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明細書 :血管新生抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5223083号 (P5223083)
公開番号 特開2008-001623 (P2008-001623A)
登録日 平成25年3月22日(2013.3.22)
発行日 平成25年6月26日(2013.6.26)
公開日 平成20年1月10日(2008.1.10)
発明の名称または考案の名称 血管新生抑制剤
国際特許分類 A61K   8/49        (2006.01)
A61Q  19/08        (2006.01)
A61K  31/336       (2006.01)
A61P  17/06        (2006.01)
FI A61K 8/49
A61Q 19/08
A61K 31/336
A61P 17/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2006-171741 (P2006-171741)
出願日 平成18年6月21日(2006.6.21)
審査請求日 平成21年6月19日(2009.6.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】平田 孝
【氏名】菅原 達也
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】小堀 麻子
参考文献・文献 国際公開第95/000130(WO,A1)
特開2002-265313(JP,A)
特開2007-314451(JP,A)
特開2007-297370(JP,A)
国際公開第2007/116980(WO,A1)
国際公開第2006/126325(WO,A1)
国際公開第2007/094430(WO,A1)
食品工業,2005年,Vol.48, No.8,p.68-74
日本農芸化学会大会講演要旨集 ,2006年 3月 5日,Vol.2006,p.206
OKUZUMI,J.,Antiproliferative and antitumor promoting activities of fucoxanthin, a natural carotenoid,Kyoto-furitsu Ika Daigaku Zasshi,1991年,Vol.100, No.5,p.551-66
日本水産学会大会講演要旨集,2005年,Vol.2005,p.128
SUGAWARA,T. et al,Brown algae fucoxanthin is hydrolyzed to fucoxanthinol during absorption by Caco-2 human intestinal cells and mice,Journal of Nutrition,2002年,Vol.132, No.5,p.946-951
日本水産学会大会講演要旨集,2006年 3月30日,Vol.2006,p.206
Nishino, Hoyoku,Cancer Prevention by Phytochemicals,Oncology,2005年,Vol.69, No.SUPPL,p.38-40
調査した分野 A61K 8/00- 8/99
A61K 31/00-33/44
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
フコキサンチノールを含有する化粧料組成物。
【請求項2】
フコキサンチノールを0.000001~10重量%含有する、請求項に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
しわ改善用である請求項又はに記載の化粧料組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フコキサンチン及び/又はフコキサンチノールを含有する血管新生抑制剤、ならびにフコキサンチノールを含有する化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の血管(毛細血管等)から新たな血管が生じ、伸長することを血管新生と呼ぶ。血管新生は、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症等の病態悪化と深く関わっており、近年、血管新生抑制物質によるこれらの疾患の治療や予防が勧められてきた。血管新生抑制を目的とした薬剤の開発は盛んに行われているものの、合成された薬剤では予期しない副作用等が懸念され、安全性の点で問題が生じている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
この様な背景から、天然物由来であって、優れた血管新生抑制作用を有する物質が求められている。

【非特許文献1】細胞工学 Vol.14,No.4,1995,第426~431頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、安全かつ有効な血管新生抑制剤、ならびに該血管新生抑制剤を含有する医薬組成物及び化粧料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、フコキサンチン及びその代謝産物であるフコキサンチノールに血管新生抑制作用があることを見出した。さらに、本発明者らは、フコキサンチノールは、極めて低濃度であっても優れた血管新生抑制効果を発揮し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、完成されたものである。
【0006】
本発明は、以下の血管新生抑制剤、医薬組成物及び化粧料組成物を提供する。
項1.フコキサンチン及び/又はフコキサンチノールを含む、血管新生抑制剤。
項2.フコキサンチン及び/又はフコキサンチノールを含み、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、リウマチ様関節炎、バセドウ病、カポジ肉腫、アルツハイマー病、歯周病、強皮症、緑内障、乾癬、加齢黄斑変性症からなる群より選択される少なくとも1種の疾患を治療又は予防するための医薬組成物。
項3.フコキサンチノールを含有する化粧料組成物。
項4.フコキサンチノールを0.000001~10重量%含有する、項3に記載の化粧料組成物。
項5.しわ改善用である項3又は4に記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明において有効成分として使用されるフコキサンチン及びフコキサンチノールは、いずれも藻類等に含まれる成分である。すなわち、フコキサンチン及びフコキサンチノールは、従来から食品として摂取されてきた天然成分の一種であり、人体に対する安全性が確認されている。従って、本発明によれば、安全且つ優れた血管新生抑制剤を提供することができる。
【0008】
特に、フコキサンチノールは極めて低濃度であっても優れた血管新生抑制作用を発揮し、皮膚のしわの改善に優れた効果が期待できる。従って、本発明のフコキサンチノールを含有する化粧料組成物は、安全性が高く、且つしわの改善作用に優れものである。また、化粧料組成物等にフコキサンチノールを大量に配合すると着色等の問題があったが、フコキサンチノールは極めて低濃度で前記優れた効果を発揮することができることから、この様な問題を生じることがない。さらに、本発明のフコキサンチノールを含有する化粧料組成物によれば、シワの改善のみならず、肌のハリやツヤを高める効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の血管新生抑制剤及び化粧料組成物について説明する。
(1)血管新生抑制剤
本発明の血管新生抑制剤は、フコキサンチン及び/又はフコキサンチノールを有効成分する。
【0010】
本発明において使用されるフコキサンチンは、天然物由来のものであることが望ましく、フコキサンチンを多く含む褐藻類、微細藻類等の藻類を用いることが好ましい。褐藻類、微細藻類の種類は、その盤状体中もしくは糸状体中にフコキサンチンが含まれているものであれば特に制限されず、このような藻類としては、例えば、コンブ科(Laminariaceae)、チガイソ科(Alariaceae)等のコンブ目(Laminariales)に属する褐藻類;ナガマツモ科(Chordaceae)、モズク科(Spermatochnaceae)等のナガマツモ目(Chordariales)に属する褐藻類;珪藻等の微細藻類が挙げられ、これらの藻類の盤状体もしくは糸状体が好ましい。前記褐藻類の盤状体もしくは糸状体の中でも、ナガマツモ科のオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus)の盤状体またはモズク科のモズク(Nemacystus decipiens)の糸状体、コンブ科のコンブの盤状体もしくは糸状体、チガイソ科のワカメの盤状体もしくは糸状体、珪藻等が好ましい。本発明において、これらの植物を1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、フコキサンチンを含有するこれらの植物をそのまま使用することもできるが、抽出物を本発明の有効成分として用いることができる。フコキサンチンを含む植物は乾燥、細切、破砕、粉砕等の処理に供されたものであってもよい。
【0011】
フコキサンチンを含む抽出物は、前記する植物(又は動物)を抽出原料として、これを、そのまま或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、粉砕、圧搾、煮沸或いは発酵処理したものを溶媒で抽出処理することにより取得することができる。
【0012】
フコキサンチンを含む植物(又は動物)の抽出物の抽出処理に使用される溶媒としては、例えば、極性有機溶媒、水と極性有機溶媒の混合液等の極性溶媒を挙げることができる。また、当該極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等の炭素数1~5の低級アルコール;プロピレングリコール;アセトン;酢酸エチル;ヘキサン;ジクロロメタン;クロロホルム等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。上記極性溶媒の中で、人体への安全性と取扱性の観点から、好ましくはエタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数2~4の低級アルコール;アセトン;ヘキサン;又はこれらの混合物が挙げられる。さらに好ましくはエタノール、アセトン、ヘキサン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
フコキサンチンは脂溶性である。従って、例えば、抽出溶媒として炭素数1~5の低級アルコールと水を混合して用いる場合、該混合溶液の総重量に対する炭素数1~5の低級アルコールの含有割合は、50~99.9重量%程度、好ましくは70~99.9重量%程度、より好ましくは90~99.9重量%程度が望ましいが、フコキサンチンが抽出される限り特に限定されない。
【0014】
抽出処理は、例えば、褐藻類等の抽出原料1重量部に対して、約5~100重量部の抽出溶媒を用いて行われる。また、当該抽出処理方法としては、通常用いられている植物抽出物の抽出処理方法を採用することができ、具体的には、冷浸、温浸等の浸漬法;低温、室温又は高温下で攪拌する方法;パーコレーション法等が例示される。フコキサンチンを含む植物の抽出物の抽出処理の具体例として、例えば、乾燥した褐藻類の抽出原料を粉砕し、当該乾燥粉砕物1重量部に対して約5~100重量部の抽出溶媒を添加し、室温で撹拌しながら1~5時間抽出を行った後、濾過や遠心分離等の常法の固液分離手段により固形分を取り除き、溶液画分を収得する方法を例示することができる。
【0015】
上記方法で得られるフコキサンチンを含有する抽出物は液状であり、本発明には該抽出物をそのままの状態で用いることもできるが、有機溶媒が含まれている場合には減圧蒸留等により有機溶媒を取り除くことが好ましい。また必要に応じて、更に、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理に供することにより水分を取り除き、乾燥品として用いることもできる。また、簡便には、上記フコキサンチンを含む抽出物として、商業的に入手できるものを使用することもできる。
【0016】
フコキサンチノールは、フコキサンチンが加水分解されたものである。従って、本発明において使用されるフコキサンチノールは、前記の方法によって得られたフコキサンチンを従来公知の方法に従って、加水分解して得ることができる。例えば、リパーゼ(J.Nutr.132,946-951,2002)やコレステロールエステラーゼ(Drug Metab.Dispos.32,205-211,2004)などの脂質分解酵素によってフコキサンチノールをフコキサンチンに分解することができる。
【0017】
フコキサンチン及びフコキサンチノールは、ホヤ等の原索動物;貝類等の軟体動物;ナマコ等の棘皮動物にも存在する。本発明においては、これらの動物を原料として前記抽出方法で得られたフコキサンチン又はフコキサンチノールを用いることもできる。
【0018】
本発明の血管新生抑制剤の有効成分として、フコキサンチン又はフコキサンチノールのいずれか一方を使用することもでき、またこれらを併用することもできる。
【0019】
本発明の血管新生抑制剤は、上記有効成分からなるものであっても良いが、薬学的に許容される従来公知の担体、希釈剤、賦形剤等と組み合わせて各種剤型に調製することもできる。
【0020】
本発明の血管新生抑制剤における有効成分の総量は、0.01~99重量%程度、好ましくは0.1~99重量%程度、より好ましくは1~99重量%程度である。
【0021】
本発明の血管新生抑制剤は、血管新生に起因する疾患の治療又は予防に用いることができ、その投与量は、患者の年齢、性別、疾患の種類、症状の程度等によって異なり、成人1人1日あたり、有効成分総量として0.001~1,000mg/kg程度、好ましくは0.01~1,000mg/kg、より好ましくは0.1~1,000mg/kgの範囲で適宜設定され得る。
【0022】
本発明の血管新生抑制剤は、優れた血管新生抑制作用を有することから、血管新生によって引き起こされる疾患又は血管新生によって状態が悪化する疾患に対する治療又は予防のための医薬組成物としても使用できる。例えば、糖尿病性網膜症では、網膜虚血により血管新生が惹起されることが知られている。また、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、乾癬、バセドウ病においても、血管新生がこれらの疾患の発症あるいは病態悪化に重要な役割を担っているとされている(高木均,細胞工学 Vol.19,No.8,2000;蛋白質 核酸 酵素 Vol.45,No.6p.1182-1187)。
【0023】
動脈内皮の血管新生(plaque angiogenesis)はアテローマ形成を促進し、アテローム性動脈硬化症を引き起こす一因と考えられており、血管新生抑制がアテローム性動脈硬化症の治療に有効であることが示されている(K.S.Moulton et al.,PNAS,Vol.100,No.8,p.4736-4741)。
【0024】
また、脂肪組織の成長が血管新生に依存することが示されており、血管新生を抑制することによって肥満等の防止に効果があることが知られている(E.Brakenhielm et al.,Circulation Research,June 25,2004)。
【0025】
アルツハイマー病においては、血管新生によって脳内皮細胞が活性化され、βアミロイドの前駆物質及び神経毒ペプチドを分泌して選択的に皮質ニューロンの細胞死を招くとされており、血管新生の抑制がアルツハイマー病の予防及び治療に有効であるとされている(A.H.Vagnucci Jr. et al.,The Lancet,Vol.361,Feb.15,2003)。
【0026】
従って、優れた血管新生抑制作用を有する本発明の医薬組成物は、これらの疾患の予防又は治療を目的として好適に使用され得る。
【0027】
上記以外にも、本発明の医薬組成物は、歯周病、強皮症、緑内障、加齢黄斑変性症、II型糖尿病等の血管新生を伴う疾患の治療又は予防に有効であると期待される。
【0028】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口の別を問わず各種の製剤剤型に調製され得るが好ましくは経口製剤である。本発明の医薬組成物の剤型としては、例えば、液剤(シロップ等を含む)、点滴剤、注射剤、点眼剤等の液状製剤;錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)等の固形製剤が挙げられる。
【0029】
本発明の医薬組成物が液状製剤である場合は、凍結保存することもでき、また凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製剤やドライシロップ等は、使用時に注射用蒸留水、滅菌水等を加え、再度溶解して使用される。
【0030】
例えば、本発明の医薬組成物が注射剤、点滴等として調製される場合、これらは殺菌され且つ血液と等張であるのが好ましい。このような剤型に調製するに際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用することができる。なお、この場合、体液と等張な溶液を調整するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを本発明の医薬組成物中に含有させてもよい。また、当分野において一般的に使用されている溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。
【0031】
固形剤として本発明の医薬組成物を調製する場合、例えば、錠剤の場合であれば、担体としてこの分野で従来よりよく知られている各種のものを広く使用することができる。その例としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0032】
また、丸剤の形態に調製する場合は、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0033】
上記以外に、添加剤として、例えば、結合剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、充填剤、増量剤、付湿剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩を、得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択し使用することができる。また、他の活性成分(例えば、ビタミン類、無機塩類等)を含有させてもよい。さらに、他の薬効成分と組み合わせて用いてもよい。また、本発明の医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等を配合し、調製することもできる。
【0034】
本発明の医薬組成物におけるフコキサンチン及び/又はフコキサンチノールの配合量、及び投与量は、前記血管新生抑制剤における配合量に基づいて適宜設定することができる。
【0035】
(2)化粧料組成物
紫外線照射等による刺激によって皮膚(真皮)において血管新生が惹起されることが、しわが発生する1つの原因であると報告されている(日本化粧品技術者会第23回IFSCCオーランド大会論文報告会講演要旨集)。また、Yano et al., The Journal of Investigative Dermatology, Vol 118, No 5, May 2002においては、内因性の血管新生阻害物質(Thrombospondin-1)が、UV-B照射によって引き起こされる皮膚の脈管化(vascularization)、及びしわ形成を抑制することが確認された。このような知見から、血管新生の抑制がしわ等の皮膚老化を予防するうえで重要であることが知られている。
【0036】
フコキサンチノールは、経皮適用した場合に格段に優れた血管新生抑制作用を発揮し得ることから、しわの改善等の効果が期待できる。従って、フコキサンチノールを、香粧学上許容される従来公知の基材や担体と共に混合して化粧料組成物として調製し、これをしわの改善等を目的として好適に使用することができる。すなわち、本発明の化粧料組成物を、しわ改善用化粧料として用いることができる。フコキサンチノールは、前記(1)において述べたものを使用すればよい。また、本発明の化粧料組成物におけるフコキサンチノールの配合量は、剤型によって異なるが、例えば、0.000001~10重量%程度、好ましくは0.00001~5重量%程度、より好ましくは0.00001~2重量%程度、より好ましくは0.00001~0.1重量%程度、より好ましくは0.00001~0.0005重量%程度である。あるいは、本発明の化粧料組成物には、フコキサンチノールを0.01~24μM程度、好ましくは0.01~20μM程度、好ましくは0.01~15μM程度、好ましくは0.01~10μM程度、好ましくは0.01~5μM程度、より好ましくは0.01~2μM程度配合することが望ましい。フコキサンチノールは、極めて低濃度でも優れた血管新生抑制作用を発揮し得ることから、0.01~2μM程度であっても優れたしわ改善効果が期待される。
【0037】
当該化粧料の形態については、特に制限されないが、例えば、クレンジング剤、皮膚洗浄料、マッサージ剤、軟膏、クリーム、ローション、オイル、パック、洗顔料、化粧水、乳液、ゼリー等が挙げられる。
【0038】
上記の剤型に調製する際の調製方法は特に限定されず、本発明の効果を損なわない限り、当該分野において公知の方法に従えばよい。
【0039】
本発明の化粧料組成物の適用量は特に限定されず、前記(1)において述べたフコキサンチノールの投与量を参考に、しわの気になる部分及びしわのできやすい部分に、適量を剤型に従って適用すればよい。また、本発明の化粧料組成物を肌に適用することによって、しわの改善以外にも、肌のはり、ツヤ等を良くする効果が期待される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び試験例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
(1)ワカメからのフコキサンチン及びフコキサンチノールの抽出
市販の乾燥ワカメをブレンダーで粉砕したもの2gにエタノール100mLを加え、3時間スターラーで攪拌した。ろ過して得られたエタノール抽出物をHPLCで分析したところ、フコキサンチン390μgとフコキサンチノール9μgが含まれていた。
【0041】
(2)フコキサンチンとフコキサンチノールの精製
J.Nutr.131,2921-2927,2001の方法に従ってフコキサンチンを得た。
【0042】
粉砕機で粉末状にした市販の乾燥ワカメ(乾燥重量約100g)に、アセトン:メタノール(7:3,v/v)1Lを数回に分けて加え、襞濾紙を用いて濾過し、粗抽出画分を得た。エバポレーターで溶媒を除去し、メタノール100mLに溶解した後、ヘキサン100mLと水10mLを加えて分液ろうとを用いて液々分配した。
【0043】
得られた溶液の上層を除去し、下層をヘキサン100mLで2回洗浄した。その後、下層に水31mLを加えてメタノールの割合を70%にした後、ヘキサン100mLを加えて分配した。さらに、下層をエバポレータ-でボリュームが1/3になるまで濃縮した後、ジエチルエーテル150mLと水100mLを加えて分配した。
【0044】
上層(エーテル層)を集めてエバポレータ-で溶媒を除去し、得られた抽出物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒=ヘキサン:アセトン(6:4,v/v);PLCプレート(15 PLC plates20×20cm,Silica gel60 F254,1mm,Merck Ltd.,Japan))で展開した。
分離されたカロテノイド画分をプレートより掻き取り、再度抽出し、カロテノイド抽出物を得た。
【0045】
上記で得られたカロテノイド抽出物をHPLCに供し、測定波長444nmにて保持時間8.7分に現れるフコキサンチンのピーク部分の画分を分取し、分取した画分に対してをジクロロメタンと水を加えて抽出して精製した。HPLCの条件は下記に示すとおりである。フコキサンチンをアセトンに溶解し、比吸光度(E1%1cm=1660,Acetone)を濃度として用いて算出したところ、11.3mgのフコキサンチンが得られた。
(HPLC分取条件)
・流速 1.0mL/min
・カラム温度 40℃
・移動相
(A)アセトニトリル:メタノール:水=75:15:10(v/v/v,0.1%酢酸アンモニウムを含む)と
(B)酢酸エチル:メタノール=30:70(v/v,0.1%酢酸アンモニウムを含む)を用いた2液グラジエント
【0046】
上記のようにして得られたフコキサンチンを、A.Asai et al.,Drug Metabolism and Dipositio,Vol.32,No.2,p.205-211に記載の方法に従って、コレステロールエステラーゼを用いて酵素分解し、フコキサンチノールを得た。
【0047】
以下の試験例1~3においては、上記(2)に記載の方法によって得られたフコキサンチン及びフコキサンチノールを用いた。
【0048】
試験例1.血管新生抑制実験
Wistar系の雄性ラット(6-8週齢、日本クレア株式会社製)をジエチルエーテルにより麻酔し、右大腿動脈切断により出血死させた後、胸部大動脈を取り出し1~1.5mmの長さに切断した。この動脈片を6ウェル培養プレートに移し、コラーゲンゲル溶液(Cellmatrix type Ia、新田ゼラチン株式会社製)で包埋した後、37℃でゲル化させた。
【0049】
その後、1%ITS+(Becton Dickinson Bioscience)を含むRPMI 1640培地を2ml加えた後、フコキサンチノールを1μM又は25μMの濃度になるように加えてCOインキュベーター中で培養を行った。また、何も添加せずに培養した動脈片をcontrolとして用いた。
【0050】
培養7日目に動脈片より生じる微小血管毛を倒立顕微鏡下で撮影し、画像をコンピューターに取り込んだ後、微小血管の長さを測定した。なお、コラーゲンゲル溶液は、コラーゲン原液(Cellmatrix type Ia、新田ゼラチン株式会社製)、10×Eagle’sMEM培地(Gibco)、及び再構成緩衝液(新田ゼラチン株式会社製)を体積比8:1:1で混合し、4℃で保存したものを使用した。
【0051】
測定された微小血管の長さに基づき、controlを100%とした場合の各濃度における血管長の相対値を求めた。結果を、表1に示す。また、フコキサンチノール25μMを培地に添加した場合、又はフコキサンチノールを添加しなかった場合(control)に動脈片より生じた微小血管毛の画像を図1に示す。
【0052】
【表1】
JP0005223083B2_000002t.gif

【0053】
表1に示す結果より、フコキサンチノールは、極めて低い濃度でも血管新生抑制効果が認められた。
【0054】
試験例2.ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の増殖抑制実験
HUVECを専用培地(HuMedia EG-2、クラボウ)中で1.5×10cells/mlになるように調製し、100μlずつ96well培養プレートに播種した。COインキュベーター中で一晩培養してHUVECをプレートに付着させた後、フコキサンチンを10~100μMの濃度含む専用培地に交換し、COインキュベーター中で3日間培養した。フコキサンチンを添加していない専用培地100μlに交換した2時間後、Cell Counting Kit試薬(同仁化学研究所製)10μlを加えて450nmの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定することによって、細胞増殖に与える影響を検討した。また、何も添加せずに培養した細胞をcontrolとして用いた。測定された細胞数に基づき、controlを100%とした場合の各濃度における細胞数の相対値を求めた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
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【0056】
表2に示す結果より、フコキサンチンが血管内皮細胞の増殖抑制作用を有することが認められた。
【0057】
試験例3.ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の管腔形成抑制実験
96well培養プレートに50μlのMatrigel(Becton Dickinson Bioscience)を加え、37℃のCOインキュベーター中に1時間置きゲル化させた。HUVECを専用培地(HuMedia EG-2、クラボウ)に1.5×10cells/mlになるように懸濁した。ゲル化したMatrigel上に100μl(1.5×10cells)のHUVEC懸濁液を加えた。そして、フコキサンチンが10又は25μMの濃度になるように加えた後、COインキュベーター中で12時間培養した。形成した管腔構造を倒立顕微鏡下で撮影し、画像をコンピューターに取り込み、管腔構造の長さを測定した。また、何も添加せずに培養した細胞をcontrolとして用いた。得られた血管腔の長さに基づき、controlを100%とした場合の各濃度における管腔長(相対値)を求めた。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
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【0059】
表3に示す結果より、フコキサンチンが管腔形成抑制作用を有することが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】試験例1における結果を示す。すなわち、ラット動脈片を用いた血管新生抑制実験の結果(control又はフコキサンチノール25μM添加)を写真で示す。
図面
【図1】
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