
【0033】
肘関節部25の駆動力伝達機構(図示せず)としては、肩関節部24内に配置されるDCギアドモータを備え、DCギアドモータの出力は、肩関節内部の減速プーリ、減速機構、減速プーリにより十分減速された後に第1リンク腕22内部の等速プーリの肘関節側プーリに取付けられた第2リンク腕23を駆動する。肘関節の回転量は肘回転軸に取付けた多回転ポテンショメータにより計測する。
【0034】
手首関節部26の駆動伝達機構(図示せず)としては、肘関節部25内に配置されるDCギアドモータを備え、DCギアドモータの出力は、肘関節内部の減速プーリにより十分減速された後に第2リンク腕23内部の等速プーリの手首関節側に取付けられたハンド27を駆動する。手首関節の回転量は手首回転軸に取付けた多回転ポテンショメータにより計測する。
【0035】
どの関節も最終段に、ウォームギアを用いたセルフロック機構としている。これにより、各リンク腕部22,23を折り畳んだ状態では、第1リンク腕22に第2リンク腕23が納まり、第2リンク腕23にハンド27が納まる構造となって、各部が格納された状態で、ロボットが落下等による衝撃を受けた場合でも、機構的に関節の回転が拘束された格納状態を保持でき、作業ツールであるアームに対する安全化が図られる。
【0036】
手首関節部26に一体型で構築されたハンド27の指部関節駆動機構(図示せず)は、2本の指部28,28で構成されDCギアドモータを具備する。この指部関節駆動機構は、DCギヤドモータ1台により遊星歯車による連結差動機構を介すことで、2本の指28,28の開閉動作を実現する。これらの2本指28,28は、把持対象物形状よる接触時の開閉抵抗のバランスに応じて、把持対象物の形状に適応しながら左右独立に開閉動作を行う。
【0037】
ハンド27には、DCギアドモータ及び遊星歯車による連結差動機構を内蔵する。DCギアドモータからの出力は、遊星歯車のサンギアからプラネットギアを介してリングギア及びキャリアに伝達される。リングギアとキャリアにそれぞれ取付けられたプーリは、回転負荷のバランスに応じて回転数を各指に伝達する。
【0038】
各指28,28の駆動機構(図示せず)としては、指は遊星歯車からの出力により、指根元から指先端まで各関節に増速プーリを介して回転力を伝達する。指28,28の各関節では回転入力プーリと回転出力プーリとを一体にして関節軸に対して回転自由に取付けている。ただし、指先関節については、それ以上先端に伝達する必要が無いので回転出力プーリを持たず、回転入力プーリのみを指先と一体にして回転軸に対して回転自由に取付けている。各関節の回転入力プーリの径を一つ根元側の回転出力プーリより小さく設定することで増速プーリを構成している。この機構により指28の各関節が連結差動機構を構成し、指における各関節の回転負荷バランスに応じて回転速度が分配できる。各関節の復元力はトーションスプリングにより生成する。各関節の回転速度は増幅プーリにより先端に伝達されていくに従い高くなるので、把持と解放の動作が可能となる。なお、この指28は、各関節毎で指先側が短尺となる構成であり、折り畳める構成とされて、筐体2内に収容される際には、突出することがない。
【0039】
また、肩関節部24と肘関節部25間となるアーム21の基端側である第1リンク腕22の両外側面の外周には、一対のクローラベルト30が配設される。このクローラベルト30は、独立に駆動力を発生できる構成とされる。これは姿勢可変型のクローラとして用いることで、小型作業ロボットの不整地踏破性を向上させるものである。
【0040】
クローラベルト30は、走行部11に設けられた連動補助プーリ18と、肘関節部25の外側面に配設されたプーリ31との間に掛け回されて、走行部11側の駆動力により駆動するようになっている。このクローラベルト30は、接地面となる外周面にグローサ32が設けられている。
このクローラベルト30は、補助クローラ29を構成し、走行部11におけるタイヤ12の駆動に連動して回転駆動し、また、走行部11に配設された連動補助プーリ18等により、タイヤ12と等速で駆動する。すなわち、車輪周速度と補助クローラ周速度は、路面に同時に接地したときに発生する内力を抑制するために、同程度に設計している。
【0041】
補助クローラ29の回転量は、上記したタイヤ12とともに、モータ部に取付けた光学式エンコーダにより計測される。これにより、自己位置同定のためのデッドレコニングが可能となる。
【0042】
なお、本発明の走行型ロボット1は、例えば、狭隘な空間での使用を可能とするために、最も小型化を図った大きさでは、全長×全幅×全高が0.7m×0.7m×0.3m以内とし、車下の様な鉛直方向に狭隘な空間での用途に対しては、全高を0.15m以下の薄型に構成される。また、作業者数人での運用と携行性を考慮し、質量を数十kg以下とし、必要に応じて簡単に数個のユニットに分割できるものとしている。
【0043】
また、全天候性、防塵性、防水性、耐熱性、耐火性、耐薬品性や耐放射線性等を考慮する素材や塗膜、或いは構造となる構成が好ましい。
【0044】
このように構成された走行型ロボット1では、走行部11をバルーンタイヤ12で構成したことで、平坦地上での高速走行を実現でき、またその外径を筐体2に対して大きく構成したことにより、転倒や落下などの際の衝撃緩和を得られ、表裏対称構成や耐衝撃構成のロボットを得られる。また、作業用ツールとしてのアーム21を筐体2の間隙部6に収容できる構成としたことでも、表裏対称構成を実現でき、すなわちいずれの面が表(上)となってもアーム21を作動でき、かつ、アーム21収容状態においては転倒や落下などの際に突出している部分がなく、損傷などの不具合発生を抑えることが可能となる。
【0045】
なお、上述した走行型ロボット1の例としては、アーム21を多関節形とし、アーム先端にハンド27を搭載した構成例を述べたが、その他に、図7に示すようなカメラなどを備えた構成としても良い。
【0046】
このような例の走行型ロボット1としては、カメラとして全方位カメラユニット41を備えた構成とされ、肩関節部(1自由度)42、カメラ部(1自由度)43の関節可動範囲を無制限化した2自由度型であり、表裏対象・格納性を有した構成としている。
【0047】
図8は、カメラユニット41を備えたアーム21の肩関節部42等の駆動力伝達機構を示した概略斜視図である。肩関節部42に配設されるDCギアドモータ44の出力は、等速プーリ、2段の遊星歯車減速機、等速プーリを介して、ウォームギヤに伝達され、ウォームホイールに取付けたリンク腕46を駆動する。肩関節部42の回転量は、肩回転軸の回転量を平歯車で2倍に増速して、多回転型のポテンショメータ48により計測する。
【0048】
リンク腕46の先端側となるカメラ部43に配設されるDCギアドモータの出力は、等速平歯車を介して、ウォームギヤに伝達され、ウォームホイールに取付けたカメラ回転軸52を駆動する。カメラ部43の回転量は、カメラ回転軸の回転量を傘歯車で2倍に増速して、多回転型のポテンショメータにより計測する。
【0049】
これら関節も、前述したハンド27の例と同様に、ウォームギアを用いたセルフロック機構としている。これにより、カメラユニット41を格納した状態でロボットが落下等による衝撃を受けた場合でも、機構的に関節の回転が拘束され格納状態を保持でき、作業ツールに対する安全化が図られる。
そして、このカメラユニット41を備えた構成とすることで、遠隔操縦、自律走行や情報収集等を可能とする。
【0050】
また、上述した実施の形態では、走行部11をバルーンタイヤ12で構成した例として述べたが、この他に履帯で構成することとしてもよい。
【0051】
例えば、履帯で走行部11を構成する際に、上記したバルーンタイヤ12を覆う構造の履帯60で構成する簡易的なものがある。
【0052】
この装輪(バルーンタイヤ12)型の車両を簡易に装軌型に変更する方法として、隣り合うタイヤ外周を連続して履帯60で巻く方法があるが、この履帯60は、パラ系アラミド繊維を円環上に積層縫製し、その両側面にワイヤを通す穴を等間隔に作り、タイヤ空気圧とワイヤの締め付具合により発生する張力で、タイヤ12外周に履帯60を取付け、さらに積層間に平行かつ連続に棒状ゴムを並べることでグローサ(図示せず)を構成するものである(図9(b)参照)。この構成とすることで、不整地踏破性を向上させることが可能であり、また、パラ系アラミド繊維により耐摩耗性や耐熱性等、そして繊維の積層構造により表面がすり切れた時でも同程度の摩擦を得られる効果を有することが可能である。
【0053】
さらに、上述した各例を組み合わせる構成なども可能であり、例えば、図9に示すように、筐体2と走行部11との組合せとして、略コ字形状の筐体2に対して、上記した弾力性の高いバルーンタイヤ12を用いたバルーンタイヤ型(図9(a)参照)、バルーンタイヤ12周囲に耐弾性のあるパラ系アラミド繊維製特殊履帯60を、タイヤ空気圧を変化させ張力を高めることで巻きつけたパラ系アラミドクローラ型(図9(b)参照)、タイヤ12を小径スプロケット61に変更し、この小径スプロケット61に履帯62を巻きつけて薄型としたクローラ型(図9(c)参照)、などがある。さらに車輪としては、この他に、通常の空気タイヤやノーパンクタイヤ等へも交換が可能であり、走行部11を構成することができる。
【0054】
また、上述した各例の組合せとして、アーム21の構成についても種々組合せ可能であり、遠隔操縦、自律走行や情報収集等を可能とするための各種カメラ、センサを搭載する構成なども可能であり、例えば、マニピュレータユニットとして多自由度マニピュレータ71とし、そのハンド部72背面に全方位カメラ73を搭載する構成(図10(a)参照)なども良い。また上記した全方位カメラユニット41とライトやセンサ81を備えた構成(図10(b)参照)や、補助クローラ29のクローラベルト30を広幅なもので構成したユニット(図10(c)参照)や,センサ91を備えた構成(図10(d)参照)など、各種作業ツールを用意し、搭載ユニットとして組み合わせても可能でありすなわち、車体(筐体2と走行部11)への搭載を前提としユニット化された各種作業用ツールを用意することで、用途に応じて容易に交換可能な機構構造が得られる。そして、このような構成の場合も、機構的に関節可動範囲を無制限化し、表裏のないことを特徴としている。
【0055】
この様に、構成要素毎にユニット化することによる特長は、組合せにより用途に応じた様々なロボットを構築でき、また、故障時に迅速な修復を可能とする。
【0056】
例えば、上記した種々の走行部11と作業ツール(アーム21)との組合せとして、能動多自由度作業アームユニット71と全方位カメラユニット73の表裏対称性と格納性を考慮した2つの機能を備えた作業ツールに交換可能であるユニット化された走行型ロボット1の例とし、作業ツールのアーム21には、側面に不整地踏破性を向上させるための補助クローラ29を備えた構成とする。
【0057】
この走行型ロボット1によれば、平坦地上での高速走行、転倒・落下時の衝撃緩和、そして携行のための小型軽量化、構成要素毎のユニット化を特徴とする。ロボット本体1は、バルーンタイヤ型の走行部11と制御装置を結合し構成する表裏対称・耐衝撃型走行装置である。作業用ツールは、能動多自由度作業アームユニット71と全方位カメラユニット73であり、表裏対称性と格納性を考慮しつつ側面に補助クローラ29を有し、作業性能の高いアーム21部分を備える。
【0058】
図11は、以下に述べる6つの基本走行モードを示しているが、バルーンタイヤ型は平坦地上での高速走行を得意とし、タイヤ12が筐体2を包むように配置されていることにより、その弾力性により転倒、落下、走行時の衝撃緩和性を有している。
【0059】
(1)コンパクトモード(図11(a)参照)
このモードは、ハンド部72及びアーム21を筐体2内へ格納した最も小型化された形であり、転倒や落下に対して最も安全なモードである。構造的特徴により表裏が反転した場合でも、次の各走行モードに遷移することができる。
(2)ベーシックモード(図11(b)参照)
このモードは、アーム21の手首リンク74のみを回転し全方位カメラ73を車体上部に出すことで、全方位の情報を取得しながら走行する最も基本となるモードである。
(3)情報収集モード(図11(c)参照)
このモードは、アーム21を最大限に伸ばし全方位カメラ73を高所に持っていくことで、より多くの情報を収集できるモードである。また、アーム21により姿勢を変えて柔軟な情報収集が可能である。
(4)高機動モード(図11(d)参照)
このモードは、補助クローラ29内部に不要なアーム部分(手首リンク74等)を格納し、姿勢可変なクローラの特徴を最大限に活かすことで、タイヤ12による平坦地走行に加え凹凸地に対する適応性を向上させたモードである。
(5)作業モード(図11(e)参照)
このモードは、資料採取等の軽易な作業を行うためにアーム21先端のハンド部72の機能を最大限に活かしたモードである。
(6)センシングモード(図11(f)参照)
このモードは、アーム21の先端に各種センサ91を搭載し、アーム21の自由度を効果的に使用することで、各種センシングを行うモードである。
【0060】
また、図12はパラ系アラミドクローラ型について、上記同様の6つの走行モードを(a)~(f)に示している。これは、バルーンタイヤ型(図11)に比べて、接地圧を低減でき走行速度は低下するが軟弱地等での安定的な走行を可能としている。
【0061】
さらに、図13はクローラ型について、上記同様の6つの走行モードを(a)~(f)に示している。これは、前記のパラ系アラミドクローラ型(図12)よりも薄型であり、より狭隘な空間での走行を可能とし、特に高機動モード(図13(d))では補助クローラ29と組合せ全長を階段の3段程度に伸展でき、滑らかな昇降を可能とし、建物内等での移動能力を向上している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の走行型ロボットの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同走行型ロボットを構成する走行装置の構造斜視図である。
【図3】同走行型ロボットの正面側より見た一部省略斜視図である。
【図4】同走行型ロボットの背面側より見た一部省略斜視図である。
【図5】同走行型ロボットを構成する走行装置の平面図を(a)に側面図を(b)に示した説明図である。
【図6】同走行型ロボットのアーム部分における斜視図である。
【図7】本発明の走行型ロボットの他の実施の形態であるカメラユニットを備えた走行型ロボットを示す斜視図である。
【図8】同他の実施の形態における走行型ロボットのアーム部分の一部省略斜視図である。
【図9】本発明の走行型ロボットの他の実施の形態における走行部の例を示した斜視図である。
【図10】同アーム部分の例を示した斜視図である。
【図11】走行型ロボットの走行モードの例を示す斜視図である。
【図12】他の構成における走行型ロボットの走行モードの例を示す斜視図である。
【図13】他の構成における走行型ロボットの走行モードの例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1…走行型ロボット
2…筐体
3…左部
4…右部
6…間隙部
11…走行部
12…タイヤ
19…緩衝装置
21…アーム
30…クローラベルト
60…履帯
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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